説明

電極の製造方法、電極および有機エレクトロニクス素子

【課題】本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高い導電性と透明性を維持しつつ、出力効率に優れる有機エレクトロニクス素子を与える電極を、低コストで製造することができる電極の製造方法を提供することにある。
【解決手段】透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極の製造方法であって、(1)該パターン上に、該金属と配位結合能を有する基を有する配位化合物を含有する絶縁層用塗布液を供給する塗布液供給工程および、(2)該パターンの該金属パターン導電層が存在しない部分から、供給された該絶縁層用塗布液を除去する塗布液除去工程、を有する絶縁層作製工程を有することを特徴とする電極の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロニクス素子に用いられる電極に関し、特に有機エレクトロニクス素子に用いられる透明電極およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、電子ペーパー、タッチパネルなどに適用される透明電極としては、従来、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)に代表される透明導電性の金属酸化物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の透明フィルム基材や透明ガラス基材上に、真空蒸着法やスパッタリング法で真空成膜した透明導電膜が使用されてきた。
【0003】
しかし、デバイスの面積が大きくなると、ITO等の透明導電性の金属酸化物では導電性が不十分となり、発光効率や発電効率が低下するという課題があった。
【0004】
この課題に対して、ITO等の金属酸化物や導電性ポリマー等の透明導電層に、開口部を有する金属細線パターンを電力供給や集電のための補助電極として組み合わせる技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
しかしながら、こうした透明導電膜を有機エレクトロルミネッセンス(以降、有機ELとも記す)や有機太陽電池などの有機エレクトロニクス素子に利用した場合には、光電変換などを行う有機機能層が極めて薄いために、例えば対向する電極間が短絡したり、有機ELでは金属細線パターンの周りだけ明るく光ったり、金属細線パターン周辺から素子の輝度が徐々に低下したりするなど、金属細線パターンに起因すると思われる問題を有していた。
【0006】
このような問題を改良する技術として、例えば金属細線パターン部と開口部との段差や金属細線パターン上の凹凸の影響を少なくするために、平滑面に形成した金属細線のパターンを、接着層を設けた別の支持体に転写して形成された段差のない金属細線パターンを透明な導電層で覆った透明導電膜を作製する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、このような方法は、転写プロセスが必要であるため大面積化や製造ラインの高速化が難しく、製造コストが高いという問題があった。
【0008】
また、透明導電層の上に絶縁材料でカバーされた金属細線パターンを有する透明導電膜を含む有機ELデバイスが提案されている(特許文献4参照)。
【0009】
ここで用いられる透明導電膜は、透明導電層の上にインクジェット法や印刷法で金属細線パターンを形成した後、同じくインクジェット法や印刷法で金属細線パターンをカバーするように絶縁材料のパターンを形成することにより作製される。
【0010】
しかしながら、この方法では、絶縁材料で金属細線パターンを正確にカバーするためには非常に高い位置合わせ精度が必要であり、金属細線パターンと絶縁材料パターンがずれて電極間の短絡の原因となる場合がある、位置合わせ精度を補うために絶縁材料パターンの線幅を広くとると、開口部の透明導電層が被覆されてしまうため発光面積が小さくなり、発光強度の低下を招く、などの問題があった。
【0011】
そして、このような方法は位置合わせの要求精度の観点から、ロールツーロール生産プロセスなどを適用することは困難であり生産性に劣っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−302508号公報
【特許文献2】特開2009−87843号公報
【特許文献3】特開2009−146640号公報
【特許文献4】国際公開第10/038181号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は高い導電性と透明性を維持しつつ、出力効率に優れる有機エレクトロニクス素子を与える電極を、低コストで製造することができる電極の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記課題は、下記の手段により達成される。
【0015】
1.透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極の製造方法であって、(1)該パターン上に、該金属と配位結合能を有する基を有する配位化合物を含有する絶縁層用塗布液を供給する塗布液供給工程および、(2)該パターンの該金属パターン導電層が存在しない部分から、供給された該絶縁層用塗布液を除去する塗布液除去工程、を有する絶縁層作製工程を有することを特徴とする電極の製造方法。
【0016】
2.前記配位結合能を有する基が、S(硫黄)またはN(窒素)原子を含有する基であることを特徴とする前記1に記載の電極の製造方法。
【0017】
3.前記S(硫黄)またはN(窒素)原子を含有する基が、アミノ基、スルファニル基(−SH)またはスルファンジイル基(−S−)であることを特徴とする前記2に記載の電極の製造方法。
【0018】
4.透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極であって、前記1から3のいずれか1項に記載の電極の製造方法により製造され、該絶縁層が、該金属パターン導電層のみを覆う絶縁層であることを特徴とする電極。
【0019】
5.透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極であって、該絶縁層が、該金属パターン導電層のみを覆う絶縁層であることを特徴とする電極。
【0020】
6.前記1から3のいずれか1項に記載の電極の製造方法により製造された電極を具備することを特徴とする有機エレクトロニクス素子。
【0021】
7.前記有機エレクトロニクス素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする前記6に記載の有機エレクトロニクス素子。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記手段により、高い導電性と透明性を維持しつつ、出力効率に優れる有機エレクトロニクス素子を与える電極を、低コストで製造することができる電極の製造方法が提供できる。さらに本発明は、高い導電性と透明性を維持しつつ、ダークスポットなどの発生がなく出力の均一性が良好で発光効率に優れる有機EL素子を与える電極を、低コストで製造することができる電極の製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極の製造方法であって、(1)該パターン上に、該金属と配位結合能を有する基を有する配位化合物を含有する絶縁層用塗布液を供給する塗布液供給工程および、(2)該パターンの該金属パターン導電層が存在しない部分から、供給された該絶縁層用塗布液を除去する塗布液除去工程、を有する絶縁層作製工程を有することを特徴とする。
【0024】
本発明では特に、金属組成物により形成された、透明導電性層上の金属パターン導電層のパターンに、金属パターン導電層のみを覆う絶縁層を上記のようにして形成することで、発光強度の大きな有機エレクトロニクス素子を与える電極を、低コストで製造することができる。
【0025】
以下、本発明に係る電極の構成要素、その作製方法について詳細に説明する。
【0026】
〔透明な基材〕
本発明において「透明な」とは、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が70%以上であることをいう。
【0027】
本発明に係る基材の材料としては、透明な材料であれば特に制限なく、有機エレクトロニクス素子などに用いられ公知のものを使用することができる。
【0028】
本発明では、例えば、硬度、導電性層の形成のし易さ、軽量性と柔軟性、ロールツートール生産適性などの観点から、樹脂フィルムまたは可撓性を有する薄膜ガラスが好ましく用いられる。
【0029】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0030】
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0031】
樹脂フィルムを用いる場合、その厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
【0032】
本発明に係わる透明な基材として好ましく用いられる可撓性を有する薄膜ガラスとしては、例えば、厚さが120μm以下の薄膜ガラスを挙げることができ、より好ましくは、厚さが30μm〜100μmの薄膜ガラスが挙げられる。
【0033】
可撓性を有するとはガラス基材に傷や欠陥が無い状態で、曲率半径100mmの曲げが可能な場合をいう。
【0034】
これらのガラスの製造方法や種類に特に制限は無いが、一般に有機電子デバイスに好ましく用いられる無アルカリガラスが好ましく用いられる。
【0035】
薄膜ガラスは、水や酸素に対するバリア能を有し、また、樹脂フィルムに較べて耐熱温度が高い等のメリットを有しており、水や酸素による性能劣化の影響を受けやすい有機電子デバイスに適用する場合や、透明導電性層の製造プロセスや有機電子デバイス作製プロセスにおいて高温の熱処理を行う必要がある場合には、透明な基材として好ましく用いることができる。
【0036】
透明な基材には、接着性の良好な透明導電性層を設けるために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0037】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0038】
〔透明導電性層〕
透明導電性層は、透明な導電性層であり、「透明な」、は上述した意味と同義である。
【0039】
導電性層は、導電性材料を含有する層であり、導電性材料としては、ITO、金属酸化物、導電性ポリマー、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。
【0040】
導電性層は、これらの材料を単独で含有するか、もしくはこれらの材料を組み合わせて含有する。
【0041】
これらの材料の中では、ウェットコーティングが可能でロールツーロール生産適性や導電性層の平滑性などの面から、導電性ポリマーを含む透明導電性層が好ましく用いられる。
【0042】
また、発明に係わる透明導電性層は、下述する絶縁層を作製するための塗布液除去工程における塗布液の除去を良好に行うために、透明導電性層は、導電性ポリマーを含む架橋膜であることが好ましい。
【0043】
透明導電性層に用いられる導電性ポリマーとしては、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーが好ましく用いられる。
【0044】
こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0045】
《π共役系導電性高分子》
π共役系導電性高分子として、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。
【0046】
中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
【0047】
《π共役系導電性高分子前駆体モノマー》
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0048】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0049】
《ポリアニオン》
ポリアニオンは、アニオン基を複数有するオリゴマーもしくはポリマーである。
【0050】
ポリアニオンとしては、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体が好ましく、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものが好ましく用いられる。
【0051】
ポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0052】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0053】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0054】
また、化合物内にFを有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。
【0055】
これらのうち、スルホン酸を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上250℃以下の温度で1分以上の加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。
【0056】
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0057】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0058】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0059】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。
【0060】
具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0061】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0062】
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0063】
こうした導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。
【0064】
例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCLEVIOSシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PASS483095、560598として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることが出来る。
【0065】
第二のドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。
【0066】
前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などが挙げられる。前記ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0067】
《水溶性ポリマー》
本発明においては、透明導電性層に用いる導電性ポリマーに水溶性ポリマーを併用することで、透過率を低下させずに導電層の膜厚をアップすることが可能となり、基材表面に付着した異物や傷等を埋め込むことで基材に起因した電極間の短絡を抑制可能となり、好ましい実施態様である。
【0068】
水溶性ポリマーとは、水系溶媒(後述)に溶解、あるいは、分散できるポリマーでれば特に制限はなく、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等をあげることができる。具体的な化合物としては、例えば、ポリエステル系樹脂としてバイロナールMD1200、MD1400、MD1480(以上、東洋紡社製)をあげることができる。
【0069】
水溶性ポリマーとしては、後述する架橋剤と反応する基を有する化合物であれば、より強固な膜を形成することから、より好ましい。こうした水溶性ポリマーとしては、架橋剤と反応する基としては架橋剤によって異なるが、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基などをあげることができる。中でも、側鎖にヒドロキシ基を有することが最も好ましい。
【0070】
水溶性ポリマーの具体的な化合物としては、ポリビニルアルコールPVA−203、PVA−224、PVA−420(以上、クレハ社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−06、60SH−50、60SH−4000、90SH−100(以上、信越化学工業社製)、メチルセルロースSM−100(信越化学工業社製)、酢酸セルロースL−20、L−40、L−70(以上、ダイセル化学工業社製)、カルボキシメチルセルロースCMC−1160(ダイセル化学工業社製)、ヒドロキシエチルセルロースSP−200、SP−600(以上、ダイセル化学工業社製)、アクリル酸アルキル共重合体ジュリマーAT−210、AT−510(以上、東亞合成社製)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどをあげることができる。
【0071】
中でも、水溶性ポリマーが下記ポリマー(A)を一定量含む場合、第二ドーパントを利用しなくても、この化合物を利用することで導電性ポリマー含有層の導電性を向上させることが可能で、さらに、導電性ポリマーとの相溶性も良好で高い透明性と平滑性が達成できる。さらに、ポリアニオンがスルホ基を有する場合は、下記ポリマー(A)であれば、スルホ基が効果的に脱水触媒として働き、架橋剤などの追加の剤を利用しなくても、緻密な架橋膜を形成できることからより好ましい実施形態である。
【0072】
ポリマー(A):下記一般式1、一般式2および一般式3で表される重合単位(繰り返し単位)の少なくとも一つを重合単位として、下記の条件で有するポリマー。
【0073】
【化1】

【0074】
各式中、X〜Xはそれぞれ独立に、水素原子、またはメチル基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数が5以下のアルキレン基を表す。式中、Xは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数5以下のアルキレン基を表す。条件:ポリマー(A)の全重合単位に占める上記一般式1の重合単位の割合(モル%)をl、ポリマー(A)の全重合単位に占める上記一般式2の重合単位の割合(モル%)をm、ポリマー(A)の全重合単位に占める上記一般式3の重合単位の割合(モル%)をnとしたとき、30≦l+m+n≦100、0≦l≦100、0≦m≦100、0≦n≦100である。
【0075】
ポリマー(A)は、共重合成分の30mol%以上の成分が、上記一般式1〜一般式3のいずれか、あるいは、上記一般式1〜一般式3の成分の合計が30mol%以上ある共重合ポリマーである。また、一般式1〜一般式3の成分の合計が80mol%以上であることがより好ましい。さらに、上記一般式1〜一般式3いずれか単独のモノマーから形成されたホモポリマーであっても良く、また、好ましい実施形態である。
【0076】
ポリマー(A)においては、水系溶媒に可溶である範囲において、他のモノマー成分が共重合されていてもかまわないが、親水性の高いモノマー成分であることがより好ましい。
【0077】
また、ポリマー(A)は数平均分子量において、1000以下の含有量が0〜5%以下であることが好ましい。
【0078】
このポリマー(A)の数平均分子量において、1000以下の含有量が0〜5%以下とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、または低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。また、分取GPCは例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量をカットすることができる方法である。リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適性から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
【0079】
水溶性ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行なうことができる。分子量分布は(重量平均分子量/数平均分子量)の比で表すことができる。使用する溶媒は、水溶性バインダー樹脂が溶解すれば特に制限はなく、THF、DMF、CH2Cl2が好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
【0080】
ポリマー(A)の数平均分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
【0081】
ポリマー(A)の分子量分布は1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。
【0082】
数平均分子量1000以下の含有量はGPCにより得られた分布において、数平均分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。
【0083】
リビングラジカル重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。リビングラジカル重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0084】
《導電性ポリマーを含む透明導電性層の形成》
導電性ポリマー含む透明な導電層は、例えば、π共役系導電性高分子成分とポリアニオン成分とを含んで成る導電性ポリマーと、水溶性ポリマーと溶媒とを少なくとも含んでなる塗布液を塗布、乾燥することで形成することができる。
【0085】
溶媒としては、水系溶媒を好ましく用いることが出来る。ここで、水系溶媒とは、50質量%以上が水である溶媒を表す。もちろん、他の溶媒を含有しない純水であっても良い。水系溶媒の水以外の成分は、水に相溶する溶剤であれば特に制限はないが、アルコール系の溶媒を好ましく用いることができ、中でも、沸点が比較的水に近いイソプロピルアルコールを用いることが形成する膜の平滑性などには有利である。
【0086】
塗布法としては、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
【0087】
塗布した後、溶媒を揮発させるために適宜乾燥処理を施す。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電性ポリマー、水溶性ポリマーが損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。
【0088】
導電性ポリマー含む透明導電性層の乾燥膜厚は、透明導電性層の透過率と下述する金属パターン導電層のパターンの開口部の大きさから要求されるシート抵抗率を考慮して適宜選択できる。
【0089】
透明導電性層が架橋膜で構成される場合、前述のようにポリマー(A)に含まれるOH基が導電性ポリマーに含まれるポリアニオンの脱水触媒作用により強固な架橋膜を形成する構成は好ましい実施形態である。また、架橋剤を併用することで架橋膜を形成しても良い。架橋剤としては、特に制限はなく、公知の架橋剤を使用できるが、例えば、エポキシ系、カルボジイミド系、メラミン系、イソシアネート系、シクロカーボネート系、ヒドラジン系、ホルマリン系等の公知の架橋剤をあげることができる。また、反応促進するために触媒を併用することも好ましい。
【0090】
〔金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターン〕
本発明では、透明導電性層の上に、金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有する。金属パターン導電層のパターンとは、後述する金属組成物で形成され、開口部を有する模様である。開口部を有する模様とは、透明導電性層上に、金属組成物からなる金属パターン導電層が存在しない部分を有する模様である。
【0091】
パターンの形状としては、例えば開口部の形が三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形、(正)六角形、(正)八角形等多角形を組み合わせた幾何学図形からなるメッシュ状のパターンが挙げられる。また、複数の平行なラインからなるストライプ状に金属組成物が存在する形状でもよい。
【0092】
本発明のパターンの形状は、金属組成物が編み目状に連続しているネットワーク構造を有する形状であることが好ましい態様である。
【0093】
パターンの金属組成物の存在する部分の形の、線幅、線間隔、高さは特に制限はなく、目標とするシート抵抗やパターンの形成方法に応じて適宜選択できるが、例えば、線幅10〜200μm、線間隔が0.1から10mm、高さが0.1〜10μmとすることが好ましい。
【0094】
本発明に係るパターンは、透明導電性層を併用しない単独の構成で30Ω/□以下のシート抵抗であることが好ましく、さらに5Ω/□以下であることが好ましく、1Ω/□以下であることが最も好ましい。
【0095】
本発明に係るパターンは、面積の大きなデバイスにも対応するために、電極での電圧降下軽減のための補助電極として用いられる。
【0096】
(金属組成物)
金属組成物は、金属を含有する。金属組成物は金属のみからなってもよいし、必要に応じバインダー、金属を分散させるための分散剤などを含んでもよい。
【0097】
金属組成物に含有される金属としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。金属は合金でも混合物でも良い。
【0098】
(パターンの形成方法)
本発明に係るパターンを形成する方法に特に制限はなく、従来公知な方法を利用できる。
【0099】
例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、蒸着、スパッタ、めっき等の1種類或いは2種類以上の物理的或いは化学的形成手法を用いて金属層を形成した後、或いは金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いてエッチングすることにより、所望の金属細線パターンに加工できる。
【0100】
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、あるいは、インクジェット方式などの各種印刷法により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクを上記の各種印刷法で所望の形状に塗布した後メッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。
【0101】
こうした方法の中でも、金属微粒子を含有するインクを各種印刷法により所望の形状に印刷する方法は、処理プロセスが簡便で、材料ロスが少なく、ロールツーロール生産方式への適用も可能であるため安価に製造できることや、さらに、メッキや銀塩写真技術を応用した方法のような特殊な化学的な処理を必要としないため使用する薬品による汚染の懸念もないことから、本発明においては最も好ましい実施形態である。
【0102】
《金属微粒子含有インク》
金属微粒子含有インクは公知のものを利用できる。金属微粒子としては、例えば、銀、金、銅、パラジウム、白金、アルミニウム及びニッケルなどの金属からなる微粒子、または2種類以上の金属微粒子の混合物、これらの合金微粒子を挙げることができる。また、分散性を向上させるために、金属微粒子の表面に有機物などの被膜を有していてもよいし、インクに分散剤が含まれていてもよい。
【0103】
金属微粒子の粒径は1nm〜100μmであることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。さらに、1μm以下であるとパターン上の平滑性が改良され、対向電極との短絡を防止する上で有利であり、0.1μm以下であると低温の焼成でも金属微粒子間の融着が進み高い導電性が得られる。また、特開2008−091250号公報に記載のような0.1μm以下の粒子と0.1μm以上の粒子を併用することも好ましい。
【0104】
〔絶縁層の形成方法〕
本発明に係る絶縁層は、下記する絶縁層作製工程により形成された、金属と配位結合能を有する基を有する配位化合物を含有する層である。
【0105】
絶縁層作製工程は、(1)パターン上に、金属と配位結合能を有する基を有する配位化合物を含有する絶縁層用塗布液を供給する塗布液供給工程および、(2)パターンの金属組成物が存在しない部分から、供給された該絶縁層用塗布液を除去する塗布液除去工程を有する。
【0106】
(配位化合物)
本発明に係る配位化合物は、金属と配位結合能を有する基を有する。
【0107】
金属と配位結合能を有する基としては、S、N原子を有する基が好ましく挙げられる。
【0108】
即ち、配位化合物として、窒素、イオウの孤立電子対を利用して金属元素と配位的な結合を形成する基を含む有機物が好ましく挙げられる。
【0109】
金属と配位結合能を有する基としては、窒素原子を含む基としてアミノ基が挙げられ、イオウ原子を含む基としてスルファニル基(−SH)、スルフィド型のスルファンジイル基(−S−)が挙げられ、特にアミノ基が好ましい。
【0110】
アミノ基を有する化合物の代表として、アルキルアミンを挙げることができる。例えば、アルキルアミンとしては、金属元素と配位的な結合を形成した状態で熱的に安定なものが好適であり、アルキル鎖の末端にアミノ基を有し、アルキル基がC8以上のものが好ましく用いられる。金属元素と配位的な結合を形成する上では、第一級アミン型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級アミン型、ならびに、第三級アミン型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジアミン型、1,3−ジアミン型など、近接する二以上のアミノ基が結合に関与する化合物も利用可能である。またポリオキシアルキレンアミン型のエーテル型のオキシ基(−O−)を鎖中に含む、鎖状のアミン化合物を用いることもできる。その他、末端のアミノ基以外に、親水性の末端基、例えば、水酸基を有するヒドロキシアミン、例えば、エタノールアミンなどを利用することもできる。
【0111】
また、アミノ基をもつ化合物をホルムアルデヒドと縮合重合させてつくる樹脂、アミノ樹脂や尿素樹脂も好ましく利用できる。
【0112】
アミノ樹脂としては、一般に公知のもの、市販のものが使用できるが、重量平均分子量が500以上5万以下の範囲のものが好ましい。例えば、尿素、メラミン、グアナミン、アニリン、スルホンアミドなどのアミノ基にホルマリンを付加縮合した樹脂、あるいはエポキシ変性メラミン樹脂、フェノール変性メラミン樹脂、アクリル変性メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化尿素メラミン共縮合樹脂、ブチル化メラミン・グアナミン共縮合樹脂、アミノ・アルキド共縮合樹脂、アルキルエーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。好ましくはアルキルエーテル化メラミン樹脂である。アルキルエーテル化メラミン樹脂としては、メチルエーテル化メラミン樹脂、n−ブチルエーテル化メラミン樹脂、iso−ブチルエーテル化メラミン樹脂等があり、例えば大日本インキ化学社製ベッカミン(商品名)、あるいは三井化学社製ユーバン(商品名)がある。
【0113】
スルファニル基を含む化合物としては、アルカンチオールを挙げることができる。例えば、アルカンチオールとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、アルキル鎖の末端にスルファニル基(−SH)を有するものが用いられる。
【0114】
第一級チオール型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級チオール型、ならびに、第三級チオール型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジチオール型などの、二以上のスルファニル基(−SH)が結合に関与するものも、利用可能である。アルカンチオールの炭素鎖は1又は2個以上の分岐鎖を有していてもよいが、好ましくは直鎖のものが用いられる。また、アルカンチオールは1又は2以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エステル基、ニトリル基、アミド基、メルカプト基、ハロゲン基、フェロセニル基、ヒドロキノン基、ピリジル基、パラヒドロキシフェニル基などが挙げられる。
【0115】
−SH基を有する化合物としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸等の酸チオール類、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、アリルメルカプタン、ジメチルメルカプタン、メルカプトエタノール、アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミン等の脂肪族チオール類、シクロヘキシルチオール等の脂環式チオール類、チオフェノール等の芳香族チオール類、チオジエチレングリコール、チオジグリコール酸、エチレンチオグリコール等のチオグリコール類、チオグリコール酸誘導体、メルカプトプロピオン酸誘導体等も挙げることができる。
【0116】
スルフィド化合物としては特に限定されないが、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド、ジ−n−プロピルスルフィド、ジ−n−ブチルスルフィド、ジ−n−ヘキシルスルフィド、ジ−イソプロピルスルフィド等が挙げられる。
【0117】
(塗布液供給工程)
塗布液供給工程では、金属と配位結合能を有する基を有する配位化合物を含有する絶縁層用塗布液を、パターン上に供給する。
【0118】
絶縁層用塗布液は、上記の配位化合物を含有する溶媒であり、配位化合物を溶解できれば特に制限はないが、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、などの多価アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘプタン、ノルマルドデカンおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0119】
パターン上に絶縁層用塗布液を供給する方法としては、下記のような塗布方法が挙げられる。
【0120】
塗布法としては、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
【0121】
このような方法で、塗布あるいは浸漬して絶縁層用塗布を供給したのち、溶媒を揮発させてもよいし、そのまま、次ぎの塗布液除去工程に移行してもよい。
【0122】
(塗布液除去工程)
塗布液除去工程では、金属組成物が存在しない部分から、供給された絶縁層用塗布液を除去する。
【0123】
除去する方法としては、配位化合物が可溶な溶媒に基材ごと浸漬する方法、スプレーで配位化合物が可溶な溶媒を吹き付けて洗い流す方法などが利用できる。このような方法で、配位化合物は金属組成物からなる金属パターン導電層上に残り絶縁層を形成する。
【0124】
このような方法を行う際には、超音波を印加する超音波処理を同時に行うことが好ましい。
【0125】
また、上記の浸漬する方法、洗い流す方法などには、配位化合物が可溶な溶媒を含有する槽を連続して複数槽設けておき、一方から溶媒を流し、オーバーフローさせる多段洗浄処理も好ましく利用できる。
【0126】
除去する処理を行った後には、加熱する、温風を吹き付けるなどの乾燥処理を行うことが、好ましい。
【0127】
さらに、配位化合物として硬化性の化合物を用い、この化合物を用いて、加熱処理、エネルギー線照射処理などによって、絶縁膜を硬化させる方法も好ましく適用できる。硬化することで、経時で電子デバイス中に化合物が拡散してデバイスにダメージを与えるトラブルを抑えることができる。
【0128】
上記のような工程により、絶縁層が作製され、作製された絶縁層は金属組成物からなる金属パターン導電層のみを覆う層となる。
【0129】
このような絶縁層の作製方法により、パターンの金属組成物からなる金属パターン導電層の表面のみを選択的に被覆できるため、印刷などの従来法のような位置合わせが必要でなく、簡単な方法である。
【0130】
また、金属組成物からなる金属パターン導電層の近傍のパターンの開口部の有効面積を減ずることがないために、効率的に入射光を利用でき、効率の高い光電変換素子や、発光強度の高い発光素子などを提供することができる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0132】
(電極101の作製)
30mm×30mm×0.5mmのガラス基板の中心部に透明導電性層として10mm×30mmの帯状にITO(インジウムチンオキシド)を150nm成膜した。
【0133】
次に、インクジェット用銀ナノペーストNPS−JL(ハリマ化成社製)を、インクジェット記録ヘッドとして、圧力印加手段と電界印加手段とを有し、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載したインクジェットプリント装置に装填し、前記帯状のITOの中心部分の10mm×10mmに金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンとして、線幅50μm、線間隔950μm、高さ1μmの金属メッシュパターンを形成した。
【0134】
次に、下記絶縁層用塗布液1をスピンコーターで液の付き量が10g/mとなるように回転数を調整して塗布し、90℃、15秒の乾燥処理をした。
【0135】
次に、200mlの純水に浸漬し、毎秒1回、1cm上下に震動させて90秒間表面を洗い流し、引き続き、別の容器に準備した200mlの純水に30秒浸漬することにより絶縁層塗布液を除去した。さらに、120℃、30分の熱処理を施し、電極101を作製した。
【0136】
(絶縁層用塗布液1)
ベッカミンM−3(メラミン系樹脂;DIC社製) 2.5g
ベッカミンACX(触媒;大日本インキ化学工業製) 0.25g
純水 47.25g
イソプロピルアルコール 50g
(電極102の作製)
電極101の作製において、(絶縁層用塗布液1)をスピンコートする代わりに、基材ごと(絶縁層用塗布液1)に30秒浸漬した以外は同様にして電極102を作製した。
【0137】
(電極103)
電極101の作製において、透明導電性層をITOの代わりに下記透明導電性層2とした以外は同様にして電極103を作製した。
【0138】
(透明導電性層2)
透明導電層塗布液2を塗布幅1cm、ギャップ間隔100μmのアプリケータを用いて、乾燥時の膜厚が500nmとなるように塗布速度を調整して塗布した。
【0139】
90℃−30秒の乾燥後、引き続き、200℃−5分のキュア処理を施した。
【0140】
(透明導電層塗布液2)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製)
1.59g
ポリヒドロキシエチルアクリレート(合成例2、固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
「開始剤の合成」
合成例1
50ml三口フラスコに2−ブロモイソブチリルブロミド(7.3g、35mmol)とトリエチルアミン(2.48g、35mmol)及びTHF(20ml)を加え、アイスバスにより内温を0℃に保持した。この溶液内にオリゴエチレングリコール(10g、23mmol、エチレングリコールユニット7〜8、Laporte Specialties社製)の33%THF溶液30mlを滴下した。30分攪拌後、溶液を室温にし、更に4時間攪拌した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧除去後、残渣をジエチルエーテルに溶解し、分駅ロートに移した。水を加えエーテル層を3回洗浄後、エーテル層をMgSOにより乾燥させた。エーテルをロータリーエバポレーターにより減圧留去し、開始剤1を8.2g(収率73%)得た。
【0141】
「リビング重合(ATRP)による水溶性ポリマー樹脂の合成」
合成例2(ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)の合成)
開始剤1(500mg、1.02mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.64g、40mmol、東京化成社製)、50:50(v/v%)メタノール/水混合溶媒を5mlをシュレンク管に投入し、減圧下液体窒素に10分間シュレンク管を浸した。シュレンク管を液体窒素から出し、5分後に窒素置換を行なった。この操作を3回行なった後、窒素下で、ビピリジン(400mg、2.56mmol)、CuBr(147mg、1.02mmol)を加え、20℃で攪拌した。30分後、ろ紙とシリカを敷いた4cm桐山ロート上に反応溶液を滴下し、減圧で反応溶液を回収した。ロータリーエバポレーターにより溶媒を減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量13100、分子量分布1.17、数平均分子量<1000の含量0%、の水溶性バインダー樹脂1を2.60g(収率84%)得た。
【0142】
構造、分子量は各々1H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0143】
<GPC測定条件>
装置 :Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速 :1.0ml/min
温度 :40℃
(電極104の作製)
電極103において、(絶縁層用塗布液1)をスピンコートする代わりに、基材ごと(絶縁層用塗布液1)に30秒浸漬した以外は同様にして電極104を作製した。
【0144】
(電極105)
電極103において、(絶縁層用塗布液1)を、(絶縁層用塗布液2)とした以外は同様にして電極105を作製した。
【0145】
(絶縁層用塗布液2)
ベッカミンK−350(ポリアミド系樹脂;DIC社製) 5g
純水 45g
イソプロピルアルコール 50g
(電極106)
電極103において、(絶縁層用塗布液1)を、(絶縁層用塗布液3)とし、絶縁層塗布液除去溶媒をn−ブタノールとした以外は同様にして電極106を作製した。
【0146】
(絶縁層用塗布液3)
ユーバン228(n−ブチル化メラミン樹脂;三井化学社製) 1.7g
n−ブタノール 98.3g
(電極107)
電極103において、(絶縁層用塗布液1)を、(絶縁層用塗布液4)とし、絶縁層塗布液除去溶媒を酢酸エチルとした以外は同様にして電極107を作製した。
【0147】
(絶縁層用塗布液4)
コロネートHL(ポリイソシアネート;日本ポリウレタン社製) 1.3g
酢酸エチル 98.7g
(電極108)
電極103において、(絶縁層用塗布液1)を、(絶縁層用塗布液5)とし、絶縁層塗布液除去溶媒をイソプロピルアルコールとした以外は同様にして電極108を作製した。
【0148】
(絶縁層用塗布液5)
ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート) 1g
イソプロピルアルコール 99g
(電極109)
電極103において、(絶縁層用塗布液1)を、(絶縁層用塗布液6)とし、絶縁層塗布液除去溶媒をノルマルドデカンとした以外は同様にして電極109を作製した。
【0149】
(絶縁層用塗布液5)
ジ−n−ヘキシルスルフィド 1g
ノルマルドデカン 99g
(電極110)
電極103において、基材を厚さ100μmの薄膜ガラスとし、金属細線パターンを三ツ星ベルト社製銀ナノ粒子ペーストMDot−SLPを松尾産業株式会社製K303マルチコーターを用いてグラビア印刷した以外は、同様にして電極110を作製した。
【0150】
(電極111)
電極103において、透明導電層塗布液2を透明導電層塗布液3に変更した以外は同様にして電極111を作製した。
【0151】
(透明導電層塗布液3)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)
(H.C.Starck社製) 1.59g
バイロナールMD1200(東洋紡社製) 0.2g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
(電極112)
電極103において、透明導電層塗布液2を透明導電層塗布液4に変更した以外は同様にして電極112を作製した。
【0152】
(透明導電層塗布液4)
ITO微粒子分散液((株)三菱マテリアル電子化成社製EI、溶剤IPA、固形分20%)
24g
バイロナールMD1200(東洋紡社製) 0.6g
水 25.4g
(比較電極201)
電極101において、配位化合物による処理を行わなかったものを電極201とした。
【0153】
(比較電極202)
電極103において、配位化合物による処理を行わなかったものを電極202とした。
【0154】
(比較電極203)
電極103において、(絶縁層用塗布液1)を、(UV樹脂含有液1)とし、絶縁層塗布液除去溶媒をメチルエチルケトンとし、120℃、30分の熱処理をUV照射処理に変更した以外は同様にして電極203を作製した。
【0155】
(UV樹脂含有液1)
ペンタエリスリトールトリアクリレート 4質量部
ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤 0.2質量部
メチルエチルケトン 48質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
(電極204)
30mm×30mm×0.5mmのガラス基板の中心部に透明導電性層として10mm×30mmの帯状にITO(インジウムチンオキシド)を150nm成膜した。
【0156】
次に、インクジェット用銀ナノペーストNPS−JL(ハリマ化成社製)を、インクジェット記録ヘッドとして、圧力印加手段と電界印加手段とを有し、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載したインクジェットプリント装置に装填し、前記帯状のITOの中心部分の10mm×10mmに金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンとして、線幅50μm、線間隔950μm、高さ1μmの金属メッシュパターンを形成した。
【0157】
WO2010/038181を参考にして、形成した金属メッシュパターン上にUV硬化樹脂(レイキュアーOP4300 HG O.C.C、十条ケミカル社製)をスクリーン印刷法により印刷した後、UV処理することにより絶縁層を形成し、電極204を作製した。形成した金属メッシュパターン上に絶縁層がくるようにするための位置合わせの精度から絶縁層の幅は300μmとなるようにスクリーンマスクを準備して行った。
【0158】
(評価)
得られた電極上に、以下の各層を形成して有機EL素子を作製した。
【0159】
〈正孔注入層の形成〉
PEDOT−PSS CLEVIOS P AI 4083(固形分1.5%)(H.C.Starck社製)をギャップ間隙40μmのバーコーターを用いて、透明導電層と同様の領域にし、乾燥膜厚が30nmとなるように塗布した。さらに、ホットプレートで130℃、30分の熱処理を施して正孔注入層とした。
【0160】
〈正孔輸送層の形成〉
市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0161】
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で金属細線パターンのある領域に蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
【0162】
〈発光層の形成〉
次に、以下の手順で各発光層を設けた。
【0163】
形成した正孔輸送層上に、化合物2が13質量%、化合物3が3.7質量%の濃度になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で金属細線パターンのある領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
【0164】
次いで、化合物4が10質量%になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で金属細線パターンのある領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
【0165】
〈正孔ブロック層の形成〉
さらに、形成した発光層上、金属細線パターンのある領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
【0166】
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、形成した正孔阻止層上、金属細線パターンのある領域に、CsFを膜厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0167】
【化2】

【0168】
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、Alを5×10−4Paの真空下にて、図4の4−1の領域(1.0×1.4cm)に蒸着し、厚さ100nmのカソード電極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0169】
なお、有機EL素子は、蒸着後も大気下には出さずに窒素下で以降の評価を行った。
【0170】
(リーク電流)
得られた、各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して1000cd/mで発光させて、その時の電流値を求めた。発光しない素子については、電極201を使用した有機EL素子の1000cd/mで発光させた時と同じ電流密度となるように直流電圧を印加した。
【0171】
さらに印加電圧のプラスマイナスを反転させた電圧を印加して、その時の電流値を求めた。(発光時の電流の絶対値)/(反転時の電流の絶対値)の値をもとめてリーク電流のレベルを下記の指標で評価した。リーク電流のレベルは、絶縁層の絶縁機能の程度の目安であり、この値が小さいほど電極間の短絡が大きいことを示し、実用的には、△以上が良好な範囲である。
○ :1000以上
○△:100以上 1000未満
△:10以上 100未満
△×:2以上 10未満
×:2未満
(発光面積)
得られた、各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して1000cd/mで発光させた際、発光部の外周に囲まれた範囲の面積に対して、実際に発光している面積の比率を求め、発光の均一性を下記ランクで、評価し、発光効率の指標とした。○△以上が実用的には良好な範囲である。
○ :85%以上
○△:70%以上 85%未満
△ :55%以上 70%未満
△×:40%以上 55%未満
× :40%未満
結果を表1に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
表1から、塗布および塗布液除去という簡易な工程を含む、本発明の製造方法により作製した電極を用いた有機発光素子は、良好な発光効率を有する有機発光素子を与えることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極の製造方法であって、(1)該パターン上に、該金属と配位結合能を有する基を有する配位化合物を含有する絶縁層用塗布液を供給する塗布液供給工程および、(2)該パターンの該金属パターン導電層が存在しない部分から、供給された該絶縁層用塗布液を除去する塗布液除去工程、を有する絶縁層作製工程を有することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記配位結合能を有する基が、S(硫黄)またはN(窒素)原子を含有する基であることを特徴とする請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記S(硫黄)またはN(窒素)原子を含有する基が、アミノ基、スルファニル基(−SH)またはスルファンジイル基(−S−)であることを特徴とする請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極であって、請求項1から3のいずれか1項に記載の電極の製造方法により製造され、該絶縁層が、該金属パターン導電層のみを覆う絶縁層であることを特徴とする電極。
【請求項5】
透明な基材上に透明導電性層を有し、該透明導電性層上に、金属を含有する金属組成物からなる金属パターン導電層のパターンを有し、該パターンの該金属パターン導電層上に絶縁層を有する電極であって、該絶縁層が、該金属パターン導電層のみを覆う絶縁層であることを特徴とする電極。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電極の製造方法により製造された電極を具備することを特徴とする有機エレクトロニクス素子。
【請求項7】
前記有機エレクトロニクス素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロニクス素子。

【公開番号】特開2012−99340(P2012−99340A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245954(P2010−245954)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】