説明

電子部品

【課題】簡単かつ安価に不要電磁波の輻射を軽減し放熱することができる電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品3の放熱板取付面には、放熱板1との間に熱伝導シート2が装着されている。電子部品3の放熱板取付面は、電子部品3の内部に配置されているノイズ発生源4を識別可能に構成されている。熱伝導シート2には、このノイズ発生源4の上部にあたる位置に貫通孔21が形成されている。この貫通孔21は、放熱板1と電子部品3とに挟まれてノイズ減衰空間を形成する。ノイズ発生源4から生じる電磁ノイズは、貫通孔21によるノイズ減衰空間を伝播したり、ノイズ発生源4から離れた箇所に装着されている熱伝導シート2を伝播したりして伝播ロスを生じて放熱板1に伝播する。そのため、放熱板1から輻射される電磁ノイズが軽減される。また、電子部品3から生じた発熱は、熱伝導シート2及びノイズ減衰空間を伝導して放熱板1から放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板と熱伝導シートとを備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品から発生する発熱によって電子部品が誤動作や破損等しないように、電子部品にヒートシンク(放熱板)を取り付け、ヒートシンクによって電子部品からの発熱を吸熱し放熱することが行われている。また、電子部品からの熱が効率良くヒートシンクに伝導するように、電子部品とヒートシンクとの間に熱伝導シートを取り付け、電子部品とヒートシンクとの密着性を高めることが行われている。
【0003】
ヒートシンクは、金属性材料により構成されるため、熱伝導シートを介して電子部品と電磁的に結合し、電子部品の内部で発生する電磁ノイズを外部に放射するアンテナとして機能することがある。電子部品から外部に輻射される電磁波は、一定レベル以上になると人体や他の電子機器に悪影響を与える電磁妨害(EMI:Electromagnetic Interference)を生じる。そのため、電子部品とヒートシンクとの間に、電磁ノイズを吸収する電磁ノイズ吸収シートを取り付けることで、電子部品からの電磁ノイズがヒートシンクに伝播するのを防いだりする。
【0004】
一方、電磁ノイズを吸収可能な材料において、電子部品からの熱を十分にヒートシンクに伝導させるほどの高い熱伝導効率を有するものはない。そのため、電磁ノイズ吸収シートは、電子部品からの熱を十分にヒートシンクに伝導させることができない。
【0005】
これに対し、特許文献1の技術では、電磁ノイズ吸収シートに複数の貫通孔を形成し、形成された貫通孔に高い熱伝導率の材料を充填するとともに、この電磁ノイズ吸収シートと熱伝導シートとを積層したものを電子部品とヒートシンクとの間に介設させることで、不要輻射を低減させるとともに放熱効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−022738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、電磁ノイズ吸収シートに形成された複数の貫通孔に高い熱伝導率の材料を充填することで、電磁ノイズ吸収シートを熱伝導性の良いものに変えているため、このような専用のシートを作成することにより材料費等によるコストが嵩むという問題がある。特に、近年では製品の低価格化が進んでいるため、コストを抑えた製品開発が望まれている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単かつ安価に不要電磁波の輻射を軽減するとともに放熱することもできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子部品は、熱伝導シートと放熱板とが取り付けられた電子部品であって、前記熱伝導シートには、貫通孔又は溝が形成され、前記貫通孔又は前記溝は、電磁ノイズを生じるノイズ発生源の上部に位置し、前記貫通孔又は前記溝と前記放熱板と前記熱伝導シートが取り付けられた面によって形成される空間により不要輻射を軽減することを特徴とする。
また、前記熱伝導シートが取り付けられる面は、前記ノイズ発生源の位置が識別可能に構成されてもよい。
また、前記熱伝導シートが取り付けられる面は、透明又は半透明であってもよい。
また、前記熱伝導シートが取り付けられる面は、前記ノイズ発生源の位置に印が付けられてもよい。
また、前記熱伝導シートは、前記貫通孔又は前記溝を形成するための切れ込みが予め設けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単かつ安価に不要電磁波の輻射を軽減するとともに放熱することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る電子部品の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子部品における熱伝導シートの構造を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る放熱機能とノイズ輻射抑制機能付き電子部品100の断面図である。電子部品3は、集積化され、パッケージングされている。電子部品3の内部には、電磁ノイズを発生させるノイズ発生源4が含まれている。ノイズ発生源4は、例えば高周波回路やスイッチング回路、高電力回路、ディジタル回路、漏洩磁束発生回路等である。
【0014】
電子部品3は、そのパッケージにおいて、放熱板1(ヒートシンク)が取り付けられる放熱板取付面が、ノイズ発生源4の位置を認識できるように構成されている。例えば、放熱板取付面は、ノイズ発生源4を目視できるように透明又は半透明の例えばエポキシ樹脂等の材料で構成されてもよいし、ノイズ発生源4の位置に印が付けられてもよい。なお、放熱板取付面の透明度は、電子部品3の内部に配置されているノイズ発生源4を識別可能な程度であればよい。また、パッケージ全体が透明又は半透明であってもよい。ここでは、放熱板取付面が透明であるものとして説明する。なお、放熱板取付面は、熱伝導シート取付面でもある。
【0015】
電子部品3の放熱板取付面には、放熱板1と電子部品3とを密着させて電子部品3と放熱板1との間の熱伝導率を向上させるための熱伝導シート2が装着される。熱伝導シート2は、柔軟で粘着性があり、例えばシリコン等により構成される。また、熱伝導シート2は、絶縁性を有していることが望ましい。放熱フィンを備えた放熱板1は、熱伝導シート2の上面に装着され、熱伝導シート2を介して電子部品3から伝導される熱を放散する。このように、電子部品3の放熱板取付面には、熱伝導シート2及び放熱板1が順次取り付けられている。
【0016】
このとき、熱伝導シート2には、ノイズ発生源4の上部となる位置に貫通孔21が形成されている。この貫通孔21により、電子部品3と放熱板1との間には電磁ノイズの伝播を減衰させるノイズ減衰空間が形成される。ノイズ発生源4から生じる電磁ノイズは、上部に貫通孔21があるため、ノイズ減衰空間を伝播したり、ノイズ発生源4から少し遠い箇所に装着されている熱伝導シート2を伝播したりすることで、伝播ロスを生じて放熱板1に伝播する。つまり、ノイズ減衰空間を形成することで、放熱板1から輻射される電磁ノイズを弱めることができる。
【0017】
特に、ノイズ発生源4の上部に貫通孔21を形成することで、ノイズ発生源4から放熱板1までの伝播距離が短いために強い電磁波を輻射してしまう部分について、ノイズ減衰空間により空中伝播させることで、電磁ノイズに伝播ロスを発生させることができる。また、ノイズ発生源4から生じる電磁ノイズが、貫通孔21によるノイズ減衰空間を伝播せずに熱伝導シート2を伝播したとしても、ノイズ発生源4から放熱板1までにおける伝播距離が比較的長いので、これも伝播ロスを生じることになる。また、その電磁ノイズは、ノイズ発生源4から少し離れたものであるから弱い電界強度となる。そのため、貫通孔21は、ノイズ発生源4よりも大きく形成されたほうが電磁ノイズを抑制できる。
【0018】
このように、本実施形態によれば、ノイズ発生源4から放熱板1までにおける電磁ノイズの伝播距離が比較的短い箇所の熱伝導シート2を取り除いてノイズ減衰空間を形成することで、安価に電磁ノイズの輻射を軽減しEMIを抑制することができる。
【0019】
ところで、電子部品3から発生する熱は、電子部品3に接している熱伝導シート2とノイズ減衰空間とを伝導して放熱板1から放散される。そのため、上記構成においても電子部品3に対する冷却を行うことができる。
【0020】
したがって、本実施形態によれば、熱と電磁波ノイズを発生する電子部品3における熱対策とノイズ対策との両方の効果を得ることができる。
【0021】
なお、ノイズ減衰空間は、熱伝導シート2の厚みと貫通孔21の大きさとによってその広さが決定されるが、広くなるほど熱伝導効率が劣化するため、熱伝導効率と電磁ノイズ抑制効果とのバランスを考慮して調整されるとよい。
【0022】
また、上述のとおり、熱伝導シート2はノイズ発生源4の位置に合わせて貫通孔21が形成される必要がある。熱伝導シート2は、粘着性を有するため装着時の位置合わせ作業が難しい。そのため、ノイズ発生源4の位置を確認しながら貫通孔21を形成し、ノイズ発生源4の位置と貫通孔21の位置とを合わせながら熱伝導シート2を電子部品3に貼り付けることは困難である。また、電子部品3に装着した後に貫通孔21を形成する場合において、例えば刃物等で熱伝導シート2に切れ込みを入れると電子部品3を傷つける虞がある。
【0023】
そこで、図2に示すように、熱伝導シート2を電子部品3に装着した後に貫通孔21を簡易に形成できるように熱伝導シート2を構成するとよい。この熱伝導シート2は、その全面に格子状の切れ込み22が設けられ、切れ込み22に沿って切り抜き可能に構成されている。
【0024】
これによれば、電子部品3に熱伝導シート2を装着した後に、切れ込み22に沿って所望の部位の熱伝導シート2を切り離すことができるので、簡易に所望の位置に貫通孔21を形成することができる。そのため、熱伝導シート2を装着する前にノイズ発生源4の位置及び大きさを目測し、電子部品3に熱伝導シート2を装着した後に、先ほど目測したノイズ発生源4の上部辺りの熱伝導シート2を切れ込み22に沿って切り離すことで、簡易にノイズ発生源4の位置に合わせて貫通孔21を形成することができる。そして、貫通孔21が形成された熱伝導シート2の上に放熱板1を装着し押圧することで、ノイズ減衰空間が形成され、図1に示す放熱機能とノイズ輻射抑制機能付き電子部品100を製造することができる。
【0025】
なお、熱伝導シート2に設ける切れ込み22は、格子状に限らず他の形状であってもよい。また、切り抜き可能に構成される切れ込み22は、熱伝導シート2の全面ではなく一部に設けられてもよい。
【0026】
また、熱伝導シート2は、ノイズ発生源4の位置を確認できるように透明又は半透明で構成されてもよい。これによれば、熱伝導シート2を装着した後でもノイズ発生源4の位置が認識できるので、いずれの切れ込み22に沿って切り離せばよいのか簡易に分かる。
【0027】
また、熱伝導シート2が肉厚の場合等は、貫通孔21ではなく溝が形成されてもよい。この場合、熱伝導シート2における上記切れ込み22に沿って所望の部位の表面側の所定厚さだけを剥ぎ取ることで、溝が形成されるようにしてもよい。
【0028】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々様々に変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1・・・放熱板
2・・・熱伝導シート
3・・・電子部品
4・・・ノイズ発生源
21・・・貫通孔
22・・・切れ込み
100・・・放熱機能とノイズ輻射抑制機能付き電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導シートと放熱板とが取り付けられた電子部品であって、
前記熱伝導シートには、貫通孔又は溝が形成され、
前記貫通孔又は前記溝は、電磁ノイズを生じるノイズ発生源の上部に位置し、
前記貫通孔又は前記溝と前記放熱板と前記熱伝導シートが取り付けられた面によって形成される空間により不要輻射を軽減する
ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記熱伝導シートが取り付けられる面は、前記ノイズ発生源の位置が識別可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記熱伝導シートが取り付けられる面は、透明又は半透明であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記熱伝導シートが取り付けられる面は、前記ノイズ発生源の位置に印が付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記熱伝導シートは、前記貫通孔又は前記溝を形成するための切れ込みが予め設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−258882(P2011−258882A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134155(P2010−134155)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】