説明

電子機器の筐体構造

【課題】電子機器の筐体構造において、2つのケース半体を蝶番によって互いに連結する作業の簡易化と組立時間の短縮を図る。
【解決手段】本発明に係る電子機器の筐体構造においては、第1ケース半体1の外周部に形成したフランジ部11と第2ケース半体2の外周部に形成したフランジ部21とを互いに接合し、両フランジ部11、21を締結部材により互いに締結している。又、第1ケース半体1のフランジ部11と第2ケース半体2のフランジ部21とは蝶番3を介して互いに連結されており、該蝶番3を構成する第1の羽根板31と第2の羽根板32はそれぞれ第1ケース半体1のフランジ部11と第2ケース半体2のフランジ部21にねじ4を用いて締結されており、少なくとも何れか一方のケース半体2のフランジ部21に蝶番3の羽根板32を締結すべきねじ4は、フランジ部21側から羽根板32へねじ込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話通信用に屋外に設置される基地局の如き電子機器に関し、特に、ケース内に複数の部品が収容されている電子機器の筐体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電話通信用に屋外に設置される基地局は、図8及び図9に示す様に、第1ケース半体(7)と第2ケース半体(8)を接合してなる密閉ケース(6)を具え、該ケース(6)の内部に、電子部品などを搭載した基板(9)(91)が収容されている。
【0003】
ここで、第1ケース半体(7)の外周部に形成されたフランジ部(71)と第2ケース半体(8)の外周部に形成されたフランジ部(81)とが互いに接合され、両フランジ部(71)(81)が複数本のねじ(41)を用いて互いに締結されている(特許文献1参照)。
【0004】
この様な基地局においては、前記複数本のねじ(41)による締結を解除することによって、図9の如く第1ケース半体(7)と第2ケース半体(8)とを開き、内部の基板(9)(91)に搭載されている部品のメンテナンスを実施することが行なわれている。
【特許文献1】特開2008−160096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に基地局は電柱の上部等の高所に設置されているため、従来は、基地局全体を電柱等から取り外し、地上に降ろした後に、第1ケース半体(7)と第2ケース半体(8)を開いてメンテナンスを実施していた。このため、作業効率が悪い問題があった。
【0006】
そこで、第1ケース半体(7)と第2ケース半体(8)とを蝶番を介して互いに連結することによって、第1ケース半体(7)に対して第2ケース半体(8)を連結したまま開くことを可能とすれば、高所でのメンテナンス作業が可能となる。
【0007】
第1ケース半体(7)のフランジ部(71)と第2ケース半体(8)のフランジ部(81)に、蝶番を構成する第1の羽根板と第2の羽根板をねじによって締結する場合、図9の如く第1ケース半体(7)と第2ケース半体(8)とを開いた状態で、第1ケース半体(7)のフランジ部(71)に第1の羽根板を締結し、第2ケース半体(8)のフランジ部(81)に第2の羽根板を締結することになる。
【0008】
ここで、第1ケース半体(7)のフランジ部(71)に第1の羽根板を締結すべきねじは、羽根板側からフランジ部(71)へねじ込み、第2ケース半体(8)のフランジ部(81)に第2の羽根板を締結すべきねじは、羽根板側からフランジ部(81)にねじ込む。
【0009】
蝶番の2枚の羽根板にはそれぞれ、前記ねじを貫通させるための丸孔が開設されているが、これらの丸孔はねじの外径よりも僅かに大きな内径を有しているため、ねじを締め付けたときの第1ケース半体(7)と第2ケース半体(8)の相対位置にはばらつきが生じることになる。
このため、第1ケース半体(7)と第2ケース半体(8)を閉じたときに両ケース半体(7)(8)が互いに所定の位置関係で接合される様、両ケース半体(7)(8)を繰り返し開閉して、接合位置を修正しつつねじの締め付けを行なうことが必要となる。
【0010】
従って、両ケース半体(7)(8)を蝶番によって互いに連結する作業に熟練が必要となり、組立に時間がかかる問題がある。
そこで本発明の目的は、2つのケース半体を蝶番によって互いに連結した筐体構造において、2つのケース半体を蝶番によって互いに連結する作業の簡易化と組立時間の短縮を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電子機器の筐体構造においては、第1ケース半体(1)の外周部に形成したフランジ部(11)と第2ケース半体(2)の外周部に形成したフランジ部(21)とを互いに接合し、両フランジ部(11)(21)を締結部材により互いに締結して、複数の部品を収容するためのケース(5)が構成されている。
【0012】
第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)とは蝶番(3)を介して互いに連結されており、該蝶番(3)を構成する第1の羽根板(31)と第2の羽根板(32)はそれぞれ第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)にねじ(4)を用いて締結されている。
そして、少なくとも何れか一方のケース半体のフランジ部に蝶番の羽根板を締結すべきねじ(4)は、フランジ部側から羽根板へねじ込まれており、前記締結部材による締結を解除した状態で、両ケース半体(1)(2)は蝶番(3)の枢軸部(33)を中心として開閉が可能である。
【0013】
具体的には、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)に蝶番(3)の第1の羽根板(31)を締結すべきねじ(4)は、第1の羽根板(31)側からフランジ部(11)へねじ込まれる一方、第2ケース半体(2)のフランジ部(21)に蝶番(3)の第2の羽根板(32)を締結すべきねじ(4)は、フランジ部(21)側から第2の羽根板(32)へねじ込まれている。
【0014】
上記本発明の筐体構造によれば、第1ケース半体(1)と第2ケース半体(2)を蝶番(3)によって互いに連結する作業において、先ず第1ケース半体(1)のフランジ部(11)の内面に蝶番(3)の第1の羽根板(31)を設置して、第1の羽根板(31)側からフランジ部(11)へねじ(4)をねじ込んで、該フランジ部(11)に第1の羽根板(31)を締結し、その後、蝶番(3)の第2の羽根板(32)を閉じて第1の羽根板(31)に重ね合わせ、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)に第2ケース半体(2)のフランジ部(21)を重ね合わせた状態で、フランジ部(21)側から第2の羽根板(32)へねじ(4)をねじ込んで、該フランジ部(21)に第2の羽根板(32)を締結する。
【0015】
この様に、両ケース半体(1)(2)に蝶番(3)を締結するための最後のねじの締め付けは、両ケース半体(1)(2)が閉じられた状態で、正確な位置関係を維持したまま行なうことが出来るので、従来の如く両ケース半体(1)(2)を開閉させつつ接合位置を修正する作業は不要である。
【0016】
具体的な構成において、蝶番(3)の第2の羽根板(32)には、バーリング加工によって第2ケース半体(2)のフランジ部(21)へ向けて突出する立上り部(34)が形成され、該立上り部(34)に、前記ねじ(4)が螺合すべきねじ孔(36)が形成されている。
該具体的構成によれば、蝶番(3)の第2の羽根板(32)の厚さが小さい場合にも、立上り部(34)によって充分な長さのねじ孔(36)を形成することが出来、これによって、フランジ部(21)に対する羽根板(32)の締結強度が充分に大きなものとなる。
【0017】
更に具体的な構成において、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)には、前記蝶番(3)の第1の羽根板(31)と第2の羽根板(32)を収容すべき凹部(12)(22)が形成されている。
該具体的構成によれば、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)とを互いに密着させて接合することが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電子機器の筐体構造によれば、2つのケース半体を蝶番によって互いに連結する作業の簡易化や組立時間の短縮を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図8及び図9に示す基地局に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係る基地局は、図1に示す如く、それぞれ例えばアルミニウムダイカスト製の第1ケース半体(1)と第2ケース半体(2)を接合してなる密閉ケース(5)を具え、該ケース(5)の内部には、電子部品などを搭載した複数の基板(図示省略)が収容されている。
【0020】
第1ケース半体(1)の外周部に形成されたフランジ部(11)と第2ケース半体(2)の外周部に形成されたフランジ部(21)とは互いに接合され、両フランジ部(11)(21)は、図8に示す従来の基地局と同様に複数本のねじ(41)を用いて互いに締結されている。
又、図1の如く、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)とは、1つの蝶番(3)を介して互いに連結されている。
【0021】
蝶番(3)は、図4に示す如く、第1の羽根板(31)と第2の羽根板(32)を枢軸部(33)によって互いに開閉可能に連結して構成されており、第1の羽根板(31)には2つの円錐台状の丸孔(35)(35)が開設され、第2の羽根板(32)は2つのねじ孔(36)(36)が形成されている。
蝶番(3)の第2の羽根板(32)には、図5に示す如く、バーリング加工によって2つの立上り部(34)(34)が形成されており、該立上り部(34)(34)に、図4に示す2つのねじ孔(36)(36)が形成されている。
【0022】
一方、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)の内面には、図6の如く、蝶番(3)の第1の羽根板(31)を収容すべき凹部(12)が形成されると共に、該凹部(12)の形成領域内に、蝶番(3)の第1の羽根板(31)を貫通する2本のねじ(4)(4)がねじ込まれるべき2つのねじ孔(13)(13)が形成されている。
又、第2ケース半体(2)のフランジ部(21)の内面には、図7の如く、蝶番(3)の第2の羽根板(32)を収容すべき凹部(22)が形成されると共に、該凹部(22)の形成領域内に、蝶番(3)の第2の羽根板(32)へねじ込まれる2本のねじ(4)(4)が貫通すべき2つの丸孔(23)(23)が開設されている。
【0023】
第1ケース半体(1)と第2ケース半体(2)を蝶番(3)によって互いに連結する作業においては、先ず、図6に示す様に第1ケース半体(1)のフランジ部(11)の凹部(22)に蝶番(3)の第1の羽根板(31)を設置して、第1の羽根板(31)の丸孔(35)(35)からフランジ部(11)のねじ孔(13)(13)へ2本のねじ(4)をねじ込んで、該フランジ部(11)に第1の羽根板(31)を締結する。
【0024】
その後、図7に示す様に蝶番(3)の第2の羽根板(32)を閉じて第1の羽根板(31)に重ね合わせる。そして、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)に第2ケース半体(2)のフランジ部(21)を重ね合わせた状態で、フランジ部(21)の丸孔(23)(23)から第2の羽根板(32)のねじ孔(36)(36)へ2本のねじ(4)をねじ込んで、該フランジ部(21)に第2の羽根板(32)を締結する。
最後に、図8に示す従来の基地局と同様に、複数本のねじ(41)を用いて両ケース半体(1)(2)を互いに締結して、基地局の組立作業を終了する。
【0025】
上述の如く、両ケース半体(1)(2)を蝶番(3)によって連結する作業においては、図6の如く第1ケース半体(1)に蝶番(3)の第1の羽根板(31)を締結した後、図7の如く両ケース半体(1)(2)を閉じて、両ケース半体(1)(2)の閉じ状態での正確な位置関係を維持したまま、第2ケース半体(2)のフランジ部(21)側から蝶番(3)の第2の羽根板(32)へねじ(4)(4)をねじ込んで、該フランジ部(21)に第2の羽根板(32)を締結すればよい。
従って、従来の如く両ケース半体(1)(2)を開閉させつつ接合位置を修正する作業は不要であり、両ケース半体(1)(2)を蝶番(3)によって互いに連結する作業の簡易化と組立時間の短縮を図ることが出来る。
【0026】
上記基地局においては、図2に示す如く、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)に蝶番(3)の第1の羽根板(31)と第2の羽根板(32)が締結された状態で、第1の羽根板(31)は第1ケース半体(1)の凹部(12)に収容されると共に、第2の羽根板(32)は第2ケース半体(2)の凹部(22)に収容されるので、第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)とは互いに密着することになる。
【0027】
又、蝶番(3)の第2の羽根板(32)にねじ込まれたねじ(4)は、第2の羽根板(32)の立上り部(34)に形成されているねじ孔に対して充分なねじ山数で螺合することになるので、フランジ部(21)に対する第2の羽根板(32)の締結強度は充分なものとなる。
【0028】
基地局のメンテナンス時には、高所の設置状態のまま、前記複数本のねじ(41)による締結を解除すれば、図3に示す様に蝶番(3)による連結を維持したまま、第1ケース半体(1)から第2ケース半体(2)を開くことが出来る。従って、基地局を地上に降ろすことなく、迅速にメンテナンスを実施することが出来る。
【0029】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。又、本発明は基地局に限らず、2つのケース半体を接合してなるケースの内部に複数の部品を収容して構成される種々の電子機器に実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る基地局の筐体構造の要部を示す斜視図である。
【図2】該要部の拡大断面図である。
【図3】両ケース半体を開いた状態の要部を示す斜視図である。
【図4】蝶番の斜視図である。
【図5】蝶番を反対側から見た斜視図である。
【図6】第1ケース半体に蝶番の第1の羽根板を締結する作業を説明する斜視図である。
【図7】第2ケース半体に蝶番の第2の羽根板を締結する作業を説明する斜視図である。
【図8】従来の基地局の斜視図である。
【図9】該基地局において両ケース半体を開いた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
(1) 第1ケース半体
(11) フランジ部
(12) 凹部
(13) ねじ孔
(2) 第2ケース半体
(21) フランジ部
(22) 凹部
(23) 丸孔
(3) 蝶番
(31) 第1の羽根板
(32) 第2の羽根板
(33) 枢軸部
(34) 立上り部
(35) 丸孔
(36) ねじ孔
(4) ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケース半体(1)の外周部に形成したフランジ部(11)と第2ケース半体(2)の外周部に形成したフランジ部(21)とを互いに接合し、両フランジ部(11)(21)を締結部材により互いに締結して、複数の部品を収容するためのケース(5)が構成されている電子機器の筐体構造において、
第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)とは蝶番(3)を介して互いに連結されており、該蝶番(3)を構成する第1の羽根板(31)と第2の羽根板(32)はそれぞれ第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)にねじ(4)を用いて締結されており、少なくとも何れか一方のケース半体のフランジ部に蝶番の羽根板を締結すべきねじ(4)は、フランジ部側から羽根板へねじ込まれており、前記締結部材による締結を解除した状態で、両ケース半体(1)(2)は蝶番(3)の枢軸部(33)を中心として開閉が可能であることを特徴とする電子機器の筐体構造。
【請求項2】
第1ケース半体(1)のフランジ部(11)に蝶番(3)の第1の羽根板(31)を締結すべきねじ(4)は、第1の羽根板(31)側からフランジ部(11)へねじ込まれる一方、第2ケース半体(2)のフランジ部(21)に蝶番(3)の第2の羽根板(32)を締結すべきねじ(4)は、フランジ部(21)側から第2の羽根板(32)へねじ込まれている請求項1に記載の筐体構造。
【請求項3】
蝶番(3)の第2の羽根板(32)には、バーリング加工によって第2ケース半体(2)のフランジ部(21)へ向けて突出する立上り部(34)が形成され、該立上り部(34)に、前記ねじ(4)が螺合すべきねじ孔(36)が形成されている請求項2に記載の筐体構造。
【請求項4】
第1ケース半体(1)のフランジ部(11)と第2ケース半体(2)のフランジ部(21)には、前記蝶番(3)の第1の羽根板(31)と第2の羽根板(32)を収容すべき凹部(12)(22)が形成されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の筐体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−56253(P2010−56253A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218935(P2008−218935)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】