説明

電極板、二次電池、及び電極板の製造方法

【課題】二次電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にできる電極板及びその製造方法、並びに、この電極板を用いた二次電池を提供する。
【解決手段】結着材161を介して、第1導電材158が正極活物質粒子153の表面全体にわたって均一に結合した炭素結合活物質粒子154を作製する、炭素結合活物質粒子作製工程(ステップS1)と、攪拌機20の回転羽根11の回転により、炭素結合活物質粒子154、第2導電材159、結着材161、及び溶媒162を、攪拌槽20の内周面1bに押しつけて薄膜円筒状に拡げながら攪拌混合して、電極合材ペースト30を作製する攪拌混合工程(ステップS2)と、電極合材ペースト30を正極集電部材151に塗布する塗布工程(ステップS3)とを備える電極板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極板及びその製造方法、並びに、電極板を用いて作製した二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、ポータブル機器や携帯機器などの電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。近年、リチウム二次電池の特性を良好とすべく、様々な電極板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−173777号公報
【特許文献2】特開2006−339184号公報
【特許文献3】特開2008−84665号公報
【0004】
特許文献1には、次のような正極板の製造方法が開示されている。まず、コバルト酸リチウム(正極活物質)と炭素粉と水を混合して、スラリーを作製する。次いで、このスラリーにPVA溶液を添加攪拌した後、スプレードライヤを用いて、乾燥温度280℃で噴霧乾燥し、複合粒子(炭素結合活物質粒子)を得る。その後、この複合粒子と結着材と溶媒とを混練して正極合材ペーストを作製し、この正極合材ペーストをアルミニウム集電体に塗布し、乾燥し、プレスして、正極板を得る。
【0005】
また、特許文献2には、次のような複合粒子(炭素結合活物質粒子)の製造方法が開示されている。まず、導電材と結着材と溶解型樹脂とイオン交換水とを混合して、スラリーを調整する。次いで、アグロマスタ(ホソカワミクロン製)を用いて、上記スラリーと電極活物質とから、複合粒子(炭素結合活物質粒子)を作製する。具体的には、アグロマスタの槽内に電極活物質を供給し、これを80℃の熱風で流動させた状態で、この槽内に前記スラリーを噴霧する。これにより、電極活物質と導電材とが結合した複合粒子(炭素結合活物質粒子)を得ることができる。
【0006】
また、特許文献3には、次のような正極板の製造方法が開示されている。正極活物質と導電材と結着材と溶媒とを、強せん断分散装置(例えば、プラネタリーミキサー)を用いて混練して、正極合材ペーストを作製する。その後、この正極合材ペーストを、正極集電体の表面に塗布し、乾燥させて、正極板を製造する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている製法では、プラネタリーミキサー等を用いて、複合粒子と結着材と溶媒とを混練してスラリーを作製する間に、スプレードライヤを用いて正極活物質の表面に結合させた導電材の一部が、正極活物質表面から脱落してしまう。このため、特許文献1に開示されている製法で製造した正極板を用いた二次電池では、十分な電池特性(特に、大電流による放電特性)を得ることができなかった。
【0008】
また、特許文献2に開示されている製法で複合粒子(炭素結合活物質粒子)を製造し、その後、プラネタリーミキサー等を用いて、この複合粒子と結着材と溶媒とを混練して合材ペーストを作製する場合も、やはり、合材ペーストを作製する間に、アグロマスタを用いて電極活物質の表面に結合させた導電材の一部が、電極活物質表面から脱落してしまう。このため、この合材ペーストを用いて電極板を作製し、この電極板を用いて二次電池を作製した場合でも、十分な電池特性(特に、大電流による放電特性)を得ることができなかった。
【0009】
また、特許文献3に開示されている製法では、正極活物質と導電材と結着材と溶媒とを分散させるのに長時間を要するため、生産効率が悪いという課題があった。しかも、正極活物質と導電材と結着材と溶媒とを、均一に分散させることができなかった。このため、特許文献3に開示されている製法で製造した正極板を用いた二次電池でも、十分な電池特性(特に、大電流による放電特性)を得ることができなかった。
【0010】
特に、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として用いる場合には、大電流(例えば、20C以上の電流)による放電が頻繁に行われるため、優れたハイレート特性が要求される。しかしながら、上述のように製造した正極板を用いて作製した二次電池では、その要求に十分に応えることができなかった。
【0011】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、二次電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にできる電極板及びその製造方法、並びに、この電極板を用いた二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その解決手段は、電極板の製造方法であって、活物質粒子と炭素材料からなる第1導電材とを結着材で結合させて、上記結着材を介して、上記第1導電材が上記活物質粒子の表面全体にわたって均一に結合した炭素結合活物質粒子を作製する、炭素結合活物質粒子作製工程と、上記炭素結合活物質粒子、炭素材料からなる第2導電材、結着材、及び溶媒を混合する工程であって、円筒形の攪拌槽、及び上記攪拌槽内に設けられ、上記攪拌槽の内周面近傍を回転して移動する回転羽根であって、複数の孔が形成された円筒部を有する回転羽根、を有する攪拌機を用い、上記攪拌機の上記攪拌槽内に、上記炭素結合活物質粒子、上記第2導電材、上記結着材、及び上記溶媒を入れ、上記回転羽根の回転により、上記炭素結合活物質粒子、上記第2導電材、上記結着材、及び上記溶媒を、上記攪拌槽の上記内周面に押しつけて薄膜円筒状に拡げながら攪拌混合して、電極合材ペーストを作製する攪拌混合工程と、上記電極合材ペーストを集電部材に塗布する塗布工程と、を備える電極板の製造方法である。
【0013】
本発明の製造方法によれば、結着材を介して活物質粒子の表面全体にわたって第1導電材が均一に結合した炭素結合活物質粒子と、炭素材料からなる第2導電材とが、均一に分散した電極合材(電極合材ペーストを乾燥させたもの)を有する電極板を製造することができる。
【0014】
特に、本発明の製造方法では、炭素結合活物質粒子作製工程の後、円筒形の攪拌槽、及び、攪拌槽の内周面近傍を回転して移動する回転羽根であって複数の孔が形成された円筒部を有する回転羽根を有する攪拌機を用いて、回転羽根の回転により、炭素結合活物質粒子、第2導電材、結着材、及び溶媒を、攪拌槽の内周面に押しつけて薄膜円筒状に拡げながら攪拌混合する。このように攪拌混合することで、極めて短時間で、炭素結合活物質粒子、第2導電材、及び結着材を、溶媒中に均一に分散させることができる。
【0015】
その上、このように攪拌混合することで、炭素結合活物質粒子を構成する第1導電材の少なくとも一部が、活物質粒子の表面から脱落するのを防止することができる。換言すれば、攪拌混合工程を行った後も、各炭素結合活物質粒子について、結着材により活物質粒子の表面全体にわたって第1導電材が均一に結合した状態を維持することができる。
【0016】
従って、この電極合材ペーストを集電部材に塗布し、乾燥等させることで、結着材により活物質粒子の表面全体にわたって第1導電材が均一に結合した炭素結合活物質粒子と、第2導電材とが、均一に分散した電極合材を有する電極板を得ることができる。この電極板を用いることで、電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることができる。
【0017】
以上より、本発明の製造方法によれば、電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることが可能な電極板を製造することができる。
なお、本発明の製造方法は、正極板の製造にも負極板の製造にも適用できる。
【0018】
また、炭素結合活物質粒子作製工程において、活物質粒子と第1導電材とを結着材により結合させる装置としては、例えば、スプレードライヤ(藤崎電機製のマイクロミストドライヤなど)や、ホソカワミクロン製のアグロマスタや、パウレック製の転動流動コーティング装置などを挙げることができる。
また、攪拌混合工程で用いる攪拌機としては、例えば、プライミクス製のT.K.フィルミックスを挙げることができる。
【0019】
また、本発明の製造方法を正極板の製造に適用する場合、活物質粒子(正極活物質粒子)は、特に限定されないが、例えば、LiMO2またはLiM24で表されるリチウム含有金属酸化物であって、元素MがCo、Ni、Mn、Fe、Cuなどの金属元素の少なくとも1種であるものが挙げられる。具体的には、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、LiMnO4などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO2などのリチウムニッケル酸化物などのリチウム含有金属酸化物、または、これらを基本構造とする複合酸化物(例えば、異種金属添加品)や、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物などの金属酸化物、または、これらを基本構造とする複合酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが挙げられる。これらの活物質粒子は、1種単独で用いてもよく、あるいは、混合物や固溶体として2種以上を併用しても構わない。特に、LiCoO2、LiMnO4、LiNiO2などの、充電時の開路電圧がLi基準で4V以上を示すリチウム含有複合酸化物を用いた場合には、より高エネルギー密度の電池を構成できることから好ましい。
【0020】
また、本発明の製造方法を負極板の製造に適用する場合、活物質粒子(負極活物質粒子)は、リチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであれば、特に限定されない。具体的には、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料や、Si、Sn、Inなどの合金またはLiに近い低電圧で充放電できるSi、Sn、Inなどの酸化物などを用いることができる。これらの活物質粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
【0021】
また、第1導電材及び第2導電材としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックや、アセチレンブラックや、鱗片状黒鉛や、繊維状炭素や、活性炭などが挙げられる。なお、第1導電材と第2導電材とは、同種の炭素材料としても良いし、異種の炭素材料としても良い。
【0022】
また、結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂系結着材や、エチレン−プロピレン−ジエン共重合樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン、フッ素ゴムなどのゴム系結着材や、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース樹脂などの多糖類などを用いることができる。これらの結着材は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
【0023】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
さらに、上記の電極板の製造方法であって、前記攪拌混合工程は、前記攪拌混合を5〜10分間行う電極板の製造方法とすると良い。
【0025】
本発明の製造方法では、攪拌混合工程において、攪拌混合を5〜10分間だけ行う。本発明の攪拌混合工程によれば、このように短い攪拌時間でも、炭素結合活物質粒子、第2導電材、及び結着材を、溶媒中に均一に分散させることができる。
【0026】
攪拌混合時間をこのように短くすることで、生産効率を高めることができる。その上、炭素結合活物質粒子を構成する第1導電材の少なくとも一部が、活物質粒子の表面から脱落するのを、確実に防止することができる。
【0027】
さらに、上記いずれかの電極板の製造方法であって、前記炭素結合活物質粒子作製工程は、スプレードライ法を用いて、前記炭素結合活物質粒子を作製する電極板の製造方法とすると良い。
【0028】
スプレードライ法を用いることで、第1導電材が結着材を介して活物質粒子の表面全体にわたって均一に結合した炭素結合活物質粒子を、適切に作製することができる。
なお、スプレードライ法とは、スプレードライヤ(例えば、藤崎電機製のマイクロミストドライヤなど)を用いて、活物質粒子、第1導電材、結着材、及び溶媒を混合したスラリーを噴霧し、これを熱風で乾燥させて、活物質粒子と第1導電材とを結着材で結合させる方法をいう。
【0029】
あるいは、前記いずれかの電極板の製造方法であって、前記炭素結合活物質粒子作製工程は、前記活物質粒子及び前記第1導電材を槽内で流動させた状態で、上記槽内に前記結着材と溶媒を混合した液体を噴霧し、乾燥させて、上記活物質粒子と上記第1導電材とを上記結着材で結合させる電極板の製造方法とすると良い。
【0030】
本発明の炭素結合活物質粒子作製工程では、活物質粒子及び第1導電材を槽内で流動させた状態で、槽内に結着材と溶媒を混合した液体を噴霧する。すなわち、槽内で流動している活物質粒子及び第1導電材に、結着材と溶媒を混合した液体(以下、液状バインダともいう)を噴霧する。これにより、槽内で流動している活物質粒子と第1導電材とが、液状バインダを介して接触する。この状態で、液状バインダを乾燥させることで、活物質粒子と第1導電材とを結着材で結合させることができる。従って、本発明の炭素結合活物質粒子作製工程によれば、第1導電材が結着材を介して活物質粒子の表面全体にわたって均一に結合した炭素結合活物質粒子を、適切に作製することができる。
【0031】
なお、活物質粒子及び第1導電材を槽内で流動させた状態で、槽内に結着材と溶媒を混合した液体を噴霧し、乾燥させて、活物質粒子と第1導電材とを結着材で結合させる装置としては、例えば、ホソカワミクロン製のアグロマスタや、パウレック製の転動流動コーティング装置などを挙げることができる。
【0032】
他の解決手段は、活物質粒子、及び、炭素材料からなる第1導電材であって、結着材を介して、上記活物質粒子の表面全体にわたって均一に結合した第1導電材、を有する炭素結合活物質粒子と、炭素材料からなる第2導電材と、を含み、上記炭素結合活物質粒子及び上記第2導電材が均一に分散してなる電極合材と、上記電極合材を担持する集電部材と、を備える電極板である。
【0033】
本発明の電極板は、活物質粒子、及び、結着材を介して活物質粒子の表面全体にわたって均一に結合した第1導電材を有する炭素結合活物質粒子を含んでいる。すなわち、活物質粒子の表面に炭素材料からなる導電材を付着(結合)させたものとして、結着材により、活物質粒子の表面全体にわたって第1導電材が均一に結合した炭素結合活物質粒子を含んでいる。このように、活物質粒子の表面全体にわたって第1導電材を均一に結合させることで、電池の内部抵抗(特に、直流抵抗)を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることができる。
【0034】
さらに、本発明の電極板では、炭素結合活物質粒子及び第2導電材が均一に分散した電極合材を有している。電極合材中に炭素結合活物質粒子が均一に分散していることで、電池の内部抵抗が小さくなり、大電流による放電特性が良好になる。その上、互いに隣り合う炭素結合活物質粒子の間に、第2導電材が均一に分散することになるので、炭素結合活物質粒子間の導電ネットワークが良好になる。これにより、より一層、電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることができる。
【0035】
従って、本発明の電極板を用いることで、電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることができる。
なお、本発明の電極板は、正極板にも負極板にも適用できる。
【0036】
他の解決手段は、正極板と、負極板と、セパレータとを含む電極体を備える二次電池であって、上記正極板及び上記負極板の少なくともいずれかは、請求項5に記載の電極板である二次電池である。
【0037】
本発明の二次電池は、正極板及び負極板の少なくともいずれかとして、前述の電極板を備えている。従って、本発明の二次電池は、内部抵抗(特に、直流抵抗)が小さくなり、大電流による放電特性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施例1にかかる二次電池100の斜視図であり、図2は、二次電池100の縦断面図である。二次電池100は、図1に示すように、円筒形状の電池ケース110を備えるリチウムイオン二次電池である。
【0039】
電池ケース110は、図2に示すように、ステンレス鋼板(SUS314)からなり、底部111aが円形で、高さ方向DHに厚さを有する円筒形状を有している。この電池ケース110は、容器体111と蓋体112とを有している。
【0040】
このうち、容器体111は、円板状の底部111a、および、この周縁からこれに直交する方向に立ち上がり、先端側が内側に曲げられると共に縮径する形態の円筒壁部111bからなる。また、蓋体112は、円板形状を有し、円筒壁部111bの先端で構成される開口部111cを封口している。容器体111と蓋体112との間には、電気絶縁性を有する円環状のガスケット113が介在している。なお、二次電池100では、容器体111が正極外部端子を構成し、蓋体112が負極外部端子を構成する。
【0041】
電池ケース110の内部には、電極体150及び非水電解液(図示省略)などが収容されている。電極体150は、円板形状をなし、図2に示すように、正極板155と負極板156を、セパレータ157を介して、高さ方向DHに積層した積層型の電極体である。このうち、正極板155は、容器体111の底部111aに電気的に接続し、負極板156は、蓋体112に電気的に接続している。なお、ガスケット113は、容器体111の円筒壁部111bの内表面111bxの全体と、底部111aの内表面111axの周縁を被覆している。これにより、負極板156と、正極外部端子を構成する容器体111とを、電気的に絶縁している。
【0042】
ここで、正極板155について詳細に説明する。正極板155は、図3に示すように、アルミニウム箔からなる正極集電部材151と、この正極集電部材151の表面に塗布された正極合材152とを有している。正極合材152は、炭素結合活物質粒子154と、第2導電材159(本実施例1では、アセチレンブラック)と、図示しない結着材(本実施例1では、ポリフッ化ビニリデン)とを有している。なお、本実施例1では、炭素結合活物質粒子154と第2導電材159とが均一に分散している。
【0043】
炭素結合活物質粒子154は、図4に示すように、正極活物質粒子153(本実施例1では、LiNiO2)及び第1導電材158を有している。第1導電材158は、炭素材料(本実施例1では、アセチレンブラック)からなり、結着材161を介して、正極活物質粒子153の表面全体にわたって均一に結合している。
【0044】
また、本実施例1では、負極板156として、円形状のリチウム金属板を用いている。また、セパレータ157として、ポリプロピレンとポリエチレンとからなる多孔質シートを用いている。また、非水電解液として、ポリカーボネートとジエチルカーボネートとを、1:1(体積比)で混合した溶媒に、1モル/リットルの濃度でLiPF6を溶解させたものを用いている。この非水電解液は、セパレータ157に吸収担持されている。
【0045】
次に、本実施例1の二次電池100の製造方法について説明する。
まず、正極板155の製造方法について説明する。図5は、本実施例1にかかる正極板の製造の流れを示すフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS1(炭素結合活物質粒子作製工程に相当する)において、スプレードライ法を用いて、炭素結合活物質粒子154を作製した。具体的には、まず、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とポリフッ化ビニリデンと溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)とを混合して、固形分15wt%のスラリーを作製した。なお、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とポリフッ化ビニリデンとの配合比を、87:5:1.5(重量比)としている。
【0047】
その後、スプレードライヤを用いて、上述のように調整したスラリーを噴霧・乾燥させて、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とがポリフッ化ビニリデン(結着材161)で結合した炭素結合活物質粒子154を得た。この炭素結合活物質粒子154をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、図4に示すように、正極活物質粒子153(LiNiO2)の表面全体にわたって炭素材料(アセチレンブラック)からなる第1導電材158が均一に結合している様子を確認することができた。
【0048】
なお、本実施例1では、スプレードライヤとして、藤崎電機製のマイクロミストドライヤ(MDLシリーズ Mタイプ)を用いている。また、本実施例1では、スプレードライヤにおいて、加熱空気の入口温度を220℃に設定して、加熱空気(熱風)を乾燥室内に供給している。また、スプレーノズルへの圧縮空気の供給量を50L/min、スプレーノズルへのスラリーの供給量を10mL/minに設定して、スプレーノズルからスラリーを噴霧している。
【0049】
次に、ステップS2(攪拌混合工程に相当する)に進み、正極合材ペースト30(図7参照)を作製した。具体的には、攪拌機20(プライミクス製のT.K.フィルミックス、図6参照)を用いて、炭素結合活物質粒子154、第2導電材159(アセチレンブラック)、結着材163(ポリフッ化ビニリデン)、及び溶媒162(N−メチル−2−ピロリドン)を攪拌混合して、正極合材ペースト30を得た。
【0050】
なお、本実施例1では、炭素結合活物質粒子154と第2導電材159と結着材163の配合比を、93.5:5:1.5(重量比)として、正極合材ペースト30を作製している。また、攪拌機20内に供給したアセチレンブラック(第2導電材159)は、ステップS1で用いたアセチレンブラック(第1導電材158)と同等のものとしている。また、攪拌機20内に供給した結着材163(ポリフッ化ビニリデン)は、ステップS1でスラリーの作製に用いたポリフッ化ビニリデンと同等のものとしている。
【0051】
ここで、本実施例1で用いた攪拌機20(プライミクス製のT.K.フィルミックス)について説明する。図6に示すように、攪拌機20には、円筒形の内周面1bを有する攪拌槽1が設けられており、攪拌槽1の周囲には外槽2が設けられている。攪拌槽1と外槽2の間には、冷却水室3が形成されている。冷却水室3に冷却水が流入管4から供給され、攪拌で生じる摩擦熱を吸収して図示されない流出管から排出される。攪拌槽1の底部には弁5a及び6aを有する供給管5及び6が接続されている。この供給管5及び6は、原料の供給に使用することができるが、バッチ生産の場合には、製品の排出にも使用することができる。
【0052】
攪拌槽1の上部には、堰板7が載置され、その上に上部容器8が取り付けられている。この上部容器8に流出管9が接続されている。上部容器8は、蓋8a及び冷却水室8bを有しており、製品を連続生産するときに用いられる。この場合、堰板7として、その内径が図示のものより大きいものに交換され、原料を供給管5及び6から連続供給し、攪拌後の液が堰板7を越えて連続的に流出するように扱われる。冷却水室8bは、水路に冷却水室3と並列に接続されている。
【0053】
回転軸10は、蓋8aを気密に貫通して攪拌槽1と同心に設置されており、上部に設けたモーターで高速に回転するように駆動される。回転軸10の下端には、回転羽根11が取付けられている。
【0054】
回転羽根11は円筒部12を有しており、円筒部12はアーム13を介してボス14により回転軸10に取り付けられている。円筒部12には、多数の孔12aが形成されている。アーム13には、適当な数の連通孔13aが形成されている。
【0055】
本実施例1では、攪拌機20の供給管5及び6を通じて、攪拌槽1内に、炭素結合活物質粒子154、第2導電材159(アセチレンブラック)、結着材163、及び溶媒162を供給し、これらを次のようにして攪拌混合した。図6は、攪拌槽1内に、炭素結合活物質粒子154、第2導電材159、結着材163、及び溶媒162(これらを原料Lとする)を入れた状態を示している。
【0056】
原料Lは、回転羽根11の高速回転により、円周方向に押しつけられ、回転によって生じる遠心力により攪拌槽1の内周面1bに薄膜円筒状に密着しながら回転する。このとき、原料Lは、攪拌槽1の内周面1bとの速度差によるずれによって攪拌作用を受ける。また、孔12a内に流入した原料Lは、孔12aの回転によって強い回転力を受け、孔12a内から間隙S内に流入して、圧力を上昇させるとともに、間隙S内に位置する原料Lの流れを乱すことにより、攪拌作用を助長する。このように攪拌混合することで、極めて短時間で、炭素結合活物質粒子154、第2導電材159、及び結着材163を、溶媒162中に均一に分散させることができる。このようにして、正極合材ペースト30を得た。
【0057】
なお、本実施例1では、攪拌機20による原料Lの攪拌混合を、10分間だけ行った。このように短い攪拌時間でも、炭素結合活物質粒子154、第2導電材159、及び結着材163を、溶媒162中に均一に分散させることができる。ここで、上述のようにして作製した正極合材ペースト30を容器35内に収容した図を、図7に示す。図7に示すように、正極合材ペースト30を観察すると、炭素結合活物質粒子154、第2導電材159、及び結着材163が、溶媒162中に均一に分散していることが確認できた。
【0058】
また、原料Lの攪拌混合時間を、このように短く(本実施例1では、10分)することで、生産効率を高めることができる。その上、炭素結合活物質粒子154を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落するのを、確実に防止することができる。
【0059】
次に、ステップS3(塗布工程に相当する)に進み、正極合材ペースト30を、アルミニウム箔の表面に塗布した。次いで、ステップS4に進み、アルミニウム箔の表面に塗布した正極合材ペースト30をプレスして圧縮し、アルミニウム箔と共に円形に打ち抜いて成形した。次いで、ステップS5に進み、正極合材ペースト30を乾燥させて、正極合材152を有する正極板155(図3参照)を得た。なお、正極合材152をSEMで観察したところ、炭素結合活物質粒子154と第2導電材159とが均一に分散していた。
【0060】
なお、ステップS2(攪拌混合工程)において、炭素結合活物質粒子154を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落したか否かは、次のように判断することができると考えられる。
【0061】
炭素結合活物質粒子154において、正極活物質粒子153と第1導電材158とを結合する結着材161(PVDF)は、スプレードライヤの熱風(高温の乾燥ガス)により変質していると考えられる。具体的には、架橋反応が進行し、結晶化度が大きくなると考えられる。一方、ステップS2(攪拌混合工程)において、炭素結合活物質粒子154とは別に攪拌機20内に供給した結着材163(PVDF)は、攪拌混合によって変質することはないと考えられる。このため、結着材161と結着材163とでは、架橋構造や結晶化度が大きく異なっていると考えられる。
【0062】
従って、仮に、結着材161で正極活物質粒子153の表面に結合していた第1導電材158の一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落していれば、第1導電材158と共に結着材161の一部も、正極活物質粒子153の表面から脱落していることになる。このため、正極合材152について、炭素結合活物質粒子154を構成していない(正極活物質粒子153と第1導電材158とを結合していない)結着材を分析することで、炭素結合活物質粒子154を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落したか否かを判断することができる。
【0063】
すなわち、分析した結着材に、架橋構造や結晶化度が大きく異なっているものが混在している場合には、結着材161と結着材163とが混在していると考えることができる。このような場合は、炭素結合活物質粒子154を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落したと判断することができる。
【0064】
また、正極合材152に含まれる炭素結合活物質粒子154を、SEMで観察したところ、ステップS1で作製した炭素結合活物質粒子154と同様に、正極活物質粒子153(LiNiO2)の表面全体にわたって第1導電材158(アセチレンブラック)が均一に結合している様子(図4参照)を確認することができた。このことから、本実施例1のステップS2(攪拌混合工程)では、ステップS1において、正極活物質粒子153の表面に結合させた第1導電材158が、正極活物質粒子153の表面から脱落するのを防止することができたといえる。換言すれば、攪拌混合工程(ステップS2の処理)を行った後も、各炭素結合活物質粒子154について、正極活物質粒子153の表面全体にわたって第1導電材158が均一に結合した状態を維持することができたといえる。
【0065】
次に、正極板155、負極板156(リチウム金属板)、及びセパレータ157を積層して、電極体150を作製した。また、ステンレス鋼板(SUS314)製の容器体111及び蓋体112を用意した。次いで、容器体111の内部に、ガスケット113と電極体150を配置し、その後、非水電解液を注入した。なお、非水電解液として、ポリカーボネートとジエチルカーボネートとを、1:1(体積比)で混合した溶媒に、1モル/リットルの濃度でLiPF6を溶解させたものを用いている。次いで、蓋体112で、容器体111の開口部111cを封口して、二次電池100(図1及び図2参照)が完成する。
【0066】
また、比較例として、従来の製法で作製した正極板を用いて製造した2種類の二次電池(比較例1,2とする)を用意した。
具体的には、比較例1では、特許文献3に開示されている製造方法により、正極板を作製した。詳細には、正極活物質153(LiNiO2)とアセチレンブラックと結着材(PVDF)と溶媒(NMP)とを、強せん断分散装置(本比較例1では、プラネタリーミキサー)を用いて混練して、正極合材ペーストを作製した。なお、正極活物質153(LiNiO2)とアセチレンブラックと結着材(PVDF)の配合比は、87:10:3(重量比)としている。
【0067】
なお、本比較例1では、プラネタリーミキサーにより、正極活物質153とアセチレンブラックと結着材(PVDF)を溶媒162(NMP)中に分散させるのに、4〜5時間の混練時間を要した。その後、この正極合材ペーストを、アルミニウム箔の表面に塗布し、プレス、成形、乾燥させて、実施例1と同寸法の円板形状の正極板を得た。その後、この正極板を用いて、本実施例1と同様にして、比較例1の二次電池を作製した。
【0068】
また、比較例2では、特許文献1に開示されている製造方法を参照して、正極板を作製した。詳細には、まず、本実施例1のステップS1と同様に、スプレードライヤ(藤崎電機製のマイクロミストドライヤ、MDLシリーズ Mタイプ)を用いて、炭素結合活物質粒子154を作製した。なお、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とPVDF(結着材)との配合比は、実施例1と同様に、87:5:1.5(重量比)としている。
【0069】
その後、炭素結合活物質粒子154とアセチレンブラック(第2導電材159)と結着材163(PVDF)と溶媒162(NMP)とを、プラネタリーミキサーを用いて混練して、正極合材ペーストを作製した。なお、本比較例2では、プラネタリーミキサーにより、炭素結合活物質粒子154とアセチレンブラックと結着材163(PVDF)を溶媒162中に均一に分散させるのに、2〜3時間の混練時間を要した。また、炭素結合活物質粒子154と第2導電材159(アセチレンブラック)と結着材163(PVDF)の配合比は、実施例1と同様に、93.5:5:1.5(重量比)としている。
【0070】
次いで、この正極合材ペーストを、アルミニウム箔の表面に塗布し、プレス、成形、乾燥させて、実施例1と同寸法の円板形状の正極板を得た。その後、この正極板を用いて、本実施例1と同様にして、比較例1の二次電池を作製した。
なお、比較例1,2では、正極活物質153とアセチレンブラック(導電材)と結着材(PVDF)の配合量を実施例1と同等にして、正極板を製造している。
【0071】
次に、実施例1の二次電池100及び比較例1,2の二次電池について、電池特性の評価を行った。
【0072】
(大電流負荷放電特性)
まず、各二次電池について、大電流負荷放電特性を評価した。具体的には、各二次電池について、1Cの一定電流値で電池電圧が4.1Vになるまで充電した後、4.1Vの定電圧で充電を行って、満充電状態とした。その後、電池電圧が3.0Vになるまで、1Cの一定電流値で放電を行った。このときの電流値と放電時間との積を、二次電池に含まれる正極活物質153(LiNiO2)の質量(g)で除して、正極活物質1g当たりの放電容量D1(mAh/g)として取得した。
なお、1Cは、二次電池に含まれる正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を1時間で充電することができる電流値である。
【0073】
また、各二次電池について、20Cの一定電流値で電池電圧が4.1Vになるまで充電した後、4.1Vの定電圧で充電を行って、満充電状態とした。その後、電池電圧が3.0Vになるまで、20Cの一定電流値で放電を行った。このときの電流値と放電時間との積を、二次電池に含まれる正極活物質153(LiNiO2)の質量(g)で除して、正極活物質1g当たりの放電容量D2(mAh/g)として取得した。そして、大電流負荷放電特性の評価基準として、D2/D1を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
まず、実施例1及び比較例1,2について、D1の値を比較する。比較例1の二次電池では、125.45mAh/g、比較例2の二次電池では、140.53mAh/gとなった。これに対し、実施例1の二次電池100では、129.37mAh/gとなり、比較例1と比較例2の間の値となった。この結果より、1Cの電流値で放電したときの放電容量は、実施例1と比較例1,2とで、大きな差異はないといえる。
【0076】
また、実施例1及び比較例1,2について、D2の値を比較する。比較例1の二次電池では、70.67mAh/g、比較例2の二次電池では、85.78mAh/gとなり、D1の値に比べて大きく低下した。具体的には、比較例1,2では、D2の値がD1の値に比べて55mAh/g程度も低下した。これに対し、実施例1の二次電池100では、D2の値が94.53mAh/gとなり、D1の値に比べて35mAh/g程度しか低下しなかった。このため、比較例1,2に比べて大きな値を示した。
【0077】
さらに、実施例1及び比較例1,2について、D2/D1の値を比較する。比較例1の二次電池では0.56、比較例2の二次電池では0.61となった。すなわち、比較例1,2では、20Cの大電流で放電したときの放電容量が、1Cの電流値で放電したときの放電容量に比べて、約40%も低下した。
【0078】
これに対し、実施例1の二次電池100では、0.73となり、比較例1,2と比べて大きな値を示した。すなわち、実施例1では、20Cの大電流で放電したときの放電容量が、1Cの電流値で放電したときの放電容量に比べて、27%だけ小さくなった。
以上の結果より、実施例1の二次電池100は、比較例1,2の二次電池に比べて、大電流による放電特性が優れているといえる。
【0079】
これは、実施例1の二次電池100が、正極活物質粒子153、及び、正極活物質粒子153の表面全体にわたって均一に結合した第1導電材158を有する炭素結合活物質粒子154を含む正極板155を備えているからである。正極活物質粒子153の表面全体にわたって第1導電材158を均一に結合させることで、電池の内部抵抗が小さくなり、大電流による放電特性を良好にすることができたと考えられる。
【0080】
さらには、本実施例1の電極板155が、炭素結合活物質粒子154及び第2導電材159が均一に分散した正極合材152を有しているからである。正極合材152中に炭素結合活物質粒子154が均一に分散していることで、電池の内部抵抗が小さくなり、大電流による放電特性が良好になると考えられる。その上、互いに隣り合う炭素結合活物質粒子154の間に、第2導電材159が均一に分散することになるので、炭素結合活物質粒子154間の導電ネットワークが良好になり、より一層、電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることができたと考えられる。
【0081】
なお、比較例1の正極合材をSEMで観察したところ、正極活物質粒子153と導電材(アセチレンブラック)とが均一に分散していなかった。このため、正極活物質粒子153間において、良好な導電性ネットワークが形成されず、その結果、十分な電池特性(特に、大電流による放電特性)を得ることができなかったと考えられる。しかも、プラネタリーミキサーによる混練時間を4〜5時間も必要とするため、生産効率が悪い。
【0082】
また、比較例2の正極合材に含まれている炭素結合活物質粒子をSEMで観察したところ、正極活物質粒子153の表面に、不均一に、第1導電材158が結合している様子を確認することができた。詳細には、実施例1の炭素結合活物質粒子154に比べて、正極活物質粒子153の表面に結合している第1導電材158の数はかなり少なかった。
【0083】
このことから、比較例2の製造方法では、プラネタリーミキサーで、炭素結合活物質粒子154とアセチレンブラックと結着材と溶媒を混練したときに、炭素結合活物質粒子154を構成する正極活物質粒子153の表面から第1導電材158の一部が脱落したといえる。このため、比較例2の二次電池は、実施例1の二次電池100に比べて、電池の内部抵抗が大きくなり、大電流による放電特性が劣ったと考えられる。
【0084】
(内部抵抗の評価)
また、各二次電池について、それぞれ、ソーラトロン製の1255WB型電気化学測定システム(周波数アナライザ+ポテンショガルバノスタット)を用いて、インピーダンスの測定を行った。具体的には、電池電圧を3.8Vとした各二次電池について、5mVの電位振幅を与えつつ、測定周波数を0.01Hz〜100kHzの範囲で変動させて、同期した電流値からインピーダンスの測定を行った。得られたインピーダンス測定結果より、直流抵抗(Ω)と反応抵抗(Ω)を算出した。これらの結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
まず、比較例1,2の二次電池と実施例1の二次電池100とについて、直流抵抗を比較する。表2に示すように、比較例1では4.40Ω、比較例2では2.53Ωとなった。これに対し、実施例1では1.48Ωとなり、比較例1,2に比べて極めて小さな値を示した。
【0087】
さらに、比較例1,2の二次電池と実施例1の二次電池100とについて、反応抵抗を比較する。表2に示すように、比較例1では10.45Ω、比較例2では9.16Ωとなった。これに対し、実施例1では7.59Ωとなり、比較例1,2に比べて小さな値を示した。
以上の結果より、実施例1の二次電池100は、比較例1,2の二次電池に比べて、内部抵抗(特に、直流抵抗)が小さいといえる。
【0088】
実施例1の二次電池100では、正極活物質粒子153、及び、正極活物質粒子153の表面全体にわたって均一に結合した第1導電材158を有する炭素結合活物質粒子154を含む正極板155を備えているため、内部抵抗が小さくなったと考えられる。すなわち、正極活物質粒子153の表面全体にわたって第1導電材158を均一に結合させることで、電池の内部抵抗を小さくすることができたと考えられる。
【0089】
さらに、本実施例1の電極板155が、炭素結合活物質粒子154及び第2導電材159が均一に分散した正極合材152を有していることも、内部抵抗が小さくなった要因と考えられる。正極合材152中に炭素結合活物質粒子154が均一に分散していることで、電池の内部抵抗が小さくなったと考えられる。その上、互いに隣り合う炭素結合活物質粒子154の間に、第2導電材159が均一に分散することになるので、炭素結合活物質粒子154間の導電ネットワークが良好になり、より一層、電池の内部抵抗を小さくすることができたと考えられる。
【0090】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について、図面を参照しつつ説明する。
本実施例2は、実施例1と比較して、正極板(詳細には、炭素結合活物質粒子)の製造方法が異なり、その他についてはほぼ同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、その他については説明を省略まはた簡略化する。
【0091】
本実施例2にかかる二次電池200は、図1及び図2に括弧書きで示すように、実施例1の二次電池100と比較して、正極板のみが異なり、その他の部位については同様である。二次電池200の正極板255は、図3に括弧書きで示すように、実施例1の二次電池100と比較して、正極合材(詳細には、炭素結合活物質粒子)のみが異なり、その他については同様である。なお、本実施例2の正極合材252でも、実施例1の正極合材152と同様に、炭素結合活物質粒子254と第2導電材159とが均一に分散している。
【0092】
炭素結合活物質粒子254は、図4に示すように、正極活物質粒子153(本実施例2でも、LiNiO2)及び第1導電材158を有している。第1導電材158は、炭素材料(本実施例1では、アセチレンブラック)からなり、結着材261(PVDF)を介して、正極活物質粒子153の表面全体にわたって均一に結合している。
【0093】
次に、本実施例2の二次電池200の製造方法について説明する。
まず、正極板255の製造方法について説明する。図5は、本実施例2にかかる正極板の製造の流れを示すフローチャートである。
【0094】
まず、ステップT1(炭素結合活物質粒子作製工程に相当する)において、処理装置60(本実施例2では、ホソカワミクロン製のアグロマスタ AMG−MINI)を用いて、炭素結合活物質粒子254を作製した。ここで、図8を参照して、本実施例2の炭素結合活物質粒子254の作製方法について、具体的に説明する。図8は、本実施例2の処理装置60の概略図である。
【0095】
処理装置60は、処理槽65と、粉体(本実施例2では、正極活物質と導電材)を収容すると共にこの粉体を処理槽65内に供給する粉体供給部61と、結着材と溶媒とを混合した液状バインダを収容するバインダ収容部62とを有している。さらに、処理槽65には、エアフィルタ66及びヒータ67が吸気管を通じて連結されている。これにより、外部からエアフィルタ66を通じて取り込んだ空気がヒータ67で加熱されて、加熱空気が処理槽65内に供給される。また、処理槽65内には、ロータ64が設けられている。このロータ64の回転により、処理槽65内に気流を発生させ、処理槽65内に供給された粉体(本実施例2では、正極活物質と導電材)を、処理槽65内で流動させることができる。さらに、処理槽65内には、液状バインダを噴霧するノズル63が設けられている。
【0096】
本実施例2では、粉体供給部61内に、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とを混合した粉体を収容する。また、バインダ収容部62内に、PVDF(結着材)とNMP(溶媒)とを混合した液体を収容する。なお、本実施例2では、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とPVDF(結着材)との重量比を、87:5:1.5としている。
【0097】
次いで、ロータ64を回転させた状態で、粉体供給部61から、LiNiO2(正極活物質粒子153)及びアセチレンブラック(第1導電材158)を処理槽65内に供給し、正極活物質粒子153及び第1導電材158を、処理槽65内で流動させる。この状態で、バインダ収容部62内に収容されている液状バインダ(結着材と溶媒の混合液)を、ノズル63から処理槽65内に噴霧する。このとき、処理槽65内で流動している正極活物質粒子153と第1導電材158とが、液状バインダを介して接触する。このとき、処理槽65内は高温(例えば、150℃程度)になっているため、液状バインダが直ちに乾燥(溶媒が気化)する。これにより、正極活物質粒子153と第1導電材158とを結着材(PVDF)で結合させることができる。
【0098】
本実施例2では、このようにして、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とがポリフッ化ビニリデン(結着材261)で結合した炭素結合活物質粒子254を得た。この炭素結合活物質粒子254をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、図4に示すように、正極活物質粒子153(LiNiO2)の表面全体にわたって炭素材料(アセチレンブラック)からなる第1導電材158が均一に結合している様子を確認することができた。
【0099】
なお、本実施例2では、処理装置60(ホソカワミクロン製のアグロマスタ AMG−MINI)において、外部からエアフィルタ66への空気導入量を150m3/min、加熱空気入口温度を150℃に設定して、処理槽65内へ加熱空気(熱風)を供給している。また、ノズル63への圧縮空気の供給量を20L/min、ノズル63への液状バインダの供給量を1.2g/minに設定して、ノズル63から液状バインダを噴霧している。
【0100】
次いで、図5に示すように、ステップS2(攪拌混合工程に相当する)に進み、実施例1と同様にして、正極合材ペースト230を作製した。なお、本実施例2でも、実施例1と同様に、攪拌機20による原料L(炭素結合活物質粒子254、第2導電材159、結着材163、及び溶媒162)の攪拌混合を、10分間だけ行った。このように短い攪拌時間でも、炭素結合活物質粒子254、第2導電材159、及び結着材163を、溶媒162中に均一に分散させることができる。具体的には、図7に示すように、正極合材ペースト230を観察すると、炭素結合活物質粒子254、第2導電材159、及び結着材163が、溶媒162中に均一に分散していることが確認できた。
【0101】
また、原料Lの攪拌混合時間を、このように短く(本実施例2では、10分)することで、生産効率を高めることができる。その上、炭素結合活物質粒子254を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落するのを、確実に防止することができる。
【0102】
次に、ステップS3(塗布工程に相当する)に進み、正極合材ペースト230を、アルミニウム箔の表面に塗布した。次いで、実施例1と同様に、ステップS4、S5の処理を行い、正極合材252を有する正極板255(図3参照)を得た。
なお、正極合材252をSEMで観察したところ、炭素結合活物質粒子254と第2導電材159とが均一に分散していた。
【0103】
なお、ステップS2(攪拌混合工程)において、炭素結合活物質粒子254を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落したか否かは、次のように判断することができると考えられる。
【0104】
炭素結合活物質粒子254において、正極活物質粒子153と第1導電材158とを結合する結着材261(PVDF)は、処理装置60の処理槽65内が高温(例えば、150℃程度)になっているため、変質していると考えられる。具体的には、架橋反応が進行し、結晶化度が大きくなると考えられる。一方、ステップS2(攪拌混合工程)において、炭素結合活物質粒子254とは別に攪拌機20内に供給した結着材163(PVDF)は、攪拌混合によって変質することはないと考えられる。このため、結着材261と結着材163とでは、架橋構造や結晶化度が大きく異なっていると考えられる。
【0105】
従って、仮に、結着材261で正極活物質粒子153の表面に結合していた第1導電材158の一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落していれば、第1導電材158と共に結着材261の一部も、正極活物質粒子153の表面から脱落していることになる。このため、正極合材252について、炭素結合活物質粒子254を構成していない(正極活物質粒子153と第1導電材158とを結合していない)結着材を分析することで、炭素結合活物質粒子254を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落したか否かを判断することができる。
【0106】
すなわち、分析した結着材に、架橋構造や結晶化度が大きく異なっているものが混在している場合には、結着材261と結着材163とが混在していると考えることができる。このような場合は、炭素結合活物質粒子254を構成する第1導電材158の少なくとも一部が、正極活物質粒子153の表面から脱落したと判断することができる。
【0107】
また、正極合材252に含まれる炭素結合活物質粒子254を、SEMで観察したところ、ステップT1で作製した炭素結合活物質粒子254と同様に、正極活物質粒子153(LiNiO2)の表面全体にわたって第1導電材158(アセチレンブラック)が均一に結合している様子(図4参照)を確認することができた。このことから、本実施例2のステップS2(攪拌混合工程)では、ステップT1において、正極活物質粒子153の表面に結合させた第1導電材158が、正極活物質粒子153の表面から脱落するのを防止することができたといえる。換言すれば、攪拌混合工程(ステップS2の処理)を行った後も、各炭素結合活物質粒子254について、正極活物質粒子153の表面全体にわたって第1導電材158が均一に結合した状態を維持することができたといえる。
【0108】
その後、上述のように作製した正極板255を用いて、実施例1と同様にして、二次電池200(図1及び図2参照)を製造した。なお、本実施例2でも、実施例1と同様に、非水電解液として、ポリカーボネートとジエチルカーボネートとを、1:1(体積比)で混合した溶媒に、1モル/リットルの濃度でLiPF6を溶解させたものを用いている。
【0109】
また、比較例として、以下のようにして製造した2種類の二次電池(比較例1,3)を用意した。比較例1の二次電池は、前述の通りである。
【0110】
また、比較例3では、次のようにして正極板を製造した。まず、本実施例2のステップT1と同様に、処理装置60(ホソカワミクロン製のアグロマスタ AMG−MINI)を用いて、炭素結合活物質粒子254を作製した。なお、LiNiO2(正極活物質粒子153)とアセチレンブラック(第1導電材158)とPVDF(結着材)との配合比は、実施例2と同様に、87:5:1.5(重量比)としている。
【0111】
その後、炭素結合活物質粒子254とアセチレンブラック(第2導電材159)と結着材163(PVDF)と溶媒162(NMP)とを、プラネタリーミキサーを用いて混練して、正極合材ペーストを作製した。なお、本比較例3では、プラネタリーミキサーにより、炭素結合活物質粒子254とアセチレンブラックと結着材163(PVDF)を溶媒162中に均一に分散させるのに、2〜3時間の混練時間を要した。また、炭素結合活物質粒子254と第2導電材159(アセチレンブラック)と結着材163(PVDF)の配合比は、実施例2と同様に、93.5:5:1.5(重量比)としている。
【0112】
次いで、この正極合材ペーストを、アルミニウム箔の表面に塗布し、プレス、成形、乾燥させて、実施例2と同寸法の円板形状の正極板を得た。その後、この正極板を用いて、本実施例2と同様にして、比較例3の二次電池を作製した。
なお、比較例1,3では、正極活物質153とアセチレンブラック(導電材)と結着材(PVDF)の配合量を実施例2と同等にして、正極板を製造している。
【0113】
次に、実施例2の二次電池200及び比較例1,3の二次電池について、電池特性の評価を行った。
【0114】
(大電流負荷放電特性)
まず、各二次電池について、大電流負荷放電特性を評価した。具体的には、各二次電池について、1Cの一定電流値で電池電圧が4.1Vになるまで充電した後、4.1Vの定電圧で充電を行って、満充電状態とした。その後、電池電圧が3.0Vになるまで、1Cの一定電流値で放電を行った。このときの電流値と放電時間との積を、二次電池に含まれる正極活物質153(LiNiO2)の質量(g)で除して、正極活物質1g当たりの放電容量D1(mAh/g)として取得した。
【0115】
また、各二次電池について、20Cの一定電流値で電池電圧が4.1Vになるまで充電した後、4.1Vの定電圧で充電を行って、満充電状態とした。その後、電池電圧が3.0Vになるまで、20Cの一定電流値で放電を行った。このときの電流値と放電時間との積を、二次電池に含まれる正極活物質153(LiNiO2)の質量(g)で除して、正極活物質1g当たりの放電容量D2(mAh/g)として取得した。そして、大電流負荷放電特性の評価基準として、D2/D1を算出した。これらの結果を表3に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
まず、実施例2及び比較例1,3について、D1の値を比較する。比較例1の二次電池では、125.45mAh/g、比較例3の二次電池では、137.19mAh/gとなった。これに対し、実施例2の二次電池200では、135.5mAh/gとなり、比較例1と比較例3の間の値となった。この結果より、1Cの電流値で放電したときの放電容量は、実施例2と比較例1,3とで、大きな差異はないといえる。
【0118】
また、実施例2及び比較例1,3について、D2の値を比較する。比較例1の二次電池では、70.67mAh/g、比較例3の二次電池では、79.82mAh/gとなり、D1の値に比べて大きく低下した。具体的には、比較例1,3では、D2の値がD1の値に比べて55mAh/g程度も低下した。これに対し、実施例2の二次電池200では、D2の値が104.02mAh/gとなり、D1の値に比べて30mAh/g程度しか低下しなかった。このため、比較例1に比べて約35mAh/gも大きく、比較例3に比べて約25mAh/gも大きな値を示した。
【0119】
さらに、実施例1及び比較例1,3について、D2/D1の値を比較する。比較例1の二次電池では0.56、比較例3の二次電池では0.58となった。すなわち、比較例1,3では、20Cの大電流で放電したときの放電容量が、1Cの電流値で放電したときの放電容量に比べて、40%以上も低下した。
【0120】
これに対し、実施例2の二次電池200では、0.77となり、比較例1,3と比べて大きな値を示した。すなわち、実施例2では、20Cの大電流で放電したときの放電容量が、1Cの電流値で放電したときの放電容量に比べて、23%だけ小さくなった。
以上の結果より、実施例2の二次電池200は、比較例1,3の二次電池に比べて、大電流による放電特性が優れているといえる。
【0121】
これは、実施例2の二次電池200が、正極活物質粒子153、及び、正極活物質粒子153の表面全体にわたって均一に結合した第1導電材158を有する炭素結合活物質粒子254を含む正極板255を備えているからである。正極活物質粒子153の表面全体にわたって第1導電材158を均一に結合させることで、電池の内部抵抗が小さくなり、大電流による放電特性を良好にすることができたと考えられる。
【0122】
さらには、本実施例2の電極板255が、炭素結合活物質粒子254及び第2導電材159が均一に分散した正極合材252を有しているからである。正極合材252中に炭素結合活物質粒子254が均一に分散していることで、電池の内部抵抗が小さくなり、大電流による放電特性が良好になると考えられる。その上、互いに隣り合う炭素結合活物質粒子254の間に、第2導電材159が均一に分散することになるので、炭素結合活物質粒子254間の導電ネットワークが良好になり、より一層、電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることができたと考えられる。
【0123】
なお、比較例3の正極合材に含まれている炭素結合活物質粒子をSEMで観察したところ、正極活物質粒子153の表面に、不均一に、第1導電材158が結合している様子を確認することができた。このことから、比較例3の製造方法では、プラネタリーミキサーで、炭素結合活物質粒子254とアセチレンブラックと結着材と溶媒を混練したときに、炭素結合活物質粒子254を構成する正極活物質粒子153の表面から第1導電材158の一部が脱落したといえる。このため、比較例3の二次電池は、実施例2の二次電池200に比べて、電池の内部抵抗が大きくなり、大電流による放電特性が劣ったと考えられる。
【0124】
(内部抵抗の評価)
また、各二次電池について、それぞれ、ソーラトロン製の1255WB型電気化学測定システム(周波数アナライザ+ポテンショガルバノスタット)を用いて、インピーダンスの測定を行った。具体的には、電池電圧を3.8Vとした各二次電池について、5mVの電位振幅を与えつつ、測定周波数を0.01Hz〜100kHzの範囲で変動させて、同期した電流値からインピーダンスの測定を行った。得られたインピーダンス測定結果より、直流抵抗(Ω)と反応抵抗(Ω)を算出した。これらの結果を表4に示す。
【0125】
【表4】

【0126】
まず、比較例1,3の二次電池と実施例2の二次電池200とについて、直流抵抗を比較する。表4に示すように、比較例1では4.40Ω、比較例3では2.82Ωとなった。これに対し、実施例1では1.81Ωとなり、比較例1,3に比べて極めて小さな値を示した。
【0127】
さらに、比較例1,3の二次電池と実施例2の二次電池200とについて、反応抵抗を比較する。表4に示すように、比較例1では10.45Ω、比較例3では10.23Ωとなった。これに対し、実施例2では9.28Ωとなり、比較例1,3に比べて小さな値を示した。
以上の結果より、実施例2の二次電池200は、比較例1,3の二次電池に比べて、内部抵抗(特に、直流抵抗)が小さいといえる。
【0128】
実施例2の二次電池200では、正極活物質粒子153、及び、正極活物質粒子153の表面全体にわたって均一に結合した第1導電材158を有する炭素結合活物質粒子254を含む正極板255を備えているため、内部抵抗が小さくなったと考えられる。すなわち、正極活物質粒子153の表面全体にわたって第1導電材158を均一に結合させることで、電池の内部抵抗を小さくすることができたと考えられる。
【0129】
さらに、本実施例2の電極板255が、炭素結合活物質粒子254及び第2導電材159が均一に分散した正極合材252を有していることも、内部抵抗が小さくなった要因と考えられる。正極合材252中に炭素結合活物質粒子254が均一に分散していることで、電池の内部抵抗が小さくなったと考えられる。その上、互いに隣り合う炭素結合活物質粒子254の間に、第2導電材159が均一に分散することになるので、炭素結合活物質粒子254間の導電ネットワークが良好になり、より一層、電池の内部抵抗を小さくすることができたと考えられる。
【0130】
以上において、本発明を実施例1,2に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0131】
例えば、実施例1,2では、本発明の電極板の製造方法を正極板に適用した。しかしながら、本発明の電極板の製造方法は、正極板のみならず、負極板にも適用できる。例えば、本発明の電極板の製造方法を、負極活物質としてLi4Ti512を用いて負極板を製造する場合に適用すると良い。
【0132】
具体的には、ステップS1(またはT1)において、負極活物質粒子(Li4Ti512)の表面にアセチレンブラックを結合させて、炭素結合活物質粒子を作製する。その後、ステップS2に進み、実施例1,2と同様に、攪拌機20を用いて、炭素結合活物質粒子、アセチレンブラック、結着材、及び溶媒を攪拌混合して、負極合材ペーストを作製する。次いで、ステップS3において、負極集電部材(例えば、銅箔)の表面に負極合材ペーストを塗布し、その後、実施例1,2と同様にステップS4,S5の処理を行うことで、負極板を得ることができる。この負極板を用いることで、電池の内部抵抗を小さくすることができ、大電流による放電特性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】実施例1,2にかかる二次電池100,200の斜視図である。
【図2】二次電池100,200の縦断面図である。
【図3】正極板155,255の拡大図である。
【図4】炭素結合活物質粒子154,254の拡大図である。
【図5】正極板155,255の製造の流れを示すフローチャートである。
【図6】攪拌混合工程で用いる攪拌機20を示す図である。
【図7】正極合材ペースト30,230を示す図である。
【図8】実施例2の炭素結合活物質粒子作製工程で用いる処理装置60の概略図である。
【符号の説明】
【0134】
1 攪拌槽
11 回転羽根
12 円筒部
20 攪拌機
30 正極合材ペースト(電極合材ペースト)
60 処理装置
65 処理槽(槽)
100 二次電池
150,250 電極体
151 正極集電部材(集電部材)
152,252 正極合材(電極合材)
153 正極活物質粒子(活物質粒子)
154,254 炭素結合活物質粒子
155,255 正極板(電極板)
156 負極板
157 セパレータ
158 第1導電材
159 第2導電材
161,163,261 結着材
162 溶媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板の製造方法であって、
活物質粒子と炭素材料からなる第1導電材とを結着材で結合させて、上記結着材を介して、上記第1導電材が上記活物質粒子の表面全体にわたって均一に結合した炭素結合活物質粒子を作製する、炭素結合活物質粒子作製工程と、
上記炭素結合活物質粒子、炭素材料からなる第2導電材、結着材、及び溶媒を混合する工程であって、
円筒形の攪拌槽、及び
上記攪拌槽内に設けられ、上記攪拌槽の内周面近傍を回転して移動する回転羽根であって、複数の孔が形成された円筒部を有する回転羽根、を有する攪拌機を用い、
上記攪拌機の上記攪拌槽内に、上記炭素結合活物質粒子、上記第2導電材、上記結着材、及び上記溶媒を入れ、上記回転羽根の回転により、上記炭素結合活物質粒子、上記第2導電材、上記結着材、及び上記溶媒を、上記攪拌槽の上記内周面に押しつけて薄膜円筒状に拡げながら攪拌混合して、電極合材ペーストを作製する攪拌混合工程と、
上記電極合材ペーストを集電部材に塗布する塗布工程と、を備える
電極板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極板の製造方法であって、
前記攪拌混合工程は、前記攪拌混合を5〜10分間行う
電極板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電極板の製造方法であって、
前記炭素結合活物質粒子作製工程は、
スプレードライ法を用いて、前記炭素結合活物質粒子を作製する
電極板の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電極板の製造方法であって、
前記炭素結合活物質粒子作製工程は、
前記活物質粒子及び前記第1導電材を槽内で流動させた状態で、上記槽内に前記結着材と溶媒を混合した液体を噴霧し、乾燥させて、上記活物質粒子と上記第1導電材とを上記結着材で結合させる
電極板の製造方法。
【請求項5】
活物質粒子、及び、
炭素材料からなる第1導電材であって、結着材を介して、上記活物質粒子の表面全体にわたって均一に結合した第1導電材、を有する
炭素結合活物質粒子と、
炭素材料からなる第2導電材と、を含み、
上記炭素結合活物質粒子及び上記第2導電材が均一に分散してなる電極合材と、
上記電極合材を担持する集電部材と、を備える
電極板。
【請求項6】
正極板と、負極板と、セパレータとを含む電極体を備える
二次電池であって、
上記正極板及び上記負極板の少なくともいずれかは、請求項5に記載の電極板である
二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−289601(P2009−289601A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141197(P2008−141197)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】