説明

電極用炭素材料

【課題】 電極充填性が高く、高エネルギー密度であり、且つ急速充放電性に優れた非水系二次電池用電極を提供すること。
【解決手段】電極用球状複層構造炭素材料を含む電極であって、電極上の活物質層の密度が0.5〜1.6g/cm3であり、電流密度5.0mA/cm2における急速放電容量が283mAh/g以上である非水系二次電池用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用炭素材料に関する。詳しくは、高容量で良好な急速充放電性を有する非水系二次電池を構成しうる電極用炭素材料および電極用複層構造炭素材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い高容量の二次電池が必要となってきている。特にニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度が高いリチウム二次電池が注目されてきている。その負極材料として、当初はリチウム金属を用いることが試みられたが、充放電を繰り返すうちに樹脂状(デンドライト状)にリチウムが析出し、セパレーターを貫通して正極まで達し、両極を短絡してしまう危険性があることが判明した。そのため、デンドライトの発生を回避することができる炭素系材料が金属電極に代わって着目されてきている。
【0003】
炭素系材料を使用した非水電解液二次電池としては、結晶化度の低い難黒鉛性炭素材料を負極材料に採用した電池が、まず上市された。続いて結晶化度の高い黒鉛類を用いた電池が上市され、現在に至っている。黒鉛の電気容量は372mAh/gで理論上最大であり、電解液の選択を適切に行えば、高い充放電容量の電池を得ることができる。さらに特開平4−171677号公報に開示されるような、複層構造を有する炭素質物を用いることも検討されている。これは、結晶性が高い黒鉛の長所(高容量かつ不可逆容量が小さい)と短所(プロピレンカーボネート系電解液を分解する)および結晶化度の低い炭素質物の長所(電解液との安定性に優れる)と短所(不可逆容量が大きい)を組み合わせ、互いの長所を生かしつつ、短所を補うという考えに基づいている。
【0004】
黒鉛類(黒鉛および黒鉛を含む複層炭素質物)は、難黒鉛性炭素材料に比べて結晶性が高く、真密度が高い。従って、これらの黒鉛類を用いて負極を構成すれば、高い電極充填性が得られ、電池の体積あたりのエネルギー密度を高めることができる。黒鉛類の粉末を用いて負極を構成する場合、粉末とバインダーを混合して分散媒を加えたスラリーを作成し、これを集電体である金属箔に塗布し、その後、分散媒を乾燥する方法が一般的に用いられている。この際、粉末の集電体への圧着と電極の極板厚みの均一化、極板容量の向上を目的として、さらに圧縮成型するのが一般的である。この圧縮工程により、負極の極板密度は向上し、電池の体積あたりのエネルギー密度は、さらに向上する。
【0005】
しかしながら、工業的に入手可能な通常の高結晶性黒鉛材料は、粒子形状が鱗片状、鱗状、板状である。これらの黒鉛質粒子を上記極板製造工程を経て極板化すると、極板密度は圧縮度に応じて上昇するが、その一方で粒子間隙が十分に確保されないためにリチウムイオンの移動が妨げられ、電池としての急速充放電性が低下してしまうという問題があった。さらに、板状の黒鉛質粒子を電極として成形した場合、スラリーの塗布工程、極板の圧縮工程の影響により、粉体の板面は高い確率で電極極板面と平行に配列される。従って、個々の粉体粒子を構成している黒鉛結晶子のエッジ面は、比較的高い確率で電極面と垂直な位置関係に成形される。この様な極板状態で充放電を行うと、正負極間を移動し、黒鉛に挿入・脱離されるリチウムイオンは、一旦粉体表面を回り込む必要があり、電解液中でのイオンの移動効率という点で著しく不利である。さらに、成形後の電極に残された空隙は、粒子が板状の形状をしているために電極外部に対して閉ざされてしまうという問題もあった。すなわち、電極外部との電解液の自由な流通が妨げられるため、リチウムイオンの移動が妨げられるという問題があった。
【0006】
一方、極板内でのリチウムイオンの移動に必要な空隙を確保する負極材料として、球状のメソカーボンマイクロビーズの黒鉛化物が提案され、既に商品化されている。形態が球状であれば、上述の極板圧縮工程を経ても、個々の粉体粒子には選択的な配列がおきず、エッジ面の等方向性が維持され、電極板中でのイオンの移動速度は良好に維持される。さらに電極内部に残存した空隙は、粒子形状が球状であるために電極外部とつながった状態であることから、リチウムイオンの移動は比較的自由であり、急速充放電にも対応可能な電極構造となる。しかしながら、メソカーボンマイクロビーズは、黒鉛としての結晶構造レベルが低いために、電気容量の限界が300mAh/gと低く、鱗片状、鱗状、板状な黒鉛に劣ることが既に広く知られている。
【0007】
これらの問題に着目し、非水電解液二次電池に使用される黒鉛の形状を規定した発明も行われている。例えば、特開平8−180873号公報には、鱗片状な粒子と比較的鱗片状でない粒子の比率等を規定した発明が開示されている。その一方で、特開平8−83610号公報には、これとは逆により鱗片状な粒子が好ましいことが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実用電池には、高い電気容量と優れた急速充放電性を兼ね備えた電極が求められている。しかしながら、このような要求を十分に満たす電極はいまだ提供されるに至っていない。このため、特に鱗片状、鱗状、板状の黒鉛質材料の急速充放電性を改善することが強く望まれている。そこで、本発明はこのような従来技術の問題点を解決することを課題とした。すなわち、材料の電極充填性が高く、高エネルギー密度であり、且つ急速充放電性に優れた電極用炭素材料を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、電極の性能を改善するためには、電極用黒鉛材料の形状や充填性が重要であり、比較的球状をしており充填性の高く高電気化学容量を有する黒鉛材料または炭素質材料を用いることで、高容量で、急速充放電性、サイクル特性を併せ持つ、優れた電極が得られるとの知見を得るに至った。
【0010】
本発明の電極用炭素材料は、このような知見に基づいて完成されたものであって、平均粒径が2〜35μm、広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.337nm未満、BET法比表面積が18m2/g未満であり、かつタップ密度が以下の式で表される範囲内であることを特徴とするものである。
【数1】

(上式において、TDは炭素材料のタップ密度(単位g/cm3)、APは炭素材料の平均粒径(単位μm)を表す)
【0011】
本発明の電極用炭素材料は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比(以下「R値」という)が0.9以下で、1580cm-1のピークの半値幅が26cm-1以下であるのが好ましい。また、真密度が2.21g/cm3以上であり、結晶子サイズが80nm以上であり、平均粒径が30μm以下であり、タップ密度が0.7g/cm3以上である電極用炭素材料を特に選択して用いることができる。また、本発明はこれらの電極用炭素材料を有機化合物と混合した後、該有機化合物を炭素化することによって製造される電極用複層構造炭素材料も提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料を用いた電池は、容量が大きく、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、さらに急速充放電特性に優れているという特徴を有する。また、高温下で放置したときの電池の保存性および信頼性が高く、低温における放電特性も極めて優れている。したがって、本発明の電極用炭素材料および電極用複層構造炭素材料は、リチウム電池をはじめとする電池の製造に有効に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の電極用炭素材料、電極用複層構造炭素材料および電極について詳細に説明する。
【0014】
電極用炭素材料
本発明の電極用炭素材料は、平均粒径、広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)、BET法比表面積およびタップ密度が所定の範囲内にあることを特徴としている。本発明の電極用炭素材料の平均粒径は、2〜35μmの範囲内である。平均粒径は、4〜30μmの範囲内であるのが好ましく、5〜27μmの範囲内であるのがより好ましく、7〜19μmの範囲内であるのがさらに好ましい。なお、本明細書において「〜」で記載される範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を示す。本発明の電極用炭素材料は、広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.337nm未満である。また、本発明の電極用炭素材料のBET法比表面積は18m2/g未満である。BET法比表面積は15m2/g以下であるのが好ましく、13m2/g以下であるのがより好ましい。
【0015】
さらに、本発明の電極用炭素材料のタップ密度は上記(式1)で表される範囲内である。本明細書において「タップ密度」とは、1000回タップした後の嵩密度を意味しており、以下の式で表される。
【数2】

粉体粒子の充填構造は、粒子の大きさ、形状、粒子間相互作用力の程度等によって左右されるが、本明細書では充填構造を定量的に議論する指標としてタップ密度を使用している。
【0016】
タップ充填挙動を表すものとして様々な式が提案されているが、その一例として以下の(式2)を挙げることができる。
【数3】

ここで、ρは充填の終局におけるかさ密度、ρnはn回充填時のかさ密度、kおよびAは定数である。本明細書でいう「タップ密度」は、20cm3セルへの1000回タップ充填時のかさ密度(ρ1000)を終局のかさ密度ρとみなしたものである。
【0017】
本発明の電極用炭素材料は、これらの条件を満たすものである限り、その他の物性は特に制限されない。ただし、その他の物性の好ましい範囲は以下のとおりである。アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおけるR値は、0.9以下が好適であり、0.7以下がより好ましく、0.5以下が最も好ましい。また、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm-1のピークの半値幅は26cm-1以下が好適であり、25cm-1以下がより好ましい。さらに、本発明の電極用炭素材料の真密度は2.21g/cm3以上であるのが好ましく、2.23g/cm3以上であるのがより好ましく、2.25g/cm3以上であるのがさらに好ましい。
【0018】
本発明の電極用炭素材料には、天然に産出する炭素材料を用いても、人工的に製造された炭素材料を用いてもよい。また、本発明の電極用炭素材料の製造方法も特に制限されない。したがって、例えば篩い分けや風力分級などの分別手段を用いて上記特性を有する電極用炭素材料を選別して取得することもできる。最も好ましい製造方法は、天然に産出する炭素材料や人工的に製造された炭素材料に対して、力学的なエネルギー処理を加えて改質して電極用炭素材料を製造する方法である。そこで、以下においてこの力学的エネルギー処理について説明する。
【0019】
力学的エネルギー処理を加える対象となる炭素材料は、天然または人造の黒鉛質粉末や、黒鉛前駆体である炭素質粉末である。これらの黒鉛質粉末や炭素質粉末は、面間隔(d002)が0.340nm未満、結晶子サイズ(Lc)が30nm以上、真密度が2.25g/cm3以上であるものが好ましい。中でも面間隔(d002)が0.338nm未満であるものがより好ましく、0.337nm未満であるものがさらに好ましい。また、結晶子サイズ(Lc)は80nm以上であるものがより好ましく、100nm以上であるものがさらに好ましい。平均粒径は10μm以上であるものが好ましく、15μm以上であるものがより好ましく、20μm以上であるものがさらに好ましく、25μm以上であるものがさらにより好ましい。平均粒径の上限については、1mm以下であるものが好ましく、500μm以下であるものがより好ましく、250μm以下であるものがさらに好ましく、200μm以下であるものがさらにより好ましい。
【0020】
黒鉛質粉末や炭素質粉末は、結晶性が高いものであっても低いものであっても原料として使用することができる。結晶性が低い原料は面配向性が比較的低くて構造に乱れがあるため、力学的エネルギー処理を行うことによって粉砕面が比較的等方的で丸みを帯びた処理物を得やすい。また、力学的エネルギー処理を行った後に、さらに熱処理を行えば結晶性を高めることができる。
【0021】
力学的エネルギー処理を加える対象となる炭素材料の中で、炭素六角網面構造が発達した高結晶性炭素材料として、六角網面を面配向的に大きく成長させた高配向黒鉛と、高配向の黒鉛粒子を等方向に集合させた等方性高密度黒鉛を挙げることができる。高配向黒鉛としては、スリランカあるいはマダカスカル産の天然黒鉛や、溶融した鉄から過飽和の炭素として析出させたいわゆるキッシュグラファイト、一部の高黒鉛化度の人造黒鉛を好適なものとして例示することができる。
【0022】
天然黒鉛は、その性状によって、鱗片状黒鉛(Flake Glaphite)、鱗状黒鉛(Crystalline(Vein) Glaphite)、土壌黒鉛(Amorphousu Glaphite)に分類される(「粉粒体プロセス技術集成」((株)産業技術センター、昭和49年発行)の黒鉛の項、および「HANDBOOK OF CARBON,GRAPHITE,DIAMOND AND FULLERENES」(Noyes Publications発行)参照)。黒鉛化度は、鱗状黒鉛が100%で最も高く、これに次いで鱗片状黒鉛が99.9%で高いが、土壌黒鉛は28%と低い。天然黒鉛の品質は、主に産地や鉱脈により定まる。鱗片状黒鉛は、マダガスカル、中国、ブラジル、ウクライナ、カナダ等に産し、鱗状黒鉛は、主にスリランカに産する。土壌黒鉛は、朝鮮半島、中国、メキシコ等を主な産地としている。これらの天然黒鉛の中で、土壌黒鉛は一般に粒径が小さいうえ、純度が低い。これに対して、鱗片状黒鉛や鱗状黒鉛は、黒鉛化度や不純物量が低い等の長所があるため、本発明において好ましく使用することができる。
【0023】
人造黒鉛は、非酸化性雰囲気下において石油コークスまたは石炭ピッチコークスを1500〜3000℃で加熱することによって製造することができる。本発明では、力学的エネルギー処理および熱処理を行った後に高配向かつ高電気化学容量を示すものであれば、いずれの人造黒鉛も原料として使用することができる。
【0024】
これらの炭素材料に対する力学的エネルギー処理は、処理前後の平均粒径比が1以下になるように行う。「処理前後の平均粒径比」とは、処理後の平均粒径を処理前の平均粒径で除した値である。ここでいう平均粒径はレーザー式粒径分布測定機で測定した体積基準の粒径分布である。レーザー式粒径分布測定機で測定すると、形状に異方性のある粒子でも等方的に平均化して実質的に球として換算した粒子径分布が得られる。
【0025】
本発明の電極用炭素材料を製造するために行う力学的エネルギー処理では、処理前後の平均粒径比が1以下になるようにする。これに対して、造粒すると平均粒径比は1以上になり、かつタップ密度も上昇してしまう。造粒した粉粒体は、最終的に成形する過程で処理前の状態に戻ることが十分に予想されるため、好ましくない。
【0026】
力学的エネルギー処理は、粉末粒子の処理前後の平均粒径比が1以下となるように粒子サイズを減ずると同時に、粒子形状を制御するものである。粉砕、分級、混合、造粒、表面改質、反応などの粒子設計に活用できる工学的単位操作の中では、力学的エネルギー処理は粉砕処理に属する。
【0027】
粉砕とは、物質に力を加えて、その大きさを減少させ、物質の粒径や粒度分布、充填性を調節することを指す。粉砕処理は、物質へ加える力の種類、処理形態により分類される。物質に加える力は、たたき割る力(衝撃力)、押しつぶす力(圧縮力)、すりつぶす力(摩砕力)、削りとる力(剪断力)の4つに大別される。一方、処理形態は、粒子内部に亀裂を発生させ、伝播させていく体積粉砕と、粒子表面を削り取っていく表面粉砕の二つに大別される。体積粉砕は、衝撃力、圧縮力、剪断力により進行し、表面粉砕は、摩砕力、剪断力により進行する。粉砕は、これらの物質に加える力の種類と処理形態を様々に組合わせた処理である。その組み合わせは、処理目的に応じて適宜決定することができる。
【0028】
粉砕は、爆破など化学的な反応や体積膨張を用いて行う場合もあるが、粉砕機などの機械装置を用いて行うのが一般的である。本発明の電極用炭素材料の製造に用いられる粉砕処理は、体積粉砕の有無に関わらず、最終的に表面処理の占める割合が高くなるような処理であるのが好ましい。それは、粒子の表面粉砕が黒鉛質粒子または炭素質粒子の角を取って、粒子形状に丸みを導入するために重要だからである。具体的には、ある程度体積粉砕が進んでから表面処理を行ってもよいし、体積粉砕をほとん進めずに表面処理のみを行ってもよいし、さらには、体積粉砕と表面処理を同時に行ってもよい。最終的に表面粉砕が進み、粒子の表面から角がとれるような粉砕処理を行うのが好ましい。
【0029】
力学的エネルギー処理を行う装置は、上記の好ましい処理を行うことが可能なものの中から選択する。本発明者らが検討したところ、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置が有効であることが明らかになった。具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有していて、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材料に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、体積粉砕を進行させながら表面処理を行う装置が好ましい。また、炭素材料を循環または対流させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのがより好ましい。
【0030】
このような好ましい装置の一例として、(株)奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムを挙げることができる。この装置を用いて処理する場合は、回転するローターの周速度を30〜100m/秒にするのが好ましく、40〜100m/秒にするのがより好ましく、50〜100m/秒にするのがさらに好ましい。また、処理は、単に炭素材料を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環または滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環または滞留させて処理するのがより好ましい。
【0031】
原料とする炭素質粉末の真密度が2.25未満で結晶性がそれほど高くない場合には、力学的エネルギー処理を行った後に、さらに結晶性を高める熱処理を行うことが好ましい。熱処理は2000℃以上で行うのが好ましく、2500℃以上で行うのがより好ましく、2800℃以上で行うのがさらに好ましい。
【0032】
このような力学的エネルギー処理を行うことによって黒鉛質粒子または炭素質粒子に丸みを導入し、これらの粒子の充填性を改善することができる。このように粒子に丸みを導入することが以下に説明するように重要である。粉体粒子の充填性を高めるためには、粒子と粒子の間にできる空隙に入り込むことができるように、より小さな粒子を充填するのがよいことが従来から知られている。このため、炭素質粉末または黒鉛質粒子に対して粉砕等の処理を行って粒径を小さくすれば充填性が高まるとも考えられるが、このような方法で粒径を小さくしても一般に充填性は却って低下してしまう。これは、粉砕することによって粒子形状がより不定形になってしまうためであると考えられる。
【0033】
一方、粉体粒子群の中の一つ粒子(着目粒子)に接触している粒子の個数(配位数n)が多いほど、充填層の空隙の占める割合は低下する。したがって、充填率に影響を与える因子として、粒子の大きさの比率と組成比(すなわち粒径分布)が重要である。ただし、この検討はモデル的な球形粒子群で行ったものであり、本発明で取り扱う黒鉛質粉末や炭素質粉末の粒子は、鱗片状、鱗状、板状であり、単に一般的な粉砕、分級等だけで粒径分布を制御して、充填率を高めようと試みても、目的とする高充填状態を生み出すことはできない。
【0034】
一般的に、鱗片状、鱗状、板状の黒鉛質または炭素質粒子は、粒子径が小さくなるほど充填性が悪化する傾向にある。これは、粉砕により粒子がより不定形化する;粒子の表面に「ささくれ」や「はがれかけ」、「折れ曲がり」などの突起状物が生成増加する;さらには粒子表面に、より微細な不定形粒子がある程度の強度で付着される等の原因で、隣接粒子との間の抵抗が大きくなり充填性を悪化させるためと考えられる。これらの不定形性が減少し、粒子形状が球形に近づけば粒子径が小さくなっても充填性の減少は少なくなり、理論的には大粒径炭素粉末でも小粒径炭素粉末でも同程度のタップ密度を示すことになる。
【0035】
本発明者らの検討では、真密度と平均粒径がほぼ等しい炭素質あるいは黒鉛質粒子では、形状が球状であるほど、タップ密度が高い値を示すことが確認されている。すなわち、タップ密度を上げるためには、粒子の形状に丸みを帯びさせ、球状に近づけることが重要である。粒子形状が球状に近づけば、粉体の充填性も大きく向上する。
【0036】
本発明では、以上の理由により、球形化度の指標に粉体のタップ密度を採用している。処理後の粉粒体の充填性が処理前に比べて上昇している場合は、用いた処理方法により粒子が球状化した結果と考えることができる。また、粒径を大きく低下させながら処理を行った場合に得られる炭素材料のタップ密度が、一般的な粉砕で得られる同程度の粒径の炭素材料のタップ密度に比べて高い場合も、球状化した結果と考えることができる。
【0037】
電極用複層構造炭素材料
本発明の電極用複層構造炭素材料は、焼成工程により炭素化される有機化合物と前記特性を有する本発明の電極用炭素材料とを混合した後に、該有機化合物を焼成炭素化することによって調製することができる。電極用炭素材料と混合する有機化合物は、焼成することによって炭素化するものであればとくにその種類は制限されない。したがって、液相で炭素化を進行させる有機化合物であっても、固相で炭素化を進行させる有機化合物であってもよい。
【0038】
液相で炭素化を進行させる有機物としては、例えば軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、石炭液化油等の石炭系重質油、アスファルテン等の直流系重質油、原油、ナフサなどの熱分解時に副生するナフサタール等分解系重質油等の石油系重質油、分解系重質油を熱処理することで得られるエチレンタールピッチ、FCCデカントオイル、アシュランドピッチなどの熱処理ピッチ等を挙げることができる。さらにポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等のビニル系高分子と3−メチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、3,5−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂等の置換フェノール樹脂、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジンなどの窒素環化合物、チオフェンなどのイオウ環化合物などを挙げることができる。
【0039】
また、固相で炭素化を進行させる有機化合物としては、例えばセルロースなどの天然高分子、ポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリルなどの鎖状ビニル樹脂、ポリフェニレン等の芳香族系ポリマー、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等熱硬化性樹脂やフルフリルアルコールのような熱硬化性樹脂原料などを挙げることができる。
【0040】
これらの有機化合物と電極用炭素材料から本発明の電極用複層構造炭素材料を製造する方法として、以下の工程からなる典型的な製造方法を例示することができる。
(第1工程)電極用炭素材料、有機化合物、必要に応じて溶媒を種々の市販の混合機や混練機等を用いて混合し、混合物を得る工程。
(第2工程)前記混合物をそのまま、或いは必要により撹拌しながら加熱し、溶媒を除去した中間物質を得る工程。
(第3工程)前記混合物または中間物質を、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下または非酸化性雰囲気下で500〜3000℃に加熱し、炭素化物質を得る工程。
(第4工程)前記炭素化物質に対して粉砕、解砕、分級処理等を施して粉体加工する工程。
【0041】
第1工程の混合に際しては、溶媒を使用してもよいし、使用しなくてもよい。溶媒を使用する場合は、その種類および量は特に制限されない。第1工程において、有機化合物と電極用炭素材料を混合することによって、電極用炭素材料の粉末粒子の表面に有機化合物を付着させることができる。第2工程の加熱温度は、通常300℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上であり、上限は特に限定されないが通常3000℃以下、好ましくは2800℃以下、より好ましくは2500℃以下、さらに好ましくは1500℃以下である。第2工程は省略することも可能であるが、通常は第2工程を行って中間物質を得た後に、第3工程を行う。
【0042】
第3工程の加熱処理では、熱履歴温度条件が重要である。その下限温度は、有機化合物の種類や熱履歴によって若干異なるが、通常は500℃以上、好ましくは700℃以上、さらに好ましくは900℃以上である。一方、上限温度については、基本的に上記電極用炭素材料の炭素質あるいは黒鉛質粒子の結晶構造を上回る構造秩序を有しない温度まで上げることができる。従って、熱処理の温度は通常3000℃以下、好ましくは2800℃以下、さらに好ましくは2500℃以下、特に好ましくは1500℃以下である。昇温速度、冷却速度、熱処理時間などは目的に応じて任意に設定することができる。また、比較的低温領域で熱処理した後、所定の温度に昇温することもできる。
【0043】
第4工程は、必要に応じて粉砕、解砕、分級処理等を施して粉体加工する工程であるが、省略することも可能である。また、第4工程は、第3工程の前に行うこともできるし、第3工程の前後両方で行うこともできる。これらの工程に用いる反応機は回分式でも連続式でもよい。また、一基でも複数基でもよい。
【0044】
本発明の電極用複層構造炭素材料における有機化合物由来の炭素質物の割合(以下「被覆率」という)は、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%となるように調整する。また、本発明の電極用複層構造炭素材料は、体積基準の平均粒径が2〜70μm、好ましくは4〜40μm、より好ましくは5〜35μm、さらに好ましくは7〜25μmである。BET法を用いて測定した比表面積は好ましくは1〜10m2/g、より好ましくは1〜7m2/g、さらに好ましくは1〜4m2/gの範囲内であることが好ましい。さらに、本発明の電極用複層構造炭素材料は、波長5145cm-1のアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析、CuKα線を線源としたX線広角回折の回折図において、核となる黒鉛質粒子または炭素質粒子の結晶化度を上回らないことが好ましい。
【0045】
R値は、好ましくは0.01〜1.0、より好ましくは0.05〜0.8、さらに好ましくは0.1〜0.7である。また、タップ密度は炭素被覆により使用した核黒鉛材料よりもさらに向上することもあるが、0.7〜1.4g/cm3の範囲内に制御することが望ましい。複層構造化によって、核となる電極用炭素材料のタップ密度がさらに向上し、かつ、その形状がさらに丸みを帯びる効果が現れることもある。
【0046】
電極
本発明の電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料を用いて、電極を製造することができる。特に本発明の電極用複層構造炭素材料は、電極の製造に非常に好ましく用いることができる。その製造方法は特に制限されず、一般に用いられている方法にしたがって製造することができる。典型的な方法として、電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料に結着剤や溶媒等を加えてスラリー状にし、得られたスラリーを銅箔等の金属製の集電体の基板に塗布して乾燥する方法を挙げることができる。また、電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料をそのままロールプレスしたり、圧縮成型器等によって圧密化したりすることによって極板の充填密度を向上させ、単位体積当たりの電極量を増加させることもできる。さらに、圧縮成形等によって電極の形状に成形することもできる。
【0047】
電極製造に使用することができる結着剤としては、溶媒に対して安定なポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・a−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン、特にリチウムイオンのイオン伝導性を有する高分子組成物を例示することができる。
【0048】
イオン伝導性を有する高分子としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等の高分子化合物に、リチウム塩、またはリチウムを主体とするアルカリ金属塩を複合させた系、あるいはこれに炭酸プロピレン、炭酸エチレン、g−ブチロラクトン等の高い誘電率を有する有機化合物と直鎖状カーボネート等低粘度の有機化合物を配合した系を用いることができる。この様な、イオン伝導性高分子組成物の室温におけるイオン導電率は、好ましくは10-5s/cm以上、より好ましくは10-3s/cm以上である。
【0049】
電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料と結着剤との混合形式として、各種の形態をとることができる。例えば、両者の粒子が混合した形態、繊維状の結着剤が炭素質物の粒子に絡み合う形で混合した形態、結着剤の層が炭素質物の粒子表面に付着した形態などをとることができる。両者の混合割合は、電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料に対して結着材を0.1〜30重量%にするのが好ましく、0.5〜10重量%にするのがより好ましい。30重量%以上の結着剤を添加すると電極の内部抵抗が大きくなり、逆に0.1重量%以下では集電体と電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料との結着性が劣る傾向にある。
【0050】
本発明の電極用炭素材料または電極用複層構造炭素材料からなる電極は、ロールプレスや圧縮成形等を行うことによって圧密された電極上の活物質層の密度を0.5〜1.6g/cm3、好ましくは0.7〜1.55g/cm3とすることにより高効率放電や低温特性を損なうことなく電池の単位体積当たりの容量を最大に引き出すことができるようになる。このとき、本発明の炭素材料のタップ密度が高いこと、すなわち炭素材料が球形に近いために、電極中の空隙が閉ざされることが少なく、従ってリチウムイオンの拡散がよりスムースに行われるものと考えられる。
【0051】
このようにして作製した電極を負極とし、通常使用されるリチウムイオン電池用の金属カルコゲナイド系正極およびカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した電池は、容量が大きく、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、高温下での放置における電池の保存性および信頼性が高く、高効率放電特性および低温における放電特性に極めて優れたものである。なお、正極、電解液等の電池構成上必要な部材の選択については何ら制約を設けるものではない。
【実施例】
【0052】
以下に具体例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の具体例に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0053】
(実施例1)(株)奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型(表1では「装置a」という)または(株)ターボ工業社製T−400型ターボミル(4J型)(表1では「装置b」という)を用いて黒鉛100gを処理した。黒鉛原料の種類、処理装置の種類、ローターの周速度および処理時間を表1に記載されるとおりに設定して8種類の電極用炭素材料を調製した。
【0054】
調製した各電極用炭素材料について、以下の物性をそれぞれ測定した。
(1)平均粒径界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの2体積%水溶液(約1ml)を電極用炭素材料に混合し、イオン交換水を分散媒としてレーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)にて体積基準の平均粒径(メジアン径)を測定した。
(2)X線回折電極用炭素材料に約15%のX線標準高純度シリコン粉末を加えて混合し、得られた混合物を試料セルに詰め、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を線源として反射式ディフラクトメーター法によって広角X線回折曲線を測定し、学振法を用いて面間隔(d002)および結晶子サイズ(Lc)を求めた。
【0055】
(3)BET比表面積大倉理研社製AMS−8000を用い、予備乾燥のために350℃に加熱し、15分間窒素ガスを流した後、窒素ガス吸着によるBET1点法によって測定した。
(4)タップ密度粉体密度測定器((株)セイシン企業社製タップデンサーKYT−3000)を用い、電極用炭素材料が透過する篩として目開き300μmの篩を使用し、20cm3のタップセルに粉体を落下させてセルを満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行って、その時のタップ密度を測定した。
(5)真密度0.1%界面活性剤水溶液を使用し、ピクノメーターによる液相置換法によって測定した。
【0056】
(6)ラマン測定日本分光社製NR−1800を用い、波長514.5nmのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580cm-1の付近のピークPAの強度IA、1360cm-1の範囲のピークPBの強度IBを測定し、その強度の比R=IB/IAと1580cm-1の付近のピークの半値幅を測定した。このとき、粉末状態の電極用炭素材料を自然落下によりセルに充填し、セル内のサンプル表面にレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させて測定を行った。
【0057】
これらの物性の測定結果をまとめて表1に示す。
【表1】

【0058】
なお、原料として使用した黒鉛の物性を表2に示す。
【表2】

【0059】
(実施例2)表3に記載される所定の炭素材料3kgと石油系タールを1kgを、(株)マツボー社製のM20型レーディゲミキサー(内容積20リットル)に投入し、混練を行った。続いて、窒素雰囲気下で700℃まで昇温して脱タール処理した後に、1300℃まで昇温して熱処理を行った。得られた熱処理物をピンミルにて解砕し、粗粒子を除く目的で分級処理を行い、最終的に4種類の複層構造炭素材料を調製した。各複層構造炭素材料について、被覆率、平均粒径、BET比表面積、タップ密度およびラマン測定のR値を測定した。被覆率は以下の式にしたがって求め、その他の値は、実施例1と同じ方法により求めた。
【数4】

(上式において、Kは炭素材料の量(kg)、Tは石油系タールの量(kg)、Dは混練物の脱タール処理前の量(kg)、Nは熱処理後の熱処理物回収量(kg)である)
【0060】
結果を表3にまとめて示す。
【表3】

【0061】
(試験例)調製した炭素材料を用いて半電池を作製して、充放電特性を試験した。
1)半電池の作成炭素材料5gに、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)のジメチルアセトアミド溶液を固形分換算で10重量%加えたものを撹拌し、スラリーを得た。このスラリーをドクターブレード法で銅箔上に塗布し、80℃で予備乾燥を行った。さらに極板密度が1.4g/cm3または1.5g/cm3となるようにロールプレス機により圧密化させたのち、直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、110℃で減圧乾燥をして電極とした。しかる後に、電解液を含浸させたセパレーターを中心に電極とリチウム金属電極とを対向させたコインセルを作成し、充放電試験を行った。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを重量比2:8の比率で混合した溶媒に過塩素酸リチウムを1.5モル/リットルの割合で溶解させたものを使用した。
【0062】
2)不可逆容量の測定電流密度0.16mA/cm2で0Vまで充電を行い、次いで電流密度0.33mA/cm2で1.5Vまで放電させたときの1回目の充電容量から1回目の放電容量引いた値を不可逆容量とした。
3)放電容量および急速放電特性の測定電流密度0.16mA/cm2での0Vまでの充電および電流密度0.33mA/cm2での1.5Vまでの放電を3回繰り返し、その時の3回目の放電容量を「放電容量」とて記録した。次に、充電を電流密度0.16mA/cm2で0Vまで行い、放電をそれをぞれ電流密度2.8mA/cm2、5.0mA/cm2で1.5Vまで行い、得られた容量をそれぞれの電流密度2.8mA/cm2および5.0mA/cm2における急速放電容量とし、急速放電特性の指標とした。
【0063】
これらの試験結果をまとめて表4に示す。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が2〜35μm、広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.337nm未満、BET法比表面積が18m2/g未満であり、かつタップ密度が以下の(式1)で表される範囲内であることを特徴とする電極用炭素材料。
【数1】

(上式において、TDは炭素材料のタップ密度(単位g/cm3)、APは炭素材料の平均粒径(単位μm)を表す)
【請求項2】
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.9以下で、1580cm-1のピークの半値幅が26cm-1以下であることを特徴とする請求項1記載の電極用炭素材料。
【請求項3】
真密度が2.21g/cm3以上であることを特徴とする請求項1または2記載の電極用炭素材料。
【請求項4】
結晶子サイズが80nm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極用炭素材料。
【請求項5】
平均粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極用炭素材料。
【請求項6】
タップ密度が0.7g/cm3以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極用炭素材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の炭素材料を有機化合物と混合した後、該有機化合物を炭素化することによって製造される電極用複層構造炭素材料。

【公開番号】特開2011−66010(P2011−66010A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259941(P2010−259941)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【分割の表示】特願2007−61301(P2007−61301)の分割
【原出願日】平成11年1月26日(1999.1.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】