説明

電子看板

【課題】平面型ディスプレイの表示面の冷却むら抑制することができる電子看板を提供する。
【解決手段】平面型ディスプレイ10を筐体8に納め、筐体8に平面型ディスプレイ10の表示面11と対向する位置に表示面11との間に隙間をあけて透明板12を設け、透明板12を通して表示面11を外側から視認可能にした電子看板1において、隙間30Aには表示面11の一端縁部11Bから他端縁部11Aに向けて冷却風を送風し、冷却風の一部は一端縁部11Bから分岐して一端縁部11Bと他端縁部11Aとの間に供給する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに広告を表示する電子看板に係り、特に、当該フラットパネルディスプレイの表示面を均一に冷却する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイを備え、この液晶ディスプレイに映像や文字等の広告情報を表示する電子看板(「デジタルサイネージ」とも称される)が知られている。また、電子看板を街頭等の屋外で使用可能にすべく、液晶ディスプレイを筐体に密閉して風雨やダストから保護したものが知られている。このように液晶ディスプレイを筐体に密閉した場合には、筐体の内部から外部へ熱が逃げにくく、液晶ディスプレイを自然空冷することができなくなる。そこで従来では、液晶ディスプレイを空冷する空冷手段を筐体に内蔵し、液晶ディスプレイを強制空冷している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−296105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の液晶ディスプレイの大型化及び高輝度化に伴い、液晶ディスプレイの発熱量が増大しているため、液晶ディスプレイの温度が高くなり易く、このため、液晶の本来の機能が低下し、液晶ディスプレイの表示面に画像を表示することができなくなるという現象(いわゆる、ブラックアウト)が生じてしまう。
特に、液晶ディスプレイの表示面の一端部から他端部にかけて冷却風が流れるように風路を形成した場合には、冷却風が出口に向かう過程で液晶パネルの発熱により空気温度が上昇するため冷却風の出口に相当する他端部で比較的温度が高くなり、この他端部の部位でブラックアウトが発生する。
このような表示面での冷却むらは、液晶ディスプレイに限らず、他の平面型ディスプレイでも問題になる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、平面型ディスプレイの表示面の冷却むら抑制することができる電子看板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、平面型ディスプレイを筐体に納め、前記筐体に前記平面型ディスプレイの表示面と対向する位置に前記表示面との間に隙間をあけて透明板を設け、前記透明板を通して前記表示面を外側から視認可能にした電子看板において、前記隙間には前記表示面の一端縁部から他端縁部に向けて冷却風を送風し、前記冷却風の一部は前記一端縁部から分岐して前記一端縁部と前記他端縁部との間に供給したことを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記一端縁部から分岐した前記冷却風を前記表示面の両側部から供給してもよい。
上記構成において、前記一端縁部と前記他端縁部との間に前記冷却風を供給する供給口を備え、この供給口を前記他端縁部に向けて斜めに配置してもよい。
上記構成において、前記一端縁部と前記他端縁部との間に前記冷却風を供給する供給風路を形成し、この供給風路を断熱材で被覆してもよい。
上記構成において、縦縦長の前記平面型ディスプレイを前記筐体内に立てた状態で納め、前記冷却風を前記表示面の下端縁部から上端縁部に向けて流してもよい。
上記構成において、前記一端縁部と前記他端縁部との間に前記冷却風を供給する供給口を備え、この供給口を前記他端縁部から前記表示面の長さの4分の1の位置に配置してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、隙間には表示面の一端縁部から他端縁部に向けて冷却風を送風し、冷却風の一部は一端縁部から分岐して一端縁部と他端縁部との間に供給したため、他端部での冷却能力が高められて端部と他端部との間の温度差が小さくなるので、表示面の冷却むらを抑えて、表示面全体を良好に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る電子看板の外観構成を示す斜視図である。
【図2】電子看板の縦断面の一部を省略して示す図である。
【図3】看板本体の横断面図である。
【図4】液晶ディスプレイを示す模式図であり、(A)は液晶ディスプレイを示す縦断面図であり、(B)は液晶ディスプレイを示す横断面図である。
【図5】液晶ディスプレイの上端部から供給口までの距離と液晶ディスプレイの表示面の最大温度との関係を示す図である。
【図6】液晶ディスプレイの表示面の温度の解析結果を示す図であり、(A)は供給風路を配置しない場合の温度分布を示す図であり、(B)は供給風路を配置した場合の温度分布を示す図であり、(C)は(A)及び(B)における温度の指標を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は電子看板1の外観構成を示す斜視図である。なお、以下に述べる上下、左右、前後といった方向は、電子看板1を設置した状態でその前面側から見た場合の方向を示している。
電子看板1は、扁平な直方体状の外観を呈した看板本体2と、この看板本体2を支持する土台4と、看板本体2の内部を冷却する冷却ユニット6とを備えている。
【0010】
看板本体2は、高さが2メートル、幅が1メートル程度の縦長の扁平な直方体状の筐体8を有し、その内部に液晶ディスプレイ10が表示面11を正面(前面)に向けて納められている。この表示面11に対向する筐体8の正面は大きく開口し、その開口9には内部を視認可能に透明な硬質のガラス板(透明板)12が嵌め込まれており、このガラス板12を通じて表示面11の全体を視認可能に構成されている。この表示面11には、各種映像や文字情報が表示され可変表示型の広告媒体として用いられる。また、看板本体2は、ガラス板12と筐体8の間にパッキンが配置されるなど密封構造を成し、街頭等の屋外での使用に耐える構造とされている。
【0011】
土台4は、矩形枠状に組まれたフレーム枠14と、このフレーム枠14を支持する左右一対の支持脚16とを備え、フレーム枠14の枠内に看板本体2が嵌め込み固定されている。冷却ユニット6は、後述する冷凍サイクル40(図2)を内蔵したユニットケース18を備え、看板本体2の下端部側に配置されている。冷却ユニット6の冷凍サイクル40による冷風によって看板本体2の内部、特に、液晶ディスプレイ10が冷却される。
【0012】
図2は電子看板1の縦断面を一部を省略して示す図であり、図3は看板本体2の横断面図である。
看板本体2が備える筐体8の内部には、図2及び図3に示すように、基板取付板20が設けられ、この基板取付板20により正面側空間21Aと背面側空間21Bとに仕切られており、正面側空間21Aには上記液晶ディスプレイ10が配置されている。また、基板取付板20には背面側空間21Bに臨む面に各種回路が設けられている。これらの回路には、例えば、液晶ディスプレイ10の表示等を制御する表示制御回路や、当該液晶ディスプレイ10に表示する映像や静止画像等から成る広告情報を外部から取得し保持する記憶回路、冷却ユニット6を駆動する冷却制御回路等が含まれている。
【0013】
液晶ディスプレイ10は、平面型ディスプレイであり、表示パネル(液晶パネル)22を備える。この表示パネル22には用途に応じて種々の形状のものが採用できる。本実施形態の液晶ディスプレイ10では、表示パネル22が縦長の長方形とされている。この液晶ディスプレイ10は、筐体8の正面側空間21Aに形成した密封空間28内に、周囲に空気が循環する循環流路30を設けて固定されている。
【0014】
循環流路30は、図2に示すように、密封空間28と液晶ディスプレイ10の間の隙間30A〜30Dから構成される。すなわち、正面側空間21Aの密封空間28には、表示パネル22の表示面11とガラス板12の間に隙間30Aが形成され、表示パネル22の上端部22Aとの間に隙間30Bが形成され、液晶ディスプレイ10の裏面との間に隙間30Cが形成され、表示パネル22の下端部22Bとの間に隙間30Dが形成されている。これらの隙間30A〜30Dは、表示パネル22の周囲でこの順に環状に繋がっており、表示パネル22を取り巻いている。上記ガラス板12は、その上端部の正面側への突出量が筐体8に設けたスペーサ60により調整可能にされている。
【0015】
このような循環流路30を形成することにより、表示パネル22の表示面11側の部分で発生した熱は、循環流路30を通ることで、表示パネル22の裏面側へ効率良く移動する。すなわち、筐体8の密封空間28において表示パネル22の裏面側に設けられた2組の循環用ファン50が動作することにより、図中矢印で示すように空気が循環され、表示面11側から裏面側に熱が輸送される。液晶ディスプレイ10の裏面には、表示面11側で発生した熱を回収する冷凍サイクル40が設けられている。
【0016】
冷凍サイクル40の概要は、蒸発器42と、この蒸発器42の下側に配置された圧縮機44、凝縮器46及び膨張弁48とを有し、蒸発器42によって熱を回収し、回収した熱を凝縮器46によって放出する。すなわち、蒸発器42は、表示パネル22の下端部22B近傍の位置にて裏面側の隙間30C内に設置されており、循環流路30を流れる空気から熱を回収する。
また、圧縮機44、凝縮器46及び膨張弁48は、それぞれ筐体8の下部であって密封空間28の外に配置されており、凝縮器46は筐体8に設けた例えば通気孔に面して配置され、凝縮器46に通風させて放熱させる放熱用ファン51が凝縮器46に隣接して配置され、この放熱用ファン51により送風することで、蒸発器42によって回収された熱を、上記通気孔を通じて外へ放出する。
【0017】
この構成によれば、重量のある冷凍サイクル40を電子看板1の下部に配置したため、電子看板1が低重心となり、設置環境が不安定な屋外での使用において、電子看板1の安定性が向上する。また、蒸発器42を密封空間28の下部に配置したため、密封空間28内の冷却効率が良く、表示パネル22で発生した熱が循環流路30の空気の循環の過程において蒸発器42によって効率良く回収され凝縮器46から効率良く筐体8に設けた通気孔を通じて外へ放出され、これにより、液晶ディスプレイ10が冷却される。また、蒸発器42と、圧縮機44、凝縮器46及び膨張弁48との配管効率も良い。なお、冷凍サイクル40に代えて循環流路30に沿って流れる空気との間で熱交換可能な他の熱交換手段を採用してもよい。
【0018】
上記循環流路30には、当該循環流路30内で空気を循環させて冷却風を生じさせる循環用ファン(送風ファン)50が設けられている。循環用ファン50は、循環流路30のうち、液晶ディスプレイ10の背面側の隙間30Cの表示パネル22の上端部22A近傍の位置と、下端部22B近傍の位置とのそれぞれに配置されている。下端部22B側の循環用ファン50の下流に上記蒸発器42が配置される。図示は省略するが、それぞれの箇所では複数の循環用ファン50が流路の断面内(同一水平面内)に並列に配置されている。これら循環用ファン50は、基板取付板20に設けられた制御回路(不図示)により駆動制御される。
【0019】
背面側に設けた各循環用ファン50は、循環流路30に沿って実線矢印Aの方向へ冷却風を循環させる。すなわち、循環用ファン50が駆動することにより、表示面11側の隙間30A内を冷却風は、鉛直方向において隙間30Aの下端部の入口30A−2から上端部の出口30A−1に向けて流れ、そして当該隙間30Aの出口30A−1から表示パネル22の上端部22A側の隙間30Bを通って裏面側の隙間30Cへ流れる。この隙間30C内に流れ込んだ冷却風は、鉛直方向において上から下へ流れ、蒸発器42を通過し、表示パネル22の下端部22B側の隙間30Dを通って表示面11側の隙間30Aへと戻る。
【0020】
冷凍サイクル40は、液晶ディスプレイ10の発熱Wa(単位W)と、日射による発熱Wb(単位W)とが生じた場合でも、液晶ディスプレイ10の表示パネル22の温度を目標温度(単位℃)以下に維持できる冷却能力に設計されている。この目標温度は表示パネル22に画像が表示できなくなるという現象(いわゆる、ブラックアウト)が生じ得る温度(例えば65℃)よりも所定温度だけ低い温度(例えば60℃)に設定されている。また、この電子看板1は、日射が強く冷却能力が不足する場合(表示パネル22の温度が目標温度以下にならない場合)には、表示パネル22の輝度を低下させる機能も備えている。
【0021】
これらの構成によれば、縦長の液晶ディスプレイ10を筐体8内に立てた状態で納め、冷却風を表示面11の下端部22Bから上端部22Aに向けて流す構成としたため、屋外設置時の日射の影響などで上端部22Aに溜まり易い熱気を効率良く表示面11側から排出することができ、当該表示面11の上端部22Aでのブラックアウトを防止することができる。また、循環用ファン50を背面側に配置する構成としたため、隙間30Aの幅を狭めて当該隙間30Aを通過する冷却風の流速を大きくできるため、表示面11を効率よく冷却することができる。また、循環用ファン50の下流に蒸発器42を配置する構成としたため、表示面11及び背面側の各種電気部品の発熱を効率よく蒸発器42で回収できる。
【0022】
ところで、循環流路30の表示面11側の隙間30Aにおいては、上述の通り、下から上に向かって冷却風が流れるため、表示面11を通過する過程で冷却風が温まり、当該隙間30Aの出口30A−1(図2)が位置する表示パネル22の上端部22Aでは、下端部22Bに比べて温度が高くなる傾向がある。特に、日射による発熱によっては、表示パネル22の上端部22Aだけがブラックアウトを生じる温度を超える場合がある。そこで、冷凍サイクル40の冷却能力を更に高めて対策を講じると冷凍サイクル40が高コスト化し、また、装置の大型化も招く。また、表示パネル22の上端部22Aの温度が目標温度を超えないように表示パネル22の輝度を低下させてしまうと、日射下での視認性が低下し過ぎてしまう。
【0023】
そこで本実施形態では、循環流路30の隙間30Aにおいて、隙間30Aの入口30A−2(図2)の冷却能力の余剰分を、出口30A−1に振り分ける構成としている。
図4は、液晶ディスプレイ10を示す模式図であり、図4(A)は液晶ディスプレイ10を示す縦断面図であり、図4(B)は液晶ディスプレイ10を示す横断面図である。なお、図4(A)では、ガラス板12が省略されている。
液晶ディスプレイ10の表示パネル22は、表示面11の周囲に、当該表示パネル22を支持するためのベゼル23を備えている。ベゼル23は、表示面11の上端縁部(他端縁部)11Aに位置する上ベゼル23Aと、表示面11の下端縁部(一端縁部)11Bに位置する下ベゼル23Bと、表示面11の左右側部(両側部)11C,11Dに位置する左右ベゼル23C,23Dとを備えている。
【0024】
本実施の形態の表示パネル22には、隙間30Aの入口30A−2から送風される冷却風の一部を出口30A−1側に供給する2つの供給風路31,32が、左右ベゼル23C,23Dに設けられている。左側の供給風路31は、表示面11と左ベゼル23Cとを仕切る仕切り板33を配置することによって、筐体8の左側壁8Aとガラス板12と左ベゼル23Cと仕切り板33との間に形成される。また、右側の供給風路32は、表示面11と右ベゼル23Dを仕切る仕切り板34を配置することによって、筐体8の右側壁8Bとガラス板12と右ベゼル23Dと仕切り板34との間に形成される。
供給風路31,32を形成する部分の左右側壁8A,8B、ガラス板12、左右ベゼル23C,23D、及び仕切り板33,34は、例えば発砲スチロール製の断熱材35で覆われており、冷却風が供給風路31,32を流れる過程で温まるのを抑制できるように構成されている。
【0025】
仕切り板33,34及びこれらの仕切り板33,34を覆う断熱材35は、仕切り部材36,37を構成しており、これらの仕切り部材36,37は、厚さが比較的薄く(例えば、約5mm)形成され、表示面11に近接した位置の左右ベゼル23C,23Dに固定されている。したがって、各仕切り板33,34は、厚さが比較的薄くても冷却風によって変形しない程度の強度を有する材料(例えば鉄やアルミ)で形成されるのが望ましい。
このように、仕切り部材36,37は、比較的薄く形成されるとともに、表示面11に近接した位置の左右ベゼル23C,23Dに配置されるため、表示面11を阻害することなく、供給風路31,32の流路幅を比較的大きく取ることができ、比較的多くの冷却風を出口30A−1側に供給できる。
【0026】
各仕切り部材36,37の一端36A,37Aは、表示面11の下端縁部11Bに配置されている。一方、各仕切り部材36,37の他端36B,37Bは、表示面11の上端縁部11Aと下端縁部11Bとの間の位置に配置されており、この他端36B,37Bが供給風路31,32の供給口31A,32Aとなる。
このように供給風路31,32を設けることで、隙間30Aに送風される冷却風が、仕切り板33,34間を流れる冷却風と、供給風路31,32を流れる冷却風に分岐され、供給風路31,32を流れて温まっていない冷却風が下端縁部11Bと上端縁部11Aとの間に供給される。また、供給風路31,32を流れる冷却風は、表示面11の両側部11C,11Dから供給されるので、上端縁部11Aの幅方向全体を冷却できる。
【0027】
また、各供給風路31,32は、左右側壁8A,8Bに沿って延びる断熱材35が左右側壁8A,8Bから表示面11側に傾斜して形成された傾斜部38を備え、この傾斜部38によって、各供給口31A,32Aが、表示面11の上端縁部11Aに向けて斜めに配置される。これにより、供給口31A,32Aを両側部11C,11Dに対して直交するように設ける場合に比べ、供給風路31,32からの冷却風が仕切り板33,34間を流れる冷却風と円滑に合流し、合流部に淀み等が生じないので、出口30A−1付近の表示面11を効率よく冷却できる。
【0028】
出口30A−1付近の液晶ディスプレイ10の表示面11の温度は、供給口31A,32Aを表示面11の高さ方向のどの位置に設定したかによって変わる。本実施の形態では、表示面11の高さ方向において、表示面11の長さL1は1549mmであり、表示パネル22の長さL2は1610mmであり、上下ベゼル23A,23Bの長さL3はそれぞれ30.5mmである。以下、表示面11の高さ方向における供給口31A,32Aの配置位置を表示面11の上端縁部11Aからの距離Dとして説明する。
【0029】
図5は、表示面11の上端縁部11Aから供給口31A,31Bまでの距離Dと液晶ディスプレイ10の表示面11の最大温度との関係を示す図である。
距離Dが200mm及び400mmの場合、供給風路31,32を設けない場合(距離D=0mm)と比べると、液晶ディスプレイ10の最大温度が低くなっている。特に、距離Dが400mmの場合には、供給風路31,32を設けない場合に比べ、液晶ディスプレイ10の最大温度が約2.9℃低くなっている。なお、距離Dが400mmの場合とは、供給口31A,31Bが表示面11の上端縁部11Aから約1/4L1の位置に配置された場合である。
【0030】
一方、距離Dが600mmの場合、すなわち、供給口31A,31Bが液晶ディスプレイ10の上端縁部11Aと下端縁部11Bとの間の中間位置に近くなると、供給風路31,32を設けない場合よりも、液晶ディスプレイ10の最大温度が高くなっている。
したがって、供給口31A,32Aの配置位置が表示面11の上端縁部11Aから約1/4L1(距離D=400mm)となるように供給風路31,32を設けることで、液晶ディスプレイ10の最大温度を良好に下げることができる。
【0031】
図6は、液晶ディスプレイ10の表示面11の温度の解析結果を示す図であり、図6(A)は供給風路31を配置しない場合の温度分布を示す図であり、図6(B)は供給風路31を配置した場合の温度分布を示す図であり、図6(C)は図6(A)及び図6(B)における温度の指標を示す図である。なお、図6(A)及び図6(B)では、液晶ディスプレイ10の左半分をモデルとして解析した結果が図示されている。
図6(A)に示すように、供給風路31を配置しない場合、表示面11の下端縁部11Bから上端縁部11Aに掛けて、約20℃の温度T0から50℃を超える温度T1へと徐々に高くなっている。50℃を超える温度T1は、表示面11の高さ方向の約4分の1の範囲である上部範囲Qの大部分を占めている。
【0032】
一方、図6(B)に示すように、供給口31Aの位置が表示面11の上端縁部11Aから400mmの位置となるように供給風路31を配置した場合、図6(A)に示す供給風路31を配置しない場合と比べると、表示面11の下端縁部11B付近では略同一の約20℃の温度T0となっているが、表示面11の下端縁部11B以外の部分で温度が低くなっている。特に、表示面11の上部範囲Qでは、50℃を超える温度T1の部分が大幅に減少し、50℃未満の温度T2〜T6の部分が大部分を占めている。したがって、下端縁部11Bと上端縁部11Aとの温度差が小さくなっている。
また、下端縁部11Bから上端縁部11Aへの温度勾配については、図6(A)に示す供給風路31を配置しない場合に比べ、約2.4℃低くなっていた。
【0033】
したがって、供給口31A,32Aの位置が表示面11の上端縁部11Aから約1/4L1(400mm)の位置となるように供給風路31,32を設けることで、液晶ディスプレイ10の表示面11の最大温度を低下させるだけでなく、下端縁部11Bと上端縁部11Aとの温度差を小さくして表示面11での冷却むらを抑え、供給風路31,32を設けないときよりも表示面11の温度を全体的に下げることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、隙間30Aには表示面11の下端縁部11Bから上端縁部11Aに向けて冷却風を送風し、冷却風の一部は下端縁部11Bから分岐して下端縁部11Bと下端縁部11Bとの間に供給する構成とした。この構成により、下端縁部11Bの冷却能力が上端縁部11Aに振り分けられて、上端縁部11Aでの温度を低くし、下端縁部11Bと上端縁部11Aとの温度差を小さくできる。この結果、表示面11での冷却風による冷却むらを良好に抑制できる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、下端縁部11Bから分岐した冷却風を表示面11の両側部11C,11Dから供給する構成とした。この構成により、下端縁部11Bから分岐した冷却風を表示面11の左側部11C又は右側部11Dの一方から配置する場合に比べ、上端縁部11Aの幅方向全体が冷却されるので、表示面11の幅方向に亘って下端縁部11Bと上端縁部11Aとの温度差を小さくできる。この結果、表示面11での冷却風による冷却むらを良好に抑制できる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、供給口31A,32Aを上端縁部11Aに向けて斜めに配置する構成とした。この構成により、供給口31A,32Aを両側部11C,11Dに対して直交するように設ける場合に比べ、供給風路31,32からの冷却風を、仕切り板33,34間を流れる冷却風と円滑に合流させることができ、表示面11を効率よく冷却できる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、上端縁部11Aと下端縁部11Bとの間に冷却風を供給する供給風路31,32を形成し、この供給風路31,32を断熱材35で被覆する構成とした。この構成により、冷却風が供給風路31,32を流れる過程で温まるのを抑制できるので、上端縁部11Aでの温度をより低くし、下端縁部11Bと上端縁部11Aとの温度差を小さくできる。この結果、表示面11での冷却風による冷却むらを良好に抑制できる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、縦長の液晶ディスプレイ10を筐体8内に立てた状態で納め、冷却風を表示面11の下端部22Bから上端部22Aに向けて流す構成とした。この構成により、屋外設置時の日射の影響などで上端部22Aに溜まり易い熱気を効率良く表示面11側から排出することができ、当該表示面11の上端部22Aでのブラックアウトを防止することができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、上端縁部11Aと下端縁部11Bとの間に冷却風を供給する供給口31A,32Aを備え、この供給口31A,32Aを上端縁部11Aから表示面11の長さL1の4分の1の位置に配置する構成とした。この構成により、供給風路31,32を配置しない場合に比べ、液晶ディスプレイ10の表示面11の最大温度を良好に下げることができる。これにより、上端縁部11Aでのブラックアウトを確実に防止することができる。
【0040】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、供給風路31,32は、左右ベゼル23C,23Dの両方に設けられていたが、例えば表示面11の幅が狭い場合等には、左右ベゼル23C,23Dの一方に設けられても良い。
また、上記実施の形態では、各仕切り部材36,37の一端36A,37Aは、表示面11の下端縁部11Bに配置され、表示面11の下端縁部11Bから冷却風を分岐していたが、これに限定されるものではなく、例えば、下ベゼル23Bに配置されてもよく、また、表示パネル22の下端部22Bの下方に位置していてもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、供給風路31,32が表示パネル22の左右ベゼル23C,23Dに設けられていたが、左右ベゼル23C,23Dを狭く形成した場合等には、表示パネル22の外側に設けられてもよい。
供給風路31,32は、仕切り板33,34を設けることによって形成されていたが、ダクトで形成してもよい。この場合、ダクトを断熱材で被覆するとともに、隙間30Aの入口30A−2から上端縁部11Aと下端縁部11Bとの間に延出するダクトを左右ベゼル23C,23Dにそれぞれ配置する構成とすればよい。
【0042】
また、上記実施の形態では、液晶ディスプレイ10の表示面11の下端縁部11Bから上端縁部11Aにかけて冷却風を流す構成としたが、一方向に流す構成であれば、任意の方向に冷却風を流してもよい。この場合、冷却風の下流側に供給口31A,32Aを配置すればよい。
また、上記実施の形態では、液晶ディスプレイ10を密封空間28内に配置し、その周囲に冷却風を循環させる構成としたが、これに限らず、表示面11側の隙間30Aの出口30A−1からでた冷却風を外部に排出してもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、表示面11に対向配置される透明板としてガラス板12を例示したが、内部が視認可能程度に透明な板材であれば任意の材質の板材を用いることができる。
また、上記実施の形態では、平面型ディスプレイに液晶ディスプレイ10を例示したが、本発明は、表示面11をむらなく冷却することが好ましい他の平面型ディスプレイ(例えば、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなど)を備えた電子看板にも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電子看板
8 筐体
10 液晶ディスプレイ(平面型ディスプレイ)
11 表示面
11A 上端縁部(他端縁部)
11B 下端縁部(一端縁部)
11C 左側部(両側部)
11D 右側部(両側部)
12 ガラス板(透明板)
30A 隙間
31,32 供給風路
31A,32A 供給口
35 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面型ディスプレイを筐体に納め、前記筐体に前記平面型ディスプレイの表示面と対向する位置に前記表示面との間に隙間をあけて透明板を設け、前記透明板を通して前記表示面を外側から視認可能にした電子看板において、
前記隙間には前記表示面の一端縁部から他端縁部に向けて冷却風を送風し、前記冷却風の一部は前記一端縁部から分岐して前記一端縁部と前記他端縁部との間に供給したことを特徴とする電子看板。
【請求項2】
前記一端縁部から分岐した前記冷却風を前記表示面の両側部から供給したことを特徴とする請求項1に記載の電子看板。
【請求項3】
前記一端縁部と前記他端縁部との間に前記冷却風を供給する供給口を備え、この供給口を前記他端縁部に向けて斜めに配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子看板。
【請求項4】
前記一端縁部と前記他端縁部との間に前記冷却風を供給する供給風路を形成し、この供給風路を断熱材で被覆したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子看板。
【請求項5】
縦長の前記平面型ディスプレイを前記筐体内に立てた状態で納め、前記冷却風を前記表示面の下端縁部から上端縁部に向けて流したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子看板。
【請求項6】
前記一端縁部と前記他端縁部との間に前記冷却風を供給する供給口を備え、この供給口を前記他端縁部から前記表示面の長さの4分の1の位置に配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子看板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−180182(P2011−180182A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41451(P2010−41451)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】