説明

電極シートの乾燥装置

【課題】乾燥効率を向上できる電極シートの乾燥装置を提供する。
【解決手段】電極シートSの搬送方向に沿って複数のノズル10が配置され、搬送される電極シートSの上方からノズル10によって熱風を吹き出し、電極シートSを乾燥させる電極シートSの乾燥装置100であって、ノズル10は、第一吹き出し口11と、第二吹き出し口12と、を具備し、第一吹き出し口11からは、電極シートSの搬送方向の上流側に向けて、熱風が吹き出され、第二吹き出し口12からは、電極シートSの搬送方向の下流側に向けて、熱風が吹き出され、第一吹き出し口11より吹き出される熱風の風量は、第二吹き出し口12より吹き出される熱風の風量よりも多い風量とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極シートの乾燥装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電極シートは、例えば二次電池を構成する帯状のシートであって、集電箔の表面に電極材を塗工したものである。電極材とは、ペースト状の材料であって、活物質及び結着材を有機溶剤(溶媒)等で分散したものである。電極シートの乾燥装置は、二次電池の製造工程において、電極シートに塗工された電極材を乾燥させる装置である(例えば、特許文献1)。
【0003】
出願人らは、従前、電極シートの乾燥装置について、以下に開示される乾燥装置200を発明した。ここで、以下に開示される乾燥装置200を従来の乾燥装置とする。
【0004】
図4を用いて、従来の乾燥装置200の作用について説明する。
なお、図4(A)は、乾燥装置200の側面を示す模式図であって、図4(B)は、乾燥装置200の平面を示す模式図である。図4では、電極シートSが搬送される方向を搬送方向とし、電極シートSは上流側から下流側へ搬送されるものとする。図4では、水平方向において、電極シートSが搬送される方向と直角をなす方向を幅方向とする。図4では、ノズル210の吹き出し口等からの矢印は熱風の吹き出される向きを示している。
【0005】
電極シートの乾燥装置200には、電極シートSの搬送方向に沿って複数のノズル210が配置されている。ノズル210は、搬送される電極シートSの上方から、搬送方向の上流側に向けて、熱風を吹き出し、電極シートSを乾燥させるものである。乾燥装置200では、あるノズル210から吹き出された熱風により電極材から蒸発した溶媒蒸気が、あるノズル210に対して搬送方向の上流側に隣接するノズル210の下流側(図4における空間P)に滞留する場合がある。溶媒蒸気が滞留した電極シートSの表面では、溶媒蒸気が飽和状態となるため、電極シートSの乾燥効率が低下することになる。
【0006】
そこで、電極シートの乾燥装置200では、搬送方向の上流側に隣接するノズル210の下流側に滞留する溶媒蒸気を除去し、電極シートSの乾燥効率を向上する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−133525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、乾燥効率を向上できる電極シートの乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、電極シートの搬送方向に沿って複数のノズルが配置され、搬送される電極シートの上方から前記ノズルによって熱風を吹き出し、前記電極シートを乾燥させる電極シートの乾燥装置であって、前記ノズルは、第一吹き出し口と、第二吹き出し口と、を具備し、前記第一吹き出し口からは、前記電極シートの搬送方向の上流側に向けて、熱風が吹き出され、前記第二吹き出し口からは、前記電極シートの搬送方向の下流側に向けて、熱風が吹き出され、前記第一吹き出し口より吹き出される熱風の風量は、前記第二吹き出し口より吹き出される熱風の風量よりも多い風量とされるものである。
【0011】
請求項2においては、請求項1に記載の電極シートの乾燥装置であって、前記第二吹き出し口からは、前記電極シートの搬送方向の下流側、かつ、前記電極シートの幅方向のそれぞれの端側に向けて、熱風が吹き出されるものである。
【0012】
請求項3においては、請求項1又は2に記載の電極シートの乾燥装置であって、前記第二吹き出し口から吹き出される熱風の風速は、前記第一吹き出し口から吹き出される熱風の風速よりも速い風速とされるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電極シートの乾燥装置によれば、乾燥効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態である乾燥装置の全体的な構成を示す模式図。
【図2】同じくノズルの構成を示す側面図、背面図及び平面図。
【図3】同じく乾燥装置の作用を示す模式図。
【図4】従来の乾燥装置の作用を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を用いて、乾燥装置100について説明する。
なお、図1乃至図3では、電極シートSが搬送される方向を搬送方向とし、電極シートSは上流側から下流側へ搬送されるものとする。
【0016】
乾燥装置100は、本発明の電極シートの乾燥装置の実施形態である。電極シートSは、例えば二次電池を構成するものであって、集電箔の表面に電極材を塗工したものである。電極材とは、ペースト状の材料であって、活物質及び結着材を有機溶剤(溶媒)等で分散したものである。
【0017】
乾燥装置100の周囲の構成について説明する。
乾燥装置100の周囲には、搬送装置110と、塗工装置120と、が配置されている。搬送装置110は、電極シートSを搬送方向の上流側から下流側に搬送する装置である。搬送装置110は、押し出しローラ111と、巻き取りローラ112と、可動ローラ115・・115・と、を具備している。押し出しローラ111、巻き取りローラ112及び可動ローラ115・・115・は、モータによって駆動する構成とされている。搬送装置110は、押し出しローラ111、巻き取りローラ112及び可動ローラ115・・115・を同期して回転させて、電極シートSを搬送方向に搬送する。
【0018】
塗工装置120は、電極シートSの表面に電極材を塗工する装置である。塗工装置120は、搬送方向において、乾燥装置100の上流側に配置されている。塗工装置120は、搬送される電極シートSの表面に近接するように配置されている。
【0019】
乾燥装置100は、塗工装置120によって塗工された電極材を乾燥させる装置である。より詳しくは、乾燥装置100は、電極シートSの表面に熱風を吹き付け、電極シートSの表面に塗工された電極材を乾燥させる装置である。
【0020】
乾燥装置100の構成について説明する。
乾燥装置100は、複数のノズル10・・10・と、ダクト20と、ブース50と、熱風発生装置30と、排気装置40と、を具備している。
【0021】
ノズル10・・10・は、搬送方向において、略均等な間隔を隔てて配置されている。ノズル10・・10・は、搬送される電極シートSの上方に、電極シートSの表面より所定距離だけ離間して配置されている。ノズル10・・10・は、ダクト20と連通されている。ノズル10・・10・は、ブース50の内部に配置されている。ノズル10について、詳細な説明は後述する。
【0022】
ダクト20は、熱風発生装置30とノズル10・・10・とを連通するものである。ダクト20は、ブースの内部に配置され、ノズル10・・10・の上方に配置されている。
【0023】
熱風発生装置30は、電極シートSを乾燥させるための熱風を発生させる装置である。熱風発生装置30は、ブース50の外側に配置されている。熱風発生装置30は、ダクト20と連通されている。熱風発生装置30は、ファンによる風をヒータによって昇温して熱風とし、ノズル10・・10・に供給している。
【0024】
排気装置40は、負圧によって、飽和した溶媒蒸気をブース50内から排気する装置である。排気装置40は、排気口41と、負圧発生装置42と、を具備している。排気口41は、電極シートSの幅方向の両側にて(図3参照)、電極シートSの搬送方向に沿って、電極シートSの下方に配置されている。排気口41は、ブース50の内部に配置されている。負圧発生装置42は、ブースの外部に配置されている。
【0025】
ブース50は、略密閉された箱状のものである。ブース50の内部には、ノズル10・・10・と、ダクト20と、排気口41と、可動ローラ115・・115・と、が配置されている。
【0026】
乾燥装置100の作用について説明する。
熱風発生装置30によって発生した熱風は、ダクト20を介して、ノズル10・・10・に供給される。ノズル10・・10・に供給された熱風は、ブース50内を通過する電極シートSの表面に吹きつけられる。ノズル10・・10・によって吹きつけられた熱風は、塗工装置120によって塗工された電極材を乾燥させる。電極材の乾燥によって飽和した溶媒蒸気は、排気口41によって排気される。
【0027】
図2を用いて、ノズル10について説明する。
なお、図2(A)は、ノズル10の側面図を示し、図2(B)は、ノズル10の背面図(搬送方向の下流側を向く面)を示し、図2(C)は、ノズル10の平面図を示している。図2では、水平方向において、電極シートSが搬送される方向と直角をなす方向を幅方向とする。
【0028】
ノズル10は、搬送される電極シートSの表面に向けて上方から熱風を吹きつけるものである。ノズル10は、第一吹き出し口11と、第二吹き出し口12と、吹き出し通路13と、本体15と、底面18と、を具備している。
【0029】
本体15は、ダクト20から供給される熱風を第一吹き出し口11から吹き出す前に一旦滞留させるものである。本体15は、箱形状の略直方体に構成されている。本体15は、ダクト20と連通されている。本体15は、ダクト20と連通している部分、第一吹き出し口11及び第二吹き出し口以外は密閉されている。本体15の幅方向の長さは、電極シートSの幅方向の長さと略同じ長さ、あるいは、電極シートSの幅方向の長さより十分長い長さとされている。
【0030】
第一吹き出し口11は、本体15によって一旦滞留した熱風を電極シートSの上流側に向けて吹き出すものである。第一吹き出し口11は、本体15の底面18において、搬送方向の下流側端部に形成されている。第一吹き出し口11は、幅方向を長手方向とするスリット状に形成されている。第一吹き出し口11のスリット幅T(搬送方向の長さ)は、所定幅T1以上とされている。所定幅T1は、第一吹き出し口11から吹き出される熱風の流速が、熱風により電極シートSがばたつくことがない程度の流速となるだけの幅である。本実施形態では、スリット幅Tは、3mm以上とされている。
【0031】
吹き出し通路13は、本体15から第一吹き出し口11まで、熱風を導く通路である。吹き出し通路13は、本体15内における搬送方向の下流側に形成されている。吹き出し通路13は、搬送方向の上流側かつ下方に傾斜する向きに形成されている。吹き出し通路13の通路長さLは、所定長さL1以上とされている。本実施形態では、通路長さLは、10mm以上とされている。
【0032】
底面18は、本体15の底部分である。底面18は、第一吹き出し口11から吹き出された熱風が直接触れる部分である。底面18は、第一吹き出し口11のスリット幅Tを除く搬送方向の長さである平行長さWが所定長さW1以上である平坦な面によって形成されている。所定長さW1は、第一吹き出し口11から吹き出された熱風を、底面18と電極シートSとの間で整流することができる程度の長さである。本実施形態では、所定長さW1は、50mm以上とされている。
【0033】
第二吹き出し口12は、本体15によって一旦滞留した熱風を搬送方向の下流側に向けて吹き出すものである。第二吹き出し口12は、本体15の背面(搬送方向の下流側を向く面)において、複数個の円形状の穴が形成されることで構成されている。第二吹き出し口12は、幅方向においては、中央部からそれぞれの端側に向かうほど、穴径が大きくなるように形成されている。第二吹き出し口12は、上下方向においては、下側から上側に向かうほど、穴径が大きくなるように形成されている。
【0034】
第二吹き出し口12の開口面積は、第一吹き出し口11の開口面積と比較して十分に小さいものとされている。なお、第二吹き出し口12の開口面積とは、構成される複数個の円形状の穴の総面積が該当する面積である。
【0035】
図3を用いて、ノズル10の作用について説明する。
ノズル10の作用とは、すなわち乾燥装置100による熱風の流れである。
なお、図3(A)は、乾燥装置100の側面を示す模式図であって、図3(B)は、乾燥装置100の平面を示す模式図である。第一吹き出し口11又は第二吹き出し口12等からの矢印は、熱風の吹き出される向きを示している。
【0036】
第一吹き出し口11から吹き出された熱風を主熱風とする(図3で示す実線の矢印)。
本体15内に滞留した熱風は、吹き出し通路13によって、搬送方向の上流側かつ下方に傾斜する向きに導かれる。吹き出し通路13によって導かれた主熱風は、第一吹き出し口11によって、搬送方向の上流側かつ下方に傾斜する向きに吹き出される。第一吹き出し口11から吹き出された主熱風は、第一吹き出し口11よりも搬送方向の上流側に位置する底面18によって整流される。底面18によって整流された主熱風は、そのまま搬送方向の上流側に流れる。
【0037】
第二吹き出し口12から吹き出された熱風を副熱風とする(図3で示す一点鎖線の矢印)。本体15内に滞留した熱風は、第二吹き出し口12によって、副熱風として搬送方向の下流側に吹き出される。第二吹き出し口12の開口面積は、第一吹き出し口11の開口面積と比較して十分に小さいものとされている。そのため、副熱風は、主熱風と比較して速い流速で流れることになる。同時に、主熱風は、副熱風と比較して多くの風量が流れることになる。
【0038】
第二吹き出し口12は、幅方向においては、中央部からそれぞれの端側に向かうほど、穴径が大きくなるように構成されている。そのため、第二吹き出し口12は、幅方向においては、それぞれの端側に向かうほど、開口面積が大きくなる。幅方向の端側に向かうほど開口面積が大きくなることによって、幅方向における端側の副熱風は、中央部と比較して多くの風量が流れることになる。同時に、幅方向における中央部の副熱風は、端側と比較して少ない風量が流れることになる。そのため、副熱風は、搬送方向の下流側、かつ、幅方向外側に向かって流れることになる。
【0039】
第二吹き出し口12は、上下方向においては、下側から上側に向かうほど、穴径が大きくなるように構成されている。そのため、第二吹き出し口12は、上下方向においては、上側に向かうほど、開口面積が大きくなる。上下方向の上側に向かうほど開口面積が大きくなることによって、上下方向における下側の副熱風は、上側と比較して速い流速で流れることになる。
【0040】
乾燥装置100では、ノズル10から吹き出された主熱風によって電極材から溶媒蒸気が蒸発する。蒸発した溶媒蒸気の一部は、当該溶媒蒸気を蒸発させた主熱風が吹き出されたノズル10の上流側に隣接するノズル10における本体15の背面により堰き止められて、当該本体15の下流側近傍に滞留する場合がある。乾燥装置100では、ノズル10から副熱風が搬送方向の下流側に吹き出されることによって、滞留している溶媒蒸気が吹き飛ばされる。このとき、副熱風が主熱風と比較して速い流速で流れるため、滞留している溶媒蒸気が効率的に吹き飛ばされることになる。一方、主熱風が副熱風と比較して多くの風量が流れるため、電極シートSの乾燥効率が低下することはない。
【0041】
乾燥装置100では、ノズル10から副熱風が搬送方向の下流側に吹き出されることによって、滞留している溶媒蒸気が吹き飛ばされる。このとき、副熱風が幅方向の端側に向かって流れるため、滞留している溶媒蒸気が幅方向のそれぞれの端側に向かって流されることになる。溶媒蒸気が端側に向かって流されるため、溶媒蒸気が排気口41に向けて流されることになる。
【0042】
乾燥装置100では、ノズル10から副熱風が搬送方向の下流側に吹き出されることによって、滞留している溶媒蒸気が吹き飛ばされる。滞留している溶媒蒸気は、周囲の空気よりも重いため、下方(電極シートSの表面)に滞留している。このとき、上下方向にて下側の副熱風が速い流速で流れるため、電極シートSの表面に滞留している溶媒蒸気が重点的に吹き飛ばされることになる。
【0043】
乾燥装置100の効果について説明する。
乾燥装置100によれば、乾燥効率を向上できる。すなわち、乾燥装置100では、副熱風によって滞留している溶媒蒸気が吹き飛ばされるため、電極シートSの表面の飽和した溶媒蒸気を除去できる。電極シートSの表面にて溶媒蒸気が滞留することがないため、電極シートSの乾燥効率が低下することを防止できる。このとき、滞留した溶媒蒸気が排気口41に向けて流されるため、確実に電極シートSの表面の飽和した溶媒蒸気を除去できる。
【符号の説明】
【0044】
10 ノズル
11 第一吹き出し口
12 第二吹き出し口
40 排気装置
50 ブース
100 乾燥装置
110 搬送装置
120 塗工装置
S 電極シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極シートの搬送方向に沿って複数のノズルが配置され、搬送される電極シートの上方から前記ノズルによって熱風を吹き出し、前記電極シートを乾燥させる電極シートの乾燥装置であって、
前記ノズルは、第一吹き出し口と、第二吹き出し口と、を具備し、
前記第一吹き出し口からは、前記電極シートの搬送方向の上流側に向けて、熱風が吹き出され、
前記第二吹き出し口からは、前記電極シートの搬送方向の下流側に向けて、熱風が吹き出され、
前記第一吹き出し口より吹き出される熱風の風量は、前記第二吹き出し口より吹き出される熱風の風量よりも多い風量とされる、
電極シートの乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極シートの乾燥装置であって、
前記第二吹き出し口からは、前記電極シートの搬送方向の下流側、かつ、前記電極シートの幅方向のそれぞれの端側に向けて、熱風が吹き出される、
電極シートの乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極シートの乾燥装置であって、
前記第二吹き出し口から吹き出される熱風の風速は、前記第一吹き出し口から吹き出される熱風の風速よりも速い風速とされる、
電極シートの乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108702(P2013−108702A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255586(P2011−255586)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】