説明

電子機器

【課題】指紋センサ及びマイクの有用性を低下させることなく、指紋センサ及びマイクの配置及び基板に対する実装の制限を減少させることができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器100は、開口部21eを有する筐体20と、センサ面50aを有し、このセンサ面50aが開口部21eから露出する位置に設けられた指紋センサ50と、音声感知部61を有し、この音声感知部61が開口部21eから露出する位置に設けられたマイク60と、同一面である実装面51aに指紋センサ50及びマイク60が実装されており下部筐体20内に格納されるセンサ搭載基板51とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指紋センサのセンサ面の左右位置にマイクの集音用穴を配置して指紋読取動作の指標とする電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電子機器は、上部筐体と下部筐体とをヒンジ部で接続し、折り畳み可能に構成した携帯電話であり、下部筐体のヒンジ部と逆端に設けられた指紋センサと、指紋センサのセンサ面を二分する線上に左右対称に配置されたマイクの集音用穴とを有し、指紋読取動作時にマイクの集音用穴を指標として、容易に利用者の指をあてる位置を決めることができるため、電子機器を小型化した場合にも確実に指紋読み取りを実行することができる。
【特許文献1】特開2004−318334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電子機器によると、指紋センサのセンサ面を二分する線上に左右対称にマイクの集音用穴を配置する必要があり、下部筐体の意匠的な設計に制限が生じる。また、マイクの集音用穴に合わせてマイクを配置する必要があるため、下部筐体内に設けられる基板上への指紋センサ及びマイクの実装に制限が生じる。また、マイクと集音用穴との配置位置によっては集音性能が低下する恐れがあるという問題がある。
また、マイクは、音響特性上、空間に対して露出しているのが望ましく、筐体内部に実装した場合は筐体表面からマイクまでの距離が短い方が望ましい。よって筐体内部に実装した場合、マイクの実装位置は筐体の表面にできるだけ近づけ、また筐体内部の音を遮断して筐体外部の音のみを集音する構造をとる必要がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、指紋センサ及びマイクの有用性を低下させることなく、指紋センサ及びマイクの配置及び基板に対する実装の制限を減少させることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は上記目的を達成するため、開口部を有する筐体と、センサ面を有し、このセンサ面が前記開口部から露出する位置に設けられた指紋センサと、音声感知部を有し、この音声感知部が前記開口部から露出する位置に設けられたマイクと、同一面側に、前記指紋センサ及び前記マイクが実装されており、前記筐体内に格納された基板とを有することを特徴とする電子機器を提供する。
【0007】
上記した構成によれば、指紋センサとマイクとが同一の基板に実装されて、指紋センサとマイクとが筐体から露出する構成であり、それぞれ専用の基板を用意する必要がないため、製造コストが減少する。また、指紋センサとマイクとを同一の開口部から露出させるため、筐体の設計の制限が減少する。また、マイクを筐体から露出させるので、マイクを筐体内部に配置した場合のように音響特性を損なうことがない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、指紋センサ及びマイクの有用性を低下させることなく、指紋センサ及びマイクの配置及び基板に対する実装の制限を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の電子機器の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
〔第1の実施の形態〕
(電子機器の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の外観を示す概略図である。
【0011】
この電子機器100は、上部筐体10と下部筐体20とから構成され、上部筐体10と下部筐体20とはヒンジ部により開閉自在に接続されている。下部筐体20は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等の電子部品を実装するとともにHDD(Hard Disc Drive)等をコネクタを介して接続するシステム基板であって情報を処理する本体機能部2を内部に有し、文字やコマンドを入力するためのキーボード等の文字入力部3と、ポインティングデバイスとしてのトラックパッド4A及び決定スイッチ4Bと、利用者の認証等に用いる指紋読取部5とを上面20aに有する。
【0012】
また、下部筐体20の形成面としての左側面20e、右側面20f、前面20g、及び背面20hに図示しないUSB(Universal Serial Bus)ポートやLAN(Local Area Network)ポート等のコネクタ端子を備える。上部筐体10は、文字や画像等を表示する液晶表示パネル等からなる画像表示部1を前面20iに有する。
【0013】
本体機能部2は、例えば、電子機器100を起動する際、利用者が電子機器100の利用を許可された人物か否かを確認する認証操作を要求する。この認証操作によって指紋読取部5が使用され、本体機能部2が利用を許可された人物の指紋を読み取ったと判断した場合にのみ電子機器100を起動する。
【0014】
(指紋読取部の構成)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す斜視図である。
【0015】
指紋読取部5は、指紋センサ50とセンサ搭載基板51とを有し、下部筐体20の上面20aに設けられた窪部21の開口部21eからセンサ面50aが露出するように支持される。窪部21は、傾斜することで指を上面20aから連続的にセンサ面50aに導く斜面21a及び斜面21bと、指を滑らせる方向を指紋読取面50bに対して直交するように導く側面21c及び側面21dと、露出するセンサ面50aと略同一形状を有する開口部21eとを有する。
【0016】
また、指紋センサ50は、そのセンサ面50aに指紋を読み取る指紋読取面50bと、樹脂面50c及び50dとを有し、樹脂面50cは音声感知部61によって音声を感知して音声信号を出力する埋設されたマイク60を有する。
【0017】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す概略図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A部における断面図である。
【0018】
この指紋読取部5は、半導体を用いて形成される指紋センサ50と、ガラスエポキシ等の板材を用いて形成されるセンサ搭載基板51とを有し、指紋センサ50とセンサ搭載基板51は半田ボール52により電気的に接続される。
【0019】
指紋センサ50は、センサ面50aにおいて指紋の凹凸を静電容量の差で検出し、指紋読取面50bを図3(a)の図面縦方向に指を移動させることで2次元的にスキャンするラインセンサ50A有し、指紋読取面50b表面と半田ボール52との接点である指紋センサ用電極500、及びマイク用電極501以外は樹脂にて封止されている。また、指紋検出の際に指を滑らせるセンサ面50aは、指紋読取面50bと、指紋読取面50bの両端に位置して指をより指紋読取面50bの中央部へ導くために凸状に形成された樹脂面50cとを含む。
【0020】
指紋読取部5は、樹脂面50cに埋設されたマイク60を有し、音声感知部61は樹脂にて封止されず集音用穴として機能する。マイク60は、半導体プロセスによって製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)マイクであり、例えば、約1mm角の立方体形状を有する。また、マイク60は、無指向性である。
【0021】
指紋読取部5は、センサ面50aと対向する実装面50eに、指紋読取面50bと電気的に接続される指紋センサ用電極500、及びマイク60と電気的に接続されるマイク用電極501を有する。また、センサ搭載基板51は、実装面51aに指紋センサ用電極500と対向する位置に設けられて半田ボール52によって電気的に接続される指紋センサ用電極510と、マイク用電極501と対向する位置に設けられて半田ボール52によって電気的に接続されるマイク用電極511とを有する。
【0022】
センサ搭載基板51は、図示しないプリント配線で指紋センサ用電極510及びマイク用電極511と図示しないコネクタとを電気的に接続している。また、コネクタは、本体機能部2と図示しないコネクタケーブル等で電気的に接続されており、指紋センサ50によって検出された指紋に関する情報、及びマイク60によって検出された音声信号は本体機能部2によって処理される。
【0023】
(動作)
以下に、本発明の第1の実施の形態における電子機器の動作を各図を参照しつつ説明する。
【0024】
画像表示部1の正面に向かった状態において、利用者が奥から手前側に向かい指紋読取部5上を下部筐体20の窪部21に沿って指を接触させ、なぞるように滑らせることで、指は下部筐体20に設けられた窪部21によりセンサ面50aの中央を通過するよう導かれる。指紋読取面50bは、利用者の指から2次元の指紋像を読み取る。実際には、指紋読取面50bは、指紋の凹凸によって生じる静電容量の変化を読み取り、電気的信号に変換し出力する。出力信号は本体機能部2において処理され、指紋認証が行われる。指紋認証は、予め利用者の任意の指の指紋を読み取らせて本体機能部2のメモリ上に記憶されてあるものと照合することにより実行される。
【0025】
また、マイク60は、本体機能部2の制御により動作し、音声感知部61において周囲の音声を検出する。検出した音声は音声信号としてセンサ搭載基板51、及びセンサ搭載基板51と本体機能部2とを結ぶコネクタケーブルを介して本体機能部2へと出力される。
【0026】
(第1の実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、マイク60を一体化して指紋センサ50を形成したため、上面20aにマイク60の集音用穴を設けることなく、音声感知部61を開口部21eから下部筐体20の外へ露出することができる。そのため、下部筐体20の意匠的な設計に対する制限が減少するとともに、下部筐体20の強度が向上する。また、マイク60は、開口部21eから下部筐体20外へ露出しているので、マイク60の音響特性を低下させることがない。
【0027】
また、指紋センサ50とマイク60とを同一のセンサ搭載基板51に実装することで、センサ搭載基板51の実装面積を減少させることができ、マイク60専用の搭載基板を用意せずに済むため、製造コストを抑えることができる。
【0028】
また、無指向性のマイク60を用い、指紋読取部5を上面20aに設けることでより広い範囲の音声を検出可能となるが、指紋読取部5は、上面20aに限らず、底面20b、左側面20e、右側面20f、前面20g、背面20h、又は前面20iに設ける構成としてもよい。
【0029】
〔第2の実施の形態〕
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一の構成および機能を有する部分については共通の符号を付している。
【0030】
指紋センサ50は、そのセンサ面50aに指紋を読み取る指紋読取面50bと、樹脂面50c及び50dとを有し、センサ面50aには指紋センサ50に埋設されたマイク60の集音用穴を伴った音声感知部61を有する。
【0031】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す概略図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は、図5(a)のB−B部における断面図である。
【0032】
指紋センサ50は、センサ面50aにおいて指紋の凹凸を静電容量の差で検出し、図5(a)の図面縦方向に指を移動させることで2次元的にスキャンする指紋読取面50bを有し、指紋読取面50bの中央部分には、マイク60が埋設される。
【0033】
(動作)
本体機能部2は、指紋読取部5のうち、指紋認証の実行時に、指紋センサ50のみ機能させて、マイク60の機能を停止させる。また、指紋認証の実行時以外は、センサ面50aにおいてマイク60のみ機能させて、指紋読取面50bの機能を停止させる。
【0034】
(第2の実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、第1の実施の形態の効果に加え、マイク60を指紋読取面50bの中央に配置したことで、樹脂面50c及び50dをより小型に構成することができ、指紋センサ50を小型化できる。また、マイク60の音声感知部61を指紋センサ50の中央に配置したため、窪部21の形状による音響的な影響を受けにくくなり、有用性が減少しない。
【0035】
また、指紋センサ50とマイク60とを同時に動作させないことから、指紋検出動作時の指とセンサ面50aとの接触音を拾うことがない。
【0036】
なお、指紋センサ50とマイク60は、同一の基板に実装されれば別体に形成してもよい。また、指紋センサ50とマイク60のそれぞれに対して別の開口部を設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の外観を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は、(a)のA−A部における断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の指紋読取部の構成を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は、(a)のB−B部における断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…画像表示部、2…本体機能部、3…文字入力部、4A…トラックパッド、4B…決定スイッチ、5…指紋読取部、10…上部筐体、20…下部筐体、20a…上面、20b…底面、20e…左側面、20f…右側面、20g…前面、20h…背面、20i…前面、21…窪部、21a…斜面、21b…斜面、21c…側面、21d…側面、21e…開口部、50…指紋センサ、50a…センサ面、50b…指紋読取面、50c…樹脂面、50d…樹脂面、50e…実装面、51…センサ搭載基板、51a…実装面、52…半田ボール、60…マイク、61…音声感知部、100…電子機器、500…指紋センサ用電極、501…マイク用電極、510…指紋センサ用電極、511…マイク用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
センサ面を有し、このセンサ面が前記開口部から露出する位置に設けられた指紋センサと、
音声感知部を有し、この音声感知部が前記開口部から露出する位置に設けられたマイクと、
同一面側に、前記指紋センサ及び前記マイクが実装されており、前記筐体内に格納された基板とを有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記指紋センサ、及び前記マイクは、1のモジュールとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記マイクの前記音声感知部は、前記指紋センサの前記センサ面上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記指紋センサ、及び前記マイクは、一方の動作中に他方が動作停止することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記筐体は、筐体形成面から筐体内部方向へ落ち込んで形成された窪部を有し、前記開口部は前記窪部に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記筐体は、上部筐体及び下部筐体から構成されており、前記開口部を前記下部筐体の上面に有することを特徴とする請求項5に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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