説明

電子機器の筐体構造

【課題】筐体を構成するフロントキャビネットとバックキャビネットの組立、分解作業が簡易であり、然も両キャビネット間に確実な連結が得られる電子機器の筐体構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器の筐体構造は、フロントキャビネット2とバックキャビネット3とを互いに接合してなる筐体を具え、フロントキャビネット2とバックキャビネット3とは、筐体の外周部の複数箇所に設けた複数の連結部により互いに連結され、該複数の連結部の内、少なくとも1つの連結部は、ビス6を用いた締結機構によって構成され、他の複数の連結部は、一方のキャビネットに形成した係合部と他方のキャビネットに形成した被係合部とを互いに係脱可能に係合させたフック機構によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン受像機等の電子機器における筐体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器においては、筐体の内部に電子部品等の機器構成要素が収容されており、筐体は、合成樹脂製のフロントキャビネットとバックキャビネットとを互いに接合して構成されている。
【0003】
筐体を構成するフロントキャビネットとバックキャビネットは、それぞれの外周部にて、複数本のビスにより互いに締結されている。
或いは、筐体を構成するフロントキャビネットとバックキャビネットは、それぞれの外周部にて、複数箇所に形成した一対の爪片からなるフック機構により互いに係脱可能に係合している。
【0004】
又、筐体の防水を図るべく、筐体を構成するフロントキャビネットとバックキャビネットは、それぞれの外周部にて硬化型樹脂により互いに接着固定することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−35856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フロントキャビネットとバックキャビネットを複数本のビスにより互いに締結した筐体構造では、部品点数が多くなるばかりでなく、組立作業において複数本のビスをねじ込む作業が煩雑となる。
又、フロントキャビネットとバックキャビネットを複数のフック機構により互いに係止した筐体構造では、フック機構を構成する一対の爪片どうしの係合状態が締結機構に較べて不確実であるばかりでなく、筐体の分解時に一対の爪片どうしの係合を解除する作業が困難である。
更に又、フロントキャビネットとバックキャビネットを互いに接着固定した筐体構造においては、メンテナンス等のためにフロントキャビネットとバックキャビネットを再使用可能に分解することが出来ない問題がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、筐体を構成するフロントキャビネットとバックキャビネットの組立、分解作業が簡易であり、両キャビネット間に確実な連結が得られる電子機器の筐体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器の筐体構造は、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とを互いに接合してなる筐体(1)を具えている。
筐体(1)を構成するフロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とは、筐体(1)の外周部の複数箇所に設けた複数の連結部により互いに連結され、該複数の連結部の内、少なくとも1つの連結部は、ビスを用いた締結機構によって構成され、他の複数の連結部は、一方のキャビネットに形成した係合部と他方のキャビネットに形成した被係合部とを互いに係脱可能に係合させたフック機構によって構成されている。
【0009】
本発明に係る電子機器の筐体構造によれば、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とが複数の連結部により互いに連結された状態で、少なくとも1つの締結機構による締結によって、他の複数のフック機構の係合が確実なものとなり、全体としてフロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)の間に確実な結合状態が得られる。
【0010】
筐体(1)をフロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)に分解する場合は、先ず、締結機構による締結を解除し、これによって結合の切り離れた位置にて、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)を互いに離間する方向へ押し開く。
【0011】
これによって、前記位置から最も近いフック機構が、係合部と被係合部の係合を解除する方向へ力を受けて、係合部と被係合部の係合が解除されることになる。
そして、更にフロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)を押し開くことによって、前記係合が解除されたフック機構に最も近い次のフック機構が、係合部と被係合部の係合を解除する方向へ力を受けて、係合部と被係合部の係合が解除されることになる。
【0012】
以後、連鎖的に複数のフック機構の係合解除が順次進行し、全てのフック機構の係合が解除されて、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)の連結が解除されることになる。
この結果、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とが互いに分離される。
【0013】
具体的態様において、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)はそれぞれ略四角形の輪郭形状を有し、筐体(1)の輪郭形状を規定する4辺の内、1辺に対しては、1或いは複数の締結機構のみが設けられ、他の3辺に対しては、それぞれ1或いは複数のフック機構が設けられている。
【0014】
又、具体的な態様において、前記1或いは複数の締結機構のみが設けられている1辺を第1辺とし、該第1辺と対向する他の1辺を第2辺として、該第2辺に対しては、前記1或いは複数のフック機構と共に、1つの締結機構が設けられている。
【0015】
更に具体的な態様において、前記1或いは複数の締結機構のみが設けられている1辺に対向する他の1辺に対して設けられている1或いは複数のフック機構はそれぞれ、該他の1辺の近傍を回転軸として両キャビネットの開き動作を許容し得る係合状態にて、係合部と被係合部とが互いに係合している。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電子機器の筐体構造によれば、筐体を構成するフロントキャビネットとバックキャビネットとが、筐体の外周部にて少なくとも1つの締結機構と複数のフック機構によって互いに連結されているので、複数の締結機構のみによる連結と比較して、締結機構の数の減少によって組立、分解作業の簡易化が図られると共に、複数のフック機構のみによる連結と比較して、少なくとも1つの締結機構によって連結の確実性が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるテレビジョン受像機を前面側から見た分解斜視図である。
【図2】図2は、該テレビジョン受像機を背面側から見た分解斜視図である。
【図3】図3は、該テレビジョン受像機の断面図である。
【図4】図4は、フック機構の係合状態を示す断面図である。
【図5】図5は、フロントキャビネットの背面図である。
【図6】図6は、バックキャビネットの背面図である。
【図7】図7は、フロントキャビネットとバックキャビネットの分解作業を説明する図である。
【図8】図8は、フック機構の係合が解除された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をテレビジョン受像機に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態であるテレビジョン受像機は、図1に示す如くそれぞれ略四角形の輪郭形状を有する合成樹脂製のフロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とを互いに接合してなる薄型の筐体(1)を具え、該筐体(1)の内部にはディスプレイ(4)や電子部品が収容され、フロントキャビネット(2)には、ディスプレイ(4)の画面を露出させるための前面開口(20)が開設されている。
【0019】
図2に示す如く、筐体(1)を構成するフロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とは、筐体(1)の輪郭形状の下辺部にて、5本のビス(6)によって互いに締結されると共に、上辺部にて、1本のビス(7)によって互いに締結されている。
【0020】
具体的には、バックキャビネット(3)には、図6に示す如く下辺部に沿って5つの貫通孔(62)が開設されると共に、上辺部に1つの貫通孔(72)が開設される一方、フロントキャビネット(2)の内面には、図5に示す如く下辺部に沿って5つのボス(61)が突設されると共に、上辺部に1つのボス(71)が突設されており、各貫通孔(72)(72)から各ボス(61)(71)へビス(6)(7)をねじ込むことによって、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とが互いに締結される。
【0021】
又、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とは、筐体(1)の輪郭形状の左右の側辺部と上辺部の複数箇所にて、図4に示すフック機構(5)によって互いに係止されている。
【0022】
具体的には、フック機構(5)は、図4に示す如くフロントキャビネット(2)のフランジ部(21)の内面に突設された爪片(51)と、バックキャビネット(3)のフランジ部(31)の端部に、前記爪片(52)の突出方向とは逆方向に突設された爪片(52)とから構成され、両爪片(51)(52)が互いに係合することにより、図3に示す如くフロントキャビネット(2)のフランジ部(21)とバックキャビネット(3)のフランジ部(31)とが互いに接合された状態で、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とが互いに係止されている。
【0023】
ここで、互いに係合する一対の爪片(51)(52)の係合方向は、フロントキャビネット(2)の前面と略平行な方向であり、互いに対向する一対のフランジ部(21)(21)の一方から他方へ向けて所定の係合深さを有している。
【0024】
尚、フック機構(5)は、筐体(1)の輪郭形状の左右の側辺部にそれぞれ3箇所、上辺部に5箇所、設けられている。例えばフック機構(5)を構成するフロントキャビネット(2)側の爪片(51)は、図5に示す如く、フロントキャビネット(2)の下側のフランジ部(21c)を挟んで左右のフランジ部(21b)に3箇所、上側のフランジ部(21a)に5箇所、それぞれフロントキャビネット(2)の中央部へ向けて突設されている。
【0025】
上記テレビジョン受像機の組立工程では、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とを互いに接合固定する作業において、先ず、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とを互いに突き合わせ、バックキャビネット(3)をフロントキャビネット(2)に向けて押圧することにより、互いに対応する一対の爪片(51)(52)どうしを図4の如く互いに係合させる。この際、一対の爪片(51)(52)は弾性変形によって互いに係合する。
【0026】
次に、バックキャビネット(3)の各貫通孔(72)(72)からフロントキャビネット(2)の各ボス(61)(71)へビス(6)(7)をねじ込んで、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とを互いに締結する。
この結果、フック機構(5)とビス(6)(7)による締結機構とを含む合計17箇所の連結部によって、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とが互いに強固に連結されることになる。
【0027】
上記テレビジョン受像機の組立工程では、合計17箇所の連結部について、11箇所のフック機構(5)を係合させる作業と、6本のビス(6)(7)をねじ込む作業とが必要となるが、全ての連結部をビスによる締結機構から構成した場合と比較して、工数は大幅に減少する。
又、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)の連結状態で、各フック機構(5)の単体としての係合は確実なものではないが、6本のビス(6)(7)を用いた締結によって、フック機構(5)を構成する一対の爪片(51)(51)は外力の作用に抗して係合状態に維持されるので、全体として高い結合強度が得られる。
【0028】
上記テレビジョン受像機の分解工程では、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)とを互いに分離する作業において、先ず、6本のビス(6)(7)による締結を解除する。
次に、図7に示す如く、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)を、両キャビネット(2)(3)の上辺部の近傍を回転軸として、両キャビネット(2)(3)の下辺部が互いに離間する方向へ押し開く。
【0029】
これによって、先ず、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)の側辺部に設けられている複数のフック機構(5)が、一対の爪片(51)(52)の係合をそれぞれの弾性変形によって解除する方向へ力を受けて、両キャビネット(2)(3)の下辺部に近いフック機構(5)から順次、連鎖的に一対の爪片(51)(52)の係合が解除されることになる。
【0030】
この過程で、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)の上辺部に設けられている複数のフック機構(5)は、両キャビネット(2)(3)の開き動作に伴って徐々に係合深さが浅くなり、最終的に図8の如く一対の爪片(51)(52)の係合が解除されることになる。
【0031】
この結果、全てのフック機構(5)の係合が解除されて、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)の連結が解除され、両キャビネット(2)(3)は互いに分離されることになる。
【0032】
上記テレビジョン受像機の分解工程では、合計17箇所の連結部について、6本のビス(6)(7)を取り外す作業と、11箇所のフック機構(5)の係合を解除する作業とが必要となるが、全ての連結部をビスによる締結機構から構成した場合と比較して、工数は大幅に減少する。
特に、図7に示す如く、フロントキャビネット(2)とバックキャビネット(3)の上辺部を中心軸として、両キャビネット(2)(3)を押し開く過程で、両側辺部の各フック機構(5)は、一対の爪片(51)(52)の係合方向に対してずれた方向の力を受けて、容易に係合が解除されるので、フック機構(5)の係合を解除する作業は簡易なものとなる。
【0033】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、ビス(6)(7)を用いた締結機構とフック機構(5)の数や位置は、上記実施形態に限定されることはない。又、筐体(1)の上辺部のビス(7)を用いた締結機構は省略することが可能である。
【0034】
又、フック機構(5)の構成は、図4の如く一対の爪片(51)(52)が互いに係合するものに限らず、係合部と被係合部とが係脱可能に係合する種々の構成を採用することが出来る。
更に又、本発明は、テレビジョン受像機に限らず、フロントキャビネットとバックキャビネットからなる筐体を具えた種々の電子機器に実施することが出来る。
【符号の説明】
【0035】
(1) 筐体
(2) フロントキャビネット
(21) フランジ部
(3) バックキャビネット
(31) フランジ部
(4) ディスプレイ
(5) フック機構
(51) 爪片
(52) 爪片
(6) ビス
(61) ボス
(62) 貫通孔
(7) ビス
(71) ボス
(72) 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントキャビネットとバックキャビネットとを互いに接合してなる筐体を具えた電子機器において、
筐体を構成するフロントキャビネットとバックキャビネットとは、筐体の外周部の複数箇所に設けた複数の連結部により互いに連結され、該複数の連結部の内、少なくとも1つの連結部は、ビスを用いた締結機構によって構成され、他の複数の連結部は、一方のキャビネットに形成した係合部と他方のキャビネットに形成した被係合部とを互いに係脱可能に係合させたフック機構によって構成されていることを特徴とする電子機器の筐体構造。
【請求項2】
フロントキャビネットとバックキャビネットはそれぞれ略四角形の輪郭形状を有し、筐体の輪郭形状を規定する4辺の内、1辺に対しては、1或いは複数の締結機構のみが設けられ、他の3辺に対しては、それぞれ1或いは複数のフック機構が設けられている請求項1に記載の電子機器の筐体構造。
【請求項3】
前記1或いは複数の締結機構のみが設けられている1辺を第1辺とし、該第1辺と対向する他の1辺を第2辺として、該第2辺に対しては、前記1或いは複数のフック機構と共に、1つの締結機構が設けられている請求項2に記載の電子機器の筐体構造。
【請求項4】
前記1或いは複数の締結機構のみが設けられている1辺に対向する他の1辺に対して設けられている1或いは複数のフック機構はそれぞれ、該他の1辺の近傍を回転軸として両キャビネットの開き動作を許容し得る係合状態にて、係合部と被係合部とが互いに係合している請求項2又は請求項3に記載の電子機器の筐体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−16574(P2013−16574A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147179(P2011−147179)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】