説明

電子音響システム

【課題】 複数の音響入力機器のパラメータを直感的に操作手段に対応付けて制御できるようにする。
【解決手段】 マイクA,Bおよび楽器Aから入力された音響信号はミキシングエンジン部29に入力されてミキシング処理されてメインスピーカL,Rから放音される。マイクA,Bおよび楽器Aのステージ50上の配置位置をメッシュ型センサー群27および実体位置検出回路28により検出して、その位置情報を制御部51に供給する。制御部51は位置情報に基づいて、操作テーブル52上にマイクA,Bおよび楽器Aのパラメータの値を変更可能なCH1オブジェクト〜ch3オブジェクトを表示させる。これにより、マイクA,Bおよび楽器Aに各オブジェクトを直感的に対応付けてパラメータを制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の音響入力機器からの音響信号をパラメータに基づいて処理する際に、パラメータを変更できる電子音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数のマイクロホンあるいは電気・電子楽器などの音響入力機器から出力される音響信号の音量レベルや周波数特性を調整してミキシングし、音量、パン、効果などの音響特性を制御してパワーアンプに送り出すコンサートホール等で使用されるミキサー装置と称される音響信号処理装置(以下、「ミキサー装置」という)が知られている。ミキサー装置を操作するオペレータは、エレキギターやドラム、ボーカル等の音響入力機器からの音響信号の各音響特性を、各系列に対応して備えられた操作子(フェーダやノブ)を操作することにより、演奏を最もふさわしく表現していると思われる状態に調整している。この場合、一般的には、各系列の操作子は整然と並べられており、どの操作子がどの系列の音響入力機器に対応しているか(たとえばどの操作子がボーカル用で、どの操作子がドラム用か、など)が直感的にわからず、各音響入力機器からの音響信号の音響特性を直感的に対応付けて調整することが困難であった。
そこで、上記の不都合を解決する目的で、透明又は半透明のタッチ操作子付きの平面状とされた表示手段をミキサー装置のパネルに立設し、該表示手段を透過して見える演奏者(音響入力機器)と重なるように、該表示手段上に操作子を表示したミキサー装置が従来提案されている。
【特許文献1】特開2006−203303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来提案されているミキサー装置では、ミキサー装置を操作するオペレータの頭の位置を検出して、該オペレータがどの演奏者(音響入力機器)を見ているかを推定するといった高度な処理が必要とされて、高性能の処理装置が必要とされており、場合によっては音響特性を操作をしたい演奏者ではなく、間違った演奏者を推定してしまう恐れがあった。さらに、操作子は平面状とされた表示手段において各演奏者の位置に対応して表示されることから、操作子をオペレータの好みの位置に配置することができないという問題点もあった。
そこで、本発明は複数の音響入力機器のパラメータを直感的に操作手段に対応付けて制御することができる電子音響システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の電子音響システムは、複数の音響入力機器の各々の配置位置を検出し、第一モードにおいて、複数の音響入力機器のそれぞれの位置に基づいて、音響入力機器の各々のパラメータの値を変更可能なオブジェクトを操作テーブル上に配置し、第二モードにおいて、パラメータの値を操作テーブル上にグラフ表示すると共に、オブジェクトを移動させてグラフ表示におけるパラメータ値を示す位置に配置し、第一モードから第二モードに切り替えられた際に、オブジェクトが目視で追従可能な移動速度で移動していくようにされていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、第一モードにおいて複数の音響入力機器の各々の配置位置に対応する操作テーブル上の位置に、音響入力機器の各々に対応するオブジェクトが設定され、オブジェクトが目視で追従可能な移動速度で移動して第一モードから第二モードに切り換わることから、各々の音響入力機器に対応するオブジェクトを直感的に対応付けて操作することでパラメータを制御することができるようになる。これにより、日曜日に集まってバンド演奏するような場合に時々しか電子音響システムを操作しない素人がミキシングする場合には好適な電子音響システムとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の第1実施例にかかる電子音響システム1のブロック構成を示すブロック図を図1に示す。本発明にかかる電子音響システム1は、ステージ上の演奏者が演奏する楽器からの音響信号や、ステージ上の演奏者の歌唱音を拾うマイクからの音響信号等が入力され、これらの音響信号に音響信号処理を施しミキシングしてスピーカ等に出力している。
図1に示す第1実施例の電子音響システム1は、電子音響システム1の全体の動作を管理プログラム(OS:Operating System)を実行することにより制御するCPU(Central Processing Unit)10と、CPU10が実行するミキシング制御プログラム等の動作ソフトウェアが格納されている不揮発性のROM(Read Only Member)11と、CPU10のワークエリアや各種データ等が記憶されるRAM(Random Access Memory)12を備えている。CPU10は、ミキシング制御プログラムを実行することにより、入力された複数の音響信号に音響信号処理を施してミキシング処理を行っている。なお、ROM11をフラッシュメモリ等の書き換え可能なROMとすることで、動作ソフトウェアの書き換えを可能とすることができ、動作ソフトウェアのバージョンアップを容易に行うことができる。また、一定間隔でCPU10に対して割り込みを発生させるタイマ13が備えられている。外部記憶装置14は、ハードディスク(HD)、FD(フレキシブルディスク又はフロッピーディスク(商標)、CD(コンパクトディスク)−ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(ディジタル多目的ディスク)、フラッシュメモリや半導体メモリなどの記憶媒体と、その駆動装置からなり、管理プログラム(OS)、動作ソフトウェアや各種データが記憶されている。この場合、記憶媒体は着脱可能であってもよいし、電子音響システム1に内蔵されていてもよい。通信I/F15は、外部機器との間でデータ等の授受を行うためのイーサネット(商標)等の通信用のインタフェース(I/F)であり、インターネット等の通信ネットワーク16を介してサーバ装置17に接続して各種データやプログラム等をダウンロードすることができる。MIDI I/F18は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)機器19と接続するためのMIDIインタフェースであり、MIDIインタフェースを有するシンセサイザや音源などと接続することができる。
【0007】
また、LED表示回路20は電子音響システム1の調整卓等に設けられているLED(Light Emitting Diode)表示器21を駆動して発光表示させる表示回路であり、設定操作検出回路22は、電子音響システム1の調整卓等に設けられているフェーダやノブの設定操作子23をスキャンして、設定操作子23に対する操作を検出している。検出された操作信号に基づいて音響信号処理に用いるパラメータの値が変更される。タッチパネル24は、音響信号処理に用いるパラメータの値を制御可能な操作テーブルを構成しており、ディスプレイ表示回路25により表示されるディスプレイと、タッチ検出回路26によりタッチ操作された位置が検出されるマトリクス・スイッチ等を備えている。タッチパネル24のディスプレイには、各々の音響入力機器30を表すオブジェクトとされる図形がディスプレイ表示回路25によりそれぞれ表示され、その表示の設定モードとして第一モードと第二モードとが用意され、第一モードと第二モードとを切り替える切替手段が設けられている。第一モードにおいては、ステージ上の楽器やマイク等の複数の音響入力機器30が実際に配置されている位置に対応して、オブジェクトとされる図形がディスプレイ表示回路25によりそれぞれ表示される。
【0008】
また、第二モードにおいては、各音響入力機器30のパラメータ値をグラフ表示する画像がディスプレイ表示回路25によりそれぞれ表示されると共に、オブジェクトとされる図形がグラフ表示におけるパラメータ値を示す位置に表示される。そして、第一モードから第二モードに切り替えられた際に、オブジェクトの図形が目視で追従可能な移動速度で画面上を移動していくように表示される。これにより、第一モードでは、表示されている各図形の表示位置が対応する音響入力機器30の実際の配置位置を模擬するようになり、各図形と各音響入力機器30とを直感的に対応付けることができる。また、第一モードから第二モードに切り替えられた際に移動していくオブジェクトを目で追うことができることから、パラメータを変更したい音響入力機器30に即座に対応するオブジェクトの図形を即座に特定することができ、第二モードにおいて特定した図形に対してタッチパネル24上において操作を行うことにより、パラメータを変更したい音響入力機器30のパラメータの値を操作することができる。このように、音響入力機器30である楽器やマイクのレベルやパン等のパラメータを編集する場合は、パラメータ値がグラフ表示される第二モードに切り替えて、タッチパネル24上に表示されたオブジェクトに対して操作を行うことにより、当該オブジェクトに対応する音響入力機器30のパラメータを編集することができる。
【0009】
メッシュ型センサー群27は、楽器やマイク等の複数の音響入力機器30が配置されるステージの床下に設置されている。ステージ上の楽器やマイク等の音響入力機器30のそれぞれにはRFID31等のICタグが埋め込まれており、メッシュ型センサー群27は、RFID31から埋め込まれている機器特有の機器固有IDをそれぞれ読み取るセンサー群とされている。実体位置検出回路28は、メッシュ型センサー群27で読み取られた機器固有IDの情報から、音響入力機器30のそれぞれの位置を検出している。なお、メッシュ型センサー群27を構成している複数のセンサーは、それぞれ電波を用いてRFID31から機器固有IDを読み取るが、読み取れるのはそのセンサーの近傍に位置するRFID31のみとされる。実体位置検出回路28は、機器固有IDを読み取ったセンサーの位置に基づいて各音響入力機器30の位置を検出しており、検出された複数の音響入力機器30の各位置の情報に基づいて、CPU10はタッチパネル24に表示させる各音響入力機器30に対応するオブジェクトとされる図形の表示位置を算出してディスプレイ表示回路25を駆動している。これにより、タッチパネル24に各音響入力機器30を表す図形がステージ上の各音響入力機器30の位置に対応して表示されるようになる。
【0010】
また、ステージ上のマイクやエレキギターや電子キーボード等の複数の音響入力機器30から出力された音響信号は、ステージ外に配置されたミキシングエンジン部29における入力信号I/F40の別々の入力チャンネルに入力され、それぞれの音響信号はディジタル信号に変換されてデジタル信号処理回路42に供給される。デジタル信号処理回路42は、入力された音響信号の音量レベルや周波数特性をそのパラメータに基づいて調整してミキシングし、音量、パン、効果などの音響特性をそのパラメータに基づいて制御するDSP(Digital Signal Processor)から構成されている。また、デジタル信号処理回路42から出力されるミキシング等された音響信号を客席に向けられたメインスピーカ等の複数の音響出力機器32にアンプを介して出力する出力信号I/F41を備えている。各部はバス33を介してデータ等の授受を行っている。
このように構成された電子音響システム1において、ユーザが音響入力機器30である楽器やマイクのレベルやパン等のパラメータを制御する場合は、パラメータ値がグラフ表示される第二モードに切り替えて、タッチパネル24上に表示されたオブジェクトに対して操作を行う。これにより、当該オブジェクトに対応する音響入力機器30に割り当てられたチャンネルの音響特性を制御するパラメータの値が変更され、ミキシングエンジン部29は、変更されたパラメータ値に基づいてミキシングレベルや定位位置等の音響信号処理を実行するようになる。
【0011】
次に、本発明の第1実施例にかかる電子音響システム1においてパラメータを変更する態様の概略構成を図2に示す。
図2において、ステージ50上にはマイクAを使用して歌唱する演奏者、楽器Aを演奏する演奏者、マイクBを使用して歌唱する演奏者が所定の位置に立っている。マイクAにはRFID31等のタグ1が埋め込まれており、同様に、楽器Aにはタグ2が埋め込まれており、マイクBにはタグ3が埋め込まれている。マイクA,Bおよび楽器Aからの音響信号はミキシングエンジン部29のそれぞれに割り当てられたチャンネルに入力される。ミキシングエンジン部29では制御部51の制御の基で、各チャンネルのパラメータに基づいて音量レベルや周波数特性が調整されてミキシングされ、音量、パン、効果などの音響特性が付与されて、ステージ50の脇に設けられているメインスピーカL32aおよびメインスピーカR32bから、歌唱音や演奏音が客席に向けて出力されるようになる。なお、制御部51はCPU10、ROM11、RAM12等から構成される。
【0012】
ステージ50の床下にはマトリクス状に配置された多数のセンサーからなるメッシュ型センサー群27が設置されており、各センサーでセンシングされた信号は実体位置検出回路28に入力されている。メッシュ型センサー群27を構成する各センサーは、電磁誘導方式あるいは電波方式を用いてタグ1〜タグ3を検出している。この場合、各センサーから発せられる磁界変動あるいは電波によって、マイクA,Bおよび楽器Aに設けられたタグ1〜タグ3は電力を得て内蔵する回路を作動させ、機器固有IDの情報を送信する。タグ1〜タグ3から送信された機器固有IDの情報は、タグ1〜タグ3の近傍に配置されたセンサーしか受信することができず、受信されたセンサーからは機器固有IDの情報信号が実体位置検出回路28に送られる。実体位置検出回路28は、入力された情報信号から機器固有IDを検出し、特定の機器固有IDが一つのセンサーのみから送られた情報信号から検出された場合は、そのセンサーの配置位置に当該機器固有IDに対応するマイクA,Bあるいは楽器Aが配置されていると検出する。また、同じ機器固有IDが二つ以上のセンサーから送られた情報信号から検出された場合は、受信レベルの強度の割合に応じたセンサーとセンサーの間の位置に当該機器固有IDに対応するマイクA,Bあるいは楽器Aが配置されていると検出する。なお、初期設定にてタグ1〜タグ3の各機器固有IDとマイクA,Bおよび楽器Aとの対応付けがされていると共に、マイクA,Bおよび楽器Aとされる音響入力機器30と、音響入力機器30にそれぞれ割り当てられるミキシングエンジン部29のチャンネルとが予め対応付けされている。
【0013】
実体位置検出回路28において検出されたマイクA,Bおよび楽器Aの位置情報は制御部51に送られる。制御部51は、タッチパネル24の設定モードが第一モードとされている場合は、位置情報に対応するタッチパネル24上の位置にマイクAに対応するCH1オブジェクトの図形52aと、楽器Aに対応するCH2オブジェクトの図形52bと、マイクBに対応するCH3オブジェクトの図形52cとを表示させるようにディスプレイ表示回路25を駆動する。タッチパネル24は操作テーブル52を構成しており、マイクAはチャンネル1に割り当てられ、楽器Aはチャンネル2に割り当てられ、マイクBはチャンネル3に割り当てられているものとする。これにより、タッチパネル24にはマイクAのステージ50上の配置位置に対応する矩形枠のCH1オブジェクトの図形52aが左下に、楽器Aのステージ50上の配置位置に対応する矩形枠のCH2オブジェクトの図形52bが中央上に、マイクBのステージ50上の配置位置に対応する矩形枠のCH3オブジェクトの図形52cが右下に表示される。このように、第一モードではマイクA,Bおよび楽器Aのステージ50の配置位置に対応して操作テーブル52上にCH1オブジェクト〜CH3オブジェクトが表示されることから、各オブジェクトとマイクA,Bおよび楽器Aとされる音響入力機器30とを直感的に対応付けることができる。また、マイクA,Bおよび楽器Aのステージ50の配置位置が移動すると、移動した位置が実体位置検出回路28において検出されることから、この検出信号を受けた制御部51は、設定モードが第一モードとされている場合は、操作テーブル52上に表示されるCH1オブジェクト〜CH3オブジェクトを音響入力機器30の移動に追随させてタッチパネル24上に表示していくようになる。
【0014】
また、タッチパネル24の設定モードが第二モードとされている場合は、制御部51は、各音響入力機器30のパラメータの値がグラフ表示される画像がタッチパネル24に表示されると共に、オブジェクトとされる図形がグラフ表示におけるパラメータ値を示す位置に表示されるようにディスプレイ表示回路25を駆動する。タッチパネル24には、設定モードを切り替えるボタンが左上に縦に並んで3つ表示されており、その内の配置ボタン52dは設定モードを第一モードに切り替えるボタンであり、レベルボタン52eは設定モードを第二モードに切り替えると共に表示されるパラメータを「入力レベル」とするボタンであり、パンボタン52fは設定モードを第二モードに切り替えると共に表示されるパラメータを「パン」とするボタンである。第一モードにされている場合にレベルボタン52eあるいはパンボタン52fを操作して設定モードが第一モードから第二モードに切り替えられた際には、制御部51は、オブジェクトの図形が目視で追従可能な移動速度で画面上を移動していくような表示制御信号をディスプレイ表示回路25に供給する。
【0015】
ここで、第1実施例における電子音響システム1における第一モードおよび第二モードの表示態様およびモード切替について図3を参照しながら説明する。
図3においては、タッチパネル24に表示される第一モードの配置表示の表示態様と、第二モードの入力レベル表示の表示態様と、第二モードのパン表示の表示態様とが示されている。このように、第二モードにおいてはパラメータ種類に応じた表示態様とされる。第一モードの表示態様と第二モードの2つの表示態様は、ボタン52d〜52fのいずれかを操作することにより、いずれの表示態様からでも所望の表示態様に切り替えることができる。例えば、レベルボタン52eが操作された場合はレベルボタン52eが白抜き表示になり入力レベル表示の表示態様に切り替わり、縦棒の長さで各音響入力機器30に割り当てられたチャンネルにおける入力レベルの大きさが表示される棒グラフの画像がタッチパネル24に表示される。そして、矩形枠のオブジェクトとされる図形52a,52b,52cが、対応するチャンネルの棒グラフの先端に表示される。これにより、図形52a,52b,52cの各表示位置により、そのチャンネルの入力レベルが示されるようになる。また、各棒グラフの近傍に入力レベル値が数値で表示される。図示する例では、チャンネル1では−3dB、チャンネル2では−10dB、チャンネル3では0dBの入力レベルが設定されている。この入力レベル表示の表示態様において、オブジェクトの図形52a,52b,52cのいずれかにタッチして指を上下に動かしてドラッグすると、そのドラッグ操作がタッチ検出回路26により検出されて、制御部51の制御の基で操作された図形52a,52b,52cが指の移動に伴って移動表示されていくと共に、対応するチャンネルの入力レベルのパラメータ値が操作に応じて変更されるようになる。変更されたパラメータ値は、制御部51からミキシングエンジン部29に送られてミキシングエンジン部29において当該チャンネルの音響特性である入力レベルが変更された音響信号処理が行われるようになる。
【0016】
また、パンボタン52fが操作された場合はパンボタン52fが白抜き表示になりパン表示の表示態様に切り替わり、横の線で各音響入力機器30に割り当てられたチャンネルにおけるパンの定位位置が表示されるグラフの画像がタッチパネル24に表示される。そして、矩形枠のオブジェクトとされる図形52a,52b,52cが、対応するチャンネルの横の線上の定位位置に表示される。これにより、図形52a,52b,52cの各表示位置により、そのチャンネルのパンの定位位置が示されるようになる。このパン表示の表示態様において、オブジェクトの図形52a,52b,52cのいずれかにタッチして指を左右に動かしてドラッグすると、そのドラッグ操作がタッチ検出回路26により検出されて、制御部51の制御の基で操作された図形52a,52b,52cが指の移動に伴って移動表示されていくと共に、対応するチャンネルのパンのパラメータ値が操作に応じて変更されるようになる。変更されたパラメータ値は、制御部51からミキシングエンジン部29に送られてミキシングエンジン部29において当該チャンネルの音響特性であるパンの定位位置が変更された音響信号処理が行われるようになる。
【0017】
このように、第一モードの配置表示の表示態様とされている場合に、レベルボタン52eあるいはパンボタン52fにタッチすると、第二モードに切り替わるがこの切替時にはオブジェクトの図形52a,52b,52cが図3の矢印で示すように移動して表示されていくようになる。そこで、オブジェクトの図形52a,52b,52cを目視で追従可能な遅い移動速度で画面上を移動させていくように表示制御を行うことにより、配置表示でステージ50上の音響入力機器30に直感的に対応付けることができるオブジェクトがどの位置に移動したかを容易に認識することができるようになる。これにより、第一モードの配置表示においてパラメータを変更したい音響入力機器30に対応するオブジェクトを特定しておいて、変更したいパラメータのボタン52e,52fを操作すると、特定したオブジェクトの移動中の動きを目で追うことができ、第二モードに切り替わった際に目的とするオブジェクトの図形52a,52b,52cを間違うことなく操作してそのパラメータの値を操作することができるようになる。
【0018】
なお、第二モードにおける入力レベル表示(パン表示)からパン表示(入力レベル表示)の表示態様に切り替わった際にもオブジェクトの図形52a,52b,52cは移動するようになり、この場合においてもオブジェクトの図形52a,52b,52cを目視で追従可能な遅い移動速度で画面上を移動させていくように表示制御を行うことができる。この場合に、第二モードにおける入力レベル表示(パン表示)からパン表示(入力レベル表示)の表示態様に切り替わった際に、第一モードの配置表示に一度戻ってから切り替えられた表示態様に移るようにしてもよい。このようにすれば、戻った配置表示において目的とするオブジェクトを改めて確認することができることから、第二モードの間で切り替えられた際に目的とするオブジェクトの図形52a,52b,52cを間違うことなく操作してそのパラメータの値を操作することができるようになる。
【0019】
次に、本発明の第2実施例にかかる電子音響システム2を説明する。まず、第2実施例の電子音響システム2においてパラメータを変更する態様の概略構成を図5に示す。
図5に示すように、ステージ50上の構成は図2に示す第1実施例の概略構成と同様とされており、音響入力機器30とされるマイクA、楽器A、マイクBにはそれぞれRFID31等のタグ1〜タグ3が埋め込まれている。マイクA,Bおよび楽器Aからの音響信号はミキシングエンジン部29のそれぞれ割り当てられたチャンネルに入力され、各チャンネルのパラメータに基づいて音量レベルや周波数特性が調整されてミキシングされ、音量、パン、効果などの音響特性が付与されて、ステージ50の脇に設けられているメインスピーカL32aおよびメインスピーカR32bから、歌唱音や演奏音が客席に向けて出力されるようになる。なお、ミキシングエンジン部29においてマイクAはチャンネル1に割り当てられ、楽器Aはチャンネル2に割り当てられ、マイクBはチャンネル3に割り当てられているものとする。
【0020】
ステージ50の床下には多数のセンサーからなるメッシュ型センサー群27が設置されており、各センサーでセンシングされた信号は実体位置検出回路28に入力されている。タグ1〜タグ3から送信された機器固有IDの情報を受信したセンサーからの機器固有IDの情報信号は実体位置検出回路28に入力され、実体位置検出回路28において、入力された情報信号から機器固有IDに基づいてマイクA,Bおよび楽器Aが配置されている位置が前述したように検出される。実体位置検出回路28において検出されたマイクA,Bおよび楽器Aの位置情報は制御部51に送られる。操作テーブル52は、音響信号処理に用いるパラメータの値を制御可能な操作テーブルとされており、ディスプレイ表示回路36により表示される液晶ディスプレイ35を備えている。操作テーブル52上には、各々の音響入力機器30を表すオブジェクトとされるパッド34−1,34−2,34−3が配置される。この配置の設定モードとして第一モードと第二モードとが用意され、第一モードと第二モードとを切り替える切替手段が液晶ディスプレイ35に表示されている。第一モードにおいては、ステージ上の楽器やマイク等の複数の音響入力機器30が実際に配置されている位置に対応して、オブジェクトとされるパッド34−1,34−2,34−3が実体位置検出回路28から位置情報が供給される制御部51の制御の基で配置される。また、第二モードにおいては、各音響入力機器30が割り当てられているチャンネルにおける選択されたパラメータを表示したり編集することができる。
【0021】
液晶ディスプレイ35の左上に縦に並んで設定モードを切り替えるボタンが3つ表示されており、その内の配置ボタン52dは設定モードを第一モードに切り替えるボタンであり、レベルボタン52eは設定モードを第二モードに切り替えると共に表示されるパラメータを「入力レベル」とするボタンであり、パンボタン52fは設定モードを第二モードに切り替えると共に表示されるパラメータを「パン」とするボタンである。そして、操作テーブル52の設定モードが第一モードとされている場合は、制御部51は、マイクAに対応するCH1オブジェクトであるパッド34−1と、楽器Aに対応するCH2オブジェクトであるパッド34−2と、マイクBに対応するCH3オブジェクトであるパッド34−3とを、実体位置検出回路28からの位置情報に対応する操作テーブル52上のそれぞれの位置に配置させる。この場合、パッド34−1〜パッド34−3は自走式パッドとされ、例えば赤外線通信等のワイヤレス通信手段を介して制御部51から所定の位置への移動指示を受信して、指示された位置へ自動的に移動するようにされている。操作テーブル52は、パッド34−1〜パッド34−3の操作テーブル52上のそれぞれの位置を検出して制御部51へフィードバックするための左上隅に設けられた共振タグセンサー38a、右上隅に設けられた共振タグセンサー38b、下縁中央に設けられた共振タグセンサー38cを備えている。
【0022】
このように、第一モードではマイクA,Bおよび楽器Aのステージ50の配置位置に対応して操作テーブル52上にCH1オブジェクト〜CH3オブジェクトとされるパッド34−1〜34−3が配置されることから、各オブジェクトとマイクA,Bおよび楽器Aとされる音響入力機器30とを直感的に対応付けることができる。また、マイクA,Bおよび楽器Aのステージ50の配置位置が移動すると、移動した位置が実体位置検出回路28において検出されることから、この検出信号を受けた制御部51は、設定モードが第一モードとされている場合は、音響入力機器30の移動に追随させて操作テーブル52上においてパッド34−1〜34−3を移動させていくようになる。
【0023】
また、操作テーブル52の設定モードが第二モードとされている場合は、制御部51は、各音響入力機器30のパラメータ値がグラフ表示される画像が液晶ディスプレイ35に表示されると共に、オブジェクトとされるパッド34−1〜34−3がグラフ表示におけるパラメータ値を示す位置に配置されるようにパッド34−1〜34−3を移動制御する。液晶ディスプレイ35には、設定モードを切り替えるボタンが左上に縦に並んで3つ表示されているが、第一モードに設定されている場合にレベルボタン52eあるいはパンボタン52fを操作して設定モードが第一モードから第二モードに切り替えられた際には、制御部51は、オブジェクトとされるパッド34−1〜34−3が目視で追従可能な移動速度で画面上を移動していくような移動指示信号を送出することにより、パッド34−1〜34−3の移動を制御する。
【0024】
ここで、パッド34−1〜パッド34−3の構成例を示す斜視図を図6に示す。図6では内部の構造を透過して示している。なお、パッド34−1〜パッド34−3の構成は同様とされていることから、図6ではパッド34−1〜パッド34−3をパッド34として示している。
図6に示すように、パッド34の外形は円盤状とされており、パッド34内には球状のトラックボール34cがほぼ中央に設けられている。トラックボール34cはパッド34を移動させるための手段であり、下部がパッド34の下面より下方に突出しているトラックボール34cが回転されることにより、その回転方向にパッド34が移動していくようになる。パッド34の下面の内側であってトラックボール34cの周囲に駆動部がほぼ直交して設けられているX軸モータ34eとY軸モータ34dとにより、トラックボール34cは回転駆動することができ、X軸モータ34eとY軸モータ34dの回転方向および速度を制御することによりパッド34を任意の方向に移動することができる。このように、パッド34は自走式パッドとされている。また、パッド34の下面の内側に2つのタグ共振回路34aとタグ共振回路34bとが離隔されると共に対向して設けられている。タグ共振回路34a,34bはそれぞれLC共振回路を内蔵しており、タグ共振回路34aの共振周波数faとタグ共振回路34bの共振周波数fbは異なるように設定されている。そして、操作テーブル52に設けられた3つの共振タグセンサー38a〜共振タグセンサー38cの各アンテナから周波数がスキャンされた電波が放射された際に、タグ共振回路34a,34bは共振周波数fa,fbの電波のみを再放射(反射)するようになる。この再放射された電波を3つの共振タグセンサー38a〜共振タグセンサー38cの各アンテナにより受信して、受信信号をパッド位置検出回路39に供給する。パッド位置検出回路39は、供給された受信信号の強度や波形から3つの共振タグセンサー38a〜共振タグセンサー38cとタグ共振回路34a,34bとのそれぞれの距離を検出し、検出された各距離情報からパッド34の位置と向きを算出する。
【0025】
すなわち、操作テーブル52上のパッド34−1〜パッド34−3のそれぞれの位置と向きは3つの共振タグセンサー38a〜共振タグセンサー38cとパッド位置検出回路39により検出される。この場合、パッド34−1の2つの共振タグセンサーの共振周波数はfa,fbとされ、パッド34−2の2つの共振タグセンサーの共振周波数はfc,fdとされ、パッド34−3の2つの共振タグセンサーの共振周波数はfe,fgとされているものとし、パッド34−1〜パッド34−3がそれぞれ2つずつ備える共振タグセンサーの共振周波数は互いに異なるようにされている。そして、3つの共振タグセンサー38a〜共振タグセンサー38cは、それぞれ所定の周期毎に周波数スキャンされた電波を放射することで、パッド34−1〜パッド34−3における合計6つのタグ共振回路34a,34b・・・・の共振周波数fa,fb,fc,fd,fe,fgにおける反射波をそれぞれ受信して受信信号をパッド位置検出回路39に供給している。パッド位置検出回路39は、3つの共振タグセンサー38a〜共振タグセンサー38cからの受信信号に基づいてそれぞれのパッドにおける2つのタグ共振回路のそれぞれの位置を検出して、検出された2つのタグ共振回路の位置情報から当該パッドの位置と向きとを算出している。このようにして、パッド位置検出回路39により得られたパッド34−1〜パッド34−3のそれぞれの位置と向きの情報は制御部51にフィードバックされて、制御部51は実体位置検出回路28で検出されたマイクA,マイクBおよび楽器Aが配置されている位置へ対応するよう操作テーブル52上においてパッド34−1〜パッド34−3を自動的に移動させて配置することができるようにしている。そこで、操作テーブル52の設定モードが第一モードとされている場合は、マイクA,Bおよび楽器Aのステージ50の配置位置が移動すると、移動した位置が実体位置検出回路28において検出されることから、この検出信号を受けた制御部51は操作テーブル52上に表示されるパッド34−1〜34−3を音響入力機器30の移動に追随させてタッチパネル24上で移動させていくように制御する。
【0026】
これにより、操作テーブル52の設定モードが第一モードとされている場合は、図5に示すように操作テーブル52上にはマイクAのステージ50上の配置位置に対応するCH1オブジェクトのパッド34−1が左下に、楽器Aのステージ50上の配置位置に対応するCH2オブジェクトのパッド34−2が中央上に、マイクBのステージ50上の配置位置に対応するCH3オブジェクトのパッド34−3が右下に配置される。このように、マイクA,Bおよび楽器Aのステージ50の配置位置に対応して操作テーブル52上にCH1オブジェクト〜CH3オブジェクトが表示されることから、各オブジェクトであるパッド34−1〜パッド34−3とマイクA,Bおよび楽器Aとされる音響入力機器30とを直感的に対応付けることができる。
【0027】
次に、第一モードおよび第二モードの表示態様およびモード切替について図7を参照しながら説明する。
図7においては、操作テーブル52の液晶ディスプレイ35に表示される第一モードの配置表示の表示態様と、第二モードの入力レベル表示の表示態様と、第二モードのパン表示の表示態様とが示されている。このように、第二モードにおいてはパラメータ種類に応じた表示態様とされる。第一モードの表示態様と第二モードの2つの表示態様は、ボタン52d〜52fのいずれかを操作することにより、いずれの表示態様からでも所望の表示態様に切り替えることができる。例えば、レベルボタン52eが操作された場合はレベルボタン52eが白抜き表示になり入力レベル表示の表示態様に切り替わり、縦棒の長さで各音響入力機器30に割り当てられたチャンネルにおける入力レベルの大きさが表示される棒グラフの画像がタッチパネル24に表示される。そして、オブジェクトとされるパッド34−1〜34−3が、対応するチャンネルの棒グラフの先端に自動的に移動されて配置される。これにより、パッド34−1〜34−3が配置されている各位置により、そのチャンネルの入力レベルが示されるようになる。また、各棒グラフの近傍に入力レベル値が数値で液晶ディスプレイ35上に表示される。図示する例では、チャンネル1では−3dB、チャンネル2では−10dB、チャンネル3では0dBの入力レベルが設定されている。この入力レベル表示の表示態様において、オブジェクトのパッド34−1〜34−3のいずれかを摘んでパッド34−1〜34−3を上下に動かすと、その操作がパッド位置検出回路39により検出されて、制御部51の制御の基で操作されたパッド34−1〜34−3に対応するチャンネルの入力レベルのパラメータ値が操作に応じて変更されるようになる。変更されたパラメータ値は、制御部51からミキシングエンジン部29に送られてミキシングエンジン部29において当該チャンネルの音響特性である入力レベルが変更された音響信号処理が行われるようになる。
【0028】
また、パンボタン52fが操作された場合はパンボタン52fが白抜き表示になりパン表示の表示態様に切り替わり、横の線で各音響入力機器30に割り当てられたチャンネルにおけるパンの定位位置が表示されるグラフの画像がタッチパネル24に表示される。そして、オブジェクトとされるパッド34−1〜34−3が、対応するチャンネルの横の線上の定位位置にそれぞれ自動的に移動されて配置される。これにより、パッド34−1〜34−3が配置されている各位置により、そのチャンネルのパンの定位位置が示されるようになる。このパン表示の表示態様において、オブジェクトのパッド34−1〜34−3のいずれかを摘んでパッド34−1〜34−3を左右に動かすと、その操作がパッド位置検出回路39により検出されて、制御部51の制御の基で操作されたパッド34−1〜34−3に対応するチャンネルのパンのパラメータ値が操作に応じて変更されるようになる。変更されたパラメータ値は、制御部51からミキシングエンジン部29に送られてミキシングエンジン部29において当該チャンネルの音響特性であるパンの定位位置が変更された音響信号処理が行われるようになる。
上記したように、操作テーブル52の設定モードが第二モードとされている場合は、制御部51は、パッド34−1〜パッド34−3を、パラメータ値を変更できる操作摘みに見立てており、送られたいずれかのパッド34−1〜34−3の移動後の位置とされる操作情報から対応するチャンネルにおける変更されたパラメータ値を算出し、変更後の対応するチャンネルのパラメータ値をミキシングエンジン部29に送っている。
【0029】
このように、第一モードの配置表示の表示態様とされている場合に、レベルボタン52eあるいはパンボタン52fにタッチすると、第二モードに切り替わるがこの切替時にはオブジェクトのパッド34−1〜34−3が図7の矢印で示すように移動していくようになる。そこで、オブジェクトのパッド34−1〜34−3を目視で追従可能な遅い移動速度で画面上を移動させていくように表示制御を行うことにより、配置表示でステージ50上の音響入力機器30に直感的に対応付けることができるパッド34−1〜34−3がどの位置に移動したかを容易に認識することができるようになる。これにより、第一モードの配置表示においてパラメータを変更したい音響入力機器30に対応するパッド34−1〜34−3を特定しておいて、変更したいパラメータのボタン52e,52fを操作した際に、特定したパッド34−1〜34−3の移動中の動きを目で追うことができ、第二モードに切り替わった際に目的とするオブジェクトのパッド34−1〜34−3を間違うことなく移動させてそのパラメータの値を操作することができるようになる。
【0030】
なお、第二モードにおける入力レベル表示(パン表示)からパン表示(入力レベル表示)の表示態様に切り替わった際にもオブジェクトのパッド34−1〜34−3は移動するようになり、この場合においてもオブジェクトのパッド34−1〜34−3を目視で追従可能な遅い移動速度で画面上を移動させていくように表示制御を行うことができる。この場合に、第二モードにおける入力レベル表示(パン表示)からパン表示(入力レベル表示)の表示態様に切り替わった際に、第一モードの配置表示に一度戻ってから切り替えられた表示態様に移るようにしてもよい。このようにすれば、戻った配置表示において目的とするパッド34−1〜34−3を改めて確認することができることから、第二モードの間で切り替えた際に目的とするオブジェクトのパッド34−1〜34−3を間違うことなく移動させてそのパラメータの値を操作することができるようになる。
【0031】
次に、本発明の第2実施例にかかる電子音響システム2のブロック構成を示すブロック図を図4に示す。第2実施例の電子音響システム2は、操作テーブル52に関連する構成が異なるだけで、その他の構成は第1実施例の電子音響システム1と同様とされていることから、操作テーブル52に関連する構成について説明し、それ以外の構成の説明は省略する。
図4に示す第2実施例の電子音響システム2において、液晶ディスプレイ35は、電子音響システム2の各チャンネルの音響特性を制御可能な操作テーブル52を構成しており、ディスプレイ表示回路36により操作テーブルの設定モードに応じて配置表示、入力レベル表示、パン表示の画像が表示される。液晶ディスプレイ35の上面とされる操作テーブル52上には、操作テーブルの設定モードに応じた所定の位置に各々の音響入力機器30に対応する複数のパッド34が自動的に配置される。音響入力機器30であるマイクA,Bおよび楽器Aのステージ50上の配置位置は、ステージ50の床下に配設されたメッシュ型センサー群27および実体位置検出回路28により検出され、複数のパッド34の操作テーブル52上の位置は、操作テーブル52上に設けられた例えば3つのタグセンサーを備える共振タグセンサー群38およびパッド位置検出回路39により検出される。そして、CPU10を含む制御部51が、パッド位置検出回路39等により検出された位置が所定の配置位置となるように、複数のパッド34の移動制御を行っている。所定の配置位置は、操作テーブル52の設定モードが第一モードとされている場合は、実体位置検出回路28等により検出された音響入力機器30の配置位置に対応する位置とされ、第二モードに設定されている場合はグラフ表示の画像におけるパラメータを示す位置とされる。
【0032】
制御部51からの各パッド34への移動制御の指示はパッド指示赤外線I/F37を介してワイヤレスで行われている。各パッド34は、指示受信赤外線I/F46を備えパッド指示赤外線I/F37から送信された移動制御の指示情報を受信し、この指示情報を制御回路45に供給する。制御回路45は、指示情報に応じてX軸モータ34eおよびY軸モータ34dの駆動制御を行うことにより、指示情報で指示された位置にパッド34が移動していくようになる。なお、各パッド34は当該パッド34の位置と向きを検出するための2つのタグ共振回路34a,34bを備えている。
第2実施例の電子音響システム2においては、操作テーブル52の設定モードが第一モードとされている場合は、操作テーブル52上に配置されている各パッド34−1〜パッド34−3に対応するステージ50上の音響入力機器30をそれぞれ直感的に対応付けることができる。そして、操作テーブル52の設定モードが第二モードとされている場合に、このパッド34−1〜パッド34−3に対して操作テーブル52上において移動操作を行うことにより、パッド34−1〜パッド34−3のそれぞれに対応する音響入力機器30が割り当てられたチャンネルのパラメータの値を操作することができる。このように、第二モードにおいては、操作テーブル52上に配置されたオブジェクトに対して操作テーブル52上において操作を行うことにより、当該オブジェクトに対応する音響入力機器30である楽器やマイクのレベル等を制御することができる。
【0033】
次に、本発明にかかる電子音響システムにおいて電源が投入された際にCPU10がOS上で実行するメイン、電源投入処理のフローチャートを図8に示す。
電子音響システムにおいて電源が投入されると図8に示すメイン、電源投入処理が起動され、ステップS10にてミキシングエンジン部29等の初期設定が行われる。初期設定が終了するとステップS11にて操作テーブル52における設定モードのデフォルトのモードとされている第一モードへの遷移処理が行われる。第一モードへの遷移処理では第一モード用の背景を表示する処理が行われ、第一モードへの遷移処理が終了するとステップS12にて第一モードの処理が行われる。第一モードの処理ではステージ50上の音響入力機器30の配置位置に対応する位置にオブジェクトとされる画像52a〜52cあるいはパッド34−1〜34−3を設定する処理が行われる。第一モードの処理が終了するとステップS13にてレベルボタン52eあるいはパンボタン52fが操作されて第二モードへの遷移操作が行われたか否かが判断される。ここで、ボタン52e,52fが操作されず第二モードへの遷移操作が行われていないと判断された場合は、ステップS12へ戻り第二モードへの遷移操作が行われたとステップS13において判断されるまで第一モードの処理が繰り返し行われる。
【0034】
そして、ステップS13にてレベルボタン52eあるいはパンボタン52fが操作されて第二モードへの遷移操作が行われたと判断された場合は、ステップS14へ分岐して第二モードへの遷移処理が行われる。第二モードへの遷移処理では、チャンネルのパラメータ値を示す位置にオブジェクトを設定する処理が行われ、第二モードへの遷移処理が終了すると、ステップS15にて第二モードの処理が行われる。第二モードの処理では、チャンネルのパラメータ値をオブジェクトの操作に応じて変更する処理が行われ、第二モードの処理が終了すると、ステップS16にて配置ボタン52dが操作されて第一モードへの遷移操作が行われたか否かが判断される。ここで、配置ボタン52dが操作されず第一モードへの遷移操作が行われていないと判断された場合は、ステップS17へ進みレベルボタン52eあるいはパンボタン52fが操作されて第二モード間における対象パラメータ切り替え操作が行われたか否かが判断される。ここで、レベルボタン52eあるいはパンボタン52fが操作されて第二モード間における対象パラメータ切り替え操作が行われたと判断された場合は、ステップS18へ進み対象パラメータ切り替え処理が行われる。対象パラメータ切り替え処理では、切り替えられたパラメータ用の背景を表示する処理が行われ、対象パラメータ切り替え処理が終了するか、ボタン52e,52fがいずれも操作されず対象パラメータ切り替え操作が行われていないとステップS17にて判断された場合は、ステップS15へ戻り第二モードの処理が繰り返し行われる。また、ステップS16にて配置ボタン52dが操作されて第一モードへの遷移操作が行われたと判断された場合はステップS11へ戻り、ステップS11以降の操作が繰り返し行われる。以上のメイン、電源投入処理は電源がオフされるまで繰り返し行われる。
【0035】
次に、メイン、電源投入処理のステップS10にて行われる初期設定処理のフローチャートを図9に示す。
図9に示す初期設定処理がスタートされると、ステップS20にてシーンメモリから読み出された設定データがミキシングエンジン部29に設定されたり、前回設定した設定データがミキシングエンジン部29に設定されて、所望の音響特性が付与されたミキシング信号がミキシングエンジン部29から出力可能とされるミキシングエンジン部初期設定処理が行われる。次いで、ステップS21にてステージ50上に実際に配置されているマイクA,Bや楽器Aの音響入力機器30の各々と、それぞれ特有の機器固有IDを有する各RFID31との対応付けが行われると共に、音響入力機器30(機器固有ID)にそれぞれ割り当てられるチャンネルとの対応付けが行われ、対応付けの結果はテーブルとして記憶される処理が行われる。ステップS21の処理が終了すると初期設定処理は終了する。
【0036】
次に、メイン、電源投入処理のステップS18にて行われる対象パラメータ切り替え処理のフローチャートを図10に示す。
図10に示す対象パラメータ切り替え処理がスタートされると、ステップS30にて対象パラメータ用に背景表示が更新されて対象パラメータ切り替え処理は終了する。対象パラメータ用の背景は、対象パラメータ切り替え操作に応じた第二モードにおける入力レベル表示あるいはパン表示の背景とされる。背景には、オブジェクトおよびパラメータ値の表示は含まれていない。
次に、メイン、電源投入処理のステップS11にて行われる第一モードへの遷移処理のフローチャートを図11に示す。
図11に示す第一モードへの遷移処理がスタートされると、ステップS40にて第一モード用に背景表示が更新されて第一モードへの遷移処理は終了する。第一モード用の背景は配置表示の背景とされ、背景には、オブジェクトの表示は含まれていない。
【0037】
次に、第1実施例の電子音響システム1であった場合にメイン、電源投入処理のステップS12にて行われる第一モードの処理(タッチパネルの場合)のフローチャートを図12に示す。
図12に示す第一モードの処理がスタートされると、ステップS50にてこの処理を行う対象チャンネルの順番が決められ、決められた順となった対象チャンネルに対応する機器固有IDが、初期設定処理のステップS21において記憶されたテーブルを参照することによりステップS51にて取得される。次いで、ステップS52にて実体位置検出回路28により対象チャンネルに対応する機器固有IDとされているRFID31の位置を検出することにより対象チャンネルに対応する音響入力機器30の現在位置を検出する。次いで、検出された対象チャンネルの音響入力機器30の現在位置に対応して設定するオブジェクト(図形)の目標位置がステップS53にて算出される。そして、ステップS54にて当該オブジェクトが算出された目標位置に表示されて、当該オブジェクトの表示位置が算出された目標位置に更新される。次いで、ステップS55にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたか否かが判断される。ここで、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われていないと判断された場合は、ステップS50に戻り次の順とされているチャンネルに対して上記した処理が行われ、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われるまでステップS50ないしステップS55の処理が繰り返し行われる。そして、ステップS55にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたと判断された場合は第一モードの処理が終了し、メイン、電源投入処理のステップS13へリターンされる。
【0038】
また、第2実施例の電子音響システム2であった場合にメイン、電源投入処理のステップS12にて行われる第一モードの処理(パッドの場合)のフローチャートを図13に示す。
図13に示す第一モードの処理がスタートされると、パッド位置検出回路39が共振タグセンサー38a〜38cを用いて周波数スキャンを行うことにより、パッド34−1〜34−3が2つずつ備えるタグ共振回路からの反射波を検出する処理がステップS60にて行われる。次いで、ステップS61にてこの処理を行う対象チャンネルの順番が決められる。そして、決められた順となった対象チャンネルにおけるパッド34に備えられている2つのタグ共振回路34a,34bの位置が、ステップS60の処理におけるスキャン結果である反射波の検出信号を解析することにより求められる。求められた対象チャンネルにおける2つのタグ共振回路34a,34bの位置情報から、ステップS62にて対象チャンネルにおけるパッド34の現在位置と向きとが求められる。次いで、対象チャンネルに対応する機器固有IDが、初期設定処理のステップS21において記憶されたテーブルを参照することによりステップS63にて取得される。次いで、ステップS64にて実体位置検出回路28により対象チャンネルに対応する機器固有IDとされているRFID31の位置を検出することにより対象チャンネルに対応する音響入力機器30の現在位置を検出する。そして、検出された対象チャンネルの音響入力機器30の現在位置に対応して設定するオブジェクトであるパッド34の目標位置がステップS65にて算出される。次いで、対象チャンネルに対応するパッド34の現在位置と算出された目標位置との差ベクトルがステップS66にて求められ、求めた差ベクトルの大きさと方向およびパッド34の現在の向きに応じてステップS67にてX軸モータ34eとY軸モータ34dとを駆動する移動指示をパッド34に赤外線通信で送信する。これにより、パッド34において受信された移動指示情報に基づいてX軸モータ34eとY軸モータ34dとが駆動されて、対象チャンネルにおけるパッド34が目標位置へ移動していくようになる。続いて、ステップS68にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたか否かが判断される。ここで、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われていないと判断された場合は、ステップS60に戻り次の順とされているチャンネルに対して上記した処理が行われ、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われるまでステップS60ないしステップS68の処理が繰り返し行われる。そして、ステップS68にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたと判断された場合は第一モードの処理が終了し、メイン、電源投入処理のステップS13へリターンする。
【0039】
次に、第1実施例の電子音響システム1であった場合にメイン、電源投入処理のステップS14にて行われる第二モードへの遷移処理(タッチパネル)のフローチャートを図14に示す。
図14に示す第二モードへの遷移処理がスタートされると、上記ステップS13において操作されたレベルボタン52eあるいはパンボタン52fに応じた対象パラメータに応じてステップS90にて入力レベル表示あるいはパン表示の第二モード用の背景表示に更新される。次いで、全てのチャンネルについての上記操作されたボタン52e,52fに応じた対象パラメータの値をステップS91にてミキシングエンジン部29の対応するレジスタから取得する。取得された全てのチャンネルの対象パラメータの値から、ステップS92にて各チャンネルにおける各オブジェクト(図形)の目標位置が求められる。この目標位置は、第二モード時に表示されるグラフ表示の画像における取得された対象パラメータの値を示す位置とされる。ここで、一定間隔で処理するためにCPU10に対して割り込みを一定間隔で発生させるタイマ13から割り込みが発生されるまでステップS93で待機される。そして、タイマ13からの割り込みが発生すると、ステップS94に進み処理を行う対象チャンネルの順番が決められる。順番が決まると、決められた順となった対象チャンネルにおけるオブジェクト(図形)の現在位置である第一モードの配置表示における位置と、上記ステップS95において求められた目標位置との差が求められる。
【0040】
求められた差が所定値を超えている場合は、ステップS96にて差が所定値以内になるよう小さくする。次いで、求められた差の分だけタッチパネル24においてオブジェクト(図形)を移動させて表示する。次いで、ステップS98にて全てのチャンネルにおいてステップS94以降の処理が行われたか否かが判断される。ここで、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われていないと判断された場合は、ステップS94に戻り次の順とされているチャンネルに対して上記した処理が行われ、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われるまでステップS94ないしステップS98の処理が繰り返し行われる。そして、ステップS98にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたと判断された場合はステップS99へ進み、全てのチャンネルにおける各オブジェクトが目標位置に達したか否かが判断される。目標位置に達した際には上記ステップS95において求められた差がほぼゼロとなっていることから差を検出することにより目標位置に達したか否かを判断することができ、ここで、全てのチャンネルにおいてオブジェクト(図形)が目標位置に達したと判断された場合は、第二モードへの遷移処理が終了し、メイン、電源投入処理のステップS15へリターンされる。また、ステップS99にて全てのチャンネルにおいてオブジェクト(図形)が目標位置に未だ達していないと判断された場合は、ステップS93に戻りステップS93ないしステップS99の処理が全てのチャンネルにおいてオブジェクト(図形)が目標位置に達するまで繰り返し行われる。なお、ステップS96の処理において一回に移動するオブジェクト(図形)の移動距離が所定距離内に制限され、ステップS93の処理においてオブジェクト(図形)を移動させる処理が一定間隔で実行されることから、オブジェクト(図形)の移動速度を目で追うことができる遅い速度とすることができるようになる。
【0041】
また、第2実施例の電子音響システム2であった場合にメイン、電源投入処理のステップS14にて行われる第二モードへの遷移処理(パッド)のフローチャートを図15に示す。
図15に示す第二モードへの遷移処理がスタートされると、上記ステップS13において操作されたレベルボタン52eあるいはパンボタン52fに応じた対象パラメータに応じてステップS100にて入力レベル表示あるいはパン表示の第二モード用の背景表示に更新される。次いで、全てのチャンネルについての上記操作されたボタン52e,52fに応じた対象パラメータの値をステップS101にてミキシングエンジン部29の対応するレジスタから取得する。取得された全てのチャンネルの対象パラメータの値から、ステップS102にて各チャンネルにおける各オブジェクト(パッド)を配置する目標位置が求められる。この目標位置は、第二モード時に表示されるグラフ表示の画像における取得された対象パラメータの値を示す位置とされる。ここで、一定間隔で処理するためにCPU10に対して割り込みを一定間隔で発生させるタイマ13から割り込みが発生されるまでステップS103で待機される。そして、タイマ13からの割り込みが発生すると、ステップS104に進みパッド位置検出回路39が共振タグセンサー38a〜38cを用いて周波数スキャンを行うことにより、パッド34が2つずつ備えるタグ共振回路からの反射波を検出する処理が行われる。次いで、ステップS105にて処理を行う対象チャンネルの順番が決められる。順番が決まると、決められた順となった対象チャンネルにおけるパッド34に備えられている2つのタグ共振回路34a,34bの位置が、ステップS104の処理におけるスキャン結果である反射波の検出信号を解析することにより求められる。そして、求められた対象チャンネルにおける2つのタグ共振回路34a,34bの位置情報から、ステップS106にて対象チャンネルにおけるパッド34の現在位置と向きとが求められる。
【0042】
さらに、対象チャンネルにおけるオブジェクト(パッド)の現在位置である第一モードの配置表示における位置と、上記ステップS106において求められた目標位置との差を求め、ステップS107にて求めた差からパッド34を移動させる差ベクトルを算出する。算出された差ベクトルの大きさが所定値を超えている場合は、ステップS108にて所定値以内になるよう差ベクトルの大きさを小さくする。次いで、求めた差ベクトルの大きさと方向およびパッド34の現在の向きに応じてステップS109にてX軸モータ34eとY軸モータ34dとを駆動する移動指示をパッド34に赤外線通信で送信する。これにより、パッド34において受信された移動指示情報に基づいてX軸モータ34eとY軸モータ34dとが駆動されて、対象チャンネルにおけるパッド34が目標位置へ移動していくようになる。次いで、ステップS110にて全てのチャンネルにおいてステップS104以降の処理が行われたか否かが判断される。ここで、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われていないと判断された場合は、ステップS104に戻り次の順とされているチャンネルに対して上記した処理が行われ、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われるまでステップS104ないしステップS110の処理が繰り返し行われる。そして、ステップS110にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたと判断された場合はステップS111へ進み、全てのチャンネルにおける各オブジェクトが目標位置に達したか否かが判断される。目標位置に達した際には上記ステップS107において求められた差ベクトルの大きさがほぼゼロとなっていることから差ベクトルを検出することにより目標位置に達したか否かを判断することができ、ここで、全てのチャンネルにおいてオブジェクト(パッド)が目標位置に達したと判断された場合は、第二モードへの遷移処理が終了し、メイン、電源投入処理のステップS15へリターンされる。また、ステップS111にて全てのチャンネルにおいてオブジェクト(パッド)が目標位置に未だ達していないと判断された場合は、ステップS103に戻りステップS103ないしステップS111の処理が全てのチャンネルにおいてオブジェクト(パッド)が目標位置に達するまで繰り返し行われる。なお、ステップS108の処理において一回に移動するオブジェクト(パッド)の移動距離が所定距離内に制限され、ステップS103の処理においてオブジェクト(パッド)を移動させる処理が一定間隔で実行されることから、オブジェクト(パッド)の移動速度を目で追うことができる遅い速度とすることができるようになる。
【0043】
次に、第1実施例の電子音響システム1であった場合にメイン、電源投入処理のステップS15にて行われる第二モードの処理(タッチパネルの場合)のフローチャートを図16に示す。
図16に示す第二モードの処理がスタートされると、ステップS70にてこの処理を行う対象チャンネルの順番が決められる。次いで、決められた順となった対象チャンネルにおけるオブジェクトとされる矩形枠状の図形にタッチされ、オブジェクトをドラッグする操作が行われているか否かがステップS71にて検出される。ここで、対象チャンネルにおけるオブジェクトにタッチされドラッグされる操作が行われていると判断された場合は、ステップS72に進みドラッグされたオブジェクトの位置とされるオブジェクトにタッチされている点が検出され、タッチされている点におけるグラフ表示の値域方向の位置からパラメータ値が求められる。そして、求められたパラメータ値が、パラメータの取り得る範囲(最大値、最小値)を超えている場合は、その範囲内に収まるようにパラメータ値が修正される。ステップS72の処理が終了すると、ミキシングエンジン部29における対象チャンネルにおける対象パラメータ値が、ステップS73にて求められたパラメータ値により更新される。次いで、ステップS74にて求められたパラメータ値に基づいて対象チャンネルにおけるオブジェクト(図形)の表示位置が更新される。この場合、パラメータ値はパラメータの取り得る範囲(最大値、最小値)内に制限されることから、オブジェクトの表示位置がタッチパネル24の表示領域を超えることはない。ステップS74の処理が終了するとステップS71に戻り、ステップS71以降の処理が繰り返し行われる。また、ステップS71にてオブジェクトにタッチされドラッグされる操作が行われていないと判断された場合は、ステップS75に分岐して全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたか否かが判断される。ここで、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われていないと判断された場合は、ステップS70に戻り次の順とされているチャンネルに対して上記した処理が行われ、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われるまでステップS70ないしステップS75の処理が繰り返し行われる。そして、ステップS75にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたと判断された場合は第二モードの処理が終了し、電源投入処理のステップS16へリターンする。この第二モードの処理により、ミキシングエンジン部29で音響信号処理する際に用いる所望のチャンネルのパラメータを、そのチャンネルにおけるオブジェクト(図形)をドラッグすることにより任意に変更することができるようになる。
【0044】
また、第2実施例の電子音響システム2であった場合にメイン、電源投入処理のステップS15にて行われる第二モードの処理(パッドの場合)のフローチャートを図17に示す。
図17に示す第二モードの処理がスタートされると、ステップS80にてパッド位置検出回路39が共振タグセンサー38a〜38cを用いて周波数スキャンを行うことにより、パッド34が2つずつ備えるタグ共振回路からの反射波を検出する処理が行われる。次いで、ステップS81にて処理を行う対象チャンネルの順番が決められる。順番が決まると、決められた順となった対象チャンネルにおけるパッド34に備えられている2つのタグ共振回路34a,34bの位置が、上記ステップS80の処理におけるスキャン結果である反射波の検出信号を解析することにより求められる。そして、求められた対象チャンネルにおける2つのタグ共振回路34a,34bの位置情報から、ステップS82にて対象チャンネルにおけるパッド34の現在位置と向きとが求められる。求められた対象チャンネルにおけるパッド34の現在位置におけるグラフ表示の値域方向成分から、対象パラメータのパラメータ値が求められる。そして、求められたパラメータ値が、パラメータの取り得る範囲(最大値、最小値)を超えている場合は、その範囲内に収まるようにパラメータ値が修正される。ステップS83の処理が終了すると、ミキシングエンジン部29における対象チャンネルにおける対象パラメータ値が、ステップS83にて求められたパラメータ値により更新される。
【0045】
次いで、スキャン結果から上記ステップS82の処理で求められた対象チャンネルのオブジェクト(パッド)の現在位置におけるグラフ表示の値域方向とされる定義域方向からのずれやパラメータの取り得る範囲からのはみ出しが求められ、パッド34がはみ出している場合にはパッドがはみ出さないよう位置補正するための目標位置がステップS85にて求められる。そして、対象チャンネルにおけるオブジェクト(パッド)の現在位置と、上記ステップS85において求められた目標位置との差を求め、ステップS86にて求めた差からパッド34を移動させる差ベクトルを算出する。算出された差ベクトルの大きさと方向およびパッド34の現在の向きに応じてステップS87にてX軸モータ34eとY軸モータ34dとを駆動する移動指示をパッド34に赤外線通信で送信する。これにより、パッド34において受信された移動指示情報に基づいてX軸モータ34eとY軸モータ34dとが駆動されて、対象チャンネルにおけるパッド34が目標位置へ移動していくようになる。この場合、パラメータ値はパラメータの取り得る範囲(最大値、最小値)内に制限されることから、オブジェクト(パッド)の表示位置がタッチパネル24の表示領域を超えることはない。また、オブジェクト(パッド)が定義域方向からはみ出して移動操作された場合でも、定義域方向に戻るよう自動的に位置補正される。次いで、ステップS88にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたか否かが判断される。ここで、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われていないと判断された場合は、ステップS80に戻り次の順とされているチャンネルに対して上記した処理が行われ、全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われるまでステップS80ないしステップS88の処理が繰り返し行われる。そして、ステップS88にて全てのチャンネルにおいて上記した処理が行われたと判断された場合は第二のモードの処理が終了し、電源投入処理のステップS16へリターンする。この第二モードの処理により、ミキシングエンジン部29で音響信号処理する際に用いる所望のチャンネルのパラメータを、そのチャンネルにおけるオブジェクトとされるパッド34を移動することにより任意に変更することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明した本発明において、音響入力機器30はドラム等のアコースティック楽器やボーカルのや音を拾うマイク、電子楽器等とすることができる。また、ステージ50上の音響入力機器30の位置をメッシュ型センサー群27および実体位置検出回路28により検出するようにしたが、これに限ることはなくステージ50上方に設置したカメラにてステージ50上を撮像し、画像認識処理を行うことにより音響入力機器30の輪郭を識別することによりその位置を検出するようにしてもよい。この場合、画像認識処理を所定の周期ごとに行うようにして、音響入力機器30の移動を追跡するようにする。
さらに、第2実施例の電子音響システム2において操作テーブル52は液晶ディスプレイ35を備えていたが、これに替えてスクリーンを備えるようにして、スクリーンに上方や下方から映像を照射することで、第二モードにおける背景等を表示するようにしてもよい。さらにまた、パッド34を自走式としたが、これに替えて、操作テーブル52を弾性表面波モータで構成したり、パッド34と操作テーブル52とで平面リニアモータを構成してもよい。あるいは、バルクマイクロマシニングによるアレイ型エアーフローアクチェータを操作テーブル52に敷き詰めて、パッド34を移動させるようにしてもよい。さらにまた、操作テーブル52に設ける共振タグセンサーは3つに限るものではなく、2つでも4つ以上としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施例にかかる電子音響システムのブロック構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例にかかる電子音響システムにおいてパラメータを変更する態様の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例における電子音響システムにおける第一モードおよび第二モードの表示態様およびモード切替を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例にかかる電子音響システムのブロック構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施例にかかる電子音響システムにおいてパラメータを変更する態様の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例にかかる電子音響システムにおけるパッドの構成例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施例における電子音響システムにおける第一モードおよび第二モードの表示態様およびモード切替を示す図である。
【図8】本発明の電子音響システムにおいて電源が投入された際にCPUが実行するメイン、電源投入処理のフローチャートである。
【図9】本発明の電子音響システムにおけるメイン、電源投入処理のステップS10において実行される初期設定処理のフローチャートである。
【図10】本発明の電子音響システムにおけるメイン、電源投入処理のステップS18において実行される対象パラメータ切り替え処理のフローチャートである。
【図11】本発明の電子音響システムにおけるメイン、電源投入処理のステップS11において実行される第一モードへの遷移処理のフローチャートである。
【図12】本発明の電子音響システムが第1実施例の電子音響システムであった場合にメイン、電源投入処理のステップS12にて行われる第一モード処理のフローチャートである。
【図13】本発明の電子音響システムが第2実施例の電子音響システム2であった場合にメイン、電源投入処理のステップS12にて行われる第一モード処理のフローチャートである。
【図14】本発明の電子音響システムが第1実施例の電子音響システムであった場合にメイン、電源投入処理のステップS14にて行われる第二モードへの遷移処理のフローチャートである。
【図15】本発明の電子音響システムが第2実施例の電子音響システムであった場合にメイン、電源投入処理のステップS14にて行われる第二モードへの遷移処理のフローチャートである。
【図16】本発明の電子音響システムが第1実施例であった場合にメイン、電源投入処理のステップS15において行なわれる第二モードの処理のフローチャートである。
【図17】本発明の電子音響システムが第2実施例であった場合にメイン、電源投入処理のステップS15において行なわれる第二モードの処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1 電子音響システム、2 電子音響システム、10 CPU、11 ROM、12 RAM、13 タイマ、14 外部記憶装置、15 通信I/F、16 通信ネットワーク、17 サーバ装置、18 MIDI I/F、19 MIDI機器、20 LED表示回路、21 LED表示器、22 設定操作検出回路、23 設定操作子、24 タッチパネル、25 ディスプレイ表示回路、26 タッチ検出回路、27 メッシュ型センサー群、28 実体位置検出回路、29 ミキシングエンジン部、30 音響入力機器、31 RFID、32 音響出力機器、32a メインスピーカL、32b メインスピーカR、33 バス、34 パッド、34a タグ共振回路、34b タグ共振回路、34c トラックボール、34d Y軸モータ、34e X軸モータ、35 液晶ディスプレイ、36 ディスプレイ表示回路、37 パッド指示赤外線I/F、38 共振タグセンサー群、38a〜38c 共振タグセンサー、39 パッド位置検出回路、40 入力信号I/F、41 出力信号I/F、42 デジタル信号処理回路、45 制御回路、46 指示受信赤外線I/F、50 ステージ、51 制御部、52 操作テーブル、52a〜52c 画像、52d 配置ボタン、52e レベルボタン、52f パンボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音響入力機器から入力された音響信号の各々をそれぞれのパラメータに基づいて音響処理する音響処理手段と、
前記複数の音響入力機器の各々の配置位置を検出する位置検出手段と、
前記音響処理手段の制御パラメータのうち、前記音響入力機器に関するパラメータの値を取得するパラメータ取得手段と、
前記音響入力機器の各々の前記パラメータの値を変更可能なオブジェクトが設定される操作テーブルと、
該操作テーブルの設定モードを、第一モードと第二モードとで切り替えるモード切替手段と、
前記第一モードに切り替えられた際に、前記位置検出手段が検出した前記複数の音響入力機器のそれぞれの位置に基づいて、前記音響入力機器に対応する前記オブジェクトを前記操作テーブル上に配置する第一配置手段と、
前記第二モードに切り替えられた際に、前記パラメータ取得手段が取得したパラメータ値を前記操作テーブル上にグラフ表示すると共に、前記オブジェクトを移動させてグラフ表示における前記パラメータ値を示す位置に配置する第二配置手段とを備え、
前記モード切替手段により前記第一モードから前記第二モードに切り替えられた際に、前記オブジェクトが目視で追従可能な移動速度で移動していくようにされていることを特徴とする電子音響システム。
【請求項2】
さらに、
設定モードが前記第二モードとされている際に、前記オブジェクトに対する操作を検出する操作検出手段と、
該操作検出手段において操作が検出された前記オブジェクトに対応する前記音響入力機器の前記パラメータの値を変更するパラメータ変更手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の電子音響システム。
【請求項3】
前記操作テーブルはタッチパネルとされており、前記第一配置手段あるいは前記第二配置手段により、前記タッチパネルにおける画面の所定の位置に前記オブジェクトとされる図形が表示されることを特徴とする請求項1あるいは2記載の電子音響システム。
【請求項4】
前記オブジェクトは移動および回転可能なパッドとされ、前記第一配置手段あるいは前記第二配置手段により、前記操作テーブル上の所定の位置に前記パッドが配置されることを特徴とする請求項1あるいは2記載の電子音響システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−28621(P2010−28621A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189586(P2008−189586)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】