説明

電極材料用添加材、電極材料、電極、電気二重層キャパシタ、および電極材料用添加材の製造方法

【課題】電気二重層キャパシタ用電極材料の単位質量当りの静電容量を大きくすることができ、かつ、同キャパシタの内部抵抗を低減させることができる電極材料用添加材、この添加材を含む電極材料、この電極材料を使用して製造された電気二重層キャパシタ用電極および電気二重層キャパシタの提供。
【解決手段】カーボンブラックをアルカリ賦活して得られ、かつ、比表面積が750〜1100m2/g、酸性表面官能基量が0.26meq/g以上であるものを電極材料用添加材として使用する。この添加材における比表面積は、820m2/g以上が好ましく、酸性表面官能基は、0.32meq/g以上、0.35meq/g以下が好ましい。その添加材の使用量は、活性炭100質量部に対して25質量部以下であると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭と混合して電気二重層キャパシタの電極材料に使用される添加材、当該添加材を含む電気二重層キャパシタ用電極材料、この電極材料を使用して製造された電気二重層キャパシタ用電極および電気二重層キャパシタ、並びに、電極材料用添加材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、電解液と電極との界面で電気二重層が生じることを蓄電原理とする大容量キャパシタとして知られている。電気二重層キャパシタを情報機器のメモリーバックアップ、モーター駆動用等の汎用電源にするためには、その静電容量および内部抵抗を一層良化させることが望まれる。これに対応するために、例えば下記特許文献1〜3にも開示されている通り、電極材料や電極製法などの電極に関する技術開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、電気二重層キャパシタの電極間の抵抗の低減、および静電容量の向上のための技術として、活性炭粉末、この活性炭粉末よりも小さい粒子径の導電性付与材(カーボンブラック)、および樹脂を溶解または分散した少量の水溶性バインダー溶液を混練する工程と、さらにこの混練品に分散溶媒を少しずつ添加して所定粘度のペーストを調整する工程と、このペーストを集電金属箔に塗布して分散溶媒を除去する工程とからなる電気二重層キャパシタ用電極の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、内部抵抗が低く、かつ、静電容量が大きい電気二重層キャパシタを実現するためには、活性炭と熱処理または賦活処理して得られる炭素質物質とを含有するものを電極材料として使用すれば良いことが開示されている。その賦活処理される対象は、フラーレン含有煤、又は、フラーレン含有煤から溶媒を用いてフラーレンの少なくとも一部を実質的に抽出して得られる抽出残渣物であり、薬品賦活、ガス賦活等を賦活処理として選択可能であると記載されている。そして、ガス賦活処理または熱処理で得られた炭素質物質が具体的な炭素質物質として開示されている。
【0005】
特許文献3には、静電容量特性を向上させるために、異なる平均粒子径の炭素質導電性粉末を混合した電極材料を使用することが開示されている。活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが前記炭素質導電性粉末として開示されており、当該炭素質導電性粉末をアルカリ処理すれば、その表面活性を増加可能であるとされている。なお、炭素質導電性粉末をアルカリ処理した具体例も、そのアルカリ処理のための条件も特許文献3には開示されていない。
【特許文献1】特開2002−222741号公報
【特許文献2】特開2006−294817号公報
【特許文献3】特開2003−272961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、電気二重層キャパシタの静電容量および内部抵抗を向上させる技術提供が望まれている。本発明は、そのような事情に鑑み、電気二重層キャパシタ用電極材料の単位質量当りの静電容量を大きくすることができ、かつ、同キャパシタの内部抵抗を低減させることができる電極材料用添加材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、比表面積および酸性表面官能基量が所定範囲であり、かつ、カーボンブラックをアルカリ賦活して得られる炭素材を電極材料用添加材として使用すれば、電気二重層キャパシタにおける質量基準容量(「質量基準容量」とは、本発明に係る添加材を含有する所定質量の電極材料が発現する静電容量である。)が向上すると共に、同キャパシタの内部抵抗を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、電気二重層キャパシタの電極材料に使用される本発明に係る電極材料用添加材は、カーボンブラックをアルカリ賦活して得られ、かつ、比表面積が750〜1100m2/g、酸性表面官能基量が0.26meq/g以上であることを特徴とする。
【0009】
上記添加材における酸性表面官能基の上限量は、製造コストの観点から、0.35meq/gであると好ましい。また、当該添加材における比表面積と酸性表面官能基の下限量は、電気二重層キャパシタの質量基準容量だけではなく、体積基準容量をも向上させるには、比表面積が820m2/g、酸性表面官能基が0.32meq/gであると良い。ここで、「体積基準容量」とは、本発明に係る添加材を含有する所定体積の電極材料が発現する静電容量である。
【0010】
本発明に係る電気二重層キャパシタ用電極材料は、本発明に係る電極材料用添加材と、活性炭とを含有することを特徴とする。この電極材料における活性炭は、アルカリ賦活されたカーボンブラック、比表面積が750〜1100m2/g、および酸性表面官能基量が0.26meq/g以上のいずれかを欠くものであり、本発明に係る添加材と明確に区別される。本発明に係る電極材料における添加材の含有量は、特に限定されないが、活性炭100質量部に対して25質量部以下であると良い。
【0011】
本発明に係る電気二重層キャパシタ用電極材料を使用すれば、電気二重層キャパシタ用電極を製造可能であり、当該電極を使用して電気二重層キャパシタを製造することができる。
【0012】
また、本発明に係る電極材料用添加材の製造方法は、上記本発明に係る電極材料用添加材の製造方法であって、カーボンブラックをアルカリ賦活する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電極材料用添加材は、比表面積および酸性表面官能基量が所定範囲であり、かつ、カーボンブラックをアルカリ賦活して得られるものなので、質量基準容量の向上と内部抵抗の低減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る添加材について、以下に詳述する。なお、以下においては、「電気二重層キャパシタ」を単に「キャパシタ」と称し、「電気二重層キャパシタ用電極」を単に「電極」と称し、「電気二重層キャパシタ用電極材料」を単に「電極材料」と称することがある。
【0015】
本発明の添加材は、カーボンブラックをアルカリ賦活されたものであり、電極材料の添加材として使用される。そして、この添加材の比表面積と酸性表面官能基量は、所定範囲値である。
【0016】
上記添加材の比表面積は、750m2/g未満であると質量基準容量が小さくなるので好ましくなく、750m2/g以上である。好ましくは、体積基準容量も向上する820m2/g以上である。一方で、比表面積が大きなほど質量基準容量も大きくなるが、添加材の製造コストが高くなってしまうので、比表面積は、1100m2/g以下であると良い。ここで、比表面積は、窒素吸着等温線を測定するBET法により求められる。
【0017】
本発明に係る添加材の酸性表面官能基量は、0.26〜0.35meq/gである。0.26meq/g未満であると、質量基準容量を向上させることができないので好ましくなく、0.35meq/gを超えると、添加材が高価格となって好ましくない。好ましい酸性表面官能基量は、体積基準容量をも向上させることができる0.32〜0.35meq/gである。
【0018】
ところで、賦活処理により得られる従来公知の活性炭には、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボニル基等が表面官能基として存在することと、賦活方法およびその方法の条件により、表面官能基の種類および表面官能基量が変動することが知られている。これと同様に、カーボンブラックを賦活処理して得られる炭素材も、その賦活処理の種類またはその条件が異なると表面官能基の種類および量が変動する。本発明のカーボンブラックをアルカリ処理で得られる炭素材(添加材)では、酸性表面官能基がキャパシタの静電容量と内部抵抗に影響を及ぼすと考えられる。そのため、本発明の添加材の酸性表面官能基量を、0.26meq/g以上に設定している。
【0019】
酸性表面官能基量を求めるには、Boehm法(文献「H.P.Boehm, Adzan. Catal, 16, 179(1966)」にその詳細が記載されている)が使用される。つまり、添加材2gが収容された共栓付き三角フラスコ(容量100ml)に投入後、そのフラスコ内に1/10規定のナトリウムエトキシド50mlを加え、30分間の振とう後30分間放置した。この振とうと放置を3回繰り返した。次いで、更に24時間放置し、ろ過分離して得られた濾液25mlを1/10規定の塩酸で中和滴定した。また、ブランクテストも行った。そして、次式により算出される値が酸性表面官能基量である。
【0020】
【数1】

【0021】
添加材の平均粒子径は、特に限定されないが、通常3〜20μmである。
【0022】
上述の通り、カーボンブラックのアルカリ賦活により、本発明の添加材が製造される。
【0023】
添加材の原料になるカーボンブラックとは、天然ガス、液状炭化水素等を不完全燃焼または熱分解させて得られる非晶質炭素含有率95質量%以上のナノ粒子である。ファーネス法、衝撃法等の製法によりカーボンブラックが得られることが知られており、物理的・化学的特性については、例えば、講談社が発行している「カーボンブラック(著者:J.B.Donnet,A.Voet、訳者:高橋浩,山下晋三,堤和男、発行年月:1978年5月)」で明らかにされている。
【0024】
カーボンブラックには結晶が含まれている場合があるが、結晶が多く含まれていると、比表面積750m2/g以上、かつ、酸性表面官能基量0.26meq/g以上の添加材を得ることはできないか又は困難になる。そのため、XRDによるc軸方向の結晶厚み(Lc)を、カーボンブラックの選定の指標とすれば良く、Lcが2.5nm以下であると良く、2.0nm以下が好ましく、1.5nm以下が更に好ましい。
【0025】
また、カーボンブラックの比表面積は、特に限定されないが、70〜120m2/gであると良い。この比表面積は、窒素吸着等温線を測定するBET法により求められる。
【0026】
原料として使用できるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラックが挙げられる。上記Lc範囲、比表面積範囲を満たすカーボンブラックは、市販されている。例えば、東海カーボン社製カーボンブラック「トーカブラック♯7360SB」がある。
【0027】
添加材を製造するためのアルカリ賦活とは、アルカリ金属化合物とカーボンブラックとの混合物を加熱する処理である。ここで使用するアルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩;が挙げられる。これらの一種または二種以上を選択すれば良く、水酸化カリウムを選択することが好ましい。そして、アルカリ金属化合物の使用量は、当該量が多いほど添加材の比表面積が大きくなると共に、酸性表面官能基量も増加する。カーボンブラックの種別にもよるが、(アルカリ金属化合物の質量)/(カーボンブラックの質量)が概ね2.8以上であると良く、3.7以上が好ましい。一方、アルカリ金属化合物の使用量の上限が限定されることはない。但し、使用するアルカリ金属化合物の量が多くなれば製造コストが高くなるから、(アルカリ金属の質量)/(カーボンブラックの質量)が7.0以下であることが好ましく、6.0以下がより好ましく、5.5以下が更に好ましい。
【0028】
なお、アルカリ賦活においては、アルカリ金属化合物を溶融容易とするために、カーボンブラックおよびアルカリ金属化合物と共に水を混合しても良い。このときの水の混合量は、アルカリ金属化合物の質量の0.05〜10倍であると良い。
【0029】
アルカリ賦活における加熱では、そのときの加熱温度が400〜900℃程度であると良く、通常、800℃程度である。加熱温度が低いと比表面積が小さくなる傾向があり、加熱温度が高いと比表面積が大きくなる傾向がある。なお、アルカリ賦活における加熱は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下;または減圧下(真空中);等で行われる。
【0030】
アルカリ賦活で得られた添加材の表面には、カーボンブラックおよび/またはアルカリ金属化合物に由来する不純物が吸着している場合がある。その不純物は金属元素(鉄、銅、ニッケル、アルカリ金属等)および金属元素化合物(以下、「金属元素および金属元素化合物」を「金属元素等」という)であり、当該金属元素等が多量に吸着した添加材を使用して製造されたキャパシタは、その耐久性低下(キャパシタ寿命の短命化)を誘発することがある。そのため、通常、得られた添加材を洗浄する。
【0031】
公知の洗浄方法により、添加材から金属元素等を除去できる。その公知の洗浄方法としては、例えば、(1)水のみを洗浄液に使用し、添加材を洗浄する方法、(2)塩酸、硫酸等の強酸を一種または二種以上混合した強酸水溶液で添加材を洗浄し、更に水で添加材を洗浄する方法、が挙げられる。
【0032】
添加材の平均粒子径を調整する必要がある場合、適宜に選択された公知の粒子径調整手段で添加材の平均粒子径を調整する。例えば、ボールミル、振動ミル、ジェットミル等の粉砕機を使用して添加材の平均粒子径を調整すると良い。
【0033】
上記添加材は、電極材料の主要材料となる活性炭と混合して使用される。活性炭に対する添加材の混合量が多くなるほど、質量基準容量および内部抵抗が良化する。添加材の量は、通常、活性炭100質量部に対して25質量部以下である。
【0034】
上記活性炭は、その比表面積が1100m2/gを超えるものであると良い。活性炭の比表面積の下限は、1500m2/gであると好ましく、2000m2/gであるとより好ましく、2100m2/gであるとより好ましい。一方、その上限値は、3000m2/gであると良く、2500m2/gであっても良い。この比表面積を求めるには、窒素吸着等温線を測定するBET法が用いられる。平均細孔径、平均粒子径等の比表面積以外の活性炭の物理的特性は、特に限定されない。
【0035】
上記活性炭を製造するには、公知の活性炭原料である炭素質物質を賦活処理すれば良い。
【0036】
活性炭を製造するための炭素質物質は、特に限定されない。例えば、木材、おが屑、木炭、ヤシガラ、セルロース系繊維、合成樹脂(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂)等の難黒鉛化性炭素;ピッチ(例えば、メソフェーズピッチ)、コークス(例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、フリュードコークス)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、PAN等の易黒鉛化性炭素;およびこれらの混合物が挙げられる。必要に応じて、賦活処理前に炭化処理が行われた炭素質物質が活性炭原料として使用される。ここで、炭化処理は、高温(例えば、900〜1000℃)の窒素等の不活性ガス中に炭素質物質を置き、炭素質物質の炭化を進行させる処理である。
【0037】
活性炭を製造するための賦活処理とは、炭素質物質の表面に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。本発明に係る添加材の製造方法と異なり、(1)ガスとの共存下で炭素質物質を加熱して活性炭を製造するガス賦活、および(2)賦活材と炭素質物質との混合物を加熱して活性炭を製造する薬剤賦活のいずれの処理をも、賦活処理として使用できる。
【0038】
ガス賦活を選択した場合には、700〜1000℃の温度雰囲気で、水蒸気、空気、炭酸ガス、燃焼ガス等から選択される一種または二種以上の酸化性ガスと、炭素質物質とを接触させると良い。この接触で、炭素質物質の細孔径、比表面積、および細孔容積が大きくなり、活性炭が製造される。
【0039】
ガス賦活に比して大きな比表面積の活性炭を容易に製造できる薬剤賦活を選択することは好適である。この薬剤賦活は、上記の通り、賦活剤と炭素質物質との混合物を加熱して行なわれる。この場合、リン酸、硫酸、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫化カリウム、およびアルカリ金属化合物等の公知の賦活剤から選択した一種または二種以上を使用すると良い。活性炭製造のための賦活処理を容易に行える賦活剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属の硫酸塩;が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がより好ましく、水酸化カリウムが更に好ましい。賦活剤の使用量は、例えばアルカリ金属の水酸化物を賦活剤として使用する場合、炭素質物質の質量の0.5〜10倍であると良い。この使用量が多量である程、比表面積および平均細孔径が大きな活性炭を製造でき、少量である程、活性炭の比表面積および平均細孔径が小さな活性炭を製造できる。
【0040】
なお、活性炭製造のための薬剤賦活においても、賦活剤を溶融容易とするために、炭素質物質および賦活剤と共に水を混合しても良い。このときの水の混合量は、アルカリ金属の水酸化物を賦活剤に使用する場合、賦活剤の質量の0.05〜10倍であると良い。
【0041】
薬剤賦活における加熱では、そのときの加熱温度が400〜900℃程度であると良い。加熱温度が低いと、比表面積および平均細孔径が小さくなる傾向があり、加熱温度が高いと、比表面積および平均細孔径が大きくなる傾向がある。なお、薬剤賦活における加熱は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下;または減圧下(真空中);等で行われる。
【0042】
本発明に係る添加材と同様、賦活処理により得られた活性炭に対して、その表面の金属元素等を除去するための洗浄を行うと良い。また、活性炭の平均粒子径を調整する必要がある場合には、公知の粒子径調整手段を使用すると良い。公知の粉砕機(例えば、ボールミル、振動ミル、ジェットミル)で平均粒子径を小さくする調整が可能である。例えば、活性炭の平均粒子径を6μm以下に調整する。
【0043】
本発明の添加材と活性炭とを混合した電極材料を使用し、電気二重層キャパシタ用電極を製造できる。この電極の製造においては、公知の製法を使用すると良い。例えば、本発明に係る添加材と活性炭との混合物と、導電性付与材と、バインダー溶液とを混練し、溶媒を添加してペーストを調製し、このペーストをアルミ箔等の集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去することにより、電極を製造することが可能である。
【0044】
電極を製造する際に使用するバインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂が挙げられる。また、導電性付与材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素系導電性付与材;酸化ルテニウム等の金属酸化物系導電性付与材;が挙げられる。なお、本発明に係る添加材の使用によりキャパシタの内部抵抗の低減を図れるので、導電性付与材の使用は、前記内部抵抗の一層の向上を図ることができる場合にのみ使用することが好ましい。
【0045】
コイン型、巻回型、積層型等の電気二重層キャパシタが知られており、当該キャパシタは、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータを配置した構造が一般的である。
【0046】
電解液には、分解電圧が高い非水系極性溶媒を主溶媒とする非水系電解的を選択することが好ましい。非水系電解液の溶媒には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート等の非水系極性溶媒から選択された一種または二種以上を主溶媒にすることが好ましい。また、電解液の電解質としては、アミジンまたは第四級アンモニウムと、過塩素酸、四フッ化ホウ素または六フッ化リンとの塩等がある。また、セパレータを例示すれば、セルロース、ガラス繊維、又は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0048】
以下における平均粒子径等の決定手段は、次の通りである。
【0049】
c軸方向の結晶厚み(Lc):
XRDを使用し、次の分析条件でLcを決定した。
XRD分析装置:Spectris社製X線回折装置「PaNalytical X' Pert PRO(検出器:X' Celerator)」
X線源:Cu−Kα線(波長1.54Å)
管電圧:45KV
管電流:40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲:2θ=15〜35°
走査速度:2.0°/min.
取り込み幅:0.004°
測定モード:Continuous
2θ補正:内部標準法(標準Siを10質量%混合)
【0050】
平均粒子径:
試料を水に入れ、界面活性剤を少量添加後、試料を超音波分散させ、株式会社島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置「SALD−2000」を用いて求められるメジアン径を平均粒子径とした。
【0051】
比表面積:
マイクロメリティックス社製ASAP−2400窒素吸着装置を使用し、窒素吸着等温線を測定するBET法により比表面積を求めた。
【0052】
酸性表面官能基量:
Boehm法により酸性表面官能基量を算出した。
【0053】
所定粒径の実施例および比較例の添加材を調製し、この添加材の平均粒子径、比表面積、酸性表面官能基量を求めた。活性炭と添加材とを混合した電極材料を使用してキャパシタを作製した。以上の詳細を以下に示す。
【0054】
(添加材)
東海カーボン社製カーボンブラック「トーカブラック♯7360SB(ソフトビーズ品)」または電気化学工業社製アセチレンブラック「デンカブラック(粉状品)」を、原料のカーボンブラックとした。これらカーボンブラックのLcの分析を行った結果、トーカブラック♯7360SBのLcは、実施例5で使用したもの以外が1.5nm、実施例5で使用したものが3.7nm、デンカブラックのLcは3.7nmであった。
【0055】
実施例1a〜1d、実施例2〜5、比較例2、3、および5の添加材:
カーボンブラックと当該カーボンブラックの0.0〜5.0質量倍のKOH(キシダ化学社製特級試薬)との混合物を800℃の窒素雰囲気中で加熱することにより、アルカリ賦活処理を行い、実施例または比較例の添加材を含む賦活処理物を得た。その後、常温になった賦活処理物を脱イオン水で洗浄後、添加材をろ過分離した。次に、希塩酸を加えた添加材を煮沸し、更に脱イオン水で洗浄中和処理を実施した後、乾燥した。そして、遊星ボールミル(フリッチュジャパン社製「P−5型」)で粉砕し、実施例または比較例の添加材を得た。
【0056】
比較例1:
実施例2と同様に調製した添加材を、800℃の窒素雰囲気中で加熱処理した。この加熱処理は、添加材の表面官能基量を減少させるためのものである。
【0057】
比較例4の添加材:
カーボンブラック自体を添加材とした。
【0058】
(電極材料)
実施例1a〜1d、実施例2〜5、比較例1〜5:
2〜5質量部の添加材と100質量部のカーボンテック社製フェノール樹脂系活性炭「マックスソーブ」との混合物を電極材料とした。ここで使用した活性炭には、実施例1a〜1d、実施例2〜4および比較例1〜5では平均粒子径が3μmのものを使用し、実施例5では平均粒子径が6μmのものを使用した。
【0059】
比較例6〜7:
カーボンテック社製フェノール樹脂系活性炭「マックスソーブ」のみを電極材料とした。比較例6では平均粒子径が3μmの活性炭を使用し、比較例7では平均粒子径が6μmの活性炭を使用した。
【0060】
(キャパシタの作製)
1.電極の作製
9質量部の実施例または比較例の電極材料、0.7質量部の2.0質量%カルボキシメチルセルロース、1.2質量部のアセチレンブラック、4.0質量部の5質量%スチレンブタジエンゴム水溶液、および43質量部のイオン交換水からなる混合物を調製した。この混合物をアルミニウム箔に塗布した後、このアルミニウム箔を100℃で乾燥した。この乾燥後の電極材料層(アルミニウム箔の表面に塗布した層)の厚みは、80μmであった。次に、前記アルミニウムを直径25.4mmの円形に打ち抜き、これを77MPaでプレスし、電極を作製した。
【0061】
2.キャパシタの組み立て
真空条件下、200℃、1時間の条件で電極を乾燥した後、窒素ガスを流通させたグローブボックス内で電解液(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートが1mol/Lのプロピレンカーボネート溶液)を電極に真空含浸させた。この電極を、電解液を含浸させたポリプロピレン製セパレータ(Celgard社製「セルガード♯3501」)で挟み、更にアルミニウム板で挟んでキャパシタを組み立てた。
【0062】
上記作製したキャパシタを使用し、次の通りにして、質量基準容量、体積基準容量、および内部抵抗率を求めた。
【0063】
(質量基準容量、体積基準容量)
充放電装置(アスカ電子株式会社製「ACD−01」)の充放電端子をキャパシタのアルミニウム板に接続し、−30℃で、集電板間電圧が2.5Vになるまで20mAの定電流充電を行い、続けて、2.5Vの定電圧で5分間充電した。充電後、定電流(放電電流=0.015A)でキャパシタの放電を行わせた。得られた放電曲線の2.0〜1.0Vの間の勾配から、キャパシタの静電容量を求めた。そして、キャパシタの静電容量を電極材料の使用質量で除することで質量基準容量(単位:F/g)を算出し、キャパシタの静電容量を電極における電極材料層の総体積で除することで体積基準容量(単位:F/cm3)を算出した。
【0064】
(キャパシタの内部抵抗率)
上記静電容量の評価と同じ条件でキャパシタの充電を行った後、定電流(放電電流=0.015A)でキャパシタの放電を行わせた。この放電開始直後の電圧降下から、内部抵抗率を求めた。つまり、放電開始後0.5〜2.0秒の間の各測定電圧から電圧勾配を導き出し、この電圧勾配から放電開始時の電圧を求め、当該電圧と充電電圧(2.5V)と電圧差を放電電流で除して抵抗を求め、更に、この抵抗を電極材料層の厚みで除して内部抵抗率を求めた。
【0065】
上記以上の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気二重層キャパシタの電極材料に使用される電極材料用添加材であって、
カーボンブラックをアルカリ賦活して得られ、かつ、比表面積が750〜1100m2/g、酸性表面官能基量が0.26meq/g以上であることを特徴とする電極材料用添加材。
【請求項2】
前記酸性表面官能基量が、0.35meq/g以下である請求項1に記載の電極材料用添加材。
【請求項3】
前記比表面積が820m2/g以上、前記酸性表面官能基量が0.32meq/g以上である請求項1に記載の電極材料用添加材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料用添加材と、活性炭とを含有する電気二重層キャパシタ用電極材料。
【請求項5】
前記電極材料用添加材の含量が、活性炭100質量部に対して25質量部以下である請求項4に記載の電気二重層キャパシタ用電極材料。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電気二重層キャパシタ用電極材料を使用して製造された電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項7】
請求項6に記載の電気二重層キャパシタ用電極を使用して製造された電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料用添加材の製造方法であって、
カーボンブラックをアルカリ賦活する工程を有することを特徴とする電極材料用添加材の製造方法。

【公開番号】特開2009−117414(P2009−117414A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285361(P2007−285361)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【Fターム(参考)】