説明

電子透かし埋め込み方法及びそのプログラム、電子透かし埋め込み情報検出方法及びそのプログラム

【課題】ドキュメント画像データに含まれる文字画像データに埋め込み情報を埋め込む処理、或いはその埋め込み情報を検出する処理を行うにあたり、文字画像データのフォントタイプの制限がなく、さらに、比較的低い演算負荷で実現できること。
【解決手段】特定の一部の領域である共通埋め込み領域のうちの少なくとも一部に有画像の画素が存在するという特性を有する特定文字に関する特定文字関連情報を記憶しておき、ドキュメント画像データに含まれる文字画像データ各々について、それが特定文字を表すものであるか否かを判別し(S104)、特定文字を表す文字画像データ各々に、その文字が占める画像領域の中の共通埋め込み領域A0の全画素を無画像とする補正を行うか否かにより、埋め込み情報を埋め込む(S105)。同様に、特定文字を表す文字画像データの共通埋め込み領域の全画素が無画像か否かを判別することにより、埋め込み情報を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に所定の埋め込み情報を埋め込む電子透かし埋め込み方法及びそのプログラム、複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に電子透かしによって埋め込まれた所定の埋め込み情報を検出する電子透かし埋め込み情報検出方法及びそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子透かし技術は、画像や音楽などのマルチメディアコンテンツのデータに対し、視聴覚的な影響をほとんど与えずに、所定の埋め込み情報を埋め込む処理、或いはそこに埋め込まれた埋め込み情報を検出する処理を行う技術である。
また、電子透かし技術は、ドキュメント画像データに含まれる複数の文字画像データに埋め込み情報を埋め込む処理、或いはその文字画像データに埋め込まれた埋め込み情報を検出処理にも適用される。
例えば、非特許文献1には、明朝体フォントで形成された文字画像データのセリフ部分や鱗部分の形状を、本来の形状と異なる形状に変形することにより、埋め込み情報を埋め込む技術が示されている。
【非特許文献1】辻合秀一他、「文字形状を利用したレタリングへの電子透かし法」、電子情報通信学会論文誌、社団法人電子情報通信学会、1999年11月25日、第J82−D2巻、第11号、p.2175−2177
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、非特許文献1に示される技術のように、ドキュメント画像データに含まれる文字画像データのフォントタイプに制限があると、汎用性に欠けるという問題点があった。
また、非特許文献1に示される技術では、各文字画像データにおいて、埋め込み情報が埋め込まれている部位の位置が予め定め特定されていないため、各種の画像処理によって埋め込み部位を特定する必要がある。このような電子透かし技術を用いる場合、埋め込み情報を検出する際に、埋め込み部位を検出するための画像処理演算の負荷が高いという問題点もあった。この問題は、処理に時間がかかる、或いは高性能の演算手段を設ける必要がある等、実用上の阻害要因となる。
従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドキュメント画像データに含まれる文字画像データに埋め込み情報を埋め込む処理、或いはその埋め込み情報を検出する処理を行うにあたり、文字画像データのフォントタイプの制限がなく、さらに、比較的低い演算負荷で実現できる電子透かし埋め込み方法及びそのプログラムや、電子透かし埋め込み情報検出方法及びそのプログラムを提供することにある。
なお、本明細書においては、"情報"と"データ"とは特に意味を区別することなく同義の用語として用いている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための第1の発明は、複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に所定の埋め込み情報を埋め込む処理を所定のプロセッサによって実行する電子透かし埋め込み方法、或いはその埋め込みの処理手順をプロセッサ(コンピュータといってもよい)に実行させるための電子透かし埋め込みプログラムとして構成されるものである。
ここで、本発明の前提条件として、所定の記憶手段に、1つの文字が占める画像領域の中の予め定められた特定の一部の領域のうちの少なくとも一部に有画像の画素が存在するという特性を有する特定の文字に関する特定文字関連情報が予め記憶されている。
そして、第1の発明は、次の(1)及び(2)に示す各手順を有する方法、或いは同各手順をプロセッサに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
(1)前記所定の記憶手段に記憶された前記特定文字関連情報に基づいて、前記ドキュメント画像情報に含まれる前記文字画像情報各々について、その文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であるか否かを判別する特定文字判別手順。
(2)前記特定文字判別手順により前記特定の文字を表すものであると判別された前記文字画像情報各々に対し、その文字が占める画像領域の中の前記予め定められた特定の一部の領域の全画素を無画像とする補正を行うか否かによって前記埋め込み情報を埋め込む情報埋め込み手順。
このような手順によれば、ドキュメント画像情報に含まれる文字画像情報のフォントタイプは特に制限されない。しかも、文字画像情報における埋め込み情報の埋め込み部位(位置)が、予め定められた特定の一部の領域に固定されているため、埋め込み情報を埋め込むべき部位を特定するために演算負荷の高い画像処理を行う必要がない。
【0005】
また、第1の発明において、前記特定文字関連情報が、1又は複数の前記特定の文字を表す情報であり、前記特定文字判別手順において、前記ドキュメント画像情報に含まれる前記文字画像情報が表す文字が、前記特定文字関連情報が表す1又は複数の特定文字と一致する場合に、その文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であると判別することが考えられる。
この場合、例えば、前記特定文字関連情報を、日本語のドキュメントにおいて頻出する文字("し"、"た"、"す"など)を表す情報(文字画像情報や文字コードなど)とすることにより、数少ない文字情報との比較処理(即ち、演算負荷の低い処理)によって多くの文字画像情報に埋め込み情報を埋め込むことができる。
その他、前記特定文字関連情報が、前記特定の文字ではない複数の文字を表す情報であり、前記特定文字判別手順において、前記ドキュメント画像情報に含まれる前記文字画像情報が表す文字が、前記特定文字関連情報が表す複数の文字のいずれにも一致しない場合に、その文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であると判別することも考えられる。
日本語の文字には、"こ"や"二"の文字のように上下方向中央における横方向全体に渡る1ライン部分(予め定められた特定の一部の領域の一例)が無画像である(プロットする画素がない)文字や、"い"や"朋"のように左右方向中央における縦方向全体に渡る1ライン部分(予め定められた特定の一部の領域の一例)が無画像である文字が比較的少ない。従って、このような文字を表す文字情報を前記特定文字関連情報として予め記憶しておけば、数少ない文字情報との比較処理(即ち、演算負荷の低い処理)によって多くの文字画像情報に埋め込み情報を埋め込むことができる。
ここで、前記予め定められた特定の一部の領域としては、文字が占める画像領域における予め定められた経路を通る1ライン分の領域を採用することが考えられる。なお、ここでいう1ライン分の領域とは、その幅は必ずしも1画素分の幅であることを意味するものではなく、例えば、1ラインの幅が複数画素分の幅である場合も含む。
【0006】
一方、以上に示した第1の発明に係る方法若しくはプログラムによって生成されたドキュメント画像情報から埋め込み情報を検出するための方法若しくはプログラムが、第2の発明である。
この第2の発明は、複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に電子透かしによって埋め込まれた所定の埋め込み情報を検出する処理を所定のプロセッサによって実行する電子透かし埋め込み情報検出方法、或いはその埋め込み情報の検出処理をプロセッサに実行させるための電子透かし埋め込み情報検出プログラムとして構成されるものである。
この第2の発明の前提条件も、前記第1の発明と同様である。
そして、第2の発明は、次の(1)〜(4)に示す各手順を有する方法、或いは同各手順をプロセッサに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
(1)前記ドキュメント画像情報から前記文字画像情報各々を抽出する文字画像抽出手順。
(2)前記所定の記憶手段に記憶された前記特定文字関連情報に基づいて、前記文字画像抽出手順により抽出された前記文字画像情報各々について、その文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であるか否かを判別する特定文字判別手順。
(3)前記特定文字判別手順により前記特定の文字を表すものであると判別された前記文字画像情報各々について、その文字が占める画像領域の中の前記予め定められた特定の一部の領域の全画素が無画像であるか否かを判別する無画像判別手順。
(4)前記無画像判別手順による判別結果の組合せに基づいて前記埋め込み情報を特定する埋め込み情報特定手順。
このような手順によれば、ドキュメント画像情報に含まれる文字画像情報のフォントタイプは特に制限されない。しかも、文字画像情報における埋め込み情報の埋め込み部位(位置)が、予め定められた特定の一部の領域に固定されているため、埋め込み情報が埋め込まれている部位を特定するために演算負荷の高い画像処理を行う必要がない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドキュメント画像情報に含まれる文字画像情報に所定の埋め込み情報を埋め込む処理、或いはその埋め込み情報を検出する処理を行うにあたり、文字画像情報のフォントタイプの制限がない。その結果、本発明は、各種のドキュメント画像情報に適用することができ、汎用性が高い。
また、本発明では、文字画像情報における埋め込み情報の埋め込み部位(位置)が、予め定められた特定の一部の領域に固定されている。その結果、埋め込み情報を埋め込むべき部位、或いは埋め込み情報が埋め込まれている部位を特定するために演算負荷の高い画像処理を行う必要がない。その結果、比較的演算能力の低い実用的な演算手段を用いても、高速な処理を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに、図1は本発明の実施形態に係る複写機Xの概略構成を表すブロック図、図2は複写機Xが実行する電子透かし埋め込み処理の手順を表すフローチャート、図3は複写機Xが実行する埋め込み情報検出処理の手順を表すフローチャート、図4は複写機Xが電子透かし埋め込み処理の対象とする特定文字の一例を表す図である。
本発明の実施形態に係る複写機Xは、複数の文字画像データを含むドキュメント画像データに所定の埋め込み情報を埋め込む電子透かし埋め込み処理を実行する機能と、その電子透かし埋め込み処理によってドキュメント画像データに埋め込まれた所定の埋め込み情報を検出する埋め込み情報検出処理を実行する機能とを備えている。これらの機能は、後述する画像処理部(プロセッサの一例)により実現される。
なお、ここでは、本発明を複写機Xに適用した例を示すが、本発明は、パーソナルコンピュータ等の計算機に電子透かし埋め込み処理や埋め込み情報検出処理を実行させるためのプログラムとして提供することも可能である。
【0009】
まず、図1に示すブロック図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る複写機Xの概略構成について説明する。
複写機Xは、図1に示すように、操作部11、表示部12、スキャナ部13、印字部14、データ記憶部15、CPU16、ROM17、画像処理部18等を備えている。なお、複写機Xは、図2に示す構成要素以外にも、一般的な複写機が備える構成要素も備えているが、ここでは記載を省略している。
操作部11は、ユーザにより操作されるシートキーや操作ボタン等により構成され、ユーザによる操作入力を受け付ける入力インターフェースである。
表示部12は、液晶表示パネルやLEDランプ等により構成され、ユーザに提供する情報を表示するものである。
スキャナ部13は、例えば、密着型撮像素子(CIS:Contact Image Sensor)等のイメージセンサを備え、このイメージセンサにより原稿から画像を読み取るものである。
印字部14は、スキャナ部13で読み取られた原稿画像データに基づく画像を、所定の記録紙に出力する(画像形成する)ものである。例えば、感熱記録方式によって感熱記録紙に画像形成を行うものや、インクジェット方式或いは電子写真方式によっていわゆる普通紙に画像形成を行うもの等である。
データ記憶部15は、例えば、フラッシュメモリやEEPROM等により構成された不揮発性メモリであり、画像データ及びそれらに関連する各種データ、並びに、ユーザによって操作部11を通じて入力される各種設定情報等を記憶するものである。
【0010】
また、データ記憶部15には、前記電子透かし埋め込み処理及び前記埋め込み情報検出処理を実行する際に参照される特定文字関連情報が予め記憶されている。
この特定文字関連情報には、1つの文字が占める画像領域の中の予め定められた特定の一部の領域のうちの少なくとも一部に有画像の画素(プロットされる画素)が存在するという特性を有する1又は複数の特定の文字(以下、特定文字という)を表す特定文字情報と、その特定文字各々に共通する前記特定の一部の領域を表す情報とが含まれる。この特定の一部の領域は、各特定文字を表す文字画像データにおいて共通して埋め込み情報が埋め込まれる領域であるため、以下、共通埋め込み領域という。
ここでは、前記特定の文字が、日本語のドキュメントにおいて頻出する文字である"し"、"た"、"す"であるものとし、前記特定文字情報は、それら特定文字各々を表す文字画像データであるものとする。
また、前記共通埋め込み領域を表す情報は、1つの特定文字が占める画像領域における縦方向中央の位置で、その画像領域における横方向全体に渡る1ライン部分(1ラインの幅は2画素分)であることを表す情報であるものとする。
ここでは、1つの文字(特定文字)が占める画像領域とは、例えば、1つの文字の外縁に接する最小の矩形領域等である。
図4は、複写機Xが電子透かし埋め込み処理の対象とする特定文字の一例を表す図である。
図4は、特定文字"す"を例にして、その特定文字が占める画像領域A0と、前記共通埋め込み領域A1とを破線により示している。図4に示すように、文字を拡大した状態では、共通埋め込み領域A1を無画像(白抜き)にするとそれが目立つように見える。しかしながら、これを実寸大にすれば、共通埋め込み領域A1が無画像であることは、スキャナ部13によって検出することができるが、人の目で見た場合はほとんど目立たない。
なお、ここでいう特定文字という用語は、必ずしもある決まった文字を意味する用語ではなく、前記特定の一部の領域に必ず1以上の有画像の画素が存在するという特定の性質を有する文字を意味する用語である。
【0011】
CPU16は、当該複写機X全体の各種制御及び演算を行う演算手段である。
ROM17は、CPU16により実行される制御プログラムや演算プログラム、CPU16がそれらプログラムを実行する際に参照するデータ等が記憶されるメモリである。
画像処理部18は、例えば、DSP(Digital Signal Processors)等により構成され、ROM17に記憶されたプログラムを実行することにより、データ記憶部15に記憶させる画像データの圧縮処理やその画像データを読み出す際のデータ伸長処理(復元処理)、データ形式変換等の各種画像処理を行うものである。
さらに、画像処理部18は、ROM17に記憶されたプログラムを実行することにより、前述した電子透かし埋め込み処理、及び埋め込み情報検出処理も実行する。
【0012】
次に、図2に示すフローチャートを参照しつつ、複写機Xが実行する電子透かし埋め込み処理の手順について説明する。
図2に示す処理は、操作部11に対して所定の電子透かし埋め込み処理開始操作がなされたことをCPU16が検知した際に開始される。
また、図2に示す処理の対象となるドキュメント画像データ(複数の文字画像データが含まれる画像データ)は、予め、スキャナ部13により文書原稿等から読み取られ、データ記憶部15に記憶されているものとする。
同様に、図2に示す処理においてドキュメント画像データに埋め込まれる埋め込み情報は、予め、操作部11に対する所定の情報入力操作によって入力され、データ記憶部15に記憶されているものとする。
また、以下に示す画像処理部18が実行する処理は、画像処理部18を構成するDSP(プロセッサの一例)がROM17に記憶されたプログラム(電子透かし埋め込みプログラム)を実行することによって実現される。なお、以下に示すS101、S102、…は、処理手順(ステップ)の識別符号である。
【0013】
<ステップS101、S102>
まず、画像処理部18は、所定の文字カウンタ変数iやビットカウンタ変数mを初期値(=0)に設定する等の各種の初期設定処理を行う(S101)。ここで、文字カウンタ変数iは、ドキュメント画像データに含まれる文字画像データの番号を表し、ビットカウンタ変数mは、埋め込み情報を表すビット列のビット番号(何ビット目か)を表す。
次に、画像処理部18は、データ記憶部15からドキュメント画像データを読み出して画像処理部18が備える画像メモリに展開しながら、ドキュメント画像データに含まれる複数の文字画像データ(フォント画像のデータ)各々を抽出する処理を実行する(S102)。これにより、ドキュメント画像データにおける文字画像データ各々が占める位置(領域)が特定され、特定結果がデータ記憶部15に記録される。また、画像処理部18は、文字画像データの配列方向(縦書き、横書き)を判別し、その配列方向に応じて各文字画像データに対する番号(0、1、2、…)の割り付けを行う。その割り付け結果も、データ記憶部15に記録される。なお、文字画像データの抽出処理は、OCR装置やOCRソフト(プログラム)により実行される周知の処理であるので、ここでは説明を省略する。
【0014】
<ステップS103、S104>
次に、画像処理部18は、ステップS102で抽出した文字画像データを1つずつ選択し(S103)、その選択した文字画像データ(以下、選択文字画像データという)が、前記特定文字を表すものであるか否かを判別する(S104、特定文字判別手順の一例)。ここで、画像処理部18は、データ記憶部15に予め記憶されている前記特定文字関連情報を参照し、選択文字画像データが表す文字が、その特定文字関連情報により特定される特定文字各々のいずれかと一致する場合に、選択文字画像データが表す文字が特定文字であると判別し、そうでない場合に特定文字ではないと判別する。
本実施形態では、画像処理部18は、特定文字関連情報に含まれる特定文字を表す文字画像データ("し"、"た"、"す"各々の画像データ)各々と、前記選択文字画像データとのパターンマッチングを行い、両画像データが所定の誤差範囲内で近似している場合に、選択文字画像データが表す文字が、特定文字関連情報により特定される特定文字と一致していると判別する。
その他、特定文字関連情報に特定文字を表す文字コードを含めておき、画像処理部18が、周知の文字認識処理によって選択文字画像データが表す文字(即ち、文字コード)を認識し、その文字認識により得られた文字(文字コード)と、特定文字関連情報に含まれる特定文字の文字コートとの比較することにより、選択文字画像データが表す文字が、特定文字関連情報により特定される特定文字と一致しているか否かを判別することも考えられる。
【0015】
<ステップS108〜S110>
ステップS104において、選択文字画像データが表す文字が特定文字ではないと判別した場合、画像処理部18は、ステップS104の処理による判別が未だ行われていない文字画像データが残っているか否か(i+1番目の文字画像データが存在するか否か)を判別する(S108)。ここで、残っていると判別した場合は、画像処理部18は、文字カウンタ変数iをカウントアップ(+1)(S109)した上で、処理をステップS103へ戻す。これにより、前述したステップS103以降の処理が繰り返される。
一方、ステップS108において文字画像データが残っていないと判別した場合には、画像処理部18がCPU16にその旨通知し、CPU16が表示部12を通じたエラーメッセージの通知を行い(S110)、当該電子透かし埋め込み処理を終了させる。これにより、複写機Xは、ドキュメント画像データに含まれる特定文字を表す文字画像データの数が、埋め込み情報全てを埋め込める数に満たなかったことを利用者に通知する。
【0016】
<ステップS105〜S107>
また、ステップS104において、選択文字画像データが表す文字が特定文字であると判別した場合、画像処理部18は、予めデータ記憶部15に記憶された埋め込み情報を表すビット列のmビット目のビット情報(1ビット分の情報)を、その選択文字画像データ(i番目の文字画像データ)における前記共通埋め込み領域A1に埋め込む(S105)。
例えば、画像処理部18は、埋め込み情報を表すビット列のmビット目が"1"である場合、図4に示すように、i番目の文字画像データ(特定文字の画像データ)における前記共通埋め込み領域A0(特定の一部の領域の一例)の全画素が無画像の画素(プロットしない画素)となるよう補正する。一方、画像処理部18は、埋め込み情報を表すビット列のmビット目が"0"である場合、i番目の文字画像データの補正を行わない。これにより、その文字画像データの共通埋め込み領域A0におけるいずれか1以上の画素は、有画像の画素(プロットされた画素)のままとなる。
さらに、画像処理部18は、ビットカウンタ変数mをカウントアップ(+1)(S106)するとともに、埋め込み情報全てのビットについて埋め込みが終了したか否かを判別する(S107)。ここで、未だ終了していないと判別した場合は、画像処理部18は、処理を前述したステップS108へ移行させる一方、埋め込み情報全ての埋め込みが終了したと判別した場合には、当該電子透かし埋め込み処理を終了させる。なお、埋め込み情報には、予め定められた終了コードも含まれるものとする。
【0017】
以上に示したように、画像処理部18は、ステップS104で前記特定文字を表すものであると判別された文字画像データ各々に対し、その文字が占める画像領域A0の中の予め定められた特定の一部の領域である共通埋め込み領域A0の全画素を無画像とする補正を行うか否かにより、埋め込み情報を埋め込む(S105、情報埋め込み手順の一例)。
このような電子透かし埋め込み処理は、ドキュメント画像データに含まれる文字画像データのフォントタイプは特に制限されない。しかも、文字画像データにおける埋め込み情報の埋め込み部位(位置)が、予め定められた共通埋め込み領域A0に固定されているため、埋め込み情報を埋め込むべき部位を特定するために演算負荷の高い画像処理を行う必要がない。
ところで、図2に示す処理では、既に存在するドキュメント画像データに対して埋め込み情報を埋め込むため、画像処理部18は、ステップS102でドキュメント画像データから文字画像データ各々を抽出する処理を行っている。
しかしながら、テキストデータに基づいてドキュメント画像データを生成する処理の過程で埋め込み情報を埋め込む場合には、文字画像データの抽出処理を行う必要はない。この場合、テキストデータに含まれる複数の文字コード各々によってそれが特定文字を表すものであるか否かを判別し、特定文字であると判別した文字コードから文字画像データを生成する段階で、通常生成される文字画像データを補正することによって埋め込み情報を埋め込めばよい。
【0018】
次に、図3に示すフローチャートを参照しつつ、複写機Xが実行する埋め込み情報検出処理の手順について説明する。
図3に示す処理は、操作部11に対して所定の埋め込み情報検出処理開始操作がなされたことをCPU16が検知した際に開始される。
また、図3に示す処理の対象となるドキュメント画像データ(埋め込み情報が埋め込まれた複数の文字画像データが含まれる画像データ)は、予め、スキャナ部13により文書原稿等から読み取られ、データ記憶部15に記憶されているものとする。
【0019】
<ステップS201、S202>
まず、画像処理部18は、前述したステップS101と同様の初期設定処理を行う(S201)。
さらに、画像処理部18は、前述したステップS201と同様に、データ記憶部15に記憶されたドキュメント画像データを読み出して画像メモリに展開しながら、そのドキュメント画像データに含まれる複数の文字画像データ各々を抽出する処理を実行する(S202、文字画像抽出手順の一例)。
<ステップS203、S204>
次に、画像処理部18は、前述したステップS102と同様に、ステップS202で抽出した文字画像データを1つずつ選択し(S203)、その選択した文字画像データ(前記選択文字画像データ)が、前記特定文字を表すものであるか否かを判別する(S204、特定文字判別手順の一例)。その判別処理の内容は、前述したステップS104の処理の内容と同様である。
【0020】
<ステップS208〜S210>
ステップS204において、選択文字画像データが表す文字が特定文字ではないと判別した場合、画像処理部18は、前述したステップS108と同様に、ステップS204の処理による判別が未だ行われていない文字画像データが残っているか否かを判別する(S208)。ここで、残っていると判別した場合は、画像処理部18は、文字カウンタ変数iをカウントアップ(+1)(S209)した上で、処理をステップS203へ戻す。
一方、ステップS208において文字画像データが残っていないと判別した場合には、画像処理部18がCPU16にその旨通知し、CPU16が表示部12を通じたエラーメッセージの通知を行い(S210)、当該埋め込み情報検出処理を終了させる。これにより、複写機Xは、ドキュメント画像データに埋め込み情報が正常に埋め込まれていない(例えば、終了コードが存在しない、或いは特定文字が存在しない)ことを利用者に通知する。
【0021】
<ステップS205〜S207>
また、ステップS204において、選択文字画像データが表す文字が特定文字であると判別した場合、画像処理部18は、その選択文字画像データ(特定文字を表すi番目の文字画像データ)に埋め込まれている1ビット分の埋め込み情報(埋め込み情報のmビット目)を検出する(S205)。具体的には、画像処理部18は、その選択文字画像データ(特定文字を表すi番目の文字画像データ)が占める画像領域A0の中の前記共通埋め込み領域A1の全画素が、無画像であるか否かを判別することにより、mビット目の埋め込み情報を検出する。即ち、前記共通埋め込み領域A1の全画素が無画像であれば1ビット分の埋め込み情報が"1"、そうでなければ"0"であるとする。なお、画像処理部18は、検出したビット情報を、それまでに検出したビット情報と組み合わせたビット列として主記憶若しくはデータ記憶部15に記憶させる。このビット列は、埋め込み情報を表すビット列或いはその一部である。
さらに、画像処理部18は、ビットカウンタ変数mをカウントアップ(+1)(S206)するとともに、これまでに検出された最後尾の所定ビット分の埋め込み情報が前記終了コードであるか否かを判別する(S207)。ここで、終了コードではないと判別した場合は、画像処理部18は、処理を前述したステップS208へ移行させる一方、終了コードであると判別した場合には、処理をステップS211へ移行させる。
【0022】
<ステップS211>
ステップS211では、画像処理部18は、ステップS205で検出したビット情報を組み合わせたビット列(即ち、前記共通埋め込み領域の全画素が無画像か否かの判別結果の組合せ)に基づいて、ドキュメント画像データに埋め込まれている埋め込み情報を特定し(S211、埋め込み情報特定手順の一例)、当該埋め込み情報検出処理を終了させる。
このような埋め込み情報検出処理は、ドキュメント画像データに含まれる文字画像データのフォントタイプは特に制限されない。しかも、文字画像データにおける埋め込み情報の埋め込み部位(位置)が、予め定められた共通埋め込み領域A0に固定されているため、埋め込み情報が埋め込まれている部位を特定するために演算負荷の高い画像処理を行う必要がない。
なお、ステップ211のエラー通知が行われる場合(終了コードが検出されなかった場合)にも、画像処理部18が、それまでに検出されたビット情報の組合せ(ビット列)に基づいて、ステップS211の処理を実行してもよい。
【0023】
ところで、図3に図示していないが、画像処理部は、ステップS211で特定した埋め込み情報を、予め設定された出力方法に従って出力する。例えば、ドキュメント画像データとは別個にデータ記憶部15に記憶させることや、ドキュメント画像データを、その埋め込み情報を表す画像や予め定められたマーク(例えば、画像全体に渡る×マークなど)の画像が目立って表れるように補正すること等が考えられる。後者によれば、当該複写機Xにより、埋め込み情報が埋め込まれたドキュメント画像が記録された原稿についてコピー処理が行われた場合、元のドキュメント画像に、埋め込み情報を表す画像が目立つように重畳された画像が記録紙に出力される。
その他、ステップS211で特定された埋め込み情報が、予め定められたコピー禁止を表す情報に合致する場合に、コピー処理における記録紙への画像形成を行わないよう制御すること等も考えられる。
【0024】
前述した実施形態の他、データ記憶部15に予め記憶させる前記特定文字関連情報は、前記特定の文字ではない複数の文字を表す情報とすることも考えられる。この場合、ステップS104又はS204における特定文字を表わす文字画像データであるか否かの判別手順(特定文字判別手順)において、画像処理部18は、ドキュメント画像データに含まれる文字画像画像データが表す文字が、前記特定文字関連情報が表す複数の文字のいずれにも一致しない場合に、その文字画像データ(前記選択文字画像データ)が表す文字が特定の文字であると判別すればよい。
前述したように、日本語の文字には、"こ"や"二"の文字のように上下方向中央における横方向全体に渡る1ライン部分(予め定められた特定の一部の領域の一例)が無画像である(プロットする画素がない)文字や、"い"や"朋"のように左右方向中央における縦方向全体に渡る1ライン部分(予め定められた特定の一部の領域の一例)が無画像である文字が比較的少ない。従って、このような文字を表す文字情報(文字画像データや文字コード)を前記特定文字関連情報として予め記憶しておけば、数少ない文字情報との比較処理(即ち、演算負荷の低い処理)によって多くの文字画像情報に埋め込み情報を埋め込むことができる。
【0025】
また、前記共通埋め込み領域A1(予め定められた特定の一部の領域)としては、横方向や縦方向に限らず、文字が占める画像領域における予め定められた経路を通る1ライン分の領域を採用することが考えられる。この場合、その1ライン分の領域の幅を、1〜3画素分程度の幅とすれば、人の目で見た場合にほとんど目立たないので好適である。
その他、文字画像領域A0における所定位置の数画素分の領域を前記共通埋め込み領域A1とすることも考えられる。この場合、埋め込み情報の埋め込み対象となる特定文字の種類が限られるが、埋め込み情報を埋め込むことによる文字画像データの劣化をより抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、電子透かし埋め込み処理を行う画像処理装置や電子透かし埋め込み情報の検出処理を行う画像処理装置などへの利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る複写機Xの概略構成を表すブロック図。
【図2】複写機Xが実行する電子透かし埋め込み処理の手順を表すフローチャート。
【図3】複写機Xが実行する埋め込み情報検出処理の手順を表すフローチャート。
【図4】複写機Xが電子透かし埋め込み処理の対象とする特定文字の一例を表す図。
【符号の説明】
【0028】
11…操作部
12…表示部
13…スキャナ部
14…印字部
15…データ記憶部
16…CPU
17…ROM
18…画像処理部
19…ネットワーク制御部
20…電話回線制御部
S101、S102、〜…処理手順(ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に所定の埋め込み情報を埋め込む処理を所定のプロセッサによって実行する電子透かし埋め込み方法であって、
所定の記憶手段に、1つの文字が占める画像領域の中の予め定められた特定の一部の領域のうちの少なくとも一部に有画像の画素が存在するという特性を有する特定の文字に関する特定文字関連情報が予め記憶されており、
前記所定の記憶手段に記憶された前記特定文字関連情報に基づいて、前記ドキュメント画像情報に含まれる前記文字画像情報各々について、該文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であるか否かを判別する特定文字判別手順と、
前記特定文字判別手順により前記特定の文字を表すものであると判別された前記文字画像情報各々に対し、その文字が占める画像領域の中の前記予め定められた特定の一部の領域の全画素を無画像とする補正を行うか否かによって前記埋め込み情報を埋め込む情報埋め込み手順と、
を有してなることを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項2】
前記特定文字関連情報が、1又は複数の前記特定の文字を表す情報であり、
前記特定文字判別手順において、前記ドキュメント画像情報に含まれる前記文字画像情報が表す文字が、前記特定文字関連情報が表す1又は複数の特定文字と一致する場合に、その文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であると判別してなる請求項1に記載の電子透かし埋め込み方法。
【請求項3】
前記特定文字関連情報が、前記特定の文字ではない複数の文字を表す情報であり、
前記特定文字判別手順において、前記ドキュメント画像情報に含まれる前記文字画像情報が表す文字が、前記特定文字関連情報が表す複数の文字のいずれにも一致しない場合に、その文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であると判別してなる請求項1に記載の電子透かし埋め込み方法。
【請求項4】
前記予め定められた特定の一部の領域が、文字が占める画像領域における予め定められた経路を通る1ライン分の領域である請求項1〜3のいずれかに記載の電子透かし埋め込み方法。
【請求項5】
複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に電子透かしによって埋め込まれた所定の埋め込み情報を検出する処理を所定のプロセッサによって実行する電子透かし埋め込み情報検出方法であって、
所定の記憶手段に、1つの文字が占める画像領域の中の予め定められた特定の一部の領域のうちの少なくとも一部に有画像の画素が存在するという特性を有する特定の文字に関する特定文字関連情報が予め記憶されており、
前記ドキュメント画像情報から前記文字画像情報各々を抽出する文字画像抽出手順と、
前記所定の記憶手段に記憶された前記特定文字関連情報に基づいて、前記文字画像抽出手順により抽出された前記文字画像情報各々について、該文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であるか否かを判別する特定文字判別手順と、
前記特定文字判別手順により前記特定の文字を表すものであると判別された前記文字画像情報各々について、その文字が占める画像領域の中の前記予め定められた特定の一部の領域の全画素が無画像であるか否かを判別する無画像判別手順と、
前記無画像判別手順による判別結果の組合せに基づいて前記埋め込み情報を特定する埋め込み情報特定手順と、
を有してなることを特徴とする電子透かし埋め込み情報検出方法。
【請求項6】
複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に所定の埋め込み情報を埋め込む処理手順をプロセッサに実行させるための電子透かし埋め込みプログラムであって、
所定の記憶手段に、1つの文字が占める画像領域の中の予め定められた特定の一部の領域のうちの少なくとも一部に有画像の画素が存在するという特性を有する特定の文字に関する特定文字関連情報が予め記憶されており、
前記所定の記憶手段に記憶された前記特定文字関連情報に基づいて、前記ドキュメント画像情報に含まれる前記文字画像情報各々について、該文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であるか否かを判別する特定文字判別手順と、
前記特定文字判別手順により前記特定の文字を表すものであると判別された前記文字画像情報各々に対し、その文字が占める画像領域の中の前記予め定められた特定の一部の領域の全画素を無画像とする補正を行うか否かによって前記埋め込み情報を埋め込む情報埋め込み手順と、
をプロセッサに実行させるための電子透かし埋め込みプログラム。
【請求項7】
複数の文字画像情報を含むドキュメント画像情報に電子透かしによって埋め込まれた所定の埋め込み情報を検出する処理手順をプロセッサに実行させるための電子透かし埋め込み情報検出プログラムであって、
所定の記憶手段に、1つの文字が占める画像領域の中の予め定められた特定の一部の領域のうちの少なくとも一部に有画像の画素が存在するという特性を有する特定の文字に関する特定文字関連情報が予め記憶されており、
前記ドキュメント画像情報から前記文字画像情報各々を抽出する文字画像抽出手順と、
前記所定の記憶手段に記憶された前記特定文字関連情報に基づいて、前記文字画像抽出手順により抽出された前記文字画像情報各々について、該文字画像情報が表す文字が前記特定の文字であるか否かを判別する特定文字判別手順と、
前記特定文字判別手順により前記特定の文字を表すものであると判別された前記文字画像情報各々について、その文字が占める画像領域の中の前記予め定められた特定の一部の領域の全画素が無画像であるか否かを判別する無画像判別手順と、
前記無画像判別手順による判別結果の組合せに基づいて前記埋め込み情報を特定する埋め込み情報特定手順と、
をプロセッサに実行させるための電子透かし埋め込み情報検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−235651(P2007−235651A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55749(P2006−55749)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】