説明

電子機器

【課題】筐体の破損を回避しつつ2つの筐体間のがたつきを効率的に抑制すること。
【解決手段】電子機器は、第1筐体と、第1筐体に可動自在に連結された第2筐体と、第2筐体の第1筐体と対向する面に配置された第1弾性部材と、第1筐体の第2筐体と対向する面に配置され、2筐体と第1筐体とが重なり合った閉状態において第1弾性部材に弾性的に接触する凸部を有する第2弾性部材とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの電子機器として、2つの筐体を互いに可動自在に連結したものが知られている。2つの筐体は、スライド機構などの可動機構を介して連結される。スライド機構は、スライダを含んでおり、このスライダを他の部品に対して摺動させることにより、2つの筐体を互いにスライドさせる。スライダを他の部品に対して滑らかに摺動させるために、一般にスライダと他の部品との間には隙間が設けられており、この隙間が、2つの筐体間の相対的ながたつきの原因となる。
【0003】
下記先行技術文献1では、2つの筐体のうち一方の筐体に長手方向に延びる溝を形成するとともに、該溝を貫通する突起部を他方の筐体に設けることにより、2つの筐体間のがたつきを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−93999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術文献1に記載の技術では、2つの筐体間のがたつきを効率よく抑制することができない。
【0006】
すなわち、2つの筐体のうち一方の筐体の溝に他方の筐体の突起部を貫通させる従来技術では、一方の筐体を他方の筐体に対して滑らかにスライドさせるために、溝と突起部との間に微小な隙間が設けられる。このため、従来技術では、溝と突起部との間の微小な隙間が2つの筐体間のがたつきを引き起こす恐れがある。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、2つの筐体間のがたつきを効率的に抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願に開示する電子機器は、第1筐体と、前記第1筐体に可動自在に連結された第2筐体と、前記第2筐体の前記第1筐体と対向する面に配置された第1弾性部材と、前記第1筐体の前記第2筐体と対向する面に配置され、前記第2筐体と前記第1筐体とが重なり合った閉状態において前記第1弾性部材に弾性的に接触する凸部を有する第2弾性部材とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する電子機器の一つの態様によれば、2つの筐体間のがたつきを効率的に抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例に係る携帯電話機の表示側筐体をスライドさせずに閉じた状態の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施例に係る携帯電話機の表示側筐体をスライドさせて開いた状態の外観を示す斜視図である。
【図3】図3は、本実施例に係る携帯電話機の表示側筐体をスライドさせずに閉じた状態を示す平面図である。
【図4】図4は、表示側筐体を操作側筐体側から見た平面図である。
【図5】図5は、操作側筐体を表示側筐体側から見た平面図である。
【図6】図6は、第1弾性部材の拡大平面図である。
【図7】図7は、図6に示した第1弾性部材の側面図である。
【図8】図8は、第2弾性部材の拡大平面図である。
【図9】図9は、図8に示した第2弾性部材の側面図である。
【図10】図10は、図3に示した携帯電話機のP−P線部分の矢視断面図である。
【図11】図11は、図3に示した携帯電話機のQ−Q線部分の矢視断面図である。
【図12】図12は、携帯電話機の開状態において第1弾性部材と第2弾性部材とが未だ接触していない態様を示す図である。
【図13】図13は、携帯電話機が開状態から閉状態へ遷移する直前において第1弾性部材と第2弾性部材とが接触した状態を示す図である。
【図14】図14は、携帯電話機の閉状態において第1弾性部材と第2弾性部材とが接触した態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する電子機器の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本願の開示する電子機器が限定されるものではない。例えば、以下の実施例では、電子機器の一例として携帯電話機を挙げて説明するが、これに限らず、PDA(Personal Digital Assistant)などの他の電子機器にも以下の実施例を適用することができる。
【実施例】
【0012】
図1は、本実施例に係る携帯電話機の表示側筐体をスライドさせずに閉じた状態の外観を示す斜視図である。図2は、本実施例に係る携帯電話機の表示側筐体をスライドさせて開いた状態の外観を示す斜視図である。図3は、本実施例に係る携帯電話機の表示側筐体をスライドさせずに閉じた状態を示す平面図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、本実施例の携帯電話機100は、表示側筐体110と操作側筐体120とを備える。表示側筐体110には、例えばLCD(Liquid Crystal Display)素子等で構成される表示部112や、携帯電話機100の各種操作を行うための複数のキーを含む操作部114が設置される。一方、操作側筐体120には、携帯電話機100の各種操作を行うための複数のキーを含む操作部122が設置される。また、操作側筐体120の側面には、例えば通話音量の調整用の操作キー124が設定される。
【0014】
表示側筐体110と操作側筐体120とは、図示しないスライド機構を介して相対的にスライド移動自在に連結されている。図1は、表示側筐体110がスライドされておらず、表示側筐体110と操作側筐体120とが全面的に重なり合っている閉状態を示している。また、図2は、表示側筐体110がスライドされて、表示側筐体110と操作側筐体120とが最小の重なり範囲で重なった開状態を示している。このようなスライド型の携帯電話機100は、一般に、使用時には表示側筐体110と操作側筐体120とが最小の重なり範囲で重ねられて開状態となる。開状態では操作側筐体120の操作部122が外部へ露出する。一方、スライド型の携帯電話機100は、非使用時には表示側筐体110と操作側筐体120とが全面的に重ねられて閉状態となる。閉状態では操作側筐体120の操作部122が表示側筐体110により覆われる。
【0015】
続いて、携帯電話機100の閉状態における表示側筐体110と操作側筐体120との対向面の詳細を説明する。図4は、表示側筐体110を操作側筐体120側から見た平面図である。図5は、操作側筐体120を表示側筐体110側から見た平面図である。なお、図4および図5では、表示側筐体110と操作側筐体120とを連結するスライド機構の図示を省略している。
【0016】
図4に示すように、表示側筐体110の操作側筐体120と対向する面は、略長方形状に形成される。表示側筐体110の操作側筐体120と対向する面には、一方の短辺側に操作側筐体120に向けて膨出する膨出部130が形成されており、膨出部130内の空間には、スピーカやカメラモジュールなどの各種の部品が収容される。また、表示側筐体110の操作側筐体120と対向する面には、一方の短辺の両端の隅に膨出部130を挟み込むように第1弾性部材140が配設される。
【0017】
一方、図5に示すように、操作側筐体120の表示側筐体110と対向する面は、略長方形状に形成される。操作側筐体120の表示側筐体110と対向する面には、一方の短辺側に表示側筐体110と離れる方向に凹む凹部150が形成されており、凹部150は、閉状態において表示側筐体110の膨出部130を吸収する。また、操作側筐体120の表示側筐体110と対向する面には、一方の短辺の両端の隅に凹部150を挟み込むように第2弾性部材160が配設される。
【0018】
ここで、第1弾性部材140および第2弾性部材160の詳細を説明する。図6は、第1弾性部材140の拡大平面図である。図7は、図6に示した第1弾性部材140の側面図である。図8は、第2弾性部材160の拡大平面図である。図9は、図8に示した第2弾性部材160の側面図である。なお、図6は、図4に示した第1弾性部材140の拡大平面図であり、図8は、図5に示した第2弾性部材160の拡大平面図である。
【0019】
図6および図7に示すように、第1弾性部材140は、エラストマなどの弾性材料で側面視略台形の板状に形成され、表示側筐体110の操作側筐体120と対向する面に配設される。第1弾性部材140の操作側筐体120側の上面142は、平面状に形成される。
【0020】
一方、図8および図9に示すように、第2弾性部材160は、エラストマなどの弾性材料で形成され、操作側筐体120の表示側筐体110と対向する面に配設される。第2弾性部材160には、略長方形状の基部162から表示側筐体110に向けて延出する凸部164と、基部162の外周面から外側面へ突出する突起部166とが形成される。
【0021】
続いて、携帯電話機100の閉状態における第1弾性部材140および第2弾性部材160の設置状態を説明する。図10は、図3に示した携帯電話機100のP−P線部分の矢視断面図である。図11は、図3に示した携帯電話機100のQ−Q線部分の矢視断面図である。
【0022】
図10および図11に示すように、第1弾性部材140は、表示側筐体110の操作側筐体120と対向する面に形成された陥没部に貼り付けにより設置される。第1弾性部材140は、携帯電話機100の閉状態において、操作側筐体120側の第2弾性部材160に対応する位置に配置される。
【0023】
一方、第2弾性部材160は、操作側筐体120の表示側筐体110と対向する面に形成された陥没部に貼り付けにより設置される。第2弾性部材160は、携帯電話機100の閉状態において、表示側筐体110側の第1弾性部材140に対応する位置に配置される。
【0024】
第2弾性部材160の凸部164は、携帯電話機100の閉状態において、第1弾性部材140の上面142に弾性的に接触する。これにより、第2弾性部材の凸部164は、第1弾性部材140に対して弾性による押圧力を付与するとともに、第1弾性部材140からの弾性による反発力を受ける。また、第1弾性部材140の上面142に弾性的に接触する凸部164の頂部164aは、第1弾性部材140の上面142に対応する平面状に形成される。これにより、凸部164の頂部164aを第1弾性部材140の上面142に対して面接触させることができ、第1弾性部材140に対して弾性による押圧力を効率的に付与することができる。また、凸部164の側面部164bは、第1弾性部材140の上面142に直接接触しないように傾斜面状に形成される。これにより、表示側筐体110がスライドされて携帯電話機100が開状態から閉状態に、又は、閉状態から開状態に遷移する際に、凸部164の側面部164bが第1弾性部材140に直接接触して表示側筐体110のスライドが阻害されることを回避できる。
【0025】
また、第2弾性部材160の突起部166は、携帯電話機100の閉状態において、表示側筐体110に形成された膨出部130の側面に近接する。膨出部130の側面と膨出部130の側面に近接する突起部166との間隔は、突起部166が膨出部130の側面と直接接触しないような寸法を適宜選択することができるが、例えば0.05mm以下とすることができる。このように、第2弾性部材160の突起部166を表示側筐体110の膨出部130の側面に近接することにより、凸部164と第1弾性部材140との弾性接触が解放された場合に位置ずれする表示側筐体110の膨出部130に突起部166を当接可能である。
【0026】
続いて、携帯電話機100が開状態から閉状態へ遷移する場合の第1弾性部材140と第2弾性部材160との接触態様を説明する。図12は、携帯電話機100の開状態において第1弾性部材140と第2弾性部材160とが未だ接触していない態様を示す図である。図13は、携帯電話機100が開状態から閉状態へ遷移する直前において第1弾性部材140と第2弾性部材160とが接触した状態を示す図である。図14は、携帯電話機100の閉状態において第1弾性部材140と第2弾性部材160とが接触した態様を示す図である。
【0027】
図12に示すように、表示側筐体110がスライドされて表示側筐体110と操作側筐体120とが最小の重なり範囲で重なった開状態では、表示側筐体110の第1弾性部材140と操作側筐体120の第2弾性部材160とは接触していない。
【0028】
表示側筐体110を操作側筐体120に対して長手方向にスライドさせることにより、携帯電話機100は、図13に示すように、図12に示した開状態から閉状態へ遷移する直前の状態となる。図13に示した状態では、第2弾性部材160の凸部164が第1弾性部材140の上面142に弾性的に接触し始める。すると、第2弾性部材160の凸部164の頂部164aが、第1弾性部材140の上面142に対して弾性による押圧力を付与するとともに、第1弾性部材140の上面142から弾性による反発力を受け、凸部164が弾性変形し始める。このとき、凸部164の側面部164bは、第1弾性部材140の上面142に接触しない。
【0029】
次いで、図14に示すように、表示側筐体110と操作側筐体120とが全面的に重ねられた閉状態では、第2弾性部材160の凸部164は、第1弾性部材140の上面142に最大の接触範囲で弾性的に接触する。すると、第2弾性部材160の凸部164の頂部164aは、第1弾性部材140の上面142に面接触して第1弾性部材140の上面142に対して最大の押圧力を付与するとともに、第1弾性部材140の上面142から最大の反発力を受ける。これにより、表示側筐体110と操作側筐体120とに互いに離反する方向の力が作用し、この力が表示側筐体110と操作側筐体120とを互いに位置決め固定するため、表示側筐体110と操作側筐体120との間のがたつきを効率的に抑制可能である。また、第2弾性部材160の凸部164は、第1弾性部材140の上面142に弾性的に接触するため、表示側筐体110や操作側筐体120の破損を回避することができる。
【0030】
上述してきたように、本実施例では、操作側筐体120に配設された第2弾性部材160の凸部164が、可動していない表示側筐体110と操作側筐体120とが重なり合った閉状態において表示側筐体110に配設された第1弾性部材140に弾性的に接触する。このため、本実施例によれば、筐体の破損を回避しつつ2つの筐体間のがたつきを効率的に抑制することができる。
【0031】
また、本実施例では、第1弾性部材140に弾性的に接触する凸部164の頂部164aは、平面状に形成されている。このため、本実施例によれば、凸部164の頂部164aを第1弾性部材140の上面142に対して面接触させることができ第1弾性部材140に対して弾性による押圧力を効率的に付与することができる。その結果、2つの筐体間のがたつきをより効率的に抑制することができる。
【0032】
また、本実施例では、凸部164の側面部164bは、傾斜面状に形成されている。このため、本実施例によれば、凸部164の側面部164bが第1弾性部材140に直接接触して表示側筐体110のスライドが阻害されることを回避できる。
【0033】
また、本実施例では、第2弾性部材160は、表示側筐体110に形成された膨出部130の側面に近接する突起部166を含む。このため、本実施例によれば、凸部164と第1弾性部材140との弾性接触が解放された場合に位置ずれする表示側筐体110の膨出部130に突起部166を当接することができ、2つの筐体間のがたつきを可及的に防止可能である。
【0034】
(他の実施例)
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において、種々の異なる実施例にて実施することもできる。
【0035】
すなわち、本実施例では、表示側筐体110と操作側筐体120とをスライド移動自在に連結するスライド機構を用いたスライド方式の携帯電話機を例に挙げて説明したが、本願の開示する電子機器は、スライド方式以外の携帯電話機にも適用することができる。例えば、本願の開示する電子機器は、折り畳み方式や平面回転方式の連結機構により一方の筐体に対して他方の筐体を可動自在とした携帯電話機にも同様に適用することができる。
【0036】
また、本実施例では、電子機器を携帯電話機へ適用する例を説明したが、本願の開示する電子機器は、これに限定されるものではない。例えば、本願の開示する電子機器は、PDAのような小型情報処理端末、小型音楽再生装置、携帯テレビ、携帯型ゲーム機等の他の各種の電子機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
100 携帯電話機
110 表示側筐体
112 表示部
114 操作部
120 操作側筐体
122 操作部
124 操作キー
130 膨出部
140 第1弾性部材
142 上面
150 凹部
160 第2弾性部材
162 基部
164 凸部
164b 側面部
164a 頂部
166 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
前記第1筐体に可動自在に連結された第2筐体と、
前記第2筐体の前記第1筐体と対向する面に配設された第1弾性部材と、
前記第1筐体の前記第2筐体と対向する面に配設され、前記第2筐体と前記第1筐体とが重なり合った閉状態において前記第1弾性部材に弾性的に接触する凸部を含む第2弾性部材と
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1弾性部材に弾性的に接触する前記凸部の頂部は、平面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1弾性部材に弾性的に接触する前記凸部の側面部は、傾斜面状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2筐体の前記第1筐体と対向する面には、前記第1筐体に向けて膨出する膨出部が形成され、
前記第2弾性部材は、前記閉状態において前記膨出部の側面に近接する突起部をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−105084(P2012−105084A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252111(P2010−252111)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(592019877)富士通周辺機株式会社 (149)
【Fターム(参考)】