説明

電子機器

【課題】電子機器が落下等の大きな衝撃を受けた際に、その衝撃エネルギーが筐体へ伝播するのを低減することのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器の筐体底面1bの4隅には、断面が円形で深さを有する取り付け穴8が配置され、取り付け穴8とほぼ同じ断面形状で円柱状の足ゴム9を取り付け穴8に挿入する構成とし、足ゴム側面9bと取り付け穴側面8bとで接着剤により保持されており、足ゴム上面9aと取り付け穴上面8aの間は、空間を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノート型パソコンと略称する)等の電子機器に関する。特に、電子機器の筐体底面に設置され、電子機器に加わる衝撃を緩衝させる緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は一般的なノート型パソコンの外観を示す斜視図であり、図7はその底面から見た図である。ノート型パソコンは、筐体1の背面側の端部に、液晶ディスプレイが搭載されているディスプレイ部3がヒンジ2を介して開閉可能に取り付けられており、筐体1の上面1aには、多数の入力キー4やカーソル操作部5を有する。また、図7に示すように、筐体1の底面1bには、複数の足ゴム7が突設されている。足ゴム7は、その上面と筐体1の底面1bとが面接触するように接着剤等で固定されている。さらに、筐体1には、ハードディスクドライブ(HDD)6、磁気ディスクドライブ(図示せず)あるいは光学ドライブ(図示せず)等の精密機器が内蔵されている。これらの精密機器は衝撃に対して弱く、携帯型電子機器(ノート型パソコン)を誤って落下させてしまうことにより故障が発生することがある。
【0003】
従来、このような携帯型電子機器においては、衝撃を受けた際の保護手段として、構造的な工夫が施されている。例えば特許文献1には、筐体の底面の4隅に配された足ゴム7に加えて、携帯型電子機器の筐体表面に突起部あるいは緩衝材を追加している。これにより、携帯型電子機器を落下させてしまった時に、精密機器へ加わる衝撃を低減することが可能となる。
【特許文献1】特開2005−165475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこのような緩衝構造によって電子機器を保護する手段においては、筐体形状の複雑化あるいは部品点数の増加によって、製造コストあるいは材料コストが増加してしまうという問題がある。
【0005】
また、足ゴム7は、筐体1の底面1bに固定されている構造であることから、携帯型電子機器を落下させてしまった時に、足ゴム7で吸収できなかった衝撃エネルギーが直接筐体1に伝ってしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決し、電子機器が落下等の大きな衝撃を受けた際に、その衝撃エネルギーが筐体へ伝播するのを低減することのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器は、筐体の底面に形成された有底の穴部と、前記穴部に配され、弾性材で形成された柱状の緩衝部材とを備えた電子機器であって、前記緩衝部材は、一方の端面が前記穴部の内部に位置し、他方の端面が前記筐体の底面から突出した位置にあり、前記一方の端面と前記穴部の底面との間に空間を有するとともに、前記一方の端面と前記穴部の底面とが近づく方向に移動可能なように前記穴部に保持されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、落下等の大きな衝撃に対する緩衝性能の向上を図ることができる。また、部品点数、加工コストを増加させることなく、シンプルな構造での衝撃低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の電子機器は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0010】
すなわち、前記緩衝部材の全長が、前記穴部の深さよりも大きく形成した構成とすることができる。このような構成によれば、電子機器が落下等の大きな衝撃を受けた際に、筐体自身が落下方向に移動して足ゴム上面と取り付け穴上面との空間が埋まったとしても、筐体底面は床面に接触せず、衝撃を直接受けることがないため、筐体へ伝播する衝撃エネルギーをさらに低減することができる。
【0011】
また、前記緩衝部材は、前記穴部に接着剤によって固定されている構成とすることができる。このような構成によれば、電子機器が落下等の大きな衝撃を受けた際に、その衝撃エネルギーは緩衝部材と穴部との剥離エネルギーに変換され、緩衝部材の一方の端面と穴部の底面との衝突速度が低下する。よって、筐体へ伝搬する衝撃エネルギーをさらに低減することができる。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る携帯型電子機器であるノート型パソコンの底面側からの斜視図であり、説明をわかりやすくするために足ゴムやディスプレイ部の描画を省いた。図2は、図1の筐体底面に設置される足ゴムの斜視図である。筐体1の底面1bの4隅近傍には、円筒形状の取り付け穴8が形成されている。足ゴム9は、取り付け穴8とほぼ同じ断面形状で、円柱形状に形成され、取り付け穴8に挿入可能な構成とする。また、足ゴム9は、緩衝部材の一例であり、例えば熱可塑性樹脂(エラストマー)で形成することができるが、少なくとも衝撃を緩衝可能な弾性材で形成されていればよい。なお、このノート型パソコンの構成については、上述した図6と同様のものであるため、詳しい説明は省略する。
【0013】
図3は、筐体1における足ゴム9の周辺の部分断面図である。足ゴム9は、その高さ寸法h(図2参照)が、取り付け穴8の深さ寸法dよりも長く形成されている。また、足ゴム9は、上面9aが取り付け穴8の上面8a(図3参照)に対向するように、取り付け穴8に挿入される。したがって、足ゴム9を取り付け穴8に挿入した状態では、下面9cが常に筐体1の底面1bから突出した位置にある。また、足ゴム9は、側面9bと取り付け穴8の側面8bとの間に塗布された接着剤により保持されている。また、足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとの間には、空間11が形成されている。
【0014】
図4は、携帯型電子機器が底面1bが鉛直下向きになる方向(矢印Dの方向)に落下し床面10に衝突した際の、足ゴム9の周辺の挙動を示す。図4(a)は、足ゴム9の下面9cが床面10に衝突した時の状態を示す。図4(b)は、図4(a)に示す状態からさらに筐体1が矢印Dに示す方向へ移動し、足ゴム9の上面9aが取り付け穴8の上面8aに衝突した状態を示す。
【0015】
携帯型電子機器を衝突エネルギーが大きい、高い位置から落下させた際は、図4(a)に示すように足ゴム9が床面10に衝突した時、筐体1を足ゴム9の側面9bと取り付け穴8の側面8bとの接着力で保持することができなくなり、側面9bと側面8bとが剥離しながら筐体1自身が落下方向(矢印Dの方向)に移動する。それにより、図4(b)に示すように足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとの空間11が無くなり、両者が衝突する。両者が衝突するまでの過程において、衝撃エネルギーは足ゴム9の側面9bと取り付け穴8の側面8bとの摩擦エネルギーあるいは剥離エネルギーに変換されて小さくなり、足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとの衝突速度が低下する。落下衝撃により発生する衝撃応力は、衝突速度に比例するため、足ゴム9から筐体1に伝播する衝撃応力を低減させることが可能となる。
【0016】
本発明者は、本実施の形態による効果を確認するために、本実施の形態におけるノート型パソコンと従来技術におけるノート型パソコンとを用いて落下実験を行った。図5は、図1、図2及び図3に示す本実施の形態の緩衝装置を備えたノート型パソコンを落下させた時の衝撃特性Aと、比較例として従来技術の緩衝装置を備えたノート型パソコンを落下させた時の衝撃特性Bのグラフを示している。本実施の形態における足ゴム9の高さhは10mm、取り付け穴8の深さdは8mmとし、足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとの距離は2mmとした。実験は、ノート型パソコンのディスプレイ部を閉じた状態で、高さ70cmから底面が鉛直方向下向きになるような姿勢で床面に自由落下させ、加速度センサーによりノート型パソコンの筐体上面の加速度(G値)の時間変化を測定した。
【0017】
特性Aに示すように、本実施の形態におけるノート型パソコンの衝撃特性は、足ゴム9の下面9cと床面10との衝突時(図4(a)の状態)と、足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとの衝突時(図4(b)の状態)との2つのピークを持つ波形となり、特性Bに示す従来技術と比較して、加速度(G値)の最大値が小さくなることが確認できた。
【0018】
なお、足ゴム9が図4(b)に示すような状態になったとしても、足ゴム9の高さ寸法hが取り付け穴8の深さ寸法dよりも長く形成されているため、足ゴム9は取り付け穴8に完全に埋没せずに、一部が突出した状態になる。したがって、筐体1から突出した足ゴム9の一部によって衝撃を吸収することができるため、携帯型電子機器を継続して使用することができる。但し、図4(b)に示す状態は、図3に示す状態に比べて耐衝撃性が低いため、速やかに足ゴム9を図3に示す状態にすることが好ましい。足ゴム9を図3に示す状態にするためには、図4(b)に示す状態から足ゴム9を取り付け穴8から一度抜き出し、足ゴム9の側面9bにおける側面8bに対向する部分に接着剤を塗布後、足ゴム9を空間11が生じるように取り付け穴8に挿入する。この時、筐体1の底面1bに対する足ゴム9の突出量を、筐体1の底面1bに配された全ての足ゴム9(4カ所)について統一させなければ、携帯型電子機器を安定して設置することができない。足ゴム9の突出量を統一させるには、専用の治具で足ゴム9を取り付け穴8に挿入したり、スケールで突出量を測りながら足ゴム9を取り付け穴8に挿入することで実現できるが、作業コストや手間がかかってしまう。そこで、例えば図2に示すように足ゴム9の側面9bに基準線9dを形成し、足ゴム9を取り付け穴8に挿入する際にその基準線9dと筐体1の底面1bとを一致させることで、簡単かつ高精度に足ゴム9を筐体1に対して位置決めすることができる。なお、上記説明では、足ゴム9を再利用する構成としたが、新品に交換する構成でも同様の手順にて行うことができる。また、基準線9dは、足ゴム9の下面9cからの距離に個体差が生じないように形成されている。
【0019】
以上のように本実施の形態によれば、取り付け穴8に足ゴム9を配置させる際に、足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとの間に空間11が生じるように足ゴム9を配置させることにより、携帯型電子機器を落下させてしまった際に、筐体1に加わる衝撃を小さくすることができる。
【0020】
また、足ゴム9を接着剤で取り付け穴8に固定したことにより、携帯型電子機器を落下させてしまった際に生じる衝撃エネルギーを、足ゴム9の側面9bと取り付け穴8の側面8bとの摩擦エネルギー及び剥離エネルギーに変換されて小さくすることができるため、筐体1に加わる衝撃を小さくすることができる。
【0021】
また、足ゴム9の長さ寸法hを取り付け穴8の深さ寸法dよりも大きくしたことにより、携帯型電子機器が落下等の大きな衝撃を受けた際に、筐体自身が落下方向に移動して足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとの空間11が埋まったとしても、足ゴム9の上面9a近傍は底面1bに対して突出した状態になっている。したがって、底面1bは床面10に接触せず、筐体1に衝撃が直接加わることがないため、筐体1へ伝播する衝撃エネルギーをさらに低減することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、足ゴム9の側面9bと取り付け穴8の側面8bとを保持するために接着剤を使用したが、足ゴム9の断面の大きさを、取り付け穴8の断面の大きさよりも若干大きくし、足ゴム9を取り付け穴8に圧入することで、挿入時の反発力により保持しても同様の効果が得られる。足ゴム9と取り付け穴8とは、上記のように接着固定や圧入固定以外であってもよく、少なくとも足ゴム9に衝撃が加わった際に足ゴム9が取り付け穴8内を移動する構成であれば、同様の効果が得られる。
【0023】
また、本発明の実施の形態では、足ゴム9と取り付け穴8の断面形状を円形としたが、楕円形または方形またはそれらに準ずる形状としても同様の効果が得られる。
【0024】
また、本発明によれば、電子機器が落下衝撃を受けた後に、足ゴム9の上面9aと取り付け穴8の上面8aとが接触し、両者の空間11がない状態になったとしても、足ゴム9を取り付け穴8から抜き出して再利用もしくは新品と交換し、所定の位置に再度取り付けることにより、安易かつ低コストで緩衝性能の復元が可能となる。
【0025】
また、足ゴム9の長さ寸法h、取り付け穴8の深さ寸法d、足ゴム9の取り付け穴8に対する挿入量、筐体1に対する足ゴム9の突出量、足ゴム9の硬度は、携帯型電子機器の重量や、落下試験の条件などにより適切な値を選択可能とすることができる。例えば、携帯型電子機器の重量が重たい場合は、足ゴム9の長さを長くして取り付け穴8に対する接着面積を多く確保したり、足ゴム9の硬度が高いものを用いることで、高い落下衝撃に対応することができる。
【0026】
また、筐体1に対する足ゴム9の突出量を多くすることで、携帯型電子機器を落下させた際に、足ゴム9の突出量が少ない場合に比べて床面までの落下距離を短くすることができるので、筐体1に加わる衝撃を小さくすることができる。但し、足ゴム9の側面9bと取り付け穴8の側面8bとの接触面積を十分に確保していることが前提となる。
【0027】
また、足ゴム9の長さ寸法や取り付け穴8の深さ寸法を長くすると、筐体1が厚くなってしまう可能性がある。そこで、足ゴム9の長さ寸法や取り付け穴8の深さ寸法を変えずに、足ゴム9の断面積及び取り付け穴8の開口面積を大きくすることで、筐体1を厚くせずに、足ゴム9の側面9bと取り付け穴8の側面8bとの接触面積を大きくすることができる。よって、携帯型電子機器を落下させた際に筐体1に加わる衝撃を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、電子機器の落下時に筐体および内臓部品への衝撃エネルギーの伝播を低減し、致命的な損傷を防ぐことができるため、ハードディスクドライブ(HDD)等の精密機器を内蔵するノート型パソコンなどの携帯型電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態におけるノート型パソコンの底面側から見た斜視図
【図2】実施の形態における足ゴムの斜視図
【図3】実施の形態における足ゴムの設置状態を示す部分断面図
【図4】(a)、(b)は実施の形態におけるノート型パソコンが筐体底面方向に落下した際の足ゴム周辺の挙動を示す部分断面図
【図5】実施の形態および従来技術における落下時の衝撃特性を示す特性図
【図6】従来技術における一般的なノート型パソコンの外観を示す斜視図
【図7】従来技術における一般的なノート型パソコンの底面側から見た平面図
【符号の説明】
【0030】
1 筐体
8 取り付け穴
9 足ゴム
11 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底面に形成された有底の穴部と、
前記穴部に配され、弾性材で形成された柱状の緩衝部材とを備えた電子機器であって、
前記緩衝部材は、
一方の端面が前記穴部の内部に位置し、他方の端面が前記筐体の底面から突出した位置にあり、前記一方の端面と前記穴部の底面との間に空間を有するとともに、
前記一方の端面と前記穴部の底面とが近づく方向に移動可能なように前記穴部に保持されている、電子機器。
【請求項2】
前記緩衝部材の一方の端面から他方の端面までの長さは、前記穴部の深さよりも大きい、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記穴部に接着剤によって固定されている、請求項1または2記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−305990(P2008−305990A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151883(P2007−151883)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】