説明

電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに加熱装置

【課題】 絶縁体の熱容量を低減させると共に加熱空間に対する絶縁体の露出面積を減らして温度分布の均一化を図り昇降温のレスポンスを向上させる電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに加熱装置を提供すること。
【解決手段】 スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体10と、この発熱体10を支持する絶縁体20とを備える。この発熱体10のうちスリットに沿う幅方向Xに位置する一対の幅方向端部13,13で絶縁体20に支持される。各幅方向端部13,13に位置する絶縁体20は、幅方向Xに沿った水平方向に対して少なくとも2分割される。2分割された各分割体21,22の間に幅方向端部13を係止し、幅方向端部13の上方の部分で各分割体21,22を締結する締結具30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに加熱装置に関する。さらに詳しくは、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き電気ヒーターとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この電気ヒーターでは、碍子を鉛直方向上下に分割形成すると共にその間に発熱体を係止させている。しかし、碍子を上下に分割形成すると共にこれら碍子に固定ピンを鉛直方向に貫通させて固定している。そのため、碍子は固定ピンの貫通分だけ幅広に形成され、碍子の熱容量が増大する。また、碍子が幅広に形成されると、その分だけ発熱体の加熱空間に対する露出面積が減少し、温度分布が不均一となり、加熱効率が低下する。これらの結果、昇降温のレスポンスが未だ不十分となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−359061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、絶縁体の熱容量を低減させると共に加熱空間に対する絶縁体の露出面積を減らして温度分布の均一化を図り昇降温のレスポンスを向上させる電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーター特徴は、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構成において、各幅方向端部に位置する絶縁体は、前記幅方向に沿った水平方向に対して少なくとも2分割され、2分割された各分割体の間に前記幅方向端部を係止し、前記幅方向端部の上方の部分で前記各分割体を締結する締結具を設けることにある。
【0006】
上記構成によれば、絶縁体を水平方向に対して少なくとも2分割された各分割体で構成するので、締結具を鉛直方向に貫通させることなく分割体を締結でき、発熱体の幅方向に対し各分割体を幅狭に形成することができる。しかも、各分割体の締結部分は締結可能な強度を有していればよく、幅方向端部の上部も幅方向に対し幅狭に形成可能である。従って、各分割体全体の容積を削減して、絶縁体全体の熱容量を低減させることができる。また、締結具は幅方向端部の上方の部分で各分割体を締結するので、加熱空間側に締結具が露出することはない。加えて、上述の如く絶縁体は発熱体の幅方向に対し薄く形成できるので、絶縁体の加熱空間側に露出する部分を減少することができる。従って、加熱空間に対する発熱体の専有面積(加熱面密度)を増加させることができる。これらにより、加熱空間に対する温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることが可能となる。
【0007】
前記発熱体を少なくとも2組前記幅方向に並列配置させて備え、幅方向外側の分割体を2組の発熱体で共通させるとよい。これにより、発熱体を支持する絶縁体全体の幅方向に対する厚みの増加を抑制でき、発熱体を並列配置しても絶縁体の熱容量を抑制することができる。しかも、隣接する発熱体を近接させて配置することができ、加熱面密度をさらに増加させることができる。
【0008】
前記締結具が前記分割体を貫通する棒状部材で構成することが望ましい。係る場合、基材に固定される固定部材を備え、この固定部材に前記棒状部材を貫通させることで固定することが望ましい。これにより、絶縁体の熱容量を抑制しながら容易に絶縁体を固定することができる。
【0009】
前記幅方向端部を屈曲させ、前記幅方向端部を前記各分割体で挟み込むことで前記幅方向端部を係止するとよい。また、前記各分割体及び前記幅方向端部に貫通孔を形成し、この貫通孔に絶縁体を挿入することで前記幅方向端部を係止することも可能である。これらの係止により、発熱体の絶縁体からの脱落を防止することができる。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーターの製造方法の特徴は、上記いずれかに記載の電気ヒーターの製造方法において、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構造であり、前記2分割された各分割体の間に前記幅方向端部を係止し、前記幅方向端部の上方の部分で前記各分割体を締結具により締結することにある。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーターの他の特徴は、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構成において、各幅方向端部に位置する絶縁体は、縦部とこの縦部から少なくとも前記幅方向へ屈曲する横部とからなり、前記横部及び前記幅方向端部に貫通部材を貫通させる貫通孔を形成し、これら貫通孔に前記貫通部材を貫通させて前記幅方向端部を前記横部に取り付けることにある。
【0012】
この構成によれば、絶縁体を縦部と縦部から少なくとも幅方向に屈曲する横部で構成するので、縦部で絶縁体全体を支持し且つ横部に発熱体を取り付けることができ、絶縁体全体を薄く形成して絶縁体全体の熱容量を低減させることが可能となる。また、横部は発熱体を取り付ける貫通孔を形成できればよく、絶縁体の加熱空間側に露出する部分を減少させることができ、加熱面密度を向上させることができる。従って、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることができる。しかも、発熱体を横部に貫通部材により取り付けるので、発熱体の脱落を防止することができる。
【0013】
前記幅方向端部を前記横部の下面側に取り付けることが望ましい。発熱体を横部の下面側に取り付けることで、絶縁体の加熱空間側の露出部分を発熱体によりさらに減らすことができる。これにより、加熱面密度をさらに向上させることができる。
【0014】
前記発熱体を少なくとも2組備え、前記横部を前記縦部から少なくとも発熱体側に向けて屈曲させて形成し、前記縦部が共通すると共に前記横部を鉛直方向に対し線対称となるように一対設けて、前記発熱体を前記幅方向に並列配置させるとよい。縦部を共通させることで、絶縁体全体の幅方向に対する厚みの増加を抑制でき、発熱体を並列配置しても絶縁体の熱容量を抑制することができる。
【0015】
また、前記発熱体を少なくとも2組備え、前記横部を前記縦部から少なくとも発熱体側に向けて屈曲させて形成し、前記絶縁体を鉛直方向に対し線対称となるように一対設けると共に、一対の絶縁体の各縦部を締結する締結具を設け、前記幅方向端部の上方の部分で前記各縦部を締結させて、前記発熱体を前記幅方向に並列配置させるとよい。隣接する発熱体を近接させて配置することができ、さらに加熱面密度を向上させることができる。
【0016】
係る場合、基材に固定される固定部材を備え、前記締結具が前記各縦部を貫通する棒状部材であり、前記固定部材に前記棒状部材を貫通させることで固定することが望ましい。これにより、絶縁体の幅の増加を抑制しながら容易に絶縁体を固定することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーターのさらに他の特徴は、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構成において、各幅方向端部に位置する絶縁体は、縦部とこの縦部から少なくとも発熱体側へ屈曲する横部とからなり、前記発熱体を貫通する絶縁ピンを備え、前記幅方向端部に前記絶縁ピンを貫通させる貫通孔を形成し、前記幅方向端部を前記横部に載置すると共に前記絶縁ピンを前記貫通孔に貫通させて前記絶縁体に取り付けることにある。
【0018】
この構成によれば、絶縁体を縦部と縦部から少なくとも幅方向に屈曲する横部で構成するので、縦部で絶縁体全体を支持し且つ横部に発熱体を取り付けることができ、絶縁体全体を薄く形成し絶縁体全体の熱容量を低減することが可能となる。また、横部は発熱体の幅方向端部を載置できればよく、絶縁体の加熱空間側に露出する部分を減らし加熱面密度を向上させることができる。従って、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることができる。しかも、絶縁ピンを幅方向端部に貫通させるので、発熱体の熱変形等による幅方向への移動を規制し、脱落を防止することができる。係る場合、基材に固定される固定部材を備え、この固定部材に前記絶縁ピンを貫通させるとよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーターのさらに他の特徴は、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構成において、基材に固定される固定部材を備え、前記固定部材は板状体を屈曲して管状に形成されると共にその長手方向に沿って一部を開口させた開口部を有し、各幅方向端部に位置する絶縁体は、前記固定部材に嵌め込んで固定されると共に内部に前記幅方向端部を挿入する溝部を形成し、前記溝部の一端は前記開口部と連通し、前記幅方向端部を鉛直方向へ屈曲させると共に前記長手方向に向かって前記溝部に挿入し、前記一端近傍で前記発熱体を挟むことにある。
【0020】
この構成によれば、絶縁体を固定部材に嵌め込んで固定するので、絶縁体は発熱体の絶縁が確保できる厚みを備えていればよく、絶縁体を薄くすることができる。また、固定部材は屈曲加工により薄く形成でき、絶縁体を保持すると共に支持可能な強度があればよい。よって、絶縁体及び固定部材の熱容量を低減することができる。さらに、上述の如く薄く形成された絶縁体は管状の固定部材に嵌め込んで固定されるので、絶縁体の加熱空間側に露出する部分を減らし加熱面密度を向上させることができる。従って、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることができる。しかも、発熱体を絶縁体の溝部に挿入し挟持するので、絶縁体からの脱落を防止することも可能である。
【0021】
係る場合、前記絶縁体は少なくとも2分割され、2分割された各分割体により前記溝部を形成するとよい。分割体により溝部を構成するので、各分割体をさらに薄く形成することができる。これにより、絶縁体の熱容量をさらに低減することができる。
【0022】
前記開口部は少なくとも前記幅方向に向けて開口し、前記溝部を前記鉛直方向に形成すると共に、前記幅方向端部を前記鉛直方向へ配向するように屈曲させても構わない。上記構成によれば、絶縁体及び固定部材を幅方向に対し幅狭に設けることができ、絶縁体の加熱空間側に露出する部分を減らすことができる。これにより、加熱面密度を向上することができ、昇降温のレスポンスを向上させることができる。
【0023】
また、前記開口部は少なくとも前記鉛直方向に向けて開口し、前記溝部を前記幅方向に形成すると共に、前記幅方向端部を前記幅方向へ配向するように前記発熱体側へ屈曲させても構わない。上記構成によれば、絶縁体の大部分が発熱体により覆われるため、加熱空間に対する絶縁体の露出部分を発熱体によりさらに減らすことが可能となる。これにより、加熱面密度を向上させることができ、昇降温のレスポンスを向上させることができる。
【0024】
前記発熱体を少なくとも2組備え、前記絶縁体を鉛直方向に対し線対称となるように一対配置させて、前記発熱体を前記幅方向に並列配置させても構わない。上記いずれかに記載の電気ヒーターは、これを備えた加熱装置として実施することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記本発明に係る電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに加熱装置の特徴によれば、絶縁体の熱容量を低減させると共に加熱空間に対する絶縁体の露出面積を減らして昇降温のレスポンスを向上させることが可能となった。
【0026】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電気ヒーターの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】湾曲前の薄板部材の平面図である。
【図4】絶縁体近傍の部分拡大正面図である。
【図5】第一実施形態の改変例を示す正面図である。
【図6】(a)は本発明の第二実施形態を示す図4相当図、(b)は(a)の改変例を示す図4相当図である。
【図7】(a)は本発明の第三実施形態における絶縁体近傍の部分拡大断面図、(b)は(a)の改変例を示す絶縁体近傍の部分拡大断面図である。
【図8】(a)は第三実施形態における湾曲前の薄板部材の平面図、(b)は第三実施形態における発熱体の幅方向端部の部分拡大側面図である。
【図9】本発明の第四実施形態を示す図4相当図である。
【図10】第四実施形態の改変例を示す図4相当図である。
【図11】本発明の第五実施形態を示す図4相当図である。
【図12】(a)は本発明の第六実施形態を示す図4相当図、(b)は本発明の第七実施形態を示す図4相当図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態を示す図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、図1〜5を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明に係る電気ヒーター1は、発熱体10と、この発熱体10を支持する一対の絶縁体20,20とを備えている。一対の絶縁体20,20は、発熱体10の幅方向Xの両端に位置し、締結具30により固定部材40にそれぞれ固定されている。固定部材40は例えば鋼材により構成される基材としてのフレーム2にセラミックファイバー等の断熱部材3を介して固定されている。また、固定部材40には、発熱体10に電力を供給するリード部材50がフレーム2と電気的に絶縁した状態で固定されている。
【0029】
この電気ヒーター1には、例えば図1に示す如く、炉内に吊り下げ支持するための支持部材101がフレーム2に溶接等により設けられ、加熱ユニット100を構成する。この加熱ユニット100は、主として炉の天井に設置され、炉内に投入される被加熱物を加熱する加熱装置として実施される。
【0030】
図1,2に示すように、発熱体10は板状に且つ矩形状に形成され、複数のスリット11を幅方向Xから交互に切り込むことで蛇行状の電流路12が形成されている。図1に示すように、発熱体10における一対の幅方向端部13,13の間は、スリット11に直交する長手方向Y視でなだらかに湾曲し、鉛直方向Z下方側(炉内部側)に凸状を呈している。また、発熱体10の長手方向Yの端部に位置する電流路端部12x,12yは、鉛直方向Z上方に折り曲げられ、リード部材50に接続されている。
【0031】
この発熱体10は、図3に示すように、例えばFe−Cr−Al合金やニッケルクロム合金等の導電性材料よりなる薄板部材10’より製作される。幅方向端部13は、薄板部材10’の幅方向Xの一対の端部13’,13’を第一屈曲部14’で鉛直方向Z上方に向かって屈曲させて形成されている。また、折曲部16は、幅方向端部13の先端部分を第二屈曲部15’で鉛直方向Y下方に向かって薄板部材10’外方へ折り曲げて形成されている。以下の各実施形態における発熱体も特記のない限り同様の材料、構成である。
【0032】
図1,4に示すように、絶縁体20は、幅方向Xに沿った水平方向に対して分割形成された第一分割体21及び第二分割体22とからなる。この第一、第二分割体21,22は、アルミナ質、アルミナシリカ質、ムライト質、ジルコン質又はコージライトを主体とするいわゆるセラミックス材料や窒化珪素質材料により構成され、発熱体10とフレーム2とを電気的に絶縁する。以下の各実施形態における絶縁体及び各分割体も特記のない限り同様の材料、構成である。
【0033】
第一、第二分割体21,22は、幅方向Xに直交する長手方向Yに長尺状に形成されている。絶縁体20を水平方向に対して分割形成することで、その幅方向Xに対し各分割体21,22を幅狭に形成することができる。これにより、絶縁体20全体の熱容量を抑制することができ、加熱空間に対する温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることが可能となる。また、各分割体21,22を幅狭に形成することで、鉛直方向Z下方の加熱空間S(炉内部)に対する絶縁体20の露出面積を減らすことができる。
【0034】
図4に示すように、第一分割体21は略板状を呈し、発熱体10側に湾曲する湾曲部23が形成されている。第二分割体22の一側(第一分割体21側)には、切欠部24が形成されている。この切欠部24は、第一分割体21の湾曲部23に対向するよう開口している。切欠部24の下部には、第一分割体21側へ若干突出する突出部25が設けられ、この突出部25と第一分割体21との間には、空隙26が発熱体10の肉厚より幅広に形成されている。また、第一、第二分割体21,22には、後述の締結具30を貫通させる貫通孔27が形成されている。この貫通孔27は、湾曲部23及び切欠部24より上方に設けられている。
【0035】
ここで、第二分割体22の切欠部24には幅方向端部13の折曲部16が係止される。幅方向端部13の第二屈曲部15は、第一分割体21の湾曲部23により発熱体10側への移動が規制される。一方、折曲部16は、切欠部24により他側への移動が規制される。また、空隙26は、発熱体10の幅方向Xへの移動を規制すると共に幅方向端部13の脱落を防止する。
【0036】
このように、湾曲部23と切欠部24とにより幅方向端部13を挟み込むことで、発熱体10を第一、第二分割体21,22間に係止させる。これにより、湾曲部23、切欠部24及び空隙26が相俟って、発熱体10の発熱・冷却時の熱変形による幅方向Xへの移動を規制し、絶縁体20からの脱落、抜けを防止する。さらに、発熱体10の第一屈曲部14は、絶縁体20の下方に位置するので、第一分割体21が加熱空間に対して発熱体10に覆うように支持され、絶縁体20の加熱空間に対する露出部分をさらに減らすことができる。
【0037】
締結具30は各分割体21,22を幅方向Xへ貫通し、各分割体21,22を固定部材40に締結固定する。この締結具30は貫通孔27により幅方向端部13より上方に位置するので、締結具30が発熱体10からの放熱を妨げることはない。また、締結具30は各分割体21,22を幅方向Xで締結させるので、絶縁体20をさらに幅狭に形成することが可能となり、絶縁体20の熱容量を抑制することができる。この締結具30としては、例えば棒状部材としてのボルト31が用いられる。
【0038】
図1に示すように、固定部材40は、例えば板状物をチャンネル状に形成したチャンネル部材が用いられ、ボルト、ビスや溶接等の取付手段41によりフレーム2に固定されている。また、リード部材50は、発熱体10とほぼ同様の薄板部材からなり、碍子等の絶縁部材51を介してフレーム2に電気的に絶縁した状態で固定具52により固定されている。
【0039】
ここで、本実施形態における電気ヒーター1の組立製造手順について説明する。
まず、フレーム2に予め固定した固定部材40内へ第一分割体21の湾曲部23と第二分割体22の切欠部24を対向させて嵌め込む。次に、ボルト31を各分割体21,22の貫通孔27に貫通させると共にナット32により固定部材40に締結固定する。そして、切欠部24に空隙26を介して発熱体10の幅方向端部13を長手方向Yへ向かって挿入する。これにより、幅方向端部13を第一、第二分割体21,22間で係止させ、発熱体10を絶縁体20に吊り下げ支持する。
【0040】
本実施形態において、電気ヒーター1は、単一の発熱体10により構成したが、複数の発熱体10により構成することも可能である。
例えば、図5に示す如き改変例に係る電気ヒーター1Aは、並列配置される複数の発熱体10を備え、この発熱体群の幅方向Xの最外側に上述の絶縁体20と、各発熱体10間に第二の絶縁体20Aを設けている。この第二絶縁体20Aは、上記の第一分割体21,21と、この一対の第一分割体21,21に挟まれる第二分割体22Aからなる。第一分割体21は、第二分割体22Aに対し対称に配置されている。
【0041】
第二分割体22Aは略T字状を呈し、その両側面(各第一分割体21,21側)に切欠部24,24がそれぞれ形成されている。また、第二分割体22Aには、第一分割体21の貫通孔27と連通する貫通孔27Aが形成されている。これら貫通孔27,27Aにボルト31を貫通させることで、各第一分割体21,21と第二分割体22Aとを固定部材40に締結固定する。
【0042】
ここで、絶縁体20を第二絶縁体20Aとして用いることも可能である。しかし、係る場合、発熱体10に対して幅方向X外側に位置する第二分割体22が各発熱体10間で重複するため、その分絶縁体の熱容量が増加する。しかも、隣接する発熱体10を近接させて配置することも困難である。一方、第二絶縁体20Aは、第二分割体22Aを隣接する2組の発熱体10間で共通させている。これにより、幅方向Xに対し第二絶縁体20Aを幅狭に形成でき、第二絶縁体20Aの熱容量を抑制することができる。しかも、隣接する発熱体10の幅方向端部13をより近接配置させることが可能となり、発熱体10を幅方向Xに対し密に配置することができる。従って、加熱空間に対する加熱面密度を増加させることができ、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることが可能となる。
【0043】
なお、図5に示す改変例では、4体の発熱体10を並列配置して構成したが、発熱体10の数はこれに限定されるものではない。また、上記第一実施形態の改変例では、発熱体10をリード部材50,50間で電気的に直列に接続したが、並列に接続することも可能である。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、上記第一実施形態と同様の部材には同一の符号を附してあり、主として上記実施形態と異なる部分について説明する。
【0045】
図6(a)に示す第二実施形態においては、発熱体の幅方向端部及び絶縁体の形状が上記第一実施形態と異なる。第二実施形態に係る電気ヒーター1Aにおいて、発熱体10Aの幅方向端部13Aは、第一屈曲部14Aにより鉛直方向Y下方に配向するように形成されている。
【0046】
絶縁体20Bは、対をなす第一分割体21B及び第二分割体22Bとからなる。第一分割体21Bは板状を呈し、その下端には傾斜部23Bが形成されている。この傾斜部23Bは、発熱体10Aに沿うように鉛直方向Zに対し鋭角に傾斜している。一方、第二分割体22Bは略J字状を呈し、第一分割体21B側に溝部24Bと傾斜部23Bへ突出する突出部25Bが形成されている。この突出部25Bと傾斜部23Bとの間には、発熱体10Aの厚さよりも幅広の空隙26Bが形成されている。
【0047】
本実施形態では、傾斜部23Bと溝部24Bとにより発熱体10Aの幅方向端部13Aを挟み込むことで、発熱体10Aを第一、第二分割体21B,22B間に係止させる。これにより、傾斜部23B、溝部24B及び空隙26Bが相俟って、発熱体10Aの発熱・冷却時の熱変形による幅方向Xへの移動を規制し、絶縁体20からの脱落、抜けを防止する。
【0048】
このように、第二実施形態に係る電気ヒーター1Aにおいても、上記第一実施形態と同様に、各分割体21B,22Bを幅狭に形成することができ、絶縁体20Bの熱容量を抑制することができる。また、絶縁体20Bを幅狭に形成することで、各分割体21B,22Bの加熱空間側に対する露出部分を減らすことができ、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることが可能となる。
【0049】
ここで、第二実施形態においても、上記第一実施形態の改変例の如く、複数の発熱体を並列に配置することは可能である。
第二実施形態の改変例に係る電気ヒーター1Cでは、図6(b)に示すように、並列配置される各発熱体10Aの間に第二絶縁体20Cを設けている。この第二絶縁体20Cは、上述の第二実施形態の第一分割体21Bと、この一対の第一分割体21B,21Bに挟まれる第二分割体22Cからなる。
【0050】
第二分割体22Cは略T字状を呈し、その両側面(各第一分割体21B,21B側)に溝部24C及び傾斜部23B側へ突出する突出部25Cが形成されている。また、第二分割体22Cには、第一分割体21Bの貫通孔27Bと連通する貫通孔27Cが形成されている。
【0051】
この改変例においても、上記第一実施形態の改変例と同様に、第二分割体22Cを隣接する発熱体10B間で共通させている。これにより、絶縁体20Cを幅狭に形成でき、絶縁体20C全体の熱容量を抑制することができる。しかも、加熱空間に対する加熱面密度を増加させることができ、昇降温のレスポンスを向上させることが可能となる。
【0052】
図7,8に示す第三実施形態においては、発熱体及び絶縁体の構成が上記各実施形態と異なる。図7(a)に示すように、第三実施形態に係る電気ヒーター1Dは、発熱体10Bと、一対の分割体61,61及びこの一対の分割体61,61に挿入する絶縁体としての碍管62とからなる絶縁体60とを備える。
【0053】
発熱体10Bには、一対の幅方向端部13B,13Bに適宜間隔をおいて複数の略円形の貫通孔17が形成されている。図8に示すように、発熱体10Bにおける一対の幅方向端部13B,13Bの間は、スリット11に直交する長手方向Y視でなだらかな円弧状(アーチ状)をなすように形成しており、下側(炉内部側)に凸状を呈している。この発熱体10Bは、発熱により軟化すると共に熱膨張すると、発熱体10Bの自重が鉛直方向Zに作用し、カテナリー曲線の如き形状となる。この形状は力学的に安定しており、軟化しても発熱体10Bの形状は維持されると共に脱落が防止される。
【0054】
図8に示すように、この発熱体10Bは、薄板部材10’に上述のスリット11を形成すると共に幅方向Xの一対の端部13’13’に貫通孔17を形成することで製作される。幅方向端部13Bは、薄板部材10’全体を幅方向Xに沿うように円弧状に形成すると共に端部13’を第一屈曲部14’で薄板部材10’のなす円弧の内側へ折り曲げて形成されている。ここで、円弧の内側へ折り曲げるとは、両方の幅方向端部13B,13Bを略鉛直方向Zに沿うように互いに平行に配向させることをいう。このように構成することで、発熱体に加熱による軟化が生じても、発熱体10Bは幅方向端部13B,13Bで鉛直に支持されており、支持部分に不要な応力は発生しない。
【0055】
図7(a)に示すように、分割体61の下部には凹部63が形成されており、この凹部63に碍管62を貫通させる貫通孔64が形成されている。また、分割体61の上部には、締結具30としてのボルト31を貫通させる第二貫通孔65が形成されている。この分割体61及び碍管62は、上記各実施形態と同様の絶縁材料により構成され、発熱体10Bとフレーム2,2’とを電気的に絶縁する。一対の分割体61,61を凹部64,64を対向させてボルト31及びナット32により固定部材40に締結固定する。これにより、発熱体10Bの幅方向端部13Bを挿入する溝66が鉛直方向Zに向かって形成される。
【0056】
ここで、本実施形態における電気ヒーター1Dの組立製造手順について説明する。
まず、一対の分割体61,61を対向させて発熱体10Bの幅方向端部13Bを挿入する溝部66を形成する。この溝部66に発熱体10Bの幅方向端部13Bを下方から挿入する。挿入後、発熱体10Bの貫通孔17及び一対の分割体61,61の貫通孔64,64に碍管62を挿入して連結させる。これら連結された部材をフレーム2に予め取り付けた固定部材40に嵌め込み、締結具30により分割体61,61を締結固定する。これにより、幅方向端部13Bが溝部66内で碍管62に係止され、発熱体10Bは絶縁体60に吊り下げられる。
【0057】
本実施形態においても、上記各実施形態と同様に、各分割体21B,22Bを幅狭に形成することができ、絶縁体60の熱容量を抑制することができる。また、幅狭に形成することで、各分割体61,61の加熱空間側に対する露出部分を減らすことができ、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることが可能となる。さらに、第一屈曲部14Bは絶縁体60の下方に位置するので、一方の分割体61が加熱空間Sに対して発熱体10Bに覆うように支持され、絶縁体60の加熱空間Sに対する露出部分をさらに減らすことができる。
【0058】
ここで、第三実施形態においても、上記各実施形態の改変例の如く、複数の発熱体を並列に配置することは可能である。
第三実施形態の改変例に係る電気ヒーター1Eでは、図7(b)に示すように、並列配置される各発熱体10Bの間に第二の絶縁体60Aを設けている。この第二絶縁体60Aは、上述の分割体61,61と、この一対の分割体61,61に挟まれる第二分割体67とからなる。
【0059】
第二分割体67は、その幅方向Xの両側面に凹部68がそれぞれ形成されている。凹部68には、各分割体61,61の貫通孔64,64と連通し碍管62を貫通させる貫通孔69aが形成されている。また、その上部には、分割体61,61の第二貫通孔65,65と連通する第二貫通孔69bが形成されている。
【0060】
分割体61,61及び第二分割体67の各貫通孔64,69a及び発熱体10Eの貫通孔17に碍管62を挿入することで発熱体10Bを第二絶縁体60Aに係止し、複数の発熱体10Bを並列配置する。この改変例においても、発熱体10Bに対し幅方向Xの外側に位置する第二分割体67を共通としているので、第二絶縁体60Aを幅狭に構成でき、第二絶縁体60Aの熱容量を抑制することができる。また、加熱空間Sに対する加熱面密度を増加させることができ、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることが可能となる。
【0061】
図9,10に示す第四実施形態においては、発熱体及び絶縁体の構成が上記各実施形態と異なる。図9に示すように、第四実施形態に係る電気ヒーター1Fは、複数の発熱体10Cと、これらの発熱体10Cを取り付ける一体物の絶縁体70と、絶縁体70を固定すると共にフレーム2に取り付けられる固定部材40Aとを備える。
【0062】
発熱体10Cは、上記各実施形態と同様にスリット11が形成されると共に下側に凸の略円弧状に形成されている。発熱体10Cの幅方向端部13Cは、上記各実施形態と異なり、屈曲形成されていない。その幅方向端部13Cには、貫通部材80を貫通させる貫通孔17が形成されている。また、固定部材40Aは、長手方向Y視で略L字状に形成されている。
【0063】
絶縁体70は、全体として板状を呈すると共に、縦部71とこの縦部71から少なくとも幅方向Xへ屈曲する横部72とからなる。縦部71には、先の締結具30を貫通させる貫通孔73が形成されている。横部72は、発熱体10Cに沿うように鉛直方向Zに対して鋭角に傾斜し、貫通部材80を貫通させる第二貫通孔74が形成されている。このように、発熱体10Cを取り付ける横部72を縦部71から連続して一体的に形成することで、絶縁体70全体の体積を減らすことができ、絶縁体70の熱容量を抑制することが可能となる。しかも、横部72は幅方向端部13Cを取付可能に形成すればよく、横部72を幅方向Xに対して幅狭に形成することができる。これにより、横部72の加熱空間S側への露出を減らすことができ、加熱面密度を向上させて温度分布が均一化されると共に加熱効率を向上させることができる。なお、貫通部材80には、例えばボルト81を用いる。
【0064】
ここで、発熱体10Cの絶縁体70への取付について説明する。
ボルト81は、横部72の貫通孔74及び発熱体10Cの貫通孔17を貫通し、ナット82により幅方向端部13Cを横部72の下面72aに取り付ける。ここで、同図の一点鎖線で示す発熱体10C’の如く、横部72の上面72bに取り付けることも可能である。しかし、横部72の下面72a側に取り付けることで、加熱空間に対し発熱体10Cを横部72を覆うように位置させることができ、絶縁体70の加熱面側の露出部分を低減させることができる。しかも、隣接する発熱体10Cを近接して配置することができ、加熱面密度を向上させることができる。従って、これらの点で下面72aに発熱体10Cを取り付ける態様の方が優れている。
【0065】
本実施形態において、横部72を縦部71から鉛直方向Zに対し鋭角に折り曲げて形成したが、横部72の傾斜角度は上記態様に限られるものではない。
例えば、図10(a)に示す第四実施形態の第一改変例に係る電気ヒーター1Gは、鉛直方向Zに対し鈍角に屈曲形成した横部72Aを有する絶縁体70Aを備えている。この横部72Aには、鉛直方向Z上方に凸になだらかに湾曲させた発熱体10Dが取り付けられている。同図(b)に示す第二改変例に係る電気ヒーター1Hは、略水平に屈曲形成した横部72Bを有する絶縁体70Bを備えている。この横部72Bには、平坦に形成した発熱体10Eが取り付けられている。
【0066】
また、上記第四実施形態では、各発熱体の一対の幅方向端部にそれぞれ絶縁体70を設け、発熱体を並列配置した。しかし、隣接する発熱体間において、絶縁体70を鉛直方向Zに対し線対称に一対設ける態様の他、第二の絶縁体70Cを用いて行うことも可能である。例えば、図10(c)に示すように、第三改変例に係る電気ヒーター1Jにおいて、第二絶縁体70Cは、縦部71Cとこの縦部71Cから分岐する一対の横部72C,72Cよりなる。これにより、縦部71Cが隣接する発熱体10C間で共通するので、絶縁体70をさらに幅狭に形成でき、より面密度を向上させることが可能となる。
【0067】
図11に示す第五実施形態に係る電気ヒーター1Kは、貫通部材80としてのボルト81に代えて絶縁ピン83を設ける点で上記第四実施形態と異なる。また、絶縁体70Dの横部72Dには、第四実施形態と異なり貫通孔を設けていない。
【0068】
絶縁ピン83は、固定部材40Bの貫通孔42を鉛直方向Zへ貫通して取り付けられている。発熱体10Cは、幅方向端部13Cが横部72Dの上面72bに載置されると共に、発熱体10Cの貫通孔17に絶縁ピン83を貫通させることで横部72Dに取り付けられる。これにより、発熱体の熱変形による幅方向Xへの移動が規制されると共に、横部72Dにより発熱体10Cの落下も防止される。しかも、横部72Dに発熱体10Cの貫通孔17に対応して複数の貫通孔を形成しなくてもよく、絶縁体の加工が容易となる。
【0069】
図12(a)に示す第六実施形態においては、絶縁体及び固定部材の構成が上記各実施形態と異なる。第六実施形態に係る電気ヒーター1Lは、複数の発熱体10Fと、絶縁体90と、この絶縁体90を保持する固定部材40Dとを備える。
【0070】
発熱体10Fは、先の第三実施形態と同様の構成であるが、幅方向端部13Fには貫通孔17が形成されていない。固定部材40Dは、例えばステンレス板等の板状物を略方形に屈曲して管状に形成されると共に、発熱体10F側の側面44に長手方向Yに沿って開口部43が形成されている。固定部材40Dを板状物を屈曲加工により形成するので、固定部材40Dを薄くすることができ、固定部材40Dの熱容量を抑制することができる。この固定部材40D内部には、絶縁体90が長手方向Yに向かって嵌め込まれる。
【0071】
絶縁体90は、対をなす第一、第二分割体91,92とからなる。第一分割体91は略L字状を呈すると共に、幅方向Xに沿う水平部93とその水平部93から鉛直方向Z下方に連続する鉛直部94とからなる。この鉛直部94の下端は、発熱体10Fに沿う傾斜面94aが形成されている。
【0072】
第二分割体92は略L字状を呈すると共に、鉛直方向Zに沿う鉛直部95とその鉛直部95から水平方向に連続する水平部96とからなり、固定部材40Cの下部45により支持されている。この水平部96の上面には、発熱体10Fに沿う傾斜面96aが形成されている。
【0073】
第一、第二分割体91,92は、固定部材40Dの内部に嵌め合わせて固定され、第一、第二分割体91,92により幅方向端部13Fを挿入する溝部97が鉛直方向Zに形成される。この溝部97の一端は、傾斜面94a,96aにより形成される空隙97aが形成されると共に、開口部43と連通している。
【0074】
このように、絶縁体90を第一、第二分割体91,92により構成しているので、発熱体10Fの幅方向端部13Fを保持する溝部97を容易に形成することができる。また、第一、第二分割体91,92を管状の固定部材40Dに嵌め込んで固定するので、各分割体91,92は少なくとも絶縁を確保し得る厚みを有していればよく、絶縁体90全体を幅方向Xに対して幅狭に形成することができる。これにより、絶縁体90の熱容量を抑制することができる。しかも、絶縁体90の各分割体91,92は薄く形成され且つ管状の固定部材40Dに嵌め込んで固定されるので、絶縁体90の加熱空間S側に露出する部分を減らすことができ、加熱面密度を向上させることができる。従って、温度分布が均一化され昇降温のレスポンスを向上させることができる。さらに、絶縁体90を長手方向Yに向かって挿入すればよく、固定作業を容易に行うことができる。
【0075】
ここで、幅方向端部13Fは、溝部97に挿入されると共に保持される。幅方向端部13Fの第一屈曲部14Fは、第一、第二分割体91,92の傾斜面94a,96aにより挟持される。これにより、傾斜面94a,96a及び溝部97が相俟って、発熱体10Fの発熱・冷却時の熱変形による幅方向Xへの移動を規制すると共に、絶縁体90からの脱落、抜けを防止する。
【0076】
図12(b)に示す第七実施形態に係る電気ヒーター1Mは、発熱体10G、絶縁体90A及び固定部材40Eの形状が上記第六実施形態と異なる。
発熱体10Gは、鉛直方向Z下方へ凸状になだらかに湾曲している。幅方向端部13Gは、幅方向Xへ配向するように発熱体10Gの端部を第一屈曲部14Gで発熱体10G側に半円状に折り曲げて形成されている。固定部材40Eは、その下面45に長手方向Yに沿って開口部43が形成されている。
【0077】
絶縁体90Aは、対をなす第一、第二分割体91A,92Aとからなる。第一分割体91Aは略L字状を呈すると共に、幅方向Xに沿う水平部93Aとその水平部93Aから鉛直方向Zに連続する鉛直部94Aとからなり、固定部材40Eの下部45により支持されている。この水平部93Aの一端は、発熱体10Fの第一屈曲部14Gに沿うように曲面93Aaが形成されている。
【0078】
第二分割体92Aは略L字状を呈すると共に、鉛直方向Zに沿う鉛直部95Aとその鉛直部95Aから水平方向Xに連続する水平部96Aとからなる。第一、第二分割体91A,92Aは、固定部材40Eの内部に嵌め合わせて固定され、第一、第二分割体91A,92Aにより幅方向端部13Gを挿入する溝部97が水平方向Xに形成される。この溝部97の一端は、曲面93Aaと鉛直部95Aにより形成される空隙97aが形成されると共に、開口部43と連通している。
【0079】
本実施形態においても、第六実施形態と同様に、発熱体10Gの幅方向端部13Gを保持する溝部97を容易に形成することができ、絶縁体90A全体を幅狭に形成することができる。これにより、絶縁体90Aの熱容量を抑制することができ、レスポンスを向上させることができる。さらに、本実施形態では、幅方向端部13Gを幅方向Xに配向させているので、第一分割体91Aは発熱体10Gの上方に位置する。よって、第一分割体91Aが、加熱空間Sに対して露出することはなく、絶縁体90Aの露出面積をさらに減少させることができる。
【0080】
ここで、幅方向端部13Gは、溝部97に挿入されると共に保持される。幅方向端部13Gの第一屈曲部14Gは、第一分割体91Aの曲面93Aa及び鉛直部95Aにより挟持される。これにより、曲面93Aa、鉛直部95A及び溝部97Aが相俟って、発熱体10Gの発熱・冷却時の熱変形による幅方向Xへの移動を規制すると共に、絶縁体90Aからの脱落、抜けを防止する。
【0081】
最後に、本発明のさらに他の実施形態の可能性について説明する。
上記第一、第二実施形態において、発熱体の幅方向端部の形状は上記形状に限られるものではない。例えば、図13(a)〜(d)に示すように、幅方向端部13の先端部分を略直角に折り曲げて折曲部16’を形成しても構わない。
【0082】
また、折曲部16’の折曲方向は、幅方向Xに沿う水平方向であればいずれの方向であってもよい。但し、図13(b)(c)に示すように、折曲部16’を発熱体10側へ配向させることで、一方の分割体が加熱空間Sに対して露出することはなく、絶縁体20の加熱空間Sに対する露出部分を減らすことができる。これにより、昇降温のレスポンスをさらに向上させることができる。さらに、同図(c)に示す如き発熱体10を並列配置する態様において、隣接する発熱体10をより近接することができる。しかも、第二分割体22cの加熱空間Sへの露出部分を減らすことも可能となり、加熱面密度をさらに向上させることができる。
【0083】
上記第一、第二実施形態において、絶縁体の形状も上記形状に限られるものではない。例えば、図13(a)(d)に示すように、第一分割体21aの厚みをほぼ一定にして屈曲形成しても構わない。これにより、第一分割体21aの熱容量をさらに低減することができる。
【0084】
また、上記第一、第二実施形態において、発熱体を下側に凸状に湾曲させて形成した。しかし、上側に凸状の発熱体や平坦に形成した発熱体に適用することも可能である。第二実施形態の場合、発熱体の形状に合わせて、傾斜部23D,23Eを鉛直方向Zに対し鈍角又は垂直等に傾斜させればよい。
【0085】
上記第三実施形態において、絶縁体としての碍管62により発熱体10Bを一対の分割体61,61間に吊り下げ支持した。しかし、碍管62に代えて溝部66に接着剤を充填硬化させて発熱体10Bを対の分割体61,61間に吊り下げ支持させても構わない。また、上記第四〜第七実施形態において、発熱体の並列配置の態様を例に説明した。しかし、発熱体の一対の幅方向端部にそれぞれ絶縁体を設けることで、単一の発熱体により電気ヒーターを構成することが可能である。
【0086】
上記第六、七実施形態において、絶縁体90を第一、第二分割体91,92により構成した。しかし、係る態様に限られず、絶縁体90を一体物として形成しても構わない。但し、係る場合、発熱体端部を挿入する溝を形成するために肉厚に形成する必要があり、熱容量の低減の点で上記第六、七実施形態の方が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る電気ヒーターは、例えばガラス、セラミック、金属等の被加熱物の熱処理用のヒーターとして利用することができる。また、この電気ヒーターは加熱ユニットとして例えば炉内に設置し、加熱装置として利用することも可能である。また、電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに加熱装置は、例えば半導体ウエハの半導体製造装置やガラス基板等を加熱処理する基板処理装置等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1,1A〜1M,1’:電気ヒーター、2,2’:フレーム(基材)、3:断熱部材、10,10A〜10M:発熱体、10’:薄板部材、11:スリット、12:電流路、12x,12y:電流路端部、13,13A〜13M:幅方向端部、13’:端部、14,14A〜14M,14’:第一屈曲部、15,15’:第二屈曲部、16,16’:折曲部、17:貫通孔、20,20A〜20C,20a〜20d:絶縁体、21,21A,21B,21a,21b:第一分割体、22,22A〜22C,22a〜22d:第二分割体、23:湾曲部、23B,23C:傾斜部、24:切欠部、24A〜24C:溝部、25,25A〜25C:突出部、26,26A〜26C:空隙、27,27A〜27C:貫通孔、30:締結具(ボルト)、31:ボルト、32:ナット、40,40A〜40E:固定部材、41:取付手段、42:貫通孔、43:開口部、44:側面、45:下面、50:リード部材、51:絶縁部材、52:固定具、60,60A:絶縁体、61:分割体(碍子)、62:碍管、63:凹部、64:貫通孔、65:第二貫通孔、66:溝部、67:第二分割体、68:凹部、69a:貫通孔、69b:第二貫通孔、70,70A〜70D:絶縁体、71,71C:縦部、72,72A〜72D:横部、72a:下面、72b:上面、73:貫通孔、74:第二貫通孔、80:貫通部材、81:ボルト、82:ナット、90,90A:絶縁体、91,91A:第一分割体、92,92A:第二分割体、93,93A:水平部、93Aa:曲面、94,94A:鉛直部、94a:傾斜面、95,95A:鉛直部、96,96A:水平部、96a:傾斜面、97:溝部、97a:一端(空隙)、100,100A〜100C:加熱ユニット、101:支持部材、S:加熱空間、X:幅方向、Y:長手方向、Z:鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される電気ヒーターであって、
各幅方向端部に位置する絶縁体は、前記幅方向に沿った水平方向に対して少なくとも2分割され、2分割された各分割体の間に前記幅方向端部を係止し、前記幅方向端部の上方の部分で前記各分割体を締結する締結具を設けてある電気ヒーター。
【請求項2】
前記発熱体を少なくとも2組前記幅方向に並列配置させて備え、幅方向外側の分割体が2組の発熱体で共通する請求項1記載の電気ヒーター。
【請求項3】
前記締結具が前記分割体を貫通する棒状部材である請求項1又は2記載の電気ヒーター。
【請求項4】
基材に固定される固定部材を備え、この固定部材に前記棒状部材を貫通させることで固定してある請求項3記載の電気ヒーター。
【請求項5】
前記幅方向端部を屈曲させ、前記幅方向端部を前記各分割体で挟み込むことで前記幅方向端部を係止する請求項1〜4のいずれかに記載の電気ヒーター。
【請求項6】
前記各分割体及び前記幅方向端部に貫通孔を形成し、この貫通孔に絶縁体を挿入することで前記幅方向端部を係止する請求項1〜4のいずれかに記載の電気ヒーター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電気ヒーターの製造方法であって、
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構造であり、前記2分割された各分割体の間に前記幅方向端部を係止し、前記幅方向端部の上方の部分で前記各分割体を締結具により締結する電気ヒーターの製造方法。
【請求項8】
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される電気ヒーターであって、
各幅方向端部に位置する絶縁体は、縦部とこの縦部から少なくとも前記幅方向へ屈曲する横部とからなり、前記横部及び前記幅方向端部に貫通部材を貫通させる貫通孔を形成し、これら貫通孔に前記貫通部材を貫通させて前記幅方向端部を前記横部に取り付ける電気ヒーター。
【請求項9】
前記幅方向端部を前記横部の下面側に取り付ける請求項8記載の電気ヒーター。
【請求項10】
前記発熱体を少なくとも2組備え、前記横部を前記縦部から少なくとも発熱体側に向けて屈曲させて形成し、前記縦部が共通すると共に前記横部を鉛直方向に対し線対称となるように一対設けて、前記発熱体を前記幅方向に並列配置させる請求項8又は9記載の電気ヒーター。
【請求項11】
前記発熱体を少なくとも2組備え、前記横部を前記縦部から少なくとも発熱体側に向けて屈曲させて形成し、前記絶縁体を鉛直方向に対し線対称となるように一対設けると共に、一対の絶縁体の各縦部を締結する締結具を設け、前記幅方向端部の上方の部分で前記各縦部を締結させて、前記発熱体を前記幅方向に並列配置させる請求項8又は9記載の電気ヒーター。
【請求項12】
基材に固定される固定部材を備え、前記締結具が前記各縦部を貫通する棒状部材であり、前記固定部材に前記棒状部材を貫通させることで固定してある請求項11記載の電気ヒーター。
【請求項13】
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される電気ヒーターであって、
各幅方向端部に位置する絶縁体は、縦部とこの縦部から少なくとも発熱体側へ屈曲する横部とからなり、前記発熱体を貫通する絶縁ピンを備え、前記幅方向端部に前記絶縁ピンを貫通させる貫通孔を形成し、前記幅方向端部を前記横部に載置すると共に前記絶縁ピンを前記貫通孔に貫通させて前記絶縁体に取り付ける電気ヒーター。
【請求項14】
基材に固定される固定部材を備え、この固定部材に前記絶縁ピンを貫通させる請求項13記載の電気ヒーター。
【請求項15】
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される電気ヒーターであって、
基材に固定される固定部材を備え、前記固定部材は板状体を屈曲して管状に形成されると共にその長手方向に沿って一部を開口させた開口部を有し、各幅方向端部に位置する絶縁体は、前記固定部材に嵌め込んで固定されると共に内部に前記幅方向端部を挿入する溝部を形成し、前記溝部の一端は前記開口部と連通し、前記幅方向端部を鉛直方向へ屈曲させると共に前記長手方向に向かって前記溝部に挿入し、前記一端近傍で前記発熱体を挟む電気ヒーター。
【請求項16】
前記絶縁体は少なくとも2分割され、2分割された各分割体により前記溝部を形成する請求項15記載の電気ヒーター。
【請求項17】
前記開口部は少なくとも前記幅方向に向けて開口し、前記溝部を前記鉛直方向に形成すると共に、前記幅方向端部を前記鉛直方向へ配向するように屈曲させる請求項15又は16記載の電気ヒーター。
【請求項18】
前記開口部は少なくとも前記鉛直方向に向けて開口し、前記溝部を前記幅方向に形成すると共に、前記幅方向端部を前記幅方向へ配向するように前記発熱体側へ屈曲させる請求項15又は16記載の電気ヒーター。
【請求項19】
前記発熱体を少なくとも2組備え、前記絶縁体を鉛直方向に対し線対称となるように一対配置させて、前記発熱体を前記幅方向に並列配置させる請求項15〜18のいずれかに記載の電気ヒーター。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の電気ヒーターを備えた加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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