説明

電子膨張弁及びそれを備えた空気調和機

【課題】様々な容量の空気調和機に対応することができる冷媒流量に調整が可能な電子膨張弁を得る。
【解決手段】電子膨張弁ニードル部7は、その先端部分に、ニードル最小テーパー角(θ3)部7a、ニードル中間テーパー角(θ2)部7b、及び、ニードル最大テーパー角(θ1)部7cを有し、それぞれテーパー角が異なる三段構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流量特性を有する電子膨張弁及びそれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機の電子膨張弁として、2つの絞り部を有しており、得られる流量特性は電子膨張弁の開度に対し、原則としてリニアに変化させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−266667号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空気調和機の電子膨張弁では、2つの絞り部を有しているが、得られる流量は、基本的に電子膨張弁の開度に対しリニアに変化するため、所定の範囲の流量について制御することしかできず、これによって限られた容量の室内機の冷媒流量しか制御できないという問題点があった。
【0005】
例えば、大容量室内機に対応した電子膨張弁を小容量帯の室内機に対応させた場合、容量的には十分に対応できるものの、開度変化に対する流量変化が大きく、きめ細かな制御ができないため、運転中の冷凍サイクルにおける冷媒流量が大きくハンチングし、冷媒音及び吹出し温度の変化を生じさせ、ユーザーに不快感を与える可能性があるという問題点があった。
【0006】
また、逆に、小容量室内機に対応した電子膨張弁を大容量帯の室内機に対応させた場合、大容量室内機に必要な冷媒流量が得られず、十分な能力を発揮できないという問題点があった。
【0007】
このように従来の電子膨張弁を多室形空気調和機に使用した場合、様々な能力クラスの室内機を接続することができず、仮に、それに対応した場合も、Aポートは大容量室内機用、そして、Bポートは小容量室内機用と特定するしかなく、その自由度は極めて小さく、製品能力を大幅に低下させてしまう問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、様々な容量の空気調和機に対応することができる冷媒流量に調整が可能な電子膨張弁を得ることである。
また、第2の目的は、冷凍サイクルの急激な変化を起こすことなく、冷媒流量をきめ細かく制御可能とする空気調和機を得ることである。
そして、第3の目的は、様々な容量の空気調和機に対応することができる電子膨張弁を備えることによって、複数の室内機の容量にそれぞれに対応した電子膨張弁ではなく、同一の構成を有する電子膨張弁を利用することができる空気調和機を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子膨張弁は、先端側において、先端方向に向かって順にテーパー角が大きくなるように形成された複数のテーパー角部を有するニードル部と、その内側周縁部と前記テーパー角部との間隙によって冷媒の流路を形成する円筒状の弁座と、を備え、前記ニードル部は、軸方向に移動可能とし、前記弁座の前記内側周縁部と前記流路を形成する複数の前記テーパー角部を切り替えることによって前記流路の冷媒流量特性を変更可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接続される冷凍サイクルの能力クラスに応じて、電子膨張弁の開度、すなわち、流量を制御可能とし、その冷凍サイクルの能力に対応した冷媒流量に調整することができるので、冷凍サイクルは適正な能力を発揮でき、かつ、効率の良い運転が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の冷媒回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電子膨張弁4a〜4dの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電子膨張弁4a〜4dに対する操作量(パルス)とその操作量によって定まる開度における流量比との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態2に係る空気調和機の電子膨張弁4a〜4dに対する操作量(パルス)によって流量を変化させる動作のフローチャートの具体例を示すものである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る空気調和機の電子膨張弁4a〜4dに対する操作量(パルス)とその操作量によって定まる開度における流量比との関係を示すグラフと共に、要求パルスを他のパルスに変換する動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
(空気調和機の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機の冷媒回路図である。
図1で示されるように、本実施の形態に係る空気調和機は、少なくとも、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、電子膨張弁4a〜4d、室内熱交換器5a〜5dを備えており、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、電子膨張弁4a〜4d、室内熱交換器5a〜5d、四方弁2、そして、圧縮機1という順で冷媒配管によって接続され冷凍サイクルを構成している。また、本実施の形態に係る空気調和機は、前述の圧縮機1、四方弁2及び電子膨張弁4a〜4d等の動作を制御する室外制御部6を備えている。
【0013】
圧縮機1は、室外制御部6からの指令に基づく回転数によって回転駆動し、流入するガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を吐出するものである。
【0014】
四方弁2は、暖房運転又は冷房運転に対応して、冷媒の流路を切り替えるものである。
【0015】
室外熱交換器3は、流入した冷媒を外気と熱交換させるものである。冷房運転の場合、室外熱交換器3は、凝縮器として機能し、流入した高温高圧のガス冷媒を外気と熱交換させて凝縮させ、高圧の液冷媒として流出させる。一方、暖房運転の場合、室外熱交換器3は、蒸発器として機能し、流入した低圧の二相冷媒を外気と熱交換させて蒸発させ、低圧のガス冷媒として流出させる。
【0016】
電子膨張弁4a〜4dは、室外制御部6からの指令に基づいて開度を調整することによって、冷媒の流量を制御するものである。電子膨張弁4a〜4dの構成の詳細については図2において後述する。
【0017】
室内熱交換器5a〜5dは、それぞれ室内機10a〜10dに備えられているものであり、流入した冷媒を室内空気と熱交換させるものである。冷房運転の場合、室内熱交換器5a〜5dは、蒸発器として機能し、流入した低圧の二相冷媒を室内空気と熱交換させて蒸発させ、低圧のガス冷媒として流出させる。一方、暖房運転の場合、室内熱交換器5a〜5dは、凝縮器として機能し、流入した高温高圧のガス冷媒を室内空気と熱交換させて凝縮させ、高圧の液冷媒として流出させる。
【0018】
室外制御部6は、前述のように、圧縮機1、四方弁2及び電子膨張弁4a〜4d等の動作を制御するものであり、特に、後述するように、電子膨張弁4a〜4dの開度調整の制御については、室内機からの要求パルス(要求操作量)に基づいて制御する。
【0019】
(電子膨張弁4a〜4dの構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る電子膨張弁4a〜4dの構成図である。
図2で示されるように、電子膨張弁4a〜4dは、電子膨張弁ニードル部7、及び、この電子膨張弁ニードル部7の先端との隙間を形成する弁座8を備えている。
【0020】
電子膨張弁ニードル部7は、その先端部分に、ニードル最小テーパー角(θ3)部7a、ニードル中間テーパー角(θ2)部7b、及び、ニードル最大テーパー角(θ1)部7cを有し、それぞれテーパー角が異なる三段構造となっている。ここで、テーパー角とは、電子膨張弁ニードル部7の軸方向に対するテーパー部の面の角度をいうものとする。それぞれのテーパー角部は、テーパー角がθ3>θ2>θ1の関係となるように形成されている。これらのテーパー角部と弁座8の内側周縁部によって、流路9が形成されている。この流路9を流れる流量は、弁座8の内側周縁部と、電子膨張弁ニードル部7の各テーバー角部との位置関係によって定まり、室外制御部6が、電子膨張弁ニードル部7を軸方向に動作させることによって、冷媒の流量が調整される。
【0021】
(空気調和機の冷暖房動作)
次に、本実施の形態に係る空気調和機の冷暖房動作について説明する。冷房運転時、室外制御部6は、まず、四方弁2を冷房運転に対応した流路に切り替える。圧縮機1によって圧縮された高温高圧のガス冷媒は、四方弁2を経由して、室外熱交換器3に流入する。室外熱交換器3に流入したガス冷媒は、外気との熱交換が実施されて凝縮し、高圧の液冷媒となって流出し、電子膨張弁4a〜4dに分配され流入する。電子膨張弁4a〜4dに流入した液冷媒は、膨張されて減圧し、低圧の二相冷媒となって流出し、室内機10a〜10dにおける室内熱交換器5a〜5dに流入する。室内熱交換器5a〜5dに流入した二相冷媒は、室内空気との熱交換が実施されて蒸発し、低圧のガス冷媒となって流出する。このとき、送風ファン(図示せず)によって、冷媒と熱交換が実施されて冷却された空気が冷風として室内に送風される。室内熱交換器5a〜5dを流出したガス冷媒は、四方弁2を経由して、圧縮機1に流入し、再び、圧縮される。
【0022】
また、暖房運転時、室外制御部6は、まず、四方弁2を暖房運転に対応した流路に切り替える。圧縮機1によって圧縮された高温高圧のガス冷媒は、四方弁2を経由して、室内機10a〜10dにおける室内熱交換器5a〜5dに分配され流入する。室内熱交換器5a〜5dに流入したガス冷媒は、室内空気との熱交換が実施されて凝縮し、高圧の液冷媒となって流出し、電子膨張弁4a〜4dに流入する。このとき、送風ファン(図示せず)によって、冷媒と熱交換が実施されて加熱された空気が温風として室内に送風される。電子膨張弁4a〜4dに流入した液冷媒は、膨張されて減圧し、低圧の二相冷媒となって流出し、室外熱交換器3に流入する。室外熱交換器3に流入した二相冷媒は、外気との熱交換が実施されて蒸発し、低圧のガス冷媒となって流出する。室外熱交換器3を流出したガス冷媒は、四方弁2を経由して、圧縮機1に流入し、再び、圧縮される。
【0023】
(電子膨張弁4a〜4dの流量調整動作)
図3は、本発明の実施の形態1に係る電子膨張弁4a〜4dに対する操作量(パルス)とその操作量によって定まる開度における流量比との関係を示すグラフである。
上記のような本実施の形態に係る空気調和機の動作において、冷房運転及び暖房運転共に、各室内熱交換器5a〜5dへの冷媒流量の分配は電子膨張弁4a〜4dにおける電子膨張弁ニードル部7の動作によって実施されている。各室内機10a〜10dにおける室内制御部(図示せず)は、自分の能力クラスがどのくらいであるかの情報を、室外制御部6に送信し、それを受信した室外制御部6は、各室内機10a〜10dがどの能力クラスに属するものかを判定する。このとき、電子膨張弁4a〜4dの電子膨張弁ニードル部7において、ニードル最小テーパー角部7aは小能力(例えば、1.5kW<容量≦4.0kW)の室内機用に、ニードル中間テーパー角部7bは中能力(例えば、4.0kW<容量≦6.0kW)の室内機用に、そして、ニードル最大テーパー角部7cは大能力(例えば、6.0kW<容量≦8.0kW)の室内機用に対応している。
【0024】
室外制御部6は、小能力の室内機に対しては、対応する電子膨張弁のニードル最小テーパー角部7aと、弁座8の内側周縁部とによって流路9が定まるように、その電子膨張弁に対して操作量(パルス)を送信して電子膨張弁ニードル部7を軸方向で移動させる。また、室外制御部6は、中能力の室内機に対しては、対応する電子膨張弁のニードル中間テーパー角部7bと、弁座8の内側周縁部とによって流路9が定まるように、その電子膨張弁に対して操作量(パルス)を送信して電子膨張弁ニードル部7を軸方向で移動させる。そして、室外制御部6は、大能力の室内機に対しては、対応する電子膨張弁のニードル最大テーパー角部7cと、弁座8の内側周縁部とによって流路9が定まるように、その電子膨張弁に対して操作量(パルス)を送信して電子膨張弁ニードル部7を軸方向で移動させる。
【0025】
小能力の室内機に対しては、0<パルス≦x1の電子膨張弁に対する操作量の範囲によって、電子膨張弁のニードル最小テーパー角部7aと、弁座8の内側周縁部とによって流路9が定まり、図3で示されるような傾きによって操作量の増加に伴って流量比が増加する。
また、中能力の室内機に対しては、x1<パルス≦x2の電子膨張弁に対する操作量の範囲によって、電子膨張弁のニードル中間テーパー角部7bと、弁座8の内側周縁部とによって流路が定まり、図3で示されるような傾きによって、操作量の増加に伴って流量比が増加する。このとき、その操作量に対する流量比の変化の割合は、小能力の室内機の場合よりも大きい。
そして、大能力の室内機に対しては、x2<パルス≦x3の電子膨張弁に対する操作量の範囲によって、電子膨張弁のニードル最大テーパー角部7cと、弁座8の内側周縁部とによって流路が定まり、図3で示されるような傾きによって、操作量の増加に伴って流量比が増加する。このとき、その操作量に対する流量比の変化の割合は、小能力及び中能力の室内機の場合よりも大きい。
【0026】
なお、各室内機10a〜10dにおける室内制御部(図示せず)は、自分の能力クラスがどのくらいであるかの情報を、室外制御部6に送信し、それを受信した室外制御部6は、各室内機10a〜10dがどの能力クラスに属するものかを判定するものとしたが、この場合、室外制御部6は、判定した能力クラスを代表する操作量(パルス)(例えば、小能力における操作量の範囲は、0<パルス≦x1なので、その中間値であるx1/2の操作量)を、その室内機10a〜10dに対応する電子膨張弁に対して送信するものとすればよい。
あるいは、室内制御部は、自分の能力クラスがどのくらいであるかの情報として、電子膨張弁に対する操作量情報を直接、室外制御部6に送信するものとしてもよく、この場合、室外制御部6は、受信した操作量をそのまま電子膨張弁に送信するものとしてもよい。これによって、結果的に、いずれのテーパー角部によって流路9が形成されるかが定まり、能力クラスも決定される。
さらに、室内制御部は、自分の能力クラスがどのくらいであるかの情報として、その能力クラスに応じた冷媒の流量情報を、室外制御部6に送信するものとしてよい。この場合、室外制御部6は、受信した流量情報に基づいて、図3で示されるグラフに基づいて、必要とする操作量(パルス)に変換して、電子膨張弁に送信するものとしてもよい。これによって、結果的に、いずれのテーパー角部によって流路9が形成されるかが定まり、能力クラスも決定される。
【0027】
(実施の形態1の効果)
以上の構成及び動作によって、室内機における室内制御部から送信された能力クラスに関する情報に応じて、室外制御部6は、その室内機に対応する電子膨張弁の開度、すなわち、流量を制御することによって、その室内機の能力に対応した冷媒流量に調整することができるので、室内機は適正な能力を発揮でき、かつ、効率の良い冷暖房運転が実現できる。また、上記のような電子膨張弁を使用することによって、非常に幅広い容量帯の室内機(本実施の形態においては1.5kW〜8.0kW)に対応することができる。
【0028】
なお、図1で示される空気調和機の冷媒回路においては、4台の室内機10a〜10dが備えられた構成となっているが、これに限定されるものではなく、1台又はその他の台数の室内機が備えられ、その台数と同数の電子膨張弁が備えられる構成としてもよい。このとき、室内機が複数台備えられる場合、それぞれの室内機の能力に対応させるために、構成及び仕様が異なる電子膨張弁を備える必要がなく、本実施の形態に係る電子膨張弁を共通して利用することができる。
【0029】
また、図3で示されるように、室内機の能力クラスとして、小能力用、中能力用、そして、大能力用というように3つの区分としているが、これに限定されるものではなく、その他の数の区分としてもよい。この場合、その区分の数に応じて、電子膨張弁の電子膨張弁ニードル部7におけるテーパー角部を、その区分と同数分だけそれぞれのテーパー角が異なるように形成するものとすればよい。これによって、より多くの幅広い室内機の能力クラスに適用できると共に、よりきめ細かい制御を実現することができる。
【0030】
また、本実施の形態に係る電子膨張弁は、空気調和機に適用するものとしたが、これに限定されるものではなく、冷蔵庫、ヒートポンプ装置その他の冷凍サイクルを搭載した装置に適用することが可能であり、その冷凍サイクルの能力に対応した冷媒流量に調整することができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1においては、室内機10a〜10dの能力クラスに応じて、室外制御部6が電子膨張弁4a〜4dの電子膨張弁ニードル部7を軸方向に制御して流量を調整する動作を示したが、本実施の形態においては、室内機10a〜10dに対応する能力クラス以外の能力クラスにおける流量で動作させる必要がある場合の動作について説明する。
【0032】
本実施の形態に係る空気調和機について、実施の形態1に係る空気調和機の動作と相違する点を中心に説明する。なお、本実施の形態に係る空気調和機及び電子膨張弁4a〜4dの構成は、実施の形態1の構成と同様である。
【0033】
(対応する能力クラス以外の能力クラスにおける流量によって動作させる場合について)
実施の形態1において説明したように、通常の空気調和機の状態であれば、各室内機10a〜10dの能力クラスにあわせて電子膨張弁4a〜4dの流量を制御することが可能であるが、運転状態によっては、能力クラスの範囲外での使用が必要となる場合がある。
【0034】
まず、小能力の室内機を中能力用に、そして、中能力の室内機を大能力用の流量によって動作させる場合のように、上位の能力クラスの流量によって動作させる場合について説明する。このような状況は、例えば、想定外の過負荷条件が発生し、急激に冷媒流量が増加した場合等が考えられる。この場合、室内機の室内制御部が、必要とする冷媒流量を得るために、現在の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式である後述する式(1)〜式(3)に基づいて算出した操作量(パルス)を室外制御部6に送信し、室外制御部6が、その操作量(パルス)によって、電子膨張弁の開度を制御した場合、その操作量(パルス)が上位の能力クラスに属するとき、あまりに急激な流量変化となり、冷凍サイクルが非常に不安定となってしまう。そこで、本実施の形態に係る空気調和機においては、上記のように、室内制御部から受信した操作量(パルス)が、上位の能力クラスに属するとしても、室外制御部6は、現在の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式に基づいて、流量比を算出し、その算出した流量比、及び、上位の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式に基づいて、その上位の能力クラスにおいて同一の流量比となる操作量(パルス)に変換し、その変換した操作量(パルス)によって電子膨張弁の開度を調整する。これによって、想定外の過負荷条件が発生して、急激に冷媒循環量が増加した場合においても、冷凍サイクルが不安定になることはなく、安定して流量制御を実施することができる。
【0035】
次に、大能力の室内機を中能力用に、そして、中能力の室内機を小能力用の流量によって動作させる場合のように、下位の能力クラスの流量によって動作させる場合について説明する。このような状況は、例えば、室内機のフィルターが目詰まりした場合、又は、空気温度が急激に低下した場合等に、冷媒と空気との熱交換が十分に実施されず、急激に冷媒流量が低下した場合等が考えられる。この場合、室内機の室内制御部は、必要とする冷媒流量を得るために、現在の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式である後述する式(1)〜式(3)に基づいて算出した操作量(パルス)を室外制御部6に送信し、室外制御部6が、その操作量(パルス)によって、電子膨張弁の開度を制御した場合、その操作量(パルス)が下位の能力クラスに属するとき、所望する冷媒の流量が得られなくなってしまう。そこで、本実施の形態に係る空気調和機においては、上記のように、室内制御部から受信した操作量(パルス)が、下位の能力クラスに属するとしても、室外制御部6は、現在の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式に基づいて、流量比を算出し、その算出した流量比、及び、下位の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式に基づいて、その下位の能力クラスにおいて同一の流量比となる操作量(パルス)に変換し、その変換した操作量(パルス)によって電子膨張弁の開度を調整する。これによって、室内機のフィルターが目詰まりした場合、又は、空気温度が急激に低下した場合等においても、所望の冷媒の流量を得ることができ、冷凍サイクルを安定して制御することができる。
【0036】
図4は、本発明の実施の形態2に係る空気調和機の電子膨張弁4a〜4dに対する操作量(パルス)によって流量を変化させる動作のフローチャートの具体例を示すものであり、図5は、同空気調和機の電子膨張弁4a〜4dに対する操作量(パルス)とその操作量によって定まる開度における流量比との関係を示すグラフと共に、要求パルスを他のパルスに変換する動作を示す図である。
【0037】
図5で示されるように、小能力、中能力及び大能力の室内機用に対応した操作量と流量比とのグラフを示す式が、それぞれ以下の式(1)〜式(3)によって表されるものとする。
【0038】
y=a1・x+b1(小能力) (1)
y=a2・x+b2(中能力) (2)
y=a3・x+b3(大能力) (3)
【0039】
以下、図4及び図5を参照しながら、設置されている室内機10a〜10dのうちの1台に着目し、その室内機が中能力の能力クラスに属するものとし、その室内機に対応する電子膨張弁の開度を調整して異なる流量に調整する動作について説明する。
【0040】
(S1)
室外制御部6は、室内機の室内制御部から、その室内機がどの能力クラスに属するかの情報を受信し、その情報に基づいて、中能力の能力クラスであると判定したものとする。
【0041】
(S2)
室外制御部6は、電子膨張弁4a〜4dのうち、その室内機に対応する電子膨張弁に対して、x1<パルス≦x2に属する操作量(パルス)を送信することによって開度を変更して、冷媒流量を調整する。
【0042】
(S3)
室内機の室内制御部は、想定外の過負荷条件が発生した場合、又は、室内機のフィルターが目詰まりした場合、若しくは、空気温度が急激に低下した場合等に、急激に冷媒流量が変化したとき、式(2)に基づいて、その冷媒流量に対応した操作量(パルス)を要求パルスA1として算出し、室外制御部6に送信する。
【0043】
(S4)
室外制御部6は、室内制御部から受信した要求パルスA1が、x1<パルス≦x2に属するか否か判定する。その判定の結果、要求パルスA1がx1<パルス≦x2に属する場合、ステップS5へ進む。一方、要求パルスA1がx1<パルス≦x2に属さない場合、ステップS6へ進む。
【0044】
(S5)
室外制御部6は、電子膨張弁に対して、要求パルスA1を送信することによって開度を変更し、冷媒流量を調整する。
【0045】
(S6)
室外制御部6は、室内制御部から受信した要求パルスA1が、0<パルス≦x1に属するか否かを判定する。その判定の結果、要求パルスA1が0<パルス≦x1に属する場合、ステップS7へ進む。一方、要求パルスA1が0<パルス≦x1に属さない場合、ステップS10へ進む。
【0046】
(S7)
室外制御部6は、要求パルスA1及び式(2)に基く下記の式(4)に基づいて、必要冷媒流量を算出する。
【0047】
y=a2・A1+b2 (4)
【0048】
(S8)
室外制御部6は、算出した必要冷媒流量、及び、小能力に対応する式(1)に基づく下記の式(5)に基づいて、小能力の操作量範囲である0<パルス≦x1に属する出力パルスB1を算出する。
【0049】
B1=(a2・A1+b2−b1)/a1 (5)
【0050】
(S9)
室外制御部6は、電子膨張弁に対して、算出した出力パルスB1を送信することによって開度を変更し、冷媒流量を低下させる。
【0051】
(S10)
室外制御部6は、室内制御部から受信した要求パルスA1が、x2<パルス≦x3に属するか否かを判定する。その判定の結果、要求パルスA1がx2<パルス≦x3に属する場合、ステップS11へ進む。一方、要求パルスA1がx2<パルス≦x3に属さない場合、ステップS3へ戻る。
【0052】
(S11)
室外制御部6は、要求パルスA1及び式(2)に基く上記の式(4)に基づいて、必要冷媒流量を算出する。
【0053】
(S12)
室外制御部6は、算出した必要冷媒流量、及び、大能力に対応する式(3)に基づく下記の式(6)に基づいて、大能力の操作量範囲であるx2<パルス≦x3に属する出力パルスB2を算出する。
【0054】
B2=(a2・A1+b2−b3)/a3 (6)
【0055】
(S13)
室外制御部6は、電子膨張弁に対して、算出した出力パルスB2を送信することによって開度を変更し、冷媒流量を増加させる。
【0056】
なお、上記の式(1)〜式(3)で示される各能力クラスにおける操作量と流量比との関係式は、本発明の「冷媒流量特性」に相当し、出力パルスB1及びB2は、本発明の「出力操作量」に相当する。
【0057】
(実施の形態2の効果)
以上の動作のように、通常の能力クラスから他の能力クラスに属する冷媒流量に調整する場合、室外制御部6は、一旦、要求パルスから、通常の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式に基づいて必要冷媒流量を算出し、その必要冷媒流量、及び、要求パルスが属する他の能力クラスにおける操作量と流量比との関係式に基づいて、その能力クラスにおいて同量の冷媒流量を流通させることができる出力パルスに変換して、その出力パルスに基づいて電子膨張弁による冷媒流量を調整することによって、冷凍サイクルを不安定にすることなく、安定した流量制御を実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 圧縮機、2 四方弁、3 室外熱交換器、4a〜4d 電子膨張弁、5a〜5d 室内熱交換器、6 室外制御部、7 電子膨張弁ニードル部、7a ニードル最小テーパー角(θ3)部、7b ニードル中間テーパー角(θ2)部、7c ニードル最大テーパー角(θ1)部、8 弁座、9 流路、10a〜10d 室内機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側において、先端方向に向かって順にテーパー角が大きくなるように形成された複数のテーパー角部を有するニードル部と、
その内側周縁部と前記テーパー角部との間隙によって冷媒の流路を形成する円筒状の弁座と、
を備え、
前記ニードル部は、軸方向に移動可能とし、前記弁座の前記内側周縁部と前記流路を形成する複数の前記テーパー角部を切り替えることによって前記流路の冷媒流量特性を変更可能とした
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項2】
圧縮機、室外熱交換器、請求項1記載の電子膨張弁、及び、室内機に設置された室内熱交換器を冷媒配管によって接続された冷凍サイクル部と、
前記室内機から自己の能力クラスに関する情報を受信し、該情報に基づいて前記電子膨張弁の開度を調整する室外制御部と、
を備えた
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
前記室外制御部は、前記室内機から受信した前記能力クラスに関する情報に基づいて、前記電子膨張弁において該能力クラスに対応した前記テーパー角部に切り替える
ことを特徴とする請求項2記載の空気調和機。
【請求項4】
前記室外制御部は、前記室内機から冷媒流量を変更するための操作量情報を受信した場合、かつ、その冷媒流量が自己の能力クラスとは別の能力クラスに属する場合に、該別の能力クラスにおいて同一の冷媒流量となるように前記操作量を変換して、別の操作量である出力操作量に変換し、該出力操作量に基づいて、前記電子膨張弁の開度を調整する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の空気調和機。
【請求項5】
前記室外制御部は、
前記自己の能力クラスの冷媒流量特性に基づいて、前記操作量情報から冷媒流量を算出し、
該冷媒流量が属する前記別の能力クラスの冷媒流量特性に基づいて、前記冷媒流量から前記出力操作量に変換する
ことを特徴とする請求項4記載の空気調和機。
【請求項6】
前記室内機は、複数であり、前記冷媒配管によって並列に接続され、
前記電子膨張弁は、前記室内機と同数設置され、複数の前記室内機それぞれに前記冷媒配管によって接続され、
複数の前記室内機に接続された前記各電子膨張弁は、構成が同一のものであり、
前記室外制御部は、それぞれの前記室内機の能力クラスに応じて、該室内機に接続されている前記電子膨張弁の開度を調整する
ことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−37192(P2012−37192A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179941(P2010−179941)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】