説明

電子部品とその実装方法

【課題】コストが掛からず、確実に電子部品のリードが絶縁され、追加工作業が不要で作業効率のよい電子部品とその実装方法を提供する。
【解決手段】リード18により基板20に取り付けられ、ハンダ付け時の熱により溶融可能な絶縁性のコーティング材から成る絶縁被膜22を備える。絶縁皮膜22は、少なくとも、リード18が取り付けられる基板20から露出する部分のリード18全体を覆う。縁被膜22は、ポリウレタン、ポリアミド、エナメル、ポリウレタンナイロン、またはエナメルナイロンから成る。絶縁皮膜22が施された状態で基板20にリード18を挿着し、ハンダ付けにより、絶縁皮膜22がリード18のハンダ付け部から除去されて電気的接続が成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の導電性端子であるリードにより回路基板に取り付けられる電子部品とその実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の回路基板に実装される電子部品の中には、パワートランジスタ等のように、リードが回路基板の取付穴に差し込まれてハンダ付けされているものがある。このような電子部品は、部品の発熱を吸収し動作を安定させるために、ファンにより外気を吹き付けて強制空冷されている。この場合、外部から導入された空気に含まれた塵埃などが、基板やその表面に取り付けられた電子部品に付着し、リード間に堆積することがある。そして、その塵埃などが湿気を帯びたりすると、導電部であるリード間で短絡を起こし故障の原因となる恐れがあった。そのため、リード間の塵埃の付着を防止する対策として、様々な方法が知られている。
【0003】
例えば、図3に示すように、電子部品50と基板52間のリード54の露出部分に絶縁チューブ56を挿着したり、図4に示すように、電子部品50と基板52の間に露出したリード54全体を覆う状態に、シリコンゴム等の絶縁性樹脂58を塗布したりしていた。その他、図5に示すように、電子部品50全体を絶縁キャップ60で覆ったり、図6に示すように、絶縁性樹脂により成形された絶縁材62を、基板52から露出したリード54部分に装着し、リード54同士を絶縁したりしていた。
【0004】
また、特許文献1では、高周波デバイス表面と各リードの接続部を、絶縁性樹脂で覆って、気密状態に封止する方法が開示されている。さらに、特許文献2では、基板全体を包み込むようにカバー部材を被着し、基板のベース部材との合わせ部分へ封止材を充填して、気密に封止する方法が提案されている。そのほか、特許文献3では、基板全体にコーティング処理を施す際に、基板の接続端子や接点をコーティング剤から保護する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−41420号公報
【特許文献2】特開平11−243283号公報
【特許文献3】特開昭63−24574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3に示すような電子部品50のリード54に絶縁チューブ56を挿着する方法では、高い精度でチューブ長と基板52から露出する部分のリード長を揃えないと、基板52または電子部品50の本体50aと絶縁チューブ56が密着せず、僅かな隙間tが生じるものであった。そして、侵入した異物や塵埃などがこの隙間tに付着して湿気を帯びると、リード54間が短絡する可能性があった。また、図4に示すようなリード54全体を覆うようにシリコンゴム等の絶縁性樹脂58を塗布する方法は、近年、基板52の実装密度が高くなっているため、作業性がよくないものであった。しかもこの場合、部品交換の必要性が生じると、塗布した樹脂を剥離する手間が増えて、作業工数が掛かるものであった。
【0006】
その他、図5に示す電子部品50全体に絶縁キャップ60を被着する方法では、絶縁キャップ60の長さに高い精度が必要であり、精度が低いと基板52との間に隙間tが生じてしまう可能性があった。また、発熱性の高い電子部品50では、放熱板64を装着する場合があるが、電子部品50に形成された固定穴が絶縁キャップ60により隠蔽され使用できないため、放熱板64に固定するための専用の部品が必要になり、コストが掛かる上、取り付ける手間も掛かるものであった。また、図6に示すように、樹脂から成形された絶縁材62を、基板52から露出したリード54に装着させる方法では、露出したリード54長に合った精度の高い絶縁材62が必要になり、精度が低いと基板52または本体50aとの間に、隙間tが生じる可能性があった。また、リード54の成形にも制約が生じるものであった。
【0007】
その他、これら従来の方法では、組み立て作業時の追加工作業が増加するため、効率が良くなかった。また、図3、図5、図6に示すように、絶縁チューブ56や絶縁材62を装着したり、絶縁キャップ60を被着したりする場合では、露出したリード54長や電子部品50の大きさに応じたものを、あらかじめ用意しておく必要があった。
【0008】
一方、特許文献1では、高周波デバイスの表面を、接続されたリード端部と共に樹脂を滴下して気密に封止するものであり、外気に露出した状態で電子部品を基板に取り付けた際の端子間の絶縁については開示されていない。また、特許文献2では、基板全体を覆うようにカバー部材をベース材に被着するため、コストが掛かるほか、基板を収納する大きさが必要であり、スペース効率が良くないものである。その他、特許文献3では、基板全体にコーティング処理を施した際に、基板の接続端子や接点をコーティング剤から保護する方法について開示されているが、基板全体をコーティングすると、コストが掛かる上、追加工作業が増えるため、作業効率も良くないものであった。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題に鑑みて成されたもので、コストが掛からず、確実に電子部品のリードが絶縁され、追加工作業が不要で作業効率のよい電子部品とその実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、リードにより基板に取り付けられる電子部品であって、ハンダ付け時の熱により溶融可能な絶縁性のコーティング材により、少なくとも、前記リードが取り付けられる基板から露出する部分のリード全体を覆った絶縁被膜を形成した電子部品である。
【0011】
前記絶縁被膜は、ポリウレタン、ポリアミド、エナメル、ポリウレタンナイロン、またはエナメルナイロンから成るものである。
【0012】
またこの発明は、リードを有した電子部品を基板に取り付ける電子部品の実装方法であって、ハンダ付け時の熱により溶融可能な絶縁性のコーティング材により、前記リード全体を被覆して絶縁被膜を形成し、この後、前記基板に前記リードを前記絶縁皮膜が施された状態で挿着し、ハンダ付けにより前記絶縁皮膜が前記リードのハンダ付け部から除去されて、前記リードと回路の電気的接続が成される電子部品の実装方法である。
【0013】
前記絶縁被膜は、前記電子部品を前記コーティング材の液中に浸漬し、乾燥させて形成するものである。また、前記絶縁被膜は、前記電子部品のリードを所定形状にフォーミング後に、前記コーティング材を塗布すると良い。
【発明の効果】
【0014】
この発明の電子部品とその実装方法によれば、回路基板に実装される電子部品の、少なくとも基板から露出したリード部分が絶縁皮膜でコーティングされているため、絶縁を確保するための構成が簡単であり、そのためのコストが低減される。これにより、塵埃や導電性異物によるリード間の短絡を確実に防止することができる。しかも、ハンダ付け時の熱によりコーティング材が溶融し、電気的接続は確実に成される。また、ハンダ付けしないリード表面は確実に絶縁され、追加工作業が不要なため作業効率もよいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の電子部品とその実装方法の一実施形態について、図1、図2を基にして説明する。この実施形態の電子部品10は、図1に示すように、例えば、略直方体に本体12が形成され、一方の端部に、矩形の留め代14が設けられ、螺子止め等のための貫通穴16が形成されている。反対側の対称位置には、導電体で形成された3本のリード18が本体12から突出して等間隔に設けられ、基板20に挿着可能に形成されている。リード18の表面全体は、絶縁樹脂から成るコーティング材により絶縁被膜22が形成されて完全に覆われている。
【0016】
次に、この実施形態の電子部品10のリード18へ、絶縁被膜22を施す手順について説明する。まず、図2(a)に示すように、図示しない搬送装置に把持された電子部品10を、絶縁被膜22を形成するコーティング材の溶液21を満たした容器に浸す。この際、リード18全体が確実に浸るように、本体12の一部が絶縁被膜の溶液21に触れるまで浸すと良い。次に、図示しない搬送装置により、溶液21から引き上げられた電子部品10を、図2(b)に示すように、ドライヤなどにより送風してリード18にコーティングされた絶縁被膜22を乾燥させ、図2(c)に示すように、リード18に絶縁被膜22が施された電子部品10が完成する。
【0017】
なお、リード18のフォーミングは、絶縁被膜22を施す前に任意の形に金型等で成形しても良い。これにより、絶縁皮膜22を形成後に折り曲げ加工等を行うことによる絶縁被膜22の剥離が生ぜず好ましい。
【0018】
次に、この実施形態の電子部品10の実装方法について説明する。まず、図2(c)に示すように、リード18に絶縁被膜22が施された電子部品10を、図2(d)に示すように、基板20に設けられたリード取付穴23に各リード18を適宜な位置まで嵌挿させる。そして、基板20裏側へ突き抜けたリード18端の側周と取付穴付近をハンダ付けし、電気的接続と機械的固定を行う。このときの電気的接続は、溶けたハンダ25の熱により、リード18表面の絶縁被膜22が溶融して、リード18の金属表面にハンダ25が接続して固化し、ハンダ25を介して基板20の電極ランドへの取付けが完了する。
【0019】
この実施形態の電子部品10とその実装方法によれば、基板20から露出する電子部品10のリード18部分へ絶縁樹脂から成るコーティング材が被覆され絶縁被膜22が形成されるため、別途部品などの取付が不要でコストが掛からない。しかも、ハンダ付け時の熱により溶融する絶縁被膜22により、絶縁被膜22はハンダ付け部分で確実に溶融して剥がれ、電気的接続の妨げとはならず、しかも、ハンダ付けしない部分のリード18表面は、確実に絶縁されて追加工作業が不要で、作業効率もよいものである。特にファンにより強制的に冷却している電子機器に用いられている電子部品において、リード間の塵埃等の堆積による短絡の防止に効果的である。
【0020】
そのほか、電子部品10のリード18へ絶縁被膜22を施す場合、電子部品10全体をコーティング材の溶液21の容器に浸して、絶縁皮膜22を形成してもよい。この場合、リード18のみを塗り分ける手間が省けて、効率がよいものである。また、リード10への絶縁被膜22のコーティングは、吹き付けたり、溶液に浸したりすることで可能なため、リード18の形状は、絶縁被膜22を施す前に任意の形に金型等で成形可能である。
【0021】
なお、この発明の電子部品とその実装方法は上記実施形態に限定されるものではなく、リードの表面に絶縁被膜が形成されていればよいため、電子部品の形状及び種類等は適宜設定可能なものである。さらに、各部材の形状や素材など適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態の電子部品を示す概略斜視図である。
【図2】この実施形態の電子部品のリードへのコーティング手順を示す工程図である。
【図3】従来の電子部品のリード間の絶縁にチューブを使用した場合を示す概略斜視図である。
【図4】従来の電子部品のリード間の絶縁に絶縁樹脂を充填した場合を示す概略斜視図である。
【図5】従来の電子部品のリード間の絶縁に絶縁キャップを使用した場合を示す概略斜視図である。
【図6】従来の電子部品のリード間の絶縁に樹脂成型品を使用した場合を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
10 電子部品
12 本体
18 リード
20 基板
22 絶縁被膜
23 リード取付穴
25 ハンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードにより基板に取り付けられる電子部品において、ハンダ付け時の熱により溶融可能な絶縁性のコーティング材により、少なくとも、前記リードが取り付けられる基板から露出する部分のリード全体を覆った絶縁被膜を形成したことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記絶縁被膜は、ポリウレタン、ポリアミド、エナメル、ポリウレタンナイロン、またはエナメルナイロンから成る請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
リードを有した電子部品を基板に取り付ける電子部品の実装方法において、ハンダ付け時の熱により溶融可能な絶縁性のコーティング材により、前記リード全体を被覆して絶縁被膜を形成し、この後、前記基板に前記リードを前記絶縁皮膜が施された状態で挿着し、ハンダ付けにより前記絶縁皮膜が前記リードのハンダ付け部から除去されて、前記リードと回路の電気的接続が成されることを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項4】
前記絶縁被膜は、前記電子部品を前記コーティング材の液中に浸漬し、乾燥させて形成する請求項3記載の電子部品の実装方法。
【請求項5】
前記絶縁被膜は、前記電子部品のリードを所定形状にフォーミング後に、前記コーティング材を塗布する請求項3または4記載の電子部品の実装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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