説明

電気スイッチ

【課題】構造全体がシンプルであると同時に電気スイッチの個々の構造エレメントの組付け容易性が改善されるように構成した電気スイッチを創作する。
【解決手段】ハウジング(2)の内部に配置された、固定接点エレメント(10)および切換え接点エレメント(20)を有する接点システム(4)と、接点システム(4)に切換え作用を及ぼすための作動機構(3)とを有する電気スイッチ(1)であって、切換え接点エレメント(20)は切換え区域(21)と固定区域(22)とを有し、固定区域(22)と切換え区域(21)とは互いに離間し、切換え区域(21)は固定接点エレメント(10)の電気的接続に利用され、固定区域(22)は前記ハウジング(2)内への切換え接点エレメント(20)の確実な固定を保証するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの内部に配置された、固定接点エレメントおよび切換え接点エレメントを有する接点システムと、前記接点システムに切換え作用を及ぼすための作動機構とを有する電気スイッチであって、前記切換え接点エレメントの弾性変形によって前記切換え接点エレメントは静止ポジションと切換えポジションとに変位可能であり、前記静止ポジションにおいて前記固定接点エレメントは互いに電気的に切り離されており、前記切換えポジションにおいて前記固定接点エレメントは前記切換え接点エレメントを介して互いに電気的に接続されるように構成した電気スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジング内部に配置された接点システムを有するスイッチが開示されている。この接点システムはとりわけ、固定接点エレメントならびに、スナップディスクとして形成された切換え接点エレメントからなっている。スイッチ作動機構のマニュアル操作によってこのスナップディスクを弾性変形させることができ、これによって、固定接点エレメント同士は互いに電気的に接続される。このスナップディスクは別個の構造部材としてハウジングに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願 DE 10 2008 049 580.8号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、構造全体がシンプルであると同時に電気スイッチの個々の構造エレメントの組付け容易性が改善されるように構成した電気スイッチを創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために請求項1に記載の特徴を有する電気スイッチが提案される。従属項にはその他の好ましい態様が記載されている。
【0006】
そのため、本発明によれば、切換え接点エレメントは切換え区域と固定区域とを有し、切換え区域と固定区域とは互いに離間し、切換え区域は固定接点エレメントの電気的接続に利用され、固定区域はハウジング内への切換え接点エレメントの確実な固定を保証するように構成されている。
【0007】
本発明の重要な利点の一つは、切換え接点エレメントは互いに分離した2個のゾーンを有していることである。第1のゾーンは切換え区域であり、第2のゾーンは固定区域である。固定接点エレメント同士の必要に応じた接触は切換え区域を介して行われる。固定区域は、電気スイッチのハウジング内部に切換え接点エレメントを確実に保持することを主たる役割としている。この場合、上述した双方のゾーンは互いに離間し、特に、オープンスペースによって互いに切り離されている。切換え接点エレメントをハウジング内部に固定しなければならないさらに別個の保持手段は不要である。それゆえ、別個の構造部材の使用を省くことができ、これによって、著しく速やかかつ安価な製造を達成することが可能である。
【0008】
本発明の考えられる一実施形態において、切換え接点エレメントは、切換え区域を固定区域に結合する少なくとも1つの連結区域を有していてよい。有利には、切換え接点エレメントは切換え区域および/または固定区域および/または連結区域を以って一体の部材を形成していてよい。電気スイッチの考えられる一態様において、切換え接点エレメントは切換え区域、固定区域および連結区域を以って同一材料で形成されている。また、上記の各区域は共通の一体部材を形成しているが、異なった材料からなっているようにすることも同じく考えられる。スイッチの好ましい一態様において、切換え接点エレメントは金属ポンチ部材である。
【0009】
好ましくは、連結区域は幾何形状的に見て、切換え接点エレメントが静止ポジションと切換えポジションとの間を変化する際に固定区域の弾性変形が防止されるように形成されていてよい。切換え接点エレメントの確実な固定を保証するには、切換え接点エレメントが静止ポジションと切換えポジションとの間を変化する際に固定区域にも弾性変形が生じ、この弾性変形が不適なことに切換え接点エレメントの転位やずれの発生と結びついて接点システムの機能性を損なうことがないようにするのが有利である。本発明によれば、接点システムに作動機構が作用する際の切換え区域に由来する弾性変形は連結区域によって“吸収”または除去されるため、固定区域は、切換え接点エレメントが静止ポジションと切換えポジションとの間を変化する際にも、不変、不動の状態のままに保たれる。
【0010】
好ましくは、切換え接点エレメントの連結区域は細身のブリッジとして形成されている。切換え区域の弾性変形をできるだけ確実に吸収すべく、連結区域はバネ弾性を有するように形成されていてよい。
【0011】
電気スイッチの一実施形態において、固定区域はハウジングと相補係合および/または摩擦係止および/または物質接合によって結合されていてよく、特に、固定区域は係合係止継ぎを経てハウジングに固定されている。たとえば、固定区域をスナップ係合係止継ぎによってハウジングに確実に固定されるようにすることが考えられる。
【0012】
考えられる一実施形態において、固定区域はハウジングに形成された突起状の凸部を収容する貫通穴を有していてよく、これによって、切換え接点エレメントの確実な固定を達成することが可能である。加えてさらに、固定区域は貫通穴の周縁に少なくとも1つの保持エレメントを有していてよく、該保持エレメントは切換え接点エレメントがハウジングに組み付けられた状態で弾性変形して凸部に密着する。
【0013】
組付け作業員が切換え接点エレメントをハウジングに固定するにあたり、(単数または複数の)保持エレメントは弾性変形させられ、これによって、貫通穴の形状寸法は拡張させられる。ハウジングに形成された凸部は組付けに際して貫通穴を貫通するが、その際、同時に該凸部の外側壁面は(単数または複数の)保持エレメントを弾性変形させる。固定された状態において保持エレメントの自由端は、好ましくはプラスチックからなる凸部の材料内に僅かに食い込んで同所に係合係止されることができる。これによって、ハウジングに対する切換え接点エレメントの固定をさらに向上させることが可能である。
【0014】
有利には、作動機構は、特に、ハウジング内の作動機構にタペットが設けられていれば、外部からのマニュアル操作が可能である。作動機構ならびにタペットは1個の共通の部材として形成されていてよい。
【0015】
有利には、切換え接点エレメントは硬質合金薄板である。この場合、切換え区域はドーム状に上方に隆起した本体として形成されていてよい。切換え接点エレメントはタペットの押圧力によって固定接点エレメントの方向に向かって反対側に隆起させられ、こうして、切換え接点エレメントは固定接点エレメント同士を互いに電気的に接続する切換えポジションに到達する。これにより、固定接点エレメント間の電気的接触がつくり出される。
【0016】
作動機構には、作動機構を不断に当初ポジション−その際、切換え接点エレメントは同時に静止ポジションに位置する−に戻そうとする復元力が作用するのが有利である。たとえば、この復元力は、とりわけまたは専ら、作動機構に作用する操作力が低下すると静止ポジションであるドーム状に上方に隆起した当初状態に急激に復帰しようとする切換え接点エレメント自体に由来するものであってよい。ただしまた、作動機構の復元プロセスを助勢するバネエレメントによって復元力が生み出されるようにすることも同じく考えられる。切換え接点エレメントに過大な荷重が印加されることを防止すべく、電気スイッチはハウジング内部に、作動機構の撓み変位運動を制限する制限手段を有していてよい。
【0017】
本発明は同じく、自動車の可動部とくにリアフードの操作ユニットであって、電気スイッチを備えた操作ユニットに関する。
【0018】
本発明のその他の利点、特徴および詳細は、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する以下の記述から判明する通りである。その際、請求項および下記記述中に挙げられた特徴はそれぞれ単独であれ任意の組み合わせであれ本発明の要旨をなす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電気スイッチの平面図である。
【図2】図1に示したようにスイッチ内部に配置された切換え接点エレメントを単純化して示す側面図である。
【図3】図1のIII−III線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ハウジング2の内部を互いに平行かつ離間して延びる2個の固定接点エレメント10を有する接点システム4を備えた電気スイッチ1を示している。加えてさらに、弾性変形可能な切換え接点エレメント20がハウジング2に取り付けられており、ここで、切換え接点エレメント20は切換え区域21と固定区域22とを有している。切換え区域21と固定区域22との間にはオープンスペースが存在している。切換え区域21は連結区域23を介して固定区域22に結合されており、この場合、連結区域23はオープンスペース内に位置している。切換え接点エレメント20は切換え区域21と固定区域22ならびに連結区域23を以って一体の部材を形成している。本実施の形態において、切換え接点エレメント20は金属ポンチ部材である。
【0021】
切換え区域21は中央に押圧エリア26を有すると共に、四隅に4個のフットエリア27a,27bを有している。フットエリア27aは共同して、2個の固定接点エレメント10の一方に接触している。切換え区域21のフットエリア27bは、固定接点エレメント10に接触することなく、プラスチックハウジング2上に載置されている。
【0022】
切換え接点区域20の固定は固定区域22のエリアで行われる。固定区域22は貫通穴24を有している。貫通穴24の内部にはハウジング2に設けられた凸部5が延び入っている。切換え接点エレメント20を組み付けるにあたり、組付け作業員は凸部5に切換え接点エレメント20の固定区域22を嵌め合わせる。図1から看取されるように、固定区域22は貫通穴24の領域に複数の保持エレメント25を備えており、これらの保持エレメントはハウジング2に切換え接点エレメント20を組み付けるにあたり、凸部5によって弾性変形されて、図3に示したようにしてそれらの最終変形ポジションに達する。その際、保持エレメント25の自由端はプラスチックからなる凸部5の表面に僅かに食い込んで同所に係合係止されるため、これによって、ハウジング2への固定区域22の確実な固定が達成可能である。
【0023】
固定接点エレメント10は、ハウジング2の外部に位置している接続端子8の方向に向かって互いに平行に延びている。接続端子8は、本実施の形態において、スリーブ状に形成されている。接続端子8により、たとえばプラグを介して、固定接点エレメント10との電気的接続を達成することが可能である。接続端子8の側方には2個の固定手段7が設けられており、これらの固定手段によってスイッチ1の全体が図中不図示の構造部材または物体に取り付けられる。
【0024】
図2に示したように、電気スイッチ1はマニュアル操作可能な作動機構3を備えている。本実施の形態において、作動機構3は、切換え接点エレメント20の方向に向かって突起状に突き出したタペット6を有している。ここで、作動機構3の意図的な操作が行なわれると、タペット6は作動機構3の方向に向かってドーム状に上方に隆起した切換え区域21を押圧する。切換え接点エレメント20は、タペット6によって切換え区域21とくに押圧エリア26に力が及ぼされ、それによって、切換え区域21の軽度の弾性変形が生じるために、静止ポジションIから、鎖線で表された切換えポジションIIに変位させられる。この切換えポジションIIにおいて切換え区域21は左側の固定接点エレメント10に接触し、これにより、切換え接点エレメント20を介して2個の固定接点エレメント10同士の電気的接続が達成される。静止ポジションIにおいては、固定接点エレメント10は互いに電気的に切り離されており、その際、切換え区域21はフットエリア27aによって右側の固定接点エレメント10に接触している。
【0025】
連結区域23は、フットエリア27aから発して曲線路に沿って固定区域22まで延びる細身のブリッジ23として形成されている。本実施の形態では、固定区域22を切換え区域21と結合する2個のブリッジ23が配置されている。静止ポジションIと切換えポジションIIとの間の切換え接点エレメント20の状態変化に際し、切換え区域21の弾性変形を介して連結区域23も同じく弾性変形し得るが、連結区域23はこの弾性変形が固定区域22に伝達されることを防止する。
【0026】
この電気スイッチ1は、自動車の可動部とくにリアフードの操作ユニットに使用し得るのみではない。むしろ、この電気スイッチの使用分野は当業者が直面する、電気スイッチの使用が可能なあらゆる使用分野を含んでいる。
【符号の説明】
【0027】
1 スイッチ
2 ハウジング
3 作動機構
4 接点システム
5 凸部
6 タペット
7 固定手段
8 接続端子
10 固定接点エレメント
20 切換え接点エレメント
21 切換え区域
22 固定区域
23 連結区域、細身のブリッジ
24 貫通穴
25 保持エレメント
26 押圧エリア
27a フットエリア
27b フットエリア
I 静止ポジション
II 切換えポジション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)の内部に配置された、固定接点エレメント(10)および切換え接点エレメント(20)を有する接点システム(4)と、前記接点システム(4)に切換え作用を及ぼすための作動機構(3)とを有する電気スイッチ(1)であって、前記切換え接点エレメント(20)の弾性変形によって前記切換え接点エレメント(20)は静止ポジション(I)と切換えポジション(II)とに変位可能であり、前記静止ポジション(I)において前記固定接点エレメント(10)は互いに電気的に切り離されており、前記切換えポジション(II)において前記固定接点エレメント(10)は前記切換え接点エレメント(20)を介して互いに電気的に接続されるように構成した電気スイッチであって、
前記切換え接点エレメント(20)は切換え区域(21)と固定区域(22)とを有し、前記固定区域(22)と前記切換え区域(21)とは互いに離間し、前記切換え区域(21)は前記固定接点エレメント(10)の電気的接続に利用され、前記固定区域(22)は前記ハウジング(2)内への前記切換え接点エレメント(20)の確実な固定を保証することを特徴とする電気スイッチ。
【請求項2】
前記切換え接点エレメント(20)は前記切換え区域(21)を前記固定区域(22)に結合する少なくとも1つの連結区域(23)を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項3】
前記切換え接点エレメント(20)は前記切換え区域(21)および/または前記固定区域(22)および/または前記連結区域(23)を以って一体の部材を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項4】
前記連結区域(23)は幾何形状的に見て、前記切換え接点エレメント(20)が前記静止ポジション(I)と前記切換えポジション(II)との間を変化する際に前記固定区域(22)の弾性変形が防止されるように形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項5】
前記連結区域(23)は細身のブリッジ(23)として形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項6】
前記連結区域(23)はバネ弾性を有するように形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項7】
前記切換え接点エレメント(20)は金属ポンチ部材であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項8】
前記固定区域(22)は前記ハウジング(2)と相補係合および/または摩擦係止および/または物質接合によって結合されており、特に係合係止継ぎを経て前記ハウジング(2)に固定されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項9】
前記固定区域(22)は前記ハウジング(2)に形成された突起状の凸部(5)を収容する貫通穴(24)を有し、これによって、前記切換え接点エレメント(20)の確実な固定が達成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項10】
前記固定区域(22)は前記貫通穴(24)の周縁に少なくとも1つの保持エレメント(25)を有し、前記保持エレメント(25)は前記切換え接点エレメント(20)が前記ハウジング(2)に組み付けられた状態で弾性変形して前記凸部(5)に密着していることを特徴とする、請求項9に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項11】
前記作動機構(3)は外部からマニュアル操作が可能であり、特に、前記ハウジング(2)内の前記作動機構(3)にタペット(6)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項12】
前記切換え区域(21)と前記固定区域(22)との間にオープンスペースが形成され、前記オープンスペース内部に前記連結区域(23)が位置していることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項13】
前記連結区域(23)は前記切換え区域(21)から前記固定区域(22)に向かって曲線路に沿って延びていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電気スイッチ(1)。
【請求項14】
自動車の可動部とくにリアフードの操作ユニットであって、請求項1〜13のいずれか1項に記載の前記電気スイッチ(1)を備えた操作ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−23354(P2011−23354A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160054(P2010−160054)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(509099073)フーフ・ヒュルスベック・ウント・フュルスト・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (9)
【氏名又は名称原語表記】HUF HULSBECK & FURST GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】