説明

電子部品搭載装置

【目的】 リードフレーム(又はグランドピンリード)下面と放熱板下面との距離のばらつきを小さくできる電子部品搭載装置を提供する。
【構成】 導電パターン11及びスルーホール12が形成され更に電子部品収納用貫通孔等13が形成された配線基板1と、この貫通孔等内に収納搭載される電子部品2と、導電パターンと電子部品を接続するボンディングワイヤー3と、スルーホール内周面にめっき形成された内周面めっき部71とスルーホール開口縁部に形成された一対の補助電極部72と内周面めっき部内等に形成される半田柱部73とを備える上下導通部7と、上下導通部に電気的に接続される複数のリードフレーム4と、リードフレームに接続され且つ配線基板の中央部下方側に絶縁性接着剤層を介して接着配置されるアイランド部43と、アイランド部の下方側に接着配置される放熱部材6と、電子部品等を封止する樹脂製封止部5とからなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子部品搭載装置に関し、更に詳しく言えば、リードフレーム下面と放熱板下面との距離のばらつきを小さくできる電子部品搭載装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子部品搭載装置においては、リードフレーム下面(又はグランドピンリード)と放熱板下面(封止部露出面)との距離は±0.1mmの公差が必要となる。この距離が短い場合は、封止樹脂が放熱板の露出すべき底面を覆ってしまって放熱性が低下し、長い場合はモールド金型にセットした時、基板が上に押されてリード接続部に応力が負荷され、接続信頼性は低下する。そして、従来の電子部品搭載装置においては、図6に示すように、配線基板1の裏面に放熱板6が直接に接着剤層61、62を介して接着されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く、従来においては、剛性のない配線基板の裏面に放熱板を直接に接着すると、リードフレームと基板との熱整合の不一致又は基板と放熱板との接着等により、配線基板は変形する。従って、上記距離のばらつきが大きくなり、そのため、封止樹脂が放熱板の露出すべき底面を覆ってしまったり、配線基板を変形させてリード接続部に応力負荷がかかったりする。
【0004】本発明は、上記問題点を解決するものであり、リードフレーム下面と放熱板下面との距離のばらつきを小さくできる電子部品搭載装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本第1発明の電子部品搭載装置は、少なくとも表面に導電パターン11が形成され及びスルーホール12が形成され更に電子部品収納用貫通孔若しくは電子部品収納用凹部13が形成された配線基板1と、上記電子部品収納用貫通孔若しくは上記電子部品収納用凹部内に収納搭載される電子部品2と、上記導電パターンと該電子部品を接続するボンディングワイヤー3と、上記スルーホール内周面にめっき形成された内周面めっき部71と、該スルーホール開口縁部に形成された一対の補助電極部72と、該内周面めっき部内及び該一対の補助電極部表面に形成される半田柱部73とを備える上下導通部7と、該上下導通部に電気的に接続される複数のリードフレーム4と、該リードフレームに接続され且つ上記配線基板の中央部下方側に絶縁性接着剤層を介して接着配置されるアイランド部43と、上記アイランド部の下方側に接着配置される放熱部材6と、上記電子部品、上記ボンディングワイヤー、上記配線基板及び上記放熱部材の側周部を封止する樹脂製封止部5と、からなることを特徴とする。
【0006】本第2発明の電子部品搭載装置は、上記第1発明に示す、配線基板1、電子部品2、ボンディングワイヤー3、上下導通部7、リードフレーム4、放熱部材6及び樹脂製封止部5に加え、上記配線基板上に形成されるグランドピンリード9を備え、更に、アイランド部は、該グランドピンリードに接続され且つ上記配線基板の中央部下方側に接着剤層を介して接着配置され、アイランド部の下方側に放熱部材を導電性接着剤層を介して接着配置される構成からなるものである。
【0007】上記発明において、上記リードフレームは上記配線基板の裏面側に接着されるに際して、該配線基板に設けられた上記スルーホールの開口位置よりも内側と外側の両方の位置にて接着されているものとすることができる。
【0008】
【作用及び発明の効果】従来において、配線基板の裏面に放熱部材を直接接着すると、リードフレームと基板との熱整合の不一致或いは基板と放熱部材との接着により、基板は剛性がないため変形する。従って、リードフレーム下面と放熱部材下面(封止部露出面)との距離のばらつきが大きくなる。
【0009】しかし、本発明においては、リードフレームに、これと一体の金属製アイランドが形成されており、このアイランド部に放熱部材が接着される。このアイランドは金属体であるので剛性があり、そのため放熱部材が接着されても、この配線基板が上に押されて変形されにくい。従って、リードフレーム下面と放熱部材下面との距離のばらつきが小さくなり、所定の公差内に入れるのが容易となる。更に、配線基板の変形がほとんどないので、リード接続部に応力が負荷されることも少なく、接続信頼性が低下することも少ない。
【0010】また、他の本発明においては、図2に示すように、例えばグランドピンのリードと一体のアイランド部を設け、この剛性のあるアイランド部に導電性接着剤により直接放熱部材を接着する。従って、上記作用効果を備えるとともに、放熱部材をグランド層として活用でき、電子部品搭載装置としての電気特性が向上する。
【0011】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を具体的に説明する。本実施例の電子部品搭載装置は、図1に示すように、配線基板1と、電子部品2と、ボンディングワイヤー3と、上下導通部7と、複数のリードを有するリードフレーム4と、アイランド部43と、樹脂製封止部5と、放熱板6とからなる。この全体形状・大きさは、28.0mm×28.0mm×3.2(厚さ)mmの平板状(リードフレームのアウター部が外部に露出している。)であり、この外周部は図示するように中央部がやや突出している。
【0012】上記配線基板1はガラス布/エポキシ樹脂からなり、その大きさは25.0mm×25.0mm×0.4(厚さ)mmである。尚、ガラス布/エポキシ樹脂の代わりに、ガラス布とビスマレイミド・トリアジン樹脂又はポリイミド等の耐熱性樹脂とからなる基材であっても良い。そして、この表面には所定の導電パターン(銅箔製)11、電子部品収納用貫通孔(約13.0×13.0mm)12及びスルーホール(約0.3mmφ)13が形成されている。この導電パターン11は、通常行われるエッチングにより形成され、この表面にはニッケル/金等によるめっき層が施されている。更に、導電パターン11上の一部にはソルダーレジスト層14が形成さている。
【0013】上記配線基板1に設けられた電子部品収納用貫通孔12内には、電子部品〔大きさ;11.0mm×11.0mm×0.4(厚さ)mmの半導体素子チップ〕2が接着剤層62により放熱板6上に接着固定されている。そして、この電子部品2は、ボンディングワイヤー3により導電パターン11に接続されている。
【0014】上記上下導通部7は、スルーホール内周面にめっき形成された内周面めっき部71と、この内周面めっき部71と接続されるとともにスルーホール開口縁部に形成された一対(表裏一対)の補助電極部72a、72b(上記導電パターン11と一体形成されている。)と、上記内周面めっき部71内及び上記一対の補助電極部72a、72b表面に形成された半田柱部73とからなる。この半田柱部73は溶融半田を吸い込ませることにより形成される。
【0015】上記リードフレーム4は、その一端部が上記上下導通部7の裏面側と上記半田柱部73を介して電気的に接続されている。そして、このリードフレーム4は、このリードフレームのうちの、スルーホール13の開口位置よりも外側(図1では左側)の位置にて、配線基板1に接着剤層44を介して接着されている。更に、この四角状配線基板1の四方に208ピンが外方向に延在している。この各リードフレーム4の厚みは0.15mm、アウターリード部41のピッチは0.5mm、その幅は0.2mmである。上記アイランド部43は、リードフレーム4と一体的に形成されており、しかも配線基板1の中央部下方側に絶縁性接着剤層45を介して接着配置されている。このアイランド部43の平面形状は、四角リング状であり、その中央の空間部に電子部品2を収容配置させる。
【0016】上記放熱板6は17.0mm×17.0mm×1.5(厚さ)mmの大きさで、アイランド部43と同平面形状の四角板であり、アイランド部43の下方に絶縁性接着剤層45を介して接着固定されている。尚、電子部品2は接着剤層62を介して、放熱板6の上面に接着固定されている。また、このアイランド部43の平面形状の大きさは、例えば図3に示すように、放熱板6の平面形状の大きさよりも大きくして、この剛性をより高めたり、更に確実に接着できるようにすることもできる。
【0017】上記樹脂製封止部5は、電子部品2、ボンディングワイヤー3、配線基板1、リードフレーム4のうちのインナーリード部42及び放熱板6の側周部(底面は露出している。)を覆って封止している。これは、金型の所定のキャビティ内にこれらの組付け体を配置し、下金型等の所定位置に設けられたランナーから、封止用樹脂(エポキシ樹脂組成物、商品名;「MP−7100」、日東電工(株)製)が注入されて製作される。
【0018】本実施例の搭載装置においては、リードフレーム4のインナーリード部41に、これと一体の、剛性ある金属製アイランド部43が形成されており、このアイランド部43に放熱板6が接着される。そのため放熱板6が接着されても、この配線基板1が上に押されて変形されにくい。従って、リードフレーム下面と放熱板下面との距離のばらつきが±0.1mm以下と小さくできる。更に、リード接続部に応力が負荷されることも少なく、接続信頼性が低下することも少ない。
【0019】また、リードフレーム4が配線基板1の下方に配置されているので、複数のリードフレーム4から構成される平面H1 (その上下2分割する中心面をH1 という。)よりも、上方に配線基板1及び電子部品2が位置し、その下方に放熱板6が位置することとなる。また、この平面H1 の上に位置する上側封止部を構成する上側樹脂容積(金型の上側キャビティのうちの、主に電子部品及び配線基板の容積を除いた上部空間)と、この平面の下に位置する下側封止部を構成する下側樹脂容積(金型の下側キャビティのうちの主に放熱板の容積を除いた下部空間)との比は、計算によると、約1.2(926mm3 ):1(742mm3 )である。この場合は、目視上認められる程度の大きさのボイドの発生は認められなかった。尚、上側樹脂容積と下側樹脂容積との比が約2:1、及び約1:2となるように、かえた場合も、上記ボイドは認められなかった。前者の場合は配線基板1及び電子部品2の厚さを小さくし、後者の場合は配線基板1及び電子部品2の厚さを大きくして調整した。尚、リードフレーム4を配線基板1の上面に接着固定したこと及び放熱板の厚みを薄くしたこと以外は、上記と同じ配線基板及び電子部品等を用いて電子部品搭載装置を製作した場合(上側樹脂容積と下側樹脂容積との比が約2.4:1)、はっきりとボイドが、下側封止部の左下側の表面に目視された。更に、本搭載装置における上下導通部は、上記内周面めっき部内及び上記一対の補助電極部のみならず、半田柱部も形成されているので、接続の信頼性も高く、また断線の心配も少ない。
【0020】尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、電子部品搭載装置の全体形状、大きさは特に限定されず、種々選択される。また、使用する電子部品の種類も半導体素子に限らず、コンデンサーチップ等の他の電子部品を用いることもできるし、その大きさ及び形状等も種々選択される。上記ボンディングワイヤー、リードフレーム、グランドピンリード若しくはアイランド部の材質、形状、太さ、長さ、使用数等を種々選択される。
【0021】また、図5に示すように、所定の電子部品は、上記貫通孔内に収納搭載される場合に限らず、電子部品収納用凹部13内に収納配置された構成としてもよい。この場合は、上記実施例に示す場合よりも放熱効果は低下するものの、電子部品と放熱部材との間隔が小さいので、十分に所望の放熱効果を確保できる。また、この場合のアイランド部43aは四角板状であり、その中に空間を有するドーナツ状ではなくなる。更に、上記スルーホールの大きさ、横断面形状も特に限定されない。上記補助電極部の平面形状、大きさ等は、導電パターンと内周面めっき部とを電気的に接合するものであれば特に限定されないが、通常、スルーホールの開口縁部に形成されたリング状のもの又は導電パターンの接続端部の幅よりもやや広幅な種々の形状のもの等とすることができる。また、複数のリードフレームから構成される平面H1 の上に位置する上金型キャビティとこの下側に位置する下金型キャビティを同容積としてもよいし、異なったものとしてもよい。
【0022】また、図2に示すように、上記第1発明に示す、配線基板1、電子部品2、ボンディングワイヤー3、上下導通部7、リードフレーム4、放熱部材6及び樹脂製封止部5に加え、上記配線基板1上に形成されるグランドピンリード9を備え、更に、アイランド部93は、該グランドピンリード9のインナーリード部91に接続され且つ上記配線基板1の中央部下方側に接着剤層63を介して接着配置される構成からなるものとすることができる。
【0023】更に、図3に示すように、リードフレーム4は配線基板1の裏面側に接着されるに際して、この配線基板1に設けられたスルーホール13の開口位置よりも内側と外側の両方の位置(2つの接着剤層;44、46の位置)にて接着されているものとすることができる。この場合は、接着剤層が外側のもの44のみならず、内側のもの46をも有するので、この接合部分に負荷が掛かっても46の接着剤層をも緩衝作用を示し、そのためこの部分の応力分散を図ることができる。
【0024】更に、図4に示すように、配線基板の構造を多層(同図では2層)構造1aとしたものとすることができる。このように配線基板1a自身を多層構造とすることにより、より一層コンパクトな装置とすることができるし、また、より大きな放熱板を設けて上側樹脂容積部分と下側樹脂容積部分の樹脂の流れを均一化させることもでき、より一層の放熱効果を高めることができる。
【0025】また、発熱が大きい電子部品を搭載する場合は、放熱部材も大きくする必要があるため、その場合には配線基板の板厚及び/又は電子部品の厚さ(高さ)を大きくして、上側樹脂容積部分と下側樹脂容積部分の樹脂の流れを均一化させることができる。また、使用する放熱部材の形状、大きさも上記の如く、目的等により種々選択使用され、上記実施例に示す平板形状に限らず、比較的高さの大きなブロック状、その他円盤状、六角板状、八角板状等とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例における電子部品搭載装置の縦断面図である。
【図2】本発明に係る、グランドピンリードに接続されるアイランド部を備える電子部品搭載装置の縦断面図である。
【図3】本発明に係る他の態様を示す電子部品搭載装置の一部縦断面図である。
【図4】本発明に係る、複層構造の配線基板を備える電子部品搭載装置の一部縦断面図である。
【図5】リードフレームのインナーリード部に接続されるアイランド部を備えない電子部品搭載装置の縦断面図である。
【図6】従来の電子部品搭載装置の一部縦断面図である。
【符号の説明】
1;配線基板、2;電子部品、3;ボンディングワイヤー、4;リードフレーム、41;インナーリード部、42;アウターリード部、43;アイランド部、5;樹脂製封止部、6;放熱板、7;上下導通部、44、45、61、62;絶縁性接着剤、63;導電性接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも表面に導電パターンが形成され及びスルーホールが形成され更に電子部品収納用貫通孔若しくは電子部品収納用凹部が形成された配線基板と、上記電子部品収納用貫通孔若しくは上記電子部品収納用凹部内に収納搭載される電子部品と、上記導電パターンと該電子部品を接続するボンディングワイヤーと、上記スルーホール内周面にめっき形成された内周面めっき部と、該スルーホール開口縁部に形成された一対の補助電極部と、該内周面めっき部内及び該一対の補助電極部表面に形成される半田柱部とを備える上下導通部と、該上下導通部に電気的に接続される複数のリードフレームと、該リードフレームのインナーリード部に接続され且つ上記配線基板の中央部下方側に絶縁性接着剤層を介して接着配置されるアイランド部と、該アイランド部の下方側に接着配置される放熱部材と、上記電子部品、上記ボンディングワイヤー、上記配線基板及び上記放熱部材の側周部を封止する樹脂製封止部と、からなることを特徴とする電子部品搭載装置。
【請求項2】 少なくとも表面に導電パターンが形成され及びスルーホールが形成され更に電子部品収納用貫通孔若しくは電子部品収納用凹部が形成された配線基板と、上記電子部品収納用貫通孔若しくは上記電子部品収納用凹部内に収納搭載される電子部品と、上記導電パターンと該電子部品を接続するボンディングワイヤーと、上記スルーホール内周面にめっき形成された内周面めっき部と、該スルーホール開口縁部に形成された一対の補助電極部と、該内周面めっき部内及び該一対の補助電極部表面に形成される半田柱部とを備える上下導通部と、該上下導通部に電気的に接続される複数のリードフレームと、上記配線基板上に形成されるグランドピンリード又は電源ピンリードと、該グランドピンリード又は電源ピンリードのインナーリード部に接続され且つ上記配線基板の中央部下方側に接着剤層を介して接着配置されるアイランド部と、上記アイランド部の下方側に導電性接着剤層を介して接着配置される放熱部材と、上記電子部品、上記ボンディングワイヤー、上記配線基板及び上記放熱部材の側周部を封止する樹脂製封止部と、からなることを特徴とする電子部品搭載装置。
【請求項3】 上記リードフレームは上記配線基板の裏面側に接着されるに際して、該配線基板に設けられた上記スルーホールの開口位置よりも内側と外側の両方の位置にて接着されている請求項1又は2記載の電子部品搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平8−274220
【公開日】平成8年(1996)10月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−97742
【出願日】平成7年(1995)3月29日
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)