説明

電子機器

【課題】 回路基板をケースに収納し、充填部材で覆う電子機器において、小型化が可能であり、また、充填部材を充分に充填することが可能な電子機器を提供する。
【解決手段】 電子部品1aを実装した回路基板1をケース2内に配設し、電子部品1aとともに回路基板1を充填部材3によって覆い密封する電子機器Eにおいて、ケース2の上端から少なくとも一段低くなった位置に設けられ回路基板1を配設する第一の段差部4と、第一の段差部4よりも下方側に設けられ電子部品1aを収納する収納空間5と、回路基板1に設けられ収納空間5に連通する連通部6と、回路基板1の連通部6に対して回路基板1の一部を間に設けた第一の段差部4に、収納空間5に連通するとともに収納空間5の内側から外側に向かうに従ってすぼまる先細りの第二の段差部7と、を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板をケース内に配設し、前記ケース内に合成樹脂からなる充填部材を充填することによって前記回路基板を覆い密封する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器は、電子部品を実装した回路基板をケース内に配設し、前記ケース内に合成樹脂からなる充填部材を流し込んで前記電子部品とともに回路基板を覆うものである。
【0003】
このような電子機器は、前記ケースの壁部に隣接して仕切り壁を設け、この仕切り壁側の底面と、前記ケースの前記回路基板を収納する収納空間の底面とが連通するように排気部が構成され、前記回路基板を前記収納空間に配設し、この収納空間内に充填部材を充填するとともに、充填中に溜まってしまう気泡を前記排気部から外方へ放出させるものであった。
【特許文献1】実開昭59−182983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような電子機器は、前記ケースの前記仕切り壁に前記排気部を備える構成であるため、小型化できないといった問題を有していた。
【0005】
また、前記排気部を設けたために、前記収納空間内を隅々まで完全に前記充填部材で満たす前に前記排気部から前記充填部材があふれてしまう虞があるという問題を有していた。
【0006】
そこで、本発明は前述した問題点に着目し、回路基板をケースに収納し、充填部材で覆う電子機器において、小型化が可能であり、また、充填部材を充分に充填することが可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子部品を実装した回路基板をケース内に配設し、前記電子部品とともに回路基板を充填部材によって覆い密封する電子機器において、前記ケースの上端から少なくとも一段低くなった位置に設けられ前記回路基板を配設する第一の段差部と、前記第一の段差部よりも下方側に設けられ前記電子部品を収納する収納空間と、前記回路基板に設けられ前記収納空間に連通する連通部と、前記回路基板の前記連通部に対して前記回路基板の一部を間に設けた第一の段差部に、前記収納空間に連通するとともに前記収納空間の内側から外側に向かうに従ってすぼまる先細りの第二の段差部と、を設けたものである。
【0008】
また、本発明は、前記ケースに前記回路基板を位置決めする位置決め部を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、回路基板をケースに収納し、充填部材で覆う電子機器において、小型化が可能であり、また、充填部材を充分に充填することが可能な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を採用した第1実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
本実施形態の電子機器Eは、電子部品1aを実装した回路基板1と、ケース2と、このケース2内に充填される充填部材3とから構成されている。
【0012】
回路基板1は、ガラスエポキシ樹脂などの硬質の絶縁材料からなる基材に、図示しない導電体をその表面に備えたものである。また、回路基板1には、その外周の一部を切り欠いて形成した連通部6を1つ備えている。この連通部6は、ケース2に設けられた後述する収納空間に連通するものである。
【0013】
電子部品1aは、回路基板1の前記導電体に図示しない半田などによって電気的に接続されるものである。本実施形態では、ケース2の後述する収納空間に位置するように、回路基板1の下側の面に実装されている(図3〜5参照)。この電子部品1aは、センサであり、ケース2の外側の図示しない検出対象の変化を検出するものである。なお、図中では、電子部品1a以外は図示されていないが、電子部品1a以外の電子部品を回路基板1に実装してもよい。
【0014】
ケース2は、合成樹脂からなり、その形状は、底2aと、この底2aの周囲を囲む壁部2bを備えたカップ形状である。
【0015】
ケース2の壁部2bの上端から少なくとも一段低くなった位置に第一の段差部4が設けられている。この第一の段差部4に、回路基板1が配設される。
【0016】
そして、この第一の段差部4よりも下方側(底2a)に電子部品1aを収納する収納空間5が設けられている。すなわち、ケース2の底2aに収納空間5を備えており、この収納空間5の周囲に、底2aより一段高い第一の段差部4が形成されている。
【0017】
そして、第一の段差部4の回路基板1の連通部6を設けた側(図1、2中の右側の第一の段差部4)に対して、回路基板1の少なくとも一部を間に設けた第一の段差部4a(図1、2中の左側の第一の段差部4)に、第二の段差部7が設けられている。この第二の段差部7は、回路基板1の上側と下側、すなわち、外部と回路基板1で覆われた収納空間5とを連通するものであり、第二の段差部7を構成する2つの側面7aが、内側から外側に向かうに従って近づいている。すなわち、第二の段差部7は、収納空間5の内側から外側に向かうに従ってすぼまる先細りの形状である。なお、側面7aは、収納空間5の最大幅の部分を始点とし、収納空間5の外側に向かうに従ってすぼまる先細りの形状である。
【0018】
また、ケース2には、回路基板1を位置決めする位置決め部として、三つの位置決めピン8を備えている。三つの位置決めピン3のうち、一つは、第二の段差部7の部分に設けられており、他の二つは、第一の段差部4に設けられている。この位置決めピン8は、回路基板1に設けた貫通孔1bや切り欠き1cと組み合うことで、回路基板1とケース2との位置関係を定めるものである。また、位置決めピン8は、充填部材3が充填され硬化する前に、回路基板1を仮に固定するものでもある。
【0019】
この位置決めピン8によって、後述する充填作業中に回路基板1の位置がずれることを防止し、良好な充填作業を得ることができ、また、回路基板1に設けられた連通部6の位置決めができるため充填部材3の充填作業を機械化することができ、生産性を向上させることができる。
【0020】
充填部材3は、熱などによって硬化する流動性を有する合成樹脂であり、充填装置のニードル9から吐出されて、回路基板1をケース2内に配設し、回路基板1と電子部品1aとを覆い密封し、回路基板1や電子部品1aを水等から保護するものである。
【0021】
次に、充填部材3を充填する行程を説明する。まず、前記充填装置のニードル9を収納空間5内に達するように連通部6に挿入する。
【0022】
次いで、ニードル9から充填部材3を吐出し、連通部6を設けた側から第二の段差部7へと充填部材3が流出するように充填する。この時、収納空間5内に存在した空気などの気体は、充填部材3が収納空間5内に流入することによって、収納空間5の外へ排出される。
【0023】
なお、第二の段差部7が先細りの形状であるために、第二の段差部7から充填部材3が流出するときに、充填部材3が第二の段差部7から排出されにくくなり、第二の段差部7内で充填部材3に加わる圧力が高まり、この圧力によって収納空間5の隅々まで充分に充填部材3で満たすことができる。
【0024】
また、側面7aを、収納空間5の最大幅の部分を始点とし、収納空間5の外側に向かうに従ってすぼまる先細りの形状としたことによって、より充填部材3を収納空間5の隅々までに満たすことができる。
【0025】
そして、ニードル9から充填部材3を吐出し続けて、ケース2内を充填部材3で満たし、電子部品1aと回路基板1を充填部材3によって覆い充填部材3の充填する行程が終了する。なお、充填された充填部材3に熱を加えて硬化させて、電子機器Eが完成する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態の電子機器の上面図。
【図2】同実施形態のケースの上面図。
【図3】図1中A−A線の断面図。
【図4】図1中B−B線の断面図。
【図5】同実施形態の充填行程を示す図。
【符号の説明】
【0027】
E 電子機器
1 回路基板
1a 電子部品
2 ケース
2b 壁部
3 充填部材
4 第一の段差部
5 収納空間
6 連通部
7 第二の段差部
8 位置決め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装した回路基板をケース内に配設し、前記電子部品とともに回路基板を充填部材によって覆い密封する電子機器において、前記ケースの上端から少なくとも一段低くなった位置に設けられ前記回路基板を配設する第一の段差部と、前記第一の段差部よりも下方側に設けられ前記電子部品を収納する収納空間と、前記回路基板に設けられ前記収納空間に連通する連通部と、前記回路基板の前記連通部に対して前記回路基板の一部を間に設けた第一の段差部に、前記収納空間に連通するとともに前記収納空間の内側から外側に向かうに従ってすぼまる先細りの第二の段差部と、を設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ケースに前記回路基板を位置決めする位置決め部を設けたこと特徴とする請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−56351(P2010−56351A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220607(P2008−220607)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】