説明

電極用材料の作製方法

【課題】蓄電装置の特性を向上させることができる電極用材料の作製方法を提供することを目的の一とする。また、上記電極用材料を適用した、蓄電装置及びその応用形態を提供することを目的の一とする。
【解決手段】一般式A2−aMSiO(Aはアルカリ金属を表し、Mは遷移金属を表し、aは0以上2未満とする)で表される化合物を含む電極用材料の作製方法であって、一般式のAの供給源と成る化合物、一般式のMの供給源と成る化合物、及び一般式のSiの供給源と成る化合物を混合して、混合材料を作製し、混合材料を400℃以下の温度で熱処理して粉砕した後、フラックスを混合し、フラックスを混合した混合材料を、不活性ガス雰囲気において700℃以下の温度で熱処理する電極用材料の作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電極用材料の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや携帯電話などの携帯可能な電子機器の分野が著しく進歩している。携帯可能な電子機器において、小型軽量で信頼性を有し、高エネルギー密度且つ充電可能な蓄電装置が必要になっている。このような蓄電装置として、例えばリチウムイオン二次電池が知られている。また、環境問題やエネルギー問題の認識の高まりから二次電池を搭載した電気推進車両の開発も急速に進んでいる。
【0003】
リチウムイオン二次電池において、正極活物質として、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)、リン酸ニッケルリチウム(LiNiPO)などの、リチウム(Li)と鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)とを含むオリビン構造を有するリン酸化合物などが知られている(特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2参照)。
【0004】
リン酸鉄リチウムは組成式LiFePOで表され、リチウムがすべて引き抜かれたFePOも安定であるため、上記材料を用いて作製する蓄電装置の容量を、安全に高容量化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−25983号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Byoungwoo Kang、Gerbrand Ceder、「Nature」、2009、Vol.458(12)、p.190−193
【非特許文献2】F. Zhou et al.、「Electrochemistry Communications」、2004、6、p.1144−1148
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記リン酸化合物を用いる蓄電装置は、充放電の際に、1組成あたりのリチウムイオンの挿入及び脱離量を最大で1としかできず、蓄電装置の高容量化に限界があった。
【0008】
また、蓄電装置の電極用材料を作製するには高温処理が必要であるが、高温処理によって電極用材料が焼結し、電極用材料の粒子が大きくなることで、リチウムイオンの移動速度が遅く、充放電に時間がかかるという問題があった。
【0009】
上記問題を鑑み、本発明の一態様は、1組成あたりのリチウムイオンの挿入及び脱離量を最大で2とすることができる電極用材料の作製方法を提供することを目的の一とする。また、電極用材料の粒子の拡大を抑えることができる電極用材料の作製方法を提供することを目的の一とする。
【0010】
または、上記電極用材料を用いた蓄電装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、一般式A2−aMSiO(Aはアルカリ金属を表し、Mは遷移金属を表し、aは0以上2未満とする)で表される化合物を含む電極用材料の作製方法であり、一般式のAの供給源と成る化合物、一般式のMの供給源と成る化合物、及び一般式のSiの供給源と成る化合物を混合して、混合材料を作製し、混合材料を400℃以下の温度で熱処理して粉砕した後、フラックスを混合し、フラックスを混合した混合材料を、不活性ガス雰囲気において700℃以下の温度で熱処理する電極用材料の作製方法である。
【0012】
上記AはLiであり、aが0であることが好ましい。
【0013】
上記Mは鉄、マンガン、コバルト、ニッケルのいずれかであることが好ましい。
【0014】
上記フラックスは、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムの一または複数の化合物を用いることができる。
【0015】
上記不活性ガス雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンの一または複数を含むガス雰囲気であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
材料を合成する際にフラックスを用いることで、低温及び短時間での熱処理が可能となり、電極用材料の粒子の拡大を抑えることができる。そのため、フラックスを用いずに作製した電極用材料より、フラックスを用いて作製した電極用材料の方が、電極用材料の粒子を小さく作製することができる。フラックスを用いて作製した電極用材料でリチウムイオン二次電池を作製する場合、電極用材料の粒子が小さいため、充放電時のリチウムイオンに充分な速さが得られ、高速充放電が可能となる。また、低温および短時間での熱処理が可能となることで、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】蓄電装置の一例を説明するための断面図である。
【図2】蓄電装置の負極の作製方法を説明するための断面図である。
【図3】蓄電装置の負極の作製方法を説明するための断面図である。
【図4】蓄電装置の負極の作製方法を説明するための断面図である。
【図5】蓄電装置の負極の作製方法を説明するための断面図である。
【図6】蓄電装置の負極の作製方法を説明するための断面図である。
【図7】蓄電装置の応用の形態を説明するための図である。
【図8】蓄電装置の応用の形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書などにおいて開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
なお、図面などにおいて示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面などに開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0020】
なお、本明細書にて用いる第1、第2、第3といった序数を用いた用語は、構成要素を識別するために便宜上付したものであり、その数を限定するものではない。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、一般式A2−aMSiOで表される化合物を含む電極用材料の作製方法の一例について説明する。
【0022】
まず、一般式中のA、MおよびSiの供給源と成る化合物に溶液を加えて混合し、混合材料を作製する。ここで、一般式中のAは、例えば、リチウム(Li)元素を表す。また、一般式中のMは、例えば、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の元素を表す。
【0023】
一般式中のAの供給源と成る化合物として、例えば、炭酸リチウム(LiCO)、酸化リチウム(LiO)、硫化リチウム(LiS)、過酸化リチウム(Li)、水酸化リチウム(LiOH)、及び、メタケイ酸リチウム(LiSiO)等を用いることができる。また、一般式中のMの供給源と成る化合物として、例えば、酸化鉄(FeO)、酸化マンガン(MnO)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、シュウ酸鉄二水和物(FeC・2HO)、シュウ酸マンガン二水和物(MnC・2HO)、シュウ酸コバルト二水和物(CoC・2HO)、シュウ酸ニッケル二水和物(NiC・2HO)、炭酸マンガン(MnCO)等を用いることができる。また、一般式中のSiの供給源となる化合物として、例えば、酸化シリコン(SiO)を用いることができる。なお、本実施の形態では、一般式中のAの供給源と成る化合物に炭酸リチウムを用い、一般式中のMの供給源と成る化合物にシュウ酸鉄二水和物を用い、一般式中のSiの供給源となる化合物に酸化シリコンを用いることとする。
【0024】
一般式中のAの供給源と成る化合物としてリチウムを含む化合物を用いる。これは、リチウムのイオン半径が小さいため、蓄電装置の充放電を行う際に電極間で、リチウムイオンの移動が容易となるからである。また、リチウムで作製する電極用材料を蓄電装置に用いることで、1組成当たりのリチウムイオン等の挿入及び脱離量を最大で2とすることができる。このような材料を正極活物質とすることで、蓄電装置の容量を高容量化することができ、蓄電装置の特性向上に寄与することができる。また、一般式中のMの供給源と成る化合物として、酸化還元電位が大きい鉄、マンガン、コバルト、またはニッケル等の遷移金属を用いることで、高い放電電位が実現できる。そのため、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル等を含む酸化物またはシュウ酸塩を用いることで、放電容量の高い電極用材料を作製することが可能となり、蓄電装置の特性向上に寄与することができる。
【0025】
一般式中のA、M、及びSiの供給源と成る化合物を混合する方法には、例えば、ボールミル処理がある。具体的な方法は、化合物に揮発性の高いアセトン等の溶媒を加え、金属製またはセラミック製のボール(ボール径φ1mm以上10mm以下)を用いて、回転数50rpm以上500rpm以下、回転時間30分間以上5時間以下、の処理を行うというものである。ボールミル処理を行うことにより、化合物を混合するのと同時に、化合物の微粒子化を行うことができ、作製後の電極用材料(例えば、LiFeSiO)の微粒子化を図ることができる。また、ボールミル処理を行うことにより、化合物を均一に混合することができ、作製後の電極用材料の結晶性を高めることができる。なお、溶媒としてアセトンを示したが、エタノール、メタノール等も用いることができる。
【0026】
次に、混合材料を加熱して溶媒を蒸発させた後、ペレットプレスで力をかけてペレットを成型し、成型したペレットに対して第1の熱処理(仮焼成)を行う。
【0027】
例えば、ボールミル処理を行った化合物(炭酸リチウム、シュウ酸鉄二水和物、酸化シリコン)の混合材料を、50℃に加熱して溶媒(アセトン)を蒸発させた後、ペレットプレスにて14.7MPaの力を5分間かけ、ペレットに成型する。その後、ペレットに成型した混合物を、窒素雰囲気中で、焼成温度350℃、焼成時間10時間として第1の熱処理(仮焼成)を行う。
【0028】
熱処理は250℃以上450℃以下、好ましくは400℃以下の温度で、1時間以上20時間以下、好ましくは10時間以下行えばよい。400℃以下の低温で第1の熱処理(仮焼成)を行うことにより、結晶成長を抑制することができ、且つ、結晶核を形成することができる。そのため、電極用材料の粒子の拡大を抑えることができる。
【0029】
また、熱処理は、不活性ガス雰囲気において行えばよい。本実施の形態で示す不活性ガスとは、熱処理によって混合材料と反応しないガスのことを指す。不活性ガスとして、例えば、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等)、または窒素等を用いることができる。また、不活性ガスは、一または複数のガスを混合して用いても良い。不活性ガス雰囲気下で熱処理を行うことで、混合材料の酸化を防ぐことができる。例えば、混合材料としてケイ酸鉄リチウムを作製する場合、酸素を含む雰囲気下で熱処理を行うと、酸化鉄が生成され、組成が変化してしまう。
【0030】
次に、熱処理を行った混合材料を乳鉢等で粉砕し、フラックスを混合する。
【0031】
フラックスは、例えば、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)等のアルカリ金属塩化物及びアルカリ土類金属塩化物を用いることができる。本実施の形態では、フラックスとして塩化リチウムを用いることとする。
【0032】
粉砕した混合材料とフラックスを混合する方法は、上記と同様のボールミル処理により行うことができる。例えば、回転数50rpm以上500rpm以下、回転時間30分間以上5時間以下、の処理を行えばよい。
【0033】
次に、フラックスが含まれる混合材料を、再度ペレットプレスで力をかけてペレットを成型し、成型したペレットに対して第2の熱処理を行う。第2の熱処理でフラックスを液化させる。ペレットプレスの条件等は、上記と同様に行えばよい。
【0034】
第2の熱処理は、700℃以下(好ましくは650℃以下)の温度で、1時間以上20時間以下(好ましくは10時間以下)行えばよい。なお、第2の熱処理温度は、第1の熱処理温度より高くすることが好ましい。
【0035】
第2の熱処理における熱処理温度は、フラックスを混合していない場合、700℃以上の高温が必要である。しかし、700℃以上の熱処理では混合材料の焼結が起こってしまい、混合材料の粒子が大きくなってしまう。一方、フラックスを混合していれば、700℃以下の低温での熱処理で十分な結晶化が可能であり、混合材料の焼結を防ぐことができるため、混合材料の粒子の拡大を抑えることができる。フラックスを混合することで、混合材料の反応を早くすることができ、低温による熱処理が可能となり、且つ、熱処理時間の短縮が可能となる。また、熱処理温度は、フラックスを混合していれば、フラックスの融点以上であれば良い。
【0036】
熱処理は上記と同様に、不活性ガス雰囲気で行えばよい。
【0037】
次に、熱処理を行った混合材料中に含まれるフラックスを溶媒で洗い流す。溶媒は、例えば、温水、水、エタノール等を用いることができる。
【0038】
以上の工程より、低温および短時間での熱処理により、粒子の拡大が抑えられた電極用材料を作製することができる。粒子の拡大が抑えられた電極用材料でリチウム二次電池を作製する場合、リチウムイオンに充分な速さが得られ、高速充放電が可能となる。また、電極用材料作製時において、低温および短時間での熱処理が可能となることで、製造コストを低減できる。
【0039】
また、一般式中のAの供給源と成る化合物として、例えば、リチウムを含む化合物を用いる場合、本実施の形態で得られる電極用材料は、1組成当たりのリチウムイオンまたはナトリウムイオンの挿入及び脱離量を最大で2とすることができる。このような材料を正極用の活物質とすることで、蓄電装置の容量を高容量化することができ、蓄電装置の特性向上に寄与することができる。
【0040】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0041】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した電極用材料を、正極用の活物質として用いた蓄電装置の一例について説明する。なお、本実施の形態は、図1を用いて説明する。
【0042】
図1(A)に、蓄電装置2200の構造の一部を示す。蓄電装置2200は、正極2201と、正極2201と電解質2207を介して設けられた負極2211と、を有している。
【0043】
正極2201は、集電体2203と、集電体2203上に設けられた正極活物質層2205と、で構成される。集電体2203の材料としては、例えば、白金、銅、またはチタン、アルミニウム等の導電性材料を用いることができる。正極活物質層2205の材料としては、実施の形態1で示した材料を用いることができる。正極活物質層2205の材料及び作製方法は、実施の形態1に準じればよい。
【0044】
負極2211は、集電体2213と、集電体2213上に設けられた負極活物質層2215と、で構成されている。集電体2213の材料としては、例えば、白金、銅、又はチタン等の導電性材料を用いることができる。負極活物質層2215の材料としては、例えば、黒鉛等の炭素材料、リチウム金属、シリコン等を用いることができる。
【0045】
電解質2207は、反応物質(リチウムイオン等)を伝導する機能を有する。電解質2207の材料としては、固体または液体を用いることができる。電解質2207の材料が固体の場合は、例えば、LiPO、LiPOに窒素を混ぜたLiPO(x、y、zは正の実数)、LiS−SiS、LiS−P、LiS−B等を用いることができる。また、これらにLiIなどをドープしたものも用いることができる。また、電解質2207の材料が液体の場合、溶媒と、溶媒に溶解される溶質(塩)とを含んでいる溶液を用いることができる。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート、または、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを用いることができる。溶質(塩)としては、例えば、LiPF、LiBF、LiTFSA等の一または複数を含む軽金属塩を用いることができる。
【0046】
また、電解質2207が液体の場合は、セパレータ2209を設ける必要がある。セパレータ2209は、正極2201と負極2211との接触を防止するとともに、反応物質(リチウムイオン等)を通過させる機能を有する。セパレータ2209の材料としては、電解質2207に溶解しない材料、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、ナイロン(ポリアミド等)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維であり、ビナロンとも呼ぶ)、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン等を用いることができる。また、電解質2207に固体電解質を適用した場合でも、セパレータ2209を設ける構成とすることも可能である。
【0047】
次に、蓄電装置としてリチウムイオン二次電池を用いた場合の充放電の一例を、図1(B)及び図1(C)を用いて説明する。
【0048】
充電は、図1(B)に示すように、正極2201と負極2211との間に電源2221を接続することで行われる。電源2221から電圧が印加されると、正極2201のリチウムがイオン化し、リチウムイオン2217として正極2201から脱離されるとともに、電子2219が発生する。リチウムイオン2217は、電解質2207を介して負極2211に移動する。電子2219は、電源2221を介して負極2211に移動する。そして、リチウムイオン2217は、負極2211で電子2219を受け取り、リチウムとして負極2211に挿入される。
【0049】
一方、放電は、図1(C)に示すように、正極2201と負極2211の間に負荷2223を接続することで行われる。負極2211のリチウムがイオン化し、リチウムイオン2217として負極2211から脱離されるとともに、電子2219が発生する。リチウムイオン2217は、電解質2207を介して正極2201に移動する。電子2219は、負荷2223を介して正極2201に移動する。そして、リチウムイオン2217は、正極2201で電子2219を受け取り、リチウムとして正極2201に挿入される。
【0050】
以上のように、リチウムイオンが正極2201及び負極2211間を移動することで、充放電が行われる。蓄電装置2200の正極2201において、正極活物質層2205に実施の形態1で示した材料を適用する。
【0051】
材料を合成する際にフラックスを用いることで、低温及び短時間での熱処理が可能となり、電極用材料の粒子の拡大を抑えることができる。そのため、リチウムイオン二次電池として、粒子の拡大が抑えられた材料で作製される電極を用いる場合、リチウムイオンに充分な速さが得られ、高速充放電が可能となり、蓄電装置の特性を向上させることができる。また、低温および短時間での熱処理が可能となることで、製造コストを低減できる。
【0052】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0053】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2と異なる構成の蓄電装置について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0054】
蓄電装置の負極活物質層として、黒鉛などの炭素材料が実用化されている。しかしながら、炭素材料は理論容量に限界があり、蓄電装置において実用化されている以上の高容量化は難しい。そこで、本実施の形態では、負極活物質層としてシリコン材料を用いることで、蓄電装置の特性向上を図る。また、正極活物質として実施の形態1で示した材料を用いることで、さらなる蓄電装置の特性向上を図る。
【0055】
図2に負極の作製方法を示す。蓄電装置の構造は上記図1を適用することができる。また、本実施の形態に示す負極は、図1の負極2211に相当する。
【0056】
まず、負極集電体411上に、非晶質シリコン層413を形成する(図2(A)参照)。
【0057】
負極集電体411は、チタン、ニッケル、銅、インジウム、錫、または銀等の導電性の高い材料を用いることができる。本実施の形態では、負極集電体411にチタンを用いることとする。
【0058】
非晶質シリコン層413は、例えば、プラズマCVD法、減圧CVD法、スパッタリング法、または真空蒸着法等を用いて、厚さ100nm以上5μm以下(好ましくは1μm以上3μm以下)の範囲で形成することができる。非晶質シリコン層413の膜厚が100nmより薄いと、結晶化後に得られる負極活物質層417の膜厚が薄すぎて、充放電ができない恐れがある。非晶質シリコン層413の膜厚が5μmより厚いと、非晶質シリコン層413を結晶化しきれない恐れがある。または、非晶質シリコン層413の膜厚が5μmより厚いと、結晶化後に得られる負極活物質層417が充放電の際に応力変化によってピーリングしてしまう恐れがある。したがって、非晶質シリコン層413の膜厚は上述の範囲内にすることが好ましい。
【0059】
次に、触媒元素415を非晶質シリコン層413に添加する(図2(B)参照)。
【0060】
触媒元素415の添加方法は、例えば、塗布法、スパッタリング法、真空蒸着法等がある。上記方法を用いることで、非晶質シリコン層413の表面に直接付着させることができる。
【0061】
触媒元素を非晶質シリコン層に添加することで、後に行う結晶化のプロセス温度の低温化及びプロセス時間の短縮化が可能となる。具体的には、結晶化のプロセス温度を50℃乃至100℃程度引き下げることが可能であり、プロセス時間を1/5乃至1/10程度まで短縮することが可能である。
【0062】
触媒元素415としては、非晶質シリコンの結晶化を促進する元素、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、インジウム(In)、スズ(Sn)、銀(Ag)等の一または複数の金属元素を用いることができる。ニッケルは、触媒元素として、効果や再現性の点において非常に優れている。触媒としてニッケルを用いた場合、非晶質シリコンを結晶化させる際にニッケルシリサイドを形成し、非晶質シリコンが結晶化する際の結晶核として機能する。本実施の形態では、触媒元素415としてニッケルを用いることとする。ニッケルを添加する具体的な方法を、図3を用いて以下に示す。
【0063】
まず、負極集電体411上に形成された非晶質シリコン層413の表面に、触媒元素415を含む溶液416を添加する(図3(A)参照)。
【0064】
溶液416としては、例えば、酢酸ニッケル溶液、塩酸ニッケル溶液、硝酸ニッケル溶液、または硫酸ニッケル溶液等を用いることができる。本実施の形態では、溶液416として酢酸ニッケル溶液を用いることとする。
【0065】
次に、スピナー421を用いてスピンドライを行う(図3(B)参照)。
【0066】
スピンドライを行うことにより、非晶質シリコン層413表面に、均一に、触媒元素415を含む溶液416を保持させることができる。また、溶液416を添加する前に、非晶質シリコン層413表面に薄い酸化層を形成しておくことが好ましい。これは、非晶質シリコン層413表面が疎水性であるため、溶液416が水を含む溶液であると、溶液416が非晶質シリコン層413表面で弾かれ、触媒元素415が非晶質シリコン層413表面全体に添加できない恐れがあるからである。非晶質シリコン層413表面に薄い酸化層を形成することで、溶液416に対する濡れ性を高める(親水性にする)ことができる。酸化層を形成する方法としては、非晶質シリコン層413表面にUV光を照射する方法、または非晶質シリコン層413表面をアンモニア過水、オゾン水等で処理する方法等がある。このような方法で形成される酸化層は非常に薄いため、触媒元素415は酸化層を通って非晶質シリコン層413に到達することができる。
【0067】
以上のように、非晶質シリコン層413に、触媒元素415であるニッケルを添加することができる。
【0068】
次に、触媒元素415が添加された非晶質シリコン層413に熱処理を行う(図2(C)参照)。
【0069】
非晶質シリコン層413を結晶化させるための熱処理方法は、例えば、加熱炉にて行う方法、レーザビーム等の光照射を行う方法等がある。加熱炉において熱処理を行う場合は、450℃以上750℃以下、好ましくは550℃以上620℃以下の温度範囲で行うことができる。また、熱処理時間は、1時間以上24時間以下、好ましくは4時間以上10時間以下の範囲で行うことができる。例えば、550℃、4時間の熱処理を行えばよい。また、レーザビームを照射して熱処理を行う場合は、例えば、エネルギー密度を100mJ/cm以上400mJ/cm以下、好ましくは200mJ/cm以上400mJ/cm以下の範囲、代表的には250mJ/cmとして行うことができる。例えば、KrFエキシマレーザのレーザビーム(波長248nm、パルス幅20nsec)を用いて、熱処理を行えばよい。
【0070】
上記熱処理によって、非晶質シリコン層413は結晶化し、結晶性シリコン層(負極活物質層417)となる(図2(D)参照)。
【0071】
熱処理によって得られた結晶性シリコン層は、負極活物質層として用いることができる。また、負極集電体411と、負極集電体411上に形成された結晶性シリコン層(負極活物質層417)は、負極419として用いることができる。負極活物質層として結晶性シリコンを用いることで、非晶質シリコンを用いた場合よりも反応物質(リチウムイオン等)の拡散速度が速く、蓄電装置の特性のさらなる向上に結びつけることができる。
【0072】
非晶質シリコン層413中の触媒元素415は、熱処理によって移動し、結晶核となって機能する。そのため、結晶化を促進させることができる。例えば、触媒元素415にニッケルを用いた場合、熱処理により、ニッケルと非晶質シリコンとが反応してニッケルシリサイドを形成し、ニッケルシリサイドが結晶核となってその後の結晶成長に寄与する。これにより、結晶化が促進され、結晶化のプロセス温度の低温化及びプロセス時間の短縮化が可能となる。また結晶化のプロセス温度の低温化及びプロセス時間の短縮化が可能となることで、製造コスト削減及び生産性向上に寄与することができる。
【0073】
また、結晶性シリコン層に残留する触媒元素415は、導電性を有する金属元素であるため、除去する必要はない。
【0074】
熱処理後、結晶性シリコン層(負極活物質層417)の最表面に触媒元素が偏析する場合がある。この場合、結晶性シリコン層においては、深さ方向(膜厚方向)において、表面に近いほど、触媒元素415の濃度が高くなる。また、触媒元素415は熱処理により酸化され、導電性酸化物となる。例えば、触媒元素415としてニッケル、銅、インジウム、スズ、または銀等を用いた場合、結晶性シリコン層の最表面に酸化ニッケル、酸化銅、酸化インジウム、酸化スズ、または酸化銀等が偏析する。
【0075】
図4に、負極活物質層417(結晶性シリコン層)の最表面に導電性酸化物418が偏析している様子を示す。図4(A)は、導電性酸化物418が負極活物質層417の最表面に粒子状に偏析している様子を示している。図4(B)は、導電性酸化物418が負極活物質層417の最表面に層状に偏析している様子を示す。導電性酸化物418には導電性があるため、負極活物質層417の導電性を高めることができる。
【0076】
以上のように、負極活物質層として結晶性シリコン層が適用された負極419を作製することができる。
【0077】
蓄電装置の正極は、実施の形態1で示した電極用材料を用いて作製することとする。電極用材料を合成する際にフラックスを用いることで、低温及び短時間での熱処理が可能となり、電極用材料の粒子の拡大を抑えることができる。そのため、リチウムイオン二次電池として、粒子の拡大が抑えられた材料で作製される電極を用いる場合、リチウムイオンに充分な速さが得られ、高速充放電が可能となり、蓄電装置の特性を向上させることができる。また、低温および短時間での熱処理が可能となることで、製造コストを低減できる。正極の作製方法等は、実施の形態1を参照すればよい。また、電解質は実施の形態2を参照すればよい。
【0078】
以上より、本実施の形態で示した負極および実施の形態1で示した正極を用いることで、高速充放電が可能な蓄電装置を作製することができる。
【0079】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0080】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2及び実施の形態3と異なる構成の蓄電装置について説明する。
【0081】
実施の形態3では、負極集電体411上に非晶質シリコン層413を形成し、非晶質シリコン層413に触媒元素415を添加した後、熱処理により結晶化させることで、負極活物質層417となる結晶性シリコン層を得る例を示した。本実施の形態では、負極集電体そのものを触媒元素として利用し、負極活物質層となる結晶性シリコン層を形成する例について説明する。
【0082】
まず、負極集電体451上に、非晶質シリコン層453を形成する(図5(A)参照)。
【0083】
負極集電体451は、非晶質シリコン層の結晶化を促進する一または複数の触媒元素を含み、且つ、導電性を有する材料を用いる。触媒元素は、実施の形態3を参照すればよい。また、負極集電体451は、触媒元素の単体を用いてもよいし、触媒元素と他の材料との合金を用いてもよい。負極集電体451を合金とする場合は、リチウムと合金を作らない材料を選択することが好ましい。リチウムと合金を作る材料を用いると、負極集電体451自体の安定性が低下する恐れがある。
【0084】
非晶質シリコン層453は、実施の形態3で示した非晶質シリコン層413と同様に作製することができる。
【0085】
次に、非晶質シリコン層453に熱処理を行い、結晶性シリコン層(負極活物質層457)を形成する(図5(B)参照)。
【0086】
熱処理によって結晶化した結晶性シリコン層は、負極活物質層として用いることができる。また、負極集電体451と、負極集電体451上に形成された結晶性シリコン層(負極活物質層457)は、負極459として用いることができる。
【0087】
非晶質シリコン層453の熱処理により、負極集電体451に含まれる触媒元素は、負極集電体451から非晶質シリコン層453中に熱拡散して移動する。これにより、非晶質シリコン層453の結晶成長が、負極集電体451との界面から他方の面に向かって進行する。非晶質シリコン層453の深さ方向(膜厚方向)において、下(負極集電体451との界面)から上(他方の面)へ結晶成長が進行する。このため、得られた結晶性シリコン層は、深さ方向において、下から上に向かうほど、触媒元素の濃度が低い。
【0088】
熱処理条件等は、実施の形態3で示した非晶質シリコン層413の熱処理条件を参照すればよい。本実施の形態では、負極集電体451が触媒元素として作用するため、結晶化のプロセス温度の低温化及びプロセス時間の短縮化が可能となる。そして、製造コスト削減及び生産性向上に寄与することができる。
【0089】
また、本実施の形態では、負極集電体451自体が触媒元素として作用するため、触媒元素を添加する工程が不要となり、この点からも製造コスト削減及び生産性向上に寄与することができる。
【0090】
また、負極活物質層457(結晶性シリコン層)に残留する触媒元素は、導電性を有する金属元素であるため、除去する必要はない。
【0091】
以上のように、負極活物質層として結晶性シリコン層が適用された負極459を作製することができる。
【0092】
蓄電装置の正極は、実施の形態1で示した電極用材料を用いて作製することとする。電極用材料を合成する際にフラックスを用いることで、低温及び短時間での熱処理が可能となり、電極用材料の粒子の拡大を抑えることができる。そのため、リチウムイオン二次電池として、粒子の拡大が抑えられた材料で作製される電極を用いる場合、リチウムイオンに充分な速さが得られ、高速充放電が可能となり、蓄電装置の特性を向上させることができる。また、低温および短時間での熱処理が可能となることで、製造コストを低減できる。正極の作製方法等は、実施の形態1を参照すればよい。また、電解質は実施の形態2を参照すればよい。
【0093】
以上より、本実施の形態で示した負極および実施の形態1で示した正極を用いることで、高速充放電が可能な蓄電装置を作製することができる。
【0094】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0095】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2乃至実施の形態4と異なる構成の蓄電装置について説明する。
【0096】
本実施の形態では、集電体と、集電体材料及び活物質材料の混合層と、活物質層と、で負極を構成する。集電体には金属材料を用い、負極活物質層にはシリコン材料を用い、混合層は、金属材料とシリコン材料の混合層を用いることとする。
【0097】
負極活物質層として用いるシリコン材料は、炭素材料よりも理論的に容量を大きくすることが可能なため、蓄電装置の容量を高容量化することができ、蓄電装置の特性向上を図ることができる。
【0098】
集電体と負極活物質層との間に集電体材料と活物質層材料との混合層を設けることで、集電体と活物質層との密着性や電子授受の容易性等を高めることができる。そのため、さらに、蓄電装置の特性向上を図ることができる。
【0099】
正極活物質としては、実施の形態1に示した材料を用いることとする。
【0100】
負極の作製方法について、図6を用いて説明する。蓄電装置の構造としては図1を適用できる。また、本実施の形態で作製する負極は、図1の負極2211に相当する。
【0101】
まず、負極集電体471上に、非晶質シリコン層473を形成する(図6(A)参照)。
【0102】
負極集電体471としては、チタン、ニッケル、銅、インジウム、錫、又は銀等の導電性材料を用いることができる。
【0103】
非晶質シリコン層473は、実施の形態3に示した非晶質シリコン層413と同様に形成することができる。
【0104】
次に、非晶質シリコン層473を有した集電体の熱処理を行い、集電体材料と活物質材料との間に、混合層475を形成する(図6(B)参照)。
【0105】
負極集電体471として、例えば、チタンを用いた場合、混合層475は、チタンとシリコンの混合層を形成する。チタンとシリコンの混合層は、チタンシリサイド層であってもよい。
【0106】
上述した熱処理において、非晶質シリコン層473を結晶化し、結晶性シリコン層(負極活物質層477)を形成してもよい。熱処理によって結晶化した結晶性シリコン層は、負極活物質層として用いることができる。また、負極集電体471と、混合層475と、結晶性シリコン層(負極活物質層477)と、は負極479として用いることができる。(図6(C)参照)。
【0107】
なお、図6(B)における熱処理は、混合層475を形成する目的で行う。この熱処理で、非晶質シリコン層473が所望の結晶性まで結晶化されなければ、さらに結晶化のための熱処理(レーザビーム照射も含む)を行ってもよい。また、負極活物質層477は、非晶質シリコンや微結晶シリコンを用いてもよい。
【0108】
負極活物質層477として結晶性シリコンを用いることで、非晶質シリコンを用いた場合よりもリチウムイオン等の拡散速度が速く、蓄電装置の特性向上に寄与できるため好ましい。
【0109】
以上のように、負極活物質層として結晶性シリコン層が適用された負極479を作製することができる。
【0110】
蓄電装置の正極は、実施の形態1で示した電極用材料を用いて作製することとする。電極用材料を合成する際にフラックスを用いることで、低温及び短時間での熱処理が可能となり、電極用材料の拡大を抑えることができる。そのため、リチウムイオン二次電池として、粒子の拡大が抑えられた材料で作製される電極を用いる場合、リチウムイオンに充分な速さが得られ、高速充放電が可能となり、蓄電装置の特性を向上させることができる。また、低温および短時間での熱処理が可能となることで、製造コストを低減できる。正極の作製方法等は、実施の形態1を参照すればよい。また、電解質は実施の形態2を参照すればよい。
【0111】
以上より、本実施の形態で示した負極および実施の形態1で示した正極を用いることで、高速充放電が可能な蓄電装置を作製することができる。また、本実施の形態では、集電体と活物質層との間に混合層を形成しているため、集電体と活物質層との界面の特性(密着性、電子授受の容易性等)を向上させることができる。
【0112】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0113】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置の応用形態について説明する。
【0114】
蓄電装置は、さまざまな電子機器に搭載することができる。例えば、デジタルカメラやビデオカメラ等のカメラ類、携帯電話機、携帯情報端末、電子書籍用端末、携帯型ゲーム機、デジタルフォトフレーム、音響再生装置等に搭載することができる。また、蓄電装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道用電気車両、電動式作業車、電動式カート、電動式車椅子、又は電気自転車等の電気推進車両に搭載することができる。
【0115】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、高容量化、充放電速度の向上などの特性向上が図られている。蓄電装置の特性を向上させることで、蓄電装置の小型軽量化にも結びつけることができる。このような蓄電装置を搭載することで、電子機器や電気推進車両などの充電時間の短縮、使用時間の延長、小型軽量化などが可能となり、利便性やデザイン性の向上も実現できる。
【0116】
図7(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機3010は、筐体3011に表示部3012が組み込まれている。筐体3011は、さらに操作ボタン3013、操作ボタン3017、外部接続ポート3014、スピーカー3015、及びマイク3016等を備えている。このような携帯電話機に、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、利便性やデザイン性を向上させることができる。
【0117】
図7(B)は、電子書籍用端末の一例を示している。電子書籍用端末3030は、第1の筐体3031及び第2の筐体3033の2つの筐体で構成されて、2つの筐体が軸部3032により一体にされている。第1の筐体3031及び第2の筐体3033は、軸部3032を軸として開閉動作を行うことができる。第1の筐体3031には第1の表示部3035が組み込まれ、第2の筐体3033には第2の表示部3037が組み込まれている。その他、第2の筐体3033に、操作ボタン3039、電源3043、及びスピーカー3041等を備えている。このような電子書籍用端末に、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、利便性やデザイン性を向上させることができる。
【0118】
図8(A)は、電気自動車の一例を示している。電気自動車3050には、蓄電装置3051が搭載されている。蓄電装置3051の電力は、制御回路3053により出力が調整されて、駆動装置3057に供給される。制御回路3053は、コンピュータ3055によって制御される。
【0119】
駆動装置3057は、直流電動機若しくは交流電動機単体、又は電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。コンピュータ3055は、電気自動車3050の運転者の操作情報(加速、減圧、停止など)や走行時の情報(登坂や下坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路3053に制御信号を出力する。制御回路3053は、コンピュータ3055の制御信号により、蓄電装置3051から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置3057への出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
【0120】
蓄電装置3051は、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電することができる。蓄電装置3051として、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、充電時間の短縮化などに寄与することができ、利便性を向上させることができる。また、充放電速度の向上により、電気自動車の加速力向上に寄与することができ、電気自動車の性能向上に寄与することができる。また、蓄電装置3051の特性向上により、蓄電装置3051自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与することができ、燃費向上にも結びつけることができる。
【0121】
図8(B)は、電動式の車椅子の一例を示している。車椅子3070は、蓄電装置、電力制御部、制御手段等を有する制御部3073を備えている。制御部3073により出力が調整された蓄電装置の電力は、駆動部3075に供給される。また、制御部3073は、コントローラ3077と接続されている。コントローラ3077の操作により、制御部3073を介して駆動部3075が駆動させることができ、車椅子3070の前進、後進、旋回等の動作や速度を制御することができる。
【0122】
車椅子3070の蓄電装置についても、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電することができる。制御部3073の蓄電装置として、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、充電時間の短縮化などに寄与することができ、利便性を向上させることができる。また、蓄電装置の特性向上により、蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車椅子3070の使用者及び介助者の使い易さを高めることができる。
【0123】
なお、電気推進車両として鉄道用電気車両に蓄電装置を搭載させる場合、架線や導電軌条からの電力供給により充電することも可能である。
【0124】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0125】
411 負極集電体
413 非晶質シリコン層
415 触媒元素
416 溶液
417 負極活物質層
418 導電性酸化物
419 負極
421 スピナー
451 負極集電体
453 非晶質シリコン層
457 負極活物質層
459 負極
471 負極集電体
473 非晶質シリコン層
475 混合層
477 負極活物質層
479 負極
2200 蓄電装置
2201 正極
2203 集電体
2205 正極活物質層
2207 電解質
2209 セパレータ
2211 負極
2213 集電体
2215 負極活物質層
2217 リチウムイオン
2219 電子
2221 電源
2223 負荷
3010 携帯電話機
3011 筐体
3012 表示部
3013 操作ボタン
3014 外部接続ポート
3015 スピーカー
3016 マイク
3017 操作ボタン
3030 電子書籍用端末
3031 第1の筐体
3032 軸部
3033 第2の筐体
3035 第1の表示部
3037 第2の表示部
3039 操作ボタン
3041 スピーカー
3043 電源
3050 電気自動車
3051 蓄電装置
3053 制御回路
3055 コンピュータ
3057 駆動装置
3070 車椅子
3073 制御部
3075 駆動部
3077 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式A2−aMSiO(Aはアルカリ金属を表し、Mは遷移金属を表し、aは0以上2未満とする)で表される化合物を含む電極用材料の作製方法であって、
前記一般式のAの供給源と成る化合物、前記一般式のMの供給源と成る化合物、及び前記一般式のSiの供給源と成る化合物を混合して、混合材料を作製し、
前記混合材料を400℃以下の温度で熱処理して粉砕した後、フラックスを混合し、
前記フラックスを混合した混合材料を、不活性ガス雰囲気において700℃以下の温度で熱処理する電極用材料の作製方法。
【請求項2】
前記AはLiであり、aが0である請求項1に記載の電極用材料の作製方法。
【請求項3】
前記Mは鉄、マンガン、コバルト、ニッケルのいずれかを含む請求項1または2に記載の電極用材料の作製方法。
【請求項4】
前記フラックスは、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムの一または複数の化合物である請求項1乃至3のいずれか一に記載の電極用材料の作製方法。
【請求項5】
前記不活性ガス雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンの一または複数を含むガス雰囲気である請求項1乃至4のいずれか一に記載の電極用材料の作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−33473(P2012−33473A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139983(P2011−139983)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】