説明

電子部品のシールド構造、およびそれを用いた電子機器

【課題】電子機器の小型化・薄型化を妨げるのを防ぐとともに、部品点数の増加によるコスト増加を抑えて、電子部品のノイズ混入、発信を確実に防ぐ。
【解決手段】導電性を有し、リジッド基板21とフレキシブル基板22とを接着する両面粘着フィルム30により、シールドケース25の孔26を塞ぎ、ノイズの漏出や侵入を防ぐ。加えて、両面粘着フィルム30は、フレキシブル基板22のグランドパターンに接着するようにした。さらに、フレキシブル基板22をデジタル回路で構成することにより、フレキシブル基板22のグランドパターンが電磁波による影響を受けたとしても、フレキシブル基板22の回路はその影響を受けにくくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話をはじめとする電子機器に用いられる電子部品のシールド構造、およびそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとする各種電子機器に搭載され、高周波の電波を送受信する電子部品において、電子部品に電磁ノイズが混入したり、電子部品から電磁ノイズが発信されたりするのを防止するため、金属製のシールドケースで電子部品を覆う方法、電子機器の筐体の表面にメッキを施す方法等により、電子部品を電磁的にシールドすることが行われている。
【0003】
シールドケースで電子部品を覆う場合、電子部品の接続信頼性向上のため、シールドケース内に樹脂を充填させて電子部品の端子と基板との接続部を補強することがある。この場合、電子部品と基板との半田付け後に樹脂を充填させる必要があることから、シールドケースに樹脂充填のための孔を設ける必要があり、この孔からノイズが混入したり、電子部品から発信されたノイズがシールドケース外に漏出したりするといった問題があった。
【0004】
これに対し、シールドケースの孔を金属製のシールドカバーで蓋をすることが行われているが、このような構造では、シールドカバーの厚み分だけ、電子機器の厚みが増加し、電子機器の小型化・薄型化が妨げられるとともに、部品増加によるコスト増加という影響懸念があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、シールドケースの孔を、導電テープで塞ぐ構成が開示されている。
また、特許文献1には、導電テープを用いることなく十分な遮蔽性能を得るため、シールドケース内に収容された第1の基板に第1のコネクタを設け、グランド用電極配線を有した第2の基板に第2のコネクタを設け、第1のコネクタと第2のコネクタをシールドケースに形成された孔を通して嵌合させ、グランド用電極配線がシールドケースの孔の外側領域に電気的に接続される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−80691号公報(段落[0005])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、導電テープでシールドケースの孔を塞ぐ構成においては、導電テープを追加して設けなければならず、部品増加によるコスト増加という問題は解決することができていない。
【0008】
また、第2の基板のグランド用電極配線をシールドケースの孔の外側領域に電気的に接続させる構成においては、グランド用電極配線をシールドケースの孔の外側領域に確実に接続するため、第1のコネクタ、第2のコネクタが必須となる。すると、第1のコネクタと第2のコネクタの嵌合に手間がかかるうえ、第1のコネクタ、第2のコネクタのためのスペースが必要となり、小型化の妨げとなる。
【0009】
近年、電子機器の小型化、高機能化に伴い、基板を複数備えることがあり、メインとなるリジッド基板に実装しきれない部品は、サブとなる基板を用いることがあり、サブとなる基板には薄型化のためにフレキシブル基板を用いることが多い。このような構成において、第1のコネクタ、第2のコネクタにより第2の基板(サブとなる基板)を固定しようとすると、第2の基板がフレキシブル基板であるがゆえに、孔の周囲においてグランド用電極配線をシールドケースの孔の外側領域に確実に接続するのが難しい。
【0010】
そこで、サブとなる基板を保持するための樹脂フレームを実装することもできるが、これでは電子機器の小型化・薄型化が妨げられ、部品点数の増加によるコスト増加を招いてしまう。
本発明の目的は、電子部品を有する電子機器において、電子機器の小型化・薄型化を妨げるのを防ぐとともに、部品点数の増加によるコスト増加を抑えて、電子部品のノイズ混入、発信を確実に防ぐことのできる電子部品のシールド構造、およびそれを用いた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の電子部品のシールド構造は、電子部品が実装されるとともに、当該電子部品を覆うことで電磁的にシールドする導電性材料からなるシールドケースが実装された第1の回路基板と、第1の回路基板に積層される第2の回路基板と、第1の回路基板と第2の回路基板とを接着するフィルム状の接着シートと、を備え、シールドケースには、その内外を貫通する孔が形成され、第2の回路基板には、接地のためのグランドパターンが形成され、接着シートは、その両面を電気的に導通させる導電性材料により形成され、その一面側がシールドケースの孔を含むその周囲に接着され、他面側が第2の回路基板のグランドパターンに接着されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記したような電子部品のシールド構造を有した制御基板を備えることを特徴とする電子機器とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シールドケースの孔は、導電性を有した接着シートと、第2の回路基板のグランドパターンとにより塞がれるので、孔からのノイズの漏出や侵入を防ぐことができ、シールドケース内の電子部品への悪影響を確実に塞ぐことができる。このとき、接着シートは、第1の回路基板と第2の回路基板とを機械的に接続するためのものであるため、孔の電磁シールドのために別途導電性材料からなるシートやフィルムを用いる必要がない。これにより、電子機器の小型化・薄型化を妨げるのを防ぐとともに、部品点数の増加によるコスト増加を抑えて、電子部品のノイズ混入、発信を確実に防ぐことが可能となる。
さらに、接着シートは、その両面を電気的に導通させる導電性材料により形成されているため、第2の回路基板のグランドパターンが接着シートを介してシールドケースに電気的に接続され、第2の回路基板の接地を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかる携帯電話端末を示す斜視図であり、(a)は携帯電話端末を一方の筐体側から見た斜視図、(b)は他方の筐体側から見た斜視図である。
【図2】携帯電話端末の内部を示す斜視図である。
【図3】リジッド基板の平面図である。
【図4】制御基板の構成を示す斜視展開図である。
【図5】リジッド基板に両面粘着テープを貼り付けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明による電子部品のシールド構造、およびそれを用いた電子機器を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
図1に示すものは、本発明を適用した電子機器の一例である、携帯電話端末(電子機器)10を示す斜視図である。
図1に示すように、携帯電話端末10は、画像や文字、映像等の各種情報を表示するモニター部を有した表示筐体11Aと、ユーザが携帯電話端末10を操作するための操作キー等を備えた本体筐体11Bとを備えている。
これら表示筐体11Aと本体筐体11Bとは、それぞれの一辺が側において、ヒンジ部12により回転可能に連結されている。
【0016】
本体筐体11Bの背面側(操作キー等が設けられているのとは反対側)には、着脱可能なカバー13が設けられている。
図2は、カバー13を取り外した状態の本体筐体11Bを示す図であり、この図2に示すように、本体筐体11Bの内部には、電池パック14、制御基板20が収容されている。
【0017】
制御基板20は、リジッド基板(第1の回路基板)21と、フレキシブル基板(第2の回路基板)22とから構成されている。
リジッド基板21は、紙にフェノール樹脂やエポキシ樹脂を含浸させたもの、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたもの、その他、セラミックス等の絶縁材料からなり、柔軟性の絶縁性基材からなる。リジッド基板21の表面には、各種電子部品100が実装されており、これらの電子部品100のうち、ノイズを発生したりノイズの影響を受けやすいものには、金属製のシールドケース25が被せられている。
【0018】
各シールドケース25は、リジッド基板21に設けられたグランド配線パターン(図示無し)に電気的に接続されている。
また、図3に示すように、シールドケース25において、その内部に収容した電子部品100とリジッド基板21の配線パターンとの電気的な接続を確実に行うため、シールドケース25の内部に樹脂を充填することで、電子部品100の固定を補強するものがある。このように樹脂を充填するシールドケース25の上面には、樹脂を外部から充填するための孔26が形成されている。ここで、孔26の形状や位置、数については何ら限定する意図はない。
このようなシールドケース25では、電子部品100およびシールドケース25をリフロー半田等の半田付け法によりリジッド基板21に実装した後、孔26から、ディスペンサ等により、溶融状態の樹脂をシールドケース25内に注入し、樹脂を硬化させるようになっている。
【0019】
フレキシブル基板22は、ポリイミド膜もしくはフォトソルダーレジスト膜等からなるフィルム状で、可撓性を有している。このフレキシブル基板22上にも、電子部品200が実装されている。
【0020】
ここで、リジッド基板21は、その回路構成を、GHz帯の高周波回路を含むものとし、フレキシブル基板22は、その回路構成を、MHz帯の汎用デジタル回路とするのが好ましい。
【0021】
図3、図4に示すように、これらリジッド基板21とフレキシブル基板22とは、両面粘着フィルム(接着シート)30により接着されている。ここで、両面粘着フィルム30の両面の粘着層は、導電性材料を練り込む等して導電性を有している。また、両面粘着フィルム30の基材も、シート状、フィルム状の金属等、導電性材料で形成するのが好ましい。
図4、図5に示すように、両面粘着フィルム30は、リジッド基板21上において、シールドケース25に形成された孔26の全てを覆うような形状・大きさに形成され、その一面側が孔26の周囲を含むシールドケース25の上面全体に接着されている。これによって両面粘着フィルム30とシールドケース25とが電気的に接続されている。
また、両面粘着フィルム30の他面側は、フレキシブル基板22に接着されている。このとき、両面粘着フィルム30は、フレキシブル基板22に形成されたグランド(GND)パターンに接着され、これによって両面粘着フィルム30とフレキシブル基板22のグランドパターンとが電気的に接続されている。
【0022】
このように導電性を有した両面粘着フィルム30でシールドケース25の孔26を塞ぐことで、ノイズの漏出や侵入を防ぐことができ、シールドケース25内の電子部品100への悪影響を確実に防ぐことができる。
加えて、両面粘着フィルム30は、フレキシブル基板22のグランドパターンに接着されており、孔26はフレキシブル基板22のグランドパターンによっても塞がれることになる。これにより、孔26の電磁シールドを、より確実なものとすることができる。
したがって、孔26からのノイズの漏出や侵入を防ぐことができ、シールドケース25内の電子部品100への悪影響を防ぐという作用効果はいっそう顕著なものとなる。このとき、両面粘着フィルム30は、リジッド基板21とフレキシブル基板22とを機械的に接続するためのものであるため、孔26の電磁シールドのために別途導電性材料からなるシートやフィルムを用いる必要がない。その結果、携帯電話端末10の小型化・薄型化を妨げるのを防ぐとともに、部品点数の増加によるコスト増加を抑えて、電子部品100のノイズ混入、発信を確実に防ぐことが可能となる。
同時に、孔26の電磁シールドのために別途導電性材料からなるシートやフィルムを用いる場合に比較し、回路部品の実装効率を高めることができる。
【0023】
さらに、リジッド基板21とフレキシブル基板22とを機械的に接続するための両面粘着フィルム30により、シールドケース25とフレキシブル基板22のグランドパターンとが電気的に接続されるため、フレキシブル基板22の接地を確実に行える。
【0024】
また、フレキシブル基板22をデジタル回路で構成することにより、フレキシブル基板22のグランドパターンが電磁波による影響を受けたとしても、フレキシブル基板22の回路はその影響を受けにくい。
【0025】
(その他の実施形態)
なお、本発明の電子部品のシールド構造、およびそれを用いた電子機器は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、リジッド基板21上にフレキシブル基板22を積層する構成としたが、フレキシブル基板22に代えてリジッド基板を用いるようにしても良い。
また、携帯電話端末10において、制御基板20以外の部分に関わる構成については、上記で説明したものに何ら限定されるものではなく、適宜他の構成とすることが可能である。
また、携帯電話端末10に限らず、PHS(Personal Handy-phone System)、トランシーバ、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯音楽プレーヤー等、通信機能を有した各種電子機器にも上記実施形態で示した構成を同様に適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 携帯電話端末(電子機器)
20 制御基板
21 リジッド基板(第1の回路基板)
22 フレキシブル基板(第2の回路基板)
25 シールドケース
26 孔
30 両面粘着フィルム(接着シート)
100 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装されるとともに、当該電子部品を覆うことで電磁的にシールドする導電性材料からなるシールドケースが実装された第1の回路基板と、
前記第1の回路基板に積層される第2の回路基板と、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接着するフィルム状の接着シートと、
を備え、
前記シールドケースには、その内外を貫通する孔が形成され、
前記第2の回路基板には、接地のためのグランドパターンが形成され、
前記接着シートは、その両面を電気的に導通させる導電性材料により形成され、その一面側が前記シールドケースの前記孔を含むその周囲に接着され、他面側が前記第2の回路基板の前記グランドパターンに接着されていることを特徴とする電子部品のシールド構造。
【請求項2】
前記第2の回路基板は、デジタル回路により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品のシールド構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品のシールド構造を有した制御基板を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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