説明

電子機器の冷却装置

【目的】 平行配列した基板であっても、ブロア吸引による均一冷却を可能とし、大容量化にも十分応えられるようにする。
【構成】 テストヘッド1内には、平行配列した複数の基板4が収納される。テストヘッド内の中央通路5の両側の2列に並んだ基板4の空気流出側となる一側に沿って、各基板4間で構成される隙間7の一部を塞ぐ風量調節板10、10を設ける。風量調節板10の形状は略直角三角形をしており、底辺はテストヘッド1の底部に付け、斜辺はその高い方を吸引側に、低い方を吸引側と反対の方に向ける。これにより、吸引側に近くなるほど基板4間の隙間7の塞がれる部分が大きくなり、ダクト2を介してブロアによる吸引で吸引側に近くなるほど大きくなる空気量を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子機器内に平行配列した複数の基板を冷却する電子機器の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、電子機器内には多数のプリント基板が収納されているが、収納スペースまたは冷却効率の点などから、基板配列は主として放射状配列と平行配列との2種類に分けられる。放射状配列は径方向外方にいくにしたがって基板間が開いていくため収納効率の点では不利であるが、中央から空気を吸引することで基板間に均等な冷却空気を流すことができるためブロアによる均一冷却ができるという利点がある。これに対して平行配列は基板間の隙間の均一化が図れるので収納効率の点で優れているが、一側から空気を吸引すると吸引に近い方と吸引から遠い方とでは空気抵抗が大きく異なるためブロア吸引による均一冷却ができないというデメリットがある。
【0003】ところで、従来は、比較的小型の電子機器、たとえば半導体試験装置のテストヘッドなどでは、基板密度がそれ程高く要求されないため、冷却効率の点から、基板配列に放射状配列を採用している場合が多い。しかし、ICの集積度の飛躍的アップや、高機能化にともなうテストヘッドの多ピン化、大型化により、基板の収納密度を更に上げることが要請されるようになっており、もはや放射状配列にはその収納密度に限界がきている。そこで、平行配列が再び注目されるようになってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般的な冷却方式にはファン冷却とブロア冷却とがある。ファン冷却は騒音が大きく、またテストヘッドにファンを直接組み込むためテストヘッドが大型化するという欠点があるが、ファン設置台数の増加により基板配列方式によらず均一冷却が可能という長所がある。これに対してブロア冷却は騒音が少なく、ダクトを介してブロアを外部接続するためテストヘッドが小型化でき、さらに吸引方式により環境汚染の防止が可能になるという長所があるが、既述したように、平行配列した基板に対しては均一冷却が困難であるため、その適用が難しいという欠点がある。
【0005】そこで、平行配列した基板を収納した大型のテストヘッドに対してもファン冷却に頼らざるを得ないが、そうすると上述したような欠点に加えて、大型化による騒音が一層大きくなり、環境問題としても望ましくないことが予想される。このため、平行配列した基板に対してもブロアによる吸引冷却が切に望まれていた。
【0006】本発明は、ブロア吸引による均一冷却が困難であると考えられていた平行配列基板に対しても、基板間で風量調整をすることによって、放射状配列基板と同様な対応策が採れるのではないかという点に着目してなされたものである。
【0007】本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、平行配列した基板であっても、ブロア吸引による均一冷却を可能とし、もって大容量化にも十分応えることができる電子機器の冷却装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の電子機器の冷却装置は、平行配列した複数の基板を収納した電子機器の一側からブロアで基板と交差する方向に冷却気体を電子機器外へ吸引することにより、電子機器内の各基板間に冷却気体を流して基板上の発熱電子部品を冷却する電子機器の冷却装置において、冷却気体の流路となる各基板間の隙間に、その隙間の一部を塞ぐことにより基板間に流れる冷却気体の風量を調節する風量調節板を設けたものである。なお、基板と交差する方向は平行配列した基板に対して直角でも、斜めでもよい。また、風量調節板を設ける各基板間の隙間の位置は、基板間における冷却気体の流入口、流出口または途中のいずれでもよく、重複していてもよい。
【0009】そして、風量調節板の高さを調節することにより基板間に導入される冷却気体の風量を調節すると共に、その高さが吸引側へ向って順次高くなるようにしたり、各基板上の発熱電子部品の発熱量に応じて設定したりすることができる。また、風量調節板の高さを調節する代りに、風量調節板に穴を明けたり風量調節板を網目状または格子状にしたりして、その穴ないし網目の径や、その数等により冷却気体の風量を調節するようにしてもよい。
【0010】また、電子機器の冷却装置には、例えば、半導体試験装置のテストヘッド等がある。
【0011】
【作用】電子機器の一側から、内部に平行配列した複数の基板と交差する方向に冷却気体をブロアで吸引すると、構造上、吸引側からこれに遠い部分に向って気体抵抗が大きくなっていくため、吸引方向に沿って並ぶ基板間に導入される風速のばらつきが生じ、吸引側に近い部分の風速は大きくこれに遠い部分は小さくなる。
【0012】したがって、冷却気体の流路となる各基板間の隙間の一部を、吸引側からの距離に応じて風量調節板で塞いで、吸込側の遠い部分から近い部分にかけての風量分布にあった抵抗をつけると、各基板間に導入される冷却気体の風量が適正化され、基板間の風速のばらつきが是正される。その結果、基板上の発熱電子部品が均一に冷却され、過剰発熱することがなくなる。
【0013】
【実施例】以下、半導体試験装置のテストヘッドに本発明を適用した実施例を図面を用いて説明する。図1は半導体試験装置本体に電気的に接続されて、DUT(被測定IC)をテストするテストヘッド1を示し、ここでは内部の基板配列を示すために上部を取り去った概略構成図としてある。テストヘッド1の一側にはフレキシブルなダクト2が機械的に接続され、外部に設けたブロア(図示せず)により、このダクト2を介してテストヘッド1の内部に冷却気体を流すようになっている。冷却方式に環境問題のない吸引方式を採用することで、テストヘッド1は、外部からヘッド1内に導入されブロアから排出される空気によって冷却される。
【0014】テストヘッド1内にはプリント基板4が多数収納される。基板4はテストヘッド1内の左右に2列に平行配列され、中央に中央通路5を形成し、この通路5とテストヘッド1の一側に設けたダクト2とが連通するようになっている。テストヘッド1の側面にはテストヘッド1外部の空気を内部に取り込むためのスリット状の風孔6が多数設けられる。したがって、ブロアにより吸引すると、外部の冷却空気は風孔6からテストヘッド1内部に導入されて各基板4間に流入し、それらの隙間7を通過する過程で発熱電子部品を冷却し、冷却後中央通路5を通りダクト2を介してテストヘッド1外部に導出される。
【0015】このようなテストヘッド1において、本実施例では、特に、中央通路5の両側に、すなわち2列に並んだ基板4の空気流出側となる一側に沿って、各基板4間で構成される隙間7の一部を塞ぐ風量調節板10、10を設けている。この風量調節板10の形状は略直角三角形をしており、底辺はケーシングの底部に付け、斜辺はその高い方を吸引側に、低い方を吸引側と反対の方に向け、側面を基板の一側に密着させて設置する。なお、上下を逆にして底辺を基板の高さに合せるように設置しても良い。これにより、吸引側に近くなるほど基板間の隙間の塞がれる部分が大きくなり、ブロアによる吸引で、吸引側に近くなるほど基板4間に流れる空気量が少なくなるようにしてある。
【0016】この風量調節板7は図示例では1枚の板で形成したが、分割した板によって構成することもできる。すなわち、分割した板を並べて1枚の風量調節板を組立てるようにするが、各板部の高さは調整自在であり、階段状とすることも、各基板の発熱量に併せた高さ調整が行えるようにすることもできる。また、風量調節板は基板の冷却空気の流出側ではなく流入側となる他側に設けてもよいく、さらには基板間の途中に設けるようにしてもよい。
【0017】図2を用いて風量調節板の機能を説明しよう。図2(A)は、風量調節板を設けなかった場合の、吸引方向に沿った中央通路上の風速分布を示す。ダクト2を接続したテストヘッド1の一側を吸引部とし、原点x=0とすると、吸引部から離れてxの値が大きくなるほど空気抵抗が大きくなるため、風速が小さくなっていくのが分る。したがって、図2(B)に示すように、(A)のxと対応する中央通路両側にその風速分布形状と逆の形状を斜辺にもつ風量調節板を設けることにより、(A)の風速分布を是正して風速分布の均一化を図れることは容易に推測できよう。なお、図2(C)は、基板間の空気流入側となる基板の他側に、(A)と同じ分布形状の風量調節板11(図1参照)を必要に応じて設けることを意味しており、必ずしも正確に均一化できない風速を2枚の対向する風量調節板10、11で調整することによって、風速分布の一層の均一化を図ることを示している。
【0018】次に、風量調節板が有効であることを確認する種々の実験を行なったので、それを図3を用いて説明する。実験に用いたテストヘッド1は、平面視長方形のケーシング12内に、長辺方向に中央通路5を形成し、その中央通路5の両側に短辺と平行に各25枚のプリント基板4を配列したものである。中央通路5の真ん中に、ウェハチェック時に必要となる顕微鏡挿入用の覗き孔を設けた円筒9が垂直に設けられ、これも空気抵抗の増大に関与することになる(図3(A))。風量調節板10は、略直角三角形で構成し、図3(B)の側面視に示すように、ダクト2側に近くなるほど高さが高くなるように配置した。なお、各列のプリント基板4の両端に位置する各4枚(都合16枚)は、特に冷却の必要がないことから、それらの中央通路5を臨む一側に塞ぎ板13を設けて、空気流出口となる隙間7を完全に覆った。
【0019】図3(C)の特性曲線a〜fは、このような条件でパラメータを変えたときの風速分布の実験結果を示す。パラメータは次の通りである。
【0020】a:ケーシング内には顕微鏡用の円筒があるのみで基板、風量調節板、および塞ぎ板はない。
【0021】b:円筒以外に、基板、風量調節板、および塞ぎ板の全てがある。これは基本条件であり、この基本条件は次のc以降も共通する。
【0022】c:円筒は截頭円錐形とし(断面台形)、底部直径はbの円筒直径よりも大きい。
【0023】d:円筒を大径部と小径部とから構成し(断面凸形)、小径部はbの円筒直径とし、大径部を底部側に置く。
【0024】e:dと同じであるが、円筒の小径部の長さが短い。
【0025】f:bと同じであるが、円筒の直径がbより大きい。
【0026】さて、図3(C)を見ると、円筒のみの曲線aから、そのままでは平行配列した基板をブロアの吸引により均一に冷却することが困難であることが推測できる。また、曲線b、e、fからは、風量調節板の設置により吸引側への風速分布偏位を効果的に是正できることが分る。更に、曲線c、dからは、円筒の形状により、真円筒のとき吸引側で低下している風速の裾を広げることができることが分る。これらより、風量調節板の高さを変えることにより、風量のばらつきを解消できることが確認できた。しかも、その効果は、円筒等の障害物が中央通路にあっても有効であることが分る。
【0027】なお、上記実施例では基板の配列を2列としたが、基板の配列は2列に限らず、一列でも3列以上の多数配列でもよい。3列以上の多数配列の場合、ダクトを複数の中央通路に分岐接続すると良い。また、風量調節板はその高さを固定とするのではなく調整可能とし、製品の特性ばらつきに個別的に対処できるようにもしても良い。また、電子機器はテストヘッドに限定されるものではなく、広く平行配列基板を収納したものにも適用できる。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、次の効果がある。
【0029】(1)請求項1に記載の電子機器の冷却装置によれば、風量調節板により吸引方向に沿って基板間の風量を調節するようにしたので、平行配列基板に対しても、風量の均一化を図ることができ、基板上の発熱電子部品を均一に冷却することができ、電子機器の大容量化に対処することができる。
【0030】(2)請求項2に記載の電子機器の冷却装置によれば、風量調節板の高さを吸引側から遠い方へ向って順次低くなるようにして、吸引側からこれに遠い部分に向って大きくなる空気抵抗を逆に小さくしていくようにしたので、基板間に導入される風速のばらつきを均一化でき、基板上の発熱電子部品を均一に冷却することができる。
【0031】(3)請求項3に記載の電子機器の冷却装置によれば、風量調節板の高さを各基板上の発熱電子部品の発熱量に応じて設定し、発熱量の大きな基板には風量が多く、発熱量の小さな基板には風量が少なくなるようにしたので、発熱量に合った均一冷却を効果的に行うことができる。
【0032】(4)請求項4に記載の電子機器の冷却装置によれば、電子機器が半導体試験装置のテストヘッドなので、特に基板及び基板上の発熱部品の実装密度が益々高く、大容量化への要請に対して十分応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による電子機器であるテストヘッドの冷却装置を示す概略構成図。
【図2】本実施例の風量調節板の機能説明図。
【図3】本実施例の風量調節板の効果を実証するために行った実験説明図。
【符号の説明】
1 テストヘッド
2 ダクト
4 プリント基板
5 中央通路
6 風孔
7 隙間
8 冷却空気
10 風量調節板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 平行配列した複数の基板を収納した電子機器の一側からブロアで基板と交差する方向に冷却気体を電子機器外へ吸引することにより、電子機器内の各基板間に冷却気体を流して基板上の発熱電子部品を冷却する電子機器の冷却装置において、冷却気体の流路となる各基板間の隙間に、その隙間の一部を塞ぐことにより基板間に流れる冷却気体の風量を調節する風量調節板を設けたことを特徴とする電子機器の冷却装置。
【請求項2】 上記風量調節板の高さを調節することにより基板間に流れる冷却気体の風量を調節すると共に、その高さが吸引方向に向って順次高くなっている請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項3】 上記風量調節板の高さを調節することにより基板間に流れる冷却気体の風量を調節すると共に、その高さが各基板上の発熱電子部品の発熱量に応じて設定されている請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項4】 上記電子機器が半導体試験装置のテストヘッドである請求項1ないし3のいずれかに記載の電子機器の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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