説明

電子機器の押しボタン装置

【課題】操作力と操作感を損なうことなく、押しボタン部がシート等に当たって出るビビリ音などの不快な音の発生を確実に防止することのできる電子機器の押しボタン装置を提供すること。
【解決手段】本発明の電子機器の押しボタン装置は、タクトスイッチ12が設置された電子回路基板11を覆うケース1と、タクトスイッチ12の上方に配置され、弾性変形部1cを介してケース1と一体的に形成されており、弾性変形部1cが変形することによりタクトスイッチ12を押下するストローク動作が可能となる押しボタン部1aと、押しボタン部1aを含む範囲でケース1の表面を被覆するシート2と、押しボタン部1aとシート2との間に介在する緩衝部材3とを備える。緩衝部材3は、押しボタン部1aおよびシート2の双方と接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の押しボタン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器において、タクトスイッチが設置された電子回路基板を覆うケースに、タクトスイッチを押下するための押しボタン部を一体的に形成するともに、その押しボタン部を含む範囲のケースの表面が、意匠面となるシートで被覆された構成の押しボタン装置が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような押しボタン装置において、操作感を良好とするため、押しボタン部は、低剛性の細い弾性変形部を介してケースと一体的に形成され、上記弾性変形部が変形することにより、タクトスイッチを押下するためのストローク動作が可能となるように構成されていることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-108098号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構造の押しボタン装置において、ケースとシートとは接着剤層を介して接合されるが、押しボタン部とシートとは非接合であることが一般的である。押しボタン部は、低剛性の弾性変形部を介して支持されているので、容易に動く状態になっている。このため、電子機器に備えられたブザーあるいはスピーカからブザー音、ガイダンス音声、通話音声などが発せられた場合に、その音によって押しボタン部が振動し、振動した押しボタン部がシート等に当たって、いわゆるビビリ音のような不快な音が出る場合がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、操作力と操作感を損なうことなく、押しボタン部の振動によるビビリ音などの不快な音が発生することを防止することのできる電子機器の押しボタン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子機器の押しボタン装置は、スイッチが設置された電子回路基板を覆うケースと、スイッチの上方に配置され、弾性変形部を介してケースと一体的に形成されており、弾性変形部が変形することによりスイッチを押下するストローク動作が可能となる押しボタン部と、押しボタン部を含む範囲でケースの表面を被覆するシートと、押しボタン部とシートとの間に介在する緩衝部材と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作力と操作感を損なうことなく、押しボタン部がシート等に当たって出るビビリ音などの不快な音の発生を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の電子機器の押しボタン装置の実施の形態1を示す断面図(非操作状態)である。
【図2】本発明の電子機器の押しボタン装置の実施の形態1を示す断面図(操作状態)である。
【図3】図1および図2に示す押しボタン装置のケースの、押しボタン部付近の平面図(シートおよび緩衝部材を取り付けていない状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1および図2は、それぞれ、本発明の電子機器の押しボタン装置の実施の形態1を示す断面図である。図1は、操作されていない状態を示し、図2は、操作されている状態を示している。図3は、図1および図2に示す押しボタン装置のケースの、押しボタン部付近の平面図(シートおよび緩衝部材を取り付けていない状態)である。以下の説明では、便宜上、図1および図2中における上方向および下方向をそれぞれ「上」および「下」として記載する。
【0011】
これらの図に示す本実施形態の押しボタン装置は、電子機器の電子回路基板11上に設置されたタクトスイッチ12を操作するために設けられるものであり、特に、ブザー音、ガイダンス音声、通話音声などを発するブザーあるいはスピーカを備える電子機器に対し好ましく適用することができる。
【0012】
図1に示すように、電子回路基板11は、プラスチック製のケース1によって覆われている。タクトスイッチ12の上方には、押しボタン部1aが配置されている。図3に示すように、押しボタン部1aは、ケース1に形成された開口部1dの内側に位置しており、細い連結部1bを介してケース1と一体的に形成(一体成形)されたものである。本実施形態では、押しボタン部1aを挟んで対向する2箇所に連結部1bが設けられている。図1に示すように、連結部1bの途中の部分には、弾性変形部1cが形成されている。弾性変形部1cは、湾曲部を有する細い形状(本実施形態では略S字状)に形成されていることにより、容易に弾性変形することができる。押しボタン部1aは、弾性変形部1cが変形することにより、小さな荷重で、ケース1の面に対し垂直な方向に変位可能になっている。押しボタン部1aの下部には、押しボタン部1aが下方に変位したときにタクトスイッチ12を押下することのできる突出部1fが形成されている。
【0013】
ケース1の表面は、樹脂材料で構成された可撓性を有するシート2で被覆されている。シート2は、ケース1に対し接着剤層2aを介して接合されている。シート2は、その表面に印刷等が施されており、意匠面を構成する。押しボタン部1aおよびその周囲を覆う部分のシート2は、外側に張り出し、他の部分より僅かに高くなるように加工された操作部ボス2bを形成している。操作部ボス2bの裏面には、接着剤層2aは設けられていない。シート2に操作部ボス2bを形成することにより、操作部の位置が使用者に判り易くなるとともに、押したときの弾力により、良好な操作感が得られる。
【0014】
シート2(操作部ボス2b)と押しボタン部1aとの間には、緩衝部材3が配置されている。この緩衝部材3は、ケース1の振動などに起因して押しボタン部1aが振動した場合であっても押しボタン部1aとシート2(操作部ボス2b)とが直接に接触することのないように、両者の間に常に間隔を設けるように機能する。緩衝部材3の上面は、シート2(操作部ボス2b)の裏面に対し接着剤層3aを介して接合されている。また、緩衝部材3の底面は、押しボタン部1aに対し接着剤層3aを介して接合されている。この緩衝部材3は、押しボタン部1aより柔軟な部材であり、例えば天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、または発泡プラスチック等の弾性材料で構成されていることが好ましい。本実施形態では、押しボタン部1aの上面に、緩衝部材3を受ける受け部(凹部)1eが形成されており、緩衝部材3の一部が受け部1eに収納されている。これにより、緩衝部材3を厚くすることができ、緩衝部材3の効果をより大きく発揮させることができる。また、緩衝部材3の位置ズレをより確実に防止することもできる。
【0015】
図2に示すように、使用者が操作部ボス2bに指で荷重を加えると、操作部ボス2bが凹んで変形し、緩衝部材3を介して押しボタン部1aが押される。押された押しボタン部1aは、弾性変形部1cの変形によって下方に変位し、突出部1fがタクトスイッチ12を押下する。これにより、タクトスイッチ12を動作させることができる。前述したように、押しボタン部1aは容易に弾性変形可能な低剛性の弾性変形部1cによって支持されており、小さな荷重で押しボタン部1aが変位可能であるため、僅かな操作力で操作可能であり、優れた操作感が得られる。
【0016】
上述したように、押しボタン部1aは、低剛性の弾性変形部1cを介して支持されているため、特に上下方向に振動し易い。このため、従来の構成の場合には、電子機器に備えられたブザーあるいはスピーカから発せられるブザー音、ガイダンス音声、通話音声などの音によってケース1が微振動したとき、その振動が連結部1bから押しボタン部1aに伝達して押しボタン部1aが大きく振動し、シート2と繰り返し衝突して、ビビリ音などの不快な音を発生させるという問題があった。
【0017】
これに対し、本実施形態では、押しボタン部1aとシート2との間に緩衝部材3を介在させたことにより、押しボタン部1aの振動を緩衝部材3によって吸収して減衰させることができる。このため、押しボタン部1aの振動を抑制することができる。また、押しボタン部1aがシート2に直接に当たることがなく、シート2と直接に接するのは、柔らかい緩衝部材3であるので、音が出にくい。このようなことから、ビビリ音などの不快な音の発生を確実に防止することができる。
【0018】
更に、本実施形態では、緩衝部材3が接着剤層3aにより押しボタン部1aおよびシート2の双方と接合されているので、押しボタン部1aは緩衝部材3を介してシート2と接合された状態となっている。このため、押しボタン部1aはシート2によっても支えられているので、シート2自体が押しボタン部1aの振動を抑制するように機能する。よって、ビビリ音などの不快な音の発生をより確実に防止することができる。
【0019】
なお、本実施形態では、緩衝部材3を押しボタン部1aおよびシート2の双方と接合するように構成しているが、本発明では、緩衝部材3を押しボタン部1aおよびシート2の何れか一方と接合し、他方とは接合しないように構成してもよい。そのように構成した場合には、製造時の組み立てを容易化することができる。緩衝部材3を押しボタン部1aおよびシート2の何れか一方のみと接合する場合であっても、操作部ボス2bが押されていない状態において緩衝部材3が押しボタン部1aおよびシート2の双方に対し隙間無く当接するように構成することにより、ビビリ音などの不快な音の発生を確実に防止することができる。また、緩衝部材3を受け部1eに嵌め込む(嵌合させる)ことによって緩衝部材3が押しボタン部1aに保持(固定)されるように構成してもよい。この場合、接着剤層3aを省略することができ、コストダウンと組み立て性の向上を図りながら、ビビリ音などの不快な音の発生を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の押しボタン装置は、例えば、インターホン機能を備える給湯機のリモコン装置など、操作ボタンと振動発生源(インターホンのスピーカ)とが共存する筐体を有する電子機器に利用して好適である。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース
1a 押しボタン部
1b 連結部
1c 弾性変形部
1e 受け部
2 シート
2a 接着剤層
2b 操作部ボス
3 緩衝部材
3a 接着剤層
11 電子回路基板
12 タクトスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチが設置された電子回路基板を覆うケースと、
前記スイッチの上方に配置され、弾性変形部を介して前記ケースと一体的に形成されており、前記弾性変形部が変形することにより前記スイッチを押下するストローク動作が可能となる押しボタン部と、
前記押しボタン部を含む範囲で前記ケースの表面を被覆するシートと、
前記押しボタン部と前記シートとの間に介在する緩衝部材と、
を備えることを特徴とする電子機器の押しボタン装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記押しボタン部および前記シートの双方に当接していることを特徴とする請求項1記載の電子機器の押しボタン装置。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記押しボタン部および前記シートの双方と接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の押しボタン装置。
【請求項4】
前記緩衝部材は、前記押しボタン部および前記シートの何れか一方と接合され、他方とは接合されていないことを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の押しボタン装置。
【請求項5】
前記押しボタン部には、前記緩衝部材を受ける受け部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の電子機器の押しボタン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−233464(P2011−233464A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105087(P2010−105087)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】