説明

電子機器

【課題】保護対象となる主たる駆動装置に対し、この主たる駆動装置とは別の駆動装置を設置した際、主たる駆動装置の駆動時に別の駆動装置を同時に駆動させた際の共振現象を発生し難くすることができるコンピュータ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、装置本体内に配置されたハードディスクドライブ3と、ハードディスクドライブ3の駆動状態を監視する加速度センサ8と、装置本体内に配置された冷却ファン5,6と、加速度センサ8による監視状態に応じて冷却ファン5,6の回転速度を制御するマネージメントコントローラ9と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の駆動機器を備えた電子機器、より具体的にはコンピュータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ装置には、半導体、電源、ハードディスクドライブ等のディスクドライブ等を駆動するモータ等、動作とともに発熱する機器が設けられているため、筐体に冷却用ファン等を設けて筐体内を外気と換気することによって間接的に冷却することが行われている。
【0003】
また、前記ハードディスクドライブは、外部から加わる機械的な力によるディスク、あるいはヘッドの損傷を防止するため、振動状況に応じて性能を制限し、あるいは、動作を強制的に停止させることが行われている。
【0004】
また、前記ハードディスクに加わる機械的な力として、一時的な外力の他、前記前記冷却ファンなど、周期的な運動を伴う機器との共振による振動も考慮することが望ましく、共振を考慮して、前記冷却ファンの回転数を制御することが行われている。
【0005】
例えば、ハードディスクドライブを冷却する冷却用ファンの回転数の上限を、冷却用ファンの振動振幅の増加によって転送レートが劣化する回転数(例えば、約4200rpm)に設定し、実際の冷却用ファンの回転数をこの上限以下に抑えることで、冷却ファンが高回転する際に発生する振動による転送レートの劣化を回避する技術が知られている(特許文献1参照)
【0006】
また、ハードディスクドライブは駆動状態によって温度が変化するため、ハードディスクドライブの現在温度を温度センサで監視し、ハードディスクドライブの現在温度に応じて、最低限の冷却効果を発揮させるように定められる回転数を下限として冷却用ファンを回転させ、ハードディスクドライブの冷却を行うことが行われている。
【0007】
この際、冷却ファンの回転数の下限から上限までの間で、ハードディスクドライブの共振周波数の振動を発生させる回転数(共振回転数)から離れた範囲に冷却用ファンの回転数を制御するのが好ましい。
【0008】
例えば、2800rpmから3700rpmの範囲と、3900rpm、6000rpm、6500rpmが共振回転数に相当し、これらの共振回転数から100rpm以内の回転数にならないように、冷却用ファンを制御するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−050448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記冷却ファンにあっては、ハードディスクドライブの現在温度に応じて冷却ファンの回転数を制御する際、その下限値はハードディスクドライブを温度から保護する最低限の回転数に制御し、その上限値は共振現象が発生しない回転数の範囲で制御している。
【0011】
しかしながら、ハードディスクドライブにあっては、継続的な運転に伴う温度上昇があり、また、例えば、インストールされたソフトウエアを立ち上げる際、消費電力の低下を図るためにスタンバイ状態(サスペンド)や休止状態(ハイバネーション)に移行する際、スタンバイ状態や休止状態から復帰する際、これらの移行前やスケジュールに従ってデータバックアップをする際、駆動中のソフトウエアとは別にインストールされたソフトウエアの自動更新をダウンロード(インストール)する際等、さまざまな条件によって書き込み及び読み出しが行われ、その駆動時の回転数が一定ではないのが一般的である。
【0012】
したがって、上述したハードディスクドライブの温度と、共振回転数とを考慮した冷却ファンの回転数制御では、複雑な環境下で駆動されるハードディスクドライブの共振現象の発生をより厳密に抑制することはできないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、保護対象となる主たる駆動装置に対し、この主たる駆動装置とは別の駆動装置を設置した際、主たる駆動装置の駆動時に別の駆動装置を同時に駆動させた際の共振現象を発生し難くすることができる電子機器及びコンピュータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電子機器は、装置本体内に配置され、駆動装置によって駆動される第1の機器と、前記装置本体内に配置され、前記第1の駆動装置とは異なる駆動装置により駆動される第2の機器と、前記第1の機器の振動を検出する第1のセンサと、前記第2の機器の振動を検出する第2のセンサと、前記第1、第2のセンサの少なくとも一方から得られた振動検出データによって、該第2の機器を駆動する駆動装置の速度を制御する駆動制御部とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成により、保護対象となる主たる駆動装置に対し、この主たる駆動装置とは別の駆動装置を設置した際、主たる駆動装置の駆動時に別の駆動装置を同時に駆動させた際の共振現象を発生し難くすることができる。
【0016】
また本発明は、前記第1の機器は前記装置本体内に配置されたハードディスクドライブであり、前記第2の機器は前記装置本体内に配置された冷却ファンであり、前記駆動制御部は、前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とする。
【0017】
上記構成により、保護対象となるハードディスクドライブに対し、このハードディスクドライブとは別の冷却ファンを設置した際、ハードディスクドライブの駆動時に冷却ファンを同時に駆動させた際の共振現象を発生し難くすることができる。
【0018】
また本発明は、前記装置本体内に配置されて前記ハードディスクドライブ又は前記冷却ファンの振動により発生する音を検出する音センサを備え、前記制御部は、前記振動監視装置とは別に前記音センサからの検知周波数に応じて前記駆動制御部を制御することを特徴とする。
【0019】
上記構成により、ハードディスクドライブや冷却ファンを回転させた際のうなり音の発生を抑制することができるばかりでなく、共振現象が発生したことを検知してその際のハードディスクドライブの振動数とを関連付けすることにより、次回以降の共振現象の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子機器及びコンピュータ装置は、保護対象となる主たる駆動装置に対し、この主たる駆動装置とは別の駆動装置を設置した際、主たる駆動装置の駆動時に別の駆動装置を同時に駆動させた際の共振現象を発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器としてのコンピュータ装置の説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る電子機器としての他のコンピュータ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の一実施形態に係る電子機器としてのコンピュータ装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の電子機器における好適な具体例であり、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々な変形が可能である。本発明は、冷却ファンとハードディスクドライブとを有する電子機器に限定されるものではなく、振動源したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る電子機器としてのコンピュータ装置の説明図である。
【0024】
図1において、電子機器としてのコンピュータ装置1は、装置内基板としてのシステムボード2と、複数(例えば、3台)のハードディスクドライブ3と、ハードディスクドライブ3を保持するSAS/SATAバックパネルボード(以下、単に「バックパネルボード」と称する。)4と、ハードディスクドライブ3及びコンピュータ装置1の内部を冷却するための第1の冷却ファン5及び第2の冷却ファン6と、を備えている。
【0025】
システムボード2には、このシステムボード2の振動を検出する、ICインタフェースを備えた第1の加速度センサ7が設けられている。またバックパネルボード4には、このバックパネルボード4の振動を検出する、ICインタフェースを備えた第2の加速度センサ8がもうけられ、これら第1、第2の加速度センサ7、8は、バスラインを介して前記第1、第2のファン5、6を制御するマネージメントコントローラ9に接続されている。
【0026】
また、システムボード2には、第1の冷却ファン5が接続される第1ファンコネクタ10と、第2の冷却ファン6が接続される第2ファンコネクタ11と、が実装されており、マネージメントコントローラ9によって第1の冷却ファン5及び第2の冷却ファン6の回転数がPWM(パワーマネージメント)制御されている。また、システムボード2には、バックパネル接続用コネクタ12が実装されている。このバックパネル接続用コネクタ12は、バックパネルボード4に設けられたシステムボード接続用コネクタ13と、バックパネル接続ケーブル14を介して接続されている。
【0027】
バックパネルボード4に複数実装されたハードディスクドライブ3は、バックパネルボード4に実装されたICインタフェース付きの第2の加速度センサ8によって振動が所定の周期で検出され、その検出データはバックパネル接続ケーブル14を通じてICバス15を経由してマネージメントコントローラ9に送信される。また、システムボード1に実装された第1の加速度センサ7も同様にICバス15経由でマネージメントコントローラ9とデータの通信を行う。
【0028】
マネージメントコントローラ9の内部には、第1の加速度センサ7及び第2の加速度センサ8の共振ポイントの閾値が予め記憶されたSDR(Sensor Data Record)16が格納されている。
この際、第1の加速度センサ7及び第2の加速度センサ8の共振ポイントの閾値は、事前に共振ポイントを確認しておくことにより得られた閾値をマネージメントコントローラ9内に設定し、第1の冷却ファン5と第2の冷却ファン6とに対する回転数の制御値とで関連付けしてSDR16に設定される。
【0029】
このような構成においては、マネージメントコントローラ9は、予め設定された所定の周期毎にICバス15経由で第1の加速度センサ7及び第2の加速度センサ8にアクセス(polling)し、第1の加速度センサ7又は第2の加速度センサ8の監視データを読み取る。
【0030】
そして、マネージメントコントローラ9は、ハードディスクドライブ3の駆動に伴って発生する振動数が前記SDRに設定された閾値に近づいたと判断すると、第1の冷却ファン5と第2の冷却ファン6との回転数を前記閾値に接近しない範囲で制御する。
これにより、振動に伴うハードディスクドライブ3のアクセス速度の遅延を生じさせることなく、共振現象の発生を抑制することができる。
【0031】
また、前記第1の冷却ファン5および第2の冷却ファン6として、風量特性(回転数の増減に伴う風量変化の特定)が互いに異なるものを用い、ハードディスクドライブ3との共振を考慮して、必要な風量に対応する回転数が前記振動数の閾値から離れた冷却ファン5または6を主体として冷却風量を確保するよう回転数を制御することも有効である。
【0032】
また、この実施形態では、マネージメントコントローラ9は、SDR16に設定された温度の閾値によって機内温度を該閾値以下となるように制御している。すなわち、温度センサ(図示略)に測定された機内温度に応じて第1の冷却ファン5と第2の冷却ファン6との回転数を制御している。
なお回転数制御における、第1の加速度センサ7又は第2の加速度センサ8による振動データと、前記温度データとの制御上の優先度は、例えば、ハードディスク3の保護(あるいはパフォーマンスの確保)を最優先して、第2の加速度センサ8による振動データを閾値とする制御を優先する方式、あるいは、電子デバイスを温度上昇から保護するため、温度データを閾値とする制御を優先する方式、さらには、振動の抑制を優先して、第1の加速度センサ7及び第2の加速度センサ8の両方による振動データのいずれをも閾値以下とするよう制御する方式など、電子機器に求められる性能の確保と安全性とを考慮して、設定すべきである。
【0033】
さらに、図2に示す他の実施形態のように、ハードディスクドライブ3や第1の冷却ファン5及び第2の冷却ファン6の駆動音やうなり音の発生を監視する音センサ17をコンピュータ本体1の内部に配置し、システムボード2に設けた音センサ用コネクタ18を介して音センサ17とマネージメントコントローラ9とを接続してその監視結果をマネージメントコントローラ9に出力することも有効である。
【0034】
すなわち、共振現象によるうなり音が発生した場合には、このうなり音が音センサ17に検出される。この音センサ17の検出結果に応じて、うなり音が発生したと判断される場合、前記マネージメントコントローラ9は、前記第1、第2の加速度センサ7、8に検出された振動より優先して、前記音センサ17の検出結果に応じて冷却ファン5、6の回転数を制御する。
また、マネージメントコントローラ9は、前記音センサ17によってうなりが検出された際、その際のハードディスクドライブ3の振動数を第1の加速度センサ7及び第2の加速度センサ8から取得すると共に、第1の冷却ファン5と第2の冷却ファン6とに対する回転数の制御値を取得し、これらを関連付けしてSDR16に追加設定を加えることで、次回以降の共振現象の発生を抑制することができる。
【0035】
尚、ここで共振現象が発生した場合には、マネージメントコントローラ9は、第1の冷却ファン5と第2の冷却ファン6とに対する回転数の制御値を低く(回転数を落とす)する方向に制御する。また、音センサ17によって共振現象が解消された際の第1の冷却ファン5と第2の冷却ファン6とに対する回転数の制御値を上述した追加設定のための閾値としても良い。
【符号の説明】
【0036】
1…コンピュータ装置(電子機器)
3…ハードディスクドライブ(主たる駆動装置)
5…第1の冷却ファン
6…第2の冷却ファン
7…第1の加速度センサ
8…第2の加速度センサ(振動監視装置)
9…マネージメントコントローラ(制御部・駆動制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に配置され、駆動装置によって駆動される第1の機器と、
前記装置本体内に配置され、前記第1の駆動装置とは異なる駆動装置により駆動される第2の機器と、
前記第1の機器の振動を検出する第1のセンサと、
前記第2の機器の振動を検出する第2のセンサと、
前記第1、第2のセンサの少なくとも一方から得られた振動検出データによって、該第2の機器を駆動する駆動装置の速度を制御する駆動制御部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1の機器は前記装置本体内に配置されたハードディスクドライブであり、
前記第2の機器は前記装置本体内に配置された冷却ファンであり、
前記駆動制御部は、前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記装置本体内に配置されて前記ハードディスクドライブ又は前記冷却ファンの振動により発生する音を検出する音センサを備え、
前記制御部は、前記振動監視装置とは別に前記音センサからの検知周波数に応じて前記駆動制御部を制御することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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