説明

電子線硬化型組成物及び樹脂フィルム又はシート

【課題】得られる硬化物の吸水率が低く、耐熱性試験及び耐光性試験後の黄変度と吸水率とのバランスに優れ、高温高湿環境下で長期にわたって使用することができる電子線硬化型組成物、及び当該組成物から得られた樹脂シートの提供。
【解決手段】ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)及び脂環式骨格及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)を含み、硬化物の吸水率が1.0%以下である電子線硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム又はシートの製造に使用される電子線硬化型組成物、及び当該組成物を基材に塗布して得られる樹脂フィルム又はシートに関し、これら技術分野に属する。
尚、下記においては、便宜上、特に断りがない場合は、「樹脂フィルム又はシート」を「樹脂シート」と記載する。又、アクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリレートと表す。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリルモノマー及びオリゴマーを電子線の照射によって架橋させてなる樹脂シートが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも1種以上のアクリルモノマーを電子線の照射によって架橋させてなり、かつ体積収縮率が1.0%以下である樹脂フィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献1で原料アクリルモノマーとして具体的に開示されているエポキシアクリレートを用いた場合には、耐熱性試験及び耐光性試験後の黄変度が大きく問題であった。
一方、特許文献1では、ウレタンアクリレートがどの様な化合物であるか不明であるが(特許文献1:[0021])、実施例3でウレタンアクリレートとして具体的に開示されている脂肪族ジイソシアネートと水酸基を有したアクリレートの反応物(いわゆる、アダクト体)を用いた場合には(特許文献1:[0038])、架橋密度が高すぎ、フィルムがもろくなるといった欠点があった。
【0004】
特許文献2には、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーと反応性希釈モノマーとを含む組成物を活性エネルギー線により硬化した樹脂シートが開示され、その例として電子線硬化により樹脂シートを製造することが具体的に開示されている。
しかしながら、反応性希釈モノマーとして具体的に開示されているアクリロイルモルホリンやN−ビニルホルムアルデヒドを用いた場合には、吸水率が高くなるなど、耐湿環境下での使用には問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−30041号公報
【特許文献2】特開2009−91586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した通り、従来の(メタ)アクリルモノマー及びオリゴマーを電子線の照射によって架橋・硬化させて得られた樹脂シートは耐熱性試験及び耐光性試験後の黄変度が大きく、吸水率が高いため高温高湿条件下で長期にわたって使用することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、硬化物の吸水率が低く、耐熱性試験及び耐光性試験後の黄変度と吸水率とのバランスに優れ、高温高湿環境下で長期にわたって使用することができる電子線硬化型組成物、及び当該組成物から得られた樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートから製造されるウレタン(メタ)アクリレートと脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートを含む電子線硬化型組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物によれば、得られる硬化物の吸水率が低く、耐熱性試験及び耐光性試験後の黄変度と吸水率とのバランスに優れる。
従って、本発明の電子線硬化樹脂シートは、光学フィルム、太陽電池等屋外用の耐光性(耐候性)シート、難燃性シート、放熱性シート、LED照明・有機EL照明用拡散シート、粘着性シート、フレキシブルエレクトロニクス用透明耐熱シート、プリンタブルエレクトロニクス用シート、各種機能性フィルム(例えば、ハードコートフィルムや加飾フィルム)及び表面形状を付したフィルム(例えば、モスアイ型反射防止フィルムや太陽電池用テクスチャー構造付きフィルム)のベースフィルム等の用途に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)〔以下、単に「(A)成分」という〕及び
脂環式骨格及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)〔以下、単に「(B)成分」という〕を含み、
硬化物の吸水率が1.0%以下である
電子線硬化型組成物に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書では、組成物に電子線照射して得られる架橋物及び硬化物を、まとめて「硬化物」と表す。
【0011】
1.(A)成分
本発明で使用する(A)成分は、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール(以下、これらをまとめて「ジオールa」という)、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレートである。
当該(A)成分は、他のウレタン(メタ)アクリレートと比較して、ポリオールとしてジオールaを使用することにより、耐熱性試験後及び耐光性試験後の黄変度が小さいものとなる。
【0012】
(A)成分としては、ジオールaと有機ジイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有化合物を製造し、これとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物(以下、「化合物A1」という)、及びジオールa、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを同時に反応させた化合物(以下、「化合物A2」という)等が挙げられ、分子量を制御しやすいという理由で化合物A1が好ましい。
(A)成分としては、オリゴマー及びポリマーのいずれも使用可能であり、重量平均分子量1,000〜5万のものが好ましく、より好ましくは5,000〜3万である。
尚、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0013】
ジオールaにおいて、ポリカーボネートジオールとしては、低分子量ジオール、ポリエーテルジオール又は/及びビスフェノールA等のビスフェノールとエチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
ここで、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、並びにポリエチレンポリプロポキシブロックポリマージオール等のブロック又はランダムポリマーのジオール等が挙げられる。
【0014】
ジオールaにおいて、ポリエステルジオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及び前記ポリエーテルジオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
【0015】
有機ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、「H12MDI」という)、ω,ω′−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」という)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」という)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
前記した化合物の中でも、硬化物に耐光性(耐候性)が要求される場合には、IPDI及びH12MDIが好ましく、硬化物に機械的強度が求められる場合には、TDI及びMDIが好ましい。
【0016】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記した化合物の中でも、シートの柔軟性に優れるという点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0017】
(A)成分は、常法に従い製造されたもので良い。
化合物A1を製造する場合は、ジブチルスズジラウレート等のウレタン化触媒存在下、使用するジオールa及び有機ジイソシアネートを加熱攪拌し付加反応させ、さらにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加し、加熱攪拌し付加反応させる方法等が挙げられ、化合物A2を製造する場合は、前記と同様の触媒の存在下に、ジオールa、有機ジイソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを同時に添加して加熱攪拌する方法等が挙げられる。
【0018】
これらの化合物は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0019】
2.(B)成分
(B)成分は、脂環式骨格及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。本発明では(B)成分を含むことにより、組成物の硬化物が吸水率の低いものとすることができる。
【0020】
(B)成分としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及び1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
(B)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0022】
(B)成分としては、前記した化合物の中でも、耐熱性及び耐光性に優れ、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上と比較的高い点で、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
3.電子線硬化型組成物
本発明は、前記(A)成分及び(B)成分を必須成分として含む電子線硬化型組成物である。
組成物の製造方法としては、常法に従えばよく、(A)成分及び(B)成分を使用し、必要に応じてその他の成分をさらに使用し、これらを攪拌・混合して得ることができる。
【0024】
又、本発明の組成物は、その硬化物の吸水率が1.0%以下である必要がある。吸水率が低いことにより、耐湿環境下の使用において硬化物の寸法変化を抑えることができる。
尚、本発明において吸水率とは、以下の方法に従い測定した値を意味する。
即ち、組成物の硬化物を5cm×5cmに切り出し、これを試験片とする。この試験片を窒素中、210℃で1時間加熱し、硬化物を完全に乾燥させた後に、デシケーター中で放冷し、試験片を秤量する(W1)。ついで、試験片を80℃の蒸留水に20時間浸漬し、取り出した後に試験片表面の水を軽く拭き取り秤量する(W2)。
吸水率は、得られたW1及びW2の結果に基づき、下記式(1)に従い計算した結果を意味する。
吸水率(%)=(W2−W1)/W1×100 ・・・・(1)
【0025】
(A)成分及び(B)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、(A)成分20〜95重量%及び(B)成分5〜80重量%が好ましく、より好ましくは(A)成分30〜90重量%及び(B)成分10〜70重量%である。
(A)成分の割合が20重量%以上とすることで、得られる硬化物を柔軟性に優れるものとすることができ、他方95重量%以下とすることで、組成物の粘度を低くし、塗工性に優れるものとすることができる。
【0026】
本発明の組成物は、電子線硬化型組成物であり、必要に応じて従来公知の光重合開始剤を配合できるが、光重合開始剤を含まないものが好ましい。光重合開始剤を含まないことにより、得られる硬化物の耐熱性や耐候性に優れるものとすることができる。
【0027】
本発明の組成物は、前記(A)成分及び(B)成分を必須とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
具体的には、(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和化合物〔以下、(C)成分という〕、有機溶剤〔以下、(D)成分という〕、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤、難燃剤、放熱フィラー、光拡散剤、無機材料等を挙げることができる。
以下これらの成分について説明する。
【0028】
●(C)成分
(C)成分は、(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和化合物である。
(C)成分は、組成物全体の粘度を低下させる目的や、その他の物性を調整する目的で必要に応じて配合する成分である。
【0029】
(C)成分の具体例としては、(A)及び(B)成分以外の(メタ)アクリレート〔以下、「その他(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
【0030】
その他(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
【0031】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、о−フェニルフェノールEO変性(n=1〜4)(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールEO変性(n=1〜4)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、о−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールA EO変性(n=1〜2)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=5〜14)ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=5〜14)ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=3〜16)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(1−メチルブチレングリコール)(n=5〜20)ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートの二官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
尚、上記においてEO変性とは、エチレンオキサイド変性を意味し、nはアルキレンオキサイド単位の繰返し数を意味する。
【0033】
(C)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
(C)成分としては、前記した化合物の中でも、得られる硬化物の柔軟性に優れる点で、単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0034】
本発明においては、(C)成分として、極性基を有するエチレン性不飽和化合物を含まないものが好ましい。これにより、硬化物の吸水率を低いものとすることができる。
極性基としては、カルボキシル基、スルホン基及びリン酸基等の酸性基、酸性基の塩、モルホリル基、アミノ基、アミド基並びにマレイミド基等の環状イミド基及び水酸基等が挙げられる。極性基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド及びN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0035】
(C)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、得られる硬化物の吸水率や伸び率等の物性を低下させない量であれば良いが、(A)成分の100重量部に対して1〜100重量%が好ましく、より好ましくは1〜80重量%である。
【0036】
●(D)成分
本発明の組成物は、基材への塗工性を改善する等の目的で、(D)成分の有機溶剤を含むものが好ましい。
【0037】
(D)成分の具体例としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール及び1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶剤;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル及びビス(2−ブトキシエチル)エーテル等のエーテル系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0038】
(D)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0039】
(D)成分の割合としては、適宜設定すれば良いが、好ましくは組成物中に10〜90重量%が好ましく、より好ましくは40〜80重量%である。
【0040】
●重合禁止剤又は/及び酸化防止剤
本発明の組成物には、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を添加することが、本発明の組成物の保存安定性を向上させことができ、好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等を添加することもできる。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0.001〜3重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0041】
●耐光性向上剤
本発明の組成物には、用途に応じて、紫外線吸収剤や光安定剤を添加することができる。
紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアジン化合物;
2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、4、4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、又は2、2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等を添加することもできる。
光安定性剤としては、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6−)ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、などの低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートなどの高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤を添加することもできる。
耐光性向上剤の配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜1重量%である。
【0042】
●難燃剤
本発明の組成物には、用途に応じて、難燃剤を添加することができる。
難燃剤としては、ポリクロルパラフィン、塩素化ポリエチレン、テトラブロムエタン、テトラブロムビスフェノール等のハロゲン系難燃剤;
トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル;ビスフェノールAジホスフェート、レゾルシンジホスフェート、テトラキシレニルレゾルシンジホスフェートなどオリゴマータイプの縮合リン酸エステル系難燃剤等のリン系難燃剤;
脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素、チオ尿素、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸塩、ポリリン酸メラミンおよびホスファゼン化合物の窒素化合物系難燃剤;
フェニルプロピルシリコーンレジン等のシリコーン樹脂;シリコーンパウダー;シリコーンオイル等のシリコーン系難燃剤;
三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム等の無機化合物がハロゲンを含まない難燃剤等を添加することもできる。
これらの中でも、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤が好ましい。
難燃剤の配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜50重量%である。
【0043】
●放熱フィラー
本発明の組成物には、用途に応じて、放熱フィラーを添加することができる。
放熱フィラーとしては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、グラファイト、フェライト、炭素繊維(例えば、帝人(株)製ラヒーマ)等を添加することもできる。
放熱フィラーの配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜50重量%である。
【0044】
●光拡散剤
本発明の組成物には、用途に応じて、光拡散剤を添加することができる。
光拡散剤としては、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート等の無機フィラー;
アクリル系樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機フィラー等を添加することもできる。
光拡散剤の配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜50重量%である。
【0045】
●無機材料
無機材料は、強度を向上させる目的や線膨張係数を低減させる目的で配合することもできる。
無機材料としては、ガラス繊維、コロイダルシリカ、シリカ、アルミナ、タルク及び粘土等が挙げられる。
無機材料の配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜50重量%である。
【0046】
4.使用方法
本発明の組成物は、目的に応じて種々の使用方法を採用することができ、具体的には、基材に組成物を塗工し電子線を照射して硬化させる方法、別の基材と貼り合せた後さらに電子線を照射して硬化させる方法等が挙げられる。
【0047】
基材としては、離型処理されたシート又はフィルム(以下、「離型材」という)の他、表面処理(例えば、ハードコート処理)や接着を目的とする材料(以下、「被着体」という)であっても良い。
離型材としては、表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)及びシリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
被着体の材質としては、ポリマー、ガラス、セラミックス、鋼板やアルミ等の金属、金属や金属酸化物の蒸着膜、シリコン等が挙げられる。
ポリマーとしては、セロハン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ユリア・メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエーテルサルホン、上記ポリマーの共重合体、液晶ポリマー及びフッ素樹脂等が挙げられ、フィルム又はシート状のものが好ましい。
【0048】
塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、従来公知のバーコート、アプリケーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
【0049】
電子線照射における、線量等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
【0050】
5.樹脂シート
本発明の組成物は、樹脂シートの製造に好ましく使用できる。
樹脂シートの形態としては、組成物の電子線照射による硬化物(以下、単に「硬化物」という)が、フィルム又はシート状基材(以下、単に「基材」という)に形成されたものが挙げられる。
又、基材/硬化物/基材が、この順に形成されたものも挙げられる。この場合、基材のいずれか一方、又は両方が離型処理された基材であるものも挙げられる。
以下、樹脂シートの製造方法及び用途について説明する。
【0051】
5−1.樹脂シートの製造方法
樹脂シートの製造方法としては常法に従えば良く、例えば、組成物を基材に塗布した後、電子線を照射して製造することができる。
尚、以下においては、図1及び図2に基づき一部説明する。
【0052】
図1は、基材/硬化物から構成される樹脂シートの好ましい製造方法の一例を示す。
図1において、(1)は基材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図1:A1)は、組成物を基材〔図1:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図1:A2)は、組成物を基材〔図1:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図1:1−1)。
基材に組成物層が形成されてなるシートに対して電子線を照射することで、基材/硬化物から構成される樹脂シートが得られる。電子線の照射は、通常、組成物層側から照射するが、基材が透明な場合は、基材側からも照射できる。
上記において、基材(1)として離型材を使用すれば、離型材/硬化物から構成される樹脂シートを製造することができる。
【0053】
本発明の組成物の塗工量としては、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、有機溶剤等を乾燥した後の膜厚が5〜500μmとなるよう塗工するのが好ましく、より好ましくは10〜500μmである。
【0054】
組成物が有機溶剤等を含む場合は、塗布後に乾燥させ、有機溶剤等を蒸発させる。
乾燥条件は、使用する有機溶剤等に応じて適宜設定すれば良く、40〜120℃の温度に加熱する方法等が挙げられる。
【0055】
電子線照射における、線量等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
【0056】
図2は、基材/硬化物/基材から構成される樹脂シートの好ましい製造方法の一例を示す。
図2において、(1)、(3)、(4)は基材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図2:A1)は、組成物を基材〔図2:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図2:A2)は、組成物を基材〔図2:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図2:2−1)。組成物層には基材(3)をラミネートした後電子線照射したり、電子線照射した後に基材をラミネートすることで、基材、硬化物及び基材が、この順に形成されてなる樹脂シートが得られる。
上記において、基材(1)及び(4)として、離型材を使用すれば、離型材/硬化物/離型材から構成される樹脂シートを製造することができる。
また、上記において、基材(1)及び(3)として、離型材を使用すれば、離型材/硬化物/離型材から構成される樹脂シートを製造することができる。
【0057】
5−2.樹脂シートの用途
本発明の樹脂シートの具体的用途としては、光学フィルム、太陽電池等屋外用の耐光性(耐候性)シート、難燃性シート、放熱性シート、LED照明・有機EL照明用拡散シート、粘着性シート、フレキシブルエレクトロニクス用透明耐熱シート、プリンタブルエレクトロニクス用シート、各種機能性フィルム(例えば、ハードコートフィルムや加飾フィルム)及び表面形状を付したフィルム(例えば、モスアイ型反射防止フィルムや太陽電池用テクスチャー構造付きフィルム)のベースフィルム等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、重量部を意味する。
【0059】
(1)実施例(組成物の製造)
後記表1に示す成分を表1に示す割合でステンレス製容器に投入し、加温しながらマグネチックスターラーで均一になるまで撹拌し、組成物を得た。表1における数字は、部数を意味する。
【0060】
【表1】

【0061】
表1における略号は、下記を意味する。
・UCA002:ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、根上工業(株)製アートレジンUCA−002〔重量平均分子量(以下、「Mw」と略):7,000〕
・UN9200:ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、根上工業(株)製アートレジンUN−9200A(Mw:15,000)
・KY111:ポリエステル系ウレタンアクリレート、根上工業(株)製アートレジンKY−111(Mw:16,000)
・IBXA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製IBXA
・FA511AS:ジシクロペンテニルアクリレート、日立化成工業(株)製FA−511AS
・FA513AS:ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成工業(株)製FA−513AS
・M1600:ポリエーテル系ウレタンアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−1600
・LPVC3:ポリエーテル系ウレタンアクリレート、根上工業(株)製アートレジンLPVC−3(Mw:16,000)
・SP1509:ビスフェノールA系エポキシアクリレート、昭和高分子(株)製リポキシSP−1509
・ACMO:アクリロイルモルホリン、(株)興人製ACMO
・M140:N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、東亞合成(株)製アロニックスM−140
・Dc1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、BASFジャパン(株)製DAROCUR−1173
【0062】
(2)実施例8〜14及び比較例9〜15(電子線硬化による樹脂シートの製造)
幅300mm×長さ300mmの東レフィルム加工(株)製離型フィルム「セラピールBX8」(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm。以下、単に「セラピールBX8」という。)に、実施例1〜7及び比較例3〜8で得られた組成物を加温し、膜厚が100μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、組成物層に、幅300mm×長さ300mmの「セラピールBKE」(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm。以下、単に「セラピールBKE」という。)をラミネートした後、(株)アイ・エレクトロンビーム製の電子線照射装置により、加速電圧200kV、線量50kGy(ビーム電流及び搬送速度により調整)、酸素濃度300ppm以下の条件下で電子線照射を行い、樹脂シートを得た。
硬化後、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、後記する耐熱性試験、耐光性試験及び吸水率の評価に用いた。
【0063】
(3)比較例9及び10(紫外線硬化による樹脂シートの製造)
幅300mm×長さ300mmのセラピールBX8に、比較例1及び同2で得られた紫外線硬化型組成物を加温し、膜厚が100μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、組成物層に、幅300mm×長さ300mmのセラピールBKEをラミネートした後、アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(高圧水銀灯、ランプ高さ12cm、365nmの照射強度400mW/cm2(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCKの測定値))によりコンベア速度を調整して、積算光量1,000mJ/cm2の紫外線照射を行い、樹脂シートを得た。
硬化後、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、後記する耐熱性試験、耐光性試験及び吸水率評価に用いた。
【0064】
〔耐熱性試験〕
実施例及び比較例で得られた樹脂シートを、100℃恒温槽中に500時間放置し、イエローインデックス(以下、YI)の変化を測定することで、樹脂シートの耐熱性を評価した。それらの結果を表2に示す。
尚、YIは、高速積分球式分光透過率測定器((株)村上色彩技術研究所製SPECTROPHOTOMETER DOT−3C)を用いて測定した。
【0065】
〔耐光性試験〕
実施例及び比較例で得られた樹脂シートを、紫外線フェードメーター(スガ試験(株)製紫外線ロングライフフェードメーターFAL−5H型)に500時間放置し、YIの変化を測定することで、樹脂シートの耐光性を評価した。それらの結果を表2に示す。
尚、YIは、高速積分球式分光透過率測定器を用いて測定した。
【0066】
〔吸水率〕
得られた樹脂シートを5cm×5cmに切り出し、これを試験片とした。この試験片を窒素中、210℃で1時間加熱し、硬化物を完全に乾燥させた後に、デシケーター中で放冷し、試験片を秤量した(W1)。ついで試験片を80℃の蒸留水に20時間浸漬し、取り出した後に試験片表面の水を軽く拭き取り秤量し(W2)、下記式(1)に従い吸水率を算出した。それらの結果を表2に示す。
吸水率(%)=(W2−W1)/W1×100 ・・・・(1)
【0067】
【表2】

【0068】
実施例8〜14は、本発明の組成物である実施例1〜7から得られた樹脂シートであり、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールから製造されるウレタンアクリレートである(A)成分を含むため、耐熱性試験後及び耐光性試験後の黄変度が小さく、脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートである(B)成分を含むため、吸水率が小さかった。
これに対して、比較例9及び10は、(A)及び(B)成分を含むものの、光重合開始剤を配合して得られた比較例1及び同2の組成物を、電子線ではなく紫外線照射して製造された樹脂シートであり、耐熱性試験後及び耐光性試験後の黄変度が大きかった。
比較例11〜13は、エポキシアクリレート又はポリエーテルポリオールから製造されるウレタンアクリレートを含む比較例3〜5の組成物から製造された樹脂シートであり、耐熱性試験後及び耐光性試験後の黄変度が大きかった。
比較例14及び15は、いずれも(B)成分を含まない比較例6及び7の組成物から製造された樹脂シートであり、吸水率が大きいものであり、耐熱性試験後及び耐光性試験後の黄変度も大きいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電子線硬化型組成物は、樹脂シートの製造に好適に使用することができる。
さらに、本発明の樹脂シートは、前記で詳述した通り、光学フィルム、太陽電池等屋外用の耐光性(耐候性)シート、難燃性シート、放熱性シート、LED照明・有機EL照明用拡散シート、粘着性シート、フレキシブルエレクトロニクス用透明耐熱シート、プリンタブルエレクトロニクス用シート、各種機能性フィルム及び表面形状を付したフィルムのベースフィルム等の用途において好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の組成物を使用した樹脂シートの製造の1例を示す。
【図2】図2は、本発明の組成物を使用した樹脂シートの製造の1例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)及び
脂環式骨格及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)を含み、
硬化物の吸水率が1.0%以下である
電子線硬化型組成物。
【請求項2】
(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、(A)成分20〜95重量%及び(B)成分5〜80重量%で含む請求項1記載の電子線硬化型組成物。
【請求項3】
前記(B)成分がイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である請求項1又は請求項2に記載の電子線硬化型組成物。
【請求項4】
さらに、(A)成分及び(B)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物(C)を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子線硬化型組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、極性基を有するエチレン性不飽和化合物を含まないものである請求項4記載の電子線硬化型組成物。
【請求項6】
前記組成物が光重合開始剤を含まない請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子線硬化型組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物の電子線照射硬化物が、フィルム又はシート状基材に形成されてなる樹脂フィルム又はシート。
【請求項8】
フィルム又はシート状基材、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物の電子線照射硬化物及びフィルム又はシート状基材が、この順に形成されてなる請求項6記載の樹脂フィルム又はシート。
【請求項9】
フィルム又はシート状基材のいずれか一方、又は両方が離型処理された基材である請求項7又は請求項9記載の樹脂フィルム又はシート。
【請求項10】
フィルム又はシート状基材に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物を塗工した後、塗工面又はフィルム又はシート状基材側から電子線を照射する樹脂フィルム又はシートの製造方法。
【請求項11】
フィルム又はシート状基材に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物を塗工した後、塗工面に他のフィルム又はシート状基材を貼合し、フィルム又はシート状基材のいずれかの側から電子線を照射する樹脂フィルム又はシートの製造方法。
【請求項12】
フィルム又はシート状基材のいずれか一方、又は両方が離型処理された基材である請求項10又は請求項11記載の樹脂フィルム又はシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−46566(P2012−46566A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187467(P2010−187467)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】