説明

電子機器

【課題】発熱体を有するプリント基板が筐体5内に設けられた電子機器において、発熱体の冷却を効率的に行えるようにする。
【解決手段】排気ファン7が吸気口8から筐体5内に空気を吸い込み、筐体内にあるプリント基板4上の電子素子A,Bを冷却する。プリント基板4に連結された正面パネル3にも吸気口9があり、吸気口は基板4上のダクト10を介して基板上の発熱体A,Bの間に空気を導く。ダクト10からの空気供給がなければ空気の流れの下流にある電子素子Bは電子素子Aの発熱のあおりを受けるが、ダクト10からの空気により電子素子Bの冷却効果が改善され、両電子素子A,Bは同等の効率で冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子等の発熱体が搭載されたプリント基板を備えたプラグインユニットを、筐体に対して抜き差し自在となるように構成した電子機器に係り、特に前記プリント基板上の発熱体の冷却効率に優れた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子素子等の発熱体が搭載されたプリント基板が筐体内に設けられている電子機器においては、発熱体の冷却のために下記特許文献1に記載されるような構造を備えている場合がある。すなわち、発熱体を冷却するために筐体の一部に排気ファンを設け、この排気ファンと離れた筐体の他の一部に吸気口を設けておき、排気ファンの吸引力によって外の空気を吸気口から筐体内に吸い込み、この空気を筐体内でプリント基板の表面に沿って流通させて前記発熱体を冷却し、その後に排気ファンによって筐体外に排出するような構造である。特に、特許文献1においてはプリント基板に導風板が設けられており、筐体内で流通する空気がプリント基板上の所定位置にある特定の発熱体に吹き付けられて冷却が効率的に行われるようになっている。
【特許文献1】特開平6−120386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の発明では、排気ファンと吸気口による筐体内での空気の流通方向は一定に定まっており、またこの筐体に対するプリント基板の装着態様も一定に定められているので、結局筐体内ではプリント基板上の発熱体に対して冷却用の空気は常に一定の方向に流れることとなる。従って、プリント基板に設けられた導風板は、多くの空気を効率的に発熱体に導くために、筐体内で空気が流れる所定の方向に最適な配置・形状になっている。
【0004】
ところが、本願出願人が提案している電子機器の中には、発熱体としての電子素子を搭載したプリント基板を複数の筐体間で交換して共通に使用することを想定したものがある。例えば、本願出願人が提案するネットワーク測定器においては、図8及び図9に示すように、発熱体としての電子素子A,Bを搭載したプリント基板101を1つの測定用ユニット(プラグインユニット102)としており、このプラグインユニット102は、例えば図8に示すような持ち運び自由で比較的少数枚のプラグインユニット102が設定されるハンディタイプの測定器の筐体200に挿入して利用されるとともに、図9に示すような設置タイプで比較的多数枚のプラグインユニット102が設定される大型の測定器の筐体300に挿入して利用することもできる。
【0005】
ここで、ハンディタイプ及び設置タイプのいずれの測定器においても、その筐体200,300には特許文献1に記載されたような排気ファン105と空気口106,106’が設けられており、筐体200,300内の空気の流通方向は一定になっている。具体的には、両者共に筐体200,300の底面側乃至前面側の吸気口106,106’から空気を吸引して、筐体200,300の背面側にある排気ファン105で空気を筐体200,300外に排出する。
【0006】
そして、図8に示すハンディタイプの測定器は必要に応じてイーサネット(登録商標)等に接続して使用するものであり、プラグインユニット102の設置枚数が比較的少数なので、プラグインユニット102はプリント基板101が水平になるような態様で筐体200側面の開口から挿入され、縦に重ねる方向で筐体200内に設置されるようになっている。
【0007】
また、図9に示す設置タイプの測定器はネットワークに常時接続して監視を行うためのものであり、プラグインユニット102の設置枚数が比較的多数なのでプラグインユニット102はプリント基板101が垂直になるような態様で筐体300の正面の開口から挿入され、横に並べる方向で筐体300内に設置されるようになっている。
【0008】
このように、ハンディタイプの測定器と設置タイプの測定器では、筐体200,300に対するプラグインユニット102(又はプリント基板101)の差し込み方向・態様が異なるので、筐体200,300における吸気・排気の構造が実質的に同じでも、筐体200,300内に挿入されたプラグインユニット102に対する空気の流れの方向が同一にならない場合が生じうる。
【0009】
すなわち、図8及び図9の例では、プラグインユニット102のプリント基板101には発熱体となる2個の電子素子A,Bが並んで搭載されているが、図8に示すハンディタイプの場合では、図中矢印で示すように吸気口106から吸い込まれた空気はプリント基板101に沿って電子素子A、Bの順で流れるので、下流の電子素子Bは電子素子Aの発熱のあおりを受けて電子素子Aよりも熱的に厳しい条件に晒される。
【0010】
これに対し、図9に示す設置タイプの場合では、同じプラグインユニット102でありながら、図中矢印で示すように吸気口106’から吸い込まれた空気はプリント基板101に沿って電子素子B、Aの順で流れるので、下流の電子素子Aは電子素子Bの発熱のあおりを受けて電子素子Bよりも熱的に厳しい条件に晒される。
【0011】
このように、同じプラグインユニット102を複数種類の筐体200,300間で共用する場合、各筐体200,300内における空気の流通方向を共通にできない場合があるため、そのような場合にはプラグインユニット102に設けられた発熱体の冷却状態を一定にすることができず、一定の放熱効果を得ることができないという問題があった。前述した特許文献1に記載された導風板が設けられたプリント基板の場合も、導風板の構造は一定であるから、空気の流通方向が異なる筐体に設けた場合には発熱体の冷却状態が一定にならず、所定の放熱効果を得ることができないことは同様である。
【0012】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、電子素子等の発熱体が搭載されたプリント基板を備えたプラグインユニットを筐体に挿入して装着する電子機器において、発熱体の冷却を効率的に行えるようにすることを第1の目的とし、また筐体内における空気の流通状態が逆である他の筐体にプラグインユニットを挿入した場合にも、空気の流通方向に並んだ複数の発熱体の冷却状態が同等となるようにすることを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された電子機器1,1’は、正面パネル3、該正面パネル3に連結されたプリント基板4、および該プリント基板4に固定された発熱体(電子素子A又はB)を含むプラグインユニット2と、
前記プラグインユニット2を挿入するための開口部6,6’を有し、一つの壁面に排気ファン7を備えるとともに他の壁面に第1の吸気口8,8’を有する筐体5,5’とを備えた電子機器1,1’において、
前記正面パネル3に備えられた第2の吸気口9と、
前記プリント基板4に備えられていて、前記第2の吸気口9から導入される外気を前記発熱体(電子素子A又はB)又はその近傍に導くためのダクト10,10a,10b,10c,10dとを備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載された電子機器1,1’は、請求項1記載の電子機器1,1’において、前記ダクト10,10a,10b,10c,10dが筒状であることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載された電子機器1,1’は、請求項2記載の電子機器1,1’において、前記ダクト10,10a,10b,10c,10dを構成する壁面の一部が前記プリント基板4で構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載された電子機器1,1’は、請求項3記載の電子機器1,1’において、前記ダクト10,10a,10b,10c,10dの前記プリント基板4と反対側が開放されており、板部材11を前記プリント基板4の前記ダクト10,10a,10b,10c,10dが備えられている面に装着することにより前記ダクト10,10a,10b,10c,10dが筒状に構成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載された電子機器1,1’は、請求項1乃至4記載の電子機器1,1’において、前記ダクト10,10a,10b,10c,10dはヒートシンク12a,12b,12cと熱的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載された電子機器1,1’は、正面パネル3、該正面パネル3に連結されたプリント基板4、および該プリント基板4上に所定の並設方向に沿って設けられた複数の発熱体(電子素子A,B)を含むプラグインユニット2と、
前記プラグインユニット2を差し替え可能に挿入するための開口部6,6’を有し、一つの壁面に排気ファン7を備えるとともに他の壁面に第1の吸気口8,8’を有し、挿入された前記プラグインユニット2の前記発熱体(電子素子A,B)の並設方向に沿って内部で空気が一定の方向に流れるように構成された筐体5,5’とを備え、
前記プラグインユニット2を挿入する前記筐体5,5’を選択することにより該筐体5,5’内に挿入された前記プラグインユニット2の発熱体(電子素子A,B)の並設方向に対して前記筐体5,5’内の空気の流れる向きが逆となるように構成された電子機器1,1’において、
前記正面パネル3に備えられた第2の吸気口9と、
前記プリント基板4に備えられていて、並設された複数の前記発熱体(電子素子A,B)の中間位置の近傍に前記第2の吸気口9から導入される外気を導くためのダクト10,10a,10b,10c,10dとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された電子機器1,1’によれば、プラグインユニット2を筐体5,5’に挿入した状態において、排気ファン7の吸引力により、筐体5,5’の第1の吸気口8,8’から吸い込まれた空気は筐体5,5’内を流通して排気ファン7により筐体5,5’の外に排出されるが、さらに、プラグインユニット2の正面パネル3に設けられた第2の吸気口9からも空気が吸い込まれ、ダクト10,10a,10b,10c,10dで導かれて発熱体(電子素子A又はB)の近傍に供給されるので、発熱体(電子素子A又はB)の冷却は効率的に行われる。
【0020】
請求項2に記載された電子機器1,1’によれば、請求項1記載の電子機器1,1’における効果に加え、前記ダクト10,10a,10b,10c,10dが筒状なので第2の吸気口9から吸い込んだ空気の全量を確実に発熱体(電子素子A又はB)へ供給して冷却を行うことができる。
【0021】
請求項3に記載された電子機器1,1’によれば、請求項2記載の電子機器1,1’における効果に加え、前記ダクト10,10a,10b,10c,10dを構成する壁面の一部を前記プリント基板4が兼ねる構成なので、ダクト10,10a,10b,10c,10dとして単体で筒状の専用部品を用意する必要がない。
【0022】
請求項4に記載された電子機器1,1’によれば、請求項3記載の電子機器1,1’における効果に加え、対面する第1及び第2のプリント基板4,11の間を塞ぐ部材によって筒状のダクト10を構成できる。
【0023】
請求項5に記載された電子機器1,1’によれば、請求項1乃至4記載の電子機器1,1’における効果に加え、前記ダクト10,10a,10b,10c,10dをヒートシンク12a,12b,12cと熱的に接続することによって冷却効果をさらに高めることができる。
【0024】
請求項6に記載された電子機器1,1’によれば、排気ファン7と第1の吸気口8,8’によるによる内部での空気の流通方向が異なる筐体5,5’に対して、プリント基板4上に複数の発熱体(電子素子A,B)が並設されたプラグインユニット2を差し替えた場合であっても、第1の吸気口8,8’からの空気に加え、第2の吸気口9とダクト10,10a,10b,10c,10dによって導かれた空気が並設された複数の発熱体(電子素子A,B)の中間位置の近傍に供給されるので、複数の発熱体(電子素子A,B)に対する冷却効果は一定であり高効率が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本願における最良の実施の形態を説明する。
図1は本例の電子機器1の第1例の一部切欠斜視図であり、図2は本例の電子機器1’の第2例の一部切欠斜視図であり、図3は本例の電子機器1,1’のプラグインユニット2の視点を変えて表した拡大斜視図であり、図4は本例の電子機器1,1’のプラグインユニット2の視点を変えて表した変形例の拡大斜視図であり、図5は本例の電子機器1,1’のプラグインユニット2の視点を変えて表した他の変形例の拡大斜視図であり、図6及び図7は本例におけるダクト10の具体的な構造例及び変形例を示す断面図である。
【0026】
図1及び図2を参照して本例の電子機器の基本構造を説明する。
本例の構造の電子機器は、発熱体としての電子素子を搭載したプリント基板を複数の異なる筐体間で交換して共通に使用することを想定したものであり、例えばネットワーク測定器などに適用できる。ネットワーク測定器においては、発熱体としての電子素子を搭載したプリント基板を1つの測定用ユニット(プラグインユニット)としており、このプラグインユニットは、例えば図1に示すような持ち運び自由で比較的少数枚のプラグインユニット2が設定されるハンディタイプの測定器の筐体5に挿入して利用されるとともに、必要に応じ、図2に示すような設置タイプで比較的多数枚のプラグインユニット2が設定される大型の測定器の筐体5’に挿入して利用することもできる。
【0027】
図1及び図2に示すように、プラグインユニット2は、筐体5,5’の開口部6,6’から挿入して筐体5,5’内に設置した際に筐体5,5’の開口部6,6’を塞ぐ壁体を構成する正面パネル3と、該正面パネル3に連結されたプリント基板4と、該プリント基板4上に所定の並設方向に沿って設けられた複数の発熱体である電子素子A,B(例えばCPU、FPGA等)を含んでいる。本例では、電子素子はA,Bの2個であり、プリント基板4上で所定の方向に沿って並設されている。
【0028】
図1及び図2に示す本例のプラグインユニット2では、正面パネル3に吸気口9 (後述する筐体5,5’の吸気口8,8’に対して第2の吸気口と称する。)が設けられ、この吸気口9に一端が連通する筒状 (図では角筒状)のダクト10がプリント基板4に設けられている。吸い込んだ空気の出口となるダクト10の他端は、並設された前記2個の電子素子A,Bの中間の隙間に開放されている。
【0029】
図1に示すように、第1の筐体5(ハンディタイプのネットワーク測定器用)は、その壁体の一部である側面に前記プラグインユニット2を差し替え可能に挿入するための開口部6を有しており、開口部6の奥にはプラグインユニット2の端子部が差し込まれるコネクタ部15が設けられている。第1の筐体5は、一つの壁面である背面に排気ファン7を備えるとともに、他の壁面である底面正面側に第1の吸気口8を有している。排気ファン7によって第1の吸気口8から筐体5内に入った空気は図中矢印のように流れ、水平な姿勢で縦に積み重ねられたプラグインユニット2のプリント基板4の表面において筐体5の手前から奥へ向けて電子素子A,Bの順に流れ、排気ファン7で筐体5外に排出される。
【0030】
図2に示すように、第2の筐体5’(設置タイプのネットワーク測定器用)は、その壁体の一部である正面に前記プラグインユニット2を差し替え可能に挿入するための開口部6’を有しており、開口部6’の奥にはプラグインユニット2の端子部が差し込まれるコネクタ部15が設けられている。第2の筐体5’は、一つの壁面である背面に排気ファン7を備えるとともに、他の壁面である正面下部に第1の吸気口8’を有している。排気ファン7によって第1の吸気口8’から筐体5’内に入った空気は図中矢印のように流れ、垂直な姿勢で横に並べられたプラグインユニット2のプリント基板4の表面において下から上へ向けて電子素子B,Aの順に流れ、排気ファン7で筐体5’外に排出される。
【0031】
本例のプラグインユニット2は、第2の吸気口9とダクト10を有しているので、図1及び図2に示すように、いずれの筐体5,5’においても排気ファン7の吸引によって第2の吸気口9から筐体5,5’外の空気を吸引し、この空気はダクト10に案内されて電子素子A,Bの間の間隙に供給される。従って、例えば図1においては、ダクト10からの空気供給がなければ空気の流れの下流にある電子素子Bは電子素子Aの発熱のあおりを受けることになるが、本例ではダクト10からの空気によって電子素子Bの冷却効果が改善され、両電子素子A,Bは同等の効率で冷却される。図2においても同様であり、ダクト10からの空気供給がなければ空気の流れの下流にある電子素子Aは電子素子Bの発熱のあおりを受けることになるが、本例ではダクト10からの空気によって電子素子Aの冷却効果が改善され、両電子素子A,Bは同等の効率で冷却される。
【0032】
図3乃至図5は、図1及び図2を参照して説明した本例の基本構造において、ダクト10にヒートシンク12(12a〜12b)を熱的に接続した例を示している。
但し、図3乃至図5においては電子素子A,Bは、排気ファン7と第1の空気口8,8’による筐体5,5’内の空気の流通方向と平行ではなく直交する方向に並んでいる。この場合には筐体内での空気の流れの方向の如何に関わらず、ダクト10からの空気による冷却効果が付加的に得られる。
【0033】
図3に示すように、正面パネル3の吸気口9に連通するダクト10は図では上面が開放されている断面矩形の樋状であるが、これは内部構造を明示する図示の便宜であり、実際には開放された上面は板状の壁体が閉止しており、全体として角筒状である。プリント基板4の上には、発熱体である2個の電子素子A,Bが、ダクト10による空気の導入方向に沿って所定間隔をおいて並んでいる。前記ダクト10に連結されたヒートシンク12aは、これら2個の電子素子A,Bの上に配置されて熱的に結合されており、ダクト10による空気案内方向に沿った中央の通路13aと、空気案内方向と直交(排気ファン7と第1の空気口8,8’による筐体5内の空気の流通方向とは平行)して該通路13aの両側にそれぞれ設けられた多数の矩形凸状のフィン14aを備えた放熱部を有している。
【0034】
本例によれば、吸気口9から吸い込まれた空気はダクト10に案内されてヒートシンク12aに導かれ、さらに通路13aを経て放熱部のフィン14aを通過し、電子素子A,Bからの熱を蓄積している放熱部の熱を効率的に放散することができる。
【0035】
図4に示す変形例のヒートシンク12bは、空気の導入方向について奥に行くほど幅が狭くなる全体として三角形状の通路13bを有し、これに合わせて多数の矩形凸状のフィン14bの長さも奥に行くほど長くなり、最奥部では1本の連続したフィン14bが通路13bを閉止している。その他の構成は図3の例と同様である。
【0036】
本例によれば、図3の例と同様に効率的な放熱が可能である他、ヒートシンク12bの中央の通路13bの幅が調節されているので、正面パネル3又はダクト10に近い側の電子素子Bの発熱をさらに均等に放熱して冷却することができる。
【0037】
図5に示す変形例では、図3と同様にプリント基板4上に2個の電子素子A,Bが配置されているが、排気ファン7と第1の空気口8,8’による筐体5内での空気の流通方向について、その前後の位置に何らかの障害物C,C(他の電子素子)があるために、排気ファン7と第1の空気口8,8’による冷却が期待できず、冷却を本例のダクト10からの空気だけに頼る場合である。本変形例では、電子素子A,Bの上に配置されたヒートシンク12cは、ダクト10に連通し、幅が空気の供給方向について拡大する拡大通路13cと、拡大通路13cに隣接する放熱部からなる。本例の放熱部は空気の供給方向と平行な多数の矩形凸状のフィン14cが拡大通路13cの正面に縦横に配置されて空気を受け、そのまま供給方向と同様の方向に空気を逃がすように構成されている。
【0038】
本例によれば、筐体5,5’内での通常の空気流の方向について発熱体たる電子素子A,Bの前後に障害物Cがあるために、専らダクト10から取り入れた空気で電子素子A,Bの冷却を行う場合に適しており、ダクト10による空気の導入方向とフィン14cの長手方向とが一致しているので冷却効果がさらに高い。
【0039】
図6及び図7は、図1及び図2を参照して説明した本例の基本構造において、筒状のダクト10のさらに具体的な構造例を示している。
図6(a)に示すダクト10aは、フランジを有する溝型材をプリント基板4の上面に伏せて配置し、フランジをプリント基板4に締結手段16で固定して筒状の構造としたものであり、すなわち筒状のダクト10を構成する壁面の一部をプリント基板4で兼用したものである。
【0040】
図6(b)に示すダクト10bは、同図(a)と同様に筒状のダクト10を構成する壁面の一部をプリント基板4で兼用したものであり、フランジのない断面コ字形の溝形材をプリント基板4の上面に伏せて半田付けして固定したものである。
【0041】
図7(a)に示すダクト10cは、プリント基板4に支柱17を介して板部材としての第2のプリント基板11を平行に取り付け、両基板4,11の間に一対の板材を所定間隔をおいて配置してプリント基板4に締結し、これらの構造物によって筒状の構造を区画構成したものである。
【0042】
図7(b)に示すダクト10dは、同図(a)と同様に筒状のダクト10を構成する対面する一対の壁面をプリント基板4及び板部材としての第2のプリント基板11で兼用したものであり、一対のプリント基板4,11の間で一対の側壁となる一対の板材を、プリント基板4の上面に半田付けして固定したものである。
なお、ダクトの一部を構成する構造部材である板材として、電気的な構成を備えた第2のプリント基板11を採用したが、この他、金属製の板材やプラスチック製の板材等、電気配線を持たない構造部材としての板材も用いることができる。
【0043】
以上説明した例では、プラグインユニット2の正面パネル3に設けた第2の空気口9から吸い込んでダクト10で導いた空気を筐体5,5’内でプリント基板4上の電子素子A,Bの近傍に導いて冷却効果を上げることを基本とし、特に発熱体たる電子素子A,Bが複数あり、これらが筐体5,5’内の空気の流れ方向について並設されている場合には、前記ダクト10で導いた空気を複数の電子素子A,Bの中間部分に供給することにより、プラグインユニット2を空気の流れ方向が反対である他の筐体5,5’に差し替えた場合にも、各電子素子A,Bの冷却状態が均一になるようにするものとしたが、この他、所定方向に沿って並んだ複数の電子素子の中央部以外の部分 (例えば列に並んだ複数の電信素子の最端部の電子素子の近傍等)にダクト10で導いた空気を供給するようにしても、少なくとも供給した部分と、筐体5,5’内における空気の流れにおけるこれより下流の部分については、ダクト10を介して供給された空気分の冷却効果を追加的に期待することができる。
【0044】
また、以上説明した例では、冷却すべき発熱体としての電子素子が2つある場合を示し、さらに上述したように本発明は発熱体が3以上の場合にも適用できる。しかし、本発明は、発熱体が1つである場合に適用しても相当の効果を得ることができることはもちろんである。例えば、以上説明した実施の形態において、電子機器1,1’が、発熱体として単一の電子素子A又は電子素子Bのみを有している場合には、ダクトで導いた空気を該発熱体に直接導いて冷却してもよいし、また該発熱体の近傍(筐体内における空気の流れに沿って該発熱体の上流側)にダクトで空気を導き、筐体内の空気の流れとともに該空気を供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本例の電子機器の第1例の一部切欠斜視図である。
【図2】図2は本例の電子機器の第2例の一部切欠斜視図である。
【図3】図3は本例の電子機器のプラグインユニットの視点を変えて表した拡大斜視図である。
【図4】図4は本例の電子機器のプラグインユニットの視点を変えて表した変形例の拡大斜視図である。
【図5】図5は本例の電子機器のプラグインユニットの視点を変えて表した他の変形例の拡大斜視図である。
【図6】図6は本例におけるダクトの構造を示す断面図である。
【図7】図7は本例におけるダクトの構造を示す変形例の断面図である。
【図8】図8は従来の電子機器の第1例の一部切欠斜視図である。
【図9】図2は従来の電子機器の第2例の一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1,1’ 電子機器
2 プラグインユニット
3 正面パネル
4 第1のプリント基板
5,5’ 筐体
6,6’ 開口部
7 排気ファン
8,8’ 第1の吸気口
9 第2の吸気口
10,10a,10b,10c ダクト
11 板部材としての第2のプリント基板
12,12a,12b,12c ヒートシンク
13a,13b,13c 通路
14a,14b,14c フィン
15 コネクタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面パネル(3)、該正面パネルに連結されたプリント基板(4)、および該プリント基板に固定された発熱体(A又はB)を含むプラグインユニット(2)と、
前記プラグインユニットを挿入するための開口部(6,6’)を有し、一つの壁面に排気ファン(7)を備えるとともに他の壁面に第1の吸気口(8,8’)を有する筐体(5,5’)とを備えた電子機器(1,1’)において、
前記正面パネルに備えられた第2の吸気口(9)と、
前記プリント基板に備えられていて、前記第2の吸気口から導入される外気を前記発熱体又はその近傍に導くためのダクト (10,10a、10b、10c、10d)とを備えたことを特徴とする電子機器(1,1’)。
【請求項2】
前記ダクト (10,10a、10b、10c、10d)が筒状であることを特徴とする請求項1記載の電子機器(1,1’)。
【請求項3】
前記ダクト (10,10a、10b、10c、10d)を構成する壁面の一部が前記プリント基板(4)で構成されていることを特徴とする請求項2記載の電子機器(1,1’)。
【請求項4】
前記ダクト (10,10a、10b、10c、10d)の前記プリント基板(4)と反対側が開放されており、板部材(11)を前記プリント基板の前記ダクトが備えられている面に装着することにより前記ダクトが筒状に構成されていることを特徴とする請求項3記載の電子機器(1,1’)。
【請求項5】
前記ダクト (10,10a、10b、10c、10d)はヒートシンク(12a,12b,12c)と熱的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至4記載の電子機器(1,1’)。
【請求項6】
正面パネル(3)、該正面パネルに連結されたプリント基板(4)、および該プリント基板上に所定の並設方向に沿って設けられた複数の発熱体(A,B)を含むプラグインユニット(2)と、
前記プラグインユニットを差し替え可能に挿入するための開口部(6,6’)を有し、一つの壁面に排気ファン(7)を備えるとともに他の壁面に第1の吸気口(8,8’)を有し、挿入された前記プラグインユニットの前記発熱体の並設方向に沿って内部で空気が一定の方向に流れるように構成された筐体(5,5’)とを備え、
前記プラグインユニットを挿入する前記筐体を選択することにより該筐体内に挿入された前記プラグインユニットの発熱体の並設方向に対して前記筐体内の空気の流れる向きが逆となるように構成された電子機器(1,1’)において、
前記正面パネルに備えられた第2の吸気口(9)と、
前記プリント基板に備えられていて、並設された複数の前記発熱体の中間位置の近傍に前記第2の吸気口から導入される外気を導くためのダクト (10,10a、10b、10c、10d)とを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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