説明

電子機器

【課題】筐体内部の電子部品を熱の影響から十分に保護することが出来る電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器において、筐体1は、鉛直の中心軸回りに回転できるよう支持された胴筒4を具え、該筐体1の底部には1或いは複数の開口が開設され、胴筒4には、前記中心軸を包囲して、内側から外側へ貫通する複数の開口が開設されると共に、各開口を覆いつつ外向きに突出して胴筒4の回転方向に対して所定の角度を有する複数枚の羽根41が突設され、該胴筒4には、胴筒4を中心軸回りに回転駆動する駆動機構が連繋している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無線基地局などの電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外用などの無線基地局においては、防水構造を有する直方体状の筐体の内部に、無線通信用の電子回路や電源回路を収容しており、筐体内部の電子部品を雨水などの水分の影響から保護している。
この様な基地局の筐体構造においては、筐体内部の電子部品の発熱や日射による温度上昇によって電子部品が損傷を受けないように、優れた放熱性も要求される。
【0003】
そこで、日射方向を向く筐体の表面に適当な間隔をおいて、日光を遮断する遮光板を設置した屋外用基地局の筐体構造が提案されている(特許文献1)。
該筐体構造によれば、従来より筐体表面に突設されている放熱フィンの小型化や数量の低減が可能となるので、これによって筐体の小型化や軽量化を図ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−499999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、それらの筐体構造は、防水性を確保するために密閉構造を有しているので、放熱フィンや遮光板の設置によっても、例えば外気温度が急激に上昇した場合には筐体内部の温度上昇が速く、場合によっては、筐体内部の電子部品が過熱によって損傷に至る虞があった。
そこで本発明の目的は、筐体内部の電子部品を熱の影響から十分に保護することが出来る電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子機器において、筐体(1)は、鉛直の中心軸回りに回転できるよう支持された胴筒(4)を具え、該筐体(1)の底部には1或いは複数の開口が開設され、前記胴筒(4)には、前記中心軸を包囲して、内側から外側へ貫通する複数の開口が開設されると共に、各開口を覆いつつ外向きに突出して胴筒(4)が回転する方向に対して所定の角度を有する複数枚の羽根(41)が突設され、該胴筒(4)には、胴筒(4)を前記中心軸回りに回転駆動する駆動機構が連繋している。
【0007】
上記本発明の電子機器によれば、胴筒(4)の回転に伴う羽根(41)の移動によって羽根(41)の周囲の空気に圧力差が生じ、これに伴って、一方の開口から筐体(1)内の空気が排出されると共に、他方の開口から筐体(1)内へ空気が吸入されて、筐体(1)の内部に空気の流れが発生し、これによって筐体(1)内の電子部品が冷却される。
【0008】
より具体的な態様において、筐体(1)は、鉛直の中心軸回りに回転できるよう支持された胴筒(4)を具え、該筐体(1)の底部には1或いは複数の吸気口(32)が開設され、前記胴筒(4)には、前記中心軸を包囲して、内側から外側へ貫通する複数の排気口(42)が開設されると共に、各排気口(42)を覆いつつ外向きに突出して胴筒(4)の回転方向に対して後退角を有する複数枚の羽根(41)が突設され、該胴筒(4)には、胴筒(4)を前記中心軸回りに回転駆動する駆動機構が連繋している。
【0009】
上記電子機器においては、胴筒(4)の回転に伴う羽根(41)の移動によって羽根(41)の周囲の空気に圧力差が生じ、これに伴って、排気口(42)から筐体(1)内の空気が排出されると共に、吸気口(32)から筐体(1)内へ空気が吸入されて、筐体(1)の内部に空気の流れが発生し、これによって筐体(1)内の電子部品が冷却される。
【0010】
又、排気口(42)は羽根(41)によって覆われており、羽根(41)に付着した雨水は、胴筒(4)の回転に伴ってはじき飛ばされることになる。又、排気口(42)には、その内側から外側へ常に空気が流れているので、排気口(42)から筐体(1)内へ雨水が浸入することはない。
【0011】
具体的態様において、前記駆動機構には、筐体(1)内の温度の検知に基づいて胴筒(4)の回転を制御する制御回路が接続されており、例えば筐体(1)内の温度が上昇するにつれて胴筒(4)の回転速度を増大させる。
該具体的態様によれば、筐体(1)内の温度が上昇するにつれて胴筒(4)の回転速度が増大し、これに伴って筐体(1)内を流れる空気の速度が増大することによって、より大きな冷却効果が生じ、筐体(1)内の電子部品の温度上昇が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子機器によれば、筐体内部の電子部品を熱の影響から十分に保護することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である屋外設置型電子機器の正面図である。
【図2】図2は、該屋外設置型電子機器の底面図である。
【図3】図3は、該屋外設置型電子機器の垂直断面図である。
【図4】図4は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図5は、該屋外設置型電子機器の一部破断斜視図である。
【図6】図6は、該屋外設置型電子機器の分解斜視図である。
【図7】図7は、図6とは異なる方向から見た屋外設置型電子機器の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態である屋外設置型電子機器は、図1〜図3に示す如く、円筒状の筐体(1)を具え、該筐体(1)は、胴筒(4)と、胴筒(4)の上方に配備された上蓋(2)と、胴筒(4)の下方に配備された下蓋(3)とから構成されており、後述する様に、胴筒(4)は、その中心軸回りに回転が自由となっている。
上蓋(2)及び下蓋(3)にはそれぞれフランジ(21)(31)が突設されており、これらのフランジ(21)(31)を用いて筐体(1)を壁面等に取り付けることが可能となっている。
【0015】
下蓋(3)の底面には、図2に示す如く、複数の吸気口(32)が開設されている。
又、胴筒(4)には、図4及び図5に示す如く、その中心軸を包囲して、上下に延びるスリット状の排気口(42)が複数箇所に一定の角度ピッチで開設されると共に、各排気口(42)の開口縁から外向きに突出して胴筒(4)の回転方向Bに対して後退角を有する複数枚の羽根(41)が突設されている。
【0016】
ここで、複数の羽根(41)は、胴筒(4)の停止状態においても、降雨時に雨水が排気口(42)から筐体(1)内へ浸入しない様、各排気口(42)を周囲から覆うと共に、各排気口(42)から羽根(41)に沿って外周方向へ渦巻き状に延びる排気流路を形成している。
【0017】
図5に示す様に、上蓋(2)は胴筒(4)の上部に対して、僅かな隙間をあけて且つその隙間から雨水が容易に浸入することのない重なり状態で、相対回転可能に係合すると共に、下蓋(3)は胴筒(4)の下部に対して、僅かな隙間をあけて且つその隙間から雨水が容易に浸入することのない重なり状態で、相対回転可能に係合している。
【0018】
図5〜図7に示す様に、上蓋(2)の内部には、ガイド板(22)が水平の姿勢で懸架されており、該ガイド板(22)上には、モータ(7)が水平に設置され、該モータ(7)の出力軸には歯車(71)が連結されている。
下蓋(3)の内部には、その中心位置に、吸気口(32)から吸入された空気を胴筒(4)の内部空間の中央部へ導くためのダクト(5)が設置されている。
該ダクト(5)は、その底部が下蓋(3)に締結されている。
【0019】
胴筒(4)の内部空間には、鉛直面に沿って拡がるシャーシ(8)が配備されており、該シャーシ(8)の上端部には水平の円板部(81)が形成され、該円板部(81)は、前記ガイド板(22)の裏面に固定されている。又、ダクト(5)の上部がシャーシ(8)の下端部に連結されている。
シャーシ(8)の両側には第1基板(9)と第2基板(93)が固定されており、第1基板(9)には電源モジュール(90)やICチップ(92)が搭載され、第2基板(93)には温度センサー(94)が配備されている。第1基板(9)のICチップ(92)には、後述の如くモータ(7)の回転を制御する制御回路が内蔵されている。
【0020】
シャーシ(8)の円板部(81)と胴筒(4)の上板(43)との間には、ベアリング(6)が介在し、該ベアリング(6)によってシャーシ(8)と胴筒(4)とを互いに相対回転可能に連結している。この状態で、前記歯車(71)が胴筒(4)の表面に形成されたラック部(図示省略)に噛合している。
【0021】
従って、モータ(7)が回転すると、その回転は歯車(71)を経て胴筒(4)のラック部に伝えられ、これによって胴筒(4)が回転駆動されることになる。ここで、胴筒(4)は、上板(43)がガイド板(22)によって案内されることにより、鉛直の中心軸回りにぶれることなく回転する。
これに対し、胴筒(4)の内部空間に設置されているシャーシ(8)、第1基板(9)及び第2基板(93)は、静止状態を維持する。
【0022】
モータ(7)の回転は、温度センサー(94)によって検知される筐体(1)内の温度に基づき、第1基板(9)に搭載されている前述の制御回路によって制御される。
即ち、筐体(1)内の温度が上昇するにつれてモータ(7)の回転速度を上昇させ、筐体(1)内の温度が低下するにつれてモータ(7)の回転速度を低下させる。
【0023】
モータ(7)の回転によって胴筒(4)が時計方向(B方向)に回転すると、羽根(41)の移動によって羽根(41)の周囲の空気に圧力差が生じ、これに伴って、図5中に太線の矢印で示す様に、排気口(42)から筐体(1)内の空気が排出されると共に、吸気口(32)から筐体(1)内へ空気が吸入されて、筐体(1)の内部には、ダクト(5)から胴筒(4)の内部空間の中央部へ上昇する気流と、胴筒(4)の内部空間の中央部から外周部へ拡散する気流とが発生する。
【0024】
ここで、筐体(1)内の第1基板(9)及び第2基板(93)上の電子部品が発熱することによって筐体(1)内の空気は加熱されるが、吸気口(32)からは冷たい空気が吸入されて、この冷たい空気がダクト(5)を経て第1基板(9)及び第2基板(93)へ集中的に吹き付けられ、これによってこれらの基板上の電子部品が効果的に冷却されることになる。そして、電子部品の発熱によって暖められた空気は、排気口(42)から筐体(1)外へ排出され、これによって筐体(1)内の空気温度は略一定に保たれる。
この様にして、筐体(1)内の電子部品の過熱が防止される。
【0025】
又、上記屋外設置型電子機器において、降雨時には、羽根(41)の表面に雨水が付着するが、羽根(41)の表面に付着した雨水は、胴筒(4)の回転に伴う遠心力を受けてはじき飛ばされることになる。又、排気口(42)には、その内側から外側へ常に空気が流れているので、排気口(42)から筐体(1)内へ雨水が浸入することはない。
従って、筐体(1)は、胴筒(4)の回転によって防水構造となる。
【0026】
尚、筐体(1)内の温度低下によって胴筒(4)の回転速度が過度に低下すると、羽根(41)に付着した雨水をはじき飛ばすことが出来ないので、羽根(41)に付着した雨水をはじき飛ばすことが出来る最低の回転速度を胴筒(4)の回転速度の下限値とする。
【0027】
上述の如く、上記屋外設置型電子機器によれば、筐体(1)内部の電子部品を雨水や熱の影響から十分に保護することが出来る。
【0028】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、雨水センサーを装備することによって降雨を検知し、非降雨時であって且つ筐体(1)の内部温度が低いときには、胴筒(4)の回転を停止させる制御を採用することも可能である。
又、胴筒(4)を適当な一定の回転速度で回転させることによっても略同様の効果が得られる。
【0029】
更に又、上記実施形態で示した胴筒(4)の回転方向とは反対方向に胴筒(4)を回転させることも可能である。この場合、上記実施形態で示した吸気口(32)は排気口(32)に、排気口(42)は吸気口(42)になる。そして、吸気口(42)から空気が胴筒(4)内に流入し、胴筒(4)内を下降した空気が排気口(32)から流出する。この様な形態の筐体は例えば屋内などで使用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
(1) 筐体
(2) 上蓋
(3) 下蓋
(4) 胴筒
(41) 羽根
(42) 排気口
(5) ダクト
(6) ベアリング
(7) モータ
(8) シャーシ
(9) 第1基板
(93) 第2基板
(94) 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に電子部品を収容した電子機器において、筐体は、鉛直の中心軸回りに回転できるよう支持された胴筒を具え、該筐体の底部には1或いは複数の開口が開設され、前記胴筒には、前記中心軸を包囲して、内側から外側へ貫通する複数の開口が開設されると共に、各開口を覆いつつ外向きに突出して胴筒が回転する方向に対して所定の角度を有する複数枚の羽根が突設され、該胴筒には、胴筒を前記中心軸回りに回転駆動する駆動機構が連繋していることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記所定の角度は、前記回転方向に対して後退角に設定されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記駆動機構には、筐体内の温度の検知に基づいて胴筒の回転を制御する制御回路が接続されている請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御回路は、筐体内の温度が上昇するにつれて胴筒の回転速度を増大させる請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記筐体は、胴筒の上方に配備される上蓋と、胴筒の下方に配備される下蓋とを具え、上蓋及び下蓋に対して胴筒が回転駆動され、下蓋に前記1或いは複数の開口が開設され、胴筒の内部に前記電子部品が収容されている請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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