説明

電子部品モジュール

【課題】搭載チップ部品のショート不良及びオープン不良を回避し得る電子部品モジュールを提供すること。
【解決手段】樹脂モールド部品2におけるモールド樹脂21と外装樹脂4との熱膨張係数の相対的な関係に着目し、モールド樹脂21の250℃における熱膨張係数αAを
250μm/℃≦αA≦400μm/℃の範囲に設定し、外装樹脂4の250℃における熱膨張係数αBを、70μm/℃≦αB≦200μm/℃の範囲に設定する。モールド樹脂21及び外装樹脂4の弾性率、ガラス転移点を特定された範囲に設定してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型電子部品モジュールに関する。更に詳しくは、携帯電話等の移動体通信機器に用いられる電子部品モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品モジュールは、その主要な用途である移動体通信機器から要請される高機能化、小型化及び薄型化に応えるべく、益々、高集積化される方向にあり、限られた形状の中に、多種の電子部品が高密度で混載されている。これらの電子部品には、チップ部品及び樹脂モールド部品が含まれている。チップ部品は、基体の両端に付着された端子電極を有し、基板の一面上に実装され、端子電極が基板の一面に設けられた導体にハンダ付けされている。樹脂モールド部品は、外面がモールド樹脂によって覆われ、チップ部品の実装された基板の一面に搭載され、ハンダ付されている。基板は、電子部品を搭載した一面とは反対側の他面に、導体に導通する接続端子を有しており、この接続端子を、マザーボードにハンダ付するようになっている。基板の一面側にはチップ部品及び樹脂モールド部品に密着して覆う外装樹脂が付着されている。このような電子部品モジュールは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
ところが、上述した電子部品モジュールを、移動体通信機器などのマザーボード上にハンダ付したとき、電子部品モジュールを構成するチップ部品の端子電極にハンダ不良が発生することがあった。このハンダ不良には、チップ部品の両端に備えられている端子電極間で、電極間距離を狭める方向にハンダが延びる不良モードと、端子電極に付着しているハンダが極端に減少する不良モード、及び、これらの不良が同時に現れる不良モードが含まれていることが確認された。
【0004】
電極間距離を狭める方向にハンダが延びる不良モードは、最悪の場合には端子電極間ショート不良に至るものであり、端子電極に付着しているハンダが極端に減少する不良モードは、オープン不良を引き起こすものであるから、この種の電子部品モジュールにとって、その機能上、致命傷となりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−95633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、搭載チップ部品のショート不良及びオープン不良を回避し得る電子部品モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、3つの態様に係る電子部品モジュールを開示する。これらの3つの態様は、個別的に満たしてもよいし、組み合わせてもよい。
【0008】
第1の態様に係る電子部品モジュールは、チップ部品と、樹脂モールド部品と、基板と、外装樹脂とを含む。前記チップ部品は、基体の両端に付着された端子電極を有し、前記基板の一面上に実装され、前記端子電極が前記基板の一面に設けられた導体にハンダ付けされている。前記樹脂モールド部品は、外面がモールド樹脂によって覆われ、前記チップ部品の実装された前記基板の前記一面に搭載されている。前記基板は、前記一面とは反対側の他面に接続端子を有している。
【0009】
前記外装樹脂は、前記基板の前記一面側において、前記チップ部品及び前記樹脂モールド部品に密着して、これらを覆っている。
【0010】
上述した構成は、従来の電子部品モジュールでも見られるところである。ところが、前述したように、この構成の電子部品モジュールを、移動体通信機器などのマザーボード上にハンダ付したとき、電子部品モジュールを構成するチップ部品の端子電極にハンダ不良が発生することがあった。
【0011】
そこで、第1の態様に係る本発明では、樹脂モールド部品におけるモールド樹脂と外装樹脂との熱膨張係数の相対的な関係に着目した。即ち、
前記モールド樹脂は、250℃における熱膨張係数αAが、
250μm/℃≦αA≦400μm/℃
の範囲にあり、
前記外装樹脂は、250℃における熱膨張係数αBが、
70μm/℃≦αB≦200μm/℃
の範囲にある。
【0012】
樹脂モールド部品におけるモールド樹脂と外装樹脂との熱膨張係数について、上述したような相対的な関係があると、外装樹脂とチップ部品との間に隙間が発生するのを回避することができる。従って、電子部品モジュールを、マザーボードに対してリフローハンダ付け処理をした場合でも、チップ部品にショート不良及びオープン不良を生じることがなくなる。
【0013】
第2の態様に係る電子部品モジュールは、モールド樹脂及び外装樹脂の弾性率に着目したもので、
前記モールド樹脂は、250℃における弾性率βAが、
27MPa≦βA≦1500MPa
の範囲にあり、
前記外装樹脂は、250℃における弾性率βBが、
0MPa≦βB<3MPa
の範囲にある。
【0014】
この場合には、モールド樹脂の膨張を外装樹脂によって押さえつける作用が生まれるので、外装樹脂がチップ部品の外面から剥離して両者間に隙間が発生するのを回避することができる。
【0015】
第3の態様に係る電子部品モジュールは、モールド樹脂と外装樹脂のガラス転移点Tgに着目したもので、前記モールド樹脂は、ガラス転移点TgAが、
95℃≦TgA≦160℃
の範囲にあり、
前記外装樹脂は、ガラス転移点TgBが、
78℃≦TgB≦82℃
の範囲にある。
【0016】
この第3の態様においても、外装樹脂がチップ部品の外面から剥離して両者間に隙間が発生するのを回避することができる。
【0017】
第1態様〜第3態様に係る条件を、個別的に満たしてもよいし、そのいくつかを組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、搭載チップ部品のショート不良及びオープン不良を回避し得る電子部品モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電子部品モジュールの部分断面図である。
【図2】図1に示した電子部品モジュールにおいて外装樹脂を省略した平面図である。
【図3】図1及び図2に示した電子部品モジュールをマザーボードに実装した状態を示す部分断面図である。
【図4】従来の電子部品モジュールの問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び図2を参照すると、本発明に係る電子部品モジュールは、チップ部品1と、樹脂モールド部品2と、基板3と、外装樹脂4とを含む。チップ部品1は、基体11の両端に付着された端子電極12、13を有し、基板3の一面上に実装され、端子電極12、13が基板3の一面に設けられた導体14に、ハンダ15によってハンダ付されている。
【0021】
チップ部品1は、電子モジュールの種類、回路構成に応じて種々選択される。主なものは、チップ状セラミックコンデンサ、チップ状インダクタ、チップ状抵抗、又は、それらの複合部品などである。その個数及び配置位置なども種々変更される。
【0022】
樹脂モールド部品2は、外面がモールド樹脂21によって覆われ、チップ部品1の実装された基板3の一面に搭載されている。樹脂モールド部品2は、その内部に、回路素子22を有しており、この回路要素22の全体を、モールド樹脂21によってモールドした構造になっている。回路要素22は、半導体素子や、弾性表面波素子などであり、これらに対する応力緩和の観点から、モールド樹脂21は比較的柔らかい合成樹脂で構成される。
【0023】
移動体通信機器に用いられる電子部品モジュールでは、樹脂モールド部品2は、一般には、複数であり、そのうちの隣接する樹脂モールド部品2は、互いに0.5mm〜2mmの間隔X1をおいて配置されている。チップ部品1の少なくとも一つは、間隔X1の内部に配置され、樹脂モールド部品2との間に、0.05mm〜0.08mmの間隔X2、X3を有しており、部品搭載間隔の縮小、及び、チップ部品1の小型化により、集積度の高度化が図られている。
【0024】
基板3は、一面とは反対側の他面に接続端子31を有している。基板3は、一般には、LTCC(低温同時焼成セラミック基板)で構成される。
【0025】
外装樹脂4は、基板3の前記一面側において、チップ部品1及び樹脂モールド部品2に密着して、これらを覆っている。
【0026】
上述した構成は、従来の電子部品モジュールでも見られるところである。ところが、前述したように、この構成の電子部品モジュールを、移動体通信機器などのマザーボード上にハンダ付したとき、電子部品モジュールを構成するチップ部品1の端子電極12、13にハンダ不良が発生することがあった。その原因について、図4を参照して説明する。
【0027】
図4を参照すると、電子部品モジュールMは、マザーボード5の一面上に形成された導体パターン51に対して、その接続端子31が、ハンダ52によってハンダ付されている。電子部品モジュールMにおいて、基板3の一面には、チップ部品1と樹脂モールド部品2とが、高集積度で実装されており、外装樹脂4が、チップ部品1及び樹脂モールド部品2に密着してこれらを覆っている。この電子部品モジュールMを、マザーボード5の導体パターン51にハンダ52によってハンダ付するに当たり、リフロー処理に付した場合、樹脂モールド部品2のモールド樹脂21と外装樹脂4との間に、それらの熱膨張係数の違いに起因して熱応力差(F1−F2)が発生する。この熱応力差(F1−F2)により、外装樹脂4を押し上げるような熱応力が発生する。外装樹脂4は、チップ部品1の外面に密着しているが、上述した熱応力が密着力よりも大きくなると、外装樹脂4がチップ部品1の外面から剥離して両者間に隙間Gが発生する。
【0028】
一方、リフロー熱処理により、端子電極12、13に付着しているハンダ14が溶融する。この溶融したハンダ14が、図4に図示するように、上述した隙間Gに流れ込み、ショート不良を発生する。また、外装樹脂4のチップ部品1への密着力が大きい場合には、熱応力によりチップ部品1が外装樹脂4に持ち上げられ、端子電極12、13の少なくとも一つが基板3より離されてしまい、オープン不良を発生する。
【0029】
上述した問題を解決する一つの手段は、チップ部品1のハンダ付に用いられるハンダ15の融点を、電子部品モジュールMをマザーボード5にハンダ付する際のハンダ52の融点よりも高くすることである。具体的には、電子部品モジュールMをマザーボード5にハンダ付する際には250℃前後であるので、電子部品モジュールMのチップ部品1や樹脂モールド部品2を、融点250℃以上のハンダ15でハンダ付することである。
【0030】
しかし、基板3上に混載されているチップ部品1及び樹脂モールド部品2は、電磁気的特性が異なる上に、温度特性、耐熱特性も互いに異なるものであり、ハンダ付による特性の熱的劣化、特性変動を回避するため、一般には、融点220℃前後のハンダ15を用いてハンダ付される。これを、融点250℃以上でハンダ付すると、本来要求される特性を維持することができなくなる。
【0031】
この問題を解決するため、第1の態様では、樹脂モールド部品2におけるモールド樹脂21と外装樹脂4との熱膨張係数の相対的な関係に着目した。即ち、
モールド樹脂21は、250℃における熱膨張係数αAが、
250μm/℃≦αA≦400μm/℃
の範囲にあり、
外装樹脂4は、250℃における熱膨張係数αBが、
70μm/℃≦αB≦200μm/℃
の範囲にある。
【0032】
樹脂モールド部品2におけるモールド樹脂21と外装樹脂4との熱膨張係数αA、αBについて、上述したような相対的な関係があると、外装樹脂4を押し上げる熱応力を低減させ、外装樹脂4がチップ部品1の外面から剥離して両者間に隙間Gが発生するのを回避することができる。
【0033】
従って、図3に図示するように、チップ部品1や樹脂モールド部品2を、融点220℃前後のハンダ15でハンダ付した電子部品モジュールMを、マザーボード5に対して250℃前後の温度でリフローハンダ付け処理をした場合でも、チップ部品1にショート不良及びオープン不良を生じることがなくなる。この点について、繰り返しリフロー試験データをあげて説明する。
【0034】
<試験1>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、250℃における熱膨張率αAが、250μm/℃の樹脂(例えばエポキシ系)を用い、外装樹脂4として、250℃における熱膨張率αBが、50μm/℃、60μm/℃、70μm/℃、100μm/℃、150μm/℃、200μm/℃、220μm/℃と段階的に変えた7種の樹脂(例えばエポキシ系)を用いた電子部品モジュールのサンプルを、繰り返しリフロー試験に付した。樹脂モールド部品2は、SAWフィルタ(表面波弾性波フィルタ)であり、チップ部品1は、セラミック・チップコンデンサを含んでいる。
【0035】
繰り返しリフロー試験に先立ち、その前処理として、加速吸湿処理を行った。加速吸湿処理に当たっては、125℃、24時間の加熱処理を行った後、30℃、60%RHの加湿環境に192時間曝した。試験に供されたサンプルの個数は、上述した7種のサンプル毎に100個である。
【0036】
この後、上述した各サンプルを、250℃に保たれたリフロー炉に各20回繰り返し通炉し、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表1に示してある。
【0037】
表1

【0038】
<試験2>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、250℃における熱膨張率αAが、400μm/℃のエポキシ系樹脂を用いたほかは、試験1と同様にして、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表2に示してある。
【0039】
表2

【0040】
表1、2を見ると明らかなように、モールド樹脂21の250℃における熱膨張係数αAが、250μm/℃≦αA≦400μm/℃の範囲にあれば、外装樹脂4として、250℃における熱膨張係数αBが、70μm/℃≦αB≦200μm/℃の範囲にあるものを用いれば、オープン不良も、ショート不良も発生しない。モールド樹脂21の250℃における熱膨張係数αAが、250μm/℃≦αA≦400μm/℃の範囲にあっても、外装樹脂4として、250℃における熱膨張係数αBが、70μm/℃より小さい範囲では、オープン不良が発生し、200μm/℃を超えるとショート不良を発生する。
【0041】
次に、第2の態様に係る電子部品モジュールについて説明する。第2の態様に係る電子部品モジュールは、モールド樹脂21及び外装樹脂4の弾性率に着目したもので、
モールド樹脂21は、250℃における弾性率βAが、
27MPa≦βA≦1500MPa
の範囲にあり、
外装樹脂4は、250℃における弾性率βBが、
0MPa≦βB<3MPa
の範囲にある。
【0042】
即ち、外装樹脂4を、モールド樹脂21よりも硬いものによって構成する。その硬さの程度は、上述した数値範囲で表される。この場合には、モールド樹脂21の膨張を外装樹脂4によって押さえつける作用が生まれるので、外装樹脂4がチップ部品1の外面から剥離して両者間に隙間が発生するのを回避することができる。従って、チップ部品1や樹脂モールド部品2を、融点220℃前後のハンダでハンダ付した電子部品モジュールを、マザーボードに対して250℃前後の温度でリフローハンダ付け処理をした場合でも、チップ部品1にショート不良及びオープン不良を生じることがなくなる。次に、繰り返しリフロー試験データをあげて説明する。
【0043】
<試験3>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、250℃における弾性率βAが、27MPaの樹脂(例えばエポキシ系)を用い、外装樹脂4として、250℃における弾性率βBが、それぞれ、0.3MPa、1.0MPa、2.3MPa、3.1MPaである樹脂(例えばエポキシ系)を用いた4種の電子部品モジュールのサンプルを、繰り返しリフロー試験に付した。樹脂モールド部品2は、SAWフィルタ(表面波弾性波フィルタ)であり、チップ部品1は、セラミック・チップコンデンサを含んでいる。
【0044】
繰り返しリフロー試験に先立ち、その前処理として、加速吸湿処理を行った。加速吸湿処理に当たっては、125℃、24時間の加熱処理を行った後、30℃、60%RHの加湿環境に192時間曝した。試験に供されたサンプルの個数は、上述した4種のサンプル毎に100個である。
【0045】
この後、上述した各サンプルを、250℃に保たれたリフロー炉に各20回繰り返し通炉し、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表3に示してある。弾性率及び熱膨張率は、全て、250℃の値である。さらに、弾性率及び熱膨張率は、以下の方法で測定した。まず、測定に使用する樹脂試料は、長さ7mm、幅7mm、厚さ1.25mmの形状に加工したものを予め準備した。測定装置は、動的粘弾性測定装置を用い、樹脂試料を装置の試料台に装着する。この状態で測定を開始するが、測定は樹脂試料へある一定の荷重を加え、その時の押し込み量を規定し、そこに温度を加えてながら、ある規定の周期で樹脂試料に発生した実荷重と樹脂試料の変形量を取り込む。その数値から弾性率と熱膨張率を算出した。測定は、次の条件で行った。樹脂試料へ加えた荷重は5N、押込み量2μm、取り込み周期1Hz、温度可変範囲30〜260℃で実施した。
【0046】
表3

【0047】
<試験4>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、250℃における弾性率βAが、1071MPaの樹脂を用いたほかは、試験3と同様にして、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表2に示してある。
【0048】
表4

【0049】
<試験5>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、250℃における弾性率βAが、1412MPaの樹脂を用いたほかは、試験3と同様にして、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表5に示してある。
【0050】
表5

【0051】
<試験6>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、250℃における弾性率βAが、1535MPaの樹脂を用いたほかは、試験3と同様にして、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表6に示してある。
【0052】
表6

【0053】
表3〜表6を見ると明らかなように、モールド樹脂21の250℃における弾性率βAが、27MPa≦βA≦1500MPaの範囲にあり、外装樹脂4の250℃における弾性率βBが、0MPa≦βB<3MPaの範囲にあれば、チップ部品1にオープン不良、ショート不良は発生しない。モールド樹脂21の250℃における弾性率βAについて、27MPaよりも小さい領域についてのデータを採取しなかったのは、実際の電子部品モジュールでは、そのような弾性率のモールド樹脂を用いた樹脂モールド部品はないからである。
【0054】
更に、第3の態様に係る電子部品モジュールについて説明する。第3の態様に係る電子部品モジュールは、モールド樹脂21と外装樹脂4のガラス転移点Tgに着目したもので、モールド樹脂21は、ガラス転移点TgAが、
95℃≦TgA≦160℃
の範囲にあり、
外装樹脂4は、ガラス転移点TgBが、
78℃≦TgB≦82℃
の範囲にある。
【0055】
この第3の態様においても、外装樹脂4がチップ部品1の外面から剥離して両者間に隙間が発生するのを回避することができる。従って、チップ部品1や樹脂モールド部品2を、融点220℃前後のハンダでハンダ付した電子部品モジュールを、マザーボードに対して250℃前後の温度でリフローハンダ付け処理をした場合でも、チップ部品1にショート不良及びオープン不良を生じることがなくなる。次に、繰り返しリフロー試験データをあげて説明する。
【0056】
<試験7>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、ガラス転移点TgAが95℃である樹脂(例えばエポキシ系)を用い、外装樹脂4として、ガラス転移点TgBが、51℃、78℃、82℃、106℃である樹脂を用いた4種の電子部品モジュールのサンプルを、繰り返しリフロー試験に付した。樹脂モールド部品2は、SAWフィルタ(表面波弾性波フィルタ)であり、チップ部品1は、セラミック・チップコンデンサを含んでいる。
【0057】
試験の前処理として、加速吸湿処理を行った。加速吸湿処理に当たっては、125℃、24時間の加熱処理を行った後、30℃、60%RHの加湿環境に192時間曝した。試験に供されたサンプルの個数は、上述した4種のサンプル毎に100個である。
【0058】
この後、上述した各サンプルを、250℃に保たれたリフロー炉に各20回繰り返し通炉し、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表7に示してある。熱膨張率αA、αBは、250℃のときの値である。
【0059】
表7

【0060】
<試験8>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、ガラス転移点が124℃の樹脂を用いたほかは、試験7と同様にして、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表8に示してある。
【0061】
表8

【0062】
<試験9>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、ガラス転移点が160℃のエポキシ系樹脂を用いたほかは、試験7と同様にして、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表9に示してある。
【0063】
表9

【0064】
<試験10>
樹脂モールド部品2のモールド樹脂21として、ガラス転移点が186℃の樹脂を用いたほかは、試験7と同様にして、ショート不良及びオープン不良を検査した。結果を表10に示してある。
【0065】
表10

【0066】
表7〜表10を見ると明らかなように、モールド樹脂21のガラス転移点TgAが、
95℃≦TgA≦160℃の範囲にあり、外装樹脂4のガラス転移点TgBが、
78℃≦TgB≦82℃の範囲にあれば、チップ部品1にオープン不良、ショート不良は発生しない。
【0067】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0068】
1 チップ部品
2 樹脂モールド部品
21 モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ部品と、樹脂モールド部品と、基板と、外装樹脂とを含む電子部品モジュールであって、
前記チップ部品は、基体の両端に付着された端子電極を有し、前記基板の一面上に実装され、前記端子電極が前記基板の一面に設けられた導体にハンダ付けされており、
前記樹脂モールド部品は、外面がモールド樹脂によって覆われ、前記チップ部品の実装された前記基板の前記一面に搭載されており、
前記基板は、前記一面とは反対側の他面に接続端子を有しており、
前記外装樹脂は、前記基板の前記一面側において、前記チップ部品及び前記樹脂モールド部品に密着して、これらを覆っており、
前記モールド樹脂は、250℃における熱膨張係数αAが、
250μm/℃≦αA≦400μm/℃
の範囲にあり、
前記外装樹脂は、250℃における熱膨張係数αBが、
70μm/℃≦αB≦200μm/℃
の範囲にある、電子部品モジュール。
【請求項2】
チップ部品と、樹脂モールド部品と、基板と、外装樹脂とを含む電子部品モジュールであって、
前記チップ部品は、基体の両端に端子電極を有し、前記基板の一面上に実装され、前記端子電極が前記基板の一面に設けられた導体にハンダ付けされており、
前記樹脂モールド部品は、外面がモールド樹脂によって覆われ、前記チップ部品の実装された前記基板の前記一面に搭載されており、
前記基板は、前記一面とは反対側の他面に接続端子を有しており、
前記外装樹脂は、前記基板の前記一面側において、前記チップ部品及び前記樹脂モールド部品に密着して、これらを覆っており、
前記モールド樹脂は、250℃における弾性率βAが、
27MPa≦βA≦1500MPa
の範囲にあり、
前記外装樹脂は、250℃における弾性率βBが、
0MPa≦βB<3MPa
の範囲にある、電子部品モジュール。
【請求項3】
チップ部品と、樹脂モールド部品と、基板と、外装樹脂とを含む電子部品モジュールであって、
前記チップ部品は、基体の両端に端子電極を有し、前記基板の一面上に実装され、前記端子電極が前記基板の一面に設けられた導体にハンダ付けされており、
前記樹脂モールド部品は、外面がモールド樹脂によって覆われ、前記チップ部品の実装された前記基板の前記一面に搭載されており、
前記基板は、前記一面とは反対側の他面に接続端子を有しており、
前記外装樹脂は、前記基板の前記一面側において、前記チップ部品及び前記樹脂モールド部品に密着して、これらを覆っており、
前記モールド樹脂は、ガラス転移点TgAが、
95℃≦TgA≦160℃
の範囲にあり、
前記外装樹脂は、ガラス転移点TgBが、
78℃≦TgB≦82℃
の範囲にある、電子部品モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された電子部品モジュールであって、
前記樹脂モールド部品は複数であり、そのうちの隣接する前記樹脂モールド部品は、互いに0.5mm〜2mmの間隔をおいて配置されており、
前記チップ部品の少なくとも一つは、前記間隔内に配置され、前記樹脂モールド部品との間に、0.05mm〜0.08mmの間隔を有している、
電子部品モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−198994(P2011−198994A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63977(P2010−63977)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)