説明

電子機器

【課題】筐体内への塵埃の吸い込みによる不具合の発生が防止され、且つ、筐体内に配置された複数の電子部品の各々が、冷却風の流動方向での位置にかかわらず、確実に冷却される電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器(10)は、冷却筒(30)の内側を、第1発熱部品(20a)側の第1通路(42a)と第1発熱部品(20a)から離れた第2通路(42b)とに仕切る第1仕切り板(36と、冷却筒(30)の内側を、第2発熱部品(20b)側の第3通路(42c)と第2発熱部品(20b)から離れた第4通路(42d)とに仕切る第2仕切り板(38)と、第1通路(42a)と第4通路(42d)とを繋ぐか、第2通路(42b)と第3通路(42c)とを繋ぐか、又は、第1通路(42a)と第4通路(42d)とを繋ぐとともに第2通路(42b)と第3通路(42c)とを繋ぐ通路切替部材(40)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体内に発熱部品を有する電子機器では、発熱部品の温度上昇を抑制するために、一般に、筐体に吸気口及び排気口が設けられ、吸気口又は排気口に冷却ファンが取り付けられる。発熱部品にはヒートシンクが取り付けられ、吸気口から排気口に向かう冷却風がヒートシンクに接触することによって、発熱部品で発生した熱がヒートシンクを介して冷却風に渡され、筐体の外部に運ばれる。
【0003】
特許文献1が開示する制御盤では、冷却風のための専用の通路(冷却通路)として、筐体内にエアダクト部が形成され、エアダクト部に放熱フィンが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−245408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するように、電子部品等が設置される空間と冷却通路との間を仕切れば、冷却通路に塵埃が吸い込まれても、塵埃が電子部品の接点や回路基板の配線パターンに付着することがなく、塵埃による不具合の発生が防止される。
ただし、筐体内に、冷却通路を設け、複数の電子部品を冷却しようとした場合、上流側の電子部品からの熱によって冷却風の温度が上昇してしまう。このため、冷却風の流動方向にて下流側に位置する電子部品を充分に冷却することが困難である。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、筐体内への塵埃の吸い込みによる不具合の発生が防止され、且つ、筐体内に配置された複数の電子部品の各々が、冷却風の流動方向での位置にかかわらず、確実に冷却される電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、吸気口及び排気口を有する筐体と、前記筐体内に配置された回路基板と、前記筐体内に配置され、前記吸気口と前記排気口の間を延びる冷却筒と、前記冷却筒内を流れる空気流を生成する冷却ファンと、前記回路基板に実装され、前記冷却筒に接触する第1発熱部品と、前記回路基板に実装され、前記空気流の流動方向でみて、前記冷却筒に対し前記第1発熱部品よりも下流側にて接触する第2発熱部品と、前記冷却筒の内側に前記第1発熱部品及び前記第2発熱部品の位置に対応して配置された放熱フィンと、前記吸気口から前記第1発熱部品までの前記冷却筒の第1区間において、前記冷却筒の内側を、前記第1発熱部品側の第1通路と前記第1発熱部品から離れた第2通路とに仕切る第1仕切り板と、前記排気口側から前記第2発熱部品までの前記冷却筒の第2区間において、前記冷却筒の内側を、前記第2発熱部品側の第3通路と前記第2発熱部品から離れた第4通路とに仕切る第2仕切り板と、前記冷却筒の内側に配置され、前記第1通路と前記第4通路とを繋ぐか、前記第2通路と前記3通路とを繋ぐか、又は、前記第1通路と前記第4通路とを繋ぐとともに前記第2通路と前記3通路とを繋ぐ通路切替部材とを備える電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成にて、筐体内への塵埃の吸い込みによる不具合の発生が防止され、且つ、筐体内に配置された複数の電子部品の各々が、冷却風の流動方向での位置にかかわらず、確実に冷却される電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の電子機器を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う電子機器の断面を、仕切り部材のみ側面にて概略的に示す図である。
【図3】図2中のダクト及び仕切り部材を、ダクトの一部を切り欠いて示す概略的な斜視図である。
【図4】第2実施形態の電子機器の断面を、仕切り部材のみ側面にて概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電子機器10を正面斜め上方から見た概略的な斜視図である。電子機器10は、例えばスイッチングハブである。
【0011】
電子機器10は金属製の筐体12を有し、筐体12は、例えば、1辺が他の2辺よりも短い扁平な箱形状をなしている。筐体12の前面パネル14は細長の四角形状を有し、前面パネル14においては、ポート16が表出している。
電子機器10は、1つのポート16によって受信したフレームを宛先に応じて、他のポート16から送信する。
【0012】
図2は、図1のII−II線に沿う、電子機器10の概略的な断面を示す図である。
筐体12内には、回路基板18が設置され、回路基板18には、フレームの中継回路を構成する電子部品が実装されている。本実施形態では、電子部品として、例えば、2つのLSI20a,20bが実装されている。
【0013】
また、筐体12の前面パネル14には吸気口22が形成され、筐体12の背面24には排気口26が形成されている。筐体12の背面には、排気口26を覆うように冷却ファン28が固定されている。
【0014】
筐体12内には、金属製のダクト(冷却筒)30が配置されている。ダクト30は角筒形状を有し、両端に開口端を有する。ダクト30の両端は筐体12の吸気口22及び排気口26に隙間無く固定され、ダクト30の両端は、吸気口22及び排気口26を通じて外部と連通している。冷却ファン28は、作動させられると、ダクト30内において、吸気口22から排気口26に向かう冷却風の流れを生成する。
【0015】
ダクト30の1つの壁(底壁)30aは、回路基板18と対向し、且つ、LSI20a,20bに接している。壁30aの内面には、LSI20a,20bの位置にそれぞれ対応して、放熱フィン32a,32bが固定されている。従って、LSI20aと放熱フィン32aは壁30aを挟んでおり、同様に、LSI20bと放熱フィン32bも壁30aを挟んでいる。
【0016】
ダクト30の内部には、仕切り部材34が配置されている。仕切り部材34は、吸気口22側の平坦な第1仕切り板36と、排気口26側の平坦な第2仕切り板38と、第1仕切り板36と第2仕切り板38との間に位置する螺旋板40とからなる。本実施形態では、好ましい態様として、第1仕切り板36、第2仕切り板38及び螺旋板40は一体に成形されている。
なお、図2では、仕切り部材34の断面ではなく側面が示されている。
【0017】
第1仕切り板36は、壁30aと平行に配置され、第1仕切り板36と壁30aの間には、放熱フィン32aを収容可能な間隔が設けられている。壁30aとは反対側のダクト30の壁30bと第1仕切り板36の間にも、第1仕切り板36と壁30aの間と同程度の間隔が設けられている。
【0018】
そして、第1仕切り板36は、ダクト30の幅と略同じ幅を有し、且つ、ダクト30の長手方向でみて、吸気口22から放熱フィン32aを超えて延びている。
従って、第1仕切り板36は、冷却風の流動方向でみて、吸気口22から放熱フィン32又はLSI20aまでのダクト30の吸気口22側の区間(第1区間)を、LSI20a側の第1通路42aと、第1通路42aを間に挟んでLSI20aから離れている第2通路42bとに区画している。
【0019】
第2仕切り板38は、壁30aと平行に配置され、第2仕切り板38と壁30aの間には、放熱フィン32bを収容可能な間隔が設けられている。壁30aとは反対側のダクト30の壁30bと第2仕切り板38の間にも、第2仕切り板38と壁30aの間と同程度の間隔が設けられている。
【0020】
そして、第2仕切り板38は、ダクト30の幅と略同じ幅を有し、且つ、ダクト30の長手方向でみて、排気口26から放熱フィン32bを超えて延びている。
従って、第2仕切り板38は、冷却風の流動方向でみて、放熱フィン32b又はLSI20aから排気口26までのダクト30の排気口26側の区間(第2区間)を、LSI20b側の第3通路42cと、第3通路42cを間に挟んでLSI20bから離れている第4通路42dとに区画している。
【0021】
図3は、ダクト30及び仕切り部材34を、ダクト30の一部を切り欠いて示す斜視図である。図2及び図3を参照すると、螺旋板40は、冷却風の流動方向でみて、左螺旋を描くように180度回転している。
このため、壁30aと対向する第1仕切り板36の面は、螺旋板40の一方の面を介して、壁30bと対向する第2仕切り板38の面に連なっている。同様に、壁30bと対向する第1仕切り板36の面は、螺旋板40の他方の面を介して、壁30aと対向する第2仕切り板38の面に連なっている。
【0022】
上述した第1実施形態の電子機器10においては、冷却風がダクト30内を流れており、LSI20a,20b等の電子部品が配置されている筐体12内の領域(実装領域)を流れることはない。このため、実装領域に、冷却風とともに塵埃が進入することはなく、塵埃によるショート等の不具合の発生が防止される。
【0023】
一方、上述した第1実施形態の電子機器10においては、LSI20a,20bが作動して発熱したときに、熱が、LSI20a,20bから壁30aを伝わって放熱フィン32a,32bに流れる。放熱フィン32a,32bは、ダクト30内を流れる冷却風に接しており、熱は、冷却風によって外部に放出される。従って、冷却風によって、LSI20a,20bが間接的に冷却され、高熱になることが防止される。
【0024】
その上、上述した第1実施形態の電子機器10においては、ダクト30内に配置された仕切り部材34の存在によって、冷却風の一部は、第1通路42aを流れてから第4通路42dを流れ、冷却風の残部は、第2通路42bを流れてから第3通路42cを流れる。
【0025】
つまり、螺旋板40は、第1通路42a及び第2通路42bと第3通路42c及び第4通路42dとの間の接続を切り替える通路切替部材を構成している。通路切替部材によれば、放熱フィン32aを通過して温度が上昇した冷却風の一部は、放熱フィン32bに接することなく排気され、放熱フィン32aに接しなかった冷却風の残部が、放熱フィン32bに接してから排気される。
【0026】
かくして、冷却風の流動方向でみて、放熱フィン32aよりも下流に位置する放熱フィン32bにも、放熱フィン32aと同程度の温度の冷却風が供給される。このため、この電子機器10においては、冷却風の流動方向でみて下流側のLSI20bも、上流側のLSI20aと同程度に確実に冷却される。
【0027】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態の電子機器100について説明する。なお、第1実施形態と同一又は類似の構成については、同一の名称又は符号を付して、説明を簡略化又は省略する。
【0028】
電子機器100においては、仕切り部材102が、螺旋板40に代えて、2つの可動式の扉(第1ダンパ)104及び扉(第2ダンパ)106を有する点において、電子機器10と異なる。
扉104は、図示しないアクチュエータからの駆動力によって、第1通路42aの出口を閉塞する位置(第1位置)と第2通路42bの出口を閉塞する位置(第2位置)との間をスライド可能である。
扉106は、図示しないアクチュエータからの駆動力によって、第3通路42cの入口を閉塞する位置(第3位置)と第4通路42dの入口を閉塞する位置(第4位置)との間をスライド可能である。
【0029】
そして、アクチュエータは、適当な周期で、扉104を第1位置と第2位置に交互に移動させる一方、扉を第4位置と第3位置に交互に移動させる。この際、アクチュエータは、扉104が第1位置に配置されたとき、扉106が第4位置に配置され、扉104が第2位置に配置されたとき、扉106が第3位置に配置されるように動作する。
【0030】
上述した第2実施形態の電子機器100においては、冷却風がダクト30内を流れており、LSI20a,20b等の電子部品が配置されている筐体12内の領域(実装領域)を流れることはない。このため、実装領域に、冷却風とともに塵埃が進入することはなく、塵埃によるショート等の不具合の発生が防止される。
【0031】
一方、上述した第2実施形態の電子機器100においては、LSI20a,20bが作動して発熱したときに、熱が、LSI20a,20bから壁30aを伝わって放熱フィン32a,32bに流れる。放熱フィン32a,32bは、ダクト30内を流れる冷却風に接しており、熱は、冷却風によって外部に放出される。従って、冷却風によって、LSI20a,20bが間接的に冷却され、高熱になることが防止される。
【0032】
その上、上述した第2実施形態の電子機器100においては、扉104が第2位置にあり且つ扉106が第3位置にあるとき、冷却風は、第1通路42aを流れてから第4通路42dを流れ、扉104が第1位置にあり且つ扉106が第4位置にあるとき、冷却風は、第2通路42bを流れてから第3通路42cを流れる。
【0033】
つまり、扉104,106は、第1通路42a及び第2通路42bと第3通路42c及び第4通路42dとの間の接続を切り替える通路切替部材を構成している。通路切替部材によれば、放熱フィン32aを通過して温度が上昇した冷却風は、放熱フィン32bに接することなく排気され、放熱フィン32aに接しなかった冷却風が、放熱フィン32bに接してから排気される。
【0034】
かくして、冷却風の流動方向でみて、放熱フィン32aよりも下流に位置する放熱フィン32bにも、放熱フィン32aと同程度の温度の冷却風が供給される。このため、この電子機器100においては、冷却風の流動方向でみて下流側のLSI20bも、上流側のLSI20aと同程度に確実に冷却される。
【0035】
本発明は、上述した第1実施形態及び第2実施形態に限定されることはなく、上述した第1実施形態及び第2実施形態に変更を加えた形態も含む。
例えば、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、冷却風によって冷却される電子部品(発熱部品)として、LSI20a,20bが冷却されていたが、電源回路や光電変換素子等が冷却されてもよい。
【0036】
また、第2実施形態では、扉104,106がスライド式であったが、回転式であってもよい。
その他、図示とともに示した各種部材の形状や配置は、いずれも好ましい例であり、本発明の実施に際してこれらを適宜変更可能であることはいうまでもない。
最後に、本発明の電子機器は、スイッチングハブに限定されることはなく、メディアコンバータや、その他の電子機器であってもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10 電子機器
12 筐体
18 回路基板
28 冷却ファン
20a LSI(第1発熱部品)
20b LSI(第2発熱部品)
30 ダクト(冷却筒)
32a,32b 放熱フィン
36 第1仕切り板
38 第2仕切り板
40 螺旋板(通路切替部材)
42a 第1通路
42b 第2通路
42c 第3通路
42d 第4通路
42 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口及び排気口を有する筐体と、
前記筐体内に配置された回路基板と、
前記筐体内に配置され、前記吸気口と前記排気口の間を延びる冷却筒と、
前記冷却筒内を流れる空気流を生成する冷却ファンと、
前記回路基板に実装され、前記冷却筒に接触する第1発熱部品と、
前記回路基板に実装され、前記空気流の流動方向でみて、前記冷却筒に対し前記第1発熱部品よりも下流側にて接触する第2発熱部品と、
前記冷却筒の内側に前記第1発熱部品及び前記第2発熱部品の位置に対応して配置された放熱フィンと、
前記吸気口から前記第1発熱部品までの前記冷却筒の第1区間において、前記冷却筒の内側を、前記第1発熱部品側の第1通路と前記第1発熱部品から離れた第2通路とに仕切る第1仕切り板と、
前記排気口側から前記第2発熱部品までの前記冷却筒の第2区間において、前記冷却筒の内側を、前記第2発熱部品側の第3通路と前記第2発熱部品から離れた第4通路とに仕切る第2仕切り板と、
前記冷却筒の内側に配置され、前記第1通路と前記第4通路とを繋ぐか、前記第2通路と前記3通路とを繋ぐか、又は、前記第1通路と前記第4通路とを繋ぐとともに前記第2通路と前記3通路とを繋ぐ通路切替部材と
を備える電子機器。
【請求項2】
前記通路切替部材は、前記第1仕切り板及び前記第2仕切り板と一体に成形された螺旋形状の板からなる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記通路切替部材は、
前記第1通路及び前記第2通路のうち一方を塞ぐ第1ダンパと、
前記第3通路及び前記第4通路のうち一方を塞ぐ第2ダンパと、
を含む、
請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−230944(P2012−230944A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96827(P2011−96827)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】