説明

電子線励起型の画像表示装置及びそれを搭載した電子機器

【課題】Y22S:Eu等の、P22型赤色蛍光体は、投入する電荷密度が大きくなると、発光効率が大幅に低下してしまい、十分に高輝度である画像表示が可能な画像表示装置を得ることができなかった。
【解決の手段】 電子放出素子を配置したリアプレートと、画像を表示するための蛍光面を有するフェイスプレートと、電子放出素子を駆動する駆動回路を有する画像表示装置において、蛍光体として、少なくとも一般式(I):MBO3:Eu(M=Y,Gd、またはその両方を含有する)で表される赤色蛍光体を用い、一回の走査あたり蛍光体に電流を供給する電子放出素子から蛍光体に投入される電荷密度を少なくとも5×10-8[C/cm2]とした駆動条件を駆動回路により選択可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線励起型の画像表示装置及びそれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラウン管と呼ばれる、陰極線管(CRT:Cathode Ray Tube)では、ZnS:Cu,Al、ZnS:Ag,Cl、Y22S:Eu等のP22型と呼ばれる蛍光体が用いられてきた。
【0003】
図5は、従来からあるCRTの概略構造図である。CRTは、1本もしくは3本の電子銃1203から放出される電子ビーム1202により蛍光体が塗布された画面1201全体を走査し画素を形成する蛍光体を発光させる。画面1201上には、カラーCRT用のP22型蛍光体と呼ばれる、R(赤色)用の蛍光体、G(緑色)用の蛍光体及びB(青色)用の蛍光体をそれぞれ配置した画素が、周期的に形成されている。電子銃から照射される電子ビームの1画素あたりに照射される電荷密度は小さいが、電子の加速電圧が高いため、十分な輝度が得られていた。
【0004】
しかしながら、CRTは、画面サイズが大きくなると、寸法が大きく、それに伴い、重くなるという欠点がある。このため、薄型・軽量の画像表示装置として、フラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の需要が高まってきている。
【0005】
FPDとして、カラー液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ及び電界放射型ディスプレイ(FED:Field Emission Display)がある。これらのディスプレイは、画像表示部分(画像表示パネルあるいはディスプレイパネルと称される)が板状で、画面が平面になっていることがフラットパネルディスプレイ(FPD)と呼ばれる理由である。FEDは電界放射型のディスプレイ(画像表示装置)であり、その画像表示部分はFEDパネルと呼ばれる。
【0006】
FEDとしては、Spindt(スピント)型の電子放出素子を用いたタイプや、SCEと呼ばれる表面伝導型電子放出素子を用いたタイプなどが研究されている。ここでSCEとは、Surface−conduction Electron−emitterを省略した表記である。
【0007】
又、SCEを電子放出素子として用いたFEDは、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)と呼ばれている。
【0008】
FEDには、加速電圧を1kV以下とする低電圧型と、加速電圧を1〜10kv程度の高電圧型とがある。高電圧型の様に、比較的高電圧で電子線を加速させ蛍光体を発光させるタイプでは、従来のCRT用のP22型蛍光体を流用、もしくは改良して用いることが多い。
【0009】
例えば、特許文献1には、FED用蛍光体として、従来の硫化亜鉛系蛍光体の付活材濃度を最適化したものが記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、FED用の赤色蛍光体として、(Y23:Eu)、(Y22S:Eu)、(Y3Al512:Eu)、(YBO3:Eu)、(YVO4:Eu)、(Y2SiO5:Eu)、(Y0.960.600.404:Eu0.04)、[(Y,Gd)BO3:Eu]、(GdBO3:Eu)、(ScBO3:Eu)、(3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)、(Zn3(PO42:Mn)、(LuBO3:Eu)、(SnO2:Eu)等の蛍光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−251023号公報
【特許文献2】特開2004−158350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
P22型の赤色蛍光体として、Y22S:Euが知られている。しかしながら、Y22S:Euを用いた電界放射型ディスプレイ(FED)を詳細に検証した結果、投入する電荷密度が大きくなると、赤色蛍光体の発光効率が大幅に低下してしまい、十分高輝度なディスプレイを得ることができなかった。
【0013】
また、赤色蛍光体を、緑色蛍光体及び青色蛍光体と組み合わせてフルカラー画像を形成する際にこれらの蛍光体間で温度上昇にともなう輝度変化率が大きく異なる場合、蛍光面の温度上昇により、ホワイトバランスのズレという問題も同時に引き起こしてしまう。このような場合には、信頼性の高いFEDを得ることができなかった。
【0014】
FEDパネルでは、CRTと比較して電子の加速電圧が低いため、CRTと同等の輝度を得るためには、より多くの電流(正確には、1回の走査で投入するサブピクセル当たりの投入電荷密度)で蛍光体を励起、発光させる必要がある。
【0015】
その結果、CRTと比較してFEDパネルにおける蛍光面の温度上昇が大きく、特に、単純マトリックス駆動を採用した場合、同時に投入される電荷量はCRTと比較して非常に高くなる。この場合には、温度上昇による輝度低下(温度消光)の問題が無視できなくなる。また、輝度低下補償のため、より多くの電荷密度を照射すると蛍光体への負荷が大きくなり蛍光体の劣化が生じ蛍光体の寿命が短くなるという問題も発生していた。
【0016】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされてものであり、電子線励起型の画像表示装置における駆動条件に最適な蛍光体を用いることで、高輝度で信頼性の高い電子線励起型の画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明にかかる電子線励起型の画像表示装置は、
複数の電子放出素子を備えるリアプレートと、前記電子放出素子から放出された電子が照射されることで発光する蛍光体が配置された複数の画素を有するフェイスプレートと、を有する電子線励起型の画像表示装置であって、
前記蛍光体が一般式(I):MBO3:Eu(Mは、Y及びGdの少なくとも一方を含むことを示す)で表される蛍光体であり、
画像信号を受けて前記画素への投入電荷密度の上限が、一回の走査あたり5×10-8[C/cm2]以上となるように前記電子放出素子を駆動する駆動回路を有する
ことを特徴とする電子線励起型の画像表示装置である。
【0018】
本発明にかかる画像表示装置は各種の電子機器の画像表示部として搭載することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定の赤色蛍光体を用いることによって、一回の走査あたり5×10-8C/cm2以上の高電荷密度の条件での電子線照射を選択して高輝度を達成し、且つ、白色表示におけるホワイトバランスの変動のない高性能な電子線励起型の画像表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の画像表示装置の構成の一例を示す図である。
【図2】蛍光面の構造の一例を示す平面部分図であり、(a)はストライプ状の画素配列を、(b)はデルタ状の画素配列を示す。
【図3】(a)は電子放出素子の構造の一例を示す図であり、(b)はFEDパネルの一例の断面模式図であり、(c)は信号線及び走査線との電子放出素子の接続例を示す図である。
【図4】FEDパネルの一例の断面模式図である。
【図5】従来のCRTの断面模式図である。
【図6】本発明の画像表示装置を適用した電子機器の一例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。本発明の電子線励起型の画像表示装置の構成を適用した電界放射型の画像表示装置(FED)の一例を図1に示す。このFEDは、少なくともFEDパネル22と駆動回路25を有して構成されている。
【0022】
FEDパネル22は、蛍光面2が形成されたフェイスプレート21と、電子放出素子(不図示)が形成されたリアプレート20とが側壁24を介して接合された構造を有する。これらの部材の接合部は封止されており、これらの部材により形成された内部空間は10-5Pa程度以下に減圧されている。フェイスプレート21とリアプレート20の距離を一定に保つために、画面サイズに応じてスペーサーと呼ばれる部材を挿入することもできる。
【0023】
リアプレート20は、ガラス等からなるリア側基板1と、リア側基板1の絶縁性の面上に配置された電子放出素子(不図示)と、電子放出素子に電気信号を入力するための配線を構成する複数の信号線9及び複数の走査線11と、を有する。走査線11と信号線9は互いに交差した部分23を有し、各交差部23において、信号線9と走査線11との間に絶縁膜(不図示)が挟まれている。この構造によって、複数の信号線9及び複数の走査線11の各々は互いに電気的に絶縁されており、信号線及び走査線のそれぞれに選択的に電気信号が印加可能となっている。各交差部23には、電子放出素子(不図示)が形成されている。
【0024】
端子D0x1〜D0xmは、外部から信号線9に電圧を印加するための端子で、D0y1〜D0ynは、外部から走査線11に電圧を印加するための端子である。信号線9及び走査線11の様に互いに直交する配線の組は、マトリックス配線と呼ばれる。なお、端子D0x1〜D0xmに接続する配線を走査線とし、D0y1〜D0ynに接続する配線を信号線とするなど配線については種々の態様を選択できる。
【0025】
フェイスプレート21は、ガラス等からなるフェイス側基板14と、フェイス側基板14の画像表示部に設けられた蛍光面2と、蛍光面2を覆うメタルバック19とを有する。高圧端子Hvは、メタルバック19に接続されており、この構成によりメタルバック19は、アノードとしての機能も有している。
【0026】
リアプレート20に設けられた信号線9及び走査線11は駆動回路25に接続されている。駆動回路25には、画像信号が入力される。駆動回路25に入力された画像信号を受けて駆動回路25から信号線9と走査線11に画像信号に対応した電気信号(電圧)が印加される。アノードとしてのメタルバック19への電圧印加によってリアプレート20とフェイスプレート21の間に加速電圧を印加しておき、上述した画像信号に対応した電気信号を交差部23に形成された電子放出素子に印加して、そこから電子線が放出される。電子放出素子から放出された電子線は、メタルバック19介して蛍光面2に配置された蛍光体に照射され、蛍光体が励起、発光する。得られた蛍光はフェイス側基板14の光透過性の面を介して外部に放射される。この結果、FEDパネル22上に画像が形成される。
【0027】
図2(a)及び(b)に、リアプレート20側からみた蛍光面2の一部の拡大平面図を示す。図2(a)及び(b)を用いて蛍光面の構成の一例について説明する。カラー表示を行う場合、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の三色を用いて画素を形成することが一般に行われている。そこでこのように、R、G及びBの3色を用いた例で説明する。
【0028】
尚、1色のみを用いて表示を行う場合は、各画素から同一色の蛍光が得られるように蛍光体を選択すればよい。
【0029】
図2(a)及び(b)に示す蛍光面2は、蛍光体を配置した画素3〜5と、これらの画素を区分する黒色部6を有している。図2(a)及び(b)に示すとおり蛍光体の画素3〜5は、黒色部6で囲われていることが好ましい。その理由は、電子ビームの照射位置に多少のずれがあっても、隣接画素への周り込みが生じないようにするためや、外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐためである。黒色部6を形成する材料としては、典型的には黒鉛を主成分として用いることができるが、これ以外の材料を用いてもよい。
【0030】
図2(a)では、黒色部6中に形成されたストライブ状の開口に、赤色蛍光体からなる画素3、青色蛍光体からなる画素4及び緑色蛍光体からなる画素5の3つの画素が配列されている。すなわち、蛍光体が配置された最小単位領域を本発明でいう「画素」とする。なお、最小単位である、赤色、青色及び緑色の3色の組をピクセルと称し、赤色・青色・緑色の各セルをサブピクセルと称する場合もある。本発明における「画素」は、図2(a)で示す例においては、サブピクセルに対応する。
【0031】
1画素の面積は、画素数とディスプレイのサイズにより決定される。マトリクス状に配置した画素を区分する黒色部6はブラックマトリックスと呼ばれる。各画素3〜5は、蛍光体とバインダーを含むインキと、黒色材料とバインダーを含むインキとを用いたスクリーン印刷法などの公知の方法により形成可能である。
【0032】
また、各画素3〜5の配列は、図2(a)に示すストライプ状の配列に限られるものではなく、例えば図2(b)のようにデルタ状配列や、それ以外の配列であってもよい。
【0033】
信号線9と走査線11との交差部23に配置される電子放出素子としては、表面伝導型電子放出素子(SCE)、Spindt型電界放出素子、MIM型電子放出素子あるいはカーボンナノチューブ(CNT)を放出部とする素子等を用いることができる。特に、一画素あたり、少なくとも5×10-8C/cm2の電荷密度を照射できる電子放出素子として容易に作製できる表面伝導型電子放出素子は、本発明の画像表示装置の電子放出素子として好適に用いることができる。
【0034】
図3(a)はSCEの平面図で、図3(b)はSCEを用いたFEDパネルの断面図である。図3(a)及び(b)に示されるように、リアプレート20のリア側基板1上に設けられたSEC1101は、素子電極1102、1103、導電性薄膜1104、電子放出部1105、薄膜1113(図3(b)では不図示)を有して構成されている。素子電極1102、1103はリア側基板1上に所定の間隔で離間して形成されている。これらの端部とこれらの間の部分を覆う位置には、導電性薄膜1104が設けられており、その中間部分付近には電子放出部1105が設けられておいる。更に、薄膜1113(図3(b)では不図示)は電子放出部1105を含む領域に形成されている。なお、薄膜1113は、通電活性化処理により形成されたものである。
【0035】
フェイスプレート21のフェイス側基板14上には、黒鉛等の黒色部材を含む黒色部2の間に赤色画素3、青色画素4及び緑色画素5が配置され蛍光面2を形成している。これらの画素3〜5の配列としては図2(a)及び(b)に示した配列等が用いられる。蛍光面2上にはこれを覆うメタルバック19が更に形成されている。
【0036】
図示した例では、メタルバック19に電位を供給しアノードとしても使用している。一方、メタルバック19にゲッタ機能を持たせる場合、2層構造として蛍光体側の層をアノードとし、高電圧を印加し、電子放出素子と対向する側の層を、ゲッタ機能を持った層とすることができる。また、フェイスプレートの構成は図示した例に限定されず、種々の形態をとることができる。
【0037】
フェイスプレート21とリアプレート20は、フェイスプレート21側の各画素とリアプレート20側の各電子放出素子とが1対1で対応する位置に対向させた状態で接合されている。
【0038】
素子電極1102と1103は、リア側基板1上にその表面と平行に対向して設けられている。例えば、素子電極1102は信号線9に接続され、素子電極1103は走査線11と接続される。そしてそれぞれの配線から素子電極1102と1103に電位が供給され、電子放出部1105から電子が放出される。
【0039】
電子放出素子1101と配線との接続の一例を図3(c)に示す。図3(c)に示すように、素子電極1102を走査線11(11a〜11c)と、素子電極1103を信号線9(9a〜9c)と接続することで、各SEC1101を選択的に駆動することができる。すなわち、信号線9及び走査線11の両方の配線から素子電極1102及び1103に電位が供給され、電子放出部1105から電子が放出される。
【0040】
図4は、電子放出素子としてスピント型の素子を用いたFEDパネルの断面模式図である。フェイスプレート21の構成は図3(b)で説明したものと同様である。
【0041】
リアプレート20に設けられたスピント型の電子放出素子は、円錐形の突起部からなる電子放出部材12と、これを囲むように形成された絶縁膜10と、絶縁膜上に設けられたゲート電極13を有する。各電子放出素子は、フェイスプレート21側の各画素に対応する位置にそれぞれ設けられている。電子放出部材12は電極15上に形成されており、電極15を信号線9と、ゲート電極13を走査線11と接続することにより電子放出素子と駆動回路とが接続される。
【0042】
次に画素を形成するための蛍光体について説明する。
【0043】
本発明においては、少なくとも赤色蛍光体としての一般式(I):MBO3:Eu(Mは、Y及びGdの少なくとも一方を含むことを示す)で表される蛍光体が用いられる。
【0044】
また、緑色蛍光体としてはZnS:Cu,Alやアルカリ土類金属を含有するチオガレート結晶に発光中心としてEuを添加した蛍光体が、青色蛍光体としてはZnS:Ag,ClやZnS:Ag,Al等が適している。
【0045】
ZnS:Cu,Alやアルカリ土類金属を含有するチオガレート結晶に発光中心としてEuを添加した緑色蛍光体及ZnS:Ag,ClやZnS:Ag,Al等の青色蛍光体は、温度上昇による発光効率の変化が殆ど生じない発光特性が得られる蛍光体である。
【0046】
一般式MBO3:Euで表される赤色蛍光体によれば、上述の青色蛍光体及び緑色蛍光体と同様に、温度上昇による発光効率の変化が殆ど生じない発光特性が得られることが分かった。このため、高い電荷密度で蛍光面を励起する電子線励起ディスプレイにおいても、優れた発光特性が得られることがわかった。
【0047】
ただし、あまりに高い電荷密度を投入すると、蛍光面の溶融等の現象が発生し、劣化が促進されてしまう場合がある。そこで、電荷密度の上限を3×10-6C/cm2とすることが好ましい。
【0048】
この現象を詳細に検証した結果、特定の母体材料と発光中心材料を組み合わせた上記の赤色発光体を用いることで、従来から電子線用の蛍光体材料として広く用いられていたP22型蛍光体Y2O2S:Euよりも高い発光効率が得られることを見出した。この赤色蛍光体における高い発光効率は、5×10-8C/cm2以上の電荷密度が蛍光体に投入されるモードが選択できる画像表示装置においても有効である。すなわち、画像信号を受けて画素への投入電荷密度を、一回の走査あたり少なくとも5×10-8[C/cm2]とする電子放出素子の駆動条件が予め設定されており、かかる駆動条件が選択可能な駆動回路を用いることが好ましい。かかる赤色蛍光体と高電荷密度での電子照射を組み合わせることで、高輝度及び高精細な画像表示が可能となる。
【0049】
一般式(I)で表される蛍光体としては、YBO3:EuやGdBO3:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu等が好ましい。
【0050】
ここでいう緑、青、赤は、CIE(x,y)色度座標で表すと、典型的には下記のように表すことができる。
【0051】
緑(x,y)=(0.15≦x≦0.35,0.5≦y≦0.85)
青(x,y)=(0.05≦x≦0.25,0≦y≦0.2)
赤(x,y)=(0.5≦x≦0.73,0.2≦y≦0.4)
(ただし、上記で示される範囲の中で、可視領域の範囲を示す。)
発光効率や温度変化による輝度特性の変化を考慮すると、組み合わせる緑色蛍光体及び青色蛍光体としては、ZnS:Cu,Al(緑)、ZnS:Ag,Cl(青)、ZnS:Ag,Al(青)、アルカリ土類金属を含むチオガレート結晶にEuを発光中心材料とするSrGa24:Eu(緑)、及び(Sr1-X,BaX)Ga24:Eu(緑)等がある。なお、後述するように、xの範囲は0<x≦0.3であることが好ましい。尚、チオガレートとは、GaとSを含む化合物をいう。
【0052】
その中でも特に、SrGa24:Eu(緑)や、Sr原子を一部Baで置換した(Sr1-X,BaX)Ga24:Eu(緑)は、発光効率が高く、また電子線に対する耐久性も高く、ZnS:Cu,Al(緑)と比較して優れた色再現域を実現できる。
【0053】
ここに示した(Sr1-X,BaX)Ga24:Euは、SrとBaの比を変えることで、緑色から青緑色まで変化する蛍光体である。SrGa24:EuよりさらにNTSCの緑色に近い発光を得るために、必要に応じて適宜SrとBaの組成比を設計することができる。
【0054】
緑色蛍光体として(Sr1-X,BaX)Ga24:Euを用いる場合は、0<x≦0.3の範囲から選択され、より好ましくは、0<x≦0.25の範囲から選択される。
【0055】
これらの蛍光体に関しては、発光中心材料を過剰濃度で添加してしまうと、輝度が低下してしまう濃度消光という現象が生じる。実際には、ある発光中心濃度をピークにして発光輝度は変化し、十分な輝度が得られる範囲の中で最適な発光中心濃度を選択することができる。
【0056】
発光中心濃度に関して、SrGa24:Euや(Sr1-X,BaX)Ga24:Euの場合、Euの原子数とSr(もしくは、SrとBa原子数の和)の原子数とが、0.001≦Eu/Sr(もしくは、Eu/(Sr+Ba))≦0.1の範囲が好ましい。
【0057】
発光中心濃度は、0.001≦Eu/Sr≦0.1の範囲であれば、組み合わせる他の蛍光体の発光効率に合わせて最適な値を選択することができる。
【0058】
青色蛍光体に求められる発光特性は、ディスプレイの基準となる白色の色温度と各色の蛍光体の発光効率と色座標のバランスで決定される指標で評価する必要があり、色と発光効率及び温度により輝度変化等の性能が重視される。
【0059】
この指標を基に考えると、青色蛍光体としては、ZnS:Ag,ClやZnS:Ag,Al、アルカリ土類金属等を含む珪酸塩結晶にEuを発光中心材料とする蛍光体が好ましい。
【0060】
各画素3〜5は、均一の粒径に粉砕した蛍光体の粒子を、必要に応じてバインダー等を用いて、膜(層)状として所定位置に配置して形成することができる。蛍光体は高抵抗の物が多く、電子の加速電圧やフェイスプレートの構成により適宜最適な蛍光体の粒径を選択することが好ましい。即ち、照射される電子の進入長により最適な粒径が異なるが、典型的には平均粒径を0.5μm以上15μm以下の範囲から選択することができる。また、帯電の観点から、平均粒径を1μm以上5μm以下とすることが好ましい。また、各画素に含有させる蛍光体の量は目的とする発光色や輝度が得られるように調整される。
【0061】
図示した例におけるメタルバック19は、高電圧が印加されたアノードとしての役割と、蛍光体の帯電を防止する機能を持っている。メタルバック19を構成する材料としては、Al等の導電性の金属材料であれば良いが、Al等の導電性の金属材料上に更に、酸素等を吸着するゲッタ材料を積層してもよい。メタルバック19にゲッタ材料を使用した場合、フェイスプレート14とリアプレート20の間の封止された空間内に外気が微小に流入してもゲッタ材料により流入したガスを吸着できる。これにより、気密状態を長時間維持することができる。ゲッタ材料は、Ti、Zr、Baまたはこれらのうち少なくも一種を主成分とする合金からなるものなどが利用できる。さらに、これらの合金は、Al、V,Feのいずれか一種以上の元素を副成分として含有するものであってもよい。メタルバック19の厚さ及びゲッタ材料からなる層の厚さは、電子の加速電圧により最適な値を選択することができる。また、メタルバック19は、ゲッタ材料を含みかつ導電性である層から形成することもできる。
【0062】
図1に示した形態の画像表示装置では、画像信号を受けた駆動回路25により複数の電子放出素子を選択的に駆動して、駆動された電子放出素子に対応する画素から蛍光を発光させて画像が表示される。先に説明したとおり、フェイスプレート21には、フルカラーディスプレイであれば、例えば、赤、緑、青色の3色の画素を配置した蛍光面が形成され、照射する電荷量を入力信号に応じて制御し画像を形成する。通常は、フェイスプレート21の蛍光面2上にメタルバック19を形成し、蛍光体の帯電を抑制する等の処置を行うが、加速エネルギーが低い(加速電圧が低い)場合は、メタルバック19でエネルギーが損失し、十分な輝度が得られない。
【0063】
また、FEDパネルでは、数mmの狭い空間に電圧を印加するため、あまり高電圧を印加すると放電等の問題が生じる場合がある。
【0064】
以上のことから、表示画像に十分な輝度、精細度を得るために、アノードに7kVから15kVの間の電圧を印加し、電子の加速電圧を7kV以上15kV以下に設定することが好ましい。電子の加速電圧が7kV以上であれば十分な輝度が得られ、15kV以下であれば放電等の問題が生じることはない。
【0065】
駆動回路25は、1走査あたり、電子放出素子から少なくとも5×10-8C/cm2の電荷密度の電子を各画素中の蛍光体に照射できる駆動条件を選択可能である構成を有する。すなわち、画素に照射する電荷密度として5×10-8C/cm2以上の電荷密度を設定し、十分な輝度を確保することが必要である画像部分とその表示時間にわたって、この設定された電荷密度での一走査あたりの画素への照射を駆動回路25により実行する。
【0066】
なお、1走査とは、1画面を形成するために必要な走査線の全てを走査する処理をいう。例えば、図1に示すマトリクス配線を用いたマトリクス駆動の場合では、マトリクス配線を構成する複数の走査線11の全てを1画面の形成に用いる場合は、これらの全ての走査線11に走査信号が入力される処理を1走査とする。なお、走査線11に接続された各電子放出素子の選択的駆動は信号線9を選択することにより行われる。
【0067】
画像の表示方法の一例としては、プログレッシブ方式とインターレス方式を挙げることができる。プログレッシブ方式では、1画像(例えば1フレーム)を、走査線を順次走査して表示する。これに対し、インターレス方式では、走査線を偶数段と奇数段とに振り分けこれらを順次走査する飛び越し走査を行う。結果として、1フレームを2つのフィールドに分割して、それぞれのフィールドを走査していることになる。インターレス方式における本願発明でいう1走査は、1フィールドを走査する処理に相当する。
【0068】
プログレッシブ方式での一例を図3(c)で説明すると、走査線11a〜11cにより1画面(フレーム)をする際に、これらの走査線11a〜11cに走査信号を順次ずらして入力し、全ての走査線への走査信号への入力を完了させる処理が1走査である。
【0069】
駆動方法としては、例えば、リフレッシュ周波数を60Hzとし、照射時間デユーティーを1/240以下とする単純マトリックス駆動が採用できる。
【0070】
なお、駆動回路25は電荷密度を少なくとも5×10-8C/cm2に常に設定しておくものではなく、画像情報に応じて、それよりも低い電荷密度を選択できる構成とする。
【0071】
上述の図3及び図4等の構造を有する電子放出素子であれば、一走査あたり5×10-8C/cm2以上の電荷密度を照射できる電子放出素子として適用できる。
【0072】
3色のサブピクセルから一つのピクセルを構成して画像を表示する場合についての駆動条件の一例を以下に示す。
【0073】
有効走査線数Pを1080本とした場合、フレーム周波数Fを60[Hz]とすると、一回の走査あたりに1走査線に信号を印加することができる時間Tの最大値は、1/(F・P)で、約15[μsec]である。
【0074】
各サブピクセルあたりに照射する電流密度Jeを3.3[mA/cm2]とすると、このときの単位面積あたりに投入される電荷密度Q[C/cm2]は、Je×Tで表され、上記の例では約5×10-8[C/cm2]となる。
【0075】
上記の関係から分かるように、印加時間Tの最大値は走査線数Pと周波数Fで制限されるため、例えば走査線数が768本であればTのとりえる時間は長くなる。
【0076】
実際は、配線抵抗による遅延や駆動装置の遅延等を考慮し最大時間Tが決定され、走査線数Pが1080本の場合、15[μs]よりも短くなる場合が多い。ディスプレイを形成した場合の階調方法は、先述の印加時間Tを変化させる方法や、電流密度Jを変化させる方法や、また、TやJの両方を組み合わせて変化させる場合等がある。
【0077】
本発明においては、画素を構成する蛍光体として少なくとも一般式(I)で示される赤色蛍光体を用い、かつ、駆動回路により、画素に照射する電子線の電荷密度を、一走査あたり少なくとも5×10-8[C/cm2]とする駆動条件を選択可能としておく。この駆動条件を選択することにより、高輝度表示が要求される画像部分において高輝度であり、かつ温度変化によらず優れた色バランスを得ることができる。
【0078】
本発明にかかる画像表示装置は、画像信号を画像として表示する部分を有する電子機器一般に使用できる。このような電子機器としては、例えば、テレビ受像器、一体型のパーソナルコンピュータ等がある。
【0079】
図6は、本発明の画像表示装置が搭載された、無線放送、有線放送及びインターネット等を介して配信される画像情報を画像表示装置上に画像化する電子機器の概略構成図である。図6において、61は画像情報受信回路、62は画像信号生成回路、25は駆動回路、22は画像表示パネルを示す。駆動回路25と画像表示パネル22により本発明にかかる画像表示装置が構成されている。
【0080】
無線放送、有線放送、インターネット等の回線を介して供給される画像情報は、変調が掛けられ、更に、圧縮や暗号処理等の符号化(エンコード)処理されている場合がある。画像情報受信回路61は、回線から供給される複数の画像情報から、所望の(希望する)画像情報を選択する。画像情報受信回路61で選択された画像情報が、画像信号生成回路62により復調及び復号化(デコード)処理が施され、画像信号が得られる。
【0081】
駆動回路25は、供給された画像信号に基づいて、画像表示パネル22に表示用の信号を供給する。駆動回路25から供給された信号に基づいて、画像表示パネル22上に画像が表示される。
【0082】
画像情報が、符号化されていない場合、復号化は行わない。
【0083】
画像情報が記録されている記録媒体の情報から、画像表示装置に画像を表示させる場合、記録媒体から画像情報を読み出す読み出し回路(不図示)により、記録媒体に記録された画像情報を読み出す。読み出された画像情報が、符号化処理が行われている場合は、画像信号生成回路62により復号化処理が施され、画像信号が得られる。得られた画像信号が駆動回路25に供給される。駆動回路25は、供給された画像信号に基づいて、画像表示パネル22に表示用の信号を供給する。駆動回路25から供給された信号に基づいて、画像表示パネル22上に画像が表示される。
【0084】
読み出された画像情報が、符号化が行われていない場合は、読み出された画像情報は、画像信号と同じである。読み出された画像信号を、駆動回路25に供給する。駆動回路25は、供給された画像信号から画像表示パネル22に表示用の信号を供給する。駆動回路25から供給された信号に基づいて、画像表示パネル22上に画像が表示される。
【実施例】
【0085】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0086】
(実施例1)
(Y,Gd)BO3:Eu蛍光体(平均粒径を3μm)を用いたフェイスプレートを作製した。フェイスプレートは図1、図2(a)及び図3(b)に示す構造(但し、蛍光体は1種のみを使用)を有する。
【0087】
フェイスプレートの作製は次のとおりである。まず、ガラス基板上に蛍光体が塗布される領域を残してブラックマトリックスをストライプ状に塗る。続いて、有機バインダーでペースト状にした蛍光体粒子をスクリーン印刷により塗布し、ブラックマトリクスの開口部分に蛍光体ペースト層を配置し、乾燥処理を行った。次に、フィルミングプロセスを行った。フィルミング工程は、アクリル系樹脂を塗布し蛍光面を平滑した後、メタルバックとしてAlを100nmの厚さで成膜した。メタルバックを形成後、アクリル樹脂を除去するために、大気中で450℃の焼成処理を行った。
【0088】
次に、電子放出素子が形成されたリアプレートを作製した。電子放出素子の構造は図3(a)及び(b)に示すとおりである。また、それ以外のリアプレートの構造は図1に示すとおりである。
【0089】
リアプレートは、ガラス基板上に、マトリックス配線をスクリーン印刷にて形成した後、配線の交差部分に、表面伝導型の電子放出素子を形成することにより作製した。各電子放出素子における一対の素子電極の各々を信号線及び走査線と接続した。有効信号線数を1920本、有効走査線数を1080本とした。
【0090】
このようにして作製したフェイスプレートとリアプレートを、各画素と各電子放出素子が対応する位置に配置されるように、対向して配置し、内部を密封して所定の真空度とした。リアプレートの電子放出素子には駆動回路を接続し画像表示装置とした。フェイスプレートに設けたメタルバックをアノードとして利用して、これらのプレート間に10kVの直流電圧を印加した。この状態で、リアプレートのマトリックス配線に電子を放出するようにパルス電圧を駆動回路により印加して輝度の測定を行った。
【0091】
駆動方法は、リフレッシュ周波数を60Hzとし、単純マトリックス駆動を採用した。
【0092】
比較のために、同様の製造工程で、蛍光体をY22S:Euとしたフェイスプレートを作製し同様の条件で輝度を測定した。
【0093】
各々の輝度は、点灯後10分後の観測値を比較した。
【0094】
表1には、Y22S:Euを用いて、一回の走査あたり各ピクセルを5×10-8C/cm2の電荷密度で照射した場合の輝度を100とした場合の相対輝度を表に示した。
【0095】
【表1】

【0096】
(Y,Gd)BO3:Euを用いたディスプレイでは、高電荷密度で照射した場合において従来のY22S:Euに対して高輝度化が実現できた。
【0097】
(実施例2)
蛍光体をYBO3:Euとし、有効信号線数を1366本、有効走査線数を768本とした以外は、実施例1と同様にして画像表示装置を作製した。
【0098】
実施例1と同様に、フェイスプレートとリアプレートの間に12kVの直流電圧を印加した。この状態で、リアプレートのマトリックス配線に電子を放出するようにパルス電圧を駆動回路により印加して輝度の測定を行った。
【0099】
駆動方法は、リフレッシュ周波数を60Hzとし、単純マトリックス駆動を採用した。
【0100】
比較のために、同様の製造工程で、蛍光体をY22S:Euを用いたフェイスプレートを作製し同様の条件で輝度を測定した。
【0101】
表2には、Y22S:Euにおける一回の走査あたり5×10-8C/cm2の電荷密度で照射した場合の輝度を100とした場合の相対輝度を表に示した。
【0102】
【表2】

【0103】
YBO3:Euを用いたディスプレイでは、高電荷密度で照射した場合において従来のY22S:Euに対して高輝度化が実現できた。
【0104】
(実施例3)
実施例1と同様の構成を持つフェイスプレートを作製した。
【0105】
リアプレートは、ガラス基板上にマトリックス配線を形成し、配線の交差部分に図4に示すSpindt型の電子放出素子を形成することにより作製した。電子放出素子の電子放出部材とゲート電極をそれぞれ信号線及び走査線に接続した。
【0106】
これらのフェイスプレートとリアプレートを用いて実施例1と同様にして画像表示装置を作製した。フェイスプレートのメタルバックをアノードとして利用して、フェイスプレートとリアプレートの間に7kVの直流電圧を印加した状態でマトリックス配線にパルス信号を駆動回路により入力し蛍光体を発光させた。
【0107】
比較のために、同様の製造工程で、蛍光体として(Y,Gd)BO3:Euを用いたフェイスプレートを作製し同様の条件で輝度を測定した。
【0108】
表3には、Y22S:Euを用いて、一回の走査あたり5×10-8C/cm2の電荷密度で照射した場合の輝度を100とした場合の相対輝度を表に示した。
【0109】
【表3】

【0110】
(Y,Gd)BO3:Euを用いることで、高電荷密度照射時において従来のY22S:Euに対して高輝度化が実現できた。
【0111】
(実施例4)
赤色蛍光体としてGdBO3:Eu蛍光体を用いた以外は実施例1と同様にして画像表示装置を作製した。実施例1と同様の条件で発光特性を評価した結果、1回の走査あたり5×10-7C/cm2までの電荷密度で照射したところ、(Y,Gd)BO3:Eu及びYBO3:Euと同程度の優れた輝度特性が得られた。
【0112】
(実施例5)
緑色蛍光体としてZnS:Cu,Al、青色蛍光体としてZnS:Ag,Cl、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO3:Euを用いる。更に、各色の蛍光体を図2(a)及び図3(b)に示す配置として画素を形成した。これらの条件以外は、実施例1と同様にしてフルカラー表示用の画像表示装置を作製した。フェイスプレートのメタルバックをアノードとして利用して、フェイスプレートとリアプレートの間に10kVの直流電圧を印加した状態で、リアプレートのマトリックス配線にパルス電圧を駆動回路により印加して電子放出素子を駆動した。表示された画像は以下の方法により評価した。
【0113】
画像評価:
1回の走査あたり赤色蛍光体に1回の走査で投入される電荷密度が、1×10-8C/cm2、5×10-8C/cm2及び5×10-7C/cm2とした時に9300ケルビンの基準白色になる様に青色蛍光体及び緑色蛍光体に照射される電荷密度を制御した。こうして得られた白色表示部の輝度を測定した。一方、赤色蛍光体として、Y22S:Euを用いる以外は上記と同様にして画像表示装置を作製し、同じ電荷密度条件でY22S:Euを照射し、9300ケルビンの白色になる様に青色蛍光体及び緑色蛍光体に照射される電荷密度を制御した。こうして得られた白色表示部の輝度を測定した。Y22S:Euに5×10-8C/cm2の電荷密度を照射した場合の白色輝度を100として、各輝度を相対比較した。また、各々の輝度は、点灯後10分後の観測値を比較した。得られた結果を表4に示す。
【0114】
【表4】

【0115】
赤色蛍光体に(Y,Gd)BO3:Euを用いた場合、一回の走査あたり5×10-7C/cm2の駆動条件において950の輝度が得られ、同じ照射電荷密度において、従来型よりも高輝度化できた。
【0116】
次に、ホワイトバランスのズレについての評価を以下の方法により行った。
【0117】
赤色蛍光体に投入する電荷密度が1×10-8C/cm2の時に9300ケルビンの白色になる様に、青色及び緑色蛍光体に投入する電荷密度を決定して白色表示を行った。その後、各色の蛍光体に対し、5倍、50倍の電荷密度で照射したときのホワイトバランスのズレの程度を、CIE(x,y)座標の変動量(Δx,Δy)で評価した。
【0118】
その結果、従来のY22S:Euを組み合わせた場合の変動量の絶対値は、投入電荷密度を一回の走査あたり5×10-8C/cm2以上としたとき、(Δx,Δy)≒(0.007,0.002)であった。一方、本発明にかかる(Y,Gd)BO3:Euを用いた蛍光体の組合せの場合、投入電荷密度の値によらず、ホワイト表示の色座標及び色温度の変動が殆どない優れた色バランスを実現できた。
【0119】
(実施例6)
緑色蛍光体としてSrGa24:Eu、青色蛍光体としてZnS:Ag,Al、赤色蛍光体としてYBO3:Euを用いた以外は実施例5と同様にしてフルカラー表示用の画像形成装置を作製した。
【0120】
フェイスプレートとリアプレートの間に11kVの直流電圧を印加する以外は実施例5と同様にして、画像を表示して評価した。得られた結果を表5に示す。
【0121】
【表5】

【0122】
赤色蛍光体としてYBO3:Euを用いた、本実施例では一回の走査あたり5×10-7C/cm2の駆動条件において相対値として1050の輝度が得られた。
【0123】
また、ホワイトバランスのズレの程度を実施例5と同様にして評価した。その結果、従来のY22S:Euを組み合わせた場合の変動量について(Δx,Δy)≒(0.007,0.002)の結果を得た。一方、本発明の蛍光体を組み合わせた場合、投入電荷密度の値によらず、ホワイト表示の色座標及び色温度の変動が殆どない優れた色バランスを実現できた。
【0124】
さらに、緑色蛍光体をSrGa24:Euとすることで、広い色再現域を実現できた。
【0125】
(実施例7)
緑色蛍光体として(Sr,Ba)Ga24:Eu、青色蛍光体としてZnS:Ag,Al、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO3:Euを以外は実施例5と同様にしてフルカラー表示用の画像形成装置を作製した。
【0126】
フェイスプレートとリアプレートの間に10kVの直流電圧を印加する以外は実施例5と同様にして、画像を表示して評価した。また、ホワイトバランスのズレについての評価も同様に行った。本実施例の画像表示装置では、実施例5及び6と同等の高輝度でホワイト表示の色座標及び色温度の変動が殆どない優れた発光特性が得られた。
【符号の説明】
【0127】
1 リア側基板
2 蛍光面
3、4、5 画素
6 黒色部
9、9a〜9c 配線(信号線)
10 絶縁層
11、11a〜11c 配線(走査線)
12 電子放出部材
13 ゲート電極
14 フェイス側基板
15 電極
19 メタルバック
20 リアプレート
21 フェイスプレート
22 画像表示パネル
23 交差部分(電子放出素子配置領域)
24 側壁
25 駆動回路
61 画像情報通信回路
62 画像信号生成回路
1101 電子放出素子
1102、1103 素子電極
1104 導電性薄膜
1105 電子放出部1105
1113 薄膜
1201 蛍光面
1202 電子線
1203 電子銃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子放出素子を備えるリアプレートと、前記電子放出素子から放出された電子が照射されることで発光する蛍光体が配置された複数の画素を有するフェイスプレートと、を有する電子線励起型の画像表示装置であって、
前記蛍光体が一般式(I):MBO3:Eu(Mは、Y及びGdの少なくとも一方を含むことを示す)で表される蛍光体であり、
画像信号を受けて前記画素への投入電荷密度の上限が、すくなくとも一回の走査あたり5×10-8[C/cm2]以上となるように前記電子放出素子を駆動する駆動回路を有する
ことを特徴とする電子線励起型の画像表示装置。
【請求項2】
前記フェイスプレートは、アノードを有し、前記アノードに7kV以上15kV以下の電圧が印加されていることを特徴とする請求項1に記載の電子線励起型の画像表示装置。
【請求項3】
前記蛍光体が、(Y,Gd)BO3:EuまたはYBO3:Euであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子線励起型の画像表示装置。
【請求項4】
更に、前記蛍光体として、青色蛍光体と緑色蛍光体とを有し、
前記青色蛍光体が、ZnS:Ag,AlまたはZnS:Ag,Clであり、
前記緑色蛍光体が、ZnS:Cu,Alまたはアルカリ土類金属を含むチオガレート結晶にEuを発光中心材料とする蛍光体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子線励起型の画像表示装置。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属を含むチオガレート結晶にEuを発光中心材料とする蛍光体が、SrGa24:Euまたは、(Sr,Ba)Ga24:Euであることを特徴とする請求項4に記載の電子線励起型の画像表示装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電子線励起型の画像表示装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子線励起型の画像表示装置と、
複数の画像情報から、希望する画像情報を選択する画像情報受信回路と、
前記選択された画像情報から、前記画像表示装置に供給する画像信号を生成する画像信号生成回路と、を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−77010(P2011−77010A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230402(P2009−230402)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】