説明

電子部品

【課題】電歪現象に起因して基板において発生する振動音の抑制効果を向上させることができる電子部品を提供する。
【解決手段】セラミックコンデンサ10は、セラミックコンデンサ素子11と金属端子12とを含む。セラミックコンデンサ素子11は、誘電体素体21の長手方向における両端部に一対の端子電極22を有する。と一対の端子電極22には、それぞれ金属端子12が接続される。金属端子12は、端子電極22に接続される電極接続部32と、基板の電極14A、14Bに接続され、誘電体素体21と対向するように設けられる外部接続部31と、セラミックコンデンサ素子11の下面と外部接続部31との間に隙間を有するように電極接続部32と外部接続部31との間に設けられる中間部33と、電極接続部32と中間部33とを接続する折り返し部34とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装される電子部品に係り、特に積層型のセラミックコンデンサに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話など各種携帯型の情報処理装置においては、電子部品として、コンデンサ、インダクタ、バリスタ又これらを複合した複合部品を回路基板に表面実装することにより、高密度に電子部品を搭載して回路基板全体の大きさの小型化が図られている。このような回路基板に搭載されるコンデンサとして、積層型のセラミックコンデンサが用いられている。
【0003】
積層型のセラミックコンデンサは、誘電体と内部電極とが交互に積層されている。誘電体を形成するセラミック材料には、誘電率が比較的高いチタン酸バリウム等の強誘電体材料が一般的に用いられている。このような積層型のセラミックコンデンサに交流電圧を印加すると、誘電体を形成するセラミック材料は電歪現象を伴うので、セラミックコンデンサは印加電圧の大きさに応じた機械的歪みを生じる。このため、セラミックコンデンサに交流電圧を印加すると、誘電体の電歪現象によりセラミックコンデンサが振動する。
【0004】
この電歪現象によるセラミックコンデンサの振動は、セラミックコンデンサが実装されている基板に伝播する。この基板に伝わった振動により、基板において振動音(音鳴り)が発生する。特に、より大きな静電容量を得るため、複数のセラミックコンデンサを基板上に並列に接続した場合等には、複数のセラミックコンデンサが同じ周期で振動するため、基板に伝わる振動が増幅されるため、振動音がより発生し易くなる。
【0005】
そこで、従来のセラミックコンデンサとして、基板の振動音を低減すべく、側面に一対の端子電極(外部電極)を有するセラミックコンデンサ素子と、一対の端子電極に接続される一対の金属端子とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このセラミックコンデンサにおいて、一対の金属端子は、端子電極に接続される電極接続部と、回路基板に接続される外部接続部とを有し、電極接続部が、セラミックコンデンサ素子の幅方向の一方の側面に接続されている。このため、金属端子は、そのばね性により、セラミックコンデンサ素子の振動を吸収していると推測され、これにより、基板から発生する振動音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3906995号公報
【特許文献2】特許第3206734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、金属端子のばね性を向上、より具体的には、金属端子のばね定数を小さくすることで、振動音をより低減できることが見出された。しかしながら、従来のセラミックコンデンサは、金属端子は平板の金属部材を成型して得られたものであるため、セラミックコンデンサの高さを変えずに、金属端子のばね性を向上させることは難しかった。そのため、セラミックコンデンサ素子の振動をさらに吸収するべく、金属端子のばね性を高めることは困難であった。
【0008】
また、金属端子のばね性を向上させる別の事例として、金属端子のそれぞれは、先端部が端子電極の一つに接続され、中間部に折り返し部を有し、前記折り返し部の後方に外部と接続される端子部を有するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2の構造では、前記金属端子の幅が前記端子電極の幅と略同等のため、金属端子のばね性を向上させることは難しかった。そのため、セラミックコンデンサ素子の振動をさらに吸収するべく、金属端子のばね性を高めることは困難であった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板において発生する振動音の抑制効果を向上させることができる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らはセラミックコンデンサについて鋭意研究をした。その結果、セラミックコンデンサ素子と基板との間に位置する金属端子を、セラミックコンデンサ素子の側面に接合すると共に、等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance;ESR)が増加しない程度に細くし、かつ中間部に折り返し部を有することにより、基板から端子電極までの延べ長さを長くすることで、コンデンサで発生した振動が基板に伝播するのを効率よく抑制でき、基板において発生する振動音を抑制する効果を向上させることができることを見出した。本発明は、係る知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
本発明に係る電子部品は、一対の端子電極を有する少なくとも1つの電子部品素子と、前記一対の端子電極とそれぞれ電気的に接続される一対の金属端子とを有した電子部品であって、前記一対の端子電極は、少なくとも、前記電子部品素子の長さ方向における両端面及び前記電子部品素子の幅方向における側面に接続されていると共に、前記金属端子は、前記素子の幅方向の側面における前記端子電極に接続される電極接続部と、前記電子部品が搭載される基板の電極に接続され、前記電子部品素子と対向するように設けられる外部接続部と、前記素子の下面と前記外部接続部との間に隙間を有するように、前記電極接続部と前記外部接続部との間に設けられる中間部と、前記中間部と前記電極接続部とを、両者が対向するように接続する折り返し部と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記金属端子のそれぞれは、金属部材で構成され、前記端子電極の側面に接続される電極接続部と、外部に接続され、前記誘電体素体と対向するように設けられる外部接続部と、前記誘電体素体の下面と前記外部接続部との間に隙間を有するように前記電極接続部と前記外部接続部とを接続する中間部とを有する。前記電極接続部は、前記電子部品素子の幅方向の側面において、前記端子電極に接続される部分を含んでいる。前記外部接続部は、前記電子部品素子の下面(外部接続部側の面)と前記電子部品が搭載される基板とを隔てるように曲げられている。前記中間部は、折り返し部を有することにより、前記外部接続部から前記電極接続部までの延べ長さが長くなっている。前記折り返し部は、前記中間部と前記電極接続部とを接続する。このような構造により、本発明の電子部品は、基板において発生する振動音の抑制効果を向上させることができる。また、本発明の電子部品は、基板に対する積層方向の向き(縦横)に関わらず、振動音の抑制効果を向上させることができる。
【0013】
前記基板の電極から前記電極接続部と前記端子電極とを接続する接続用材料までの前記金属端子に沿った距離Lに対する前記金属端子の幅bの比(b/L)は、特に限定されるものではないが、0.1以上0.3以下であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、上述した距離Lに対する金属端子の幅bの比(b/L)を上述した範囲内とすることで、電子部品素子で発生した振動が基板に伝播するのを抑制しつつ、接触不良による等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance;ESR)を従来と同様に小さく維持することができる。よって、電子部品素子で発生した振動が基板に伝播されるのを効率よく抑制して基板から発生する振動音を抑制する効果を向上させると共に、ESRを小さくすることができる。
【0015】
前記端子電極は、対向して配置される一対の前記電極接続部によって挟持されることが好ましい。このようにすれば、金属端子が有する一対の電極接続部が電子部品素子を挟み込むので、電子部品素子が安定する。
【0016】
本発明の好ましい態様として、前記端子電極と前記金属端子の電極接続部との間が、高温はんだ又は導電性接着剤により接続されることが好ましい。高温はんだ或いは導電性接着剤により電子部品素子の端子電極と金属端子との間が接続されることで、端子電極と金属端子との間が導電性を確保しつつ機械的に接続されるため、電子部品素子で発生した振動を効率よく抑制し、振動音の抑制効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、基板において発生する振動音の抑制効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す斜視図である。
【図2−1】図2−1は、図1中のY軸に直交する面でセラミックコンデンサを切ったときの断面図である。
【図2−2】図2−2は、図2−1のX軸と平行な方向からセラミックコンデンサを見た図である。
【図3】図3は、図1中、Y軸と平行な方向から見た時の金属端子を示す図である。
【図4】図4は、図1中、X軸と平行な方向から見た時の図である。
【図5−1】図5−1は、金属端子を示す正面図である。
【図5−2】図5−2は金属端子の側面図である。
【図6】図6は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの側面図である。
【図7】図7は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの正面図である。
【図8】図8は、第3実施形態に係るセラミックコンデンサの側面図である。
【図9】図9は、第3実施形態に係るセラミックコンデンサの正面図である。
【図10】図10は、第4実施形態に係るセラミックコンデンサの側面図である。
【図11】図11は、第4実施形態に係るセラミックコンデンサの正面図である。
【図12−1】図12−1は、比較例1に係るセラミックコンデンサを示す図である。
【図12−2】図12−2は、比較例1に係るセラミックコンデンサを示す図である。
【図13−1】図13−1は、比較例2,3に係るセラミックコンデンサを示す図である。
【図13−2】図13−2は、比較例2,3に係るセラミックコンデンサを示す図である。
【図14−1】図14−1は、比較例4に係るセラミックコンデンサを示す図である。
【図14−2】図14−2は、比較例4に係るセラミックコンデンサを示す図である。
【図15】図15は、音圧の測定を行なう際に用いた試験装置の構成を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適に実施するための形態(以下、実施形態という。)につき、詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。以下においては、電子部品としてセラミックコンデンサを例に説明するが、電子部品はこれに限られるものではない。例えば、電子部品としては、コンデンサ、インダクタ、バリスタを使用することができる。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す斜視図である。図2−1は、図1中のY軸に直交する面でセラミックコンデンサを切ったときの断面図である。図2−2は、図2−1のX軸と平行な方向からセラミックコンデンサを見た図である。図1、図2−1、図2−2に示すように、電子部品としてのセラミックコンデンサ10は、電子部品素子としてのセラミックコンデンサ素子11と一対の接続端子(金属端子)12とを含む。尚、本実施形態では、セラミックコンデンサ素子11の長さ方向をX、幅方向をY、厚さ方向をZとする。
【0021】
セラミックコンデンサ10は、回路基板(以下、「基板」という。)13上に搭載されている。セラミックコンデンサ10は、1つのセラミックコンデンサ素子11により構成されているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、セラミックコンデンサ10は、セラミックコンデンサ素子11を複数積層して組み合わせてもよい。基板13は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、PDAや携帯電話等の小型の処理装置に用いられる。この基板13のセラミックコンデンサ10が実装される表面には、基板電極14A、14Bが設けられている。基板電極14Aからは配線15Aが延び、基板電極14Bからは配線15Bが延びている。一対の金属端子12は、はんだ16によって基板電極14A、14Bに各々はんだ付けされる。
【0022】
セラミックコンデンサ素子11は、誘電体素体21と、一対の端子電極22とを有する。セラミックコンデンサ素子11は、積層型のセラミックコンデンサであり、略直方体形状に形成される。セラミックコンデンサ素子11は、その下面(高さ方向における一方の面)が、回路基板13と対向する対向面となるように配置されている。一対の端子電極22は、誘電体素体21の長さ方向における両端面と、誘電体素体21の両端面の縁部から所定の長さ分だけ内側に向かって延びるように誘電体素体21の周囲を囲む部位とに設けられている。
【0023】
誘電体素体21は、複数の誘電体23と、複数(例えば100層程度)の内部電極24とを有している。誘電体素体21は、複数の誘電体23と複数の内部電極24とを交互に積層して形成されている。誘電体素体21は、セラミックグリーンシート(未焼成セラミックシート)を複数枚積層した積層体を加熱圧縮して一体化して、切断し、脱脂し、焼成することにより得られた直方体状の焼結体である。誘電体23と内部電極24との積層方向は、セラミックコンデンサ素子11の厚さ方向Zである。誘電体素体21は、両端面並びに上面、下面を含む四方側面を有する直方体形状に形成されている。
【0024】
誘電体23は、例えば、誘電率の高い強誘電体材料としてチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミックス材料で構成され、複数の誘電体層で形成されている。誘電体23としてチタン酸バリウムを用いて構成された誘電体素体21は、誘電体としての機能を有し、電界が加えられると歪みが生じる。このため、セラミックコンデンサ素子11は、交流電圧が印加されると、交流電圧の大きさに応じた機械的歪みを生じ、この機械的歪みが振動となって基板13に伝播することで、基板13が振動し、この振動が可聴周波数帯域である場合、基板13の振動が、振動音として現れることになる。
【0025】
内部電極24は、一端が端子電極22に接続され、他端が開放端になっている。対向する一対の端子電極22に各々接続している内部電極24同士が誘電体23を介して交互に対向し、所定間隔を持って複数積層されている。内部電極24を構成する材料としては、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料であれば用いることができ、例えば、卑金属であるNiを導電性材料として含んだもの等が用いられる。
【0026】
端子電極22は、誘電体素体21の表面の両端側にそれぞれ設けられ、内部電極24と接続している。端子電極22は、卑金属であるCuを主成分として含有するものが用いられ、Cu粉末を含有する導電性ペーストをセラミックコンデンサ素子11の外表面に塗布して焼き付けることによって形成されている。端子電極22は、複数の金属電極層で構成されていてもよく、例えば、Cuを主成分とした下地電極に、Niめっき層、Snめっき層を形成するようにしてもよい。セラミックコンデンサ素子11の一対の端子電極22に電圧を印加すると、誘電体素体21に電荷が蓄積される。
【0027】
図2−1、図2−2に示すように、端子電極22は、誘電体素体21の長さ方向の両側に備えられ、それぞれは、誘電体素体21の長さ方向の両面101A、101B及び幅方向の両側面102、103に付着されている。更に、一般的には、端子電極22は、誘電体素体21の厚さ方向の両面、即ち、上面104及び下面105にも付着されている。
【0028】
図3は、図1中、Y軸と平行な方向から見た時の金属端子を示す図であり、図4は、図1中、X軸と平行な方向から見た時の図である。図3、図4に示すように、金属端子12は、基板電極14A、14Bと一対の端子電極22とをそれぞれ接続するように一対設けられている。金属端子12は、端子電極22と接続用材料としてのはんだ25ではんだ付けにより接続されている。
【0029】
図5−1は、金属端子を示す正面図であり、図5−2は金属端子の側面図である。図5−1、図5−2中、金属端子12の厚さをt、幅をb、基板13の基板電極14A(14B)から、電極接続部31とセラミックコンデンサ素子11の端子電極22とを接続するはんだ25までの金属端子12に沿った距離(接続端子取付長さ)をLとする。このとき、金属端子12のばね定数Kは、下記式(1)で表すことができる。下記式(1)中のEは、金属端子12のヤング率である。本実施形態において、金属端子12は、後述する折り返し部34を有するが、接続端子取付長さLは、折り返し部34を含んだ長さである。
【0030】
【数1】

【0031】
金属端子12のばね定数Kが小さい程、セラミックコンデンサ素子11の電歪に起因する振動音を抑制する効果を高くすることができる。金属端子12は、セラミックコンデンサ素子11の端子電極22と基板13の基板電極14Aとを電気的に接続するものであるため、導電性が必要である。導電性を有する材料としては金属材料があるが、金属材料は一般にヤング率が高い。このため、板状の金属材料を折り曲げて成型したのみでは、接続端子のばね定数Kを小さくすることには限界がある。
【0032】
図5−1、図5−2に示すように、第1実施形態では、金属端子12は、金属材料で構成され、電極接続部32と、外部接続部31と、中間部33と、折り返し部34とを有する。具体的には、電極接続部32は、セラミックコンデンサ素子11の長さ方向Xに誘電体素体21の側面102および103側における端子電極22と、はんだ25により接続されている。外部接続部31は、誘電体素体21の下面と対向するように設けられ、基板電極14A、14Bとはんだ16により接続されている。中間部33は、誘電体素体21の側面102および103と基板13との間に隙間を有するように電極接続部32と外部接続部31との間に設けられている。折り返し部34は、電極接続部32と中間部33とを両者が対向するように接続する部分である。金属端子12は、電極接続部32と、中間部33と、折り返し部34とをそれぞれ一対有している。そして、外部接続部31は、一対の中間部33を連結する。
【0033】
金属端子12の幅bは、特に限定されるものではないが、セラミックコンデンサ素子の接続端子取付長さLの比(b/L)は、0.1以上0.3以下とすることが好ましい。金属端子12の中間部33の幅bとセラミックコンデンサ素子の長さLの比(b/L)を上記範囲内とすることで、セラミックコンデンサ素子11で発生した振動が基板13に伝播するのを抑制しつつ、ESRを従来と同様に小さく維持することができる。
【0034】
また金属端子12は、折り返し部34を有することにより、外部接続部31から端子電極22までの延べ長さ、すなわち、接続端子取付長さLが長くなっている。このため、ばね定数Kを小さくできるので、セラミックコンデンサ素子11で発生した振動が基板13に伝播することにより発生する振動音を抑制することができる。
【0035】
セラミックコンデンサ素子11の端子電極22と金属端子12の電極接続部32とを接続する接続用材料としては、高温はんだ又は導電性接着剤を用いることが好ましい。高温はんだ或いは導電性接着剤により端子電極22と金属端子12との間を接続することで、端子電極22と金属端子12との間の導電性を確保しつつ安定して接続できる。このため、セラミックコンデンサ素子11の端子電極22と金属端子12の電極接続部32との間を、高温はんだ又は導電性接着剤で接続してもセラミックコンデンサ素子11で発生した振動を金属端子12で吸収する際の妨げとならず、端子電極22と金属端子12との接続を維持しつつ、金属端子12で振動が基板13に伝播するのを安定して抑制することができる。
【0036】
このように、本実施形態に係るセラミックコンデンサ10によれば、金属端子12がセラミックコンデンサ10で発生した振動が基板13に伝播するのを効率よく抑制し、基板13で発生する振動音の抑制効果を向上させることができると共に、ESRを低くすることができる。ここで、ESRは、セラミックコンデンサ素子11の各部位(端子電極22、接合材(はんだ25)、金属端子12)の抵抗の合計で表される。金属端子12の抵抗は、比抵抗および長さに比例し、断面積に反比例する。よって、幅が小さすぎると断面積が小さくなるため、抵抗が高くなり、その結果ESRが高くなる。本実施形態では、端子電極22の幅方向の両側に金属端子12を取り付けるので、金属端子12の幅bの総和を確保できる。すなわち、片側のみに比べ幅bを2倍にできる。その結果、ESRを低くすることができる。
【0037】
また、複数のセラミックコンデンサ10を基板13に搭載した際、複数のセラミックコンデンサ10が同じ周期で振動することで基板13に伝わる振動が増幅されるため、振動音が共鳴することにより発生する振動音の大きさも増大する。本実施形態に係るセラミックコンデンサ10は、金属端子12がセラミックコンデンサ10で発生した振動が基板13に伝播するのを抑制できる。このため、複数のセラミックコンデンサ10を基板13に搭載しても、複数のセラミックコンデンサ10の振動が共鳴することにより基板13から発生する振動音の大きさが増大するのを抑制することができる。
【0038】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの側面図であり、図7は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの正面図である。図6および図7を参照して、第2実施形態に係るセラミックコンデンサ10aについて説明する。なお、第2実施形態のセラミックコンデンサ10aの説明では、第1実施形態のセラミックコンデンサ10と重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ記載する。第2実施形態に係るセラミックコンデンサ10aは、その金属端子12aが、第1実施形態の金属端子12と異なっている。以下、第2実施形態のセラミックコンデンサ10aに適用された金属端子12aについて説明する。
【0039】
金属端子12aは、一対の基板電極14A、14Bと一対の端子電極22とをそれぞれ接続するように一対設けられている。各金属端子12aは、帯状の金属平板を折り曲げて形成されている。具体的に説明すると、各金属端子12aは、基板電極14A、14Bに接続される外部接続部31aと、端子電極22に接続される電極接続部32aと、外部接続部31aと電極接続部32aとの間に設けられた中間部33aと、電極接続部32aと中間部33aとを接続する折り返し部34aとを有している。また、金属端子12aの外部接続部31aは、第1実施形態と異なり、分離している。すなわち、金属端子12aは、2つの構造体を有している。このような構造により、実施形態2のセラミックコンデンサ10aは、音圧およびESRの特性は第1実施形態と同等だが、外部接続部31aにおいて金属端子12aに使用する材料が第1実施形態より少ない。このため、省資源化につながり、環境負荷を低減できる。
【0040】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係るセラミックコンデンサの側面図であり、図9は、第3実施形態に係るセラミックコンデンサの正面図である。図8および図9を参照して、第3実施形態に係るセラミックコンデンサ12bについて説明する。なお、第3実施形態のセラミックコンデンサ12bの説明では、第1実施形態のセラミックコンデンサ10と重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ記載する。第3実施形態に係るセラミックコンデンサ12bは、その金属端子12bが、第1実施形態の金属端子12と異なっている。以下、第3実施形態のセラミックコンデンサ10bに適用された金属端子12bについて説明する。
【0041】
金属端子12bは、一対の基板電極14A、14Bと一対の端子電極22とをそれぞれ接続するように一対設けられている。各金属端子12bは、帯状の金属平板を折り曲げて形成されている。具体的に説明すると、各金属端子12bは、基板電極14A、14Bに接続される外部接続部31bと、端子電極22に接続される電極接続部32bと、外部接続部31bと電極接続部32bとの間に設けられた中間部33bと、電極接続部32bと中間部33bとを接続する折り返し部34bとを有している。また、金属端子12bの電極接続部32bは、第1実施形態と異なり、端子電極22の一つの側面22S1と電極接続部32bとがはんだ25で接続される(すなわち、金属端子12bは、片持ち構造体を有している)。このような構造により、実施形態3のセラミックコンデンサ12bは、金属端子が1個なので、使用する材料をさらに少なくすることができる。このため、省資源化につながり、環境負荷を低減できる。
【0042】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係るセラミックコンデンサの側面図であり、図11は、第4実施形態に係るセラミックコンデンサの正面図である。図10および図11を参照して、第4実施形態に係るセラミックコンデンサ12cについて説明する。なお、第4実施形態のセラミックコンデンサ12cの説明では、第1実施形態のセラミックコンデンサ10と重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ記載する。第4実施形態に係るセラミックコンデンサ12cは、その金属端子35が、第1実施形態の金属端子12と異なっている。以下、第4実施形態のセラミックコンデンサ12cに適用された金属端子12cについて説明する。
【0043】
金属端子12cは、一対の基板電極14A、14Bと一対の端子電極22とをそれぞれ接続するように一対設けられている。各金属端子12cは、帯状の金属平板を折り曲げて形成されている。具体的に説明すると、各金属端子12cは、基板電極14A、14Bに接続される外部接続部31cと、端子電極22に接続される電極接続部32cと、外部接続部31cと電極接続部32cとの間に設けられた中間部33c1および33c2と、折り返し部34c1および34c2とを有している。
【0044】
また、第1中間部33c1は、外部接続部31cと第2中間部33c2との間にある。第1中間部33c1と第2中間部33c2とは、第1折り返し部34c1が接続する。第2中間部33c2は、第1中間部33c1と電極接続部32cとの間にある。第2中間部33c1と電極接続部32cとは、第2折り返し部34c2が接続する。すなわち、金属端子12cは、中間部および折り返し部を各々2つずつ有している。このような構造により、折り返しが複数なので、Lをより長くすることができる。その結果、金属端子のばね定数をさらに小さくできるので、振動音をさらに低減できる。
【0045】
(評価例)
上記実施形態に係るセラミックコンデンサおよび比較例のセラミックコンデンサを評価した。比較例は、端子電極に対する金属端子の接続構造を異ならせたものである。
【0046】
<実施例1〜7>
セラミックコンデンサ素子は、図1中、長さ方向Xにおける長さが、3.2mmであり、幅方向Yにおける長さが、2.5mmであり、厚さ方向Zにおける長さが、2.5mmである。また、実施例1〜7及び比較例1〜4で用いられる金属端子(42アロイ材、ヤング率(E)132GPa、厚み(t)0.1mm)を設けたセラミックコンデンサにおけるb、b/L、金属端子の中間部における折り返しの有無を下記の表1に示す。ここで、実施例1、3、4、5は図1〜図5−2の形態である。実施例2は図6、7の形態である。実施例6は図8、9の形態である。実施例7は図10、11の形態である。
【0047】
<実施例8>
セラミックコンデンサ素子の長さ方向Xにおける長さを4.5mm、幅方向Yにおける長さを3.2mm、厚さ方向Zにおける長さを2.3mmとし、金属端子の幅bを1.1mmとした以外は、実施例1と同様である。
【0048】
<実施例9>
セラミックコンデンサ素子の長さ方向Xにおける長さを3.2mm、幅方向Yにおける長さを1.6mm、厚さ方向Zにおける長さを1.6mmとし、金属端子の幅bを0.8mmとした以外は、実施例1と同様である。
【0049】
<比較例1〜4>
図12−1〜図14−2は、比較例に係るセラミックコンデンサを示す図である。比較例1は、図12−1、図12−2に示すセラミックコンデンサ110aである。セラミックコンデンサ110aは、金属端子112aが折り返し部を有さないものである。比較例2、3は、図13−1、図13−2に示すセラミックコンデンサ110bであり、寸法bが異なる。セラミックコンデンサ110bは、金属端子112bが折り返し部を有するが、端子電極の両端面に接続されている。比較例4は、図14−1、図14−2に示すセラミックコンデンサ110cである。セラミックコンデンサ110cは、金属端子112cが折り返し部を有さず、かつ端子電極の1つの側面にのみ接続されている。それぞれの寸法を、表1に示す。
【0050】
[評価]
(振動音の大きさ(音圧)の測定)
図15は、音圧の測定を行なう際に用いた試験装置の構成を簡略に示す図である。各セラミックコンデンサを基板に搭載して交流電圧を印加した際に、基板から発生する振動音の大きさ(音圧)を測定した。図15に示すように、試験装置50は、無響箱51と、集音マイク(商品名;MI−1233、小野測器社製)52と、電源装置53と、FFTアナライザ(商品名:DS2100、小野測器社製)54とを備えている。そして、測定対象となるセラミックコンデンサ55は、基板56に設置された状態で、無響箱51内に設置される。セラミックコンデンサ55を設置した基板56は、その両端に正負一対の電極がそれぞれ設けられる。
【0051】
無響箱51は、箱状に形成され、その内壁に吸音材57が設けられている。吸音材57は、グラスウール等を用いており、その表面を波型等に形成することで、音波の接触面積を拡大させ、吸音効果を高めている。
【0052】
電源装置53は、一対の配線58を介して、基板56の正負一対の電極にそれぞれ接続されており、基板56は、配線58に吊り下げられた状態で、セラミックコンデンサ55が無響箱51内の底面に対向するように、無響箱51の中央部分に配置される。電源装置53は、セラミックコンデンサ55へ向けて、周波数を1kHz〜10kHzとし、DCバイアス20Vとして、3Vp−pの交流電圧を印加した。
【0053】
集音マイク52は、無響箱51内の底面に設けられ、無響箱51の中央部分に設置されたセラミックコンデンサ55と所定距離を保つようにして配置される。FFTアナライザ54は、集音マイク52により集音された振動音の大きさ(音圧)を解析した。
【0054】
試験装置50において、電源装置53が基板56へ向けて所定の交流電圧を印加すると、セラミックコンデンサ55で振動が発生し、セラミックコンデンサ55の振動が基板56に伝播され、基板56から振動音が発生する。この振動音を、集音マイク52を用いて集音し、集音した振動音を、FFTアナライザ54で解析することで、基板56から発生する振動音の大きさ(音圧)を測定した。
【0055】
各セラミックコンデンサを設置した基板56から発生した音圧の測定結果を表1に示す。また、比較例1のセラミックコンデンサを用いた場合に発生した音圧を基準となる音圧(100%)とした相対値を示す。音圧は、比較例1のセラミックコンデンサを用いた場合に生じた振動音の音圧の70%以下に低下させられれば音圧の抑制効果が良好であると判断した。
【0056】
(ESRの測定)
試料となるセラミックコンデンサをテスト・フィクスチャ(商品名:16044A、Agilent Technologies社製)と接続し、インピーダンスアナライザ(商品名:4194A、横河ヒューレットパッカード社製)を用いて、周波数が10Hz〜10Hzにおけるインピーダンスの最小値から求めた。各セラミックコンデンサのESRの測定結果を表1に示す。また、比較例1のセラミックコンデンサのESRの値を基準となるESRの値(100%)とした相対値を示す。ESRは、比較例1のセラミックコンデンサのESRの値と同等程度であればESRが十分小さいと判断した。
【0057】
実施例1〜9及び比較例1〜4の各セラミックコンデンサを用いた時の音圧、ESRの測定結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すように、実施例1〜9では、音圧を比較例1の音圧の値を基準とした時の70%以下にまで軽減できたことが確認された。これは、金属端子の幅bを小さくし、かつ折り返し部を設け、はんだ接合間の距離が長くなることにより、金属端子の中間部が、セラミックコンデンサ素子で発生した振動が基板に伝播するのを抑制したことによるものと考えられる。
【0060】
比較例2は、音圧が比較例1の音圧の値を基準とした時の90%程度であったことが確認された。これは、金属端子の接続位置が、端子電極の端面接合であることおよび金属端子の幅bが大きすぎたため、音圧を小さく抑えることができなかったことによるものと考えられる。
【0061】
比較例3は、音圧が比較例1の音圧の値を基準とした時の85%程度であったことが確認された。これは、金属端子の幅が実施例1と同等(側面接合の場合、0.8mmに相当)であるが、金属端子の接続位置が、端子電極の端面接合であるため、音圧を小さく抑えることができなかったことによるものと考えられる。これは、電歪現象に伴う機械的歪みが、コンデンサ素子の側面より端面の方が大きいことによると考えられる。
【0062】
比較例4は、音圧が比較例1の音圧の値を基準とした時の95%程度であったことが確認された。これは、基板の基板電極から電極接続部とセラミックコンデンサ素子の端子電極とを接続するはんだの基板面側までの距離(接続端子取付長さ)が短か過ぎたため、音圧を小さく抑えることができなかったことによるものと考えられる。
【0063】
以上より、セラミックコンデンサは、セラミックコンデンサ素子と基板との間に位置する金属端子を、ESRが増加しない程度に細くし、かつ中間部に折り返し部を有することにより、基板から端子電極までの延べ長さを長くすることで、コンデンサで発生した振動が基板に伝播するのを効率よく抑制でき、基板において発生する振動音を抑制する効果を向上させることができることが判明した。
【0064】
よって、上述した実施形態に係るセラミックコンデンサを回路基板に搭載すれば、回路基板から発生する振動音の大きさを低減できる。また、複数のセラミックコンデンサを回路基板に搭載した際に複数のセラミックコンデンサの振動が共鳴することにより回路基板から発生する振動音の大きさも低減することが可能となる。従って、本実施形態に係るセラミックコンデンサは、回路基板に搭載される積層型のセラミックコンデンサとして用いる場合において有用であり、特に、セラミックコンデンサがノート型パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話等の各種情報処理装置等の回路基板に搭載されるセラミックコンデンサとして好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係る電子部品は、回路基板に実装される積層型のセラミックコンデンサとして用いる場合において特に有用であり、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話等の各種情報処理装置等の回路基板に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0066】
10 セラミックコンデンサ
11 セラミックコンデンサ素子
12 金属端子
13 回路基板(基板)
14A、14B 基板電極
15A、15B 配線
16、25 はんだ
21 誘電体素体
22 端子電極
23 誘電体
24 内部電極
31 外部接続部
32 電極接続部
33 中間部
34 折り返し部
b 金属端子の幅
L セラミックコンデンサ素子の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の端子電極を有する少なくとも1つの電子部品素子と、前記一対の端子電極とそれぞれ電気的に接続される一対の金属端子とを有した電子部品であって、
前記一対の端子電極は、少なくとも、前記電子部品素子の長さ方向における両端面及び前記電子部品素子の幅方向における側面に接続されていると共に、
前記金属端子は、
前記素子の幅方向の側面における前記端子電極に接続される電極接続部と、
前記電子部品が搭載される基板の電極に接続され、前記電子部品素子と対向するように設けられる外部接続部と、
前記素子の前記外部接続部側の面と前記外部接続部との間に隙間を有するように、前記電極接続部と前記外部接続部との間に設けられる中間部と、
前記中間部と前記電極接続部とを、両者が対向するように接続する折り返し部と、を含むことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記基板の電極から前記電極接続部と前記端子電極とを接続する接続用材料までの前記金属端子に沿った距離Lに対する前記金属端子の幅bの比(b/L)は、0.1以上0.3以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記端子電極は、対向して配置される一対の前記電極接続部によって挟持されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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