説明

電子機器

【課題】電源供給と電池の装填を安全かつ安定して行う電子機器を提供する。
【解決手段】カメラ2において、検知スイッチ22が電池蓋ユニット30の蓋ロックレバー37の移動を検出し、蓋ロックレバー37の移動に連動して接点部材32の接触端子32aが電池62と離反する方向へ後退した後で、電池蓋ユニット30のロック解除を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電池が取外し自在に装填される電池ケースと電池ケースに装填された電池からの電力が供給されて動作する回路基板を備えた電子機器は広く普及しており、電源供給と電池の装填を安全かつ安定して行う需要が益々増加している。しかし、かかる電子機器は、外部衝撃を受けると、電池ケースに装填された電池の電極と、その電極に接触して回路基板に電力を供給する接触端子とが、瞬間的に分離して電気的な切断(瞬断)を発生し、電子機器の誤動作やシャットダウンをもたらす。
【0003】
そこで、瞬断を防止するために外部衝撃時に接触端子が電池の移動に追従する構造が提案されている(例えば、特許文献1、2及び4)。また、電池端子部を鋭利にし、且つ、電池蓋を開いた状態ではその電池端子を電池蓋内に収納し、機器の操作者が鋭利部に触れて怪我しないような構造も提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平09−223488号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特開2000−299574号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】特開2005−166488号公報(第6頁、図1)
【特許文献4】特開2007−207666号公報(第11頁、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造は、接触端子が電池装填時に塑性変形を起こす可能性がある。特許文献2の構造は、接触端子が鋭利で危険であると共に変形するおそれがあり、変形すれば、電池との接触抵抗が増大して安定した電源供給ができないおそれがある。特許文献3の構造は、電池端子と電池の接触抵抗は安定するが瞬断を防止することができない。特許文献4は、追従量を増やすにつれて電池端子と電池の隙間が微小になり、電池が誤って逆装填された場合に、電池蓋を閉じる途中に電池端子と逆装填された電池マイナス極が触れて機器に逆電流が流れ、回路を破損してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、電源供給と電池の装填を安全かつ安定して行う電子機器を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての電子機器は、第1の方向に挿抜される電池を収納する電池室を有し、前記電池から電力を受けて動作する電子機器であって、前記電池蓋ユニットは、前記第1の方向と垂直な第2の方向にスライド可能に構成されると共にスライド後に前記第1及び第2の方向に垂直な第3の方向の周りに回転されることによって前記電池室を開閉する電池蓋と、前記電池蓋の移動を拘束するロック位置と、前記電池蓋の移動を可能にするロック解除位置との間で前記第3の方向に移動可能に構成されたロック部材と、前記電池の端子と弾性的に接触する接触端子を有して前記第1の方向に弾性変形が可能な接点部材と、前記接触端子は、前記ロック部材が前記ロック位置から前記ロック解除位置に移動する途中で前記第1の方向に沿って前記電池の端子から離れるように移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源供給と電池の装填を安全かつ安定して行う電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、添付図面を参照して、本実施例のデジタルカメラ(撮像装置)2を電子機器の一例として説明する。図1は、カメラ2を正面斜め上から見た外観斜視図である。カメラ2は、電池室20と電池蓋ユニット30とを有し、電池室20に電池61、62が装填されて電池蓋ユニット30が閉じられた状態で電池61、62から電力を受けて動作する。電池室20は、Z方向に挿抜される電池61、62を取外し自在に収納する。電池蓋ユニット30は、電池室20を開放自在に塞ぐ。本実施例では電池61、62は直列に2本接続されて、不図示の本体側接点部材を経由して不図示の回路基板へ電力は導かれる。
【0009】
カメラ2は、その前面中央部に、光学ズームレンズ41aを内部に備えたズーム鏡筒41を有する。また、カメラ2は、その上面に、電源ボタン43を有し、押圧されることでカメラシステムが起動される。カメラ2は、その前面上部に、AF投光窓42と、ズームファインダ窓44と、ストロボ部47と、を有する。更に、カメラ2の上面には、シャッタボタン46及び光学ズームレンズ41aをテレ側(遠距離側)あるいはワイド側(近距離側)に動作させるズーム操作レバー50が設けられている。
【0010】
図2は、カメラ2の底面図である。37は蓋ロックレバー(ロック部材)であり、電池蓋ユニット30の構成部品である。なお、蓋ロックレバー37は、摺動部(スライド部)があるため、摺動性の良い樹脂部材が好ましい。21はスイッチレバーであり、電池室20に取り付けられており、図13を参照して後述する検出スイッチを押す役目果たしている。スイッチレバー21も、摺動部(スライド部)があるため、摺動性の良い樹脂部材が好ましい。検出スイッチは、蓋ロックレバー37がロック位置にあることを検出し(ONになり)、蓋ロックレバー37がロック位置以外の位置にあることを検出し(OFFになる)検出部である。
【0011】
図2の状態は、蓋ロックレバー37がスイッチレバー21を押して、スイッチレバー21が検出スイッチを押し込んでいるON状態である。スイッチレバー21は蓋ロックレバー37と検出スイッチの間の伝達部品である。蓋ロックレバー37を図2のF1方向(蓋ロックレバー移動方向又は第3の方向)に操作すると、スイッチレバー21が動作し、検出スイッチから外れるOFF状態となる。OFF状態になると、カメラシステムが通常終了動作(シャットダウン)を行うようにプログラムされている。蓋ロックレバー37を移動した状態で、電池蓋ユニット30はF2方向(蓋ユニットスライド又は第2の方向)に移動可能になる。詳細な状態遷移に関しては後述する。
【0012】
図3は、図4はカメラ2を背面斜め上から見た外観斜視図であり、電池蓋ユニット30をF2方向へスライドした状態を示している。カメラ2は、その背面に、ファインダ接眼窓49、各種操作ボタンとレバーを有する。
【0013】
図4は、図3に示すカメラ2の電池蓋ユニット30を回動して開状態を示す外観斜視図である。図3でF2方向へ一定量だけスライドした電池蓋ユニット30は不図示の軸支手段により、図4に示すR方向に回動して開状態となる。開状態において、電池61、62が挿抜可能となる。
【0014】
図3において、電池蓋ユニット30を一定量だけスライドするのは、電池のプラス極、マイナス極に経年変化等で発生する酸化皮膜(錆)を、電池装填時に電池接触端子の突起部にて削り取るというリフレッシュ効果を得るためである。突起部は、円錐状の凸や板金を切り起こし形状(鋭利形状)を施してあるが、鋭利の部分は人体に影響を及ぼさないレベルになるように十分考慮して設計されている。
【0015】
図5及び図6は、図4に示す電池蓋ユニット30がカメラ2に対して開いている状態を異なる角度から示した斜視図である。図5における蓋開状態ではスイッチレバー21の先端が露呈している。スイッチレバー21は、電池室20内部に収められた不図示のコイルスプリングにより常に露呈する方向に付勢されている。電池蓋ユニット30が閉じて、蓋ロックレバー37がロック状態の位置に移動すれば、スイッチレバー21は電池室内に埋没し、検出スイッチをONにする。
【0016】
図6において、37aは蓋ロックレバー37のスイッチレバー押し込み部であり、電池蓋が閉じてロック状態のときに、スイッチレバー21を押し込むように構成されている。図4及び図6において、33aは絶縁部材(本実施例ではポリカーボネート(PC)を使用)からなる固定部材33が突出したリブである。32は、電池61、62の端子と弾性的に接触する接触端子32a、32bを有し、Z方向に弾性変形が可能な板バネ形状になっている導電抵抗が低い接点部材である。接点部材32の材料としては、リン青銅やチタン銅、ベリリウム銅などの銅合金のうち塑性限界が比較的高く、導電抵抗が比較的低い金属に、表面処理(金めっき、ニッケルめっき)を施した材料が好適に用いられる。
【0017】
カメラ2の電池室20に電池61、62が装填され、電池蓋ユニット30が閉じられ、検出スイッチがONになると、カメラ2に備えられた回路基板(図示せず)に電池61、62からの電力が供給される。写真撮影時には、電源ボタン43を押圧し、カメラシステムを起動する。次いで、ズーム操作レバー50の操作量に応じて光学ズームレンズ41aがズーミングされ、次いで、シャッタボタン46が半押しされてAF投光窓42からカメラ2の前方に向けて測距用の光が投光される。被写体で反射して戻ってきた不図示のCCDなどの光電変換素子にて受光し、不図示の演算装置によって被写体までの距離を求めると共に露出を求める。次いで、シャッタボタン46が全押しされ、必要に応じて、ストロボ部47から閃光が発せられて電子画像の記録が行なわれる。一連の動作が終了した後、再び電源ボタン43を押圧するとカメラシステム終了動作に入り、シャットダウンし、電源がオフされる。画像の記録最中に電池蓋を開けるなどして、突然電源供給が絶たれると、記録中の画像が破壊されてしまうおそれがある。そこで、記録中に操作者が蓋ロックレバー37を操作し、検出スイッチがON状態からOFF状態になった場合は、直ちにカメラ2のシャットダウン動作を開始し、画像破壊やシステムの異常が起さないように構成されている。
【0018】
図7は電池61の側面図である。電池61と62は同一形状であるため、電池61のみ説明する。電池61は、本実施例では単三乾電池(AAサイズ)であり、アルカリ電池などの1次電池やニッケル水素電池などの2次電池を使用することができる。単三乾電池は、一般に、凸形状のプラス電極端子61a、プラス電極端子61aより一段下がった肩部61c、凸形状のマイナス電極端子61b、マイナス電極端子61bよりも一段下がった肩部61dを有する。肩部61c、61dは絶縁体又は導電体である。
【0019】
後述するように、カメラ2は逆挿入ショート防止機構を有する。逆挿入ショート防止機構は、単三乾電池の正負逆挿入(誤挿入、逆装填、誤装填)による電子機器の破壊や発熱、延焼などを防止する。逆挿入ショート防止機構は、プラス電極端子61a、マイナス電極端子61bの段差を利用し、逆挿入された場合にはカメラ2の接触端子と電池の電極端子が触れないように構成されている。
【0020】
図8は、電池蓋ユニット30の分解斜視図である。電池蓋ユニット30は、電池蓋31、接点部材32、固定部材33、ビス34、35、スライド開閉板36、蓋ロックレバー37、レバー復帰バネ(付勢部材)38を有する。Zは、電池が取り外し又は装填される第1の方向である。より具体的には、Z1は、電池61、62が装填される方向である。Z2は、電池61、62が取り外される方向である。
【0021】
電池蓋31はZ方向と垂直なF2方向(第2の方向)にスライド可能に構成されると共にスライド後にZ方向及びF2方向に垂直なF1方向(第3の方向)の周りに回転されることによって電池室20を開閉する。
【0022】
接点部材32は、プラス電極端子62aと接触する接触端子32a、マイナス電極端子61bと接触する接触端子32b、蓋ロックレバー37と係合する係合部32c、32dを有する。係合部32c、32dは、固定部材33の穴部33b、33cを通り抜け、蓋ロックレバー37の引っ掛け部37b、37cに係合する。蓋ロックレバー37の移動により、接触端子32a、32bが蓋内部方向(Z2方向)へ引き込まれる。固定部材33にはリブ33aが突出しており、接点部材32の穴部32eを通過し、電池逆挿入時のショート防止機構の役目を果たす。
【0023】
蓋ロックレバー37は凸部(第1係合部)37gを有し、スライド開閉板36は切欠部(第2係合部)36bを有する。蓋ロックレバー37の初期位値から一定量移動するまでは凸部37gが切欠部36bに係合し、電池蓋ユニット30がF2方向にスライドできないように規制している。つまり、凸部37gは切欠部36bに対して閂の役割を果たしている。なお、凸部37gと切欠部36bの関係は逆でもよく、蓋ロックレバー37が切欠部36bを有してスライド開閉板36が凸部37gを有してもよい。即ち、蓋ロックレバー37とスライド開閉板36の一方は第1係合部を有し、他方は第2係合部を有し、第1係合部と第2係合部は、蓋ロックレバー37がロック解除位置にある時に係合が解除して電池蓋31のF2方向へのスライドを許容する。そして、第1係合部と第2係合部は、蓋ロックレバー37がロック解除位置以外の位置にある時に係合して電池蓋31のF2方向のスライドを禁止する。
【0024】
スライド開閉板36は電池室20に軸36cによって支持されている。スライド開閉板36は、電池室20にF1方向(第3の方向)の周りに回転可能に固定され、軸36cの周りに電池蓋31を回転して開閉する。スライド開閉板36は電池室20に軸36cによって支持されているため、スライド開閉板36はスライドせず、その他の部品が一体的にF2方向にスライドする。
【0025】
蓋ロックレバー37は、切欠部(第3係合部)37dを有し、蓋スライド状態(図3の状態)ではスライド開閉板36のL字曲げ部(第4係合部)36aが切欠部37dに入り込む。これにより、蓋ロックレバー37は規制され、蓋スライド状態及び蓋回動状態(図4の状態)では蓋ロックレバー37は初期位置には戻れない。電池蓋31を図3の方向とは逆方向にスライドすると規制状態から解かれ、レバー復帰バネ38の付勢力により初期位置に戻される。一定量スライドした電池蓋ユニット30は、不図示の電池室20の爪と、電池蓋31の爪との係合が解かれ、軸を中心に図4に示すように回動する。なお、切欠部37dとL字曲げ部36aとの関係は逆でもよく、蓋ロックレバー37がL字曲げ部36aを有してスライド開閉板36が切欠部37dを有してもよい。即ち、蓋ロックレバー37とスライド開閉板36の一方が第3係合部を有し、他方が第4係合部を有する。蓋ロックレバー37がロック解除位置にある時に電池蓋31がF2方向に沿ってF1方向の周りに回転可能な位置までスライドされると、第3係合部と第4係合部は係合して蓋ロックレバー37がレバー復帰バネ38によりロック位置に戻ることを禁止する。
【0026】
ビス34、35は固定手段であるが、接着や溶着などの代替手段を用いてもよい。蓋ロックレバー37は、Z方向において薄肉部と厚肉部とを有する。蓋ロックレバー37、スイッチレバー、検出スイッチ、蓋ロック解除の状態遷移の詳細は後述する。
【0027】
次に、図4、図9〜図12を参照して、電池が電池室20に収納されている状態を、使用して説明する。図9〜図12は、図4の電池62の中心を通り、Zで切断した部分断面図である。なお、電池蓋ユニット30は閉じている。
【0028】
図9は、電池62が正装填(プラス電極、マイナス電極が正しく挿入した)された状態を示す概略部分断面図である。電池室20は、絶縁部材からなり、電池62の外形より、若干大きめに作られている。20aは電池室20の内部に突出した突出部であり、電池62を電池室20の内部にこれ以上押し込めないようにストッパーの役割を果たしている。71は、カメラ本体側のZ曲げ加工を施した接点部材であり、電池蓋ユニット30にある接触端子32a、32bと同様に、弾性変形可能で導電抵抗が低い接点部材である。接点部材71の材料としては、リン青銅やチタン銅、ベリリウム銅などの銅合金のうち塑性限界が比較的高く、導電抵抗が比較的低い金属に、表面処理(金めっき、ニッケルめっき)を施した材料が好適に用いられる。
【0029】
接点部材71の電池62と接触する部分は酸化被膜を破りやすくするように鋭利に仕上げられている。接点部材71の自然状態を破線で示す。マイナス電極端子62bと接点部材71の接圧と接触抵抗は密接な関係があり、バネ圧は比較的高く設定されている。接点部材32もバネ力を有し、電池62の方向に付勢されているが、接点部材71のバネ圧より低く設定されているため、接触端子32aは固定部材33に押し付けられた状態になる。固定部材33は電池蓋31に取り付けられ、電池蓋31はカメラ2に複数の爪で係合しているため、接点部材71のバネ圧に十分耐え、変形しないよう材料選定・構成されている。接点部材32の係合部32cが設けられており、電池62が無い状態では係合部32cは引っ掛け部37bに当接するように破線で表示した状態のように起き上がる。固定部材33から延出したリブ33aはJIS、IECのいかなる規格の単三乾電池が挿入されても電池62の肩部62cに触れないように夫々の寸法が設定されている。もし寸法設定を誤り、肩部62cとリブ33aが触れると、プラス電極端子62aと接点部材32の接触端子32aの接圧は接点部材32のものだけとなり、極端に低くなり、接触抵抗が増大し電池のもちが悪くなる。
【0030】
図10は、カメラ2に衝撃が加わり、電池62が矢印Z1方向に移動した状態を示す断面図である。電池62の肩部62cが電池室20の突出部20aに衝突し、これ以上のZ1方向への移動を防止する。この状態でも接触端子32aは電池62のプラス電極端子62aが矢印Z1方向に移動するのに追従し、両者の電気的接続は維持される。このように、接点部材32の弾性は外部衝撃による瞬断を防止する。
【0031】
図11は、電池室20に電池62をプラス電極とマイナス電極を誤って逆にして装填した状態を示す断面図である。この状態では、リブ33aが電池62のマイナス電極端子62bを図11のZ1方向上方に押し上げ、接触端子32aとマイナス電極端子62bは十分に離れて接触はしない。これにより、電気回路には逆電流が流出せず、カメラ本体の破壊、発熱・発煙などのおそれはない。
【0032】
図12は、図11と同様に、電池62を逆装填して電池蓋31を閉じた状態、又は、開けていく途中の状態を示す断面図である。蓋ロックレバー37の引っ掛け部37bの高さは、蓋ロックレバー37の移動に連動して変化するように構成されている。従来よりも隙間bは広く、引っ掛け部37bの高さをスライドに応じて変化させて追従量と隙間bの両方を広く確保することができる。
【0033】
次に、図13を参照して、蓋ロックレバー37の移動と、検出スイッチ、スイッチレバー21、接触端子32a、32bの状態遷移について説明する。
【0034】
図13(a)は電池蓋31のロック状態を示す概略断面図である。電池蓋ユニット30は、完全に閉じられて蓋ロックレバー37は初期位置(図13(a)に示す穴31aの右端位置)にある。初期位置は、電池蓋31の移動を拘束するロック位置である。蓋ロックレバー37は、レバー復帰バネ38により、常に初期位置に復帰するように付勢されている。蓋ロックレバー37の押し込み部37aによりスイッチレバー21は上方に押し上げられ、検出スイッチ22のツノ部22aを押し上げてON状態にしている。スイッチレバー21は、電池室20の案内部20bに図13(a)のZ方向にスライドするように案内され、不図示のコイルスプリングにより、図13(a)の下方(Z2方向)に常に付勢されている。検出スイッチ22は電気回路基板に接続され、ON/OFFの状態を常に監視しており、ON状態からOFF状態になった場合は、カメラ2が起動中であれば即座にシステムが終了動作に入る。検出スイッチ22がOFF状態では電源ボタン43を押圧してもカメラ2は起動しないように構成されている。
【0035】
蓋ロックレバー37にはカメラ2の操作者が指で操作可能な操作部37eがあり、電池蓋31は操作部37eがカメラ2の外部に露出させる穴31aを有する。固定部材33と電池蓋31は一定の空間を保って固定されている。蓋ロックレバー37はその空間をロック位置とロック解除位置の間でF1方向に移動可能なように保持されている。また、蓋ロックレバー37は、引っ掛け部37b及び37cのそれぞれに薄肉部37hと厚肉部37iを有する。厚肉部37iは、Z方向の厚さが薄肉部37hよりも厚い。
【0036】
係合部32cは、蓋ロックレバー37に係合され、蓋ロックレバー37がF1方向にスライドされると、傾斜部37fにより接触端子32aは係合部32cと一体的に、電池62と離反するZ2方向に後退するように構成されている。
【0037】
電池62がカメラ2に装填されていない場合は、接触端子32aは接点部材32の弾性力により浮き上がり、図13(a)に示すようになる。電池62がカメラ2に装填されていない場合には、図9に示すように、接点部材71のバネ圧が接点部材32の弾性力よりも強いため、電池62はZ2方向に押し下げられる。押し下げられたプラス電極端子62aは接触端子32aに当接し、接触端子32aは弾性的に変形させられ、固定部材33に押し当たって止まる。
【0038】
次に、図13(b)に示すように、蓋ロックレバー37をF1方向に一定量スライドさせたスイッチOFF状態について説明する。蓋ロックレバー37の押し込み部37aとスイッチレバー21とが分離すると、スイッチレバー21が、不図示のコイルスプリングにより、図13(b)の下方(Z2方向)に移動し、その係合部21aが電池室20の係合部20cに当接して停止する。この状態で検出スイッチ22のツノ部22aとの押し込みは無くなり、検出スイッチ22はOFF状態になる。図13(b)は、電池62を省いているが、この状態でもプラス電極端子62aと接点部材32の接触端子32aは接続されており、電池62から回路基板へ電力を供給できる状態である。
【0039】
カメラ2の電源オン状態から、突如検出スイッチ22がOFF状態になった場合は、即座にカメラシステム終了動作に入り、電池62と接触端子32aの接続が絶たれてしまう前にシャットダウン動作を行う。電源オン状態から電池蓋31を突然開き電池62と接触端子32aの接続が絶たれて電源供給が突然切断されると、カメラ2は様々な信号処理を中途で終了してしまう。すると、カメラ2自体の不具合発生や、記録中・記録済みの画像データを破壊するおそれがある。この問題を対処するために、本カメラシステムは、電源が遮断されてしまう前に、電池蓋31の開動作検知を検出スイッチ22により行う。電池蓋31が開方向に向かっているのを検知すると、即ち、蓋ロックレバー37が操作されてスライドされたことを検知すると、電源供給が絶たれる前にカメラシステムのシャットダウンを行う。検出スイッチ22がOFF状態になってから、電源供給が絶たれるまでに時間的に猶予があるため、その間にシャットダウンを行う。このため、カメラ2自体の不具合発生や記録中・記録済みの画像が破壊されるなどの問題を回避することが可能となる。この状態で電池62が外部衝撃で図13(b)のZ1方向に移動しても、接触端子32aと係合部32cは接点部材32の弾性力により電池62の移動に追従するように構成されている。このため、電池62と接触端子32aの電気的接続は維持され、瞬断は発生しない。
【0040】
次に、図13(c)に示すように、蓋ロックレバー37を更にF1方向に移動させた端子退避状態について説明する。この状態では、検出スイッチ22は引き続きOFF状態である。検出スイッチ22がOFF状態になってから端子退避状態に至る過程で、一体的に動く接触端子32aと係合部32cは、蓋ロックレバー37の傾斜部37fにより固定部材33に密着するように退避させられる。このように接触端子32aと係合部32cが電池62と離反するZ2方向へ後退させられ、蓋ロックレバー37に規制されることで、接点部材32の弾性的な移動できなくなる。図13(c)は電池62を省いている。この状態でもプラス電極端子62aと接点部材32の接触端子32aは接続されて電池62から回路基板へ電力を供給できる状態である。この状態では電池62が衝撃等で図13(c)の上方(Z1方向)に移動しても、接触端子32aと係合部32cは接点部材32の弾性力により電池62の移動に追従できない。
【0041】
次に、図13(d)を参照して、蓋ロックレバー37を更に移動させてロック解除位置まで移動した蓋ロック解除状態について説明する。ロック解除位置は、電池蓋31の移動を可能にする位置である図13(d)の穴31aの左端位置である。この状態では、検出スイッチ22がOFF状態であり、接触端子32aは電池62の図13(d)の上方(Z1方向)の移動に追従できない。蓋ロックレバー37の操作部37eがロック解除位置まで移動すると、図8に示す凸部37gと切欠部36bの係合が解除され、電池蓋ユニット30はスライド可能になる。この時点でも電池62と接触端子32aとの接続は維持される。電池蓋ユニット30が一定量スライドされてスライドが完了すると、電池蓋31と電池室20の係合が解除されて、電池蓋ユニット30は、図4に示すように、回動可能になる。回動が始まると装填されていた電池62は、バネ圧を持った接点部材71により排出方向に押し出される。この時点で、接触端子32aとプラス電極端子62aの電気的接続は遮断される。
【0042】
このように、接触端子32aと係合部32cは、蓋ロックレバー37が図13(a)に示すロック位置から図13(d)に示すロック解除位置に移動する途中で電池62から離れる方向(Z2方向)に弾性変形できない位置まで移動(退避)する。より具体的には、蓋ロックレバー37に関して接触端子32aと反対側にある係合部32cが、蓋ロックレバー37の薄肉部37hから傾斜部37fを通って蓋ロックレバー37の厚肉部37iへ蓋ロックレバー37に接触しながら移動する。これによって、接触端子32aが電池62から離れる方向(Z2方向)に移動する。
【0043】
図13(e)に示す状態遷移表は、検出スイッチ22のON/OFF、接触端子32aの追従性の可否、電池蓋ユニット30のスライド可否、電池62と接触端子32aの接触有無をまとめたものである。
【0044】
説明を分かりやすくするため、電池62と接触端子32aの接続を中心に説明したが、電池61と接触端子32bも同様に、蓋ロックレバー37の移動に応じて電池に対して離反する方向(Z2方向)へ後退するように構成されている。なお、本発明における電池の数は本実施例のように2本に限定されず、電池の種類、形状も単三乾電池に限定されない。
【0045】
以上のように、カメラ2は、接点部材の接触端子が弾性変形が可能な構成を有し、カメラ2が外部から衝撃を受けた場合でも、電池の電池室内の移動に接点部材の接触端子が追従する。これにより、画像記録にあたり、外部から衝撃を受けた場合であっても、瞬断が防止されてカメラ2の誤動作が防止される。また、接点部材の接触端子の弾性変形量の蓋ロックレバー37により規制し、状態により電池と離反する方向に後退させている。このため、電池を誤装填した場合、電池蓋ユニット30の開閉動作中に接触端子と電池が触れてしまうことを回避し、回路基板への逆電流の流出を防ぐことができる。また、接点部材の接触部が人体に影響の無い範囲で鋭利にしてあるため、電池の装填、抜去時に酸化皮膜を除去し、良好な接点状態を作り出すことができる。また、蓋開検出を蓋ロックレバー37の移動の前半で行い、電源供給が遮断されてしまうまでに時間的猶予を多く確保し、電源オン状態からの蓋開動作の場合でもシステム終了動作を確実に行い、画像等のデータ破壊や機器の不具合が起きない構成とすることができる。
【0046】
なお、本発明の電子機器は、電池から電力を受けて動作する限り、カメラに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施例のデジタルカメラの前側斜視図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラの底面図である。
【図3】図1に示すデジタルカメラの後側斜視図である。
【図4】図3に示すデジタルカメラで電池蓋が開口した斜視図である。
【図5】図4に示すデジタルカメラの異なる角度から見た斜視図である。
【図6】図5に示すデジタルカメラの異なる角度から見た斜視図である。
【図7】図1に示すデジタルカメラに挿抜される電池の側面図である。
【図8】図1に示す電池蓋ユニットの分解斜視図である。
【図9】図1に示す電池室を表す断面図(正装填)である。
【図10】図1に示す電池室を表す断面図(正装填、衝撃が加わった状態)である。
【図11】図1に示す電池室を表す断面図(逆装填)である。
【図12】図1に示す電池室を表す断面図(逆装填、蓋開閉途中)である。
【図13】図1に示すカメラの状態遷移を表す図である。
【符号の説明】
【0048】
2 カメラ(電子機器)
20 電池室
22 検知スイッチ(検知部)
30 電池蓋ユニット
31 電池蓋
31a 穴
32 接点部材
32a、32b 接触端子
36 スライド開閉板
36a L字曲げ部(第4係合部)
36b 切欠部
37 蓋ロックレバー
37a スイッチレバー押し込み部
37c 切欠部(第3係合部)
37e 操作部
37f 傾斜部
37g 凸部
37h 薄肉部
37i 厚肉部
61、62 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に挿抜される電池を収納する電池室と当該電池室を開閉する電池蓋ユニットとを有し、前記電池から電力を受けて動作する電子機器であって、
前記電池蓋ユニットは、
前記第1の方向と垂直な第2の方向にスライド可能に構成されると共にスライド後に前記第1及び第2の方向に垂直な第3の方向の周りに回転されることによって前記電池室を開閉する電池蓋と、
前記電池蓋の移動を拘束するロック位置と、前記電池蓋の移動を可能にするロック解除位置との間で前記第3の方向に移動可能に構成されたロック部材と、
前記電池の端子と弾性的に接触する接触端子を有して前記第1の方向に弾性変形が可能な接点部材と、
前記接触端子は、前記ロック部材が前記ロック位置から前記ロック解除位置に移動する途中で前記第1の方向に沿って前記電池の端子から離れるように移動することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ロック部材は、薄肉部と前記第1の方向の厚さが前記薄肉部よりも厚い厚肉部とを有し、
前記接点部材は、前記ロック部材に関して前記接触端子と反対側にある係合部を更に有し、前記係合部は、前記ロック部材が前記ロック位置から前記ロック解除位置に移動するときに前記ロック部材の前記薄肉部から前記厚肉部へ前記ロック部材に接触しながら移動し、これによって前記接触端子の前記第1の方向に弾性変形を規制するように、前記接触端子を移動させることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記電池蓋ユニットは、前記電池室に前記第3の方向の周りに回転可能に固定されたスライド開閉板を更に有し、
前記ロック部材と前記スライド開閉板の一方は第1係合部を有し、他方は第2係合部を有し、
前記第1係合部と前記第2係合部は、前記ロック部材が前記ロック解除位置にある時に係合が解除して前記電池蓋の前記第2の方向のスライドを許容し、前記ロック部材が前記ロック解除位置以外の位置にある時に係合して前記電池蓋の前記第2の方向のスライドを禁止することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記ロック部材を前記ロック位置に付勢する付勢部材を更に有し、
前記ロック部材と前記スライド開閉板の一方は第3係合部を有し、他方は第4係合部を有し、
前記ロック部材が前記ロック解除位置にある時に前記電池蓋が前記第2の方向に沿って前記第3の方向の周りに回転可能な位置までスライドされると、前記第3係合部と前記第4係合部は係合して前記ロック部材が前記付勢部材により前記ロック位置に戻ることを禁止することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記ロック部材が前記ロック位置にあることと、前記ロック部材が前記ロック位置以外の位置にあることを検出する検出部を更に有することを特徴する請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記検出部が前記ロック位置以外の位置にあることを検出し、その後、前記接触端子が前記接触端子の前記第1の方向に弾性変形を規制する位置に移動し、その後、前記ロック部材が前記ロック解除位置に移動し、その後、前記電池蓋が前記第2の方向にスライド可能となることを特徴する請求項5に記載の電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−301794(P2009−301794A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153237(P2008−153237)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】