説明

電子眼鏡

【課題】着用者に安全でかつ容易に電池の消耗を知らせることのできる電子眼鏡を提供する。
【解決手段】電気的に焦点距離を可変できる可変焦点レンズと可変焦点レンズを取り付けたフレームを有する電子眼鏡において、可変焦点レンズを制御するための駆動制御回路と、駆動制御回路に電源を供給するための電池と、電池の残量を検出するための残量検出回路と、残量検出回路の検出結果に応じた振動を行う振動部をフレームに備え、電池切れを警告表示する機能を有することにより、電池切れにより電子眼鏡の機能が停止して、着用者に視界不良を与える前に電池交換や充電をおこなうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子眼鏡に使用される充電式電池の電池残量警告表示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡には、近視者用には凹、遠視者用には凸の単レンズの単レンズ眼鏡が用いられていた。しかし、老眼(遠視)の近視又は遠視者には、このような単レンズ眼鏡を複数使用しなければなない。一つの眼鏡で両方の機能を満たすために、異なる焦点距離を持つレンズを組み合わせた2焦点レンズが考案された。ところが、この2焦点レンズを用いた遠近両用眼鏡では、焦点の合うレンズ領域が狭く見えにくいため、使用者に不快感を与えてしまう。そこで、レンズの焦点距離を電気的に制御することにより、近視と遠視の両方で、広い視野範囲を確保できる遠近両用の電子眼鏡が考案されている。
【0003】
従来の電子眼鏡は、液晶レンズとフレームと電気回路とで構成されている。この液晶レンズは、光の通過する方向(配向状態)により屈折率が異なる液晶素子を用いた可変焦点レンズである。また、液晶レンズの液晶層の両端には、電圧を印加するための透明電極を設けている。フレームは、液晶レンズを固定するリムと眼前にレンズを維持するためのテンプルとノーズパッドで構成される。電気回路は、液晶レンズの駆動制御回路、電源制御回路、小型電池、スイッチで構成される。また、電気回路はフレームに組み込まれ、液晶レンズと電気的に接続している。
【0004】
液晶レンズ内の液晶素子が予め屈折率の高くなる向きに配向されている場合には、近視矯正時は、液晶レンズに電圧を印加しないで使用する。一方、遠視矯正時には、液晶レンズに電圧を印加して、強制的に液晶素子の配向を屈折率の低くなる向きに変えて使用する。近視と遠視の切り替えには、手動または自動スイッチを用いる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような電子眼鏡は携帯して用いられるため、その電源に電池を使用する。そのため、使用者に電池切れを警告する機能が必要となる。電子眼鏡に類似した器具で、電池切れを警告する機能を備えたものに立体表示用の液晶シャッタ眼鏡がある。液晶シャッタ眼鏡は、液晶シャッタ、受信回路、液晶シャッタの駆動制御回路、電池、電池残量検出回路で構成されており、立体映像装置から送信される立体映像を鑑賞するために用いられる。鑑賞中に電池切れが近くなると、液晶シャッタの切り替えタイミングを通常動作時と異なるタイミングで切り替えることにより、使用者に警告する機構を設けている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平4−322214号公報
【特許文献2】特開平9−090292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、使用者の視野内にある液晶の状態を変えて警告する。そのため、電子眼鏡に用いると屈折率を変えてしまい、着用者に視界不良を与えてしまうという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、着用者に安全でかつ容易に電池の消耗を知らせることのできる電子眼鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電子眼鏡は、電気的に焦点距離を可変できる可変焦点レンズと前記可変焦点レンズを取り付けたフレームを有する電子眼鏡において、前記可変焦点レンズを制御するための駆動制御回路と、前記駆動制御回路に電源を供給するための電池と、前記電池の残量を検出するための残量検出回路と、前記残量検出回路の検出結果に応じた振動を行う振動部を前記フレームに備えることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子眼鏡によれば、着用者に安全でかつ容易に電池の消耗を知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の電子眼鏡の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の概略図を示す。図1において、電子眼鏡は、可変焦点レンズ1とフレーム2で構成される。フレーム2は、リム3、ブリッジ4、テンプル5、ヨロイ6、ヒンジ7、モダン8、ノーズパッド9の部品によって構成されている。フレーム2の各部品の機能を説明する。リム3は可変焦点レンズ1の周りを囲んで固定している。ブリッジ4は、2つのリム3を接続している。テンプル5と、テンプル5の先端にあるモダン8と、ノーズパッド9は、顔にメガネを固定する。ヨロイ6は、テンプル5につながるリム3の両端部である。ヒンジ7は、リム3とブリッジ4で構成されるフロント部とテンプル5を接続している。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の側面図を示す。図2において、フレーム2には、可変焦点レンズ1を駆動するための電気回路10と焦点距離を切り替えるスイッチ11と、電池切れを警告するための振動部12が組み込まれている。電気回路10は、テンプル5、ヒンジ7、モダン8のいずれかの左右どちらか一方、または両方に取り付けてもよい。図2には電気回路10をテンプル5に取り付けている。スイッチ11は、手動スイッチと傾斜スイッチのどちらか一方、または両方を組み合わせて使用してもよい。手動スイッチは、フレーム2のどの部分に取り付けてもよいが、傾斜スイッチは、テンプル5に取り付けなければならない。図2は傾斜スイッチをテンプル5に取り付けている。図示はしていないが、傾斜スイッチの替わりにレンジファインダを用いる場合は、可変焦点レンズ1もしくはヨロイ6やフレーム2のフロント部に取り付ける。振動部12は、フレーム2に取り付ける。図2には振動部12をヒンジ7に取り付けている。
【0013】
図3は、本発明の第1の実施の形態における電子眼鏡の電気回路ブロック図を示す。図3において、電池13は制御回路部14に電源を供給している。制御回路部14は、駆動パルス生成回路15、残量検出回路16で構成されている。駆動パルス生成回路15は、可変焦点レンズ1を駆動するためのパルスを生成する回路である。駆動パルスの電圧と周期を可変するために、例えば電圧変換回路や分周回路を含んでいる。残量検出回路16は振動部12に接続しており、電池13の残量を検出して、検出結果に応じた信号を出力する。
【0014】
図4は、本発明の第1の実施の形態における電子眼鏡の電池切れ警告動作のフローチャート図を示す。図4を用いて、警告表示の動作説明をおこなう。Vrは電池残量、Voffは電池切れ警告電圧を示す。残量検出回路16には、例えば、A/Dコンバータを用いる。一定の周期で電池13の電圧レベルを検出し、その検出結果をVrとする(S1)。次に、VrとVoffを比較し(S2)、Vr>VoffならS1に戻る。Vr=Voffとなると、振動部12を振動させて警告表示をおこなう(S3)。Vrを検出して(S4)、VrとVoffを比較し(S5)、Vr<Voffとなると電池切れとなる(S6)。
【0015】
以上のように、実施の形態1においては、残量検出回路16の検出結果に応じた振動をおこなう振動部12をフレーム2に備えて、電池切れを警告表示することにより、電池切れになる前に電池を交換したり充電したりすることができる。
【0016】
また、実施の形態1では、警告表示後も電池交換や充電をせずに電子眼鏡を動作させ続けた場合は、電池切れが発生して視界不良が生じる可能性がある。そこで、スイッチ11の状態(ON/OFF)にかかわらず、可変焦点レンズ1への駆動パルスの供給を止める。制御回路部14が駆動できなくなるまでは、スイッチ12がONになる度に警告表示をおこなう。
【0017】
図5は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の構成図を示す。図5において、振動部12は、コイル17、磁石18、コーン型の振動板19で構成され、フレーム2に組み込まれる。磁石18はフレーム2の内側に固定し、コイル17の中に入れる。この時、コイル17と磁石18の間には隙間を設けておく。コイル17は振動板19の凸側に固定する。振動板19の凹側はフレーム2の一部を構成する。振動板19にフレーム2の材質と同じ材料を使用することにより、フレーム2と一体化することができる。
【0018】
振動部12の動作説明をおこなう。残量検出回路16からコイル17に交流電流を流すことにより、フレミングの法則によりコイル17が可動する。振動板19はコイル17に固定してあるため、コイル17の可動により振動板19が振動する。
【0019】
図6は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の別の構成図を示す。図6において、振動部12に圧電素子20を用いる。圧電素子20は、薄膜圧電セラミック21を電極22a、22bで挟み、電極22aには振動板23が取り付けられている。圧電素子20は、フレーム2に組み込まれ、振動板23はフレーム2の一部を構成する。振動板23にフレーム2の材質と同じ材料を使用することにより、フレーム2と一体化することができる。
【0020】
別の構成を示す振動部12の動作説明をおこなう。残量検出回路16から電圧を供給することにより、薄膜圧電セラミック21が伸縮する。その伸縮変化が振動板23に伝搬することでたわみが発生し、振動板23が振動する。
【0021】
図7は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の配置図を示す。図7において、振動部12をテンプル5に設ける。電気回路10がテンプル5、ヒンジ7、モダン8のいずれかの左右どちらか一方に取り付けられている場合は、電気回路10が取り付けられている方のテンプル5に振動部12を取り付ける。図示しないが、電気回路10が左右両方に取り付けられている場合は、両方のテンプル5に振動部12を取り付ける。テンプル5は、電子眼鏡全体を振動させることができるため、着用者は振動を感じやすい。
【0022】
図8は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の別の配置図を示す。図8において、振動部12をモダン8に設ける。電気回路10がテンプル5、ヒンジ7、モダン8のいずれかの左右どちらか一方に取り付けられている場合は、電気回路10が取り付けられている方のモダン8に振動部12を取り付ける。図示しないが、電気回路10が左右両方に取り付けられている場合は、両方のモダン8に振動部12を取り付ける。テンプル5のモダン8側の先端に電極24を設け、テンプル5をモダン8に差し込むと同時に振動部12と電気的に接続してパルスを供給する。
【0023】
また、実施の形態1の振動部12を小型で薄型のモータとすると、モダン8に振動部12を埋め込むことができる。よって、モダン8のみが振動することとなり、着用者の耳に接触している部分で振動を感じることができる。
【0024】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2における電子眼鏡の電気回路ブロック図を示す。実施の形態1の構成と異なるところは、残量検出回路16に残量比較回路25とパルス出力部26を設けた点である。
【0025】
図9において、二次電池27は制御回路部14に電源を供給している。制御回路部14は、駆動パルス生成回路15、残量検出回路16、残量比較回路25、パルス出力部26で構成されている。駆動パルス生成回路15は、可変焦点レンズ1を駆動するためのパルスを生成する回路である。駆動パルスの電圧と周期を可変するために、例えば電圧変換回路や分周回路を含んでいる。二次電池27の残量を検出する残量検出回路16は、検出した値と所定値との差分値を演算する残量比較回路25と電気的に接続されている。この差分値に応じて周期を変えたパルスを出力するパルス出力部26が振動部12に接続されている。
【0026】
図10は、本発明の実施の形態2における電子眼鏡の電池切れ警告動作のフローチャート図を示す。本実施例では、二次電池27にはリチウムイオン二次電池を用い、三段階の警告表示を用いて動作説明をおこなう。Vrは電池残量、Vp1、Vp2、Vp3は三段階の所定値、Vdは差分値を表す。図11に一般的なリチウムイオン二次電池放電特性を示す。この放電特性により、例えば、Vp1=3.1V、Vp2=3.25V、Vp3=3.4Vと設定する。図12は、本実施例の警告表示タイミング図を示す。Tiはインターバル期間、Tvは振動期間とする。
【0027】
残量検出回路16には、例えば、A/Dコンバータを用いてVrを一定の周期で検出する(S11)。
【0028】
残量比較回路25には、例えば、コンパレータを用いてVrとVp1、Vp2、Vp3を比較し、各所定値に応じてVdは‘H’か‘L’を出力する(S12、S17、S19)。
【0029】
最初に、VrとVp1を比較する(S12)。Vr=Vp1ならVd=‘H’、Vr>Vp1ならVd=‘L’とする。Vd=‘H’なら、例えば、Ti=0sとし、数秒間連続的に振動させる警告Aで警告表示をおこなう(S13)。この警告は最終警告表示であるため、そのまま電子眼鏡を動作させ続けると電池切れとなる(S16)。Vd=‘L’なら、VrとVp2を比較する(S17)。Vr=Vp2ならVd=‘H’、Vr>Vp2ならVd=‘L’とする。Vd=‘H’なら、例えば、警告B(Tv=Tiのタイミング)で振動部12を振動させて警告表示して(S18)、S11へ戻る。Vd=‘L’なら、VrとVp3を比較する(S19)。Vd=‘H’なら、例えば、警告C(Tv<<Tiのタイミング)で振動部12を振動させて警告表示して(S20)、S11へ戻る。Vd=‘L’なら、警告表示しないでS11へ戻る。
【0030】
以上のように、実施の形態2においては、残量検出回路16に電池残量と所定値との差分値を演算する残量比較回路25と、差分値に応じて周期を変えたパルスを出力するパルス出力部26を備えることにより、電池残量を段階的に知らせることで、電池交換や充電への対応がとりやすくなる。
【0031】
また、実施の形態2では、最終警告表示後も電池交換や充電をせずに電子眼鏡を動作させ続けた場合は、電池切れが発生して視界不良が生じる可能性がある。そこで、スイッチ11の状態(ON/OFF)にかかわらず、可変焦点レンズ1への駆動パルスの供給を止める。制御回路部14が駆動できなくなるまでは、スイッチ12がONになる度に警告表示をおこなう。
【0032】
特に、着用者が車の運転中等に、突然電池切れにより電子眼鏡の機能が停止すると非常に危険であるので、本発明による電池切れの警告機能は着用者の安全を図る上で有用である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明にかかる電子眼鏡は、着用者に安全でかつ容易に電池の消耗を知らせる表示手段を有し、電子眼鏡に使用される充電式電池の電池残量警告表示として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の概略図
【図2】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の側面図
【図3】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の電気回路ブロック図
【図4】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の電池切れ警告動作のフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の構成図
【図6】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の別の構成図
【図7】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の配置図
【図8】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の振動部の別の配置図
【図9】本発明の実施の形態2における電子眼鏡の電気回路ブロック図
【図10】本発明の実施の形態2における電子眼鏡の電池切れ警告動作のフローチャート
【図11】一般的なリチウムイオン二次電池放電特性を示す図
【図12】本発明の実施の形態2における電子眼鏡の警告表示タイミング図
【符号の説明】
【0035】
1 可変焦点レンズ
2 フレーム
3 リム
4 ブリッジ
5 テンプル
6 ヨロイ
7 ヒンジ
8 モダン
9 ノーズパッド
10 電気回路
11 スイッチ
12 振動部
13 電池
14 制御回路
15 駆動パルス生成回路
16 残量検出回路
17 コイル
18 磁石
19 振動板
20 圧電素子
21 薄膜圧電セラミック
22 電極
23 振動板
24 電極
25 残量比較回路
26 パルス出力部
27 二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に焦点距離を可変できる可変焦点レンズと前記可変焦点レンズを取り付けたフレームを有する電子眼鏡において、
前記可変焦点レンズを制御するための駆動制御回路と、
前記駆動制御回路に電源を供給するための電池と、
前記電池の残量を検出するための残量検出回路と、
前記残量検出回路の検出結果に応じた振動を行う振動部を前記フレームに備えた電子眼鏡。
【請求項2】
前記振動部が、永久磁石と前記永久磁石の周囲に配置された可動コイルと前記可動コイルに接続された振動板とからなる請求項1に記載の電子眼鏡。
【請求項3】
前記振動部が圧電素子である請求項1に記載の電子眼鏡。
【請求項4】
前記フレームのテンプルに前記振動部を設けた請求項1に記載の電子眼鏡。
【請求項5】
前記フレームのモダンに前記振動部を設けた請求項1に記載の電子眼鏡。
【請求項6】
前記残量検出回路は、前記電池の残量と所定の値との差分値を演算する残量比較回路と、
前記差分値に応じて周期を変えたパルスを出力するパルス出力部と、をさらに備える請求項1に記載の電子眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−180864(P2009−180864A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18694(P2008−18694)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】