説明

電子除湿器

【課題】 自然対流と強制対流による除湿能力の大幅な向上を可能にした電子除湿器を提供する。
【解決手段】 電子冷却素子22、冷却体23、放熱体24、電源装置26、排気ファン27等を筐体21内に配設する。筐体21の側面に形成した第1の吸気口40から筐体内に流入する空気50A2 を冷却体23によって冷却し除湿する。冷却体23によって除湿された空気50A1 は、自然対流により吸引口31を通って放熱体24の第1の空気通路32Aに流入して上昇し、排気口42から筐体外部に排気される。また、第2の吸気口41より筐体外部の空気50A3 を放熱体24の第2の空気通路と放熱室30内に流入させ、排気口42から外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子を電子冷却素子として用いた電子除湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペルチェ素子を電子冷却素子として用い、多湿空気を除湿する電子除湿器としては、従来から種々提案され、実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に開示されている電子除湿器は、容器内にペルチェ素子、冷却フィン、放熱フィン、電源装置、排気ファン等を収納するとともに容器内部を縦方向の空気通路とし、容器の下部に水受部と吸気口を設け、上部に排気口を設けている。ペルチェ素子は、電源装置より直流電圧が供給されると、ペルチェ効果により吸熱面から放熱面に向かう熱移動を生じ、冷却フィンを冷却し、移動した熱を放熱フィンによって放熱する。また、通電によって排気ファンを駆動すると、容器外部の空気が吸気口より容器内に流入し、冷却フィンによって冷却されることにより空気中の水分が凝縮して結露し、この結露水が水受部に落下して容器外部に排出される。一方、冷却フィンによって冷却され、除湿された空気は、熱交換により放熱フィンの温度を下げ、排気ファンにより排気口から容器の外部に排気される。
【0004】
図5は、上記した引用文献1に開示されている電子除湿器と類似した従来の一般に使用されている電子除湿器の概略構成を示す図である。この電子除湿器1は、筐体2内にペルチェ素子3、冷却フィン4、放熱フィン5、電源装置6、排気ファン7、回路基板8、水受部9等を収納するとともに筐体2の内部を縦方向の空気通路10とし、筐体2の下部に第1、第2の吸気口11、12を形成し、上部に第1、第2の排気口13、14を形成している。
【0005】
このような電子除湿器1において、ペルチェ素子3に通電すると冷却フィン4が冷却される。また、通電によって排気ファン7を駆動すると、筐体2の外部の空気15A1 が第1の吸気口11より筐体2内に流入し、冷却フィン4によって冷却されることにより空気中の水分が凝縮して結露し、この結露水16が水受部9に落下してドレンパイプ17を通り筐体外部に排出される。一方、冷却フィン4によって冷却され、除湿された空気15Bは、排気ファン7により第1の排気口13から筐体外部に排気される。また、第2の吸気口12から筐体2内に流入した筐体外部の空気15A2 は、放熱フィン5、回路基板8および電源装置6を空冷し、排気ファン7により第1、第2の排気口13、14から筐体外部に排出される。
【0006】
【特許文献1】特開平9−178210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の電子除湿器1は、空気15A1 、15A2 の吸気口11、12とその通路を冷却フィン4と放熱フィン5とでそれぞれ別々にし、除湿された空気15Bと、放熱フィン5および電源装置6を通った空気15A2 を排気ファン7によって第1、第2の排気口13、14から筐体2の外部に排気する構造、言い換えれば排気ファン7による強制空冷(強制対流)で除湿を行なう構造を採っているため、排気ファン7を使用しない自然空冷(自然対流)の場合は除湿効果が低いという問題があった。すなわち、放熱フィン5は自然対流による空気15A2 との熱交換で温度を下げることにより冷却フィン4の温度を下げるため、温度の下がり方が小さく除湿性能が低い。
【0008】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、自然対流と強制対流による除湿能力の大幅な向上を可能にした電子除湿器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、第1、第2の吸気口と排気口を有する筐体と、前記筐体内に配設された電子冷却素子と、前記電子冷却素子の吸熱面と放熱面にそれぞれ取付けられた冷却体および放熱体とを備え、前記冷却体は、前記電子冷却素子によって冷却されることにより前記第1の吸気口から前記筐体内に流入した空気を冷却し、前記放熱体は、前記冷却体によって冷却された空気が流通する第1の空気通路と、前記第2の吸気口から筐体内に流入した空気が流通する第2の空気通路とを備えているものである。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、第1の空気通路の両側に第2の空気通路がそれぞれ形成されているものである。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記第1の吸気口が筐体の側面で冷却体より上方に形成され、前記第2の吸気口が筐体の底面に形成され、前記放熱体の壁面で冷却体より下方には第1の空気通路の下端が開口し、放熱体の上端には第1、第2の空気通路の上端が開口しているものである。
【0012】
さらに、本発明は、上記発明において、前記第1、第2の吸気口から筐体外部の空気をそれぞれ筐体内に導き、排気口から筐体外部に強制排気する排気ファンを備えているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、第1の吸気口から筐体内に流入し冷却体によって冷却された空気と、第2の吸気口から筐体内に流入した空気を放熱体の第1、第2の空気通路にそれぞれ導くようにしているので、前記両空気と放熱体との熱交換で放熱体の温度を効果的に下げる。この放熱体の温度低下が大きければ、放熱体による冷却体の温度低下も大きくなるため、自然対流であっても冷却体による除湿効果を向上させることができる。
【0014】
第1の空気通路を内側にしてその両側に第2の空気通路を設けた発明においては、第1の空気通路が形成されている放熱体の中央部の温度が第2の空気通路が形成されている外側部分に比べて高いため、冷却体によって冷却された空気との温度差により対流を促進し、放熱体を通過していく過程の熱交換によって放熱体の温度を効果的に下げる。
また、第2の空気通路は放熱体の中央部から伝熱により伝わった温度と筐体外部の空気との温度差により第2空気通路の対流を促進し、放熱体の温度をさらに効果的に下げる。
【0015】
第1の吸気口を筐体の側面で冷却体より上方に形成し、第2の吸気口を筐体の底面に形成した発明においては、自然対流による除湿構造とすることができる。
【0016】
排気ファンを備えた発明においては、自然対流に比べてより多くの風量を放熱体に送風することができるため、放熱体の温度をより効果的に下げることができ、除湿性能を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る電子除湿器の一実施の形態を示す概略断面図、図2は同電子除湿器の除湿部の斜め上方から見た斜視図、図3は同電子除湿器の除湿部の斜め下方から見た斜視図、図4は図2のIV−IV線断面図である。これらの図において、全体を符号20で示す電子除湿器は、結露を防止するために制御盤(図示せず)の内部に組み込まれるもので、縦長箱型の筐体21と、この筐体21内に配設された電子冷却素子22、冷却体23、放熱体24、排気ファン25、電源装置26、回路基板27、水受部28等を備え、放熱体24によって筐体21の内部を実質的に冷却室29と放熱室30とに仕切っている。
【0018】
前記電子冷却素子22は、前記電源装置26に電気的に接続されたペルチェ素子からなり、その一方の面である冷却室29側の面22aが吸熱面を形成し、前記冷却体23が接合されている。一方、電子冷却素子22の他方の面である放熱室30側の面22bは、放熱面を形成し、前記放熱体24が接合されている。電子冷却素子22と冷却体23および放熱体24の接合は、冷却体23と放熱体24の間に電子冷却素子22を介在させ、冷却体23と放熱体24を図示を省略した接続部品を用いて一体的に接合することにより行なう。
【0019】
前記冷却体23は、アルミニウム合金等によって一体に形成されるもので、本体23Aと、この本体23Aの表面側に一体にかつ適宜間隔おいて平行に突設された垂直な複数(例えば7枚)のフィン23Bとで構成され、本体23Aの背面が電子冷却素子22の吸熱面22aに接合されている。本体23Aは、電子冷却素子22と略等しい大きさの矩形板状に形成されている。
【0020】
前記放熱体24は、同じくアルミニウム合金等によって一体に形成されるもので、上、下端が開放する角筒状の本体24Aと、この本体24Aの内部を仕切る6枚のフィン24Bとで構成されている。本体24Aは、所謂、煙突効果(密度が小さい暖気が煙突を風路として上昇し、上部から排出される現象のこと)を高めるために大きく形成されることにより大きな断面積と、十分な高さとを有し、冷却体23と対向する前面板24aの高さ方向の略中央部が前記電子冷却素子22の放熱面22bに接合されている。また、前面板24aの電子冷却素子22が接合されている部分の真下には、吸引口31が形成されている。
【0021】
放熱体24のフィン24Bは、本体24A内に幅方向に所定の間隔をおいて高さ方向全長にわたって形成されることにより、本体24Aの前面板24a、左右両側板24b、24cおよび背面板24dとともに、本体24Aの内部を7つの空気通路32a〜32gに仕切っている。これらの空気通路32a〜32gのうち、中央部の3つの空気通路32c〜32eは第1の空気通路32Aを形成し、下端側が吸引口31を介して冷却室29に連通している。一方、第1の空気通路32Aの上端は、本体24Aの上端24fに開口している。なお、本体24Aの下面には、第1の空気通路32Aの下端を閉塞する蓋体34が固定されている。本体24Aの第1の空気通路32Aの両側にそれぞれ2つずつ形成されている空気通路32aと32bおよび32fと32gは、それぞれ第2の空気通路32Bを形成し、本体24Aの上、下端24f、24gにそれぞれ開口している。
【0022】
前記排気ファン25は、前記放熱体24の上端24fに固定されており、放熱体24内の空気および放熱室30内の空気を筐体21の外部上方に強制排気する。
【0023】
前記電源装置26は、トランス、整流スタック等を備え商用電流を所定電圧の直流に変換して電子冷却素子22に通電するもので、筐体21の背面板21Bと放熱体24の背面板24dとの間の空間に配設されている。
【0024】
前記筐体21は、底面が開放する縦長の箱型に形成されることにより、前後に対向する側板21A、21B、上板21Cおよび左右に対向する側板(図示せず)とを備え、側板板21Aの前記冷却体23より上方に第1の吸気口40が形成され、底面開口部35のうち前記第1の空気通路32Aに対応する部分35aが前記蓋体34によって閉塞され、第2の空気通路32Bに対応する部分35bと回路基板27の真下部分35cが第2の吸気口41を形成し、前記冷却室29に対応する部分35dが前記水受部28によって閉塞されている。上面板21Cの中央には、前記排気ファン25に対応して排気口42が形成されている。排気ファン25を収容するケース25Aは、下面が開放する箱体からなり、その上板と放熱室30側の3つの側板には、ケース内部と放熱室30とを連通させる開口(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0025】
前記水受部28は、冷却体23の幅方向全長にわたって延在する長さを有する樋状に形成され、下面中央部にドレンパイプ43の上端が接続されている。ドレンパイプ43の下端は、筐体21の外部下方に導かれ下水等に接続されている。
【0026】
次に、上記構造からなる電子除湿装置20の動作について説明する。
ペルチェ素子からなる電子冷却素子22に電源装置26から直流電圧を供給すると、電子冷却素子22は、ペルチェ効果により吸熱面22aから放熱面22bに向かう熱移動を生じ、冷却体23を冷却する。一方、ペルチェ効果により電子冷却素子22の放熱面44a側に移動した熱は、熱伝導によって放熱体24に移動し放熱される。
【0027】
このため、冷却室29内の空気は冷却体23に接触して冷やされ、空気中の水分がフィン23Bの表面に結露して水滴となり、一定量以上になると重力によってフィン23Bに沿って滑り落ち、水受部28に落下すると、ドレンパイプ43を通って筐体21の外部に排出される。
【0028】
冷却体23によって冷却された空気50A1 は、密度が大きくなるため下方に移動することにより熱対流が生じ、吸引口31から放熱体24の第1の空気通路32Aに流入する。また、冷却室29内に熱対流が生じると、筐体21の外部、言い換えれば制御盤内の湿った空気50A2 は第1の吸気口40から冷却室29内に流入し、冷却体23に接触して冷却されることにより、密度が大きい除湿された空気50A1 となって下方に移動し、吸引口31から放熱体24の第1の空気通路32A内に流入する。この第1の空気通路32A内に流入した空気50A1 は、放熱体24の熱によって温められ、空気中の水分の蒸発が促進されると同時に、放熱体24を冷却する。そして、第1の空気通路32Aに流入した空気50A1 は、放熱体24により温められて密度が小さくなると、熱対流と放熱体24による煙突効果によって上昇し第1の空気通路32Aの上端開口部から放熱体24の外部に排出され、排気口42から制御盤内に乾燥した空気として排出される。
【0029】
また、放熱体24の第2の空気通路32B内の空気と放熱室30内の空気は、放熱体24の熱によって温められると、空気中の水蒸気が蒸発し密度が小さくなって上方に移動し熱対流が生じる。また、この熱対流によって筐体外部の湿った空気50A3 が第2の吸気口41から放熱体24の第2の空気通路32Bと放熱室30内に流入し、放熱体24によって暖められると、空気中の水蒸気が蒸発し上方へ移動する。そして、第2の空気通路32Bと放熱室30内の空気50A3 は、排気口42から制御盤内に乾燥した空気として排出される。
【0030】
このようにして制御盤内の空気50A1 、50A3 は、電子除湿器20を絶えず循環することにより除湿されて乾燥した空気となるため、制御盤内を乾燥した状態に保ち、湿気による各種電子部品、特にコンデンサへの影響を軽減し、良好な状態に保存することができる。
【0031】
また、本発明による電子除湿器20においては、放熱体24に冷却室29内の冷却体23によって冷却された空気50A1 と、筐体外部の空気50A3 が流入する第1、第2の空気通路32A、32Bを設けているので、自然対流であっても冷却体23によって冷却された空気50A1 との熱交換で放熱体24の温度を効果的に下げることができる。また、放熱体24の温度を下げることができれば、冷却体23の温度も下げることができるので、電子除湿器20の自然対流による除湿性能を向上させることができる。
【0032】
また、排気ファン25を備え、この排気ファン25を除湿時に駆動して放熱体24および放熱室30内の空気を排気口42から筐体外部に強制排気し、第1、第2の吸気口40、41から筐体外部の空気50A2 、50A3 を筐体21内に流入させ、強制対流を利用して除湿すると、自然対流に比べて空気の流量が増大するため、電子除湿器20の除湿能力をより一層向上させることができる。なお、電子除湿器20の除湿性能を制御盤の設置環境等に応じて変更するときは、電子冷却素子22に印加する直流電圧の電圧値を変えたり、排気ファン25の回転数を変えたりすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、電子除湿器を制御盤の除湿に用いた例を示したが、これに限らず配電盤等の設備、除湿を必要とする精密部品、食品、薬品等を保管する保管庫、ショーケース等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る電子除湿器の一実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】同電子除湿器の除湿部の斜め上方から見た斜視図である。
【図3】同電子除湿器の除湿部の斜め下方から見た斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】従来の電子除湿器の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
20…電子除湿器、21…筐体、22…電子冷却素子、23…冷却体、24…放熱体、25…排気ファン、26…電源装置、27…回路基板、28…水受部、29…冷却室、30…放熱室、31…吸引口、32A…第1の空気通路、32B…第2の空気通路、40…第1の吸気口、41…第2の吸気口、42…排気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の吸気口と排気口を有する筐体と、
前記筐体内に配設された電子冷却素子と、
前記電子冷却素子の吸熱面と放熱面にそれぞれ取付けられた冷却体および放熱体とを備え、
前記冷却体は、前記電子冷却素子によって冷却されることにより前記第1の吸気口から前記筐体内に流入した空気を冷却し、
前記放熱体は、前記冷却体によって冷却された空気が流通する第1の空気通路と、前記第2の吸気口から筐体内に流入した空気が流通する第2の空気通路とを備えていることを特徴とする電子除湿器。
【請求項2】
請求項1記載の電子除湿器において、
前記放熱体は、第1の空気通路の両側に第2の空気通路がそれぞれ形成されていることを特徴とする電子除湿器。
【請求項3】
請求項1または2記載の電子除湿器において、
前記第1の吸気口は筐体の側面で冷却体より上方に形成され、
前記第2の吸気口は筐体の底面に形成され、
前記放熱体の壁面で冷却体より下方には第1の空気通路の下端が開口し、放熱体の上端には第1、第2の空気通路の上端が開口していることを特徴とする電子除湿器。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の電子除湿器において、
前記第1、第2の吸気口から筐体外部の空気をそれぞれ筐体内に導き、排気口から筐体外部に強制排気する排気ファンを備えていることを特徴とする電子除湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−75854(P2010−75854A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247634(P2008−247634)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(591113437)オーム電機株式会社 (23)
【Fターム(参考)】