電子鍵盤楽器の楽音制御装置
【課題】レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、鍵の押鍵速度を精度良く算出できるとともに、適切なタイミングで楽音を止音することができる電子鍵盤楽器の楽音制御装置を提供する。
【解決手段】楽音制御装置20は、レットオフ開始前の第1位置P1における鍵3の第1押鍵情報S1、第1位置P1よりも大きな第2位置P2における第2押鍵情報S2、レットオフ終了後で且つ第2位置P2よりも大きな第3位置P3における第3押鍵情報S3を検出する。第1および第2押鍵情報、ならびに第2および第3押鍵情報のうち、互いの間にレットオフをまたがない関係にある2つの押鍵情報に基づいて算出した鍵3の押鍵速度Vに基づき、楽音の音量を設定する。第3押鍵情報に基づき、発音タイミングを設定し、第1または第2押鍵情報のうち、レットオフ開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定する。
【解決手段】楽音制御装置20は、レットオフ開始前の第1位置P1における鍵3の第1押鍵情報S1、第1位置P1よりも大きな第2位置P2における第2押鍵情報S2、レットオフ終了後で且つ第2位置P2よりも大きな第3位置P3における第3押鍵情報S3を検出する。第1および第2押鍵情報、ならびに第2および第3押鍵情報のうち、互いの間にレットオフをまたがない関係にある2つの押鍵情報に基づいて算出した鍵3の押鍵速度Vに基づき、楽音の音量を設定する。第3押鍵情報に基づき、発音タイミングを設定し、第1または第2押鍵情報のうち、レットオフ開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の押鍵に伴ってレットオフ効果を付与するレットオフ機構を有する電子鍵盤楽器の楽音制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グランドピアノなどのアコースティックピアノでは、鍵の押鍵に伴ってアクションが作動することで、ハンマーを回動させ、回動したハンマーが弦を打弦することによって、ピアノ音が発生する。また、アコースティックピアノでは、ハンマーが弦を打弦する直前に、アクションのジャックがハンマーから抜けるようになっている。このジャックの抜けの前後において、鍵のタッチ重さが増大した後、急激に減少する、いわゆるレットオフ効果が得られる。このレットオフ効果は、アコースティックピアノ特有のものであるため、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器においても、そのタッチ感をアコースティックピアノに近似させるべく、同様に得られることが好ましい。
【0003】
このようなレットオフ効果を付与するためのレットオフ機構を有する電子ピアノとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このレットオフ機構は、鍵の下面から突出する突起部材と、シャーシに取り付けられた弾性部材で構成されている。この電子ピアノでは、鍵の押鍵に伴い、突起部材が弾性部材に一時的に係合することによって、レットオフ効果が得られる。また、シャーシには、鍵と対向するように第1スイッチおよび第2スイッチが設けられている。これらの第1および第2スイッチは、離鍵状態ではいずれもOFF状態にあり、押鍵に伴って回動する鍵が第1所定位置P11および第2所定位置P12にそれぞれ達したときに、順にONされる。図12に示すように、第1所定位置P11は、レットオフの終盤の鍵の押鍵深さに相当し、第2所定位置P12は、レットオフの終了付近の鍵の押鍵深さに相当する。また、この楽音制御装置では、第1スイッチがONした後、第2スイッチがONするまでの時間に基づいて算出した押鍵速度に基づいて、発音すべき楽音の音量を設定し、第2スイッチがONしたタイミングに基づいて、楽音の発音タイミングを設定する。
【0004】
しかし、この従来の楽音制御装置では、第1および第2スイッチがいずれも、レットオフの終盤以降の鍵の押鍵状態を検出するように構成されているので、第1または第2スイッチがONからOFFに切り替わったタイミングに基づいて止音タイミングを設定すると、鍵が復帰を開始した直後のような早すぎるタイミングで、楽音が止音されてしまい、演奏上の違和感が生じる。
【0005】
また、レットオフ機構を有する電子ピアノの他の楽音制御装置として、例えば特許文献2に開示されたものが知られている。この電子ピアノには、ハンマーと対向するように第1スイッチおよび第2スイッチが設けられている。これらの第1および第2スイッチは、離鍵状態ではいずれもOFF状態にあり、押鍵に伴って回動する鍵が第1所定位置P11’および第2所定位置P12’にそれぞれ達したときにONされる。図13に示すように、第1所定位置P11’は、レットオフの開始直後の押鍵深さに相当し、第2所定位置P12’は、レットオフの終了直前の押鍵深さに相当する。この楽音制御装置では、第1スイッチがONした後、第2スイッチがONするまでの時間に基づいて算出した押鍵速度に基づいて、楽音を制御する。
【0006】
以上のように、この従来の楽音制御装置では、第1スイッチおよび第2スイッチはそれぞれ、レットオフの開始直後と終了直前において、すなわちいずれもレットオフの発生中に、鍵の押鍵状態を検出するように構成されている。しかし、レットオフの発生中には、鍵の回動抵抗が増大することによって、鍵の動きが不安定になり、第1スイッチがONしてから第2スイッチがONするまでの時間がばらつきやすくなるため、それに基づいて算出される押鍵速度の精度が低下してしまう。この問題は特に、押鍵力が弱いときには、レットオフの発生期間が長くなり、第1および第2スイッチのON時間差のばらつきが大きくなりやすいため、顕著になる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、鍵の押鍵速度を精度良く算出できるとともに、適切なタイミングで楽音を止音することができる電子鍵盤楽器の楽音制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【特許文献1】特許第2932132号公報
【特許文献2】特開平6−318077号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、鍵の押鍵に伴ってレットオフ効果を付与するレットオフ機構を有する電子鍵盤楽器の楽音制御装置であって、レットオフ機構によるレットオフが開始する前の押鍵深さに対応する鍵の第1位置における鍵の押鍵情報を、第1押鍵情報として検出する第1押鍵情報検出手段と、レットオフの開始時付近または終了時付近で且つ第1位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第2位置における鍵の押鍵情報を、第2押鍵情報として検出する第2押鍵情報検出手段と、レットオフが終了した後で且つ第2位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第3位置における鍵の押鍵情報を、第3押鍵情報として検出する第3押鍵情報検出手段と、検出された第1および第2押鍵情報、ならびに第2および第3押鍵情報のうち、互いの間にレットオフをまたがない関係にある2つの押鍵深さに対応する2つの押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出する押鍵速度算出手段と、算出された鍵の押鍵速度に基づいて、楽音の音量を設定する音量設定手段と、第3押鍵情報に基づいて、楽音の発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、第1または第2押鍵情報のうち、レットオフの開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、楽音の止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この電子鍵盤楽器によれば、鍵が押鍵されると、レットオフ機構によってレットオフ効果が付与される。また、この楽音制御装置によれば、第1〜第3押鍵情報検出手段によって、第1〜第3押鍵情報がそれぞれ検出される。第1押鍵情報は、レットオフが開始する前の押鍵深さに対応する鍵の第1位置における押鍵情報であり、第2押鍵情報は、レットオフの開始時付近または終了時付近で且つ第1位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第2位置における押鍵情報である。さらに、第3押鍵情報は、レットオフが終了した後で且つ第2位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第3位置における押鍵情報である。また、第1および第2押鍵情報と、第2および第3押鍵情報のうち、互いの間にレットオフをまたがない関係にある2つの押鍵深さに対応する2つの押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出する。これにより、回動抵抗が大きなレットオフを含まない押鍵深さの区間において、鍵の動きが安定している状態で検出された2つの押鍵情報を用いて、押鍵速度を精度良く算出することができる。また、そのようにして検出した押鍵速度を用いて楽音の音量を設定するので、押鍵力に適した音量を得ることができる。
【0011】
また、レットオフが終了した後の押鍵深さに対応する第3押鍵情報に基づいて、発音タイミングを設定するので、アコースティックピアノと同様、打弦のタイミングに最も近い適切なタイミングで、楽音を発音させることができる。
【0012】
さらに、第1または第2押鍵情報のうち、レットオフの開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定するので、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。以上のように、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、鍵の押鍵速度を精度良く算出できるとともに、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置において、第2位置は、レットオフの終了時付近の押鍵深さに対応し、押鍵速度算出手段は、第2および第3押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出し、止音タイミング設定手段は、第1押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第2位置は、レットオフの終了時付近の押鍵深さに対応しているため、第2位置と第3位置との間ではレットオフをまたがない。したがって、第2および第3位置における第2および第3押鍵情報に基づいて押鍵速度を算出することにより、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、押鍵速度を精度良く算出することができる。また、離鍵タイミングに最も近い第1位置において検出された第1押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定するので、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置において、第2位置は、レットオフの開始時付近の押鍵深さに対応し、押鍵速度算出手段は、第1および第2押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出し、止音タイミング設定手段は、第1および第2押鍵情報のいずれかに基づいて、止音タイミングを設定することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2位置は、レットオフの開始時付近の押鍵深さに対応しているため、第1位置と第2位置との間ではレットオフをまたがない。したがって、第1および第2押鍵情報に基づいて押鍵速度を算出することによって、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、押鍵速度を精度良く算出することができる。また、離鍵タイミングに近い第1または第2位置において検出された第1または第2押鍵情報に基づいて止音タイミングを設定するので、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置において、押鍵速度算出手段は、第1および第2押鍵情報に基づいて算出された鍵の押鍵速度を、第1および第3押鍵情報または第2および第3押鍵情報に応じて補正する押鍵速度補正手段を有することを特徴とする。
【0018】
鍵盤楽器における演奏表現上、演奏者がレットオフが開始する直前で一旦、押鍵を意図的に止め、その後、押鍵を再開することがあり、その場合には、押鍵の停止の前後において、鍵の押鍵速度は互いに異なる。本発明によれば、レットオフの開始時付近よりも前の第1位置および第2位置において検出された第1および第2押鍵情報に基づいて算出された押鍵速度を、第1または第2押鍵情報と、レットオフが終了した後の第3位置において検出した第3押鍵情報に応じて補正するので、上述したような演奏法に見合った押鍵速度および楽音の音量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による電子ピアノ1の概略構成を示している。なお、以下の説明では、電子ピアノ1を演奏者から見た場合の手前側(図1の左側)を「前」、奥側(図1の右側)を「後」とし、さらに左側および右側をそれぞれ「左」および「右」として、説明を行うものとする。
【0020】
同図に示すように、この電子ピアノ1は、シャーシ2と、シャーシ2に左右方向に並んだ状態で取り付けられた複数(例えば88個)の鍵3(白鍵および黒鍵をそれぞれ1つのみ図示)と、ハンマーレール7と、ハンマーレール7に取り付けられたハンマー4と、レットオフ効果を付与するためのレットオフ機構10と、楽音制御装置20(図4参照)などを備えている。
【0021】
シャーシ2は、例えばプレスにより打抜きおよび折曲げ加工した鉄板などを組み立てたものであり、棚板5にねじ止めされている。シャーシ2の前後方向の中央には、多数のバランスピン6(1つのみ図示)が左右方向に並んで立設されている。
【0022】
鍵3は、その中央に形成されたバランスピン孔3aを介して、バランスピン6に回動自在に支持されている。
【0023】
ハンマーレール7は、例えば中空のアルミニウムで構成された押出成形品であり、左右方向に延びるとともに、シャーシ2および棚板5にねじ止めされている。ハンマーレール7は、上下方向に延びるハンマー支持部7aと、ハンマー支持部7aの上端から前側に斜め上方に延びるストッパ取付部7bと、ハンマー支持部7aとストッパ取付部7bとの接合部付近から前側に斜め上方に延びる支点軸部7cなどで構成されている。ストッパ取付部7bの前端部には、ストッパ8が設けられている。このストッパ8は、例えば発泡ウレタンで構成されており、ストッパ取付部7bの左右方向の全体にわたって延びている。
【0024】
ハンマー4は、鍵3ごとに設けられており、前後方向に延びるハンマー本体4aと、ハンマー本体4aの前部の左右両面に取り付けられた質量板4b(1つのみ図示)などで構成されている。ハンマー本体4aの後端部には、後方に開放する円弧状の軸穴4cが形成されている。この軸穴4cにハンマーレール7の支点軸部7cが係合することによって、ハンマー4がハンマーレール7に回動自在に支持されている。
【0025】
また、ハンマー本体4aには、軸穴4cの前側に調整ねじ4dが下方から進退自在に取り付けられており、ハンマー4は、この調整ねじ4dを介して、対応する鍵3の上面後端部に載置されている。さらに、ハンマー本体4aは、軸穴4cよりも上側の部分が後方に突出しており、この突出部分が、レットオフ機構10を駆動するためのアクチュエータ部4eになっている。
【0026】
図1〜図3に示すように、レットオフ機構10は、ハンマー4のアクチュエータ部4eのすぐ後方に配置されており、ホルダ11と、このホルダ11に回動自在に取り付けられたジャック14などで構成されている。
【0027】
ホルダ11は、ホルダ本体12と、このホルダ本体12に取り付けられた吸着部13を備えている。ホルダ本体12は、例えば合成樹脂で構成されており、上下方向に延びる矩形の背壁部12aと、背壁部12aの下半部から前方に突出する左右一対のジャック支持部12b,12bなどで構成されている。吸着部13は、鉄板などの磁性体で構成されており、背壁部12aの前面上半部に取り付けられている。また、左右のジャック支持部12b,12には、下面が開口する支持穴12c,12cが互いに対向するように形成されている。また、ジャック支持部12bの支持穴12cよりも前側の部分は、背壁部12aよりも若干、下方に突出しており、この突出部分がハンマーレール7に形成された段差7dに係合することにより、ホルダ11は、ハンマーレール7に載せられ且つ前後方向に位置決めされた状態で、ねじ止めされている。
【0028】
一方、ジャック14は、ジャック本体15と、このジャック本体15に取り付けられた被吸着部16を備えている。ジャック本体15は、例えば合成樹脂で構成されており、下端部から側方に突出する左右一対のピン15a,15aを有しており、左右のピン15a,15aがホルダ11の左右の支持穴12c,12cにそれぞれ係合することによって、ホルダ11に回動自在に且つ抜止め状態で支持されている。また、ジャック本体15の下端部には、ハンマー4の回動時にアクチュエータ部4eにより押圧される被押圧部15bが、上端部には、回動したハンマー4が当接するハンマー当接部15cが、いずれも前方に突出するように形成されている。被吸着部16は、磁石で構成されており、ジャック本体15の背面に、ホルダ11の吸着部13に対向するように取り付けられている。さらに、ジャック本体15の一方のピン15aには、ジャック14をホルダ11側(図2の時計方向)に付勢するためのコイルばね17が取り付けられている。
【0029】
次に、以上の構成の電子ピアノ1の動作を説明する。まず、図1および図3(a)に示すように、鍵3の離鍵状態では、ハンマー4はほぼ水平に延びるとともに、ハンマー4のアクチュエータ部4eはジャック14から離れた状態でこれに対向している。このとき、ジャック14の被吸着部16がホルダ11の吸着部13に吸着しており、それにより、ジャック14はホルダ11に保持されている。
【0030】
この離鍵状態から鍵3が押鍵されると、それに伴い、ハンマー4は、調整ねじ4dを介して押し上げられることにより、支点軸部7cを中心として図3の時計方向に回動する。そして、同図(b)に示すように、ハンマー4が所定のストロークまで回動したときに、アクチュエータ部4eがジャック14の被押圧部15bに係合し、これを押し下げることによって、同図(c)に示すように、被吸着部16がホルダ11の吸着部13から、その吸着力およびコイルばね17の付勢力に抗して引き離され、ジャック14が同図の反時計方向に回動する。このようなアクチュエータ部4eのジャック14との係合、およびジャック14の引き離しにより、鍵3のタッチ重さが増大した後、急激に減少することで、アコースティックピアノのレットオフに近似したレットオフ効果が付与される。
【0031】
その後、ハンマー4はさらに回動し続け、ストッパ8に当接することによって、アコースティックピアノに近似した打弦効果が得られる。また、この状態では、図3(c)に示すように、ジャック14の被押圧部15bはハンマーレール7に当接するとともに、当接部15cがハンマー4に当接している。ストッパ8への当接後、ハンマー4が図3の反時計方向に復帰回動すると、ジャック14は、当接部15cを介してハンマー4で押圧されることによって、図3の時計方向に回動し、被吸着部16が吸着部13に吸着することで、離鍵状態に復帰する。その際、コイルばね17の付勢力が作用することによって、ジャック14は、離鍵状態に確実に復帰する。
【0032】
図4に示すように、楽音制御装置20は、鍵スイッチ21、スキャン回路22、CPU23、ROM24、RAM25、音源回路26、波形メモリ27、DSP28、D/A変換器29、パワーアンプ30およびスピーカ31で構成されている。
【0033】
図5に示すように、鍵スイッチ21は、プリント基板41と、プリント基板41の下面に取り付けられたカバー42と、カバー42内に配置された第1スイッチ43、第2スイッチ44および第3スイッチ45で構成されている。
【0034】
カバー42は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、カバー42の下面の中央よりも若干、後ろ側には、下方に突出する突起42cが形成されている。カバー42の下面の突起42cよりも前側の部分は、後ろ側に向かって斜め下方に延びており、突起42cよりも後ろ側の部分はプリント基板41に平行に延びている。また、カバー42の内側には、上方に向かって延びる3つの延出部42a,42a,42aが前後方向に並んだ状態で形成されている。延出部42aとプリント基板41との間の距離は、前側(図5の左側)のものが最も小さく、後ろ側(図5の右側)のものが最も大きい。また、各延出部42aの下方には、下方に開口する凹部42bが形成されている。
【0035】
第1スイッチ43は、接点43aと、回路部43bで構成されている。接点43aは、導体で構成されており、前側の延出部42aの上面に取り付けられている。回路部43bは、接点43aと対向するようにプリント基板41に形成されている。
【0036】
第2スイッチ44も、第1スイッチ43と同様、導体で構成された接点44aと、回路部44bで構成されている。接点44aは、中央の延出部42aの上面に取り付けられており、回路部44bは、接点44aと対向するようにプリント基板41に形成されている。
【0037】
第3スイッチ45も、第1および第2スイッチ43,44と同様、導体で構成された接点45aと、回路部45bで構成されている。接点45aは、後ろ側の延出部42aの上面に取り付けられており、回路部45bは、接点45aと対向するようにプリント基板41に形成されている。
【0038】
図1に示すように、以上の構成の鍵スイッチ21は、プリント基板41を、ハンマーレール7のストッパ取付部7bの基端部に差し込んだ状態で、スペーサ9を介してストッパ取付部7bにねじ止めされており、ハンマー4の基端部に上方から対向している。また、図1に示す離鍵状態では、第1〜第3スイッチ43〜45はいずれもOFF状態にある。この状態から、鍵3の押鍵に伴ってハンマー4が回動すると、突起42cを介してカバー42を押圧する。3つ延出部42aが前述したように配置されているので、ハンマー4の押圧に伴って、まず、第1スイッチ43の接点43aが回路部43bに接し、その後、第2スイッチ44の接点44aが回路部44bに接し、さらにその後、第3スイッチ45の接点45aが回路部45bに接することによって、第1〜第3スイッチ43〜45が順次、ONされる。また、これらの第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFF状態を表す第1〜第3検出信号S1〜S3が、スキャン回路22に出力される。
【0039】
図6は、鍵3の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFFタイミングの関係などを示し、図7は、鍵3の回動に伴う第1〜第3検出信号S1〜S3のタイミングチャートを示している。まず、鍵3の離鍵状態では、第1〜第3検出信号S1〜S3はいずれもOFF状態である(図7のタイミングt1以前)。この離鍵状態から、鍵3が押鍵され、レットオフ機構10によるレットオフが開始する直前の押鍵深さに対応する第1位置P1(図6参照)に達したときに、第1スイッチ43がONされ、第1検出信号S1がOFFからONに切り替わる(t1)。鍵3の回動が進み、レットオフが終了した直後の押鍵深さに対応する第2位置P2に達したときに、第2スイッチ44がONされ、第2検出信号S2がOFFからONに切り替わる(t2)。鍵3の回動がさらに進み、レットオフの終了後の所定の押鍵深さに対応する第3位置P3に達したときに、第3スイッチ45がONされ、第3検出信号S3がOFFからONに切り替わる(t3)。この第3位置P3は、ハンマー4がストッパ8に当接する直前の押鍵深さに相当する。
【0040】
その後、鍵3が復帰回動し、第3位置P3に達したときに、第3スイッチ45がOFFされ、第3検出信号S3がONからOFFに切り替わる(t4)。鍵3の復帰回動が進み、第2位置P2に達したときに、第2スイッチ44がOFFされ、第2検出信号S2がONからOFFに切り替わる(t5)。鍵3の復帰回動がさらに進み、第1位置P1に達したときに、第1スイッチ43がOFFされ、第1検出信号S1がONからOFFに切り替わる(t6)。その後、鍵3は、離鍵位置に復帰する。
【0041】
スキャン回路22は、第1〜第3スイッチ43〜45から出力された第1〜第3検出信号S1〜S3に基づいて、鍵3のオン/オフ情報、およびオンまたはオフされた鍵3を特定するキーナンバ情報を検出するとともに、これらのオン/オフ情報およびキーナンバ情報を、第1〜第3検出信号S1〜S3とともに、鍵3の押鍵情報データとしてCPU23に出力する。
【0042】
ROM24は、CPU23で実行される制御プログラムの他、音量などを制御するための固定データなどを記憶している。また、RAM25は、電子ピアノ2の動作状態を表すステータス情報などを一時的に記憶するとともに、CPU23の作業領域としても使用される。
【0043】
音源回路26は、CPU23からの制御信号に従って、音源波形データおよびエンベロープデータを波形メモリ27から読み出し、この読み出した音源波形データにエンベロープデータを付加することによって、原音となる楽音信号を生成する。DSP28は、音源回路26によって生成された楽音信号に所定の音響効果を付加する。D/A変換器29は、DSP28によって音響効果が付加された楽音信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換する。パワーアンプ30は、変換されたアナログ信号を所定の利得で増幅し、スピーカ31は、増幅されたアナログ信号を再生し、楽音として放音する。
【0044】
CPU23は、第1〜第3スイッチ43〜45の第1〜第3検出信号S1〜S3に応じて、楽音の発音タイミングおよび止音タイミングを設定するとともに、楽音の音量を設定するなどの発音制御処理を実行する。なお、本実施形態では、CPU23が、押鍵速度算出手段、音量設定手段、発音タイミング設定手段、止音タイミング設定手段および押鍵速度補正手段に相当する。
【0045】
図8は、CPU23で実行される発音制御処理のフローチャートである。この処理は、88鍵すべての鍵3について順次、実行される。本処理では、まず、ステップ1(「STP1」と図示。以下同じ)において、鍵3のキーナンバn(n=1〜88)が値88よりも大きいか否かを判別する。このキーナンバnは、最低音から高音側に向かって連続する番号を各鍵3に割り当てたものであり、最低音の鍵3は「1」に、最高音の鍵3は「88」に設定されている。
【0046】
この判別結果がNOのときには、今回のキーナンバnに対する発音タイミングおよび止音タイミングなどを含むタッチ検出処理を行う(ステップ2)。次いで、キーナンバnをインクリメントし(ステップ3)、本処理を終了する。
【0047】
一方、前記ステップ1の判別結果がYESのときには、88鍵すべてについてタッチ検出処理が終了したとして、キーナンバnを値1に初期化し(ステップ4)、本処理を終了する。
【0048】
上記のタッチ検出処理は、図9に示すサブルーチンに従って行われる。本処理では、まず、ステップ11において、第1および第2スイッチ43,44の第1および第2検出信号S1,S2がいずれもONであり、かつ前回と今回の間で、第3スイッチ45の第3検出信号S3がOFFからONに切り替わったか否かを判別する。この判別結果がYESで、鍵3がレットオフが終了した後の、ハンマー4がストッパ8に当接する直前の第3位置P3に達した(図6参照)ときには、楽音を発音すべきタイミングであるとして、発音すべき楽音の音量を設定する(ステップ12)。
【0049】
この音量設定処理は、図10に示すサブルーチンに従って行われる。本処理では、まず、ステップ21において、鍵3の押鍵速度であるベロシティVを算出する。具体的には、第2検出信号S2がONに切り替わった時から第3検出信号S3がONに切り替わるまでの時間、すなわち鍵3の押鍵深さが第2位置P2に達してから第3位置P3に達するまでの時間を算出する。次に、第2位置P2と第3位置P3との間の距離を、算出した時間で除算することによって、ベロシティVを算出する。そして、算出したベロシティVに基づいて、音量を設定し(ステップ22)、本処理を終了する。
【0050】
図9に戻り、前記ステップ12に続くステップ13では、発音フラグF_MSTRを「1」にセットし、本処理を終了する。このように、発音フラグF_MSTRが「1」にセットされると、発音を開始させるための制御信号が音源回路26に出力されることによって、決定した音量に基づく楽音の発音が開始される。
【0051】
一方、前記ステップ11の判別結果がNOのときには、今回と前回の間で、第1検出信号S1がONからOFFに切り替わり、かつ第2および第3検出信号S2,S3がいずれもOFFであるか否かを判別する(ステップ14)。この判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0052】
また、ステップ14の判別結果がYESで、鍵3が第1位置P1まで復帰回動したときには、楽音を止音すべきタイミングであるとして、発音フラグF_MSTRを「0」にリセットし(ステップ15)、本処理を終了する。これにより、楽音を止音させるための制御信号が音源回路26に出力されることによって、楽音が止音される。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、レットオフ機構10によるレットオフが開始する直前の押鍵深さに対応する鍵3の第1位置P1における押鍵情報を第1スイッチ43で検出し、レットオフが終了した直後の第2位置P2における押鍵情報を第2スイッチ44で検出し、さらに、レットオフの終了後の第3位置P3における押鍵情報を第3スイッチ45で検出する。これらの第1〜第3スイッチ43〜45で検出した第1〜第3検出信号S1〜S3のうち、レットオフをまたがない第2および第3検出信号S2,S3に基づいて、ベロシティVを算出するので、レットオフの際の鍵3の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、ベロシティVを精度良く算出することができる。また、そのようにして算出したベロシティVを用いて楽音の音量を設定するので、押鍵力に適した音量を得ることができる。
【0054】
さらに、第3検出信号S3に基づいて発音タイミングを設定するので、アコースティックピアノと同様、打弦のタイミングに最も近い適切なタイミングで楽音を発音させることができる。また、第1検出信号S1に基づいて止音タイミングを設定するので、離鍵タイミングに近い適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0055】
図11は、本発明の第2実施形態における鍵3の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFFタイミングの関係などを示している。この第2実施形態では、第1スイッチ43で第1位置P1’における押鍵情報を、第2スイッチ44で第2位置P2’における押鍵情報を、第3スイッチ45で第3位置P3’における押鍵情報をそれぞれ検出する。また、図11に示すように、第1位置P1’は、レットオフが開始する前の鍵3の押鍵深さに相当し、第2位置P2’は、第1位置P1’よりも押鍵深さが大きく、レットオフが開始する直前に相当する。さらに、第3位置P3’は、レットオフが終了した直後の押鍵深さに相当する。このような押鍵深さに対する第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFFの関係は、カバー42の各延出部42aの長さを、第1実施形態で設定したものよりも大きく設定し、接点43a〜45aと回路部43b〜45bとの間の距離を小さくすることなどによって、実現することができる。
【0056】
また、第2実施形態では、ベロシティVを、第1〜第3スイッチ43〜45で検出した第1〜第3検出信号S1〜S3を用い、次式(1)に従って算出する。
V=V1×K+V2×(1−K) ・・・(1)
ここで、V1は、第1ベロシティV1であり、鍵3の押鍵深さが第1位置P1’に達してから第2位置P2’に達するまでの鍵3の押鍵速度である。また、V2は、第2ベロシティV2であり、鍵3の押鍵深さが第2位置P2’に達してから第3位置P3’に達するまでの押鍵速度である。これらの第1および第2ベロシティV1,V2は、第1実施形態のベロシティVと同様の方法で算出される。さらに、Kは、値0よりも大きく、値1.0よりも小さな重み係数である。
【0057】
そして、算出したベロシティVに基づいて、楽音の音量を設定する。また、第3検出信号S3に基づいて、発音タイミングを設定するとともに、第1検出信号S1に基づいて、止音タイミングを設定する。
【0058】
以上のように、第2実施形態によれば、レットオフをまたがない第1および第2検出信号S1,S2を用いてベロシティVを算出するので、第1実施形態と同様、鍵3の回動抵抗の影響を受けることなく、ベロシティVを精度良く算出でき、それに基づいて音量を適切に決定することができる。また、レットオフが開始する前の押鍵速度である第1ベロシティV1を、第2ベロシティV2を用いて補正することによってベロシティVを算出するので、レットオフの開始直前に、鍵3の押鍵を止めた後、再開した場合でも、その演奏法に見合ったベロシティVおよび楽音の音量を得ることができる。
【0059】
また、第3検出信号S3に基づいて発音タイミングを設定するので、第1実施形態と同様、適切なタイミングで楽音を発音させることができる。さらに、第1検出信号S1に基づいて止音タイミングを設定するので、離鍵タイミングに最も近い適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0060】
なお、本実施形態は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態では、第1位置P1を、レットオフが開始する直前に設定しているが、これに限らず、レットオフが開始する前の任意の位置に設定することができる。また、第1実施形態では、第2位置P2を、レットオフが終了した直後に設定しているが、これに限らず、レットオフの終了時付近、すなわち、レットオフの終了直前から第3位置P3までの間の任意の位置に設定することが可能である。
【0061】
さらに、第2実施形態では、第3位置P3’を、レットオフが終了した直後に設定しているが、これに限らず、レットオフの終了後の任意の位置に設定することができる。また、第2実施形態では、第2位置P2’を、レットオフの開始直前に設定しているが、これに限らず、レットオフの開始時付近、すなわち、第1位置P1’からレットオフの開始直後までの間の任意の位置に設定することが可能である。さらに、第2実施形態では、止音タイミングを第1検出信号S1に基づいて設定しているが、第2検出信号S2に基づいて設定してもよい。
【0062】
また、第2実施形態では、第2ベロシティV2を、第2および第3検出信号S2,S3を用いて算出しているが、これに限らず、第1および第3検出信号S1,S3を用いて算出し、第1ベロシティV1を補正するのに用いてもよい。
【0063】
さらに、第2実施形態では、第2ベロシティV2による第1ベロシティV1の補正を、重み係数Kを用いて行っているが、これに限らず、他の適当な方法によって行ってもよい。
【0064】
また、本実施形態で用いたレットオフ機構10はあくまで一例であり、レットオフ効果を付与することができるものであれば、他の構成のレットオフ機構を用いてもよい。さらに、実施形態では、第1〜第3スイッチ43〜45は、ハンマー4によって作動するように構成されているが、これに限らず、例えばシャーシなどに設け、鍵によって作動するものでもよい。
【0065】
さらに、実施形態では、押鍵情報検出手段として、スイッチを用いているが、ON/OFF状態を検出できるものであれば他のものを用いてもよく、例えば光学式のセンサを用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態による電子ピアノの概略構成を示す図である。
【図2】レットオフ機構の分解斜視図である。
【図3】電子ピアノの動作例を示す図である。
【図4】楽音制御装置の一部を示す図である。
【図5】鍵スイッチの断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における鍵の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【図7】鍵の回動に伴う第1〜第3検出信号のタイミングチャートを示している。
【図8】図4のCPUで実行される発音制御処理を示すフローチャートである。
【図9】タッチ検出処理を示すサブルーチンである。
【図10】音量設定処理を示すサブルーチンである。
【図11】本発明の第2実施形態における鍵の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【図12】従来の楽音制御装置における鍵の押鍵深さに対する第1および第2スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【図13】他の従来の楽音制御装置における鍵の押鍵深さに対する第1および第2スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 電子ピアノ(電子鍵盤楽器)
3 鍵
10 レットオフ機構
20 楽音制御装置
23 CPU(押鍵速度算出手段、音量設定手段、発音タイミング設定手段、止音タイ
ミング設定手段および押鍵速度補正手段)
43 第1スイッチ(第1押鍵情報検出手段)
44 第2スイッチ(第2押鍵情報検出手段)
45 第3スイッチ(第3押鍵情報検出手段)
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P1’ 第1位置
P2’ 第2位置
P3’ 第3位置
S1 第1検出信号(第1押鍵情報)
S2 第2検出信号(第2押鍵情報)
S3 第3検出信号(第3押鍵情報)
V ベロシティ(鍵の押鍵速度)
V1 第1ベロシティ(第1および第2押鍵情報に基づいて算出された鍵の押鍵速度)
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の押鍵に伴ってレットオフ効果を付与するレットオフ機構を有する電子鍵盤楽器の楽音制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グランドピアノなどのアコースティックピアノでは、鍵の押鍵に伴ってアクションが作動することで、ハンマーを回動させ、回動したハンマーが弦を打弦することによって、ピアノ音が発生する。また、アコースティックピアノでは、ハンマーが弦を打弦する直前に、アクションのジャックがハンマーから抜けるようになっている。このジャックの抜けの前後において、鍵のタッチ重さが増大した後、急激に減少する、いわゆるレットオフ効果が得られる。このレットオフ効果は、アコースティックピアノ特有のものであるため、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器においても、そのタッチ感をアコースティックピアノに近似させるべく、同様に得られることが好ましい。
【0003】
このようなレットオフ効果を付与するためのレットオフ機構を有する電子ピアノとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このレットオフ機構は、鍵の下面から突出する突起部材と、シャーシに取り付けられた弾性部材で構成されている。この電子ピアノでは、鍵の押鍵に伴い、突起部材が弾性部材に一時的に係合することによって、レットオフ効果が得られる。また、シャーシには、鍵と対向するように第1スイッチおよび第2スイッチが設けられている。これらの第1および第2スイッチは、離鍵状態ではいずれもOFF状態にあり、押鍵に伴って回動する鍵が第1所定位置P11および第2所定位置P12にそれぞれ達したときに、順にONされる。図12に示すように、第1所定位置P11は、レットオフの終盤の鍵の押鍵深さに相当し、第2所定位置P12は、レットオフの終了付近の鍵の押鍵深さに相当する。また、この楽音制御装置では、第1スイッチがONした後、第2スイッチがONするまでの時間に基づいて算出した押鍵速度に基づいて、発音すべき楽音の音量を設定し、第2スイッチがONしたタイミングに基づいて、楽音の発音タイミングを設定する。
【0004】
しかし、この従来の楽音制御装置では、第1および第2スイッチがいずれも、レットオフの終盤以降の鍵の押鍵状態を検出するように構成されているので、第1または第2スイッチがONからOFFに切り替わったタイミングに基づいて止音タイミングを設定すると、鍵が復帰を開始した直後のような早すぎるタイミングで、楽音が止音されてしまい、演奏上の違和感が生じる。
【0005】
また、レットオフ機構を有する電子ピアノの他の楽音制御装置として、例えば特許文献2に開示されたものが知られている。この電子ピアノには、ハンマーと対向するように第1スイッチおよび第2スイッチが設けられている。これらの第1および第2スイッチは、離鍵状態ではいずれもOFF状態にあり、押鍵に伴って回動する鍵が第1所定位置P11’および第2所定位置P12’にそれぞれ達したときにONされる。図13に示すように、第1所定位置P11’は、レットオフの開始直後の押鍵深さに相当し、第2所定位置P12’は、レットオフの終了直前の押鍵深さに相当する。この楽音制御装置では、第1スイッチがONした後、第2スイッチがONするまでの時間に基づいて算出した押鍵速度に基づいて、楽音を制御する。
【0006】
以上のように、この従来の楽音制御装置では、第1スイッチおよび第2スイッチはそれぞれ、レットオフの開始直後と終了直前において、すなわちいずれもレットオフの発生中に、鍵の押鍵状態を検出するように構成されている。しかし、レットオフの発生中には、鍵の回動抵抗が増大することによって、鍵の動きが不安定になり、第1スイッチがONしてから第2スイッチがONするまでの時間がばらつきやすくなるため、それに基づいて算出される押鍵速度の精度が低下してしまう。この問題は特に、押鍵力が弱いときには、レットオフの発生期間が長くなり、第1および第2スイッチのON時間差のばらつきが大きくなりやすいため、顕著になる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、鍵の押鍵速度を精度良く算出できるとともに、適切なタイミングで楽音を止音することができる電子鍵盤楽器の楽音制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【特許文献1】特許第2932132号公報
【特許文献2】特開平6−318077号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、鍵の押鍵に伴ってレットオフ効果を付与するレットオフ機構を有する電子鍵盤楽器の楽音制御装置であって、レットオフ機構によるレットオフが開始する前の押鍵深さに対応する鍵の第1位置における鍵の押鍵情報を、第1押鍵情報として検出する第1押鍵情報検出手段と、レットオフの開始時付近または終了時付近で且つ第1位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第2位置における鍵の押鍵情報を、第2押鍵情報として検出する第2押鍵情報検出手段と、レットオフが終了した後で且つ第2位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第3位置における鍵の押鍵情報を、第3押鍵情報として検出する第3押鍵情報検出手段と、検出された第1および第2押鍵情報、ならびに第2および第3押鍵情報のうち、互いの間にレットオフをまたがない関係にある2つの押鍵深さに対応する2つの押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出する押鍵速度算出手段と、算出された鍵の押鍵速度に基づいて、楽音の音量を設定する音量設定手段と、第3押鍵情報に基づいて、楽音の発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、第1または第2押鍵情報のうち、レットオフの開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、楽音の止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この電子鍵盤楽器によれば、鍵が押鍵されると、レットオフ機構によってレットオフ効果が付与される。また、この楽音制御装置によれば、第1〜第3押鍵情報検出手段によって、第1〜第3押鍵情報がそれぞれ検出される。第1押鍵情報は、レットオフが開始する前の押鍵深さに対応する鍵の第1位置における押鍵情報であり、第2押鍵情報は、レットオフの開始時付近または終了時付近で且つ第1位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第2位置における押鍵情報である。さらに、第3押鍵情報は、レットオフが終了した後で且つ第2位置よりも大きな押鍵深さに対応する鍵の第3位置における押鍵情報である。また、第1および第2押鍵情報と、第2および第3押鍵情報のうち、互いの間にレットオフをまたがない関係にある2つの押鍵深さに対応する2つの押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出する。これにより、回動抵抗が大きなレットオフを含まない押鍵深さの区間において、鍵の動きが安定している状態で検出された2つの押鍵情報を用いて、押鍵速度を精度良く算出することができる。また、そのようにして検出した押鍵速度を用いて楽音の音量を設定するので、押鍵力に適した音量を得ることができる。
【0011】
また、レットオフが終了した後の押鍵深さに対応する第3押鍵情報に基づいて、発音タイミングを設定するので、アコースティックピアノと同様、打弦のタイミングに最も近い適切なタイミングで、楽音を発音させることができる。
【0012】
さらに、第1または第2押鍵情報のうち、レットオフの開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定するので、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。以上のように、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、鍵の押鍵速度を精度良く算出できるとともに、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置において、第2位置は、レットオフの終了時付近の押鍵深さに対応し、押鍵速度算出手段は、第2および第3押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出し、止音タイミング設定手段は、第1押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第2位置は、レットオフの終了時付近の押鍵深さに対応しているため、第2位置と第3位置との間ではレットオフをまたがない。したがって、第2および第3位置における第2および第3押鍵情報に基づいて押鍵速度を算出することにより、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、押鍵速度を精度良く算出することができる。また、離鍵タイミングに最も近い第1位置において検出された第1押鍵情報に基づいて、止音タイミングを設定するので、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置において、第2位置は、レットオフの開始時付近の押鍵深さに対応し、押鍵速度算出手段は、第1および第2押鍵情報に基づいて、鍵の押鍵速度を算出し、止音タイミング設定手段は、第1および第2押鍵情報のいずれかに基づいて、止音タイミングを設定することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2位置は、レットオフの開始時付近の押鍵深さに対応しているため、第1位置と第2位置との間ではレットオフをまたがない。したがって、第1および第2押鍵情報に基づいて押鍵速度を算出することによって、レットオフの際の鍵の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、押鍵速度を精度良く算出することができる。また、離鍵タイミングに近い第1または第2位置において検出された第1または第2押鍵情報に基づいて止音タイミングを設定するので、適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置において、押鍵速度算出手段は、第1および第2押鍵情報に基づいて算出された鍵の押鍵速度を、第1および第3押鍵情報または第2および第3押鍵情報に応じて補正する押鍵速度補正手段を有することを特徴とする。
【0018】
鍵盤楽器における演奏表現上、演奏者がレットオフが開始する直前で一旦、押鍵を意図的に止め、その後、押鍵を再開することがあり、その場合には、押鍵の停止の前後において、鍵の押鍵速度は互いに異なる。本発明によれば、レットオフの開始時付近よりも前の第1位置および第2位置において検出された第1および第2押鍵情報に基づいて算出された押鍵速度を、第1または第2押鍵情報と、レットオフが終了した後の第3位置において検出した第3押鍵情報に応じて補正するので、上述したような演奏法に見合った押鍵速度および楽音の音量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による電子ピアノ1の概略構成を示している。なお、以下の説明では、電子ピアノ1を演奏者から見た場合の手前側(図1の左側)を「前」、奥側(図1の右側)を「後」とし、さらに左側および右側をそれぞれ「左」および「右」として、説明を行うものとする。
【0020】
同図に示すように、この電子ピアノ1は、シャーシ2と、シャーシ2に左右方向に並んだ状態で取り付けられた複数(例えば88個)の鍵3(白鍵および黒鍵をそれぞれ1つのみ図示)と、ハンマーレール7と、ハンマーレール7に取り付けられたハンマー4と、レットオフ効果を付与するためのレットオフ機構10と、楽音制御装置20(図4参照)などを備えている。
【0021】
シャーシ2は、例えばプレスにより打抜きおよび折曲げ加工した鉄板などを組み立てたものであり、棚板5にねじ止めされている。シャーシ2の前後方向の中央には、多数のバランスピン6(1つのみ図示)が左右方向に並んで立設されている。
【0022】
鍵3は、その中央に形成されたバランスピン孔3aを介して、バランスピン6に回動自在に支持されている。
【0023】
ハンマーレール7は、例えば中空のアルミニウムで構成された押出成形品であり、左右方向に延びるとともに、シャーシ2および棚板5にねじ止めされている。ハンマーレール7は、上下方向に延びるハンマー支持部7aと、ハンマー支持部7aの上端から前側に斜め上方に延びるストッパ取付部7bと、ハンマー支持部7aとストッパ取付部7bとの接合部付近から前側に斜め上方に延びる支点軸部7cなどで構成されている。ストッパ取付部7bの前端部には、ストッパ8が設けられている。このストッパ8は、例えば発泡ウレタンで構成されており、ストッパ取付部7bの左右方向の全体にわたって延びている。
【0024】
ハンマー4は、鍵3ごとに設けられており、前後方向に延びるハンマー本体4aと、ハンマー本体4aの前部の左右両面に取り付けられた質量板4b(1つのみ図示)などで構成されている。ハンマー本体4aの後端部には、後方に開放する円弧状の軸穴4cが形成されている。この軸穴4cにハンマーレール7の支点軸部7cが係合することによって、ハンマー4がハンマーレール7に回動自在に支持されている。
【0025】
また、ハンマー本体4aには、軸穴4cの前側に調整ねじ4dが下方から進退自在に取り付けられており、ハンマー4は、この調整ねじ4dを介して、対応する鍵3の上面後端部に載置されている。さらに、ハンマー本体4aは、軸穴4cよりも上側の部分が後方に突出しており、この突出部分が、レットオフ機構10を駆動するためのアクチュエータ部4eになっている。
【0026】
図1〜図3に示すように、レットオフ機構10は、ハンマー4のアクチュエータ部4eのすぐ後方に配置されており、ホルダ11と、このホルダ11に回動自在に取り付けられたジャック14などで構成されている。
【0027】
ホルダ11は、ホルダ本体12と、このホルダ本体12に取り付けられた吸着部13を備えている。ホルダ本体12は、例えば合成樹脂で構成されており、上下方向に延びる矩形の背壁部12aと、背壁部12aの下半部から前方に突出する左右一対のジャック支持部12b,12bなどで構成されている。吸着部13は、鉄板などの磁性体で構成されており、背壁部12aの前面上半部に取り付けられている。また、左右のジャック支持部12b,12には、下面が開口する支持穴12c,12cが互いに対向するように形成されている。また、ジャック支持部12bの支持穴12cよりも前側の部分は、背壁部12aよりも若干、下方に突出しており、この突出部分がハンマーレール7に形成された段差7dに係合することにより、ホルダ11は、ハンマーレール7に載せられ且つ前後方向に位置決めされた状態で、ねじ止めされている。
【0028】
一方、ジャック14は、ジャック本体15と、このジャック本体15に取り付けられた被吸着部16を備えている。ジャック本体15は、例えば合成樹脂で構成されており、下端部から側方に突出する左右一対のピン15a,15aを有しており、左右のピン15a,15aがホルダ11の左右の支持穴12c,12cにそれぞれ係合することによって、ホルダ11に回動自在に且つ抜止め状態で支持されている。また、ジャック本体15の下端部には、ハンマー4の回動時にアクチュエータ部4eにより押圧される被押圧部15bが、上端部には、回動したハンマー4が当接するハンマー当接部15cが、いずれも前方に突出するように形成されている。被吸着部16は、磁石で構成されており、ジャック本体15の背面に、ホルダ11の吸着部13に対向するように取り付けられている。さらに、ジャック本体15の一方のピン15aには、ジャック14をホルダ11側(図2の時計方向)に付勢するためのコイルばね17が取り付けられている。
【0029】
次に、以上の構成の電子ピアノ1の動作を説明する。まず、図1および図3(a)に示すように、鍵3の離鍵状態では、ハンマー4はほぼ水平に延びるとともに、ハンマー4のアクチュエータ部4eはジャック14から離れた状態でこれに対向している。このとき、ジャック14の被吸着部16がホルダ11の吸着部13に吸着しており、それにより、ジャック14はホルダ11に保持されている。
【0030】
この離鍵状態から鍵3が押鍵されると、それに伴い、ハンマー4は、調整ねじ4dを介して押し上げられることにより、支点軸部7cを中心として図3の時計方向に回動する。そして、同図(b)に示すように、ハンマー4が所定のストロークまで回動したときに、アクチュエータ部4eがジャック14の被押圧部15bに係合し、これを押し下げることによって、同図(c)に示すように、被吸着部16がホルダ11の吸着部13から、その吸着力およびコイルばね17の付勢力に抗して引き離され、ジャック14が同図の反時計方向に回動する。このようなアクチュエータ部4eのジャック14との係合、およびジャック14の引き離しにより、鍵3のタッチ重さが増大した後、急激に減少することで、アコースティックピアノのレットオフに近似したレットオフ効果が付与される。
【0031】
その後、ハンマー4はさらに回動し続け、ストッパ8に当接することによって、アコースティックピアノに近似した打弦効果が得られる。また、この状態では、図3(c)に示すように、ジャック14の被押圧部15bはハンマーレール7に当接するとともに、当接部15cがハンマー4に当接している。ストッパ8への当接後、ハンマー4が図3の反時計方向に復帰回動すると、ジャック14は、当接部15cを介してハンマー4で押圧されることによって、図3の時計方向に回動し、被吸着部16が吸着部13に吸着することで、離鍵状態に復帰する。その際、コイルばね17の付勢力が作用することによって、ジャック14は、離鍵状態に確実に復帰する。
【0032】
図4に示すように、楽音制御装置20は、鍵スイッチ21、スキャン回路22、CPU23、ROM24、RAM25、音源回路26、波形メモリ27、DSP28、D/A変換器29、パワーアンプ30およびスピーカ31で構成されている。
【0033】
図5に示すように、鍵スイッチ21は、プリント基板41と、プリント基板41の下面に取り付けられたカバー42と、カバー42内に配置された第1スイッチ43、第2スイッチ44および第3スイッチ45で構成されている。
【0034】
カバー42は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、カバー42の下面の中央よりも若干、後ろ側には、下方に突出する突起42cが形成されている。カバー42の下面の突起42cよりも前側の部分は、後ろ側に向かって斜め下方に延びており、突起42cよりも後ろ側の部分はプリント基板41に平行に延びている。また、カバー42の内側には、上方に向かって延びる3つの延出部42a,42a,42aが前後方向に並んだ状態で形成されている。延出部42aとプリント基板41との間の距離は、前側(図5の左側)のものが最も小さく、後ろ側(図5の右側)のものが最も大きい。また、各延出部42aの下方には、下方に開口する凹部42bが形成されている。
【0035】
第1スイッチ43は、接点43aと、回路部43bで構成されている。接点43aは、導体で構成されており、前側の延出部42aの上面に取り付けられている。回路部43bは、接点43aと対向するようにプリント基板41に形成されている。
【0036】
第2スイッチ44も、第1スイッチ43と同様、導体で構成された接点44aと、回路部44bで構成されている。接点44aは、中央の延出部42aの上面に取り付けられており、回路部44bは、接点44aと対向するようにプリント基板41に形成されている。
【0037】
第3スイッチ45も、第1および第2スイッチ43,44と同様、導体で構成された接点45aと、回路部45bで構成されている。接点45aは、後ろ側の延出部42aの上面に取り付けられており、回路部45bは、接点45aと対向するようにプリント基板41に形成されている。
【0038】
図1に示すように、以上の構成の鍵スイッチ21は、プリント基板41を、ハンマーレール7のストッパ取付部7bの基端部に差し込んだ状態で、スペーサ9を介してストッパ取付部7bにねじ止めされており、ハンマー4の基端部に上方から対向している。また、図1に示す離鍵状態では、第1〜第3スイッチ43〜45はいずれもOFF状態にある。この状態から、鍵3の押鍵に伴ってハンマー4が回動すると、突起42cを介してカバー42を押圧する。3つ延出部42aが前述したように配置されているので、ハンマー4の押圧に伴って、まず、第1スイッチ43の接点43aが回路部43bに接し、その後、第2スイッチ44の接点44aが回路部44bに接し、さらにその後、第3スイッチ45の接点45aが回路部45bに接することによって、第1〜第3スイッチ43〜45が順次、ONされる。また、これらの第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFF状態を表す第1〜第3検出信号S1〜S3が、スキャン回路22に出力される。
【0039】
図6は、鍵3の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFFタイミングの関係などを示し、図7は、鍵3の回動に伴う第1〜第3検出信号S1〜S3のタイミングチャートを示している。まず、鍵3の離鍵状態では、第1〜第3検出信号S1〜S3はいずれもOFF状態である(図7のタイミングt1以前)。この離鍵状態から、鍵3が押鍵され、レットオフ機構10によるレットオフが開始する直前の押鍵深さに対応する第1位置P1(図6参照)に達したときに、第1スイッチ43がONされ、第1検出信号S1がOFFからONに切り替わる(t1)。鍵3の回動が進み、レットオフが終了した直後の押鍵深さに対応する第2位置P2に達したときに、第2スイッチ44がONされ、第2検出信号S2がOFFからONに切り替わる(t2)。鍵3の回動がさらに進み、レットオフの終了後の所定の押鍵深さに対応する第3位置P3に達したときに、第3スイッチ45がONされ、第3検出信号S3がOFFからONに切り替わる(t3)。この第3位置P3は、ハンマー4がストッパ8に当接する直前の押鍵深さに相当する。
【0040】
その後、鍵3が復帰回動し、第3位置P3に達したときに、第3スイッチ45がOFFされ、第3検出信号S3がONからOFFに切り替わる(t4)。鍵3の復帰回動が進み、第2位置P2に達したときに、第2スイッチ44がOFFされ、第2検出信号S2がONからOFFに切り替わる(t5)。鍵3の復帰回動がさらに進み、第1位置P1に達したときに、第1スイッチ43がOFFされ、第1検出信号S1がONからOFFに切り替わる(t6)。その後、鍵3は、離鍵位置に復帰する。
【0041】
スキャン回路22は、第1〜第3スイッチ43〜45から出力された第1〜第3検出信号S1〜S3に基づいて、鍵3のオン/オフ情報、およびオンまたはオフされた鍵3を特定するキーナンバ情報を検出するとともに、これらのオン/オフ情報およびキーナンバ情報を、第1〜第3検出信号S1〜S3とともに、鍵3の押鍵情報データとしてCPU23に出力する。
【0042】
ROM24は、CPU23で実行される制御プログラムの他、音量などを制御するための固定データなどを記憶している。また、RAM25は、電子ピアノ2の動作状態を表すステータス情報などを一時的に記憶するとともに、CPU23の作業領域としても使用される。
【0043】
音源回路26は、CPU23からの制御信号に従って、音源波形データおよびエンベロープデータを波形メモリ27から読み出し、この読み出した音源波形データにエンベロープデータを付加することによって、原音となる楽音信号を生成する。DSP28は、音源回路26によって生成された楽音信号に所定の音響効果を付加する。D/A変換器29は、DSP28によって音響効果が付加された楽音信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換する。パワーアンプ30は、変換されたアナログ信号を所定の利得で増幅し、スピーカ31は、増幅されたアナログ信号を再生し、楽音として放音する。
【0044】
CPU23は、第1〜第3スイッチ43〜45の第1〜第3検出信号S1〜S3に応じて、楽音の発音タイミングおよび止音タイミングを設定するとともに、楽音の音量を設定するなどの発音制御処理を実行する。なお、本実施形態では、CPU23が、押鍵速度算出手段、音量設定手段、発音タイミング設定手段、止音タイミング設定手段および押鍵速度補正手段に相当する。
【0045】
図8は、CPU23で実行される発音制御処理のフローチャートである。この処理は、88鍵すべての鍵3について順次、実行される。本処理では、まず、ステップ1(「STP1」と図示。以下同じ)において、鍵3のキーナンバn(n=1〜88)が値88よりも大きいか否かを判別する。このキーナンバnは、最低音から高音側に向かって連続する番号を各鍵3に割り当てたものであり、最低音の鍵3は「1」に、最高音の鍵3は「88」に設定されている。
【0046】
この判別結果がNOのときには、今回のキーナンバnに対する発音タイミングおよび止音タイミングなどを含むタッチ検出処理を行う(ステップ2)。次いで、キーナンバnをインクリメントし(ステップ3)、本処理を終了する。
【0047】
一方、前記ステップ1の判別結果がYESのときには、88鍵すべてについてタッチ検出処理が終了したとして、キーナンバnを値1に初期化し(ステップ4)、本処理を終了する。
【0048】
上記のタッチ検出処理は、図9に示すサブルーチンに従って行われる。本処理では、まず、ステップ11において、第1および第2スイッチ43,44の第1および第2検出信号S1,S2がいずれもONであり、かつ前回と今回の間で、第3スイッチ45の第3検出信号S3がOFFからONに切り替わったか否かを判別する。この判別結果がYESで、鍵3がレットオフが終了した後の、ハンマー4がストッパ8に当接する直前の第3位置P3に達した(図6参照)ときには、楽音を発音すべきタイミングであるとして、発音すべき楽音の音量を設定する(ステップ12)。
【0049】
この音量設定処理は、図10に示すサブルーチンに従って行われる。本処理では、まず、ステップ21において、鍵3の押鍵速度であるベロシティVを算出する。具体的には、第2検出信号S2がONに切り替わった時から第3検出信号S3がONに切り替わるまでの時間、すなわち鍵3の押鍵深さが第2位置P2に達してから第3位置P3に達するまでの時間を算出する。次に、第2位置P2と第3位置P3との間の距離を、算出した時間で除算することによって、ベロシティVを算出する。そして、算出したベロシティVに基づいて、音量を設定し(ステップ22)、本処理を終了する。
【0050】
図9に戻り、前記ステップ12に続くステップ13では、発音フラグF_MSTRを「1」にセットし、本処理を終了する。このように、発音フラグF_MSTRが「1」にセットされると、発音を開始させるための制御信号が音源回路26に出力されることによって、決定した音量に基づく楽音の発音が開始される。
【0051】
一方、前記ステップ11の判別結果がNOのときには、今回と前回の間で、第1検出信号S1がONからOFFに切り替わり、かつ第2および第3検出信号S2,S3がいずれもOFFであるか否かを判別する(ステップ14)。この判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0052】
また、ステップ14の判別結果がYESで、鍵3が第1位置P1まで復帰回動したときには、楽音を止音すべきタイミングであるとして、発音フラグF_MSTRを「0」にリセットし(ステップ15)、本処理を終了する。これにより、楽音を止音させるための制御信号が音源回路26に出力されることによって、楽音が止音される。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、レットオフ機構10によるレットオフが開始する直前の押鍵深さに対応する鍵3の第1位置P1における押鍵情報を第1スイッチ43で検出し、レットオフが終了した直後の第2位置P2における押鍵情報を第2スイッチ44で検出し、さらに、レットオフの終了後の第3位置P3における押鍵情報を第3スイッチ45で検出する。これらの第1〜第3スイッチ43〜45で検出した第1〜第3検出信号S1〜S3のうち、レットオフをまたがない第2および第3検出信号S2,S3に基づいて、ベロシティVを算出するので、レットオフの際の鍵3の大きな回動抵抗の影響を受けることなく、ベロシティVを精度良く算出することができる。また、そのようにして算出したベロシティVを用いて楽音の音量を設定するので、押鍵力に適した音量を得ることができる。
【0054】
さらに、第3検出信号S3に基づいて発音タイミングを設定するので、アコースティックピアノと同様、打弦のタイミングに最も近い適切なタイミングで楽音を発音させることができる。また、第1検出信号S1に基づいて止音タイミングを設定するので、離鍵タイミングに近い適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0055】
図11は、本発明の第2実施形態における鍵3の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFFタイミングの関係などを示している。この第2実施形態では、第1スイッチ43で第1位置P1’における押鍵情報を、第2スイッチ44で第2位置P2’における押鍵情報を、第3スイッチ45で第3位置P3’における押鍵情報をそれぞれ検出する。また、図11に示すように、第1位置P1’は、レットオフが開始する前の鍵3の押鍵深さに相当し、第2位置P2’は、第1位置P1’よりも押鍵深さが大きく、レットオフが開始する直前に相当する。さらに、第3位置P3’は、レットオフが終了した直後の押鍵深さに相当する。このような押鍵深さに対する第1〜第3スイッチ43〜45のON/OFFの関係は、カバー42の各延出部42aの長さを、第1実施形態で設定したものよりも大きく設定し、接点43a〜45aと回路部43b〜45bとの間の距離を小さくすることなどによって、実現することができる。
【0056】
また、第2実施形態では、ベロシティVを、第1〜第3スイッチ43〜45で検出した第1〜第3検出信号S1〜S3を用い、次式(1)に従って算出する。
V=V1×K+V2×(1−K) ・・・(1)
ここで、V1は、第1ベロシティV1であり、鍵3の押鍵深さが第1位置P1’に達してから第2位置P2’に達するまでの鍵3の押鍵速度である。また、V2は、第2ベロシティV2であり、鍵3の押鍵深さが第2位置P2’に達してから第3位置P3’に達するまでの押鍵速度である。これらの第1および第2ベロシティV1,V2は、第1実施形態のベロシティVと同様の方法で算出される。さらに、Kは、値0よりも大きく、値1.0よりも小さな重み係数である。
【0057】
そして、算出したベロシティVに基づいて、楽音の音量を設定する。また、第3検出信号S3に基づいて、発音タイミングを設定するとともに、第1検出信号S1に基づいて、止音タイミングを設定する。
【0058】
以上のように、第2実施形態によれば、レットオフをまたがない第1および第2検出信号S1,S2を用いてベロシティVを算出するので、第1実施形態と同様、鍵3の回動抵抗の影響を受けることなく、ベロシティVを精度良く算出でき、それに基づいて音量を適切に決定することができる。また、レットオフが開始する前の押鍵速度である第1ベロシティV1を、第2ベロシティV2を用いて補正することによってベロシティVを算出するので、レットオフの開始直前に、鍵3の押鍵を止めた後、再開した場合でも、その演奏法に見合ったベロシティVおよび楽音の音量を得ることができる。
【0059】
また、第3検出信号S3に基づいて発音タイミングを設定するので、第1実施形態と同様、適切なタイミングで楽音を発音させることができる。さらに、第1検出信号S1に基づいて止音タイミングを設定するので、離鍵タイミングに最も近い適切なタイミングで楽音を止音させることができる。
【0060】
なお、本実施形態は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態では、第1位置P1を、レットオフが開始する直前に設定しているが、これに限らず、レットオフが開始する前の任意の位置に設定することができる。また、第1実施形態では、第2位置P2を、レットオフが終了した直後に設定しているが、これに限らず、レットオフの終了時付近、すなわち、レットオフの終了直前から第3位置P3までの間の任意の位置に設定することが可能である。
【0061】
さらに、第2実施形態では、第3位置P3’を、レットオフが終了した直後に設定しているが、これに限らず、レットオフの終了後の任意の位置に設定することができる。また、第2実施形態では、第2位置P2’を、レットオフの開始直前に設定しているが、これに限らず、レットオフの開始時付近、すなわち、第1位置P1’からレットオフの開始直後までの間の任意の位置に設定することが可能である。さらに、第2実施形態では、止音タイミングを第1検出信号S1に基づいて設定しているが、第2検出信号S2に基づいて設定してもよい。
【0062】
また、第2実施形態では、第2ベロシティV2を、第2および第3検出信号S2,S3を用いて算出しているが、これに限らず、第1および第3検出信号S1,S3を用いて算出し、第1ベロシティV1を補正するのに用いてもよい。
【0063】
さらに、第2実施形態では、第2ベロシティV2による第1ベロシティV1の補正を、重み係数Kを用いて行っているが、これに限らず、他の適当な方法によって行ってもよい。
【0064】
また、本実施形態で用いたレットオフ機構10はあくまで一例であり、レットオフ効果を付与することができるものであれば、他の構成のレットオフ機構を用いてもよい。さらに、実施形態では、第1〜第3スイッチ43〜45は、ハンマー4によって作動するように構成されているが、これに限らず、例えばシャーシなどに設け、鍵によって作動するものでもよい。
【0065】
さらに、実施形態では、押鍵情報検出手段として、スイッチを用いているが、ON/OFF状態を検出できるものであれば他のものを用いてもよく、例えば光学式のセンサを用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態による電子ピアノの概略構成を示す図である。
【図2】レットオフ機構の分解斜視図である。
【図3】電子ピアノの動作例を示す図である。
【図4】楽音制御装置の一部を示す図である。
【図5】鍵スイッチの断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における鍵の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【図7】鍵の回動に伴う第1〜第3検出信号のタイミングチャートを示している。
【図8】図4のCPUで実行される発音制御処理を示すフローチャートである。
【図9】タッチ検出処理を示すサブルーチンである。
【図10】音量設定処理を示すサブルーチンである。
【図11】本発明の第2実施形態における鍵の押鍵深さに対する第1〜第3スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【図12】従来の楽音制御装置における鍵の押鍵深さに対する第1および第2スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【図13】他の従来の楽音制御装置における鍵の押鍵深さに対する第1および第2スイッチのON/OFFタイミングの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 電子ピアノ(電子鍵盤楽器)
3 鍵
10 レットオフ機構
20 楽音制御装置
23 CPU(押鍵速度算出手段、音量設定手段、発音タイミング設定手段、止音タイ
ミング設定手段および押鍵速度補正手段)
43 第1スイッチ(第1押鍵情報検出手段)
44 第2スイッチ(第2押鍵情報検出手段)
45 第3スイッチ(第3押鍵情報検出手段)
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P1’ 第1位置
P2’ 第2位置
P3’ 第3位置
S1 第1検出信号(第1押鍵情報)
S2 第2検出信号(第2押鍵情報)
S3 第3検出信号(第3押鍵情報)
V ベロシティ(鍵の押鍵速度)
V1 第1ベロシティ(第1および第2押鍵情報に基づいて算出された鍵の押鍵速度)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵の押鍵に伴ってレットオフ効果を付与するレットオフ機構を有する電子鍵盤楽器の楽音制御装置であって、
前記レットオフ機構によるレットオフが開始する前の押鍵深さに対応する前記鍵の第1位置における前記鍵の押鍵情報を、第1押鍵情報として検出する第1押鍵情報検出手段と、
前記レットオフの開始時付近または終了時付近で且つ前記第1位置よりも大きな押鍵深さに対応する前記鍵の第2位置における前記鍵の押鍵情報を、第2押鍵情報として検出する第2押鍵情報検出手段と、
前記レットオフが終了した後で且つ前記第2位置よりも大きな押鍵深さに対応する前記鍵の第3位置における前記鍵の押鍵情報を、第3押鍵情報として検出する第3押鍵情報検出手段と、
前記検出された前記第1および第2押鍵情報、ならびに前記第2および第3押鍵情報のうち、互いの間に前記レットオフをまたがない関係にある2つの押鍵深さに対応する2つの押鍵情報に基づいて、前記鍵の押鍵速度を算出する押鍵速度算出手段と、
当該算出された前記鍵の押鍵速度に基づいて、楽音の音量を設定する音量設定手段と、
前記第3押鍵情報に基づいて、楽音の発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、
前記第1または第2押鍵情報のうち、前記レットオフの開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、楽音の止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段と、
を備えることを特徴とする電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【請求項2】
前記第2位置は、前記レットオフの終了時付近の押鍵深さに対応し、
前記押鍵速度算出手段は、前記第2および第3押鍵情報に基づいて、前記鍵の押鍵速度を算出し、
前記止音タイミング設定手段は、前記第1押鍵情報に基づいて、前記止音タイミングを設定することを特徴とする、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【請求項3】
前記第2位置は、前記レットオフの開始時付近の押鍵深さに対応し、
前記押鍵速度算出手段は、前記第1および第2押鍵情報に基づいて、前記鍵の押鍵速度を算出し、
前記止音タイミング設定手段は、前記第1および第2押鍵情報のいずれかに基づいて、前記止音タイミングを設定することを特徴とする、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【請求項4】
前記押鍵速度算出手段は、前記第1および第2押鍵情報に基づいて算出された前記鍵の押鍵速度を、前記第1および第3押鍵情報または前記第2および第3押鍵情報に応じて補正する押鍵速度補正手段を有することを特徴とする、請求項3に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【請求項1】
鍵の押鍵に伴ってレットオフ効果を付与するレットオフ機構を有する電子鍵盤楽器の楽音制御装置であって、
前記レットオフ機構によるレットオフが開始する前の押鍵深さに対応する前記鍵の第1位置における前記鍵の押鍵情報を、第1押鍵情報として検出する第1押鍵情報検出手段と、
前記レットオフの開始時付近または終了時付近で且つ前記第1位置よりも大きな押鍵深さに対応する前記鍵の第2位置における前記鍵の押鍵情報を、第2押鍵情報として検出する第2押鍵情報検出手段と、
前記レットオフが終了した後で且つ前記第2位置よりも大きな押鍵深さに対応する前記鍵の第3位置における前記鍵の押鍵情報を、第3押鍵情報として検出する第3押鍵情報検出手段と、
前記検出された前記第1および第2押鍵情報、ならびに前記第2および第3押鍵情報のうち、互いの間に前記レットオフをまたがない関係にある2つの押鍵深さに対応する2つの押鍵情報に基づいて、前記鍵の押鍵速度を算出する押鍵速度算出手段と、
当該算出された前記鍵の押鍵速度に基づいて、楽音の音量を設定する音量設定手段と、
前記第3押鍵情報に基づいて、楽音の発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、
前記第1または第2押鍵情報のうち、前記レットオフの開始時付近よりも前の押鍵深さに対応する1つの押鍵情報に基づいて、楽音の止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段と、
を備えることを特徴とする電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【請求項2】
前記第2位置は、前記レットオフの終了時付近の押鍵深さに対応し、
前記押鍵速度算出手段は、前記第2および第3押鍵情報に基づいて、前記鍵の押鍵速度を算出し、
前記止音タイミング設定手段は、前記第1押鍵情報に基づいて、前記止音タイミングを設定することを特徴とする、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【請求項3】
前記第2位置は、前記レットオフの開始時付近の押鍵深さに対応し、
前記押鍵速度算出手段は、前記第1および第2押鍵情報に基づいて、前記鍵の押鍵速度を算出し、
前記止音タイミング設定手段は、前記第1および第2押鍵情報のいずれかに基づいて、前記止音タイミングを設定することを特徴とする、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【請求項4】
前記押鍵速度算出手段は、前記第1および第2押鍵情報に基づいて算出された前記鍵の押鍵速度を、前記第1および第3押鍵情報または前記第2および第3押鍵情報に応じて補正する押鍵速度補正手段を有することを特徴とする、請求項3に記載の電子鍵盤楽器の楽音制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−122268(P2010−122268A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293110(P2008−293110)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】
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