電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法
【課題】スクリーニング現象に対して対処可能な電子ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法を提供すること。
【解決手段】電子線ホログラム形成装置は、試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備える。電子線ホログラム形成方法は、試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成する。
【解決手段】電子線ホログラム形成装置は、試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備える。電子線ホログラム形成方法は、試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線ホログラムを形成する装置に関する。また、本発明は、電子線ホログラムを形成する方法に関する。例えば、本発明は、誘電材料の電磁ポテンシャル分布を測定するための電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体薄膜の物性を利用する工業製品においては、誘電体と誘電体、又は誘電体と導体との複合構造における電磁ポテンシャルの空間分布が工業製品の特性に決定的な影響を与える。例えば、不揮発性記憶装置においては、誘電膜中の電流パスや動作時の電荷分布が、スイッチ動作に決定的な役割を果たす。また、この電磁ポテンシャル分布は、その誘電材料に含まれる荷電欠陥等によっても局所的に変動する。このため、そのポテンシャルの空間分布の評価観察が可能であれば、工業製品の開発・製造の効率化が可能となる。さらに、近年では、ナノスケールの誘電体薄膜が工業製品に多く適用されており、内部ポテンシャルの空間分布計測においては、ナノスケールの空間分解能が要求されている。
【0003】
ここで、電磁ポテンシャルの空間的な変化をナノスケールの空間分解能で計測する方法の一つとして、電子線ホログラフィが知られている。電子線ホログラフィによれば、例えば誘電体の誘電性等を評価することができる(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1に記載の素子評価方法は、電子線ホログラムにより素子構成部材の近傍の空間部分を通る電子線の位相の変化を検出し、その検出結果により素子構成部材の強誘電性の有無を判定する。
【0005】
特許文献2に記載の素子評価方法は、素子を構成する磁性物質の磁区分布を電子線ホログラフィにより調べることで素子を評価する方法であって、評価試料として、該磁性物質に隣接して、磁場を漏洩しない誘電物質が存在するものを用いる。
【0006】
また、特許文献3には、電子ホログラフィを用いて、CMOS半導体素子中の二次元ポテンシャル分布を横方向の最小分解能がnmの領域内において測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−223717号公報
【特許文献2】特開2003−270312号公報
【特許文献3】特表2002−522913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0009】
特許文献1〜3に記載の方法によって、誘電材料における電磁ポテンシャル分布をナノスケール分解能で直接的に計測することは困難である。その要因としては、誘電体に対する電子線の照射により生ずる帯電現象、及び誘電材料における帯電欠陥によって生ずる電荷の再配置によるスクリーニング現象が考えられる。帯電現象については、誘電材料を接地することによって対処することができる。そこで、誘電材料における電磁ポテンシャル分布を観測するためには、スクリーニング現象を抑制する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、スクリーニング現象に対して対処可能な電子ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1視点によれば、試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備える電子線ホログラム形成装置が提供される。
【0012】
本発明の第2視点によれば、試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成する電子線ホログラム形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0014】
本発明によれば、試料に電圧を印加することにより、スクリーニング現象を抑制して電子線ホログラムを形成することができる。一方、電圧の印加によりベクトルポテンシャルが発生すると、ベクトルポテンシャルによる位相の変調が重畳して観測されるので、目的とする帯電欠陥等を直接的に観察することが困難になる。そこで、本発明においては、試料に電流が流れないように試料に電圧を印加することにより、ベクトルポテンシャルの発生を抑制している。これにより、例えば、試料が誘電材料を有する場合に、誘電材料における帯電欠陥に起因する内部ポテンシャル分布を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子線ホログラム装置の概略構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電圧印加形態を示す概略断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電圧印加形態を示す概略断面図。
【図4】電子線ホログラムの形成原理を説明するための概略模式図。
【図5】実施例において使用した試料のTEM観察像。
【図6】実施例において使用した試料のバンドラインナップ。
【図7】実施例における電場を印加した状態におけるポテンシャル分布測定結果。
【図8】実施例における電場を印加していない状態におけるポテンシャル分布測定結果。
【図9】実施例における電極−試料の間の電位分布測定結果。
【図10】実施例において測定した電子線ホログラム。
【図11】図10の点線に沿った像強度分布。
【図12】図10に示す電子線ホログラムの再生位相像。
【図13】実施例における試料表面に対して垂直方向の位相分布(図12における点線に沿った位相分布)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、上記視点の好ましい形態を記載する。
【0017】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方は試料と接触しない。
【0018】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方には絶縁膜が被覆されている。
【0019】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極が印加する電圧は、試料に電流が流れないような電圧である。
【0020】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方は試料の一部を含む。
【0021】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電圧は、試料に電流が流れないような電圧である。
【0022】
上記第2視点の好ましい形態によれば、少なくとも一方の電極を試料に接触させない。
【0023】
上記第2視点の好ましい形態によれば、少なくとも一方の電極と試料との間に絶縁体を介在させる。
【0024】
上記第2視点の好ましい形態によれば、試料が、誘電材料と、誘電材料に接する導体層又は半導体層と、を有する。導体層又は半導体層を電極として使用する。
【0025】
本発明の電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法について説明する。図1に、本発明の電子線ホログラム装置の概略構成図を示す。図2及び図3に、電極及び試料の概略断面図を示す。図2は、第1実施形態に係る電圧印加形態を示す。図3は、第2実施形態に係る電圧印加形態を示す。なお、図1において試料の図示は省略してあり、電極の図示は簡略化してある。また、図2及び図3において試料ホルダの図示は省略してある。
【0026】
電子線ホログラム形成装置1は、試料11に対して電子線を照射する電子銃2と、試料11を保持する試料ホルダ4と、試料ホルダ4を接地するための接地部10と、試料11に電圧を印加する第1電極3a及び第2電極3bと、試料11を透過した電子線を基に干渉縞を形成する電子線バイプリズム5と、電子線ホログラムを検出する検出器6と、試料11の環境を減圧状態又は真空状態にするための真空チャンバ及び真空装置(不図示)と、を備える。
【0027】
試料ホルダ4は、試料11の帯電を除去するために接地されている。図2及び図3に示すように、誘電材料13を有する試料11は、導電膜15で被覆してもよい。導電膜15で被覆することにより、電子線照射による試料11の帯電を防止することができる。導電膜15としては、例えば、厚さ数nmのアモルファス炭素膜を使用することができる。
【0028】
試料11は、さらに半導体層又は導体層を有してもよい。例えば、図2及び図3に示す試料11は、誘電層(誘電材料)13に積層された半導体層(例えばシリコン基板)12と、半導体層12とは反対側に積層された導体層14と、を有する。半導体層12と導体層14は、それぞれ異なっていることは必要でなく、両方とも半導体層又は導体層であってもよい。このとき、半導体層12及び導体層14は、誘電層13に対して電極の一部のように作用することもできる。半導体層12又は導体層14を介して誘電層13に電圧を印加することにより、誘電層13に対して均一に電場をかけることができる。これにより、誘電層13の均一性評価を適切にすることができる。
【0029】
第1電極3a及び第2電極3bは、電子線の透過方向に沿って、試料11に対し電圧を印加する。電圧を印加した状態で電子線ホログラムを形成することによって、スクリーニング現象の発生を抑制し、帯電欠陥等に起因する内部ポテンシャル分布を測定することができる。
【0030】
一方、誘電材料を含む試料11に対して電圧を印加する際、試料11には電流が流れないようにする。これにより、ベクトルポテンシャルの発生を抑制し、ベクトルポテンシャルが発生による位相の変調が重畳することを抑制することができる。なお、ここで、「電流が流れない」とは、試料11における帯電欠陥等を直接的に観測できるような状態をいい、例えば誘電材料における電流が10−9A以下であることとすることができる。
【0031】
試料11に電流が流れることを防止するために、図2に示す第1実施形態においては、少なくとも一方の電極、例えば第1電極3aを試料11と接触させずに、第1電極3aと試料11との間に間隙3cを設けている。図3に示す第2実施形態においては、少なくとも一方の電極、例えば第1電極3aに絶縁膜3dを被覆し、第1電極3aと試料11とは絶縁膜3dを介して接続されている。絶縁膜3dは、絶縁膜3dの伝導帯の底が、試料11の誘電材料の伝導帯の底よりも高エネルギーである、もしくは、絶縁膜3dの価電子帯の頂上が、試料11の誘電材料の価電子帯の頂上よりも低エネルギーである、という条件のうち少なくとも一方を満たしていればよい。
【0032】
第1電極3a及び第2電極3bは、それぞれ、図1に示すように試料ホルダ4の一部として構成してもよいし(もしくは、試料ホルダ4が第1電極3a及び第2電極3bの一部であってもよい)、または、試料ホルダ4とは別個の要素として構成してもよい。
【0033】
次に、電子線ホログラムの形成原理について説明する。図4に、電子線ホログラムの形成原理を説明するための概略模式図を示す。図4は、Off−axis法の概略光線図である。図4においては、電極の図示は省略してある。なお、ここでは、広く知られているoff−axis法を用いる場合について説明するが、他の同等な方法を用いることも可能である。
【0034】
まず、試料11の環境は、減圧又は真空状態にしておく。次に、電子銃(Electron gun)2から試料(Specimen)11に対して電子線を照射する。この際、電子線の一部は試料11を透過し、電子線の残部は試料11近傍の真空中を伝搬するようにする。電子が試料11を透過するとき、電子は試料11の内部ポテンシャルによって加速され波長が短くなる。この結果、試料11を透過した電子波(物体波;Object(Obj.) wave)8aは、真空中を伝搬する電子波(参照波;Reference(Ref.) wave)8bと比較して、その位相が変化する。また、この変化量は、試料11中の内部ポテンシャル分布を反映する。
【0035】
これらの電子波8a,8bは、試料11を透過した後、電子線バイプリズム5と呼ばれる細い糸状の電極に正の電圧をかけることによって、重ね合わされる。この重ね合わせによって、電子線ホログラム9が形成される。電子線ホログラム9から物体波8aの位相分布を得るまでの一連の作業は、計算機による画像処理で行うことが可能である。この処理は、例えば市販のソフトウエアを利用して行うことも可能である。
【0036】
電子線の入射方向をz軸と平行に取り、試料11の内部ポテンシャル分布をV(x,y)とすると、位相ずれ量の2次元分布φ(x,y)は、次式で与えられる。ここで、CEは定数(200keV電子に対して7.28×106rad/Vm)、tは試料の厚さを示す。
【0037】
【数1】
【0038】
電子線の位相は、電子線ホログラフィあるいはこれと物理的に同等な計測方法を用いて計測することが可能である。この技術によって透過電子波8aの位相ずれ量の分布φ(x,y)を計測すれば、式(1)に基づいて、試料11の内部ポテンシャル分布V(x,y)を求めることができる。
【0039】
本発明によれば、誘電材料中の電磁ポテンシャル分布をナノスケールの分解能で計測することができる。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
異なる種類の誘電体が接する界面に起因して発生する誘電材料中のポテンシャル電位分布を計測した。図5に、測定に使用した試料のTEM観察像を示す。また、図6に、当該試料のバンドラインナップを示す。試料としては、厚さ10nmの第1誘電層(二酸化ケイ素)13aと厚さ10nmの第2誘電層(酸化タンタル)13bの積層体の誘電層を含むものを使用した。酸化タンタル13b側には、さらに導体層として厚さ5nmのタンタル14が積層されている。また、二酸化ケイ素13a側には、半導体層としてさらにシリコン基板12が積層されている。試料は、電子線が透過する程度に薄片化されている。電子照射による試料の帯電を防止するため、試料の表面に厚さ数nmのアモルファス炭素膜を被覆し、試料ホルダを介して接地した。試料ホルダとしてTEM−STMホルダを利用した。この試料ホルダは、試料に電圧を印加するための探針電極、及び試料支持部を有する。
【0041】
上記試料について、電場を印可した状態におけるポテンシャル分布及び電場を印加していない状態におけるポテンシャル分布を測定した。図7に、電場を印加した状態におけるポテンシャル分布測定結果を示す。図8に、電場を印加していない状態におけるポテンシャル分布測定結果を示す。図7及び図8における実線は、等電位の点を結んだ等電位線である。
【0042】
電圧の印加は、図2に示すように、電極と試料とを接触させずに、電極と試料との間を10nm離して実施した。電圧を印加することによって、真空中、シリコン基板、及び二酸化ケイ素内部において電位勾配が形成されていることが分かる。
【0043】
この電位勾配を定量的に観察するために、電圧を印加した場合としない場合について、それぞれ、図7及び図8の点線に沿って電極−試料の間の電位分布を測定した。測定結果を図9に示す。電圧を印加した状態の電位分布が上線であり、電圧を印加していない状態の電位分布が下線である。電位分布は、電圧を印可によって明瞭に変化している。例えば、電圧印加状態において、真空中の電位分布のグラフ傾き(θV)、とSiO2中の電位分布の傾き(θI)とを比較すると、θV>θIであり、その傾きの違いは約4倍となっている。これは、SiO2の真空に対する比誘電率が4であることに対応しており、計測された電位勾配は、誘電材料SiO2の物性を精確に反映していることを示している。すなわち、本実施例は、試料に電流を流さないように電圧を印加した状態において、ポテンシャル分布が計測可能であることを示している。
【0044】
また、本実施例によれば、誘電材料SiO2及びTa2O5に対して導電層Ta及び半導体層Si基板を積層することにより、誘電材料に対して均一な電場を形成できることが分かる。図7においては、等電位線は、真空中では電極の周囲に電極を囲むように分布している。一方、試料中では、等電位線は、試料表面に対して平行に分布している。これは、誘電材料内部の電位分布が一定となっていること、すなわち、導電層Ta−半導体層Si基板により一様な電場が形成されたためであると考えられる。
【0045】
[実施例2]
次に、上記実施例で用いた試料の電子線ホログラムを測定した。図10に、電子線ホログラムを示す。図11に、図10の点線に沿った像強度分布を示す。図12に、電子線ホログラムの再生位相像を示す。図13に、試料表面に対して垂直方向の位相分布(図12における点線に沿った位相分布)を示す。なお、電子波干渉縞の間隔は1nmと設定し、位相像再生時の空間分解能は約2nmと設定した。
【0046】
図13に示す各層の位相は、各層を構成する物質の内部ポテンシャルを反映している。例えば、SiO2とSiの内部ポテンシャルは、それぞれ約10eVと11eVと報告されており、各層で観測された位相差は、そのポテンシャルと一致する。
【0047】
また、本試料のような積層構造においては、導体層Taと半導体層Siのフェルミレベルが一致するように界面での電荷の蓄積が起こり、この結果、誘電層SiO2及びTa2O5内部に電場が発生する。本実施例の試料においては、半導体層Si(p型)のフェルミレベルと導体層Taのフェルミレベルは、それぞれ約5.1eVと4.2eVであり、誘電層SiO2及びTa2O5中にはこのポテンシャル差を反映した電場が発生する。図13においては、SiO2中のポテンシャルは、右下がりになっており、この電場(ポテンシャル勾配)を反映したポテンシャル分布を反映していると考えられる。
【0048】
従って、図10〜図13に示す結果は、本発明によって、異種の誘電材料の界面に起因して発生する誘電材料中のポテンシャル分布をナノスケールの空間分解能で計測可能であることを示している。
【0049】
本発明の電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0050】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法は、例えば電子顕微鏡に組み込むことができる。電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法は、例えば、半導体記憶装置における誘電膜の評価に適用することができる。
【0052】
(付記1)試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備えることを特徴とする電子線ホログラム形成装置。
【0053】
(付記2)試料は、誘電層と、前記誘電層に隣接する導体層又は半導体層と、を有し、
前記導体層又は前記半導体層は、前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方に含まれていることを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【0054】
(付記3)試料を保持する試料ホルダをさらに備え、試料は、前記試料ホルダを介して接地されることを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【0055】
(付記4)試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成することを特徴とする電子線ホログラム形成方法。
【0056】
(付記5)異なる種類の誘電材料が接する界面を有する試料の内部ポテンシャル分布を測定することを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【0057】
(付記6)帯電欠陥を検出するために試料の内部ポテンシャル分布を測定することを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【0058】
(付記7)試料を導電膜で被覆し、前記導電膜を接地することを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【0059】
(付記8)前記導電膜はアモルファス炭素の膜であることを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【符号の説明】
【0060】
1 電子線ホログラム形成装置
2 電子銃
3 電極
3a 第1電極
3b 第2電極
3c 間隙
3d 絶縁膜
4 試料ホルダ
5 電子線バイプリズム
6 検出器
7 電子レンズ
8a 物体波
8b 参照波
9 電子線ホログラム
10 接地部
11 試料
12 半導体層
13 誘電層(誘電材料)
13a 第1誘電層
13b 第2誘電層
14 導体層
15 導電膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線ホログラムを形成する装置に関する。また、本発明は、電子線ホログラムを形成する方法に関する。例えば、本発明は、誘電材料の電磁ポテンシャル分布を測定するための電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体薄膜の物性を利用する工業製品においては、誘電体と誘電体、又は誘電体と導体との複合構造における電磁ポテンシャルの空間分布が工業製品の特性に決定的な影響を与える。例えば、不揮発性記憶装置においては、誘電膜中の電流パスや動作時の電荷分布が、スイッチ動作に決定的な役割を果たす。また、この電磁ポテンシャル分布は、その誘電材料に含まれる荷電欠陥等によっても局所的に変動する。このため、そのポテンシャルの空間分布の評価観察が可能であれば、工業製品の開発・製造の効率化が可能となる。さらに、近年では、ナノスケールの誘電体薄膜が工業製品に多く適用されており、内部ポテンシャルの空間分布計測においては、ナノスケールの空間分解能が要求されている。
【0003】
ここで、電磁ポテンシャルの空間的な変化をナノスケールの空間分解能で計測する方法の一つとして、電子線ホログラフィが知られている。電子線ホログラフィによれば、例えば誘電体の誘電性等を評価することができる(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1に記載の素子評価方法は、電子線ホログラムにより素子構成部材の近傍の空間部分を通る電子線の位相の変化を検出し、その検出結果により素子構成部材の強誘電性の有無を判定する。
【0005】
特許文献2に記載の素子評価方法は、素子を構成する磁性物質の磁区分布を電子線ホログラフィにより調べることで素子を評価する方法であって、評価試料として、該磁性物質に隣接して、磁場を漏洩しない誘電物質が存在するものを用いる。
【0006】
また、特許文献3には、電子ホログラフィを用いて、CMOS半導体素子中の二次元ポテンシャル分布を横方向の最小分解能がnmの領域内において測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−223717号公報
【特許文献2】特開2003−270312号公報
【特許文献3】特表2002−522913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0009】
特許文献1〜3に記載の方法によって、誘電材料における電磁ポテンシャル分布をナノスケール分解能で直接的に計測することは困難である。その要因としては、誘電体に対する電子線の照射により生ずる帯電現象、及び誘電材料における帯電欠陥によって生ずる電荷の再配置によるスクリーニング現象が考えられる。帯電現象については、誘電材料を接地することによって対処することができる。そこで、誘電材料における電磁ポテンシャル分布を観測するためには、スクリーニング現象を抑制する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、スクリーニング現象に対して対処可能な電子ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1視点によれば、試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備える電子線ホログラム形成装置が提供される。
【0012】
本発明の第2視点によれば、試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成する電子線ホログラム形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0014】
本発明によれば、試料に電圧を印加することにより、スクリーニング現象を抑制して電子線ホログラムを形成することができる。一方、電圧の印加によりベクトルポテンシャルが発生すると、ベクトルポテンシャルによる位相の変調が重畳して観測されるので、目的とする帯電欠陥等を直接的に観察することが困難になる。そこで、本発明においては、試料に電流が流れないように試料に電圧を印加することにより、ベクトルポテンシャルの発生を抑制している。これにより、例えば、試料が誘電材料を有する場合に、誘電材料における帯電欠陥に起因する内部ポテンシャル分布を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子線ホログラム装置の概略構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電圧印加形態を示す概略断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電圧印加形態を示す概略断面図。
【図4】電子線ホログラムの形成原理を説明するための概略模式図。
【図5】実施例において使用した試料のTEM観察像。
【図6】実施例において使用した試料のバンドラインナップ。
【図7】実施例における電場を印加した状態におけるポテンシャル分布測定結果。
【図8】実施例における電場を印加していない状態におけるポテンシャル分布測定結果。
【図9】実施例における電極−試料の間の電位分布測定結果。
【図10】実施例において測定した電子線ホログラム。
【図11】図10の点線に沿った像強度分布。
【図12】図10に示す電子線ホログラムの再生位相像。
【図13】実施例における試料表面に対して垂直方向の位相分布(図12における点線に沿った位相分布)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、上記視点の好ましい形態を記載する。
【0017】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方は試料と接触しない。
【0018】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方には絶縁膜が被覆されている。
【0019】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極が印加する電圧は、試料に電流が流れないような電圧である。
【0020】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方は試料の一部を含む。
【0021】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電圧は、試料に電流が流れないような電圧である。
【0022】
上記第2視点の好ましい形態によれば、少なくとも一方の電極を試料に接触させない。
【0023】
上記第2視点の好ましい形態によれば、少なくとも一方の電極と試料との間に絶縁体を介在させる。
【0024】
上記第2視点の好ましい形態によれば、試料が、誘電材料と、誘電材料に接する導体層又は半導体層と、を有する。導体層又は半導体層を電極として使用する。
【0025】
本発明の電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法について説明する。図1に、本発明の電子線ホログラム装置の概略構成図を示す。図2及び図3に、電極及び試料の概略断面図を示す。図2は、第1実施形態に係る電圧印加形態を示す。図3は、第2実施形態に係る電圧印加形態を示す。なお、図1において試料の図示は省略してあり、電極の図示は簡略化してある。また、図2及び図3において試料ホルダの図示は省略してある。
【0026】
電子線ホログラム形成装置1は、試料11に対して電子線を照射する電子銃2と、試料11を保持する試料ホルダ4と、試料ホルダ4を接地するための接地部10と、試料11に電圧を印加する第1電極3a及び第2電極3bと、試料11を透過した電子線を基に干渉縞を形成する電子線バイプリズム5と、電子線ホログラムを検出する検出器6と、試料11の環境を減圧状態又は真空状態にするための真空チャンバ及び真空装置(不図示)と、を備える。
【0027】
試料ホルダ4は、試料11の帯電を除去するために接地されている。図2及び図3に示すように、誘電材料13を有する試料11は、導電膜15で被覆してもよい。導電膜15で被覆することにより、電子線照射による試料11の帯電を防止することができる。導電膜15としては、例えば、厚さ数nmのアモルファス炭素膜を使用することができる。
【0028】
試料11は、さらに半導体層又は導体層を有してもよい。例えば、図2及び図3に示す試料11は、誘電層(誘電材料)13に積層された半導体層(例えばシリコン基板)12と、半導体層12とは反対側に積層された導体層14と、を有する。半導体層12と導体層14は、それぞれ異なっていることは必要でなく、両方とも半導体層又は導体層であってもよい。このとき、半導体層12及び導体層14は、誘電層13に対して電極の一部のように作用することもできる。半導体層12又は導体層14を介して誘電層13に電圧を印加することにより、誘電層13に対して均一に電場をかけることができる。これにより、誘電層13の均一性評価を適切にすることができる。
【0029】
第1電極3a及び第2電極3bは、電子線の透過方向に沿って、試料11に対し電圧を印加する。電圧を印加した状態で電子線ホログラムを形成することによって、スクリーニング現象の発生を抑制し、帯電欠陥等に起因する内部ポテンシャル分布を測定することができる。
【0030】
一方、誘電材料を含む試料11に対して電圧を印加する際、試料11には電流が流れないようにする。これにより、ベクトルポテンシャルの発生を抑制し、ベクトルポテンシャルが発生による位相の変調が重畳することを抑制することができる。なお、ここで、「電流が流れない」とは、試料11における帯電欠陥等を直接的に観測できるような状態をいい、例えば誘電材料における電流が10−9A以下であることとすることができる。
【0031】
試料11に電流が流れることを防止するために、図2に示す第1実施形態においては、少なくとも一方の電極、例えば第1電極3aを試料11と接触させずに、第1電極3aと試料11との間に間隙3cを設けている。図3に示す第2実施形態においては、少なくとも一方の電極、例えば第1電極3aに絶縁膜3dを被覆し、第1電極3aと試料11とは絶縁膜3dを介して接続されている。絶縁膜3dは、絶縁膜3dの伝導帯の底が、試料11の誘電材料の伝導帯の底よりも高エネルギーである、もしくは、絶縁膜3dの価電子帯の頂上が、試料11の誘電材料の価電子帯の頂上よりも低エネルギーである、という条件のうち少なくとも一方を満たしていればよい。
【0032】
第1電極3a及び第2電極3bは、それぞれ、図1に示すように試料ホルダ4の一部として構成してもよいし(もしくは、試料ホルダ4が第1電極3a及び第2電極3bの一部であってもよい)、または、試料ホルダ4とは別個の要素として構成してもよい。
【0033】
次に、電子線ホログラムの形成原理について説明する。図4に、電子線ホログラムの形成原理を説明するための概略模式図を示す。図4は、Off−axis法の概略光線図である。図4においては、電極の図示は省略してある。なお、ここでは、広く知られているoff−axis法を用いる場合について説明するが、他の同等な方法を用いることも可能である。
【0034】
まず、試料11の環境は、減圧又は真空状態にしておく。次に、電子銃(Electron gun)2から試料(Specimen)11に対して電子線を照射する。この際、電子線の一部は試料11を透過し、電子線の残部は試料11近傍の真空中を伝搬するようにする。電子が試料11を透過するとき、電子は試料11の内部ポテンシャルによって加速され波長が短くなる。この結果、試料11を透過した電子波(物体波;Object(Obj.) wave)8aは、真空中を伝搬する電子波(参照波;Reference(Ref.) wave)8bと比較して、その位相が変化する。また、この変化量は、試料11中の内部ポテンシャル分布を反映する。
【0035】
これらの電子波8a,8bは、試料11を透過した後、電子線バイプリズム5と呼ばれる細い糸状の電極に正の電圧をかけることによって、重ね合わされる。この重ね合わせによって、電子線ホログラム9が形成される。電子線ホログラム9から物体波8aの位相分布を得るまでの一連の作業は、計算機による画像処理で行うことが可能である。この処理は、例えば市販のソフトウエアを利用して行うことも可能である。
【0036】
電子線の入射方向をz軸と平行に取り、試料11の内部ポテンシャル分布をV(x,y)とすると、位相ずれ量の2次元分布φ(x,y)は、次式で与えられる。ここで、CEは定数(200keV電子に対して7.28×106rad/Vm)、tは試料の厚さを示す。
【0037】
【数1】
【0038】
電子線の位相は、電子線ホログラフィあるいはこれと物理的に同等な計測方法を用いて計測することが可能である。この技術によって透過電子波8aの位相ずれ量の分布φ(x,y)を計測すれば、式(1)に基づいて、試料11の内部ポテンシャル分布V(x,y)を求めることができる。
【0039】
本発明によれば、誘電材料中の電磁ポテンシャル分布をナノスケールの分解能で計測することができる。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
異なる種類の誘電体が接する界面に起因して発生する誘電材料中のポテンシャル電位分布を計測した。図5に、測定に使用した試料のTEM観察像を示す。また、図6に、当該試料のバンドラインナップを示す。試料としては、厚さ10nmの第1誘電層(二酸化ケイ素)13aと厚さ10nmの第2誘電層(酸化タンタル)13bの積層体の誘電層を含むものを使用した。酸化タンタル13b側には、さらに導体層として厚さ5nmのタンタル14が積層されている。また、二酸化ケイ素13a側には、半導体層としてさらにシリコン基板12が積層されている。試料は、電子線が透過する程度に薄片化されている。電子照射による試料の帯電を防止するため、試料の表面に厚さ数nmのアモルファス炭素膜を被覆し、試料ホルダを介して接地した。試料ホルダとしてTEM−STMホルダを利用した。この試料ホルダは、試料に電圧を印加するための探針電極、及び試料支持部を有する。
【0041】
上記試料について、電場を印可した状態におけるポテンシャル分布及び電場を印加していない状態におけるポテンシャル分布を測定した。図7に、電場を印加した状態におけるポテンシャル分布測定結果を示す。図8に、電場を印加していない状態におけるポテンシャル分布測定結果を示す。図7及び図8における実線は、等電位の点を結んだ等電位線である。
【0042】
電圧の印加は、図2に示すように、電極と試料とを接触させずに、電極と試料との間を10nm離して実施した。電圧を印加することによって、真空中、シリコン基板、及び二酸化ケイ素内部において電位勾配が形成されていることが分かる。
【0043】
この電位勾配を定量的に観察するために、電圧を印加した場合としない場合について、それぞれ、図7及び図8の点線に沿って電極−試料の間の電位分布を測定した。測定結果を図9に示す。電圧を印加した状態の電位分布が上線であり、電圧を印加していない状態の電位分布が下線である。電位分布は、電圧を印可によって明瞭に変化している。例えば、電圧印加状態において、真空中の電位分布のグラフ傾き(θV)、とSiO2中の電位分布の傾き(θI)とを比較すると、θV>θIであり、その傾きの違いは約4倍となっている。これは、SiO2の真空に対する比誘電率が4であることに対応しており、計測された電位勾配は、誘電材料SiO2の物性を精確に反映していることを示している。すなわち、本実施例は、試料に電流を流さないように電圧を印加した状態において、ポテンシャル分布が計測可能であることを示している。
【0044】
また、本実施例によれば、誘電材料SiO2及びTa2O5に対して導電層Ta及び半導体層Si基板を積層することにより、誘電材料に対して均一な電場を形成できることが分かる。図7においては、等電位線は、真空中では電極の周囲に電極を囲むように分布している。一方、試料中では、等電位線は、試料表面に対して平行に分布している。これは、誘電材料内部の電位分布が一定となっていること、すなわち、導電層Ta−半導体層Si基板により一様な電場が形成されたためであると考えられる。
【0045】
[実施例2]
次に、上記実施例で用いた試料の電子線ホログラムを測定した。図10に、電子線ホログラムを示す。図11に、図10の点線に沿った像強度分布を示す。図12に、電子線ホログラムの再生位相像を示す。図13に、試料表面に対して垂直方向の位相分布(図12における点線に沿った位相分布)を示す。なお、電子波干渉縞の間隔は1nmと設定し、位相像再生時の空間分解能は約2nmと設定した。
【0046】
図13に示す各層の位相は、各層を構成する物質の内部ポテンシャルを反映している。例えば、SiO2とSiの内部ポテンシャルは、それぞれ約10eVと11eVと報告されており、各層で観測された位相差は、そのポテンシャルと一致する。
【0047】
また、本試料のような積層構造においては、導体層Taと半導体層Siのフェルミレベルが一致するように界面での電荷の蓄積が起こり、この結果、誘電層SiO2及びTa2O5内部に電場が発生する。本実施例の試料においては、半導体層Si(p型)のフェルミレベルと導体層Taのフェルミレベルは、それぞれ約5.1eVと4.2eVであり、誘電層SiO2及びTa2O5中にはこのポテンシャル差を反映した電場が発生する。図13においては、SiO2中のポテンシャルは、右下がりになっており、この電場(ポテンシャル勾配)を反映したポテンシャル分布を反映していると考えられる。
【0048】
従って、図10〜図13に示す結果は、本発明によって、異種の誘電材料の界面に起因して発生する誘電材料中のポテンシャル分布をナノスケールの空間分解能で計測可能であることを示している。
【0049】
本発明の電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0050】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法は、例えば電子顕微鏡に組み込むことができる。電子線ホログラム形成装置及び電子線ホログラム形成方法は、例えば、半導体記憶装置における誘電膜の評価に適用することができる。
【0052】
(付記1)試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備えることを特徴とする電子線ホログラム形成装置。
【0053】
(付記2)試料は、誘電層と、前記誘電層に隣接する導体層又は半導体層と、を有し、
前記導体層又は前記半導体層は、前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方に含まれていることを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【0054】
(付記3)試料を保持する試料ホルダをさらに備え、試料は、前記試料ホルダを介して接地されることを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【0055】
(付記4)試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成することを特徴とする電子線ホログラム形成方法。
【0056】
(付記5)異なる種類の誘電材料が接する界面を有する試料の内部ポテンシャル分布を測定することを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【0057】
(付記6)帯電欠陥を検出するために試料の内部ポテンシャル分布を測定することを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【0058】
(付記7)試料を導電膜で被覆し、前記導電膜を接地することを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【0059】
(付記8)前記導電膜はアモルファス炭素の膜であることを特徴とする付記及び請求項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【符号の説明】
【0060】
1 電子線ホログラム形成装置
2 電子銃
3 電極
3a 第1電極
3b 第2電極
3c 間隙
3d 絶縁膜
4 試料ホルダ
5 電子線バイプリズム
6 検出器
7 電子レンズ
8a 物体波
8b 参照波
9 電子線ホログラム
10 接地部
11 試料
12 半導体層
13 誘電層(誘電材料)
13a 第1誘電層
13b 第2誘電層
14 導体層
15 導電膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備えることを特徴とする電子線ホログラム形成装置。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方は試料と接触しないことを特徴とする請求項1に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方には絶縁膜が被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第2電極が印加する電圧は、試料に電流が流れないような電圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方は試料の一部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項6】
試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成することを特徴とする電子線ホログラム形成方法。
【請求項7】
前記電圧は、試料に電流が流れないような電圧であることを特徴とする請求項6に記載の電子線ホログラム形成方法。
【請求項8】
少なくとも一方の電極を試料に接触させないことを特徴とする請求項6又は7に記載の電子線ホログラム形成方法。
【請求項9】
少なくとも一方の電極と試料との間に絶縁体を介在させることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【請求項10】
試料が、誘電材料と、前記誘電材料に接する導体層又は半導体層と、を有し、
前記導体層又は前記半導体層を前記電極として使用することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【請求項1】
試料に電圧を印加するための第1電極及び第2電極を備えることを特徴とする電子線ホログラム形成装置。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方は試料と接触しないことを特徴とする請求項1に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方には絶縁膜が被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第2電極が印加する電圧は、試料に電流が流れないような電圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方は試料の一部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成装置。
【請求項6】
試料に電圧を印加した状態で試料に電子線を照射して電子線ホログラムを形成することを特徴とする電子線ホログラム形成方法。
【請求項7】
前記電圧は、試料に電流が流れないような電圧であることを特徴とする請求項6に記載の電子線ホログラム形成方法。
【請求項8】
少なくとも一方の電極を試料に接触させないことを特徴とする請求項6又は7に記載の電子線ホログラム形成方法。
【請求項9】
少なくとも一方の電極と試料との間に絶縁体を介在させることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【請求項10】
試料が、誘電材料と、前記誘電材料に接する導体層又は半導体層と、を有し、
前記導体層又は前記半導体層を前記電極として使用することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の電子線ホログラム形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図11】
【図13】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図11】
【図13】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2011−154793(P2011−154793A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13864(P2010−13864)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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