説明

電子機器を車室内に固定するための支持構造及びそれを用いた電子機器

【課題】 各種の電子機器をダッシュボード上などに取り付ける際に、その設置高さを低く抑えることのできる電子機器の支持構造を提供する
【解決手段】 電子機器を着脱自在に装着するクレードル本体11を台座部12上に回転移動可能に取り付ける。台座部は、車両の取付面に固定する基板部12aの上面に設けた上方に膨らむ半球面部12b(頂点に開口部12c)を備える。クレードル本体11は、半球面部の外形状に符合する内形状を持つ球面受け部22aを備える。半球面部の上に前記球面受け部を被せた状態で、その半球面部の下面側に、留め具17を装着するとともに、止めネジ16にて留め具と球面受け部を締結することで、両者間で半球面部を所望の力で挟み込んで固定する。基板下面には、孔部14a付きの面ファスナー14を貼付ける。止めネジは孔部から露出するので、締めたり緩めたりできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を車室内に固定するための支持構造及びそれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に装備する車載機器にあっては、工場出荷時等に予めダッシュパネルの該当部位に組み付けしておくものもあるが、オプション装備のためのアフターマーケット商品の場合はダッシュパネルに組み付け部位を確保できないことがほとんどである。そのため、そのような車載機器の多くは、運転者が操作する都合からダッシュボード上に固定する配置を採ることが多い。例えばナビゲーション装置などの表示パネルを有する車載機器は、運転者の操作性はもちろん、前方の視認性も良好に得るため、ダッシュボードの上面で運転の妨げにならない位置を選ぶことになる。さらに、たとえば表示装置を備えた車載機器では、運転者が表示画面を見やすくなるように向きを調整したいという要請がある。そのため、車載機器の姿勢を変更可能な車載機器用支持具を介して当該車載機器をダッシュボード上等に設置することがある。
【0003】
この種の車載機器用支持具としては、たとえば特許文献1に開示された技術がある。この特許文献1に開示された発明は、ダッシュボードに取り付ける台座[21]と、その台座[21]の上面に回転可能に取り付けられ、車載機器を取り付けるための取付部材[22]と、その台座[21]と取付部材[22]を固定する操作ネジ[23]及び止めネジ[24]と、を備え、台座[21]は、平板状の基板部[21a]の上面に設けた半球面部[21b]の頂点部分に開口部[21c]を設ける。取付部材は、帯板[22a]の下面に半球面部の符合する内形状を持つ球面受け部[22b]の頂点部分に貫通孔[22f]を設ける。操作ネジは、操作ハンドル部[23a]の下面に雄ネジ部[23b]を設ける。止めネジは、半球面部の内周面に符合する基部[24a]の上面に設けた軸部[24b]に雄ネジ部と符合する雌ネジ部[24c]を設ける。係る構成を取ることで、任意の姿勢で車載機器を固定でき、簡単な構成で小型化を図ることができるという効果を奏する。なお、上記の括弧中の符号は、特許文献1において用いられた符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−166756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、台座側に取り付けネジ部分を配置すると、以下に示す問題を生じる。すなわち、台座と車載機器を取り付けるための取付部材との間に、それらを固定するための操作ネジ及び止めネジを配置しているため、少なくとも、操作ネジの分だけ台座と取付部材との間に空間が空き、車載機器の設置位置が高くなる。例えば、特許文献1に開示された車載機器のように比較的扁平なものは係る構成を採ってもさほど影響はないが、たとえばPND(Personal Navigation Device)と称される簡易タイプのポータブル型カーナビゲーション装置や、ポータブルテレビ,DVDプレーヤーその他のポータブルデバイス等の機器、周囲の目標物や交通事故多発地帯など運転に有益な情報を提供する報知装置など、比較的大きな表示画面を備えた車載機器の場合、その設置位置が高くなると、通常の運転を行う際の前方視界の確保で邪魔になるおそれがある。特に、最近、この種の車載機器においても表示画面が大型化してきているので、係る問題は今後顕著に生じるおそれがある。そこで、各種の電子機器をダッシュボード上などに取り付ける際に、その設置高さを低く抑えたいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明に係る車載機器用の固定具は、(1)車両の取付面に固定する基板部と、その基板部の上面に設けた上方に膨らむ半球面部とを備えるとともに、その半球面部の頂点部分に開口部を有する台座部と、前記半球面部の外形状に符合する内形状を持つ球面受け部を底面に備えると共に、その球面受け部の頂点部分にネジ部を有し、前記台座部の上面に移動可能に取り付けられるケース本体と、を備える。そして、前記ケース本体は、電子機器自体あるいは電子機器を取り付けるための保持部であり、前記半球面部の上に前記球面受け部を被せた状態で、その半球面部の下面側に、前記半球面部の内周面に符合する外周面を有する基部と、その基部の上面に上方に突出する軸部とを備えた留め具を装着するとともに、その軸部を前記開口部を貫通して前記球面受け部に設けたネジ部に対向させ、そのネジ部に締結する止めネジにて連結することで、その留め具と球面受け部間で半球面部を所望の力で挟み込んで固定するようにした。
【0007】
ケース本体は、実施形態ではクレードル本体11に対応するが、電子機器自体でもよい。半球面部と球面受け部とからなるボールジョイントのような取り付け部分(止めネジとネジ部の締結部分)をケース本体側の内部に配置するとともに、留め具・止めネジを台座部の下方から装着し、止めネジを締めたり緩めたりできるので、ケース本体の底面と台座部の基板部との間の間隔を狭くすることができ、ケース本体の底面位置を低くすることができる。その結果、ケース本体或いはそれに取り付ける電子機器の設置位置を低くでき、前方の視認性が向上する。
【0008】
(2)前記基板部の下面には、前記取付面に対して着脱自在に固定するための固定シートを備え、その固定シートには孔部を設け、その孔部を介して前記止めネジのネジ頭が露出するようにするとよい。このようにすると、ケース本体(電子機器)をダッシュボード等の車両の取付面に取り付けた後でも、そこから取り外すと、孔部を介してネジ頭が露出するので、簡単に止めネジを緩め、ケース本体と台座部との相対位置関係を移動させ、所望の位置にて止めネジを締めることで台座部ひいては車両の取付面に対するケース本体の姿勢を容易に変更できる。固定シートは、例えば面ファスナーとすると良い。
【0009】
(3)前記ケース本体は、前記球面受け部が形成された底ケースと、その底ケースの上方を覆うケース部(実施形態では、前ケース20,後ケース21)とを備え、前記底ケースの上面側に回路基板を配置すると共に、その回路基板は前記球面受け部を避ける形状とするとよい。ケース本体の底面側の内部空間は、球面受け部が入り込んでデットスペースとなるが、その球面受け部と干渉しないように底面側に回路基板を配置できるので、空間の有効利用できる。
【0010】
(4)前記回路基板には、電源コネクタを設け、その電源コネクタは、前記ケース本体の側面に露出するようにするとよい。電源コネクタは、車両のシガーソケット等の車両側のバッテリーに接続する接続ケーブルを装着することができる。これにより、車両側から電力供給を受けることができ、回路基板その他のケース本体に設けた電子回路・機器の電源供給を受けることができる。
【0011】
(5)前記ケース部は、断面略L字型に構成され、そのケース部の起立した空間部内にメイン基板が実装され、そのメイン基板と前記回路基板とがフレキシブルケーブルで接続されるようにするとよい。ケース本体内の空間内に基板を効率よく配置することができる。
【0012】
(6)前記空間部に、前記メイン基板と平行にマイクロ波受信機を備えるとよい。マイクロ波を受信する機能をケース本体内に効率的に組み込むことができる。ケース本体が、車載機器(電子機器)の一部を構成することができる。特に、電子機器が、ケース本体に対して着脱可能にし、ケース本体から取り外して携帯することができるようなものの場合、マイクロ波を検出し、目標物や交通事故多発地帯などの運転時に有益な情報を提供する車載機器の一部を構成することができる。そして、係る情報は、運転時に必要であるが、ケース本体から取り外し、車外に持ち出して携帯しているときには不要な機能である。そこで、電子機器を構成する機能の内、車載時のみに有効の機能を実現する部品をケース本体内に組み込むことで、携帯時の電子機器の小型・軽量化を図ることができる。マイクロ波受信機で受信した信号は、ケース本体に装着した電子機器内のマイコン等の制御部を利用することで、ケース本体も車載時の電子機器の一部となり、ケース本体を含めた電子機器として見た場合の部品の有効配置ができ、全体での小型化も図れる。
【0013】
(7)本発明の電子機器は、(1)から(6)のいずれかに記載の支持構造を備えて構成することである。
【発明の効果】
【0014】
各種の電子機器をダッシュボード上などに取り付ける際に、その設置高さを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】その分解斜視図である。
【図3】下方から見た斜視図である。
【図4】側面図である。
【図5】底面図である。
【図6】前ケース並びに後ケースと、クレードル本体の一部の部品を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図7】前ケース並びに後ケースと、クレードル本体の一部の部品を取り除いた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る車載機器用固定具の好適な一実施形態を示す斜視図であり、図2はその分解斜視図であり、図3は底面側から見た斜視図(ダッシュボードに取り付ける面ファスナーを取り除いた図)である。ここで保持対象となる電子機器は、例えば持ち運び可能な携帯型のカーナビゲーション装置(PND)や、車両速度測定装置から出射されるマイクロ波や、カーロケーターシステム,スピード取り締まり連絡無線などに割り当てられる電波などの特定周波数帯域の電波を受信して目標電波の受信時に音や光等の表示による報知を行う電波信号報知装置や、GPS受信機等にて検出した現在位置情報に基づいてその周囲に存在する予め記録した検出対象の目標物に関する情報・事故多発地帯や交通取締り情報などのより注意を持って安全に運転するための交通安全情報・ランドマークや運転に有益な各種の情報を報知するドライブ情報報知装置などがある。そして、それら各種装置は、それぞれの機能を実現する単独の装置としても構成されるし、複数の機能が組み込まれた装置としても構成される。さらに、本実施形態では、固定具から取り外して携帯できることから、車外での携帯時に有用な機能を備えることもできる。そして本実施形態の支持構造(支持具)は、この種の電子機器を着脱可能に保持し、車両のダッシュボード上に固定するクレードル10である。
【0017】
このクレードル10は、図示省略する略矩形状のケースからなる電子機器機本体を保持するクレードル本体11と、車室内の所定の位置(ダッシュボード等)において、クレードル本体11を任意の姿勢で指示する台座部12と、を備えている。本実施形態では、クレードル本体11を台座部12に対して所定の角度範囲内で回転させ、任意の姿勢を採ることができるようにしており、具体的な構成は以下の通りである。
【0018】
台座部12は、偏平な平面略矩形状の基板部12aの上面中央に、上方に膨らむ半球面部12bを設けた構造とする。その半球面部12bの中央には、比較的大きな貫通孔である開口部12cが形成される。また、基板部12aの下面には、平面正方形状の凹部12dが形成される。また、基板部12aは、凹部12dの寸法形状とほぼ等しい略矩形状で、一辺のみ若干外側に膨らんだ曲率半径の大きい円弧状に形成している。この曲率半径は、凹部12dの中心から頂点までの距離よりも長い値に設定している。
【0019】
凹部12dには、面ファスナー14等の着脱可能な固定シートを取り付ける。つまり、雄型或いは雌型の面ファスナー14を凹部12dに接着し、それと対になる雌型或いは雄型の面ファスナーをダッシュボード等の所望の位置に貼付ける。これにより、台座部12を面ファスナーを貼付けたダッシュボード上に対して着脱自在に固定できる。また、本実施形態では、接着部材を効率よく使用するため、接着部材の形状は、矩形状(実施形態では正方形だが長方形でも良い)としている。つまり、通常、接着部材は、より大きな寸法形状のシートから所望の寸法に切り出して形成されるため、接着部材の形状を円形にした場合には、そのシートから無駄に捨てる部分が発生してしまう。そこで、本実施形態では、接着部材の形状を矩形状にした。なお、台座部12をダッシュボード上に固定するための固定シートは、面ファスナーに限ることはなく、ゲル状の粘着シート等でも良い。
【0020】
一方、クレードル本体11は、起立した扁平な矩形状の本体部11aの下端に、前方側に突出された受け部11bを配置した構成となり、図4等に示すようにクレードル本体11 は、略L字型となる。受け部11bの上面中央には、コネクタ15が露出状態で設けられている。クレードル本体11のケースは、断面略L字型の前ケース20と、矩形状の後ケースと、それら前ケース20,後ケース21の下方を閉塞する底ケース22とを備え、それら3つのケースを突き合わせることで構成される。
【0021】
そして、この底ケース22に、上記の半球面部12bの外形状に略符合する内形状を持つ球面受け部22aを形成する。これにより、底ケース22(球面受け部22a)を台座部12(半球面部12b)の上にかぶせるように配置すると半球面部12bの外周面と、球面受け部22aの内周面とが符合し、両者はその接触する球面に沿って相対的に任意の方向に移動することができる。よって、台座部12を水平に置いた状態で固定したと仮定すると、底ケース22ひいてはクレードル本体11は、半球面部12bの頂点を中心に水平面内で360度回転させることができるし、任意の方向に傾けることができ、それら回転と傾きとを適宜組み合わせることで、そのクレードル本体11に取り付けた車載機器を所望の姿勢にすることができる。つまり、車載機器を水平にしたり、上下・左右方向に所定角度傾けたりすることができる。その結果、例えばダッシュボードが左右方向や前後方向に水平でなく傾いている場合であっても、車載機器の表示画面等の報知機能をドライバーの方に向ける(正対させる)ことが容易にできる。これらのことから、特に表示装置を有する車載機器用の支持具として好適に適用できる。
【0022】
そして、底ケース22(クレードル本体11)と台座部12間の固定は、半球面部12bの上に球面受け部22aを被せた状態で、半球面部12bの下面より留め具17を装着し、留め具17と球面受け部22aとを止めネジ16にて連結することで、その留め具17と球面受け部22a間で半球面部12bを所望の力で挟み込むことで行う。係る処理を行うための具体的な構造は、以下の通りである。
【0023】
まず底ケース22に設けた球面受け部22aは、その上面の頂点部に、上方に突出する円筒状の首部22bを一体的に形成している。そして、首部22bの内周面の寸法形状は、上方部位は細径でその内周面には雌ネジ部が形成され、下方部位は太径(上方部位に対して)で、その内周面に平坦面な回り止め部が形成されている。
【0024】
留め具17は、台座部12の半球面部12bの内周面に符合する外周面を有する基部17aと、その基部17aの上面の頂点に上方に突出するように設けられる軸部17bと、を有する。軸部17bには、その外周面の上方所定位置に、平面からなる回り止め部17cが、平行に2カ所設けられている。さらに、留め具17には、その中心線に上下に貫通する貫通孔が設けられている。そして、この軸部17bは、球面受け部22aの首部22bの貫通孔内に挿入可能となり、挿入した状態では、軸部17bに設けた回り止め部17cと、首部22bの貫通孔の下方部位の内周面に設けた回り止め部が接触し、底ケース22(首部22b)と留め具17との相対的な回転移動が抑止される。ただし、軸方向(上下方向)には移動可能となる。さらに、軸部17bの外形寸法に比べて、台座部21の開口部21cの内径寸法を十分に大きく設定しているため、軸部17bは開口部21c内を移動可能となる。つまり、留め具17の基部17aを台座部12の半球面部12bの内周面に接触させた状態で、その内周面に沿って留め具17を移動させることができる。
【0025】
また、留め具17に設けた貫通孔に対し、その下方から止めネジ16を挿入する。すると、その止めネジ16の先端の雄ネジ部16aは、留め具17の軸17bの上端からさらに上方に突出し、底ケース22に設けた首部22bの上方部位の内周面に形成した雌ネジと締結する。そして、強く締結することで、止めネジ16ひいては留め具17を上昇移動させ、留め具17の基部17aの上面と、底ケース22の球面受け部22aの内周面との距離を狭めることができる。これにより、両者の間に配置された台座部12の半球面部12bは、留め具17と球面受け部22aとにより所望の圧力で挟み込まれ、台座部12と底ケース22との相対的な移動が抑止されて固定される。一方、止めネジ16を緩めると、係る半球面部12bに対する締め付け力が弱まり、半球面部12bの上面に沿って球面受け部22a間が移動可能となる。
【0026】
また、止めネジ16は、外部に露出しないため、金属の切削部品により構成できる。特許文献1の構造では、樹脂とネジの複合部品にする必要があったが、それに比べると、構成が簡略化でき、コストの削減が図れる。
【0027】
そして、本実施形態では、面ファスナー14の中央部位に孔部14aを形成している。 穴のサイズは、止めネジ16の調整(正逆回転)が可能なサイズの大きさとする。このように孔部14aを形成しておくことで、図5に示すように、面ファスナー14を台座部12の底面の凹部12d内に貼り付けたとしても、その孔部14aから止めネジ16が露出する。従って、たとえば、係る面ファスナー14を、すでにダッシュボード上に貼り付けた別の面ファスナーと接合し、所定の姿勢でクレードル本体11を、ダッシュボード上に固定していたとしても、面ファスナー14を、ダッシュボード上の面ファスナーから剥がすことで、止めネジ16(ネジ頭)が露出するので、ドライバーその他の工具等により、止めネジを緩めて台座部12と底ケース22との相対的な移動を可能にして所望の姿勢にし、その後止めネジを締めることで係る相対的な移動を抑止し、所望の姿勢に保持できる。よって、取り付け後であっても簡単に姿勢の変更・調整ができる。さらに、適切な締め強度(半固定状態)とすれば、一対の面ファスナーを引きはがして止めネジを露出させることなく、クレードル本体11を上下左右に動かして調整できるとともに、その位置で固定させることもできる。
【0028】
なお、ダッシュボード上に貼り付ける面ファスナーは、孔部など設けることなく矩形状のシートのままとしても良いし、面ファスナー14と同様に孔部を設けても良い。ただし、ダッシュボードに装着する面ファスナーにも孔部を設けておくと、それらの孔部が目印となるので面ファスナー同士の位置あわせがしやすい。よって、貼り付けた場合の相互の位置がずれて面ファスナーの周辺部分が露出してほこりが付着するなどの問題を抑えることができる。
【0029】
係る構成にすると、底ケース22に設けた球面受け部22aは、クレードル本体11の内部空間内に存在することになり、しかも、球面受け部22aの上端に設けた首部22bに雌ネジ部を設け、止めネジ16の雄ネジ部16aと締結して固定するように、係るネジ部の締結は、台座部12(半球面部12b)の下面側より行うようにしたので、図4等から明らかなとおり、特許文献1等の従来のものに比べて、クレードル本体11の下面と、台座部12の上面との距離を狭めることができ、クレードル本体11ひいてはこのクレードル本体11に取り付ける電子機器の本体(前面に表示部を有する)の設置位置を低い位置にすることができる。よって、ユーザにとって見やすく、かつ、運転時に前方視界の邪魔にならない。さらに、特許文献1のようにネジを締めたり緩めたりするための調整ネジが外側に露出しないので、見た目がすっきりする。クレードル本体側に球面部の受けをつけたため、特許文献1のものよりも部品を1個削減することができる。
【0030】
特許文献1のように台座部側に取り付けネジ部分を配置すると、調整ネジを避けるためクレードル本体を調整ネジの上の位置に配置するか、クレードル本体の背面側を切り欠くなどする必要がある。さらに電子機器の本体の下側(正面から見ると当該本体で隠れない部分)に取り付けネジ部分を配置すると、この部分の厚さが厚くなってしまい電子機器本体の表示部の位置も高い位置になってしまうが、本実施形態の構造にすることで、係る問題は生じない。
【0031】
すなわち、半球面部12bと球面受け部22aとからなるボールジョイントの取り付けネジ部分(首部22bの雌ネジ部と、止めネジを16の雄ネジ部16aの締結部分)をクレードル本体11側の内部にし、クレードル本体11に取り付ける電子機器本体の後ろ側(正面から見ると電子機器本体で隠れる部分)に当該取り付けネジ部分を配置したので、正面から見た状態でのクレードルの上下方向の厚さ(電子機器本体の下部に出るクレードルの幅ないし、クレードル全体の高さ)を薄くすることができる。
【0032】
また、本実施形態のクレードルは、電子機器を保持する機能のみならず、電子機器の機能を実現するための電子回路・部品も実装している。すなわち、ナビゲーション装置などの携帯機能な電子機器は、クレードル10に取り付けて車両に搭載した場合には通常のカーナビゲーションとして機能し、クレードル10から取り外して町中を持ち歩いた場合にはハンディナビゲーションとして機能する。一方、車両速度測定装置から出射されるマイクロ波を検出したり、カーロケーターシステム等で用いられる電波を検出したりして報知する機能や、ドライブカメラのように交通事故発生前後の状況を撮影して記録する機能は、クレードル10から取り外して携帯している際には不要な機能である。そこで、本実施形態では、係る不要な機能のためのみに用いる電子回路・部品をクレードル本体11内に実装することで、携帯する電子機器の小型・軽量化を図ることができるようにしている。
【0033】
具体的には、本実施形態では、マイクロ波を受信するマイクロ波受信機に関連する装置をクレードル本体11に実装した。また、クレードル本体11内に電源回路を備え、このクレードル本体11に装着する電子機器に対する充電を行えるようにしている。そして、コネクタ15を備えた接続基板24は、底ケース22内に配置している。
【0034】
このとき、接続基板24には、その一辺に中心に向かって切り欠いた凹状切り欠き部24aを設けている。この凹状切り欠き部24aは、球面受け部12bを避ける形状としている。これにより、接続基板24は、底ケース22に沿うように平行に配置しつつ、球面受け部22aに干渉しないのでその球面受け部22aの上面よりも低い位置で配置できるので、底ケース22の厚さを薄くしつつ接続基板24の面積も確保することができ、デッドスペースの有効利用ができる。
【0035】
この接続基板24は、電子機器本体と接続するためのコネクタ15と、電源コネクタ26を備えている。電源コネクタ26は、一端が車両のシガーソケットに接続される電源ケーブルの他端を接続するコネクタである。電源コネクタ26経由でシガーソケットから供給された電力は、接続基板24内の回路・コネクタ15を介して電子機器本体に供給される。そして、電子機器本体内の回路は、クレードル本体11に取り付けられて車載機器として動作しているときは、係る電力供給を受けて動作するとともに、内蔵する充電池に充電する。そして、クレードル本体11から取り外した場合には、係る充電池を電源として動作する。
【0036】
また、メイン基板25並びにマイクロ波受信回路基板27は、後ケース21に沿うように起立配置し、これら両基板25,27同士は平行で、接続基板24とは90度の角度に配置している。両基板25,27あるいはいずれか一方の基板と、接続基板24とはフレキシブルケーブル28で接続される。本実施形態では、フレキシブルケーブル28は、メイン基板25と接続されている。なお、図6,図7は、メイン基板25の図示を省略して描画しているため、コネクタ28の先端が宙に浮いたように見えているが、このコネクタ28の先端が、メイン基板25(裏面側)に設けられたコネクタに接続される。フレキシブルケーブル28が一方の基板(本実施形態では、「メイン基板25」)と接続された場合、両基板25,27同士は接続端子ピン・接続コネクタ等にて直接接続される。両基板25,27は、平行で近接は位置しているので、係る簡単な接続構造で連結できる。そして、マイクロ波受信回路基板27には、マイクロ波受信機(アンテナ)ユニット29を設ける。
【0037】
このマイクロ波受信機ユニット29/マイクロ波受信回路基板27でマイクロ波を受信すると、その受信信号が、接続基板24を経由してクレードル本体11に接続された電子機器本体に送られ、そこにおいて所定の処理がなされ、マイクロ波受信に伴う警報などが行われる。マイクロ波受信機ユニット29としたが、その他の無線・電波を受信する機器を実装しても良い。
【0038】
このように本実施形態では、支持具となるクレードルは、車載機器(電子機器)の一部を構成することにしているが、本発明はこれに限ることはなく、単純に支持具としての機能のみを備えたものでも良い。また、これとは逆に、電子機器自体に本発明の支持具の構造を組み込んでも良い。つまり、電子機器の底面に、内側に窪む球面受け部22a(首部22b)を設けてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態のように孔部14aを備えた面ファスナー14等の固定部材を用いて機器(支持具)を固定する場合、機器の姿勢を調整する機構として、上述の実施形態にとらわれることはなく、各種の調整部を備えたものに適用できる。その場合の面ファスナー等の固定部材は、機器を支持する支持具の底面に設けられ、車室内の取付面に対して着脱自在に前記支持具を固定するための固定部材であり、前記支持具の支持状態を調整する調整部を露出させる孔部を設けた構造となる。この場合に、調整部の一例が、上述した実施形態のものとなるが、その他の構造でももちろん良い。また、調整部の露出する部分の構造は、ネジ頭、つまみなどとすることができる。また、調整部の機能としては、支持具の可動部の可動状態を調整するものとすることができる。また、電子機器が表示部を有し、調整部は表示部の画面の方向を調整するためのものとすることができる。さらに、固定部材は、孔部が設けられていれば、面ファスナーに限ることはなく、たとえば、上述した実施形態・変形例でも記載した粘着シートなどの他、各種の部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 クレードル
11 クレードル本体
12 台座部
12a 基板部
12b 半球面部
12c 開口部
12d 凹部
14 面ファスナー
14a 孔部
20 前ケース
21 前ケース
22 底ケース
22a 半球面部
22b 首部
24 接続基板
25 メイン基板
26 電源コネクタ
27 マイクロ波受信回路基板
28 フレキシブルケーブル
29 マイクロ波受信機ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の取付面に固定する基板部と、その基板部の上面に設けた上方に膨らむ半球面部とを備えるとともに、その半球面部の頂点部分に開口部を有する台座部と、
前記半球面部の外形状に符合する内形状を持つ球面受け部を底面に備えると共に、その球面受け部の頂点部分にネジ部を有し、前記台座部の上面に移動可能に取り付けられるケース本体と、を備え、
前記ケース本体は、電子機器自体あるいは電子機器を取り付けるための保持部であり、
前記半球面部の上に前記球面受け部を被せた状態で、その半球面部の下面側に、前記半球面部の内周面に符合する外周面を有する基部と、その基部の上面に上方に突出する軸部とを備えた留め具を装着するとともに、その軸部を前記開口部を貫通して前記球面受け部に設けたネジ部に対向させ、そのネジ部に締結する止めネジにて連結することで、その留め具と球面受け部間で半球面部を所望の力で挟み込んで固定することを特徴とする電子機器を車室内に固定するための支持構造。
【請求項2】
前記基板部の下面には、前記取付面に対して着脱自在に固定するための面ファスナーを備え、
その面ファスナーには孔部を設け、その孔部を介して前記止めネジのネジ頭が露出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電子機器を車室内に固定するための支持構造。
【請求項3】
前記ケース本体は、前記球面受け部が形成された底ケースと、その底ケースの上方を覆うケース部とを備え、
前記底ケースの上面側に回路基板を配置すると共に、その回路基板は前記球面受け部を避ける形状としたことを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器を車室内に固定するための支持構造。
【請求項4】
前記回路基板には、電源コネクタを設け、
その電源コネクタは、前記ケース本体の側面に露出することを特徴とする請求項3に記載の電子機器を車室内に固定するための支持構造。
【請求項5】
前記ケース部は、断面略L字型に構成され、
そのケース部の起立した空間部内にメイン基板が実装され、そのメイン基板と前記回路基板とがフレキシブルケーブルで接続されることを特徴とする特徴とする請求項3または4に記載の車載器用の固定具
【請求項6】
前記空間部に、前記メイン基板と平行にマイクロ波受信機を備えたことを特徴とする請求項5に記載の電子機器を車室内に固定するための支持構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の支持構造を備えた電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−156996(P2011−156996A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21071(P2010−21071)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】