説明

電子機器収納ラック装置及び方法

【課題】 電子機器収納ラックが設置される環境に依存することなく、効率的に内部の電子機器の冷却を行う電子機器収納ラック装置及び方法を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る電子機器収納ラック装置1は、底板10、天板11、4本のフレーム12からなる躯体と、その躯体の内部の最下部に下部ファンユニット14L、最上部に上部ファンユニット14Hを、下部ファンユニット14Lの直上に熱交換器13を、上部ファンユニット14Hの直下に熱交換器13を備え、これらの熱交換器13の間には、電子部品を有する基板をそれぞれ縦に収納した筐体15とその筺体15の間に熱交換器13が挟まれるように載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータやネットワーク機器等の電子機器を収納する電子機器収納ラックに関し、特に、電子部品を有する基板をそれぞれ縦に収納した筐体を内部に載置する電子機器収納ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器を収納するラックにおいては、電子機器の高密度化や設置スペースの縮小による小型化が進められ、電子機器の温度上昇はシステムトラブルに直結するため、ラック内部の電子機器の発熱問題に対処することがますます重要になってきており、より効率的な冷却手法が要請されている。一般的に、この発熱問題を解決するための冷却手法としては、電子回路部品の低消費電力化だけでなく、ラック内の強制的な空冷構造が挙げられる。
【0003】
これに関する先行技術として、特許文献1〜3がある。
特許文献1には、筐体内の上下方向にそれぞれプリント基板を収納した複数のラックを備え、筐体の下部に設けた吸気ダクトから吸入した外気をラック内に通過させてプリント基板を冷却し、プリント基板によって加熱された空気を筐体の上部に設けた排気ダクトを介して外部に排出する通風冷却手段を有する電子機器のラック構造が開示されている。
また、特許文献2には、電子装置を収納した筐体と、筐体の前面下方に設けられた吸気口と、筐体の下方に設けられ、吸気口から吸入した低温の空気を筐体の奥の方に案内する下部誘導板と、筐体の上方に高温の空気を筐体の前面に案内する上部誘導板と、筐体の前面上方に設けられた排気口などにより構成され、ロッカー前面において、外部の空気を吸入し、高温の空気を排出する冷却構造を備えたロッカー(ラック)が開示されている。
また、特許文献3には、発熱部品を実装した発熱ユニットと、発熱ユニットを冷却するファンを上面に実装したファンユニットとを上下に隣接させて取り付けるラックの実装構造において、ファンユニットの側面及び背面の少なくとも一面に空気の吸気口を有し、ファンユニットの下に、発熱部品を実装した別の発熱ユニットまたは非発熱部品を実装した非発熱ユニットを隣接させて取り付けるようにしたラックの実装構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−283960号公報
【特許文献2】特開2003−338696号公報
【特許文献3】特開2007−81194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のいずれの冷却手法も、例えば、ラックの下部や前方下部にある外気吸入口を通じて、ラック外部から吸入する空気は冷気であることを前提としている。
しかし、最近は、コンピュータやネットワーク機器等の電子機器の密度がさらに増大し、高発熱化、高熱密度化に対する対応がますます必要になってきている中、電子機器を設置する電算室の室内全体に対する空気調和システムの冷却により、当該電子機器を冷却することは効率的ではないため、特に最近の環境意識の高まりから、より効率的な電子機器の冷却手法が求められている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電子機器収納ラックが設置される環境に依存することなく、効率的に内部の電子機器の冷却を行う電子機器収納ラック装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、電子部品を有する1枚または複数枚の基板をそれぞれ縦に収納した1または複数の筐体を、内部に載置する電子機器収納ラックであって、前記電子機器収納ラックの外部の空気を、前記電子機器収納ラックの内部へ取り込む第一のファンと、前記第一のファンから前記筐体へ前記空気を通過させ、冷却する第一の熱交換器と、前記筐体を通過し前記電子部品により暖められた前記空気を通過させ、冷却する1または複数の第二の熱交換器と、前記第二の熱交換器を通過し冷却された前記空気を、前記電子機器収納ラックの外部へ排出する第二のファンとを備えることを特徴とする電子機器収納ラックが提供される。
この構成によれば、電子機器収納ラックが設置される環境に依存することなく内部の電子機器の冷却を行え、かつ、電子機器により暖められた空気を電算室等に拡散させることなく熱交換器で冷却することができ、さらにその冷却された空気で別の筺体に含まれる電子機器を冷却できるので、効率的に内部の電子機器の冷却を行う電子機器収納ラック装置を提供することが可能となる。
【0007】
また、前記第一のファンは、前記電子機器収納ラックの下部に配置され、前記外部の空気を前記電子機器収納ラックの内部へ取り込み、上方に空気を流し、前記第二の熱交換器は、前記筐体を通過し前記電子部品により暖められた前記空気を上方へ通過させ、前記第二のファンは、前記電子機器収納ラックの上部に配置され、前記第二の熱交換器を通過し冷却された前記空気を、前記電子機器収納ラックの外部へ排出することを特徴としてもよい。
この構成によれば、電子機器により暖められた空気を電算室等に拡散させることなく直上の熱交換器で冷却することができ、その冷却された空気でその熱交換器の直上にある筺体に含まれる電子機器を冷却できるので、さらに効率的に内部の電子機器の冷却を行う電子機器収納ラック装置を提供することが可能となる。
【0008】
また、前記第一及び第二の熱交換器のそれぞれに冷却媒体を供給する供給管と、前記第一及び第二の熱交換器のそれぞれから熱を吸収した冷却媒体を排出する排出管とをさらに備えることを特徴としてもよい。
この構成によれば、電子機器を有するそれぞれの筐体の発熱量に対応して、それぞれの熱交換器に適した冷却媒体の量を供給することができ、効率的に電子機器の冷却を行うことができる。
【0009】
また、前記第一及び第二の熱交換器に冷却媒体を供給するための供給管と、前記第一及び第二の熱交換器から熱を吸収した冷却媒体を排出するための排出管と、前記供給管とそれぞれの前記熱交換器とを結合し、前記熱交換器に前記冷却媒体を供給する管と、前記排出管とそれぞれの前記熱交換器とを結合し、前記熱交換器から前記熱を吸収した冷却媒体を排出する管と、前記熱交換器に前記冷却媒体を供給する管から前記熱交換器までの間に前記冷却媒体の流量を制御する制御弁とをさらに備えることを特徴としてもよい。
この構成によれば、電子機器を有するそれぞれの筐体の発熱量に対応して、それぞれの熱交換器に適した冷却媒体量の供給の制御を、電子機器収納ラックを設置した場所で行うことができる。
【0010】
また、前記第一のファンが前記空気を取り込む前又は取り込み冷却する前の空気の第一の温度を測定する温度測定部をさらに備えることを特徴としてもよい。
この構成によれば、吸入した外気の温度を把握でき、それに基づいて熱交換器を制御できるので、電子機器収納ラックが設置される環境に依存することなく、電子機器の冷却を行うことができる。
【0011】
また、前記第一及び第二の熱交換器は、前記空気を冷却した後の前記空気の第二の温度を測定する温度測定部を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、電子機器を有するそれぞれの筐体の発熱量に応じて、それぞれの熱交換器に対する冷却媒体量の制御が可能となるとともに、電子機器収納ラック外へ排気される空気の温度の制御が可能となり、電子機器収納ラックが設置された室内に対する空気調和システムに対して負荷を少なくする冷却手法が可能となる。
【0012】
また、前記第一の温度と前記第二の温度とが略同温度であることを特徴としてもよい。
この構成によれば、電子機器収納ラック内へ吸入した空気と、外へ排出される空気の温度がほぼ同じ温度とすることができ、電子機器収納ラックが設置された室内に対する空気調和システムに対して負荷を最小限にする冷却手法が可能となる。
なお、ここで言う略同温度とは、完全に同一の温度である必要はなく、電子機器を設置する電算室の室内の温度を制御するに当たり無視しうる程度の温度差を含むことを意味する。
【0013】
また、前記熱交換器は、水冷式熱交換器であることを特徴としてもよい。
【0014】
また、前記熱交換器は、冷媒式熱交換器であることを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明の別の観点によれば、電子部品を有する1枚または複数枚の基板をそれぞれ縦に収納した1または複数の筐体を、内部に載置する電子機器収納ラックの冷却方法であって、前記電子機器収納ラックの外部の空気を、前記電子機器収納ラックの内部へ取り込む第一の送風手段と、前記第一の送風手段から前記筐体へ前記空気を通過させ、冷却する第一の熱交換手段と、前記筐体を通過し前記電子部品により暖められた前記空気を通過させ、冷却する1または複数の第二の熱交換手段と、前記第二の熱交換器を通過し冷却された前記空気を、前記電子機器収納ラックの外部へ排出する第二の送風手段とを有する電子機器収納ラックの冷却方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、電子機器収納ラックが設置される電算室等の環境に依存することなく、効率的に内部の電子機器の冷却を行う電子機器収納ラック装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態(1対多配管)における正面図と空気の流れを示した図。
【図2】本発明の一実施形態(1対多配管)における側面図と空気の流れを示した図。
【図3】本発明の一実施形態(1対多配管)における裏面図と空気の流れを示した図。
【図4】本発明の一実施形態(1対多配管)における斜視図と空気の流れを示した図。
【図5】本発明の一実施形態(1対多配管)における上面図。
【図6】本発明の一実施形態(1対多配管)における底面図。
【図7】本発明の一実施形態におけるファンユニットを表した図。
【図8】本発明の一実施形態における熱交換器を表した図。
【図9】本発明の一実施形態(1対1配管)を示した側面図。
【図10】本発明の一実施形態における筐体の斜視図。(a)は大きな基板を収納するための筺体、(b)は小さい基板を収納するための筺体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら、本発明の各実施形態に係る装置等について説明する。
<第1実施形態>
図1は、電子機器収納ラック装置についての本実施形態における正面図に空気の流れを示した図である。この電子機器収納ラック装置1は、まず、底板10、天板11、4本のフレーム12から構成され、底板10の四隅にフレーム12が立設され、それぞれのフレーム12の上に天板11が設置され、お互いが溶接やネジ止めなどで強固に接合され、躯体をなしている。この電子機器収納ラック装置1は、さらに、その躯体の内部の最下部と最上部にそれぞれファンユニット14を(その最下部に位置するファンユニットを下部ファンユニット14Lと、その最上部に位置するファンユニットを上部ファンユニット14Hとする)、下部ファンユニット14Lの直上に熱交換器13を、上部ファンユニット14Hの直下に熱交換器13を備える。これらの熱交換器13の間には、電子部品を有する基板をそれぞれ縦に収納した筐体15とその筺体15の間に熱交換器13が挟まれるように載置される。フレーム12、熱交換器13、ファンユニット14、筺体15の高さはそれぞれ規格化されているので、適切に載置すれば高さ方向に隙間が生ずることはない。
【0019】
また、電子機器収納ラック装置1は、熱交換器13に冷却水などを供給する供給管16と熱交換器13から冷却水などを排出する排出管17を備え、床30に設けられた床開口部31を通じて、それぞれ床下空間32にある冷却水などの床下供給管と床下排出管(図示せず)に接続される。電子機器収納ラック装置1の稼働時には、冷却機(図示せず)で適切に冷却された冷却水などが床下供給管と供給管16を通って熱交換器13に供給され、熱交換器13において熱を吸収した冷却水などを排出管17と床下供給管を通って冷却機に戻され、そこでまた冷却水などが冷やされ循環する。
なお、上記冷却水などは、例えば、水および冷媒などの熱交換の媒体になりうる液体または気体である。
【0020】
床下空間32には、空気調和システム(図示せず)で適切に冷却された空気が加圧された状態にあり、床開口部31などから冷気が噴き出される。
電子機器収納ラック装置1は、そのような床開口部31の上に床開口部31を跨ぐように設置され、冷気を下部から内部へ取り入れることができる。下部ファンユニット14Lにより、その冷気をより効率よく強力に内部へ取り入れることが可能となる。
【0021】
下部ファンユニット14Lにより、電子機器収納ラック装置1内部に取り入れられた冷気は、下部ファンユニット14Lの直上にある熱交換器13によりさらに冷却される。したがって、直上の筺体15内の高密度化された電子機器から発せられる大量の熱を、空気調和システムにより冷やされた冷気よりもより冷やされた冷気で冷却できるため、より効果的に電子機器を冷却することが可能となる。または、下部ファンユニット14Lの直上にあるこの熱交換器13により、電子機器収納ラック装置1内部に取り入れられた空気が冷却されることを前提にすれば、空気調和システムにより冷却する温度を高めに設定したり、空気調和システムで冷却せず送風だけを行うことも可能となり、エネルギー消費を削減することができる。さらに、電子機器収納ラック装置1を空気調和システムのない部屋に設置することも可能となる。
【0022】
下部ファンユニット14Lの直上にある熱交換器13により冷やされた冷気は、直上の電子機器を含む筺体15に供給され、電子機器を冷却する。それに伴いその冷気は熱せられ暖気となるが、その暖気は、空気を下から吹き上げる下部ファンユニット14Lと、空気を上から吸い上げる上部ファンユニット14Hとが協働することにより、直上の熱交換器13に強制的に向かう。この際、上述のように、熱交換器13と筺体15は、下部ファンユニット14Lから上部ファンユニット14Hまで隙間なく載置されているので、暖気が電子機器収納ラック装置1外へ洩れることはなく、図1に示すような空気の流れ40のように、空気が流れる。したがって、電子機器収納ラック装置1が設置される電算室などの部屋を、この洩れ暖気により温めることはない。
【0023】
ここで、図10に示すように、筺体15の下面と上面は、スリット、網目、格子などの空気の流れを妨げない構造からなり、また、電子部品を有する基板は筺体15の内部で縦に収納されているので、筺体の下面から上面へ空気が流れやすく、下から上へ流れる空気が電子部品を冷却しやすい構造となっている。筺体15は、基板ホルダー151を備え、基板の上下の端を支持する。
【0024】
図10(a)は、電子部品を有する基板のサイズが大きい場合に、その基板を収納する筺体15Aを表わしている。筺体15Aは、熱交換器13の平面視サイズとほぼ等しい平面視サイズを有し、熱交換器13を通り抜ける空気のすべてが筺体15Aを通り抜ける。これにより、筺体15A内に収容される基板の電子機器をもれなく一様に冷却することができる。なお、筺体15Aは、電子機器収納ラック1の前面から基板を実装するように電子機器収納ラック1に配置する。
【0025】
また、図10(b)は、電子部品を有する基板のサイズが小さい場合に、その基板を収納する筺体15Bを表わしている。筺体15Bは、熱交換器13の平面視サイズのほぼ半分の平面視サイズを有し、2つの筺体15Bにおいて、一方の筺体15Bは電子機器収納ラック1の前面から基板を実装し、他方の筺体15Bは電子機器収納ラック1の背面から基板を実装するように電子機器収納ラック1に配置する。そうすると、熱交換器13を通り抜ける空気のほぼすべてが2つの筺体15Bを通り抜ける。これにより、筺体15B内に収容される基板の電子機器をもれなく一様に冷却することができる。
【0026】
直上の熱交換器13に向かった暖気は、その熱交換器13により再び冷却される。好ましくは、熱交換器13は、直下の筺体15により熱せられ上昇した温度分を冷却する。そうすれば、下から2番目以上ある筺体15も、最下段にある筺体15と同じ条件で冷却することが可能となる。このためには、それぞれの熱交換器13の上部に、すなわち、それぞれの熱交換器13により冷やされた冷気の温度を測定するための温度測定部を備えることが好ましい。なお、温度測定部は、測温抵抗体、熱電対、サーミスタなどの温度センサーからなる。
【0027】
このように、冷気が筺体内電子機器を冷却し、それにより暖気となるがその暖気を直上の熱交換器13で冷却し、またその冷気を直上の筺体に供給することを繰り返す。そして、最上部の筺体15により熱せられた暖気は、上部ファンユニット14Hの直下にある熱交換器13により冷却され、冷気となって上部ファンユニット14Hにより電子機器収納ラック装置1外へ排出される。好ましくは、上部ファンユニット14Hにより排出される空気の温度は、下部ファンユニット14Lにより吸入された空気との温度とがほぼ同一である。そうすると、電子機器収納ラック装置1が設置される電算室などの部屋に対する空気調和システムにほとんど負荷を与えることがなくなる。さらには、電算室専用の空気調和システムも不要とすることも可能となる。
【0028】
したがって、当実施形態に係る電子機器収納ラック1は、本ラックが設置される環境に依存することのなく、効率的に内部の電子機器の冷却を行うことができ、電子機器により暖められた空気を電算室等に拡散させることなく直上の熱交換器で冷却することができ、さらにその冷却された空気でその熱交換器の直上にある電子機器を冷却できるので、効率的に内部の電子機器の冷却を行う電子機器収納ラック装置を提供することが可能となる。
【0029】
図2及び図3は、供給管16と排出管17の構成をより明確に示す。供給管16と排出管17は、それぞれ一本ずつフレーム12と平行に備えられ、それぞれの熱交換器13に対して分岐し、管により接続され、冷却水などの供給と排出の役割を担う。供給管16とそれぞれの熱交換器13の間には、冷却水などの流量を制御するための制御弁18が備えられる。これにより、直下の筺体15により熱せられた空気を、その熱せられ程度により、それぞれの熱交換器13に流入する冷却水などの流量を制御することができる。
例えば、発熱量の多い電子機器を有する基板を多数含む筺体が直下にあるような熱交換器である場合には、熱せられた空気を十分に冷却できるように冷却水などを多く供給するために制御弁18を広めに開け、逆の場合は、制御弁18を絞ることもできる。このような細やかな制御ができることにより、発熱量の多い電子機器を有する基板を多数含む筺体であっても十分冷却できるようになるとともに、過冷却などによるエネルギーの無駄遣いを抑制することができる。
【0030】
なお、それぞれの熱交換器13に備えられた温度測定部により測定された温度を表示する温度表示部(図示せず)を備えてもよい。これにより、細やかな温度制御が可能となる。
さらに、電子機器収納ラック1が設置された部屋の温度、すなわち、下部ファンユニット14Lが本ラック内に取り入れる前の温度、または、取り入れた後であって最下部にある熱交換器13を通過する前の温度を基準とし、最上部までの熱交換器13の温度測定部の温度を上記のように制御することにより、電子機器収納ラック1が最初に取り入れた時の空気の温度と排出する空気の温度とを、ほぼ同一温度にすることが可能となる。
【0031】
また、この温度測定部から得られた温度に基づき、自動的に冷却水などの流量を制御するための流量制御部(図示せず)を備えてもよい。この流量制御部は、ある熱交換器13とその下の熱交換器13のそれぞれの温度を入力として、その2つの温度の差に基づいて、その差が大きい場合にはその(上の)熱交換器13への冷却水などの流量を増加させ、その差が小さい場合は流量を減少させる。これにより、温度の変化に基づく流量の制御が自動化できる。
【0032】
図4は、電子機器収納ラック装置についての本実施形態における斜視図に空気の流れを示した図である。電子機器収納ラック装置1内で、底板10の下から空気を取り入れ、筺体(図示せず)で熱せられた冷気をその直上の熱交換器13により繰り返し冷却し、上部ファンユニット14Hにより天板11の開口部11Aから排出される。天板の開口部には、図に示すようなカバーがあってもよい。
【0033】
図5は、電子機器収納ラック装置についての本実施形態における上面図である。天板11には開口部11Aがあり、上部ファンユニット14Hにより排出される空気を電子機器収納ラック装置1外へ導く。
【0034】
図6は、電子機器収納ラック装置についての本実施形態における底面図である。底板10には開口部10Aがあり、床下空間32から噴き出される冷気を下部ファンユニット14Lにより取り入れられ、電子機器収納ラック装置1内に導く。
【0035】
図7は、電子機器収納ラック装置についての本実施形態におけるファンユニット14を表した図である。個数6のファン141から構成されているが、これに限定されるものではない。また、ファン141を冗長構成にすることにより、故障時でも風量を低下させないことができる。さらに、ファンユニット14自体も冗長構成にすることにより、故障時でも風量を低下させないことができる。この場合、ファンユニット14は、電子機器収納ラック装置1の上部や下部だけでなく、中段の位置などどの位置でも設置しうる。なお、ファン141の停止や回転スピード低下時にはアラームを発する構成としてもよい。
【0036】
図8は、電子機器収納ラック装置についての本実施形態における熱交換器13を表した図である。フィン型の放熱板から構成されているが、これに限定されるものではない。それぞれの熱交換器13には、熱交換器供給管16Aと熱交換器排出管17Aが備えられ、それぞれ供給管16と排出管17とに接続される。
好ましくは、この熱交換器13を設置した場合の上面側に温度測定部が設けられる(図示せず)。これにより、熱交換器13により冷やされた冷気の温度が測定できる。
また、ファンユニット14の風量と熱交換器13の冷却水の流量や温度などと関連を持たせて制御してもよい。例えば、ファンユニット14の風量、具体的にはファン141の回転スピード制御を行い、回転スピードを速める風量を大きくする代わりに、熱交換器13への制御弁18を絞り、冷却水などの流量を小さくしてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
図9は、電子機器収納ラック装置についての本実施形態における側面図である。この電子機器収納ラック装置1Bにおいては、熱交換器13に冷却水などを供給する供給管16と熱交換器13から冷却水などを排出する排出管17とが、それぞれの熱交換器13に独立して接続される。すなわち、それぞれの熱交換器13が、床開口部31を通じて、床下空間32にある冷却水などの床下供給管と床下排出管(図示せず)に直接それぞれ接続される。電子機器収納ラック装置1Bの稼働時には、冷却機(図示せず)で適切に冷却された冷却水などが床下供給管と供給管16を通って熱交換器13に供給され、熱交換器13において熱を吸収した冷却水などを排出管17と床下供給管を通って冷却機に戻され、そこでまた冷却水などが冷やされ循環する。
【符号の説明】
【0038】
1 電子機器収納ラック
1B 電子機器収納ラック
10 底板
11 天板
11A 天板開口部
12 フレーム
13 熱交換器
14 ファンユニット
14L 下部ファンユニット
14H 上部ファンユニット
141 ファン
15 筐体
151 基板ホルダー
16 供給管
16A 熱交換器供給管
17 排出管
17A 熱交換器排出管
18 制御弁
30 床
31 床開口部
32 床下空間
40 空気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を有する1枚または複数枚の基板をそれぞれ縦に収納した1または複数の筐体を、内部に載置する電子機器収納ラックであって、
前記電子機器収納ラックの外部の空気を、前記電子機器収納ラックの内部へ取り込む第一のファンと、
前記第一のファンから前記筐体へ前記空気を通過させ、冷却する第一の熱交換器と、
前記筐体を通過し前記電子部品により暖められた前記空気を通過させ、冷却する1または複数の第二の熱交換器と、
前記第二の熱交換器を通過し冷却された前記空気を、前記電子機器収納ラックの外部へ排出する第二のファンと、
を備えることを特徴とする電子機器収納ラック。
【請求項2】
前記第一のファンは、前記電子機器収納ラックの下部に配置され、前記外部の空気を前記電子機器収納ラックの内部へ取り込み、上方に空気を流し、
前記第二の熱交換器は、前記筐体を通過し前記電子部品により暖められた前記空気を上方へ通過させ、
前記第二のファンは、前記電子機器収納ラックの上部に配置され、前記第二の熱交換器を通過し冷却された前記空気を、前記電子機器収納ラックの外部へ排出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納ラック。
【請求項3】
前記第一及び第二の熱交換器のそれぞれに冷却媒体を供給する供給管と、
前記第一及び第二の熱交換器のそれぞれから熱を吸収した冷却媒体を排出する排出管と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納ラック。
【請求項4】
前記第一及び第二の熱交換器に冷却媒体を供給するための供給管と、
前記第一及び第二の熱交換器から熱を吸収した冷却媒体を排出するための排出管と、
前記供給管とそれぞれの前記熱交換器とを結合し、前記熱交換器に前記冷却媒体を供給する管と、
前記排出管とそれぞれの前記熱交換器とを結合し、前記熱交換器から前記熱を吸収した冷却媒体を排出する管と、
前記熱交換器に前記冷却媒体を供給する管から前記熱交換器までの間に前記冷却媒体の流量を制御する制御弁と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納ラック。
【請求項5】
前記第一のファンが前記空気を取り込む前又は取り込み冷却する前の空気の第一の温度を測定する温度測定部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納ラック。
【請求項6】
前記第一及び第二の熱交換器は、前記空気を冷却した後の前記空気の第二の温度を測定する温度測定部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納ラック。
【請求項7】
前記第一の温度と前記第二の温度とが略同温度であることを特徴とする請求項5または6に記載の電子機器収納ラック。
【請求項8】
前記熱交換器は、水冷式熱交換器であることを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器収納ラック。
【請求項9】
前記熱交換器は、冷媒式熱交換器であることを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器収納ラック。
【請求項10】
電子部品を有する1枚または複数枚の基板をそれぞれ縦に収納した1または複数の筐体を、内部に載置する電子機器収納ラックの冷却方法であって、
前記電子機器収納ラックの外部の空気を、前記電子機器収納ラックの内部へ取り込む第一の送風手段と、
前記第一の送風手段から前記筐体へ前記空気を通過させ、冷却する第一の熱交換手段と、
前記筐体を通過し前記電子部品により暖められた前記空気を通過させ、冷却する1または複数の第二の熱交換手段と、
前記第二の熱交換器を通過し冷却された前記空気を、前記電子機器収納ラックの外部へ排出する第二の送風手段と、
を有する電子機器収納ラックの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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