説明

電子機器

【課題】フィンの端面に付着した塵埃を簡易な構造で自動的に除去することができ、発熱部品からの熱を冷却する効果が継続して得られる電子機器を得ること。
【解決手段】動作時に発熱する発熱部品24を含む電子部品が収容された筐体20aと、発熱部品24からの熱が伝達される複数のフィン37aを備えた放熱体37と、放熱体37に冷却風を送風するファン31と、放熱体37とファン31との間に配置され、自重により、ファン31側におけるフィン37aの端面37bに当接しながら端面37b上を移動可能な掃除子35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作時に発熱する発熱部品を筐体内に有する電子機器、例えばCPU(中央処理装置)を備えたノートパソコン等の電子機器に関し、特に、発熱部品からの熱を外部に放出する放熱ユニットの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器の一例であるノートパソコンの場合、その性能向上にともなってCPU等の発熱部品からの発熱量が増大している。また、携帯型の電子機器であるノートパソコンの場合には、携帯型の電子機器としての小型化軽量化が求められているため、狭い筐体の内部に各種の電子部品が詰め込まれることとなる。そのため、発熱部品からの熱を効果的に筐体の外部に放出することで、高性能化された放熱ユニットを備えることが求められている。
【0003】
このような要請に応じるために、電子機器は、発熱部品からの熱が伝達される放熱フィンを備えた放熱体放熱体と、放熱体内に冷却風を送り込む送風手段であるファンとを備えた放熱ユニットが用いられている。この従来の放熱ユニットでは、発熱部品であるCPUを直接、または、ヒートパイプなどによって間接的に、放熱体と接触させてその熱を伝え、伝達された発熱部品の熱をファンからの冷却風で筐体の外部に放出することが行われている。このような従来の放熱ユニットでは、その放熱効果をより向上させるため、フィンの表面積を大きくすることが有効であり、限られた狭い空間内に、短い形成間隔で平行に配置した複数のフィンが形成されている。しかし、平行に配置したフィンの形成間隔を短くすると、ファンによって供給される冷却風に含まれる細かな塵埃が、例えばファン側におけるフィンの端面に付着しやすくなる。フィンの端面に付着した塵埃は、一旦付着してしまうと急速に堆積しやすく、堆積した塵埃がフィンの隙間を埋めて、放熱体のファンからの冷却風が流入する側の面全体を覆ってしまうようになる傾向がある。塵埃が堆積すると、ファンは、フィンの間隙に冷却風を送り込めなくなり、放熱ユニットとしての冷却効果を著しく損ねることになる。
【0004】
このように、フィンの端面に塵埃が付着して放熱ユニットの冷却効果が損なわれることを防止するために、特許文献1は、ファン側におけるフィンの端面に付着した塵埃を除去する掃除部材を備えた放熱ユニットが提案している。
【0005】
図10に、特許文献1に記載された、従来の電子機器に用いられている放熱ユニットの概略構成を示す。
【0006】
従来の放熱ユニット100は、冷却風を送風するファン101と、フィン104bを有する放熱体(ヒートシンク)104とを備えている。ファン101からの冷却風がフィン104bの隙間を通って筐体105の外部に放出されることで、放熱体104に伝達された発熱部品のCPU(不図示)で発生した熱が筐体105の外部に放出される。
【0007】
放熱体104とファン101との間には、ファン101側におけるフィン104の端面に付着した塵埃をこすって落とす掃除部材の可動部品102と、この可動部品102を動かすための移動機構103とが配置されている。
【0008】
ここで、上記従来の放熱ユニット100は、図11に示すように、可動部品102に接続されたピストン106をロックするロック板107を備えている。ロック板107を動かすことで、可動部品102がフィン104bの端面を掃除する。具体的には、図11(a)に示すように、可動部品102は、ピストン106によって押し下げられた状態で、ロック板107によって通常は固定されている。そして、図11(b)に示すように、ユーザがロック板107を動かすことでピストン106のロックが解除される。ピストン106のロックが解除されると、移動機構103に設けられたバネ材108の付勢力によって、可動部品102がフィン104bの端面をこすりながら上端部分まで上昇し、フィン104bの端面に付着していた塵埃を除去する。除去された塵埃は、ファン101からの冷却風によって筐体105の外側に排出される。
【0009】
なお、特許文献1には、可動部品102の移動機構として熱変形部材を接続し、発熱部品であるCPUの動作により生じた熱で熱変形部材を変形させ、フィン104bの端面に付着していた塵埃を除去する方法についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−163623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の電子機器の放熱ユニット100は、ファン101が送風する冷却風に含まれる塵埃がファン101側のフィンの端面に付着し、塵埃が付着したフィン104bの端面に掃除部材の可動部品102が接触し、付着した塵埃を払い落とすことができる。可動部品102は、ファン101側におけるフィン104bの端面に堆積した大量の塵埃を除去するため、放熱体104への冷却風の流入が妨げられる事態を回避することかできる。
【0012】
しかし、上記従来の放熱ユニット100では、可動部品102で塵埃を除去するためには、この可動部品102をフィン104bの端面に沿って上下させる機構が必要となり、その動作をユーザに頼らなければならない。また、ユーザに頼らずに、熱変形部材を用いて発熱部品の熱を検知して掃除を行う場合には、変形する温度より低いと掃除のために可動部品102を移動させることができず、しかも変形量に限度のある熱変形部材により可動部品102を移動させる機構が大がかりのものとならざるを得ない。
【0013】
本発明の目的は、フィンの端面に付着した塵埃を簡易な構造で自動的に除去することができ、発熱部品からの熱を冷却する効果が継続して得られる電子機器を得ることであり、この構成により上記従来の放熱ユニットを備えた電子機器における課題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明の電子機器は、動作時に発熱する発熱部品を含む電子部品が収容された筐体と、この発熱部品からの熱が伝達される複数のフィンを備えた放熱体と、この放熱体に冷却風を送風するファンと、この放熱体とこのファンとの間に配置され、自重により、ファン側におけるフィンの端面に当接しながらこの端面上を移動可能な掃除子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子機器は、発熱部品からの熱が伝達される複数のフィンを備えた放熱体とファンとの間に配置され、ファン側におけるフィンの端面に、自重によって当接しながら移動可能な掃除子を備えているため、簡易な構成でありながらフィンの端面に付着した塵埃を除去することができ、継続して高い冷却効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態にかかるノートパソコンの概略構成例を示す斜視図である。
【図2】本実施形態にかかるノートパソコンにおける放熱ユニットの主要な構成を示す分解斜視図である。
【図3】本実施形態にかかるノートパソコンの放熱ユニットの構成を示す水平断面図である。
【図4】本実施形態にかかるノートパソコンの放熱ユニットの構成を示す垂直断面図である。
【図5】本実施形態にかかるノートパソコンの放熱ユニットにおける、掃除子が動作する状態を示す図である。
【図6】本実施形態にかかるノートパソコンの放熱ユニットにおける、掃除子によりフィンの端面の塵埃を除去する状態を示す斜視図である。
【図7】掃除子が傾斜してしまった状態を示す図である。
【図8】ガイド溝により掃除子の位置を規制することを示す図である。
【図9】本実施形態にかかるノートパソコンの放熱ユニットにおける、掃除子の別の形態を示す図である。
【図10】従来の放熱ユニットの構成を説明する図である。
【図11】従来の放熱ユニットにおける塵埃の除去動作を説明する図で、図11(a)は可動部品がフィンの下端部に位置する通常の状態を示す図、図11(b)は可動部品がフィンの上端部に移動して塵埃を除去した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電子機器は、動作時に発熱する発熱部品を含む電子部品が収容された筐体と、この発熱部品からの熱が伝達される複数のフィンを備えた放熱体と、この放熱体に冷却風を送風するファンと、この放熱体とこのファンとの間に配置され、自重により、このファン側におけるこのフィンの端面に当接しながら、この端面上を移動可能な掃除子とを備える。
【0018】
上記構成の電子機器は、発熱部品の熱が伝達されるフィンの端面に付着した塵埃を除去する掃除子が、その自重でファン側におけるフィンの端面に当接しながら移動するので、持ち運び時など電子機器の姿勢が変化したときに掃除子が移動し、移動した掃除子がフィンの端面に付着した塵埃を除去することができる。このため、簡単な構成でありながらファン側におけるフィンの端面に付着する塵埃を除去でき、長期間にわたって安定した放熱効果が発揮される電子機器を得ることができる。
【0019】
上記構成の電子機器における筐体内には、掃除子をファンから放熱体内に送風される冷却風を遮らない位置に退避させる退避位置が形成されることが好ましい。このようにすることで、ファンが冷却風を放熱体に送風する送風路中に掃除子が位置することを回避できる。
【0020】
上記構成の電子機器において、この掃除子は、電子機器を水平面上に載置した状態において退避位置に収容されることが好ましい。このようにすることで、ユーザがこの電子機器を操作している操作中またはこの電子機器を単に静置している放置中では、掃除子は収納部に収納させる構成を実現できる。
【0021】
上記構成の電子機器において、この掃除子は、電子機器の水平面上に載置した状態からこの電子機器を移動する過程で、退避位置に収容された状態から、端面上を移動可能な状態へと変位することが好ましい。このようにすることで、操作中または放置状態から電子機器の姿勢が変化する動作に伴い、掃除動作を行う端面に掃除子が移動することで、電子機器が休止しているときに掃除子の本来の掃除機能を発揮させることができる。
【0022】
上記構成の電子機器において、この掃除子は、発熱部品が動作しファンが冷却風を送風している状態では、このファンからこの放熱体内に送風される冷却風がフィンを通過する領域から退避する退避位置に収容されることが好ましい。このようにすることで、発熱部品が動作して発熱している際には、ファンから放熱体に供給される冷却風を掃除子で遮ることがなくなり、放熱ユニットにおいて所望の放熱効果を確保することができる。
【0023】
また、この掃除子は、ファン側におけるフィンの端面に当接する掃除子本体と、この掃除子本体の両端部に設けられ、掃除子の長さ方向に垂直な面内における面積が掃除子本体よりも大きな面積を有するガイド部とを備え、筐体内にこのガイド部を保持して掃除子の位置を規制するガイド溝が形成されていることが好ましい。このようにすることで、放熱体に対して掃除子が傾くことを防止することができ、掃除子のスムーズな動作を確保することができる。
【0024】
さらに、この掃除子は、掃除子本体の長さ方向に垂直な断面が円形であることが好ましい。このようにすることで、掃除子がフィンの端面に当接しながら動きやすくなり、付着した塵埃を確実に除去することができる。
【0025】
(発明の実施の形態)
以下、本発明の実施形態として、電子機器がノートパソコンである場合を例示しながら説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態にかかる電子機器としてのノートパソコン1である。
【0027】
ノートパソコン1は、内側面に液晶パネルなどの表示デバイス12が配置された蓋体10が、表面にキーボード21やポインティングデバイス22などの入力装置が配置された本体部20に対して、ヒンジ機構11によって回動自在に取り付けられている。
【0028】
本体部20の内部には、ノートパソコン1を動作させる二次電池(不図示)や、主記憶デバイスのハードディスクドライブ(HDD)(不図示)や、その他の電気部品が配置されている。なお、ノートパソコン1は、例えば無線LAN通信のためのアンテナモジュール、ブルーレイディスクやDVDディスクに対応したディスクドライブ、ウェブカメラ素子、音声マイクやスピーカ、その他各種の入出力端子などを備えることができるが、これらの機能や形状は従来周知のノートパソコンと同様であるため、図示および詳細な説明は省略する。
【0029】
図2は、ノートパソコン1の、本体部20の内部構成を示す分解斜視図である。本実施の形態では、本体部20の内部に配置された各種の電子部品の中でも、動作時に最も温度が高くなる代表的な発熱部品として中央演算素子(CPU)24の放熱について説明する。図2は、CPU24、およびCPU24で発生した熱を筐体20aの外部に放出する放熱ユニット30の近傍のみを拡大して示している。
【0030】
図2に示すように、ノートパソコン1の表面に配置されたキーボード21の下側における本体部20の内部には、CPU24が回路基板23上に搭載されて配置されている。CPU24の上面には、CPU24の動作時の発熱を放熱ユニット30に伝達する受熱部25が配置されている。受熱部25は、バネ状の脚部を有する固着部材26によって、熱源のCPU24に押し付けられて固着されている。
【0031】
受熱部25は、CPU24から受け取った熱を熱伝達する放熱体37を含む放熱ユニット30を備えている。この放熱ユニット30は、例えば銅製のヒートパイプ27が接続されている。ヒートパイプ27の内部は、例えば熱伝導性の高い代替フロンなどの熱伝導媒体が封入されていて、受熱部25に伝えられたCPU24の熱を効率よく放熱体37に伝達する。
【0032】
ノートパソコン1は、本体部20の筐体20aの外部に、CPU24の熱を効果的に放出させる放熱ユニット30が熱的に接続されている。放熱ユニット30は、放熱体37とファン31とに加え、ガイド溝36に配置した掃除子(後述)を有している(同図では外郭だけを図示しているため、ガイド溝36は内側に構成している)。ファン31は、ファンケース32の上面に形成された吸入口32aから周囲の空気を吸入し、冷却風として放熱体37に送風し、筐体20aの外部に放出させることで、放熱体37から筐体20aの外部への放熱効果を高めている。
【0033】
図3は、ノートパソコン1における放熱ユニット30の構成を示す図である。
【0034】
図3は、放熱ユニット30を構成するファン31、掃除子35、掃除子35の位置を規制するガイド溝36、放熱体37のそれぞれの詳細な構造を示す。なお、図3は、これらの配置構造を示すために、各部材を、ノートパソコン1の本体部20におけるキーボード21が配置された主面に平行な水平面で切断した状態の、水平断面図を示している。
【0035】
ファン31は、ファンケース32内部に収容された羽根33が、回転軸34を軸心として回転する。ファン31は、羽根33が回転することで、ファンケース32の上面に形成された図2に示す吸入口32aから周囲の空気を取り込み、放熱体37側の排気口32bから冷却風として吹き出す。なお、図3では、本実施形態のファン31として、羽根33が多数の前向き羽根で構成されたシロッコファンを例示して示したが、ファン31の全体形状や吸入口32aの形状、回転軸34の周りを回る羽根33の形状などは例示に過ぎない。従って、ファン31としては、周囲の空気を吸入口から吸入して排気口から吹き出すことができるものであればシロッコファンに限定されることはなく、従来用いられてきた各種の形態の冷却ファン(放熱ファン)を使用することができる。
【0036】
ファンのファンケースに設けられた排気口に密着させて放熱体が配置される構成が通例であるが、放熱ユニット30は、ファン31の排気口32bと放熱体37との間に、掃除子35が配置されている。
【0037】
放熱ユニット30における掃除子35は、ファン31側における放熱体37の端面37bに当接して、端面37bに付着した塵埃を除去する掃除子本体35aが、長さ方向に垂直な断面が円形である円柱状となっている。また、円柱状の掃除子本体35aの長さ方向の両端部には、掃除子35の位置を規制するために、掃除子本体35aよりも径の大きな円板状のガイド部35bが形成されている。従って、ノートパソコン1の本体部20表面に配置されたキーボード21の側から平面視すると、この掃除子35は、アルファベットの大文字の「I」のような形状となっている。
【0038】
掃除子35は、放熱体37の端面に当接しながら、自重でスムーズに移動できるように、ファン31と放熱体37との間に配置された掃除子35を包み込むようにして、ガイド溝36が形成されている。ガイド溝36は、掃除子35のガイド部35bを、掃除子35の長さ方向における両外側から挟むことでその位置を規制する。また、ガイド溝36は、掃除子35のガイド部35bの位置を規制する突出部36aが、掃除子本体35aを介して放熱体37およびファン31それぞれと対向するように形成されている。
【0039】
ノートパソコン1において、掃除子35およびガイド溝36は、例えば摺動性の高いポリアセタール系の樹脂や、含フッ素系の樹脂などの樹脂部材により構成することで、掃除子35が移動して放熱体37に付着した塵埃を除去する際に、不所望に大きな音を発しないようにすることができる。また、後に詳述するように、掃除子35は、ノートパソコン1の姿勢が変化したときに、掃除子35の自重で移動し、ファン31側におけるフィン37aの端面37bに付着した塵埃を除去する。このため掃除子35は、移動に必要な自重を確保できるステンレスなどの金属で構成することができる。また、ガイド溝36も、所望の強度を確保するためや変形を防止するために、金属で形成することができる。さらに、掃除子35およびガイド溝36は、内部を金属で構成して表面に上記樹脂をコーティングした複合材を用いることで、所定の重量や強度を確保しつつ、なめらかな摺動性と静音性とを併せ持つようにすることができる。
【0040】
放熱体37は、熱伝導性が高い例えば銅などの金属製であり、複数の薄い板状のフィン37aが、ファン31から筐体20aの外部に向けて冷却風が流れる方向に沿って平行に形成されている。放熱体37の大きさ、特に、ファン31側から見た外形の幅と高さとは、ファン31の排気口32bの外形と同じになっている。また、本実施形態の放熱ユニット30は、掃除子35の位置を規制するガイド溝36が、ファン31と放熱体37との間隔部分を隙間無く覆う構成のため、ファン31の排気口32bから排出された冷却風は、そのまま放熱体37のフィン37aの間の空間に導入される。すなわち、本実施形態の放熱ユニット30においても、掃除子35がファン31と放熱体37との間に配置されていない従来構成の放熱ユニットと同様の放熱効率を確保することができる。
【0041】
ファン31からフィン37aの間隙を通過した冷却風は、放熱体37の外形形状に対応させて筐体20aに備わるスリットや貫通孔などとして形成した放出口28から、本体部20の外部に放出される。
【0042】
図4は、ノートパソコン1における放熱ユニット30の構成を示し、図3の垂直方向断面図である。すなわち、図4は、ファン31の回転軸34を通り、筐体20の側面20aに対して直交する断面形状を示すものであり、図3におけるA−A’矢視線部分の形状を示している。
【0043】
本実施の形態では、図4に示すように、ファン31および放熱体37の底面よりさらに下方側に退避位置36dを備える。静置した状態では、ファン31と放熱体37との間に配置された掃除子35は、ガイド溝36の退避位置36dに収まっている。このように、ノートパソコン1を使用する状態、すなわち、ノートパソコン1の本体部を机上などの略水平面上に載置した状態で、下方となる側に掃除子35を退避させる退避位置36dを設けることで、掃除子35は、例えばノートパソコン1の使用時に、ファン31から放熱体37に送風する冷却風を遮らない位置に、その自重により退避させることができる。すなわち、掃除子35は、冷却風が放熱体37を通過する領域から退避位置36dに退避することで、冷却風が効率的に放熱体37を冷却することができる。したがって、ノートパソコン1の電源スイッチが入れられ、CPU24(図2参照)が動作してファン31が冷却風を送風している状態では、ファン31からの冷却風が掃除子35によって遮られることが無く、放熱効率の低下が生じることを防止できる。なお、ノートパソコン1を操作せずに単に静置している放置状態でも、掃除子35は退避位置36d中に存在する。
【0044】
また、ファン31が動作しているときには、掃除子35が退避位置36dに退避する構成となっているため、図11に示した従来技術のように、可動部品102が冷却風を遮る度合いを軽減するため、掃除子35の厚さを薄膜化し、変形しやすい板状とする必要がなく、掃除子35が変形する可能性を抑制できる。このように放熱体37を構成することで、ファン31側におけるフィン37aの端面37bに付着した塵埃を除去するという掃除子35本来の機能を実現することができる。
【0045】
なお、本実施形態の放熱ユニット30は、退避位置35dをノートパソコンの通常の使用時にガイド溝36の下方となる位置に配置する構成を示した。このような構成は、ノートパソコン1の通常の使用状態において、掃除子35が自重により退避位置36dに退避するようにできるが、掃除子35を冷却風の流路から退避させる構成は、図4に示した形態のものに限らない。ようするに、掃除子35を、ファン31と放熱体37との間の位置から退避させることができれば、例えば退避位置35dは下方に限らず、上方や側方であってもかまわない。また、ノートパソコン1が動作している状態でユーザがノートパソコン1を移動させた場合には、図4に示したように、ガイド溝36の下方に退避位置36dを設けるだけでは、掃除子35が移動し、ファン31からの冷却風を遮ってしまうという事態を完全に回避することができない場合もある。このため、ノートパソコン1において、CPU24の動作やファン31の動作を検出した際には、掃除子35が退避位置36dから動かないようにする例えばストッパを設けることもできる。
【0046】
また、図4に示すように、本実施形態にかかる放熱ユニット30のガイド溝36は、図面の上下方向の端部それぞれに、軸36cの周りに回動可能な蓋部36bが形成されている。この蓋部36bを開閉することで、掃除子35によって放熱体37の端面から除去された塵埃を、ガイド溝36の外部に放出することができる。
【0047】
ここで、図5を用いて、掃除子35が放熱体37の端面に当接しながら移動する動作について説明する。
【0048】
図5は、ファン31と放熱体37との間に配置した掃除子35の配置部分を拡大した断面図である。なお、ノートパソコン1では、ユーザが持ち運ぶ等する過程で、本体部20における側面の筐体20aに形成された放出口28が鉛直方向下側に位置する状態となったときに、掃除子35がその自重により放熱体37のファン31側におけるフィン37aの端面37b上を転がって、付着した塵埃を除去する。このため、図5においては、筐体20aに形成された放出口28が図中の下側に位置するようにして示している。
【0049】
図5に示した状態において、掃除子本体35aは、その自重によってガイド溝36の放熱体37側に形成された突出部36aの表面(図5における上側の面)に接している。また、掃除子本体35aは、長さ方向に対して垂直な方向の断面が円形の円筒状であるため、ノートパソコン1が傾いたり振動が与えられたりすると、ファン31側におけるフィン37aの端面37b上を掃除子本体35aが当接した状態で、図5における左右方向、すなわち図5中に白矢印42で示した方向に移動することができる。このようにして、掃除子35は、掃除子35を別途駆動するため機構を設けることなく、その自重によってファン31側におけるフィン37aの端面37bに当接しながら移動することができるため、端面37bに付着していた塵埃を掻き落とすことができる。
【0050】
すなわち、図6に示した斜視図のように、掃除子35が放熱体37におけるフィン37a側の端面37bに当接している状態で、掃除子35のガイド部35bによって位置規制された掃除子本体35aが、ファン31側におけるフィン37aの端面37bに当接しながらその表面を移動する。このことで、ファン31側におけるフィン37aの端面37bに付着した塵埃がこすり取られる。
【0051】
掃除子35によって端面37bから掻き落とされた塵埃は、放熱体37内のフィン37aの隙間を通って、放熱体37から排出される。このとき、ノートパソコン1は、筐体20aに設けられた放出口28が鉛直方向下側にあることで、掃除子35によって端面37bから掻き落とされた塵埃が、そのまま放出口28を通って筐体20aの外部に放出されることが期待できる。
【0052】
一方、フィン37aの端面37bから掻き落とされた塵埃が、放熱体37内から完全に排出されない場合でも、例えば次回にノートパソコン1を動作させ、ファン31により冷却風が放熱体37内に流れ込んだ際に、内部に残っている塵埃を放熱体37の外部に、さらには、放出口28を通って筐体20aの外部に排出することができる。
【0053】
また、本実施形態の放熱ユニット30では、図5に示すように、掃除子35がファン31側におけるフィン37aの端面37bに当接して移動し、付着していた塵埃を掻き出すときに、ガイド溝36の図5における左右方向、すなわち、ノートパソコン1の本体部20の厚さ方向の両端部に形成された蓋体36bが、軸36cを中心として図中矢印41に示す方向に開くようになっている。このため、ファン31側におけるフィン37aの端面37bから掻き落とされた塵埃を、ガイド溝36の内部の空間から放熱体37内を経由せずに、筐体20a内に排出することができる。
【0054】
なお、蓋部36bの開く角度が大きすぎると、自重で移動する掃除子35は、ガイド溝36から外に落下してしまうこととなる。放熱体37に付着している塵埃はもともと小さな埃であるため、蓋部36bが回動して形成される隙間はそれほど大きくなくてよい。したがって、掃除子35がガイド溝36の外に落下しない程度の回動角とすべきことは言うまでもない。
【0055】
ガイド溝36に形成される蓋部36bの形状は、図5に示したような、ガイド溝36の上下方向の両端面(図5における左右方向の両端面)全部が回動する構成に限らない。例えば、ガイド溝36の放熱体37側の略半分が回動もしくはスライドすることで開き、掃除子35が掻き取った塵埃をガイド溝36の外部に排出できるような蓋部の構造を採用することもできる。
【0056】
なお、ガイド溝36の蓋部36bからガイド溝36の外部に排出された塵埃は、そのまま直ちに筐体20aの外部に放出されるものではない。このため、掻き取られた塵埃の少なくとも一部が、再びファン31の吸気口から吸い込まれて放熱体37内に入り込むことも考えられる。しかしながら、その場合でも、再びファン31側におけるフィン37aの端面37bに付着する可能性は小さく、むしろ冷却風によって筐体20aの外部に放出される可能性が高い。また、仮に、再びファン31側におけるフィン37aの端面37bに付着してしまったとしても、掃除子35によって除去される。このように、掃除子35がファン31側におけるフィン37aの端面37bから掻き取った塵埃が、ガイド溝36の蓋部36bから筐体20a内に放出されることは、フィン37aの端面37bに付着、堆積した塵埃によって放熱効率が低下するという問題において大きな問題とはならない。
【0057】
以上のように、本実施形態のノートパソコン1は、放熱体37のフィン37aにおけるファン31側の端面37bに付着した塵埃を、ノートパソコン1に姿勢の変化が起きたときに自重で移動してはぎ取る掃除子35を、放熱ユニット30のファン31と放熱体37との間に設けた構成を備える。このため、ノートパソコン1は、掃除子35を稼働させる特別な機構を配置する必要のない簡易な構成で、ファン31の冷却風に混じった塵がフィン37aの端面に付着した塵埃を除去することができる。この塵埃の除去は、ユーザがノートパソコン1を持ち歩いたり、配置場所を変更したりする通常の動作過程で行えるため、放熱体37のファンに冷却風が流入する側の面全体に塵埃が堆積し、放熱効率を低下させてしまう事態を回避することができる。
【0058】
また、本実施形態の放熱ユニット30は、ノートパソコン1を使用中で、CPU24で発生した熱を放熱するファン31が動作している場合には、掃除子35がガイド溝36内の退避位置36dに収容される。この結果、放熱ユニット30は、ファン31からの冷却風が掃除子35に当たり、放熱体37内に供給される冷却風を遮り、放熱効率が低下するという事態を回避することができる。したがって、長時間動作しても、放熱効率が低下することのないノートパソコン1を得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態の掃除子35は、フィン37aにおけるファン31側の端面37bに当接した状態で移動させることができるように、掃除子35のフィン37aの端面37bと当接する掃除子本体35aの両端部に亘り、断面積を大きく形成したガイド部35bを設け、このガイド部35bの位置を規制するガイド溝36を、ファン31と放熱体37との間の部分の両脇に形成する例を示して説明した。しかし、本実施形態のノートパソコン1において、掃除子35のガイド部35bとガイド溝36とは必須の構成要件ではない。掃除子35は、ノートパソコン1が傾けられるなどした際に、掃除子35がファン31側におけるフィン37aの端面37bに当接しながら、掃除子35の自重で付着した塵埃を除去することができる構成であればよい。
【0060】
ここで、掃除子35は、自重で放熱体37に当接しながら移動する構成であるため、例えば図7に示すように、放熱体37におけるファン31に対向した側の面上で、掃除子35が斜めに傾斜してしまうと、円滑な動きで塵埃の除去ができなくなる場合が想定される。また、掃除子35の傾きが大きくなりすぎると、掃除子35が放熱体37のファンに対向した側の面上で引っかかってしまい、ファン31が動作した場合でも退避位置35dに移動できなくなってしまうことも考えられる。このような場合、掃除子35が冷却風を遮って、放熱効果を低減させてしまうため、図7のような状態にはならないように配慮する必要がある。
【0061】
この点、ノートパソコン1の放熱ユニット30で説明したように、図8に示すように、ガイド溝36は、掃除子35のガイド部35bを掃除子本体35aから規制する突出部36aを有することで、掃除子35が放熱体37のファン31に対向する放熱ユニット30の面上で斜めに傾斜する事態を確実に回避することができる。
【0062】
なお、本実施形態の掃除子35は、ファン31側におけるフィン37の端面と当接する掃除子本体35aが円筒形状を例示して説明したが、放熱ユニット30に用いられる掃除子35は、フィン37の端面35bに当接する部分が円筒形状のものに限らない。
【0063】
例えば、図9に示すように、掃除子45は、掃除子本体45aが角柱状であり、フィン37の端面37b上で転動し易い構成ではなく、角柱上の所定の面がファン31側におけるフィン37の端面37b上を当接しながら滑動する過程で、フィン37の端面37bに付着した塵埃を掻き落とす構成を用いることができる。
【0064】
なお、図9に示すように、掃除子45の掃除子本体45aが角柱である場合には、掃除子本体45aの両端部に形成され、ガイド溝内に収容されるガイド部45bの形状も、四角形の板状とすることが好ましい。また、掃除子45の掃除子本体45aは、図9に示すように、フィン37に当接する面の表面にブラシ状の植毛47cを形成することができる。ただし、フィン37の端面37bに付着する塵埃は、例えば繊維状の細かな塵が付着することもあるため、動物の毛を梳くブラシのように、樹脂製で柔らかく変形し塵埃を吸着してしまう植毛45cを避けることが好ましい。また、仮に金属製の毛状物を植毛45cとして配置する場合でも、あまり密に形成すると毛の間に塵埃が吸着し、却って掃除子45に塵埃が堆積してしまう可能性が高い。植毛45cを設ける場合には、植毛45cに塵埃が付着してしまうことが無い、毛の材料、長さ、密度、植毛方向などを十分に考慮することが好ましい。
【0065】
もちろん、図3などで示した掃除子本体35aが円筒形の掃除子35に植毛することも可能であるが、この場合には、掃除子本体35aの表面全体がフィン37の端面37bと当接することになるため、円筒形の掃除子本体35aの表面全体に植毛することとなる。
【0066】
以上、本実施の形態にかかる電子機器として、本体部20と表示デバイス12が配置された蓋体10とがヒンジ機構11で回動可能に固着したノートパソコンを例示して説明したが、本発明の電子機器としてはこのようなノートパソコンに限らず、例えば、タブレット型のパソコンや、携帯電話、携帯用ゲーム機、小型テレビジョン受像器やブルーレイディスプレイヤー、ナビゲーションシステムなど、発熱部品を備える各種の電子機器に使用することができる。
【0067】
また、上記実施形態においては、動作中に発熱する発熱部品としてCPUを例示して示したが、発熱部品はCPUには限られず、ビデオボードなどの画像処理用の半導体チップや、二次電池など、その発熱を筐体の外部に放出すべき各種の発熱部品が対象となりうる。
【0068】
さらに、上記実施形態では、CPUからの熱を放熱体に伝達する手段として、ヒートパイプを用いた例を示したが、発熱部品であるCPUに熱伝導性の接着剤を介して直接放熱体を固着することで、発熱部品からの熱を直接的に放熱体に伝達することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明にかかる電子機器は、筐体内の発熱部品からの熱を外部に排出する放熱ユニットとして、簡易な構成ながら継続して高い冷却効果を発揮できる電子機器として、各種用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ノートパソコン(電子機器)
20 本体部
20a 筐体
24 CPU(発熱部品)
30 放熱ユニット
31 ファン
35 掃除子
37 放熱体
37a フィン
37b (ファン側における)端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作時に発熱する発熱部品を含む電子部品が収容された筐体と、
前記発熱部品からの発熱が伝達される複数のフィンを備えた放熱体と、
前記放熱体に冷却風を送風するファンと、
前記放熱体と前記ファンとの間に配置され、自重により、前記ファン側における前記フィンの端面に当接しながら前記端面上を移動可能な掃除子とを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記筐体内には、前記掃除子を前記ファンから前記放熱体内に送風される冷却風を遮らない位置に退避させる退避位置が形成された、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記掃除子は、電子機器を水平面上に載置した状態において前記退避位置に収容される、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記掃除子は、前記電子機器の水平面上に載置した状態から前記電子機器を移動する過程で、前記退避位置に収容された状態から、前記端面上を移動可能な状態へと変位する、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記掃除子は、前記発熱部品が動作し前記ファンが冷却風を送風している状態では、前記ファンから前記放熱体内に送風される冷却風が前記フィンを通過する領域から退避する退避位置に収容される請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記掃除子は、前記ファン側における前記フィンの端面に当接する掃除子本体と、前記掃除子本体の両端部に設けられ、前記掃除子の長さ方向に垂直な面内における面積が前記掃除子本体よりも大きな面積を有するガイド部とを備え、前記筐体内に前記ガイド部を保持して前記掃除子の位置を規制するガイド溝が形成されている請求項1乃至5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記掃除子は、掃除子本体の長さ方向に垂直な断面が円形である請求項1乃至6のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−38389(P2013−38389A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120104(P2012−120104)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】