説明

電子機器

【課題】機器の小型化を阻害することがなく、然もコストアップを招くことのない静電気放電対策が施された電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器においては、本体シャーシ1にキャビネット3がビス9を用いて締結され、ビス9は、キャビネット3の外側から本体シャーシ1上の合成樹脂製のボス12にねじ込まれてボス12を貫通し、本体シャーシ1には、金属表面を有する部品8が配置され、該部品8の金属表面にビス9の先端が対向している。本体シャーシ1には、接地された金属板7が配置されており、金属板7には、ビス9の先端と部品8の金属表面との間に介在する突片71が形成され、該突片71には、ビス9の先端が貫通可能な貫通孔72が開設され、貫通孔72の内周面とビス9との間の最小ギャップ長Bは、部品8の金属表面とビス9との間の最小ギャップ長Aよりも小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の電子機器に関し、特に静電気放電による電子部品の破損を効果的に抑制した電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等の電子機器においては、静電気による誤動作や電子部品の破損を防止するべく、種々の対策が施されている(特許文献1、2)。
例えば、本体シャーシに外装用のキャビネットがビスを用いて締結されている電子機器においては、前記ビスの先端が本体シャーシ上の金属部分の近傍位置まで延びていることがあり、この様な場合、例えば静電気試験時にビスが帯電すると、該ビスの先端と前記金属部分との間にスパークが発生することがある。そして、スパークが発生する場所によっては、そのスパークによって回路基板上の電子部品が破損する虞がある。
【0003】
そこで、上記の様なスパークの発生を防止するために、ビスが螺合する合成樹脂製のボスを有底筒状に形成して、ビスの先端と金属部分の間を樹脂壁によって絶縁することが行なわれている。
【0004】
或いは、ボスを貫通したビスの先端を、回路基板のグランド電位部に繋がった他の金属部品に螺合させて、ビスの帯電による電荷を回路基板のグランド電位部へ流す接地構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294306号公報
【特許文献2】特開2006−196102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビスが螺合する合成樹脂製のボスを有底筒状に形成して、ビスの先端と金属部分の間を樹脂壁によって絶縁する構造においては、ボスの軸方向の寸法(高さ)が大きくなって、電子機器の小型化を阻害する問題がある。
【0007】
又、ボスを貫通したビスの先端を、回路基板のグランド部に繋がった金属部品に螺合させた構造においては、金属部品にタップ加工を施す必要があるため、工数が増大し、ひいてはコストアップを招く問題がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、機器の小型化を阻害することがなく、然もコストアップを招くことのない簡易な構成の静電気放電対策が施された電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子機器においては、回路基板が搭載された合成樹脂製の本体シャーシに外装用のキャビネットがビスを用いて締結され、該ビスは、キャビネットの外側から本体シャーシのボスにねじ込まれて該ボスを貫通し、本体シャーシには前記回路基板の近傍位置に、金属表面を有する部品が配置され、該部品の金属表面に前記ビスの先端が対向している。
【0010】
ここで、本体シャーシには、前記回路基板上のグランド電位部に接続された金属板が配置されており、該金属板には、前記ビスの先端と前記部品の金属表面との間に介在する突片が形成され、該突片には、前記ビスの先端が貫通可能な貫通孔が開設され、該貫通孔の内周面と前記ビスとの間の最小ギャップ長Bは、前記部品の金属表面と前記ビスとの間の最小ギャップ長Aよりも小さく設定されている。
【0011】
上記本発明の電子機器においては、本体シャーシにキャビネットを締結するためのビスが帯電したとしても、前記金属板に形成された突片の貫通孔内周面とビスとの間の最小ギャップ長Bは、前記部品の金属表面とビスとの間の最小ギャップ長Aよりも小さく設定されているので、ギャップ長のより小さな箇所、即ち、前記金属板に形成された突片とビスとの間で放電が発生して、前記部品の金属表面とビスとの間の放電が防止される。
ここで、前記金属板は回路基板上のグランド電位部に接続されているので、金属板から回路基板上のグランド電位部へ電荷が流れることとなり、回路基板上の電子部品がスパークの発生で損傷する虞はない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子機器によれば、ボスが底を有しない円筒状に形成されて、該ボスをビスが貫通する締結構造が採用されているので、ボスの高さが従来の有底筒状のボスの高さよりも小さくなり、これによって機器の小型化を図ることが出来る。又、金属板の突片には貫通孔が開設されており、ボスを貫通したビスの先端を貫通孔内に収容し得る構造が採用されているので、貫通孔の内周面にタップ加工を施す必要はなく、これによって製造コストの削減を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電子機器の前面側の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る電子機器の背面側の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る電子機器の要部を示す拡大断面図である。
【図4】本体シャーシ上の仕切り板を示す斜視図である。
【図5】本体シャーシのボスと仕切り板の突片を示す拡大斜視図である。
【図6】本体シャーシ上の回路基板を示す斜視図である。
【図7】ビス、突片及びICカードソケットの位置関係を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態であるカメラは、図1及び図2に示す如く、合成樹脂製の本体シャーシ(1)の前面に金属製の前面キャビネット(2)を配置すると共に、本体シャーシ(1)の背面に合成樹脂製の背面キャビネット(3)を配置して、これらを複数本のビスによって互いに締結している。
【0015】
本体シャーシ(1)にはシャッター釦(5)が配備され、前面キャビネット(2)には撮影窓(4)が設けられ、背面キャビネット(3)にはディスプレイ(6)が配備されている。
又、図2に示す如く本体シャーシ(1)の底面には、ICカードと電池を挿脱する際に開閉すべき開閉蓋(11)が取り付けられている。
【0016】
図3に示す如く、本体シャーシ(1)には回路基板(13)が搭載されている。前面キャビネット(2)と背面キャビネット(3)の間には、電池収容室(15)が形成されて、該電池収容室(15)内に電池(10)が収容されている。又、電池収容室(15)に沿ってICカードソケット(8)が配備されており、ICカードソケット(8)と電池(10)は金属製の仕切り板(7)によって仕切られている。
【0017】
図4及び図5に示す如く、本体シャーシ(1)の側壁(14)には、ボス(12)が形成されており、図3に示す様に背面キャビネット(3)の外側から本体シャーシ(1)のボス(12)へビス(9)をねじ込むことによって、本体シャーシ(1)に背面キャビネット(3)が締結されている。
【0018】
本体シャーシ(1)のボス(12)は、図3の如く底を有しない円筒状に形成されて、ビス(9)の先端がボス(12)を貫通している。
又、図4及び図5に示す如く、仕切り板(7)には、本体シャーシ(1)のボス(12)の端面と対向する突片(71)が形成されており、該突片(71)には、ビス(9)の先端が貫通可能な貫通孔(72)が開設されている。
貫通孔(72)は、ビス(9)の中心軸と同心の円形孔であって、ビス(9)の外径よりも大きな内径を有し、その内周面にタップ加工は施されていない。
【0019】
図6に示す如く、仕切り板(7)の端部には、所定の高さを有する複数の舌片(73)(73)が形成されており、該舌片(73)(73)上に回路基板(13)が載置され、複数本のビス(91)(91)によって回路基板(13)が舌片(73)(73)に締結されている。
尚、回路基板(13)の裏面には、仕切り板(7)の舌片(73)(73)と接触する位置に、グランド電位部が形成されており、これによって仕切り板(7)が接地されている。
【0020】
図7に示す様に、仕切り板(7)の突片(71)は、本体シャーシ(1)のボス(12)とICカードソケット(8)の金属製のハウジング(81)との間に介在し、ボス(12)の端面と接触している。
ビス(9)は、ボス(12)にねじ込まれた状態でその先端がボス(12)の端面と揃う長さを有している。仮にビス(9)の長さが寸法公差によって所定値よりも僅かに大きくなった場合、ビス(9)の先端は、突片(71)の貫通孔(72)内に収容されることになる。
【0021】
ICカードソケット(8)のハウジング(81)とビス(9)の先端部との間の最小ギャップ長Aは約0.3mmに設定され、突片(71)の貫通孔(72)の内周面とビス(9)の先端部との間の最小ギャップ長Bは約0.1mmに設定されている。
【0022】
上記カメラにおいては、静電気試験等によってビス(9)が帯電したとしても、突片(71)の貫通孔(72)内周面とビス(9)先端部との間の最小ギャップ長Bは、ICカードソケット(8)のハウジング(81)表面とビス(9)先端部との間の最小ギャップ長Aよりも小さく設定されているので、ギャップ長のより小さな箇所、即ち、突片(71)とビス(9)との間で放電が発生して、ICカードソケット(8)のハウジング(81)表面とビス(9)先端部との間の放電が防止される。
【0023】
ここで、仕切り板(7)は、上述の如く回路基板(13)のグランド電位部に接続されているので、仕切り板(7)から回路基板(13)のグランド電位部へ電荷が流れることとなり、回路基板(13)上の電子部品がスパークの発生で損傷する虞はない。
【0024】
上記カメラによれば、本体シャーシ(1)のボス(12)が底を有しない円筒状に形成されて、該ボス(12)をビス(9)が貫通する締結構造が採用されているので、ボス(12)の高さが従来の有底筒状のボスの高さよりも小さくなり、これによってカメラの小型化を図ることが出来る。又、仕切り板(7)の突片(71)には貫通孔(72)が開設されており、ボス(12)を貫通したビス(9)の先端を貫通孔(72)内に収容し得る構造が採用されているので、貫通孔(72)の内周面にタップ加工を施す必要はなく、これによって製造コストの削減を図ることが出来る。
【0025】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、仕切り板(7)を接地する構造としては、仕切り板(7)を回路基板(13)のグランド電位部に接続する構成に限らず、他の部品のグランド電位部を利用することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
(1) 本体シャーシ
(11) 開閉蓋
(12) ボス
(13) 回路基板
(15) 電池収容室
(2) 前面キャビネット
(3) 背面キャビネット
(7) 仕切り板
(71) 突片
(72) 貫通孔
(8) ICカードソケット
(81) ハウジング
(9) ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体シャーシに外装用のキャビネットがビスを用いて締結され、該ビスは、キャビネットの外側から本体シャーシ上の合成樹脂製のボスにねじ込まれて該ボスを貫通し、本体シャーシには、金属表面を有する部品が配置され、該部品の金属表面に前記ビスの先端が対向している電子機器において、
本体シャーシには、接地された金属板が配置されており、該金属板には、前記ビスの先端と前記部品の金属表面との間に介在する突片が形成され、該突片には、前記ビスの先端が貫通可能な貫通孔が開設され、該貫通孔の内周面と前記ビスとの間の最小ギャップ長Bは、前記部品の金属表面と前記ビスとの間の最小ギャップ長Aよりも小さく設定されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
本体シャーシには、グランド電位部を有する回路基板が配備され、該回路基板の近傍位置に、前記金属表面を有する部品が配置されており、前記金属板は、前記回路基板のグランド電位部に接続されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記金属表面を有する部品はICカードソケットであり、前記金属板は、ICカードソケットと電池とを仕切る仕切り板である請求項1又は請求項2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14239(P2011−14239A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154479(P2009−154479)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】