説明

電子機器の取付構造

【課題】円滑な着脱を損なうことなく支持レールの長手方向における電子機器の位置ずれを抑制することが可能な電子機器の取付構造を提供する。
【解決手段】ケース12の後面側を下方に下すと、他方のフランジ部17bが係止爪27を抜けてDINレール13全体が挿入溝内に挿入する。このとき、突出部はまだ弾性変形状態にあり、この復元力によってDINレール13を幅方向において弾性的に保持する。また、押圧部25も他方のフランジ部17bの上面に弾性力をもって押圧し、押圧部25と係止爪27とが、他方のフランジ部17bを上下方向で弾性的に挟み込むことになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサなどの電子機器を支持レールに取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばDIN規格のレールのように一対のフランジ部を幅方向の両端に備えた支持レールに、電子機器を着脱可能に取り付けるための取付構造としては、下記特許文献1に開示されたものがある。これは、電子機器のケース下面に、固定係合部と、その固定係合部に向けてばね力で弾性付勢された可動係合片とが設けられ、これら固定係合部と可動係合片とによって支持レールをその幅方向で挟み込む構成になっている。
【特許文献1】特開2003−258452公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の構造では、幅方向のみに働くばね力によって電子機器を支持レールに保持するため、支持レールの長手方向への保持力が弱く、電子機器が支持レール上で比較簡単に位置ずれしてしまうおそれがあった。これに対してばね力をより強くする方法も考えられるが、ばね力が強くなった分だけ電子機器の取り外しが困難になるという問題が生じる。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、円滑な着脱を損なうことなく支持レールの長手方向における電子機器の位置ずれを抑制することが可能な電子機器の取付構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る電子機器の取付構造は、1対のフランジ部を有するレールに電子機器のケースを着脱自在に取り付けるための構造において、前記ケース側に設けられて前記レールの一方のフランジ部に係合可能な第1の係止爪と、前記ケース側に設けられて前記レールの他方のフランジ部に係合する係合位置と前記フランジ部との係合を解く待避位置との間で移動可能とされた第2の係止爪と、前記ケース側に設けられ前記第2の係止爪を前記係合位置に向けて付勢して前記レールを前記第1の係止爪との間で弾性的に挟む込ませる付勢部と、前記ケース側に設けられ前記1対のフランジ部に前記第1の係止爪及び第2の係止爪が係合した状態で、前記ケース側から見て前記レールの対向面を当該ケースから離間する方向に押圧する押圧部と、を備える。なお、押圧部については、ケース側から見て前記レールの対向面を、前記係止爪と前記フランジ部との係合力に抗して当該ケースから離間する方向に押圧する構成がより望ましい。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子機器の取付構造において、前記付勢部は、弾性変形可能であって、基端部が前記ケースに固定され先端部に前記第2の係止爪が設けられ弾性変形による弾性力で当該第2の係止爪を前記係合位置に向けて付勢する弾性突出部である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電子機器の取付構造において、前記押圧部は、弾性変形可能であって、基端部が前記弾性突出部に固定され弾性変形しつつ先端部が前記ケースの対向面に押し当てられる構成である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電子機器の取付構造において、前記押圧部は、前記レールの長手方向に沿った軸を中心とした円弧形で、かつ、その内周面を前記レール側に向けた形状であって、その一端側が前記弾性突出部に固定され、他端側が前記ケースの対向面に押し当てられる構成である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の電子機器の取付構造において、前記弾性突出部と当接し、その前記待避位置側への所定量以上の移動を制限する制限部が設けられている。
【0010】
請求項6の発明は、請求項2から請求項5のいずれかに記載の電子機器の取付構造において、前記ケース、前記弾性突出部、前記第1の係止爪及び前記第2の係止爪は一体形成されている。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
本構成によれば、付勢部の付勢力による両係止爪の挟み力によってケースがレールに対してその幅方向で保持される。それに加えて、ケースからの離間方向に働く押圧力によってケースがレールに対して保持される。従って、単に両係止爪の挟み力のみによって保持する構成に比べてケースをレールに強固に保持できる。しかも、レールからケースを取り外す場合には、上記両係止爪の係合力に対する力で済むため、円滑な着脱が確保できる。
【0012】
<請求項2の発明>
本構成によれば、別途ばね部材等を設けることなく、弾性変形した弾性突出部の復元力によってレールを幅方向において挟み込んで保持することができる。
【0013】
<請求項3の発明>
本構成によれば、弾性突出部は、第2係止爪がレールと係合した状態で第1係止爪とは反対方向に弾性変形し、これに伴って押圧部の先端部はケースの対向面側に進出し、強い力で押圧されることになる。
【0014】
<請求項4の発明>
本構成によれば、押圧部が円弧形状をなしているから、例えば折り曲げられた形状等に比べて、ケースの対向面からの反力に対する耐久性が高くなる。
【0015】
<請求項5の発明>
本構成によれば、制御部により、弾性突出部が必要以上に変形されて破損等してしまうことを防止できる。
【0016】
<請求項6の発明>
本構成によれば、前記ケース、前記弾性突出部、前記第1の係止爪及び前記第2の係止爪が一部材で構成されているため、部材管理の負担軽減、製造コストの低減が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図1〜図5を参照しつつ説明する。
1.本実施形態の構成
本実施形態の取付構造10は、光電センサ11(本発明の「電子機器」の一例)の樹脂製のケース12をDINレール13(本発明の「レール」の一例)に取り付けるためのものである。DINレール13は、上面が開放した樋形をなし、その幅方向において互いに離れる向きに張り出した一対のフランジ部17a,17bを有した形状をなす。
【0018】
光電センサ11は、図1に示すように、全体として扁平箱形をなし、その一端面に形成された1対の挿通孔から2本の光ファイバF、Fが導出され、他端面から電源ケーブル16が導出された構成とされている。一方の光ファイバFは、ケース12内に設けられた図示しない投光素子からの光を先端部に設けた投光ヘッド14に導く役割を果す。他方の光ファイバFは、先端に上記投光ヘッド14に対向配置される受光ヘッド15が設けられ、この受光ヘッド15で受けた光を、ケース12内に設けられた図示しない受光素子に導く役割を果たす。
【0019】
そして、光電センサ11を複数台使用する場合には、図1に示すように、複数のケース12をDINレール13上に横並びで保持固定して使用することが多い。
【0020】
図2から図4には、ケース12の取付構造10部分を拡大して示す断面図である。これらの図において、上記光ファイバFはケース12から紙面左方向に導出される。以下、この導出方向を、ケース12の前方として説明する。
【0021】
ケース12の底部には、DINレール13が挿入される挿入溝18が形成されている。この挿入溝18のうち前側の内壁は、下方先端部が内側に膨出した形状をなし、この膨出部分19と挿入溝18の奥面20との間に、DINレール13の一方のフランジ部17aが挿入される。このとき、膨出部分19が上記一方のフランジ部17aの下面に係合することとなり、本発明の「第1の係止爪」として機能する。なお、図2に示すように、挿入溝18の奥面20には、一方のフランジ部17aの上面(本発明の「レールの対向面」の一例)に対向する位置に突部20aが設けられている。
【0022】
一方、上記挿入溝18のうちDINレール13の他方のフランジ部17bが挿入されることになる部分に、係止部材21を収容する収容部22が開口形成されている。係止部材21は、上記収容部22の奥側(図2で紙面上側)で保持固定される固定部23に突出部24(本発明の「弾性突出部、付勢部」の一例)、押圧部25及び制限部26が設けられた部材であり、例えば上記ケース12よりも弾力性が高い樹脂製材料で一体的に成形されている。突出部24は、固定部23から下方に突出しその突出端に係止爪27(本発明の「第2の係止爪」の一例)が設けられた形状をなす。なお、係止爪27の先端面27aは後方に向かうに連れて挿入溝18の奥面20に近づく傾斜面とされている。
【0023】
押圧部25は、突出部24から後方に突出形成されている。具体的には、押圧部25は、DINレール13の長手方向(図2等で紙面奥行き方向)に沿った軸を中心とした断面円弧形で、かつ、その内周面をDINレール13側に向けた形状をなす。換言すれば、押圧部25は、突出部24に固定された基端部からケース12側に膨らむように湾曲し、その先端部がDINレール13側に向けられた形状をなす。また、押圧部25は、基端部分に溝25aが形成されることで他の部分よりも薄肉とされ、この基端部分を支点として弾性変形するようになっている。
【0024】
制限部26は、固定部23の後端部分を環状に丸めた形状をなし、その前面側上部26aが突出部24の後方に位置し、突出部24が所定量以上後方に弾性変形されることを防止する役割を果たす。
【0025】
2.取付工程
次に、光電センサ11のケース12をDINレール13に取り付ける場合の作用について説明する。
【0026】
まず、図2に示すように、ケース12の前面側を下方に傾けつつ、DINレール13の一方のフランジ部17aを、膨出部分19と挿入溝18の奥面20との間に挿入する。そして、ケース12の後面側を下方に下ろし始めると、他方のフランジ17bの先端が突出部24の先端面27aに当接する。そして、ケース12の後面側を更に下方に下ろすと、先端面27aに案内されるように突出部24が基端部分を中心に後方への弾性変形し、図3に示すように、係止爪27が他方のフランジ部17bを挿入溝18内に挿入可能な待避位置へと移動する。また、突出部24の弾性変形に伴って、押圧部25の先端部が下方へと突出する。
【0027】
そして、更に、ケース12の後面側を下方に下ろし始めると、他方のフランジ部17bが係止爪27を抜けてDINレール13全体が挿入溝18内に挿入される。このとき、突出部24はまだ弾性変形状態にあり、この復元力によってDINレール13を幅方向において弾性的に保持する。また、突出部24が弾性変形状態にあるため、押圧部25も他方のフランジ部17bの上面に弾性力をもって押圧する。従って、押圧部25と係止爪27とが、他方のフランジ部17bを上下方向で弾性的に挟み込むことになる。さらに、本実施形態では、上記突部20aが一方のフランジ部17aの上面に押圧しており、この突部20aと膨出部分19とが一方のフランジ部17aを上下方向で弾性的に挟み込むことになる。
【0028】
3.本実施形態の効果
(1)このような構成によれば、DINレール13を、その幅方向だけでなく、上下方向でも弾性的に挟み込む構成であるから、単に幅方向だけで挟み込む構成に比べて、DINレール13の長手方向におけるケース12の保持力を強固にすることができる。しかも、DINレール13からケース12を取り外す際には、突出部24を弾性変形される程度の力で足りるため、円滑な着脱作業を行うことができる。
【0029】
(2)また、ケース12と係止部材21とを別部材とすることで、それぞれにに求められる強度、弾性特性に応じた適切な樹脂で形成することができる。
【0030】
(3)また、押圧部25を、湾曲させて先端部を他方のフランジ部17bの上面に当接させるようにしたので、強い押圧力をもって他方のフランジ部17bに押圧部25を押し当てることができる。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0032】
(1)上記実施形態では、後方の係止爪27だけが弾性的に移動可能とされていたが、前側の内壁部分に弾性突出部を設けて、その先端に設けた係止爪を弾性的に移動可能としてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態とは異なり、係止部材21の代わりに、ケース12に対して前後にスライド可能に設けられたスライド部材と、そのスライド部材を挿入溝18の内側に向けて付勢するばね部材とを備えた構成であってもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では、押圧部25は、突出部24に一体的に形成された構成としたが、これに限らず、押圧部25と突出部24とが別々にケース12に設けられた構成であってもよい。また、押圧部25が、フランジ部17b等ではなく、DINレール13の窪んだ底面13aに押圧する構成であってもよい。
【0035】
(4)上記実施形態では、電子機器として光電センサ11を例に挙げて説明したが、これに限らず、レールに取り付けられる電子機器であれば、例えば電源装置、タイマやコネクタ装置などであってもよい。
【0036】
(5)上記実施形態では、ケース12と係止部材21とは別部材とされていたが、これに限らず、一部材で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る光電センサとDINレールとを示した斜視図
【図2】DINレールにケースを取り付ける過程を示した断面図(その1)
【図3】DINレールにケースを取り付ける過程を示した断面図(その2)
【図4】DINレールにケースを取り付ける過程を示した断面図(その3)
【図5】係止部材を斜め下方向から見た斜視図
【符号の説明】
【0038】
10…取付構造
11…光電センサ(電子機器)
12…ケース
13…DINレール(レール)
17a,17b…フランジ部
19…膨出部分(第1の係止爪)
24…突出部(弾性突出部、付勢部)
25…押圧部
26…制限部
27…係止爪(第2の係止爪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のフランジ部を有するレールに電子機器のケースを着脱自在に取り付けるための構造において、
前記ケース側に設けられて前記レールの一方のフランジ部に係合可能な第1の係止爪と、
前記ケース側に設けられて前記レールの他方のフランジ部に係合する係合位置と前記フランジ部との係合を解く待避位置との間で移動可能とされた第2の係止爪と、
前記ケース側に設けられ前記第2の係止爪を前記係合位置に向けて付勢して前記レールを前記第1の係止爪との間で弾性的に挟み込ませる付勢部と、
前記ケース側に設けられ前記1対のフランジ部に前記第1の係止爪及び第2の係止爪が係合した状態で、前記ケース側から見て前記レールの対向面を当該ケースから離間する方向に押圧する押圧部と、を備える電子機器の取付構造。
【請求項2】
前記付勢部は、弾性変形可能であって、基端部が前記ケースに固定され先端部に前記第2の係止爪が設けられ弾性変形による弾性力で当該第2の係止爪を前記係合位置に向けて付勢する弾性突出部である請求項1に記載の電子機器の取付構造。
【請求項3】
前記押圧部は、弾性変形可能であって、基端部が前記弾性突出部に固定され弾性変形しつつ先端部が前記ケースの対向面に押し当てられる構成である請求項2に記載の電子機器の取付構造。
【請求項4】
前記押圧部は、前記レールの長手方向に沿った軸を中心とした円弧形で、かつ、その内周面を前記レール側に向けた形状であって、その一端側が前記弾性突出部に固定され、他端側が前記ケースの対向面に押し当てられる構成である請求項3に記載の電子機器の取付構造。
【請求項5】
前記弾性突出部と当接し、その前記待避位置側への所定量以上の移動を制限する制限部が設けられている請求項2から請求項4のいずれかに記載の電子機器の取付構造。
【請求項6】
前記ケース、前記弾性突出部、前記第1の係止爪及び前記第2の係止爪は一体形成されている請求項2から請求項5のいずれかに記載の電子機器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−299936(P2007−299936A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126773(P2006−126773)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】