説明

電子機器

【課題】放熱構造を備える電子機器において、外部から帯電する静電気によって生じる集積回路チップの誤作動及び破壊を防止することができる電子機器の提供。
【解決手段】導電性の放熱部23及び基板200の導電部を電気的に接続する接続体232が設けられている。接続体232が設けられることによって、例えば、静電気が外部から放熱部23に帯電した場合、静電気の放電に係る電流は接続体232を通じて基板200の導電部(接地電位)に流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。特に、集積回路チップの熱を放熱する放熱構造を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、映像記録装置等に用いられるLSI(Large-Scale Integration)、特に大型のLSIは熱を発生する。このため、基板に取り付けられたLSIの表面は、熱伝導性シート(以下、放熱シートという。)で覆われ、更に、LSI及び放熱シートは導電性の放熱部で覆われている。放熱部はビス等によって基板の端部に固定されている。
【0003】
図2は、従来の電子機器5の要部構成を示す断面図である。電子機器5では、基板500に略矩形のLSI51が配置されており、LSI51は、半田によって基板500に固定される。LSI51は、基板500の配線に従って、映像信号、画像等を処理する。
【0004】
LSI51の表面は矩形の放熱シート52によって覆われている。放熱シート52は、LSI51が発生する熱を放熱する。また、放熱シート52は、絶縁性を有しており、後述する導電性の放熱部53とLSI51とが電気的に接続することを抑制する。
【0005】
放熱部53は、一面が開放された略箱体状をなし、開放口を構成する夫々の辺から外側に向かって、側面に垂直な方向に延出した矩形の延出部531を有する。放熱部53はLSI51及び放熱シート52の全体を覆い、放熱シート52に密着している。放熱部53は、放熱シート52を伝わった熱を放熱する。また、延出部531は、導電性を有する複数のビス54,54,・・・,54によって、基板500の端部に固定される。これにより、放熱部53と基板500の導電部(図示せず)とはビス54によって電気的に接続される。
【0006】
一般に、LSIは静電気に弱く、LSIに静電気が放電した場合、LSIは静電気によって誤動作を起こしたり、破壊されたりすることがある。電子機器5に、摩擦等によって発生した静電気が外部から放熱部53に帯電した場合、静電気の放電に係る電流は放熱部53を導電し、ビス54を介して基板500の導電部(接地電位)に流れる。このため、静電気はLSI51に放電することはなく、LSI51の誤動作及び破壊は生じない。
【0007】
しかしながら、通常、放熱部53は、1つのLSI51だけを覆うことはない。複数のLSI51,51,・・・,51及び/又は抵抗器、コンデンサー等の電子部品(図示せず)が基板500に設けられている。これらは放熱部53によって覆われている。従って、LSI51に対して基板500は非常に大きく、LSI51と基板500の端部に設けられたビス54との距離は非常に長い。
【0008】
このことから、摩擦等によって発生した静電気が外部から放熱部53に帯電すると、静電気が放熱シート52を伝わって、LSI51に放電する危険が生じる。この場合、LSI51は、静電気によって、誤作動したり、破壊されたりする可能性がある。
【0009】
特許文献1には、静電気による破壊を防ぐことができる半導体集積回路装置が開示されている。その半導体集積回路装置は、モールドとモールド内に設けられたダイパットと、ダイパット上に設けられた半導体集積回路チップと、モールドの外に突出し、半導体集積回路チップに銅線を介して接続されるリードとを備える。特許文献1に記載の半導体集積回路装置では、ダイパットの一部がモールドの外に突出しており、半導体集積チップに印加した静電気を除く除電部が設けられている。
従って、除電部を接地することによって、半導体集積回路チップの帯電を防ぐことができる。また、半導体集積回路チップに帯電した静電気の放電に係る電流は除電部から接地に流れるので、半導体集積回路チップは静電気によって破壊されない。
【0010】
特許文献2には、電子素子から発生された電磁ノイズをシールドする電子機器が開示されている。その電子機器では、プリント基板に実装された電子素子がシールドケースで覆われ、シールドケースがプリント基板の導電部(接地電位)と電気的に接続されている。
電子素子が発生した電磁ノイズはシールドケースによってシールドされ、電磁ノイズが外部に漏れ出ることはない。この場合、電子素子によって発生された電磁ノイズが他の電子機器に誤動作させることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−299556号公報
【特許文献2】特開2002−368481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されている半導体集積回路装置は、外部からの静電気を防止することができるが、放熱シート、放熱部等を備えていない。従って、半導体集積回路チップから発生される熱は放熱されず、半導体集積回路チップが高温になるという問題がある。この場合、半導体集積回路装置の誤動作、半導体集積回路チップの損傷等が生じる可能性がある。
【0013】
また、特許文献2に記載されている電子機器では、導電性を有するシールドケースは、電子素子によって発生される電磁ノイズをシールドし、放熱部材としても機能するため、電子機器が高温になることはない。しかしながら、シールドケースは導電性を有してあり、電子素子と接しているため、外部からの静電気がシールドケースに帯電した場合、電子素子に静電気が容易に放電してしまう問題がある。この場合、静電気によって電子素子が誤動作する可能性がある。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、放熱構造を有する電子機器において、外部から帯電した静電気によって生じる集積回路チップの誤動作及び破壊を防止することができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る電子機器は、基板に実装された集積回路チップと、該集積回路チップの表面を覆い、該表面の熱を放熱する絶縁シートと、一部が開放された箱体状をなし、前記基板とで前記集積回路チップ及び絶縁シートを覆い、該絶縁シートを伝わった熱を放熱する導電性の放熱部とを備える電子機器において、前記基板にある導電部及び放熱部を電気的に接続する接続体を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、集積回路チップが基板に実装されている。絶縁シートが、集積回路チップの表面を覆い、表面の熱を放熱する。一部が開放された箱体状をなし、導電性を有する放熱部が集積回路チップ及び絶縁シートを覆い、絶縁シートから伝わった熱を放熱する。接続体が基板にある導電部及び放熱部を電気的に接続する。
接続体は、例えば、静電気が放熱部に外部から帯電した場合、静電気の放電に係る電流を基板の導電部(接地電位)に逃がし、静電気が集積回路チップに放電することを防ぐ。
【0017】
本発明に係る電子機器は、前記接続体は、前記放熱部の静電気が前記集積回路チップに放電することを防止することができる該集積回路チップの近傍位置に設けてあることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、接続体は、放熱部の静電気が集積回路チップに放電することを防止することができる集積回路チップの近傍位置に設けてある。この場合、放熱部の静電気が集積回路チップに放電することを防止する。
【0019】
本発明に係る電子機器は、前記基板は外部装置と接続される接続端子を備え、前記接続体は、前記集積回路チップ及び接続端子の間に設けてあることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、外部装置と接続される接続端子が基板に備えられている。接続体が集積回路チップ及び接続端子の間に設けてある。
接続体は、例えば、外部から放熱部に帯電した静電気が集積回路チップ及び接続端子の間を伝搬する信号を乱すことを防止する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、放熱構造を備える電子機器において、外部から帯電する静電気によって生じる集積回路チップの誤動作及び破壊を防止することができる電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態における電子機器の要部構成を示す断面図である。
【図2】従来の電子機器の要部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態における電子機器2の要部構成を示す断面図である。電子機器2では、矩形の基板200に略矩形状のLSI21(集積回路チップ)が設けられている。LSI21は、半田によって基板200に固定される。LSI21は、基板200の配線に従って、映像信号、画像等を処理する。
【0024】
LSI21の表面は放熱シート22(絶縁シート)によって覆われている。放熱シート22は絶縁性及び熱伝導性を有する。このため、放熱シート22は、LSI21が発生する熱を放熱し、LSI21及び後述する放熱部23が電気的に接続することを抑制する。この場合、LSI21は、高温になることがないため、温度によって誤作動することはなく、自身が損傷されることはない。また、放熱シート22は、静電気が放熱部23を通じてLSI21に放電することを抑制している。
【0025】
また、電子機器2は放熱部23を備えている。放熱部23は、一面が開放された略箱体状の形状をしており、開放口を構成する夫々の辺から側面に垂直な方向に外側に向かって延出した矩形の延出部231を有している。また、放熱部23は、開放された面に対向する面から垂直な方向に突出し、基板200の導電部(図示せず)と電気的に接続する接続体232を有する。接続体232は、放熱部23と一体に成形され、円柱状であり、先端が尖った構造をしている。
なお、電子機器2が使用された場合、基板200の導電部における電位は回路の接地電位である。また、接続体232の形状は円柱状に限定されない。接続体232は、放熱部23と基板200の導電部とを電気的に接続できれば良いため、四角柱等であっても良い。
【0026】
放熱部23は、放熱シート22の表面と、LSI21及び放熱シート22の側面とを覆うように配置され、放熱シート22の表面と接している。放熱部23は、放熱シート22を伝わった熱及び基板200に設けられた電子部品等(図示せず)が放出する熱を放熱する。ここで、電子部品は抵抗器、コンデンサー等である。放熱部23は、基板200に設けられている電子部品等も覆い、延出部231は、複数のビス24,24,・・・,24によって基板200の端部に固定される。ビス24は、導電性を有しており、放熱部23及び基板200の導電部を電気的に接続している。
【0027】
接続体232は、放熱部23の静電気がLSI21に放電することを防止することができるLSI21近傍、かつLSI21及び基板200に設けられて外部装置と接続する接続端子(図示せず)の間に配置されている。また、接続体232は、基板200の導電部と電気的に接続している。
これにより、例えば、外部から静電気が放熱部23に帯電した場合、帯電した静電気の放電に係る電流は、接続体232を通じて基板200の導電部(接地電位)に流れる。静電気が放熱シート22を介してLSI21に印加する確率は低くなる。また、静電気が接続端子とLSI21との間を伝搬する信号を乱す確率は低くなる。LSI21がビス24から遠い程、静電気は放熱シート22を介してLSI21に帯電する確率が高くなるため、接続体232が果たす効果は大きくなる。
【0028】
接続体232の先端は尖っており、接続体232は、基板200に開けられた穴に挿入される。そして、接続体232は、半田によって基板200と固定され、基板200の導電部と電気的に接続される。なお、接続体232と基板200との接続方法は、これに限定されない。
例えば、接続体232にスプリングと呼ばれる伸縮性のある棒を用いても良い。この場合、接続体232は放熱部23に固定されており、接続体232の長さは、基板200と放熱部23の凹部との距離よりも長い。放熱部23と基板200とで接続体232を挟むことによって、接続体232は基板200の導電部と接触する。接続体232の先端は、基板200のレジストが剥ぎ取られた部分(導電部)に接触し、放熱部23及び基板200の導電部は電気的に接続される。接続体232は、放熱部23を基板200に固定する圧力によって、基板200に固定される。この場合、接続体232が基板200に余計な圧力を加えることが防止される。
【0029】
また、接続体232の数は1つに限定されない。複数の接続体232,232,・・・,232が放熱部23に設けられても良い。この場合、外部から帯電した放熱部23の静電気が、放熱シート22を介してLSI21に放電する確率はより低くなる。
【0030】
また、電子機器2が備えるLSI21は1つに限定されない。複数のLSI21,21,・・・,21及び夫々のLSI21を覆う複数の放熱シート22,22,・・・,22が電子機器2に備えられていても良い。更に、この場合、接続体232の数及び配置位置は限定されない。1つのLSI21の近傍に、複数の接続体232を設けても良い。また、重要な役割を果たすLSI21の近傍により多くの接続体232を設けても良い。
【0031】
なお、放熱部23がなす形状は、一面を開放された箱体状に限定されない。例えば、一部が開放された箱体状でも良い。
【0032】
本発明に係る電子機器にあっては、接続体232を設けることによって、例えば、外部から静電気が放熱部23に帯電した場合、静電気の放電に係る電流が接続体232を伝わって基板の導電部(接地電位)に流れ出るため、放熱部23の静電気がLSI21に放電する確率を低くすることができる。この場合、静電気によって生じるLSI21の誤作動及び破壊を防止することができる。
また、複数の接続体232,232,・・・,232が設けられ、夫々の接続体232が伸縮性のない金属であり、半田で固定された場合、放熱部23をより強く基板200に固定することができる。この場合、例えば、放熱部23及び基板200を固定する複数のビス24,24,・・・,24を除くことできる又はビス24の数を減らすことができる。
【0033】
本発明に係る電子機器にあっては、接続体232が静電気に弱いLSI21の近傍にあるため、例えば、静電気が放熱部23に帯電した場合、静電気がLSI21に放電する確率をより低くすることができる。この場合、静電気によって生じるLSI21の誤作動及び破壊を防止することができる。
【0034】
本発明に係る電子機器にあっては、接続体232がLSI21及び基板200に設けられて外部装置と接続する接続端子の間に設けられているため、例えば、静電気が放熱部23に帯電した場合、静電気がLSI21と接続端子との間を伝搬する信号を乱す確率を低くすることができる。
【符号の説明】
【0035】
2 電子機器
200 基板
21 LSI(集積回路チップ)
22 放熱シート(絶縁シート)
23 放熱部
232 接続体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装された集積回路チップと、
該集積回路チップの表面を覆い、該表面の熱を放熱する絶縁シートと、
一部が開放された箱体状をなし、前記基板とで前記集積回路チップ及び絶縁シートを覆い、該絶縁シートを伝わった熱を放熱する導電性の放熱部と
を備える電子機器において、
前記基板にある導電部及び放熱部を電気的に接続する接続体を備えること
を特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記接続体は、前記放熱部の静電気が前記集積回路チップに放電することを防止することができる該集積回路チップの近傍位置に設けてあること
を特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記基板は外部装置と接続される接続端子を備え、
前記接続体は、前記集積回路チップ及び接続端子の間に設けてあること
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−222543(P2011−222543A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86261(P2010−86261)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】