説明

電気コネクタ

【課題】 クロストークを低減しつつ高速通信を可能にするとともに、基板上の電子部品の配置を制限することなく、配線パターンが複雑にならない電気コネクタを提供する。
【解決手段】 本発明の電気コネクタは、各々が、ケーブルの各端子と当接する接点43と、基板上の信号端子またはグランド端子に接続されるか、いずれにも接続されない脚部46とを備える複数のコンタクト40、49と、ケーブルの一端を収容する収容溝42と、各コンタクト40、49を装着するための複数の装着溝と、導電性を有し、ケーブルの収容溝42への挿入に伴ってその挿入方向に倒される蓋部48と、蓋部48に連続し、複数の接点43に対向して回転可能に設けられ、蓋部48が倒されるにつれて収容溝42内に突出する加圧部47とを備えるハウジング41とを含み、グランド端子に接続されるコンタクトといずれにも接続されないコンタクト49とが倒された蓋部48に接触して導通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端に所定間隔で配列される複数の端子を備えるケーブルを、複数の信号端子およびグランド端子を備える電子部品に電気的に接続するための電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話といった小型モバイル機器の発達で、高周波数域を利用した無線広帯域通信(ブロードバンド)が一般的になっており、データ容量の大きい音楽ファイルや動画ファイルが高速でダウンロードできるようになっている。これらの小型モバイル機器のほか、パーソナルコンピュータ、プリンタ、複写機、ステレオ、テレビ、ビデオデッキ、電話機、CDプレーヤ、DVDプレーヤまたはDVDレコーダ等の電子機器において、限られた空間に配置され、電子部品を実装する基板間を接続するために、折り曲げ可能なフレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント配線板(FPC)が使用されている。
【0003】
FFCやFPC(以下、FFC等とする。)は、ポリエステルテープ等のプラスチックテープやポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム上に、銅や銅合金からなる導線を並行して一定間隔に並べ、プラスチックテープやフィルムで覆うことにより製造されている。FFC等は、データの伝送容量および通信速度の増加と電子機器の小型化に伴い、導線数が増加し、導線間の間隔が狭ピッチになってきている。
【0004】
通信速度が高速化し、導線間の間隔が狭くなることによって、ノイズの影響が顕著になってきている。このノイズは、1つの導線の信号が他の導線へ移るクロストークが1つの要因となっている。音楽や映画をストリーミングして視聴する場合にクロストークが発生すると、ダウンロードするデータ信号が他の導体へ移り、音飛びやコマ落ちの原因となる。このため、このクロストークを低減させるためのケーブルやコネクタが提案されている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1参照)。
【0005】
上記ケーブルとしては、個々のケーブル信号線の周りに絶縁層を設けたものを並行に配列したものや、グランド層に接触するグランド線間に1または2本の信号線を設けたもの等が採用されている。このように絶縁層またはグランド線を信号線間に設けることにより、並行する他の信号線へ信号が移りにくくし、その結果、ノイズを低減することができる。
【0006】
また、上記コネクタとしては、内部にケーブル信号線とグランド線に接続する基板を備えるとともに、その基板の信号配線の間にグランドが形成されたコプレナー構造に形成される基板内蔵型コネクタ、グランドパッドやグランドパターンを交互に設けたコネクタが採用されている。このようにグランドによって挟む構造にすることで、並行する他の信号パターン等に信号が移にくくし、ノイズを低減することができる。
【0007】
近年、上記FFC等を電気的に接続するコネクタに、フリップタイプ(カバー式)のコネクタが多く採用されている。このコネクタは、基板に実装され、FFC等の各端子と基板に設けられる各信号端子とを電気的に接続するものであり、カバーを持ち上げてFFC等を挿入し、挿入後、そのカバーを倒すことにより、簡単に接続することができ、FFC等が簡単には抜けないため、良好な電気的接続を維持することができるという利点を有するものである。
【0008】
具体的には、図1に示すように、各々が、これら複数の端子の各々に当接する接点10と、その接点10に対向するように設けられる係合部11とを備える複数のコンタクト12と、基板の表面に略平行に向いた開口を備え、FFC1が挿入可能な収容溝15と、係合部11と係合し、回転に伴ってFFC1を接点10の方向へ押圧する加圧部16と、加圧部16に連続し、加圧部16の回転を容易にさせるカバー17とを備えるハウジングとを含むものとされる。
【0009】
複数のコンタクト12の各々は、収容溝15の開口側とは反対の側から、FFC1の挿入方向と同じ方向にハウジング底部から延びる脚部13を備えており、その脚部13が基板の表面に設けられる信号端子にはんだ付けされることにより電気的に接続される。このように、FFC1と基板上の信号端子とを適切に電気的接続するために、複数のコンタクト12のみが導電性を有し、かつ、その各々が所定間隔で離間して配置されている。
【0010】
このフリップタイプのコネクタの各コンタクトを、基板の表面に交互に配列される信号端子とグランド端子に接続することにより、フリップタイプとしながら、上記クロストークを低減することができる。
【0011】
このコネクタの製造において、各コンタクトの脚部の基板上の信号端子への接続は、はんだ付けにより行われている。このはんだ付けは、狭ピッチである端子間を導通させないよう電気的に分離するために、手作業により行われる。近年の導線間およびそれに対応する端子間の狭ピッチ化により、はんだ付けが難しくなってきており、はんだ付けに時間がかかるといった問題が生じている。
【0012】
また、このコネクタにおいては、構造等を変えることなく、コンタクトを信号用とグランド用に使用するだけで良いものの、このコネクタを実装する基板においては、信号端子とグランド端子とを交互に、かつ必要な数だけ設ける必要があり、また、交互に設ける場合、グランド端子が信号端子と同じ数だけ必要で、信号端子間にそれぞれ設けられるため、基板に実装されるCPU、メモリ等の電子部品の配置が制限され、さらには、基板上の配線パターンが複雑になるといった問題があった。
【特許文献1】特開2006−019039号公報
【特許文献2】特開2005−190924号公報
【特許文献3】特開2004−134128号公報
【非特許文献1】「取扱製品のご紹介」、[online]、富士電工株式会社、[平成18年2月14日検索]、インターネット<URL:http://www.fujidenko.co.jp/products/ffc/biccard/producs_info.htm>富士電工株式会社、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題に鑑み、クロストークを低減しつつ高速通信を可能にし、基板上の電子部品の配置を制限することもなく、また、基板上の配線パターンを複雑にすることもないフリップタイプのコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、信号端子に接続されるコンタクトをグランド端子に接続されるコンタクトで挟み、従来から使用される蓋部を金属製等の導電性材料で作製し、信号端子に接続されるコンタクトを除いた他のコンタクトすべてを、倒された蓋部に接触するように構成することにより、クロストークを低減することができ、また、カバーを介して1つのグランド端子に導通させることができるため、基板に実装される電子部品の配置が制限されず、基板上の配線パターンが複雑にならないことを見出した。上記課題は、本発明の電気コネクタを提供することにより達成される。
【0015】
すなわち、本発明は、一端に所定間隔で配列される複数の端子を備えるケーブルを、複数の信号端子および少なくとも1つのグランド端子を備える電子部品に電気的に接続するための電気コネクタであり、
各々が前記複数の端子の各々と当接する接点を備え、一部が前記複数の信号端子の各々または前記少なくとも1つのグランド端子に接続される脚部を備える、導電性を有する複数のコンタクトと、
前記ケーブルの前記一端を収容する収容溝と、前記複数のコンタクトの各々を装着するための複数の装着溝と、導電性を有し、前記ケーブルの前記収容溝への挿入に伴って該ケーブルの挿入方向に倒される蓋部と、前記蓋部に連続し、前記複数の接点に対向して回転可能に設けられ、前記蓋部が倒されるにつれて前記収容溝内に突出する加圧部とを備えるハウジングとを含み、
前記複数のコンタクトのうち、前記少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトと、前記信号端子および前記グランド端子のいずれにも接続されないコンタクトとが倒された前記蓋部に接触することを特徴とする。
【0016】
上記ケーブルの複数の端子は、平面上に交互に配列する信号配線およびグランド配線の一端とされており、上記複数のコンタクトは、少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトおよびいずれにも接続されないコンタクトと、複数の信号端子の各々に接続されるコンタクトとが交互に配列される。これは、グランド端子に接続されるコンタクトによって信号端子に接続されるコンタクトを挟み込み、信号を、他の信号端子に接続されるコンタクトへ移りにくくして、クロストークを低減するものである。
【0017】
上記ハウジングは、突起を備え、蓋部は、一端に嵌合溝が形成されており、蓋部を倒し、荷重を加えることにより、嵌合部に突起が嵌合されることを特徴とする。これは、蓋部が持ち上がり、挿入したケーブルが抜けないようにするものである。
【0018】
上記加圧部は、ハウジングに回転可能に支持される軸部と、軸部に周設され、蓋部が倒されるにつれて収容溝内に突出するカム部とを備えており、少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトおよびいずれにも接続されないコンタクトは、先端が弧状に延び、軸部に係合させる係合部を備える構成とすることができる。
【0019】
少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトおよびいずれにも接続されないコンタクトは、係合部に連続し、弾性を有する第1腕部を備えるものとされる。
【0020】
上記複数のコンタクトは、接点に連続し、弾性を有する第2腕部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電気コネクタを提供することにより、クロストークを低減しつつ高速通信を可能にし、基板における電子部品の配置を制限することはなく、また、基板上の配線パターンが複雑になることもない。また、フリップタイプのコネクタであるため、簡単にケーブルを接続することができ、簡単には抜けないため、良好な電気的接続を持続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明は、図示した実施の形態に限定されるものではない。本発明の電気コネクタを説明する前に、本発明の電気コネクタに使用されるケーブルを説明する。図2は、ケーブルを例示した図であり、図2(a)に平面図、図2(b)に切断線A−Aで切断した断面図をそれぞれ示す。ケーブルは、所定の幅および長さのプラスチックフィルムからなる基材20と、基材20上に所定間隔に並列され、接着される複数の導線21と、複数の導線21をめっき処理した後、上記基材20より長さが短いプラスチックフィルムからなる被覆材22とから構成され、両端に露出した導線21により端子を形成するものである。また、ケーブルの端子を形成する両端には、コネクタへの挿入を容易にし、コネクタの接点が確実に端子に当接するように補強板23が接着されている。
【0023】
複数の導線21は、交互に、信号配線およびグランド配線として使用することができる。ノイズの影響が小さければ、グランド配線間の2つの導線21を信号配線として使用することもできる。
【0024】
導線21の数および幅、導線間の間隔は、いかなる数および幅、間隔であってもよく、それらに適合するように、以下に説明するコネクタのコンタクトの数、コンタクト間の間隔が決定される。例えば、導線21は、約0.5mmピッチで配列するように設けることができる。また、端子を形成するために、導線21が露出される長さは、約0.8cm〜約1cmとすることができる。補強板23は、基材20の幅と同じで、端子の長さより長くされたプラスチック樹脂からなる所定厚さの板とすることができる。その厚さは、例えば、約0.1mmとすることができる。なお、端子は、一方の面にのみ形成され、端子を備える面を下側にしてコネクタに挿入される。
【0025】
上記のプラスチックフィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを挙げることができ、導線21としては、銅、または、銅−銀合金、銅−ベリリウム合金、銅−ニッケル−錫合金などの銅合金を挙げることができる。接着には、熱溶着または接着剤を用いることができ、接着剤としては、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などを挙げることができる。また、導線21に施されるめっきは、被覆される部分の導線については施されていなくてもよいし、金めっき、錫めっき、錫合金めっき、亜鉛めっき、ニッケルめっき等を施すこともできる。両端の端子を形成する部分については、大気に露出しており、本発明の電気コネクタのコンタクトと接触し、酸化しやすく、ひげ状のウィスカが発生しやすい部分であるため、金めっきが好ましい。
【0026】
次に、本発明の電気コネクタを図3〜図5を参照して詳細に説明する。図3(a)は平面図、図3(b)は正面図、図3(c)は側面図をそれぞれ示し、図4(a)は図3(b)の切断線B−Bで切断した断面図、図4(b)は図3(b)の切断線C−Cで切断した断面図をそれぞれ示し、図5(a)〜(d)は、ケーブルを接続する各ステップを示した図である。
【0027】
本発明の電気コネクタは、一端に所定間隔で配列される複数の端子を備える図2に示すようなケーブルを、複数の信号端子および少なくとも1つのグランド端子を備える基板に電気的に接続するためのものである。この基板には、電子部品として、CPU、メモリモジュール、液晶ディスプレイ等を実装することができる。本発明の電気コネクタは、図3に示すように、複数の導電性を有するコンタクト30と、複数のコンタクト30を装着するハウジング31とを含んで構成される。複数のコンタクト30は、各々が、図2に示すケーブルの複数の端子の各々と当接する接点32と、脚部33とを備える。コンタクト30の脚部33は、一部のコンタクトについては複数の信号端子の各々または少なくとも1つのグランド端子に接続され、その他のコンタクトについては信号端子およびグランド端子のいずれにも接続されない。複数のコンタクト30は、所定間隔で互いに離間していて、信号端子に接続されるコンタクトと、信号端子に接続されないコンタクトとが交互に配列するように装着される。図3(a)および(b)に示すように、信号端子に接続されないコンタクトには、先端が弧状に延びる係合部34が設けられており、後述する加圧部の回転を可能にするとともに、加圧部および蓋部が外れないように掛止している。なお、コンタクト30は、ケーブルの端子が接点32に当接し、脚部33が信号端子に接続することにより、ケーブルの端子と信号端子との間に電気的接続を与えるものである。
【0028】
各コンタクト30は、銅または銅合金からなる薄板を所定形状に打ち抜き、表面にめっきを施すことにより製造することができる。めっきは、打ち抜いたものを、金、ニッケル、錫ニッケル合金等を含むめっき浴に浸漬させ、通電することにより施すことができる。
【0029】
ハウジング31は、ケーブルの一端を収容する収容溝35と、複数のコンタクト30の各々を装着するための複数の図示しない装着溝と、導電性を有し、ケーブルの収容溝35への挿入に伴ってケーブルの挿入方向に倒される蓋部36と、蓋部36に連続し、複数の接点32に対向して回転可能に設けられ、蓋部36が倒されるにつれて収容溝35内に突出する加圧部37とを備える。
【0030】
ハウジング31は、蓋部36を除き、絶縁材料から製造される。絶縁材料としては、ポリイミド、ポリエチレンといったプラスチック樹脂材料を用いることができる。ハウジング31は、型枠に流し込み、冷却硬化させることにより製造することができる。蓋部36は、銅、鉄、銀、アルミニウム等の金属、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性ポリマーといった導電性材料から製造することができる。
【0031】
ハウジング31には、ケーブルの挿入方向と同じ方向に向いて突出する突起38が設けられており、蓋部36には、その突起38と嵌合する嵌合部39が形成されている。この突起38は、ハウジング31の長手方向に延びた構造とされており、それに対応して嵌合部39は、蓋部36の長手方向に延びるように形成されている。図3(c)に示すように、蓋部36を倒し、荷重を加えることにより、突起38を嵌合部39に嵌合させることができる。この嵌合により、蓋部36が突起38に引っかかって持ち上がらなくなり、これにより、ハウジング31からケーブルが簡単には抜けなくなり、ケーブルの端子とコンタクト30との接続を良好に維持させることができる。なお、本発明の電気コネクタは、蓋部36が倒れる方向と、ケーブルの挿入方向とが同じ方向であるため、ケーブルを抜く方向に力が作用したとしても、蓋部36が倒れる方向に加圧部37が回転する。このため、突起38および嵌合部39を設けなくてもケーブルは簡単に抜けるものではないが、接続をより確実なものにするためにこれらを設けることが好ましい。
【0032】
本発明の電気コネクタは、複数のコンタクト30のうち、少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトと、いずれにも接続されないコンタクトとが、倒された蓋部36に接触することを特徴とし、この接触により、これらコンタクトが導通した状態となり、少なくとも1つのコンタクトをグランド端子に接続しておくことで、グランド端子をそれぞれに設ける必要はなくなる。この結果、基板上に実装される電子部品の配置が制限されることがなくなり、複雑な配線パターンにする必要もなくなる。また、端子間の間隔は狭ピッチとはいえ、その間に存在するべきグランド端子がなくなるため、はんだ付けするべき間隔が広くなる。このため、はんだ付けが容易で、はんだ付けする数も少なくなり、はんだ付けにかかる時間を短縮することができる。
【0033】
図4に示す断面図を参照して電気コネクタの内部構造を詳細に説明する。信号端子に接続されるコンタクト40は、ハウジング41の収容溝42内に突出する接点43と、その接点43に連続する腕部44と、ハウジング41に係止させるための係止部45と、腕部44が延びる方向とは反対の方向に延びる脚部46とを備えている。
【0034】
ハウジング41の加圧部47は、ハウジング41の両側に設けられる支持溝に挿入され、回転可能に支持される軸部47aと、軸部47aに周設され、蓋部48が倒されるにつれて収容溝42内に突出するカム部47bとを備える構成とされている。また、複数のコンタクトのうち、少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトおよびいずれにも接続されないコンタクト49は、接点43、腕部44、脚部46のほか、先端が弧状に延び、軸部47aに係合させる係合部50を備えている。
【0035】
収容溝42は、端子を備えるケーブルの先端部分を収容することができる形状および大きさとされている。接点43は、収容溝42の下側から鉛直方向に向けて突出し、先端に向けてテーパが形成されており、ケーブルの端子に確実に接触するように、先端が角丸めされている。図4に示す実施形態では、腕部44は、ハウジング41に形成された装着溝に収容されており、接点43と脚部46とを接続するものとされている。係止部45は、コンタクト40が鉛直方向に移動しないように、コンタクト40をハウジング41に固定している。脚部46は、基板上の信号端子に接続され、電気的接続を与えるものである。この脚部46は、腕部44の延びる方向とは反対の方向に延び、信号端子へのはんだ付けを可能にしている。
【0036】
軸部47aは、ケーブルの挿入方向、腕部44の延びる方向、脚部46の延びる方向に対して垂直方向(ハウジングあるいは蓋部の長手方向)に延びており、両端が、ハウジングの支持溝に挿入され、回転可能に加圧部47を支持している。カム部47bは、その中心から接触するケーブルまでの距離が回転とともに変化する、例えば図4(a)、(b)に示すような略楕円形とされ、コンタクト40の接点43に対向して配置される。カム部47bは、軸部47aを中心として回転することにより、このカム部47bと接点43との間の間隔を変化させる。加圧部47に連続する蓋部48が持ち上げられた場合、この間隔は最も大きくなり、ケーブルの一端を充分に挿入することができる。これに対し、蓋部48が倒された場合、この間隔は最も小さく、ケーブルの一端を挿入することができなくなる。すでに収容溝42にケーブルの一端が収容されている場合には、カム部47bが、収容されたケーブルを接点43に押圧する。この押圧により、ケーブルの端子と接点43との接触が良好に維持され、ケーブルがコネクタから簡単には抜けないようになっている。蓋部48は、上述したように、導電性を有し、倒された場合にコンタクト49に接触し、脚部46が延びる方向と同じ方向に延びる突起51を嵌合させる嵌合部52が形成されたものである。図4(a)、(b)に示す実施形態では、嵌合部52は、凹部と凸部とが連続した形状とされており、蓋部48を倒し、荷重を加えることにより、突起51を嵌合部52の凹部の部分に嵌合させることができる。また、凸部の部分は突起51によって引っかかった状態となり、蓋部48が持ち上がらないようになっている。この蓋部48は、上記のように導電性を有するため、倒され、すべてのコンタクト49(信号端子に接続されるコンタクト40を除く。)に同時に接触すると、それらすべてのコンタクト49を導通させる。このため、1つのコンタクト49が、グランド端子に接続されていれば、蓋部48を介してすべてのコンタクト49をグランド端子に接続することができる。
【0037】
コンタクト49は、信号端子に接続されないものであり、少なくとも1つのグランド端子に接続される、あるいは、信号端子およびグランド端子のいずれにも接続されないものである。図4(b)に示すコンタクト49は、図4(a)に示す信号端子に接続されるコンタクト40とほぼ同じ構成であるが、蓋部48に接触するように鉛直方向に延びており、また、軸部47aに係合する係合部50を備えている。この係合部50は、軸部47aに引っかかるように先端が弧状に延びており、軸部47aがケーブルの挿入方向とは反対の方向に移動しないように軸部47aを保持させ、軸部47aを回転可能にさせている。
【0038】
コンタクト40、49は、図4(a)、(b)に示すように、ケーブルの挿入方向およびその反対方向に移動しないようにハウジング41に係止させる係止用突起53を備えている。これに対応して、ハウジング41には、係止用溝が設けられている。ハウジング41は、プラスチック樹脂材料から製造され、コンタクト40、49は、金属材料から製造され、いずれもわずかに弾性変形が可能な材料であるため、ハウジング41に設けられた係止用溝を含む装着溝にコンタクト40、49を圧入して装着することができる。なお、一度装着されたコンタクト40、49は、係止用突起53と係止部45とによって、鉛直方向および水平方向のいずれにも移動することができないように固定される。
【0039】
また、コンタクト49は、係合部50に連続し、弾性を有する腕部54を備えている。係合部50は、図3に示すように露出しているため、弾性を有する腕部54によって鉛直方向への移動が可能にされている。これにより、ケーブルをコネクタに接続した装置に振動が与えられた場合でも、その振動に従って係合部50により係合される加圧部47を変動させることができ、ケーブルの端子と接点43との接触力を一定にするとともに、その接触を良好に維持することができる。
【0040】
コンタクト40、49は、接点43に連続する腕部44が弾性を有していてもよく、これにより、さらに、ケーブルの端子と接点43との接触力を一定にし、その接触を良好に維持することができる。
【0041】
図5は、本発明の電気コネクタにケーブルを接続するところを示した図である。図5(a)は、まだケーブルが挿入されておらず、蓋部が倒された状態のコネクタを示している。蓋部48に形成された嵌合部52にハウジング41の突起51が嵌合され、蓋部48がロックされた状態とされている。ここで、ロックとは、蓋部48が持ち上がらないように固定された状態をいう。図5(b)は、蓋部48のロックが解除された状態のコネクタを示している。蓋部48のロックの解除は、蓋部48に形成された嵌合部52を、脚部46が延びる方向と同じ方向に移動させる。すなわち、嵌合部52のハウジング41に向けて突出する部分Xが、突起51の最も突出する部分Yよりハウジング41から離間した位置になるまで移動させる。その状態を保持しつつ、矢線Dに示す方向に蓋部48を持ち上げることにより、ロックを解除することができる。
【0042】
図5(c)は、ケーブルがコネクタに挿入されているところを示している。ケーブル55をハウジング41の収容溝42に挿入すると、加圧部47に接触し、さらにケーブル55を押し込むと、加圧部47が回転し、蓋部48が所定位置まで持ち上げられる。このとき、加圧部47と接点43との間の間隔が最も大きくなり、ケーブル55を収容溝42の奥まで挿入することができる。
【0043】
図5(d)は、ケーブルをコネクタに接続したところを示している。収容溝42にケーブル55が挿入された後、蓋部48は倒され、図5(a)と同様にロックされる。蓋部48が倒されている間、加圧部47は回転し、ケーブル55を接点43に押圧する。図5(d)に示す実施形態では、接点43が固定され、ケーブル55の厚さが一定であることから、加圧部47の回転により、ケーブル55を接点43に押圧しつつ、弾性を有する腕部54によって係合部50が上方へ持ち上がった状態とされている。
【0044】
これまで本発明を図面に示す実施の形態を参照して説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、ケーブルの端子の数および大きさに応じた、コンタクトの数、コンタクトの幅および大きさとすることができる。グランド端子に接続されるコンタクトは、1つに限らず、必要に応じて2つ以上とすることができ、接続される電子部品に応じて、その位置も適宜決定することができる。また、蓋部を固定するため、ハウジングに突起を備え、蓋部に嵌合部を形成したものとして説明してきたが、これに限定されるものではなく、例えば、蓋部の長手方向の両側にノッチを設け、それに対応してハウジングにラッチを備える構成にすることもできる。複数のコンタクトを、脚部を備えるものとして説明してきたが、信号端子およびグランド端子に接続されるもの以外は、蓋部を介して導通させることができ、グランド端子に接続する必要はないため、脚部を備えていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】従来の電子コネクタを示した図。
【図2】ケーブルを例示した図。
【図3】本発明の電気コネクタを例示した図。
【図4】電気コネクタの断面図。
【図5】電気コネクタにケーブルを接続しているところを示した図。
【符号の説明】
【0046】
1…FFC
10、32、43…接点
11、34、50…係合部
12、30、40、49…コンタクト
13、33、46…脚部
15、35、42…収容溝
16、37、47…加圧部
17…カバー
20…基材
21…導線
22…被覆材
23…補強板
31、41…ハウジング
36、48…蓋部
38、51…突起
39、52…嵌合部
44、54…腕部
45…係止部
47a…軸部
47b…カム部
53…係止用突起
55…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に所定間隔で配列される複数の端子を備えるケーブルを、複数の信号端子および少なくとも1つのグランド端子を備える基板に電気的に接続するための電気コネクタであって、
各々が前記複数の端子の各々と当接する接点を備え、一部が前記複数の信号端子の各々または前記少なくとも1つのグランド端子に接続される脚部を備える、導電性を有する複数のコンタクトと、
前記ケーブルの前記一端を収容する収容溝と、前記複数のコンタクトの各々を装着するための複数の装着溝と、導電性を有し、前記ケーブルの前記収容溝への挿入に伴って該ケーブルの挿入方向に倒される蓋部と、前記蓋部に連続し、前記複数の接点に対向して回転可能に設けられ、前記蓋部が倒されるにつれて前記収容溝内に突出する加圧部とを備えるハウジングとを含み、
前記複数のコンタクトのうち、前記少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトと、前記信号端子および前記グランド端子のいずれにも接続されないコンタクトとが倒された前記蓋部に接触することを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項2】
前記ケーブルの前記複数の端子は、平面上に交互に配列する信号配線およびグランド配線の一端とされており、前記複数のコンタクトは、前記少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトおよび前記いずれにも接続されないコンタクトと、前記複数の信号端子の各々に接続されるコンタクトとが交互に配列される、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、突起を備え、前記蓋部は、一端に嵌合部が形成されており、前記蓋部を倒し、荷重を加えることにより、前記嵌合部に前記突起が嵌合されることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記加圧部は、前記ハウジングに回転可能に支持される軸部と、前記軸部に周設され、前記蓋部が倒されるにつれて前記収容溝内に突出するカム部とを備えており、前記少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトおよび前記いずれにも接続されないコンタクトは、先端が弧状に延び、前記軸部に係合する係合部を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのグランド端子に接続されるコンタクトおよび前記いずれにも接続されないコンタクトは、前記係合部に連続し、弾性を有する第1腕部を備える、請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記複数のコンタクトは、前記接点に連続し、弾性を有する第2腕部を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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