説明

電子装置

【課題】カバーをケースから簡単に外すことは出来ない構造であって、しかも特殊な治具を使用することによって、カバーを少しも傷めないで取り外すことが出来る構造を実現することを目的とする。
【解決手段】カバー30はその側板部32−1,32−2が、ケース20の側板部23−1、23−2の内側に嵌合されて、ケースに被される。筐体構造10の内部において、側板部23−1の係止穴34−1が側板部32−1に切起こして形成してある係止片24−1に係止している。ケース20の側板部23−1には、係止解除用治具が挿入される係止解除用スリット25−1が形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子装置に係り、特に、ケースとカバーとよりなる筐体構造を採用している電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線に関する装置に組み込んである筐体構造のモジュール(例えばICタグ読み取り装置のRFモジュール)については、簡単に改造されないようにするために、無線規格でもって、カバーが簡単には外れない構造となっていることが要求されている。
【0003】
図7は、従来のRFモジュール1の筐体構造を断面して示す。ケース2内に回路基板ユニット3が収まっており、カバー4がケース2に被さっており、カバー4は半田付け部5によってケース2と結合してある。カバー4は簡単には外れない状態にあり、RFモジュール1は無線規格を満足している。
【特許文献1】実開平06−064234号公報
【特許文献2】実用新案登録 3076911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のRFモジュール1において、特性検討や修理のためにカバー4を取り外す場合には、半田ごてを使用して半田付け部5の半田を溶かして半田を取り除いていた。この作業によって、場合によっては、ケース2やカバー4が無用に変形したり外観が傷んだりして、再度使用することが出来なくなってしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決した電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、底板部(21)と該底板部の周囲の上向きの側板部(23−1〜23−4)とよりなるケース(22)と、天板部(31)と該天板部の縁の下向きの側板部(32−1,32−2)とを有し、前記ケースに被されたカバー(30)と、内部に収まっている回路基板ユニット(13)とよりなる電子装置であって、
前記カバーの下向き側板部(32−1,32−2)が、前記ケースの上向き側板部(23−1、23−2)の内側に嵌合しており、
前記ケースの上向き側板部の内側に、前記下向き側板部と前記上向き側板部とが係止し合しあっている係止構造部(40)を有し、
且つ、前記ケースは、前記上向き側板部のうち前記係止構造部より下側の部位に、係止解除用のスリット(25−1〜25−4)を有する構成としたことを特徴とする。
【0007】
尚、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、本願発明が図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、係止構造部がケースの上向き側板部の内側に形成してあるため、係止構造部には簡単には接近することが出来ず、しかし、係止解除用スリットを有しているため例えば特殊な治具を使用しこれを係止解除用スリット内に差し込むことによって、カバーを少しも傷めないで係止構造部の係止を解除すること出来る。即ち、本発明によれば、カバーをケースから簡単に外すことは出来ない構造であって、しかも例えば特殊な治具を使用することによって、カバー及びケースを少しも傷めないでカバーを取り外すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の実施例1になるRFモジュール10を分解して示す。RFモジュール10はICタグ読み取り装置内に組み込まれる。図2(A),(B)はRFモジュール10の組み立てを説明する図であり、図3(A)乃至(D)は係止動作の過程及び係止構造部40を示す。
【0011】
RFモジュール10は、筐体構造11の内部にRF回路基板ユニット13が収容してある構成である。筐体構造11は、カバー30がケース20に係止構造部40でもって係止された構成である。カバー30及びケース20は、共に、金属板を、切起こし、折り曲げ加工等をして形成されたものである。XはRFモジュール10の幅方向、Yは長手方向、Zは高さ方向である。
【0012】
[ケース20、カバー30、RF回路基板ユニット13の構成]
ケース20は、矩形の底板部21と、この底板部21を囲む枠部22とよりなる。枠部22は、底板部21の各辺より立ち上がっている上向き側板部23−1〜23−4よりなる。長手方向に沿う対向する上向き側板部23−1、23−2には、夫々対向する二箇所に、係止片24−1〜24−4と係止解除用スリット25−1〜25−4とが形成してある。
【0013】
係止片24−1は、上向き側板部23−1、23−2の一部をケース20の内側に切り起こし加工を行うことによって形成したものであり、先端24aが斜め下を向いており、先端24aは枠部22よりケース20の内側に突き出ている。なお、本明細書では、上向き側板部23−1、23−2のうちケース20の内側に対向する面を、単に上向き側板部23−1、23−2の内側ということもある。他の係止片24−2、24−3、24−4は、係止片24−1と同じである。
【0014】
なお、上向き側板部23−1等を切り起こして形成した係止片24−1等に代えて、上向き側板部23−1等の一部を内側に突き出すように変形させて形成した突起でもよい。
【0015】
係止解除用スリット25−1は、係止片24に対応する箇所であって、上向き側板部23−1、23−2と底板部21とが形成する角部に、上向き側板部23−1、23−2と底板部21との両方にまたがって形成してある。25−1aは、上向き側板部23−1に形成してあるスリット部であり、係止片24に対応する箇所であって、係止片24よりも下側(Z2方向側)に形成してある。25−1bは、底板部21に形成してあるスリット部であり、スリット部25−1aと続いている。他の係止解除用スリット25−2、25−3、25−4は、係止解除用スリット25−1と同じである。
【0016】
カバー30は、天板部31と、天板部31の縁から下方に折り曲げてある下向き側板部32−1〜32−5とよりなり、下向き側板部32−1〜32−5がケース20の枠部22の内側に嵌合する大きさである。
【0017】
下向き側板部32−1〜32−5のうち対向する下向き側板部32−1、32−2は、前記の係止片24−1〜24−4に対応する部位に、Z2方向に舌状に張り出した舌状張出部33−1〜33−4を有する。舌状張出部33−1には、四角の係止穴34−1が形成してある。舌状張出部33−1の先端には、カバー30の内側の方向に斜めに折り曲げたガイド部35−1が形成してある。また、天板部31と下向き側板部32−1とが形成する角部のうち舌状張出部33−1に対応する箇所には、スリット36−1が形成してあり、舌状張出部33−1は矢印A、Bで示すようにカバー30の内側方向に弾性変形可能としてある。他の舌状張出部33−2、33−3、33−4も、上記の舌状張出部33−1と同じ構成であり、係止穴34−2、34−3、34−4、及びガイド部、及びスリットを有する。
【0018】
RF回路基板ユニット13は、回路基板14上にIC部品15が実装してある構成であり、ケース20に対応する大きさである。回路基板14の縁のうち、係止解除用スリット25−1〜25−4に対応する部位には、切り欠き部14aが形成してある。切り欠き部14aは、回路基板14が係止構造部40と干渉しないようにするためのものである。
【0019】
[RFモジュール10の組み立て]
RFモジュール10は、図2(A)に示すように、RFモジュール10は、ケース20の内側にRF回路基板ユニット13をセットし、上方から、カバー30を水平の姿勢で降ろして被せ、Z2方向に押し付けることによって、図2(B)に示すように、下向き側板部32−1〜32−5がケース20の枠部22の内側に嵌合し、係止穴34−1〜34−4が夫々係止片24−1〜24−4に係止されて、係止構造部40(図3(D)参照)が四箇所に同時に形成されて、カバー30がケース20と結合されて筐体構造11が形成されて、完成する。
【0020】
図3(A)乃至(D)は、係止穴34−1が係止片24−1に係止される過程を示す。
【0021】
先ず、図3(A)及び(B)に示すように、ガイド部35−1を上向き側板部23−1の上縁によって案内されて、舌状張出部33−1が上向き側板部23−1の内側に嵌合し、次いで、図3(C)に示すように、舌状張出部33−1がカバー30の内側に向かって、即ち、矢印A方向に弾性的に変形されつつ、ガイド部35−1が係止片24−1を乗り越え、図3(D)に示すように、舌状張出部33−1の先端が底板部21の上面に突き当たる最終位置に到る。また、下向き側板部32−1は上向き側板部23−1の内側に嵌合する。カバー30はそれ以上はZ2方向に押し下げられない状態となる。このときに、係止穴34−1が係止片24−1と対向して、舌状張出部33−1がカバー30に外側に向かって、即ち、矢印B方向に弾性的に復元して、係止穴34−1が係止片24−1と係止され、係止構造部40が形成される。
【0022】
ここで、係止構造部40が形成されている箇所は、筐体構造11の内部であり、外部から容易には近づけない箇所であるので、カバー30は特殊な治具を使用しない限りは外れない構造となり、RFモジュール10は無線規格を満足したものとなる。
【0023】
なお、上記の係止片24−1等に代えて、上向き側板部23−1等の一部を内側に突き出すように変形させて形成した突起を設けた場合には、係止構造部は、係止穴34−1が突起に嵌合して係止された構造となる。
【0024】
[特殊な治具を使用して行うカバー30の取り外し]
RFモジュール10の特性検討や修理に際して、カバー30を取り外すときには、図4に示す係止解除用治具50を使用する。治具50は、板片状であり、上側にフック部51を有し、下側に押し部52を有し、上記の係止解除用スリット25−1〜25−4に挿入可能である形状である。
【0025】
この治具50を、図5に示すように、RFモジュール10の側面のうち、係止構造部40が形成されている箇所に対応する4箇所に取り付ける。
【0026】
一つの治具50についてみると、先ず、図6(A)に示すように、斜めの姿勢にして、フック部51を上向き側板部23−1の上端縁23−1aに係止させ、押し部52の先端部がスリット部25−1a内に少し嵌合した状態とする。次いで、治具50のうち下側寄りの部分を矢印Cで示すように押して、押し部52を係止解除用スリット25−1内に押し込む。治具50は、図6(B)に示すように、上向き側板部23−1の上端縁23−1aを係止しているフック部51を中心に回動されて、押し部52が係止解除用スリット25−1内に入り込む。押し部52は、舌状張出部33−1の下端近傍をRFモジュール10の中心側に押し込み、舌状張出部33−1が図6(B)に示すように弾性変形されて、係止穴34−1が係止片24−1より抜け出して、係止が解除される。なお、舌状張出部33−1は切り欠き部14aの内側で、回路基板14と干渉することなく変位する。
【0027】
治具50が4箇所に上記のように取り付けられ、4箇所全部の係止が解除された状態でカバー30を上方向に引き上げることによって、カバー30が図6(C)に示すようにケース20から取り外される。
【0028】
カバー30は少しも痛まずに取り外され、RFモジュール10の特性検討や修理を完了した後には再度使用されて、ケース20に取り付けられる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1になるRFモジュールを分解して示す図である。
【図2】図1のRFモジュールの組み立てを説明する図である。
【図3】係止動作の過程及び係止構造部を拡大して示す図である。
【図4】係止解除用治具を示す斜視図である。
【図5】RFモジュールに治具を取り付けた状態を示す図である。
【図6】治具によって係止構造部の係止が解除されることを拡大して示す図である。
【図7】従来のRFモジュールを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 RFモジュール
11 筐体構造
13 RF回路基板ユニット
14 回路基板
14a 切り欠き部
20 ケース
21 底板部
22 枠部
23−1〜23−4 上向き側板部
24−1〜24−4 係止片
25−1〜25−4 係止解除用スリット
30 カバー
31 天板部
32−1〜32−5 下向き側板部
33−1〜33−4 舌状張出部
34−1〜34−4 係止穴
35−1 ガイド部
36−1 スリット
40 係止構造部
50 係止解除用治具
51 フック部
52 押し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部と該底板部の周囲の上向きの側板部とよりなるケースと、天板部と該天板部の縁の下向きの側板部とを有し、前記ケースに被されたカバーと、内部に収まっている回路基板ユニットとよりなる電子装置であって、
前記カバーの下向き側板部が、前記ケースの上向き側板部の内側に嵌合しており、
前記ケースの上向き側板部の内側に、前記下向き側板部と前記上向き側板部とが係止し合しあっている係止構造部を有し、
且つ、前記ケースは、前記上向き側板部のうち前記係止構造部より下側の部位に、係止解除用のスリットを有する構成としたことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記係止構造部は、
前記ケースの上向き側板部に、該上向き側板部の内側に切起こされており、且つ、先端が斜め下向きである係止片に、前記カバーの下向き側板部に形成してある係止穴が係止している構成であることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
底板部と該底板部の周囲の上向きの側板部とよりなるケースと、天板部と該天板部の縁の下向きの側板部とを有し、前記ケースに被されたカバーとよりなる筐体構造であって、
前記カバーは、その下向き側板部を前記ケースの上向き側板部の内側に嵌合しており、
前記ケースの上向き側板部の内側に、前記下向き側板部と前記上向き側板部とが係止し合しあっている係止構造部を有し、
且つ、前記ケースは、前記上向き側板部のうち前記係止構造部より下側の部位に、係止解除用のスリットを有する構成としたことを特徴とする筐体構造。
【請求項4】
請求項3に記載の筐体構造において、
前記係止構造部は、
前記ケースの上向き側板部に、該上向き側板部の内側に切起こされており、且つ、先端が斜め下向きである係止片に、前記カバーの下向き側板部に形成してある係止穴が係止している構成であることを特徴とする筐体構造。
【請求項5】
カバーの下向き側板部がケースの上向き側板部に内側に嵌合し、カバーの下向き側板部に形成してある係止穴が、ケースの上向き側板部に内側に切起こされて形成してある先端が斜め下向きである係止片に係止されており、
且つ、カバーの下向き側板部のうち前記係止片よりも下側の部位に、係止解除用のスリットを有することを特徴とする係止構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−85256(P2008−85256A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266330(P2006−266330)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】