説明

電極、その製造方法、金属/空気燃料セルおよび金属水素化物セル

記載した発明は、水素貯蔵材料/合金および高エネルギー密度金属を含むアノード電極に関する。なお、水素電極触媒を添加して水素反応速度を増大させることができる。高エネルギー金属はAl、Zn、MgおよびFeからなる群、またはこれらの金属の組合わせから選択される。水素貯蔵合金および高エネルギー密度金属を含む電極の製造方法についてもまた記載されている。本方法は、高エネルギー密度金属粉末および/または水素貯蔵合金を焼結または結合して一枚以上の薄いシートにし、該シートをカレンダー掛けまたは圧着して電極を形成することから成る。このアノード電極は、金属水素化物電池および金属/空気燃料セルに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに使用する電極に関する。より詳細には、本発明は、金属/空気燃料セルおよび金属水素化物電池におけるアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)および鉄(Fe)等の金属についての腐食問題の解決に関する。本発明はまた、金属/空気燃料セルおよびNi/金属水素化物電池システムのための充電とピーク電力密度の間のエネルギー容量を増加させる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
〔伝統的燃料セル〕
燃料セルは、化学エネルギーを高い効率で電気エネルギーに転換するために組立てられる。システム中に化学エネルギーを貯蔵する電池と対照的に、燃料セルは、周囲から反応種が供給されるように組立てられる。そのため、単位重量当り、単位体積当り高エネルギー密度を有するエネルギーの効率的システムという結果となる。多くの燃料セルでは、カソード反応は空気からの酸素の還元である。水素はしばしばエネルギーキャリヤーとして使用され、アノード反応で酸化される。水素の貯蔵は、この様なシステムが大量生産される前に克服されるべき主要な課題の一つである。重量当り、体積当りの水素のエネルギー密度は、伝統的化石燃料と比較して低い。
【0003】
150℃より低い温度では、二つの主要な型の燃料セルが存在する。
【0004】
1.PEM(プロトン交換膜)燃料セルにおいては、酸素および水素の反応のための電極はペルフルオロスルフォン酸(PFSA)ポリマー膜(ナフィオン(登録商標))上に析出される。この膜は、この二つの反応を効果的に分離し、70℃を超える温度ではこのシステムに高イオン伝導度を与える。電極は薄い層(< 20 μm)である。高触媒活性は、析出貴金属触媒を有する炭素支持体を使用することにより得られる。
【0005】
2.アルカリ燃料セル(AFC)においては、電極は300〜1,000 μmの厚さを有する多孔性層で作られる。水素および酸素の反応は、層内で起る。高イオン伝導度を有するアルカリ性電解質は二つの電極を分離する。これらの電極を製造する最も一般的な方法は、多孔性粉末と触媒をポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはTeflon(登録商標))と混合することにより行なわれる。疎水性細孔と親水性細孔を有するダブル細孔構造体は、電極内に液体と気体輸送の通路を生じる。アノード反応については、水素が構造体中の気体チャンネルを通して輸送される。水素の反応は、多孔性構造体内に分布する触媒粒子上で起きる。炭素支持体が、触媒粒子にしばしば使用される。この炭素支持体は水素反応に対して触媒活性を有しない。
【0006】
水素について体積当り低エネルギー密度と関連する問題に対して、幾つかの解決方法が提案された。一つの代替法は、アノード反応に対して水素の代わりにメタノール等の液体を使用することである。PEM燃料セルにメタノールを使用すると、酸化の相当な速度が得られた。しかしながら、この様なシステムの寿命は満足できるものではない。これは主として、メタノールが膜を通して横断するためである。メタノールが膜を通して拡散し、カソード上で反応する。触媒を毒するCOが作られる。この問題を克服するためには、メタノールを水で希釈する。しかしながら、こうするとシステムのエネルギー容量を減少させる。
【0007】
〔金属/空気燃料セル〕
別の方法はエネルギーキャリヤーとして金属を使用することである。亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)または鉄(Fe)等の金属の単位重量および単位体積当りのエネルギー密度は高い。例えば、Znの理論的エネルギー密度は1,310 Wh/kg(ΔEZn-air = 1.6 V)であり、Alについては、理論的エネルギー密度は8,194 Wh/kg(ΔEAl-air = 2.75 V)の高さである。なお、アノード材料としての金属の使用は燃料セルシステムを再充電可能とする。
【0008】
空気電極はしばしば金属/空気燃料セルにおけるカソードとして使用される。空気電極はPTFE を多孔性構造体を形成するバインダーとして炭素粉末で作られ、この多孔性構造体は上記のアルカリ燃料セルの場合と同様にして、液体と気体の輸送を可能にする。空気電極の製造方法についての記載は、本発明と同じ出願者に属するノルウエー特許出願2003 3110にある。アルカリ溶液またはポリマーが空気電極を金属電極から分離することが多い。アルカリ溶液を使用すると、酸素反応に対する高反応速度の利点が得られる。他の溶液を使用できる(例えば、塩水)が、しかし、そうすると酸素反応に対する過電圧が増大し、システムの電気的効率を減少させる。
【0009】
アルカリ燃料セルとは反対に、金属/空気燃料セルにおいては、水素電極の代わりに金属電極がアノードとして使用される。この様にして、全エネルギーがシステム中に貯蔵され、アノードへの水素輸送用の気体チャンネルは必要でない。金属電極は、固体の板電極か、焼結多孔性電極か、金属と酸化物の焼結混合物か、または粉末またはペレットの電極である。電極の構造とディザインは、主として望んでいる応用により決定される。金属溶解により生じる金属酸化物は純金属よりも低密度であることが多いので、電極がやや多孔性であることが利点である。
【0010】
Zn、Al、MgまたはFe等の金属は、その高エネルギー密度の故に良い候補である。もし再充電可能なシステムが要求されるならば、金属の樹枝状成長が空気電極との接続による燃料セルの短絡を確実に起さないようにする幾つかの事前の対策を取らなければならない。電解質中への添加物は、デンドライト成長を減少させることができる。なお、金属を合金にして、デンドライト成長を減少させることができる。
【0011】
金属/空気システムについての一つの主要な課題は、水素製造の下での金属の制御なしの溶解である。電解質(しばしばアルカリ溶液)は、腐食反応で金属を溶解する。開放回路電位で電極を貯蔵する時、または若干の金属についてはまた金属/空気システムが使用される時にこの反応は進行する。腐食反応の速度がシステムの電気的効率の損失を決定する。腐食を減少させるために、材料(Zn、Al、Mg、Fe)を鉛(Pb)、水銀(Hg)または錫(Sn)で合金化する試みがなされた。これらの元素は水素反応について過電圧を増大させることが知られている。代わりの方法は、電解質に腐食抑制剤を添加することであった。これまでの所、これらの解決法は満足な結果を出していない、殊に最高のエネルギー密度の金属(AlおよびMg)についてそうである。
【0012】
金属/空気燃料セルにおける金属の腐食は、この型の燃料セルが市場に導入されていないことの主たる原因と考えられている。腐食は、その金属が時間と共にエネルギー容量を減少する結果となる。これは、水素製造の下における金属の溶解のためである。
【0013】
金属の腐食は次の式に従い、水素発生の下に進行する。
【0014】
M → Mn+ + ne- (1)
nH2O + ne- → nOH- + n/2H2 (2)
ここにnは使用している金属(M)により決定される。
【0015】
以上から腐食に対する次の全体の反応が得られる。
【0016】
M + nH2O → Mn+ + nOH- + n/2H2 (3)
式(3)に示される様に、金属当量当りの水素発生量は金属によって決定される。例えば、1モルのZnの溶解により、1モルの水素が生成する。他方、Alについては、1モルのAlの溶解により、1.5モルの水素が生成する。
【0017】
水素発生の速度は水素反応に対する可逆電位から見出される。アルカリ溶液中の水素反応(式(2))に対する可逆電位は-0.828 Vである。開放電位は、金属の溶解がアノード反応であり、水素の発生がカソード反応の場合の金属表面の電位である。水素発生の開放電位と可逆電位の差が水素発生のカソード反応速度を決定する。
【0018】
もしこの電位差が大(AlおよびMgについての様に)であると、水素発生速度が高く、たとえ電極がアノード分極の下にあっても、水素発生が進行する。もしこの電位差が小(Znについての様に)であると、開放回路での水素発生速度は低く、アノード分極の下では、水素発生は著しくない。
【0019】
金属/空気燃料セルについては、このことは、高電位差を与える金属(Al、Mg)の使用の場合、電極が貯蔵されている時に水素発生の速度は高く、燃料セルが使用されている時でも、著しい。式3に示すように、水素発生の速度は金属の溶解速度に比例し、金属の溶解速度は金属/空気燃料セルについての容量損失に比例する。したがって、AlまたはMg等の高エネルギー密度材料を利用するためには、エネルギー容量損失の問題の解決を見付けなければならない。ZnやFe等の低水素発生速度を有する材料については、長期の貯蔵時間が要求されるならば、やはり解決法が必要とされる。
【0020】
〔Ni/金属水素化物電池〕
上に述べたことから理解出来る様に、金属/空気燃料セルは電池と燃料セルの両方に密接な類似がある。空気電極は典型的な燃料セル電極であり、金属電極は典型的な電池電極である。
【0021】
Ni/金属水素化物電池は、金属水素化物アノードと酸化ニッケルカソードからなる。システムのエネルギー容量は、金属水素化物合金に吸収された水素から来る。この水素は表面へ拡散し、電池を使用しているときには、反応して電気エネルギーを生じる。カソード上で酸化ニッケルが還元される。アルカリ性電解質は二つの電極を分離する。早い反応速度と短い拡散パスを得るために、金属水素化物電極は加圧粉末タブレットとして作られる。水素反応に対する高表面反応速度を得るために、高い粒子間接触を得ることに多くの仕事がなされた。金属水素化物上の表面酸化物を除きその結果材料を活性化するために、幾つかの充電再充電サイクルが要求される。エネルギー容量は、金属水素化物内の水素量に限られる。最大の負荷は、バルクから金属水素化物表面への水素拡散の速度により制限される。
【0022】
金属/空気燃料セルの開発において、主要な問題は、腐食反応による水素生成下の金属の溶解であった。この問題は、AlまたはMg等の金属を使用する場合に特に厳しいが、ZnおよびFeを使用する場合にもまた存在する。特に、金属粉末電極を使用した場合(アノード反応のための電圧低下を減少させるため)の金属/空気燃料セル応用については、大きな曝露表面積の故に、腐食速度が大きい。
【0023】
この問題を解決するために、二つの主要な方法が用いられた。
【0024】
1.電解質に腐食防止剤を添加して水素反応を抑制した。
【0025】
2.金属を水素反応に対する過電圧を増大させる元素と合金にした。
【0026】
燃料セル用の電極材料を改良する一つの試みがUS Pat. No. 5,795,669に示されていて、この特許は二つの触媒材料を含む複合電極材料を開示する。一つの触媒材料は活性気体相触媒であり、他の触媒材料は活性電気化学触媒を含む。
【0027】
米国特許6,447,942では、アルカリ燃料セル中のアノードおよび可逆燃料セルの水電気分解ユニット用の金属貯蔵材料の使用が示される。この様な材料は水素反応に対して高度に触媒的な性質を有する。なお、水素を貯蔵すると、システムの瞬間的な始動が可能になることが示された。不利な点は、任意の水素化物形成体の通常の活性化が加圧下に水素吸収と水素放出を繰り返して行なうことによって達成されることである。もしセルが高圧または高温に抵抗する様に組立てられていなかったら、これを行なうことができない。
【0028】
米国特許出願2002/0064709では、上記の圧力問題の解決法が提示されている。化学薬品の水素化物(水素化硼素ナトリウム、ナトリウム水素化物、リチウム水素化物、等)を金属水素化物合金との混合物として添加することにより、化学水素化物の溶解による水素形成は水素貯蔵材料を予備充電し、多孔率を増加させ、水素貯蔵合金の腐食防止を高めることが提案された。この特許には化学水素化物のみが水素形成材料として記載されていて、化学水素化物の使用は、上記効果に限られている。
【0029】
米国特許6,492,056では、複合材料が作られている。この複合材料は水素貯蔵合金と電極触媒材料からなる。触媒的に活性材料が存在して水素反応速度を高める。なお、水素貯蔵材料が存在する。水素はかくして燃料セルのアノード内に貯蔵できるか、または高速で反応できる。このことから、瞬間的な始動と回生制動等のプロセスからのエネルギー再捕捉の可能性が得られる。
【0030】
上記特許から理解できる様に、発明者らは燃料セルの水素電極の改良を試みている。水素貯蔵材料を加えて燃料セルの急速な始動を可能にし、化学水素化物を加えて水素貯蔵材料を活性化させる。
【0031】
米国特許6,258482では、電池のアノードは、金属層を介して結合させた水素貯蔵合金粒子の凝集物を含む水素貯蔵合金粉末で作られる。FeまたはZn等の金属が金属層に対して示唆されている。
【0032】
上記米国特許においては、その目的は、小さい粒子サイズの水素貯蔵合金の使用を可能にすることである。こうすると、この様な水素貯蔵合金電極を使用して、アルカリ電池の充電−、放電サイクル寿命を増加させるのは勿論のこと、最初の放電容量を高める。小金属水素化物粒子を使用するために、酸化物フィルムの形成を防がなければならない。この米国特許においては、Fe、Znまたは他の金属等の金属のフィルムで水素貯蔵合金の表面を覆うと酸化を防ぎ、接触抵抗を減少させるということが主張されている。この米国特許の目的は、金属水素化物粒子上に金属表面層を形成させ、粒子を結合させて接触抵抗を減少させることである。
【0033】
上記米国特許は、Fe、Znまたは他の金属が水素製造の下でアルカリ性の環境中に溶解できるという事実には関連しない。電極中の水素源としてのこれらの金属の使用は上記米国特許の目的ではない。
【発明の開示】
【0034】
本発明において、電極構造体に金属粒子を添加するか金属層を分離する目的は、Al、Mg、ZnまたはFe等の高エネルギー密度金属の金属水素化物貯蔵用の水素源としての使用および水素表面酸化を可能にするためである。これは、高エネルギー密度金属の腐食の際に形成された水素を利用し、また電池システムの充電の際に水素貯蔵を可能にする。なお、本発明の一実施態様は、高エネルギー密度金属がそれ自身電池のアノードとして作用することである。
【0035】
本発明において、腐食は高エネルギー密度金属(Al、Zn、MgまたはFe)の溶解による溶解イオンまたは溶解酸化物の形成と定義される。強いアルカリ性電解質のために、高エネルギー密度金属は、水素生成の下で腐食する。高エネルギー密度金属がバッテリー応用(アノード分極の下)に使用されると、加えられるアノード電位の故に金属は溶解する。低速度の水素生成が観察される。
【0036】
本発明において、上記の腐食問題に対する新しい手法を提供する。本発明は、腐食反応において一部のエネルギーのみが熱エネルギーとして失われ、大部分のエネルギーは水素としてなお存在するという事実に基いている。
【0037】
本発明はまた、このエネルギーを貯蔵し、電気エネルギーに変換する方法に関する。水素を吸収する容量を有する材料を腐食により生じる水素を貯蔵するのに使用でき、水素反応に対する触媒材料を使用して水素酸化の反応速度を増大させることができる。金属/空気燃料セルについての腐食問題の解決に加えて、本発明はまた、金属水素化物型電池(例えば、Ni/金属水素化物電池)のアノードとしても使用できる。水素貯蔵材料がこの様な電池に使用される。水素貯蔵材料および/または電極触媒およびAl、Mg、ZnまたはFeの混合物は、この様な電池のアノードとして純粋な貯蔵材料を置換することができる。Al、Mg、ZnまたはFeの添加は、金属水素化物電池の寿命およびピーク電力容量を増大させる。
【0038】
この観点において、高エネルギー密度金属は酸素との反応において反応して酸化物を形成する金属である(例えば、選択された環境において腐食する金属)。
【0039】
本発明において、その対象物は、水素貯蔵合金および水素電極触媒をAl、Mg、ZnおよびFe等の金属と混合または焼結することにより得られる。Al、Mg、ZnおよびFeにより生じる水素はついで電極触媒上で反応し、電気エネルギーを生じる。金属/空気電池が使用されていない時は、水素を水素貯蔵材料中に貯蔵できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
第一の態様において、本発明は、電気化学セルに使用する電極であって、該電極は水素貯蔵材料および高エネルギー密度金属を含み、水素貯蔵材料および高エネルギー密度金属は、高エネルギー密度金属がセル中の電解質との反応に際して水素貯蔵材料に対して水素源として作用できかつ/または高エネルギー密度金属がセルに対してアノード材料として作用できる様に電極中で配置されていることを特徴とする電極を提供する。一つの実施態様において、高エネルギー密度金属がAl、Zn、MgおよびFeの少なくとも一つか、または任意のこれらの金属の合金である。高エネルギー密度金属はまた、PTFEまたはグラファイトまたは両方と混合しても良い。グラファイトは電極の伝導率を改良する。水素貯蔵材料が希土類金属/ミッシュメタル合金、ジルコニウム合金、チタニウム合金およびこれら合金の混合物からなる群から選ばれた合金で良く、PTFEおよび/または炭素と混合しても良い。より具体的には、水素貯蔵材料がAB5、AB2,ABおよびA2Bから成る群から選ばれた金属水素化物、ここにAはIIB族元素、遷移元素、希土類金属またはアクチニド系列の元素であり、Bは遷移系列の元素である、であって良い。さらに、AB5(六方晶系または斜方晶系)が、LaNi5またはMmNi5、ここにMmはランタンおよび他の希土類金属との組合わせである、であり、AB2がラーベス相構造を有するZnMn2であり、ABがCsCl構造を有するTiFe であり、かつA2Bが錯体構造を有するTi2Niである。電極はまた、水素電極触媒を含んで良く、ここに水素電極触媒は、貴金属(例えば、プラチナ(Pt)あるいパラジューム(Pd))、またはニッケル(Ni)、鉄(Fe)またはクローム(Cr)であって良い、またはこれらの金属、すなわちプラチナ(Pt)、パラジューム(Pd)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)またはクローム(Cr)の少なくとも一つを含む合金であって良い。さらなる実施態様において、水素電極触媒は、高表面積を有する支持体材料、例えば、活性炭素またはグラファイト、表面上に析出した純粋な粉末である。
【0041】
本発明のさらなる実施態様において、高エネルギー密度金属および水素貯蔵合金が一枚のシートを形成する。別の実施態様においては、高エネルギー密度金属、水素貯蔵合金および電極触媒が一枚のシートを形成する。電極を二枚のシートで作ることもまた可能であり、ここに高エネルギー密度金属が第一のシートを形成し、水素貯蔵合金が第二のシートを形成し、または高エネルギー密度金属および電極触媒が第一のシートを形成し、水素貯蔵合金が第二のシートを形成する。高エネルギー密度金属が第一のシートを形成し、水素貯蔵合金が第二のシートを形成し、電極触媒が第三のシートを形成する場合に、三層電極が出来上がる。
【0042】
シートの一枚にメッシュ集電体を圧着するかカレンダー掛けをすることができる。高エネルギー密度金属を固体板、ペレットまたは粉末から作ることができる。さらに、高エネルギー密度金属をPTFE(テフロン(登録商標))および/またはグラファイトと混合してよい。また、水素貯蔵材料は、PTFE(テフロン(登録商標))またはグラファイトと混合した固体板、ペレットまたは粉末から作ることができる。電極層は、エネルギーキャリヤー層、触媒層、吸収層およびメッシュ集電体または機械的支持体として作ることができる。
【0043】
第二の態様において、本発明は、電気化学セルに使用する電極の製造方法であり、該電極は水素貯蔵合金および高エネルギー密度金属を含み、高エネルギー密度金属粉末および/または水素貯蔵合金をバインダーと共に焼結または成形して少なくとも一枚の薄いシートを形成し、このシートをカレンダー掛けするか圧着して電極を形成することから成る方法を提供する。PTFEをバインダーとして使用することにより、多孔率を制御できる。炭素を添加することにより粒子間の接触を増大できる。さらなる実施態様において、集電体をシートに圧着するかまたはカレンダー掛けする。
【0044】
第三の態様において、本発明は上記にしたがうアノード電極を含む金属/空気燃料セルを提供する。第四の態様において、本発明は上記にしたがうアノード電極を含む金属水素化物セルを提供する。
【0045】
第五の態様において、本発明は金属/空気燃料セル中の電極の腐食を防止するための水素貯蔵材料と組合わせた高エネルギー密度金属の使用を提供し、第六の態様において、本発明はニッケル/金属水素化物電池における自己充電性を提供する水素貯蔵材料と組合わせた高エネルギー密度金属の使用を提供する。第七の態様において、増大するエネルギー容量のために、ニッケル/金属水素化物電池における電極中への水素貯蔵材料と組合わせた高エネルギー密度金属の使用が提供される。第八の態様において、ニッケル/金属水素化物電池における増大するピーク出力のための高エネルギー密度金属の使用が提供される。さらに第九の態様において、ニッケル/金属水素化物電池における金属水素化物の腐食を防ぐためにAl、Zn、MgまたはFe等の高エネルギー密度金属の使用が提供される。さらに第十の態様において、電気化学セルの電極における水素貯蔵材料の使用が提供され、この電極はまたセル中で高エネルギー密度金属と電解質の反応により生じた水素を吸収するための高エネルギー密度材料を含む。さらに本発明の第十一の態様において、電気化学セルの電極における高エネルギー密度金属の使用が提供され、この電極はまたセル中で高エネルギー密度金属と電解質の反応の際の水素貯蔵材料のための水素源としての水素貯蔵材料を含む。
【0046】
本発明者の知識によれば、僅かな数の特許のみが材料同士を組合わせて燃料セル電極の幾つかの性質を利用していると報告されている。これらの特許は上に参考として挙げた。これまでの所、金属/空気燃料セル用の金属電極中の水素貯蔵材料および電極触媒の使用は報告されていない。アルカリ燃料セル(AFC)用の水素電極中の水素貯蔵材料の使用および反応して水素を生成する化学水素化物の使用は知られている。しかしながら、これらの電極はここに記載する金属電極とは多くの点で異なる。先行技術の電極はアルカリ燃料セルを速く始動させるために作られている。これらの添加物(金属水素化物)を使って、燃料セルを逆作動させて、水の加水分解に使用することが可能であることが提案されている。AFCアノードは、多孔性電極製造方法を使用して組立てて周囲からの十分な気体の輸送を確実にする。金属/空気燃料セル中の金属電極は周囲との相互作用がないので、これは本発明から外れる。先に挙げた特許中の水素貯蔵材料は、水素を急速吸収および放出するために特別に作られていて、アルカリ燃料セルの動的挙動を増加させる。
【0047】
先に挙げた特許のすべては、機能させるために周囲から水素を供給する必要により制限される。これらの特許の何れも、Al、Zn、MgまたはFe等の高エネルギー密度金属を使用してシステム中にエネルギーを貯蔵し、この様な金属の腐食によるこのエネルギーを放出する態様を扱っていない。
【0048】
本発明においては、Al、Zn、MgまたはFe等の金属と組合わせて水素貯蔵材料および/または電極触媒が使用されている。こうすることにより金属の電気エネルギー効率を増大させている。この様な金属はまた水素貯蔵材料と組合わせてNi/金属水素化物電池のアノードとしても使用できる。こうすると、システムのエネルギー容量を増加させ、この様な電池のピーク負荷を増加させる。
発明の詳細な説明
本発明の一実施態様において、高エネルギー密度金属が水素貯蔵材料(Ni/金属水素化物電池に使用されている様に)および電極触媒材料と結合される。こうすると、高エネルギー密度金属の腐食からの水素が金属水素化物材料内に貯蔵されるか、電極触媒上、電気化学反応中で反応させられる。この様にして、エネルギーキャリヤー(Al、Mg、ZnまたはFe)の腐食によるエネルギー損失は最小化され、金属水素化物電池のエネルギー密度を増大できる。
【0049】
本発明による電極の実施態様を図1に示す。電極は4層からなる。エネルギーキャリヤー層(I)(Zn、Al、MgまたはFe)、触媒層(II)(多孔性電極触媒(支持材料がある場合とない場合))、および吸収層(III)(水素貯蔵材料)。これらの層は、それぞれ薄いシートで調製され、互いに圧着される。メッシュ集電体(IV)を一つのシートにまたは全部のシートに圧着するか、カレンダー掛けできる。
【0050】
電極は幾つかの方法で製造できる。しかしながら、さらに少ない層の他の実施態様もまた可能であり、後に説明する。最良の方法は、金属粉末の使用に基いていて、バインダーを使って金属粉末を焼結するかまたは成形して薄いシートにする。その際PTFEをバインダーに使って多孔率を制御する。粒子間の接触を増大させるために炭素を使用できる。カレンダー掛けするか加圧することによって電極を製造できる。図1は本発明の実施態様による電極の組立て方法を示す。図1では、エネルギーキャリヤー層(I)(Zn、Al、MgまたはFe)、触媒層(II)(多孔性電極触媒(支持材料がある場合とない場合))および吸収層(III)(水素貯蔵材料)が互いに圧着された薄いシートに調製される。メッシュ集電体(IV)を一つのシートまたはシート全体に圧着するかカレンダー掛けする。水素(エネルギーキャリヤーの腐食により生成する)は水素貯蔵層に拡散するかまたは電極触媒層上で反応する。一枚または二枚のシートのみを使用することもまた可能である。これは、エネルギーキャリヤーと水素貯蔵材料を混合して一枚のシートにする、水素貯蔵材料と電極触媒を混合して一枚のシートにする、電極触媒とエネルギーキャリヤーを一枚のシートにする、または全成分を混合して一枚のシートのみにする(図2および図3で説明される)ことによりなされる。これらの可能性の若干を以下に述べる実施例によりさらに説明する。
【0051】
図2および図3は本発明の二つの実施態様を示す。図2では、電極は二層で作られ、図3では、電極は一層で作られている。図2では、水素吸収剤(金属水素化物)および電極触媒を一層に調製し、エネルギーキャリヤー(高エネルギー密度金属、例えば、Zn、Al、FeまたはMg)を一つの分離した層に調製する。図3では、水素吸収剤(金属水素化物)と一緒にしたエネルギーキャリヤー(高エネルギー密度金属、例えば、Zn、Al、FeまたはMg)および電極触媒は一つの層に調製される。
【0052】
三つの分離した層を使用する利点は、各シート上の反応の優れた制御が得られる点にある。他方、二つ以上の材料を同じシート中に混合することにより、拡散パスが短くなり、各粉末間の相互作用が増大する。もう一つの利点として、このことが混合工程とカレンダー掛け工程を少なくし、これにより製造方法がより簡単になる。
【0053】
先に述べた様に、金属/空気燃料セル用のエネルギーキャリヤーはZn、Al、MgまたはFe等の金属である。使用できる多くの水素貯蔵材料が存在する。金属水素化物を形成する金属間合金の主要なクラスは、AB5、AB2,ABおよびA2Bであり、ここにAはIIB族元素、遷移元素、希土類金属またはアクチニド系列の元素であり、Bは遷移系列の元素である。AB5(六方晶系または斜方晶系構造)の例はLaNi5またはMmNi5である、ここにMm、またはミッシュメタル、はランタンおよび他の希土類金属との組合わせである。AB2の例はラーベス相構造を有するZnMn2である。ABの例はCsCl構造を有するTiFe である。A2Bの例は錯体構造を有するTi2Niである。
【0054】
水素の酸化に触媒作用を及ぼすために、プラチナ(Pt)またはパラジウム(Pd)等の貴金属が使用できる。貴金属は純粋な粉末の形で存在するか活性炭素またはグラファイト等の大きな表面積を有する支持体材料上に析出されているかである。ニッケル(Ni)、鉄(Fe)およびクローム(Cr)は水素酸化に触媒作用を及ぼすために使用できる高価でない材料である。触媒活性を増大させるために、これらの金属は大きな表面積を有する粉末の形にできる。代わりの方法は、これらの金属を支持体材料の表面に析出させることである。さらに触媒活性を増大させるために、Ni、CrおよびFeの非晶性合金を使用できる。この様な合金を形成するために、硫黄(S)、硼素(B)または燐(P)の共析出を伴うNi、CrまたはFeの電気化学的または化学的析出が行なわれる。この様な合金はまた、水素を吸収し、水素貯蔵材料として働くことができる。上記の金属水素化物材料は水素反応に対して高い触媒活性を示しており、貯蔵材料と電極触媒の両者として使用できる。
【0055】
もう一つの可能性は、電極触媒を水素化物貯蔵合金表面上に析出させることまたは電極触媒をエネルギーキャリヤー(Zn、Al、Mg またはFe)表面上に析出させることである。最後の可能性は、電極触媒を有するかまたは有しない貯蔵合金をエネルギーキャリヤー表面上に析出させることである。
【0056】
高エネルギー密度金属で作られた固体板またはペレットは分離したシートにすることができる。このシートは、金属水素化物シート、または電極触媒シート、または金属水素化物および電極触媒を組合わせたシートと結合させることができる。図2には、エネルギーキャリイング材料としての粉末を用いているこの配置が示されている。この配置において、粉末は固体板またはペレットと置き代えることができる。
【0057】
図5は金属/空気燃料セルに使用した本発明による電極を示す。本発明による電極をアノードとして使用し、空気からの酸素を還元する空気電極をカソードとして使用する。アルカリ性電解質が二つの電極を分離する。カソード上では空気からの酸素が多孔性電極内に拡散する。反対側から、電解質が部分的に構造体をfloodsする。カソード内では三相境界が得られる。高表面積は酸素の高反応速度を可能にする。アノード上では、金属および/または水素の酸化が起る。アノードとカソードを接続すると、システム中を電流が流れる。
【0058】
本発明による電極の別の応用は、例えば、図4に示される様に電極を金属水素化物電池(Ni/金属水素化物電池等の)に使用することである。図4において、本発明による電極がアノードとして使用され、一方ニッケル電極がカソードとして使用される。アルカリ性電解質が二つの電極を分離する。セルの短絡を防ぐため、電極間にセパレーターが導入される。
【0059】
下の例に示される様に、金属(Zn、Al、MgまたはFe)と水素貯蔵材料を混合することは可能である。純粋な水素貯蔵材料の代わりに貯蔵材料とエネルギーキャリイング材料(Al、Mg、Fe、Zn)の混合物を適用することにより、電池は自己充電される。エネルギーキャリイング金属(Zn、Al、MgまたはFe)の溶解により水素がゆっくり生成される。Zn、Al、MgまたはFeの腐食により生じる水素はついで金属水素化物貯蔵材料中に拡散し、システムを充電する。これにより、電池の寿命が著しく増大される。
【0060】
エネルギーキャリヤーの溶解および水素吸収―放出反応は可逆的であり、したがってこの様な電池は再充電できる。なお、エネルギーキャリヤーの溶解は分極損失が低く拡散制限がないので、Ni/金属水素化物電池中のエネルギーキャリヤー金属の効果はピーク出力を増大させる。
【0061】
付加的な利点は、Zn、Al、MgおよびFe等の金属とNiベースの貯蔵合金等のより貴な金属の間にガルバニック結合が形成できることである。これはより貴な金属のカソード分極となり、水素の吸着と吸収を容易にする。ガルバニック結合からのさらなる利点としては、貯蔵合金の腐食速度を減少させることができ、Ni/金属水素化物電池の寿命を増大させる。もしエネルギーキャリヤー材料(Al、Zn、MgまたはFe)および貯蔵合金が二枚のシートに分離されているならば、これらの材料のガルバニック結合の間に抵抗器を導入できる。こうすると貯蔵合金のカソード過電圧を減少させるのに有益であり、かくしてこの合金上での水素発生を減らす。これを図6に示す。
【実施例】
【0062】
〔実施例1〕
次の実施例において、電極触媒を金属電極に添加する効果が説明される。電極触媒が、金属上の腐食反応により生じる水素の酸化による全電流密度を増加させることが示される。
【0063】
Zn、Al、MgまたはFe等の金属粉末、触媒支持体を伴うかまたは伴わない炭素粉末およびPTFE を使用して粉末電極を調製した。これらの粉末を20,000 rpmで高速ミル中で混合することにより電極を調製した。混合により凝集体を生じた。炭化水素溶媒を使用して凝集体を粘土にした。粘土をカレンダー掛けして電極にした。Niメッシュを集電体として電極にカレンダー掛けした。金属(Zn、Mg、Al、Fe)の量を5〜95 wt.%の間で変化させた。5 wt.%以上のPTFE を添加して電極を結合させた。
【0064】
図7は、Pt触媒上の水素酸化速度およびMg溶解用の溶解電流を示す。図は、6.6 M KOH 20℃の電解質中での、65 wt.%炭素および15 wt.% PTFEと混合された20 wt.% Mgから調製された電極のアノード分極(+100 mV)に対する時間T[s]の関数としての電流密度i [A/cm2]を示す。二つの電極を調製した。一つは支持体炭素上にプラチナ(Pt)触媒を有する電極であり、他はPt触媒なしの支持体炭素を有する電極である。炭素支持体上にPtを有する試料については、炭素上に析出したPtの量は1 wt.%であった。
【0065】
本実施例においては、高エネルギー密度金属(Mg)および触媒(炭素支持体上のPt)を一つの層に調製した。目的は、Mg溶解により生じる水素に及ぼす触媒の影響を決定することであった。これは、Pt触媒を含む電極を炭素支持体上にPtがない電極と比較することにより得られる。
【0066】
触媒なしの試料については、電流は、Mgの溶解にのみ起因する。添加されたPt触媒を有する試料については、電流に対して付加的な寄与が観察される。この電流は、触媒上の水素酸化による。
【0067】
水素酸化に対しては、時間の経過と共に電流密度の低下が観察される。これは加えるアノード電位による。アノード分極はMgからの水素製造の速度を減少させ、したがって、また酸化により得られる水素の量を減少させる。
【0068】
この実験は、金属/空気燃料セル中の金属電極に電極触媒を添加する利点を明瞭に示したが、これは電極触媒を添加すると、金属の腐食またはアノード溶解から形成される水素の酸化による電流を増加させることによる。
【0069】
図8は分極掃引を示し、ここではMg電極について上で説明したのと同様にして調製した二つのZn電極に対して、電流密度I [A/cm2]を時間T [s]の関数として示される。再び、一つの電極をPt-触媒で調製し、他の電極をPtなしで調製する。アノード分極掃引から、低水素生成速度を有する金属についてもまたPt-触媒の添加により酸化速度が大きく高められることを明瞭に知ることができる。図8の電極は、20 wt.%のZn、65 wt.%の炭素支持体および15 wt.%のPTFE から調製された。電解質は20℃の6.6 M KOHであった。これらの電極に対してもまた、一つの電極は炭素支持体上に析出させた1 wt.%のPtで作られ、一つの電極は純炭素支持体で作られた。
【0070】
〔実施例2〕
図1および図2に示すように、異なる組成の幾つかの層を結合することにより調製できる。次の実施例において、純エネルギーキャリヤー金属層で形成される水素は純触媒層に拡散し、そこで酸化されて電流に付加的に寄与することが示される。
【0071】
分離した二層を調製し、これらを互いにカレンダー掛けして結合させた。一つの層は高エネルギー密度金属で調製し、他の層は炭素層であった。両層は、上に述べた様に、粉末を凝集させカレンダー掛けすることにより、粉末から作られた。金属電極には触媒や炭素は存在せず、PTFEおよびAl、Zn、Mg、Fe等の金属、またはこれらの金属の組合せのみが存在するのみであった。炭素電極は、15 wt.%のPTFE および85 wt.%の炭素を使用して調製した。1 wt.%のPtを炭素支持体上に析出させた。
【0072】
層中に炭素を使用すると、多孔性構造が得られる。そうすると、水素の層中への急速拡散が可能になる。炭素支持体上の触媒(Pt)は水素の酸化を可能にする。
【0073】
二層を組立て、互いに圧着した。二層の間の電気的接触を防ぐために、二層の間に多孔性ポリプロピレンシートを置いた。穿孔されたポリプロピレンシートはガス拡散を妨げなかった。このようにして、二層について電流―電位の関係をそれぞれに測定できた。
【0074】
図9は、金属電極中の異なる量のZnに対して適用電位Eの関数としてのPt触媒を有する炭素層上のアノード電流i [A/cm2]を示す。図9は、20℃の6.6 M KOH中のこの層についての水素酸化速度を示す。Znの腐食により生じる水素は炭素層中に拡散し、Pt触媒上で反応する。Zn層中のZnの量は0〜100%の間で変化させ、図9は0%、80%、95%および100%Znについてのグラフを示す。100% Znの試料については、純粋なZn板を使用した。
【0075】
理解できる様に、炭素電極について拡散が制限されたアノード反応が起る。これは、Zn電極で生じた水素が炭素電極中に拡散し、触媒上で反応するという事実による。Zn電極中のPTFE の量を減少させることにより、Zn電極からの水素生成が増大する。図9に示される様に、炭素電極上で拡散が制限された水素酸化反応が増大し、水素生成も増大する。
【0076】
本実施例は、Al、Mg、ZnおよびFe等の金属の望まない腐食により生じた水素は、電極触媒を有する分離した炭素層中で利用できることを明瞭に示す。触媒層を使用すると、高エネルギー密度金属の電気エネルギー効率が増加するという利点が得られる。この様にして、金属溶解によるエネルギー損失が最小にされる。
【0077】
〔実施例3〕
次の実施例では、金属の腐食により生じた水素は水素貯蔵金属中に貯蔵でき、貯蔵金属の表面上で反応することが示される。
【0078】
Al、Fe、ZnまたはMgの金属粉末、触媒と一緒のまたは触媒のない炭素およびPTFE で電極を調製した。水素の貯蔵容量を有するNi合金を金属粉末上に析出させた。これをNi-P の電気化学的または無電解析出により行なった。上に述べた様に、粉末を凝集させ、カレンダー掛けした。
【0079】
図10は、本発明の実施態様による、Al上に析出したNi-P合金および炭素細孔形生体を含む電極上の6.6 M のKOHにおける+100 mVの過電圧での水素酸化を示す。Alの腐食は水素を生成する。この水素は合金中に吸収される。アノードが分極すると、吸収された水素は表面で反応する。Alシートの腐食からの付加的な水素が電極と結合すると電流が増大する。
【0080】
図10において、100 mVのアノード過電圧における電流密度 i [A/cm2]を時間T [s] の関数として示す。腐食により全Alが溶解された後、電流測定を行なった。最低の電流密度曲線は、Alの溶解の際にNi-P合金中に貯蔵された水素の酸化を示す。最高の電流密度曲線は、Alの付加的な層が溶解し、水素が電極中に拡散しNi-P 合金の触媒表面と反応する時に起る水素酸化を示す。
【0081】
実施例は、金属の溶解の際に金属の腐食からの水素が水素貯蔵合金中に貯蔵できることと、アノードの過電圧でこの水素は貯蔵合金の表面上で反応することを示す。この様にして、高エネルギー密度金属の溶解による電気エネルギー容量の損失は、金属水素化物中に水素としてエネルギーを貯蔵することにより最小にすることができる。この水素は、水素反応の触媒の使用により、効率的に電気エネルギーに変換できる。
【0082】
本発明の具体的な実施態様を説明したが、当該技術に熟達している者には、発明の概念を取入れた他の実施態様を使用できることは明らかであろう。上に説明した本発明のこれらのおよび他の実施例は実施例としてのみ意図されており、本発明の実際の範囲は次の特許請求の範囲から決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】異なる性質を有する幾つかのシートを使用することによる本発明の実施態様に従った電極の可能な組立て方法を図解する。
【図2】水素吸収体(金属水素化物)および電極触媒を一つの層に含み、エネルギーキャリヤー(高エネルギー密度金属)を別の層に含む本発明の実施態様による二層電極を示す。
【図3】エネルギーキャリヤー(高エネルギー密度金属)、水素吸収体(金属水素化物)および電極触媒を含む本発明の実施態様による一層の電極を示す。
【図4】ニッケル/金属水素化物電池に使用される本発明の実施態様による電極を図解する。
【図5】金属/空気燃料セルに使用される本発明の実施態様による電極を図解する。
【図6】本発明の実施態様による電極中の金属水素化物および高エネルギー密度金属の間のガルバニック結合に接続されている抵抗器を示す。
【図7】1 wt.%のPt触媒を有する(有しない場合もある)65 wt.%の炭素および15 wt.%のPTFE と混合された20 wt.%のMgから調製された本発明の実施態様による電極で、20℃ 6.6 M KOHの場合の電極のアノード分極についての電流密度を示す。
【図8】20 wt.%のZn、1wt.%のPt 触媒を有する(有しない場合もある)65 wt.%の炭素支持体および15 wt.%のPTFE から調製された本発明の実施態様による電極の分極掃引を示す。
【図9】炭素支持体上に1 wt.%のPt触媒を有する、PTFEで結合させた炭素電極上での 20℃ 6.6 M KOH中の水素酸化速度を示す。
【図10】Al上に析出されたNi-P合金および炭素細孔形生体を含む本発明の実施態様による電極上で、6.6 M KOH中 +100 mVの過電圧における水素酸化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルに使用する電極であって、該電極は水素貯蔵材料および高エネルギー密度金属を含み、水素貯蔵材料および高エネルギー密度金属は、高エネルギー密度金属が電池中の電解質との反応に際して水素貯蔵材料に対して水素源として作用できかつ/または高エネルギー密度金属がセルに対してアノード材料として作用できる様に電極中で配置されていることを特徴とする電極。
【請求項2】
高エネルギー密度金属がAl、Zn、MgおよびFeの少なくとも一つか、またはこれらいずれかの金属の合金であることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
高エネルギー密度金属がポリテトラフルオロエチレンと混合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
高エネルギー密度金属がグラファイトと混合されており、該グラファイトは電極の伝導率を増加させることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電極。
【請求項5】
水素貯蔵材料が希土類金属/ミッシュメタル合金、ジルコニウム合金、チタニウム合金およびこれら合金の混合物からなる群から選ばれた合金であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電極。
【請求項6】
水素貯蔵材料がポリテトラフルオロエチレンと混合されていることを特徴とする請求項1または5に記載の電極。
【請求項7】
水素貯蔵材料が炭素と混合されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の電極。
【請求項8】
水素貯蔵材料がAB5、AB2,ABおよびA2Bから成る群から選ばれた金属水素化物であり、AはIIB族元素、遷移元素、希土類金属またはアクチニド系列の元素、Bは遷移系列の元素であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の電極。
【請求項9】
AB5が六方晶系または斜方晶系構造を有し、かつLaNi5またはNmNi5であって、NmはLaと他の希土類金属との組合わせであり、
AB2がラーベス相構造を有するZnMn2であり、
ABがCsCl 構造を有するTiFe であり、かつ
A2Bが錯体構造を有するTi2Niである
ことを特徴とする請求項8に記載の電極。
【請求項10】
電極がさらに水素電極触媒を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の電極。
【請求項11】
水素電極触媒が貴金属、Ni、Fe、Crまたはこれらの金属の少なくとも一つを含む合金であることを特徴とする請求項10に記載の電極。
【請求項12】
水素電極触媒が高表面積支持体材料上に堆積した純粋な粉末の形であることを特徴とする請求項10または11に記載の電極。
【請求項13】
高表面積支持体材料が活性炭素かグラファイトであることを特徴とする請求項12に記載の電極。
【請求項14】
高エネルギー密度金属および水素貯蔵材料が単一シートの形であることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の電極。
【請求項15】
高エネルギー密度金属、水素貯蔵材料および水素電極触媒が単一シートの形であることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の電極。
【請求項16】
高エネルギー密度金属が第一シートの形であり、水素貯蔵材料が第二シートの形であることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の電極。
【請求項17】
高エネルギー密度金属がおよび水素電極触媒が第一シートの形であり、水素貯蔵材料が第二シートの形であることを特徴とする請求項10〜13の何れかに記載の電極。
【請求項18】
高エネルギー密度金属が第一シートの形であり、水素貯蔵材料が第二シートの形であり、水素電極触媒が第三シートの形であることを特徴とする請求項10〜13の何れかに記載の電極。
【請求項19】
メッシュ集電体が圧着またはカレンダー掛けされて前記シートの何れか一つにされていることを特徴とする請求項14〜18の何れかに記載の電極。
【請求項20】
高エネルギー密度金属が固体板、ペレットまたは粉末の形であることを特徴とする請求項1〜19の何れかに記載の電極。
【請求項21】
エネルギーキャリヤー層と、触媒層と、水素吸収層と、メッシュ集電体および機械的支持体の一つまたは両方とを含むことを特徴とする請求項1〜20の何れかに記載の電極。
【請求項22】
電気化学セルの電極における水素貯蔵材料の使用であって、該電極はまた高エネルギー密度金属を含み、該高エネルギー密度金属と該セル中の電解質との反応により生じる水素を吸収するためであることを特徴とする水素貯蔵材料の使用。
【請求項23】
電気化学セルの電極における高エネルギー密度金属の使用であって、該電極はまた水素貯蔵材料を含み、該高エネルギー密度金属と該セル中の電解質との反応中の該水素貯蔵材料の水素源であることを特徴とする高エネルギー密度金属の使用。
【請求項24】
電気化学セルに使用する電極の製造方法であり、該電極は水素貯蔵合金および高エネルギー密度金属を含み、該方法は:
高エネルギー密度金属および水素貯蔵合金の少なくとも一つをバインダーと共に焼結または成形して少なくとも一枚の薄いシートを形成する工程、および
該少なくとも一枚のシートをカレンダー掛けするか圧着して電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項25】
ポリテトラフルオロエチレンをバインダーとして使用することにより多孔率を制御することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
炭素を添加することにより粒子間の接触を増加させることを特徴とする、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
集電体を圧着するかカレンダー掛けして該少なくとも一つのシートにすることを特徴とする請求項24〜26の何れかに記載の方法。
【請求項28】
アノードとして請求項1〜21の何れかに記載の電極を含むことを特徴とする金属/空気燃料セルまたは金属水素化物電池セル。
【請求項29】
負極が高エネルギー密度金属および水素貯蔵材料を含む金属/空気燃料セルであって、水素貯蔵材料が該セル中の高エネルギー密度金属と電解質の反応により生じる水素を吸収するのに適合する様に、該水素貯蔵材料が電極内に配置されていることを特徴とする金属/空気燃料セル。
【請求項30】
負極が高エネルギー密度金属および水素貯蔵材料を含む金属水素化物セルであって、高エネルギー密度金属が該セル中の電解質との反応の際に水素貯蔵材料に水素源を提供するのに適合する様に、該高エネルギー密度金属が電極内に配置されていることを特徴とする金属水素化物セル。
【請求項31】
セルがニッケル/金属水素化物セルであることを特徴とする請求項30に記載のセル。
【請求項32】
電極の腐食を防止するための、金属/空気燃料セル中の電極中への高エネルギー密度金属と組合わせた水素吸蔵材料の使用。
【請求項33】
電池中に自己充電性を提供するための、ニッケル/金属水素化物セルにおける電極中への水素貯蔵材料と組合わせた高エネルギー密度金属の使用。
【請求項34】
電池中に増大したエネルギー容量を提供するための、ニッケル/金属水素化物セルにおける電極中への水素貯蔵材料と組合わせた高エネルギー密度金属の使用。
【請求項35】
電池中に増大したピーク出力を提供するための、ニッケル/金属水素化物セルにおける電極中への水素貯蔵材料と組合わせた高エネルギー密度金属の使用。
【請求項36】
それぞれ高エネルギー密度金属および金属水素化物を含む分離した層の間にガルバニック結合を配置することにより金属水素化物の腐食を防止するための、ニッケル/金属水素化物セルにおける電極中への高エネルギー密度金属の使用。
【請求項37】
高エネルギー密度金属がAl、Zn、MgまたはFeであることを特徴とする請求項22,23または32〜36の何れかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−509480(P2007−509480A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536472(P2006−536472)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/NO2004/000321
【国際公開番号】WO2005/038967
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506008825)レボルト テクノロジー アクスイェ セルスカプ (2)
【Fターム(参考)】