説明

電気ポンピングされたND3+ドープ型固体レーザー

固体レーザーの分野、そしてより特定的には、希土類イオンでドープされたレーザーキャビティに関するものであり、更に、レーザー増幅構造、レーザー、付随する生産方法及びレーザー増幅構造の使用にも関するものである。増幅構造は、電気的に励起されることができ、活性媒質及びこの活性媒質の両方の側面に配置された少なくとも2つの電極を含む。酸化ケイ素の第1の層を含む活性媒質は、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドーピングされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体レーザーの分野、そしてより特定的には希土類イオンでドープされたレーザーキャビティに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーの販売市場は、主としてレーザーダイオード、及び希土類又は遷移金属によりドープされた絶縁材料(ガラス及び水晶)に基づくレーザーによって独占されている。
【0003】
レーザーダイオードは、主として光線を生成することを目的とする半導体を用いたダイオードから成る。ポンピングは、一方の側面で発生媒質の正孔、そしてもう一方の側面でその電子を富化させる電流の助けを得て実施される。光は正孔と電子を再結合させることによって接合部で生成される。このタイプのレーザーは、いかなるキャビティミラーも有していない。レーザーダイオード内では、レーザー効果を得るために必要とされる反転分布は電気的励起を用いて可能となっており、かかるシステムのコンパクト性が改善されている。しかしながらこれらのシステムは、動作又は構造、そしてその結果として発生する物理的問題に関して固体レーザーとは異なっている。
【0004】
固体レーザーは、水晶又はガラスといった固体媒質を光子発生用媒質として使用する。水晶又はガラスは利得媒質にすぎず、レーザー媒質(活性媒質、すなわち中でレーザー効果が起こる、つまり発光のためのドーピング元素を励起及び脱励起する現象が起こる媒質)である少なくとも1つのイオンによってドープされる。固体レーザーの中で最も良く知られ、最も一般的であるのはYAG:Nd3+である。活性イオンでドープされた絶縁材料(水晶及びガラス)は、ランプ又はレーザーダイオードによる光ポンピングを必要とし、かくしてその集積化は制限される。一方、それらの特性はレーザーダイオード(簡潔、高エネルギーパルス、強い輝度、スペクトル同調性、強い発光力など)とは異なり、かつこれを相補うものである。
【0005】
活性媒質は、同様に、ドープ繊維、導波路増幅器などといった類似の分野でも使用される。
【0006】
希土類ドープ繊維の分野は、超高出力レーザーの創出により著しく発達した。該繊維は、多大な使用上の柔軟性を提供するものの、レーザー集積化を可能にするものではない。
【0007】
活性イオンによりドープされた薄い導波層の形をした集積システムについては、主として、1.5μm前後でEr3+及びTm3+でドープされた電気通信増幅器に研究努力が払われている。同様に、高い出力レベルを得ることのできる薄い導波層状のレーザーの生産に関する広範な研究作業も行なわれてきた。かかるシステムは、例えば、国際出願第065093号(WO−065093)及び米国特許出願第2005/0195472号といった特許出願の中で記述されている。この最初の出願においては、ケイ素のSi及び希土類原子のナノクラスタ(ナノ粒子)で同時ドープされた酸化ケイ素導波管は、可視光を吸収するものの赤外発光は吸収しない。この原理に基づいて、光ポンピング源が導波管の上に設置される。導派管内に注入されたポンピング光は、(電子−正孔結合により)ケイ素ナノ粒子を励起し、これが今度は希土類元素を励起する。ケイ素ナノ粒子と希土類元素の間のこのようなエネルギー伝達が、「Ndナノクラスタカップリング強度、及びNdドープされたケイ素富有酸化ケイ素内でのNd3+ルミネッセンスの励起/脱励起におけるその効果」という題の刊行物(Seo et at. Applied Physics Lelters, 第83巻、第14号、2003年10月6日)の中で示唆されており、有効性の増加(数十倍さらには百倍)が得られている。このとき、光入力信号が、希土類元素により生成されたエネルギーを用いて導派管内で増幅され、増幅された光出力信号の形で出てくる。
【0008】
このシステムは、ケイ素ナノ粒子を含む全てのシステムと同様、光ポンピングのためのレーザーダイオードと、集積化を制限するドープされた活性媒質の結合を必要とする。
【発明の開示】
【0009】
本発明の第1の目的は、より複雑なシステムの中への固体レーザーの集積化を促進することにある。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、可能なかぎりコンパクトな固体レーザーを提供することにある。
【0011】
光ポンピングのためのレーザーダイオードの存在は同様に、その効率性に起因するエネルギーの浪費も意味している。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、固体レーザーの電力消費量を削減し、ひいてはこれらのシステムの効率を高めることにある。
【0013】
レーザーダイオードは廉価ではあるものの、固体レーザーシステムの製造にあたってはなおも経済的な支出を必要とする。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、固体レーザーの製造をより複雑にすることなく、その製造コストを削減することにある。
【0015】
上述の第2の出願においては、光増幅器は、エルビウムイオンでドープされたケイ素から作られた導波管から成り、前述の導波管は、導派管の相対する壁の上に配置された2つの電極を用いて光学的又は電気的のいずれでもあり得るポンピングエネルギーによって、又はラマン散乱によって動力供給される。電気ポンピングを伴う実施形態においては、エルビウムイオンは、2つの電極の間に適用された電場により励起される。しかしながら、エルビウムイオンは電場に対する感度が低く、活性エルビウムイオンの直接的励起のための唯一の可能性は、(電気的励起とは対照的である)このイオンによる光子吸収であることからかかる直接的励起は実際には機能せず、従ってシステムは充分な数の励起済みイオンを得るために多くのエネルギーを消費する。
【0016】
従って、本発明のもう1つの目的は、ドーピングイオンのより容易な励起を可能にする電気的ポンピングレーザー解決法、特に効率を改善しながらエネルギー消費量の低い解決法を供給することにある。
【0017】
これらの類似のシステム(導派管増幅器、レーザーファイバなど)の動作は、増幅される入力光信号に大きく左右されるということも指摘される。これとは対照的に、本発明が関係している固体レーザーは、出力信号を発出するために入力光信号の使用を必要としない。
【0018】
上述の目的の1つは、活性媒質を通過する電場に対する感応性をもつナノ粒子であるケイ素ナノ粒子を活性媒質内で使用することによって達成される。従って、本発明は、既知の先行技術とは異なり、半導体を用いた活性イオンの電気的励起に依存している。
【0019】
この目的で、本発明はとりわけ、活性媒質及びこの活性媒質の両側に配置された少なくとも2つの電極を含んで成るレーザー増幅構造において、前述の活性媒質が、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた酸化ケイ素の第1層(以下同時ドープ層と呼ぶ)を含んで成るレーザー増幅構造に関する。実際には、前述の電極は電源に接続され、かくして使用中、前述の第1層内を電流が流れ前述のケイ素ナノ粒子を励起するようになっている。このレーザー増幅構造は電気的に励起可能である。
【0020】
ケイ素ナノ粒子は、活性媒質を通って走る電流に対し感応性をもつことがわかっている。かくして、ケイ素ナノ粒子は、電流により励起され、その後、上述のSeo et al. の刊行物の中で説明されているように希土類イオンに対してその励起エネルギーを伝達する。このとき、希土類イオンの脱励起により電磁放射線を発出するために、刺激されたレーザー発光のための従来の機序が適用される。この点において、ケイ素ナノ粒子が、その他のドーパントにそのエネルギーを伝達する能力をもつ電気ドーパントとして作用するということがわかる。
【0021】
従って、かかる構造は、二次光源(ポンピングレーザーダイオード)無しで行なうことを可能にする。
【0022】
これらの構造の1つの利用分野は、フォトニクスであり、ここでそれらは一般に半導体回路内に集積化されている。
【0023】
この目的で、前述の第1層は半導体の意味合いで薄層となるようにつまり、一般に、はるかに厚い基板の上に被着されこの基板の機械的特性の恩恵を受けるようになっている、1マイクロメートル(1μm)より小さいか又は実質的にこれに等しい厚みをもつ層となるように想定されている。この要領で、得られた構造は多大なコンパクト性を提供し、このためデバイス又は集積回路内に容易に集積化できるようになっている。1実施形態においては、活性媒質は唯一この同時ドープされた薄層のみで構成され、従って、実質的に1マイクロメートルの厚みを有している。
【0024】
酸化ケイ素層の厚みと比べたナノ粒子の寸法のため、均質な同時ドープ層を作り出すことは困難である。
【0025】
この問題を解決するには、希土類イオン(そして場合によってはナノ粒子)を用いた非ドープ薄層と同時ドープ薄層を交番させる多層構造を使用することが可能である。
【0026】
この目的で、前述の活性媒質はさらに、上に前述の第1層が被着されている希土類イオンでドープされていない酸化ケイ素の薄層を含むことが想定されている。同様に、前述の非ドープ層が上に被着されている希土類イオンとケイ素ナノ粒子でドープされた酸化ケイ素の第2層を、前述の活性媒質が含むことも想定されている。この構成では、非ドープ層は、絶縁層を構成するため、2つの同時ドープ層間の電流の循環のために必要なトンネル効果を保証しなければならないことから、薄いものである必要がある。一例としては、非ドープ層のためには5nm以下の厚みが推奨される。
【0027】
本発明は、2つの同時ドープ層及び1つの非ドープ層から成る活性媒質に制限されず、非ドープ層により2つずつ分離された多数の同時ドープ層を有する活性媒質をも提供している。数十さらには数百層、そして例外的なケースでは数千層を含む多層構造が提供されている。2つの外部層(上面層及び底面層)がSiナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされたものである多層活性媒質が、好ましくは選択される。このように形成された活性媒質は、全ての同時ドープ層を含む(従って光波を生成する能力をもつ)。
【0028】
多層実施形態においては、電極は層に平行に位置付けされており、各々の電極は、活性媒質の上面及び下面層(外部層)の表面の全て又は一部分を覆っている。底面電極は、活性媒質を直接接触している、すなわち活性媒質と成長基板の間にあるか、又は基板の下側に位置付けされ、この基板が電気伝導を可能にしているかのいずれでもあり得る。
【0029】
一般に使用される活性媒質は、数ミリメートルの厚みを有する。サンプルのサイズは、散逸を改善させる(薄型ディスク)か、又はコンパクト性を増大させる(マイクロチップ)かのいずれかの目的で数百マイクロメートルに変更することができる。Nd3+イオンは、そのより大きな有効吸収及び発光断面のため、マイクロチップデバイスに充分適したものである。
【0030】
同様に、構造の集積化が容易な設計においては、構造の活性層は、層内の光を導くための屈折率及び電流注入特性に従って、およそ数μm、好ましくは1マイクロメートル前後の厚みを有する。特に、活性媒質内で単一の同時ドープ薄層が用いられる場合、厚みは、およそ1μm以下の厚みとなるように選択される。この場合の活性層は、多層アセンブリ(同時ドープ層、非ドープ層)で構成された活性媒質であるということを念頭に置いておくべきである。
【0031】
ケイ素ナノ粒子と希土類イオンの間のエネルギー伝達を最適化することを目的として、本発明は、同時ドープ層がナノ結晶又は非晶構造を有し、前述の活性媒質内の希土類イオンとSiナノ粒子の平均離隔距離は0.4nm以下であることを想定している。
【0032】
増幅構造は、レーザー内で、共鳴光キャビティの1素子として実施される。この目的で、それには、ミラーといったような反射面が備わっている。前述の活性媒質は好ましくは、前述の電極に対し実質的に垂直に配置されたブラッグ格子を含み、前述の格子は、前述の同時ドープ層(単複)の中にフォトインスクライブされたゲルマニウムGeイオンで作られている。システムの有効性を増大させるため、活性媒質の全ての同時ドープ層は、好ましくは層同士整列させられたブラッグ格子を含んでいる。これらの格子は任意には、励起された希土類ドーパントイオンの電磁発光のためのミラーとして作用する光キャビティを閉鎖する。好ましくは、これらを電極の端部の実質的にすぐ下に、かつ場合によっては、電極が活性媒質の表面の一部のみを覆う場合には(誘導する同時ドープ層の端部で、縁部に向かって)これを超えて設置することが推奨される。実際には、2つの平行なブラッグ格子は電極の両方の側面上にあって互いに対面し、レーザー光キャビティを画定している。
【0033】
好ましくは、格子の1つは半反射性である。1つの同時ドープ層しか含まない実施形態においては、2つの格子が、この同じ層内で、前述の層の(厚み内の)上面及び底面表面に対し垂直に配置される。
【0034】
さらに、前述の電極の1つは、エネルギー損失を最小限におさえながら多大な電気伝導率を提供する金(Au)から作られている。もう1つの電極は、Ni−Cr合金で作ることができる。
【0035】
1実施形態においては、電極は各々、活性媒質の相対する面の1つにそれぞれ隣接する、例えばITO(酸化インジウム錫)から作られた導電層を含む。
【0036】
異なる実施形態に従うと、希土類イオンは、Nd3+、Yb3+、Er3+、Tm3+及びHo3+から選択される。
【0037】
特に、Nd3+は、レーザー機器のための主要活性イオンとしての価値が急速に認められてきている。YAG:Nd3+の成功により、1.064μmへの遷移は、波長が選択基準でない利用分野について、レーザー発光に関する1つの標準となった。その他の希土類イオンのなかでも、同じ波長範囲内の発光を有するYb3+に言及しておくべきである。長い間、Nd3+イオンの光ポンピングは、このイオンが発光レーザーレベルを超える数多くのエネルギーレベルを有し、これらのレベルはランプにより発出される光の大部分を吸収することから、大きなポンピング効率をもつランプによって実施された。1980年代の800nm前後で発光するAlGaAsダイオードの開発は、レーザーダイオードポンピングを用いたレーザーを徐々にランプポンピングを用いたNd3+レーザーの代わりに利用することを要求している。主として1.06μm前後でのその発光のために用いられるNd3+イオンは、その他のイオン(Yb3+、Er3+など)の大部分がほぼ3つのレベルを伴うシステムである一方で、レーザー端子レベル(411/2)がレーザーエミッタレベル(43/2)よりも数ケタ短かい寿命を有することから、反転分布をきわめて容易に得ることのできる4つのレベルをもつレーザーシステムを含むタイプのものである。従って本発明の好ましい実施形態は、Nd3イオンを用いて提供される。これらの「その他の」イオンについては、レーザー端子レベルは、レーザー閾値に到達するために必要とされる反転分布を実施するためにさらに多大なポンピングを必要とするイオンの基本的レベルに近いことから、熱分布を受けている。かくして、Nd3+ドーパントイオンを使用することによって提供される利点は、それが所望のポンピングを達成するための電力消費量を削減するという点にある。さらに、レーザー発光の再吸収を防止するために活性媒質の長さを最適化することが必要である。有効吸収及び刺激された発光断面が、非常に重要な役割を果たす。Nd3+イオンにとっては、これらの有効吸収及び発光断面は、所定の利得媒質について、その他のイオン、特にYb3+よりもはるかに大きい。
【0038】
本発明は同様に、前述の電極に接続された定電流源、及び増幅構造を備えた光レーザーキャビティを含む光レーザーにも関する。厳密に言うと、定電流源は、使用中、特に前述の第1層内で、前述のケイ素ナノ粒子を励起する目的で前述の活性媒質を通して電流を流すように配置されている。前述の機序に従って、希土類イオンはそれ自体、Siナノ粒子から希土類イオンへのエネルギー伝達によって励起される。
【0039】
かくして生産されたレーザーは、温度又は製造条件の如何に関わらず、非常に高いエネルギーパルス、スペクトル純度及び安定性といったような付加的な機能を提供しながら、レーザーダイオードと同様にコンパクトである。
【0040】
本発明は同様に、レーザー増幅構造を製造する方法において、
基板上にケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた酸化ケイ素の層を被着させる第1の段階;及び
活性媒質の両方の側面上、場合によっては前述の同時ドープ層の少なくとも一部分の上に電極を被着させる段階、を含んで成る方法にも関する。
【0041】
電極を被着させるためには、複数の代替案が考えられる。第1の代替案では、それが活性媒質内の電気伝導を妨げる絶縁障害物でない場合に、基板及びその(基板の)裏にあるもう1つの金属電極とは反対側の活性層の側面(この場合は同時ドープ層であるが場合によっては本明細書中の複数箇所で言及した多層アセンブリ)上に金属電極を被着させることが想定されている。
【0042】
第2の代替案は、ITO(酸化インジウム錫)の活性層の2つの相対する表面上に透明な導体層を被着することを想定している。特に、活性層を被着する前に基板上にITO層を被着させることが可能である。このとき、定電流源に対する接続を可能にするべく、これらの透明な導電層上に金属接点を被着させることができる。透明な導電層と接点端子で構成されたアッセンブリは、同時ドープされた活性媒質の電気的励起のために用いられる電極を形成する。
【0043】
同様に、前述の基板上に導電層を被着させることによって、かつ活性媒質の反対側の表面上に活性媒質の被着段階の後に第2の電極が被着させられるという事実によって、1つの電極が活性媒質の被着段階に先立って被着されるということも想定されている。
【0044】
1実施形態においては、被着段階は、第1の酸化ケイ素材料と第2の希土類材料を含む少なくとも1つの標的の反応性マグネトロン同時スパッタリングによって実施される。前述の第2の材料を前述の標的の一部分上に配置することが可能である。換言すると、共焦点同時スパッタリングプロセスにおいて単一のタイプの材料が各々備わった複数の標的を用いることが想定されている。
【0045】
この被着段階の間、基板は陽極として作用し、標的は陰極として作用する。この機序により、陽極と陰極の間にはプラズマが作り出され、基板上に凝縮するケイ素元素、酸化物及び希土類元素の剥離を可能にする。
【0046】
反応性マグネトロン同時スパッタリングプロセスは、薄層の形成にきわめて適している。従ってこれらのプロセスは、かくして半導体のため、そして電気的に励起された平面レーザーの生産のために適しているほぼ平面の構造の生産を可能にする。
【0047】
2つの変形形態に従うと、前述の少なくとも1つの標的は、複数の希土類酸化物ウェーハが載った単一の酸化ケイ素標的であり(変形形態1)、前述の少なくとも1つの標的は、ケイ素Si標的、前述の第1の酸化ケイ素SiO2材料の標的及び前述の第2の希土類材料の標的を含む(変形形態2)。
【0048】
第2の変形形態は、3つの平行な陰極の正常な同時スパッタリングを実施し、(より制御困難である)大域的な意味での標的のさまざまな要素の間の相互作用を制限する、という利点を有する。
【0049】
同時スパッタリング段階中に使用されるプラズマの性質は、形成される同時ドープ層の組成により大きく左右される。かくして、この同時スパッタリング段階がアルゴン、及び/又は水素、及び/又は窒素プラズマを含む真空エンクロージャ内で実施されることが想定されている。反応性スパッタリングの場合には、水素の存在により、同じく被着されたSiO2利得媒質内のケイ素余剰(ケイ素ナノ粒子)を内含させるべく酸化ケイ素を還元することが可能となっている。希土類イオンは、プラズマを用いてSi−SiO2複合材料中に導入される。この目的で、プラズマ中の水素比率は10%〜90%の間に含まれることが想定される。この比率は、被着条件(プラズマ圧力、基板温度、電極間距離など)に従って、より大量又は少量のSi結晶核の形成、ひいては被着された層内部のナノクラスタの密度を助長する。
【0050】
一般に、プラズマ含有水素が純粋ケイ素標的の不在下で使用される。これは、希土類酸化物が載ったSiO2標的という仮説においてか又は2つのSiO2及びNd23標的という仮説においてあてはまる。後者の仮説においては、(単一層について)成長する同時ドープ層にケイ素Siを添加するためにAr+H2の混合物が使用され、そうでなければ、ナノクラスタで富化された同時ドープ層に対しケイ素Siを添加するためにAr+H2の混合物が、希土類イオンでドープされていない成長するケイ素層に対して純粋アルゴンプラズマが用いられる。
【0051】
一方、3つの標的−Si、SiO2及びNd23−が被着される場合には、標的SiはSiO2ケイ素を還元する必要なくSiを伴うナノクラスタを供給することから、水素の存在は全く必要とされない。
【0052】
考慮に入れるべきもう1つのパラメータは、好ましくは問題の希土類イオンに応じて標的の総表面積の3〜30%の間に含まれている、前述の希土類材料が占める標的の表面積というパラメータである。このパラメータにより、ケイ素余剰(ナノ粒子)との関係における最終的被着物内の希土類イオンの比を変更することが可能となる。例えば、エルビウムイオンの場合には、最適な表面積は23%〜26%の間に含まれるが、Nd3+イオンの場合、それは12%を上回ってはならない。
【0053】
前述の通りのブラッグ格子を得る目的で、前述の同時スパッタリング段階の間、前述の標的の上に、少なくとも1つのウェーハ含有ゲルマニウム(Ge)が載っていることも想定されている。同様に、反応性マグネトロン同時スパッタリングにより、ゲルマニウムイオンは、ウェーハから抽出され、被着されつつある層の中に被着される。かくして被着されたゲルマニウムイオンは、インスクライブされて前述の格子を形成する。フォトインスクリプションは、UVレーザーを用いて実施される。Geを含有する導波管の一部分の上に干渉パターンが投射され、照射済みゾーンと非照射ゾーンを誘発し、かくして格子を形成する。照射は、媒質の屈折率を修正するカラーセンターの形成を誘発する。この要領で、異なる屈折率をもつゾーンの交代が得られ、これがミラーの役目を果たす。
【0054】
この目的で、ブラッグ格子を形成するための正しい瞬間、すなわち同時ドープ層を被着させる時点(希土類イオンが提供されていない非ドープ層内の発光は全く存在しないため)までゲルマニウムウェーハを設置しないことを想定してもよい。
【0055】
1つの変形形態に従うと、成長する同時ドープ層全体を通してGeを被着させることが想定されている。Geイオンは、希土類イオン(例えばNd3+)の観点から見て不活性である。このとき、格子は、所望のゾーン(層の端部)でのみインスクライブされる。
【0056】
その上、層を被着するときに作り出される可能性のある分子的欠陥を修復又は削減しなくてはならない。このために、該方法は、かくして形成された前述の層を少なくとも10分間800℃〜1100℃の間に含まれる温度でアニールする段階をも含んでいる。
【0057】
1つの実施形態に従うと、該方法は、前述の電極を被着する前に前述のドープ層上にドープ多結晶ケイ素層Nを被着する段階を含んで成る。
【0058】
上述の多層活性媒質を生産するために該方法は、
同時ドープ層を被着させる段階、及び
前述の同時ドープ層の上に非ドープ酸化ケイ素の層を形成させるための後続する被着段階、を連続して含むことができる。
【0059】
同時ドープ層の被着は、第1の酸化ケイ素材料及び第2の希土類材料を含む少なくとも1つの標的の反応性マグネトロン同時スパッタリング段階であり、前述の第2の材料は、前述の標的の1部分の上に配置されていること、そして前述の後続する被着段階は、前述の同時ドープ層の上に非ドープ酸化ケイ素層を形成するためのアルゴンプラズマを含む真空エンクロージャ内での酸化ケイ素標的の反応性マグネトロンスパッタリング段階であることが想定されている。
【0060】
反応パラメータは異なることから、同時スパッタリング及びスパッタリング段階の各々について異なる陰極が選択される。
【0061】
より厳密に言うと、該方法は、多層構造を形成するための同時スパッタリング段階とスパッタリング段階の複数の交番を含み、実施される最初の段階及び最後の段階は、好ましくは同時ドープ層を被着するための同時スパッタリング段階であり、電極は構造内の基板と反対側の層の上面に被着されている(もう一方は基板の裏にある)。
【0062】
2つの変形形態に従うと、前述のスパッタリング段階中、
アルゴンプラズマは純粋アルゴンプラズマであり、かくしていかなるSiナノ粒子も無い非ドープ層を得ることが可能となっている;
前述のプラズマは、非ドープ絶縁層内に余剰のSiを内含するべく、水素で富化されている。こうしてこの薄い絶縁層中の電気伝導が容易になり、トンネル効果が可能となる。
【0063】
さらに、希土類イオンは、Nd3+、Yb3+、Er3+、Tm3+及びHo3+というイオンの中から選ばれた少なくとも1つのタイプのものである。
【0064】
さらに、光の側方誘導を可能にするための銀導波管を製造することも想定されている。これらの銀導波管は、層がひとたび被着された時点でエッチングを行なうことによって製造可能である。多層デバイスから出発して、数nmから数十nmまでの銀導波管がマスクを用いてエッチングされる。このための適切な技術は反応性イオンエッチング(RTE)である。
【0065】
本発明は同様に、レーザー増幅構造及び定電流源を備えた光キャビティを含むレーザーの動作方法において、前述のレーザー増幅構造が活性媒質及び前述の活性媒質の両方の側面上に配置された少なくとも2つの電極を含み、前述の活性媒質が、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされている酸化ケイ素の第1層を含み;前述の定電流源は前述の電極に接続されており、前述の電極の端子に電力供給を印加することにより前述の活性媒質を通して電流を流す段階を含んで成る方法にも関する。
【0066】
本発明は同様に、電気ポンピングされ、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた酸化ケイ素の層を含んで成るレーザー増幅構造の、レーザー増幅器としての使用にも関する。この使用は、レーザー又はレーザーファイバにも同じように適用できる。
【0067】
本発明は、以下の詳細な説明及び添付図面からより良く理解できることだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下の例は、反応性マグネトロンスパッタリングによって製造され、従って電気的に励起された平面レーザーの生産を可能にする薄層のための、Siナノ粒子とNd3+イオンの間の有効エネルギー伝達の機構及び最適化を示す。
【0069】
シリカ利得媒質の中に挿入されたケイ素ナノ粒子内部へのキャリア(励起子)の閉じ込めにより、かかる複合システムの電気的又は光学的励起により可視ルミネッセンスを得ることが可能となる。電気通信に適した波長(1.54μm)の分野において増幅器を製造するためのEr3+イオンと結びつけられたケイ素ナノ粒子の研究に関して、広範な作業が行なわれてきた。ナノ粒子と希土類の間には有効なエネルギー伝達が存在し、こうしてナノ粒子が存在しない場合に一般的である強度の100倍の強度で発出することが可能である。
【0070】
Nd3+イオンと結びつけられたケイ素ナノ粒子を含有するシリカ利得媒質が、集積レーザーの製造のために使用される。実際、ECR(電子サイクロトロン共鳴)により支援されたPECVD(プラズマ化学気相成長法)によって製造された層内でSiナノ粒子とNd3+イオンの間に伝達が存在することが近年証明された〔Seo et al. Appl. Phys. Lett.,83,2778(2003);「Nd−ナノクラスタカップリング強度及びNdドープされたケイ素富有酸化ケイ素中のNd3+ルミネッセンスの励起/脱励起におけるその効果」〕。本発明は、そのエネルギーをNd3+イオンに伝達し、かくしてこのイオンの2つのレーザーレベルの間で反転分布を作り出すケイ素ナノ粒子の電気的励起を可能にする。従って利得媒質の性質に応じて(材料及びドーパント)、1.1μm前後でのレーザー発光が得られる。
【0071】
反応性マグネトロン同時スパッタリングにより、ネオジム及びSiナノ粒子で同時ドープされたシリカガラスの薄層を製造する場合がそれである。これらの導波層は、電極のエッチング及び被着の後、電気的に励起されたレーザーシステムを生成し、これは、1.1μm前後で発光することができる。このアプローチは、ケイ素技術とコンパチブルであり、容易に集積されるコンパクトシステムを製造する現在の傾向と完全に一貫性を有するものである。
【0072】
なかでも薄層を被着するべく使用される反応性同時スパッタリング技術が、図1に図式的に表わされている。
【0073】
純粋なシリカ標的10には、被着された層内に内含されたNd3+イオンの濃度を調節するための可変的な数のNd23(希土類酸化物)ウェーハ11、ならびにそのギャップを削減することによってケイ素の感応性を増大できるようにするためのGe又はGeO2の部品12が載っている〔Nishi et al.,Optics Lett.,第20巻、第10号、1184(1995年);「GeO2−SiO2ガラス中の1及び2光子吸収プロセスを通した紫外線誘発型化学反応」を参照のこと〕。このようにして、ブラッグ格子は、光キャビティのための将来のミラーとして作用し、Nd3+イオンでドープされたケイ素導波管の両端でフォトインスクライブされ、Siナノ粒子を含有する。層内に含まれている余剰のケイ素は、スパッタしてSiO2−Nd23−Ge化合物と相互作用するイオン化アルゴン及び水素の混合物から成るプラズマの反応性を通して得られる。酸素に関する水素の還元性を念頭に置くと、このような方法は、層内の酸素不足を結果としてもたらし、かくして水素の分圧を修正することにより余剰のケイ素の量を制御することを可能にする。このパラメータに加えて、水素といったような反応性ガスの使用は、成長する層の選択的エッチングの現象を導き、かくしてSiナノ粒子のための多数の核形成部位を助長する。結果としてのより高密度のナノ粒子は、Nd3+イオンとの一層高いカップリング強度、ひいては高い割合の光学活性イオンを保証する。被着は、50w〜120wの間で変動する電力で、6×10-2Torrを超えない気体の全圧で室温で行なわれる。この構成で、気体のイオン化は、元素を標的から引離し基板(陽極)13の上に被着させることができる。
【0074】
被着後の熱処理は、800℃〜1100℃の間で実施され、かつ時間に応じて純粋なAr又はN2流の下で実施される。
【0075】
マグネトロンスパッタリングにより製造された(余剰ケイ素が存在しない)SiO2−Ndフィルムに由来するNd3+イオンの吸収スペクトルが図2に提示されている。このスペクトルは、800nmでのNd3+イオンの強い吸収(20)の存在を明らかにしており、このため励起されたSiナノ粒子とNd3+イオンの間のエネルギー伝達を予測することが可能になっている。さらに、アルゴンレーザーにより供給された488nmラインがNd3+イオンについて極めて低い共鳴を有するラインであり、この希土類イオンでのこのエネルギー伝達を明らかにするためにこの励起波長を使用することができるようにしている、ということもわかる。
【0076】
図3は、60wのRF出力で生産された薄膜のためのプラズマ中の水素比rH=RH2/PH2+PAr)に従ったNd3+イオンのフォトルミネッセンス強度の変化を示している。最高の水素比rH=RH2/PH2+PArで被着されたフィルムが、分裂発光ピークで最高の強度(30)を有することがわかる。これは、すでに言及した通り、Nd3+イオンを励起するための中継器として作用するSiナノ粒子の最大密度に起因している。Siナノ粒子が果たす増感体の役目は、純粋(又はほぼ純粋)のアルゴンプラズマ(31)で生産され従って余剰のSiをほとんど含有しないものと比べたケイ素を含有するフィルムの強度の著しい増加によって、明確に示されている。
【0077】
Nd3+イオンの放出に対して適用される熱処理の効果は、図4に提示されている。温度の上昇は、その強度をおよそ1ケタ増大させながら1つの放出ピークを犠牲にしてもう1つの放出ピークに著しく有利に作用する。
【0078】
クラッディングを伴う又は伴わない単純な線形導波管は、電流注入を可能にするべく電極をエッチングし、被着させた後に得られる。これらの電極(Al、Au、Al−Si合金など)は、全て導波管に沿って、ならびに基板の裏面に被着させられる。電気的励起は、Siナノ粒子内部の励起子の形成を導き、これは、再結合により800nmで発光するか又はそのエネルギーを近辺にあるNd3+イオンに伝達し、従って、この希土類元素の所望の波長での発光を可能にすることになる。
【0079】
かかるシステム内の電気的励起は、多層構造を用いて助長可能である。実際、絶縁利得媒質(SiO2)の中に埋込まれたSiナノ粒子の最適な電気的励起を可能にするためには、Siナノ粒子は、電子注入のための「トンネル距離」(2−4nm前後)よりも小さい距離だけ互いに離隔されるのに充分な密度を有していなければならない。さらに、これらのナノ粒子は、その後そのすぐ近くにある希土類イオンに向かってその有効な増感体の役割を果たすことができるようにするキャリアの、この量子閉じ込め特性を保つように、5〜6nm前後未満のサイズを有し、酸化物でとり囲まれていなければならない。
【0080】
これらの多層を被着するのに使用される反応性マグネトロンスパッタリング技術は、図5において図式的な形で示されている。これにより、被着された異なるタイプの層の厚みならびに希土類イオンの場所を、その発光を最適化するように制御することが可能である。これは、2つの側面、すなわち、2つの陰極(50a及び50b)の使用及び基板−ホルダ(陽極51)の逐次的回転による交番被着に関連する技術的側面、そしてプラズマ中にあり、従ってシリカ標的と相互作用する水素の存在に関連する反応的側面、によって特徴付けられる。2つの標的はシリカで作られ、1つには、それが内含する希土類の濃度を調節するように可変的な数の希土類酸化物ウェーハ(52)が載っている。
【0081】
被着シーケンスは以下の通りである:
基板(又は陽極)が、希土類酸化物部品が載った標的に対面している(位置B)場合、被着は、水素を混合されたアルゴンプラズマ(〜1:1)下で実施される(53)。シリカ標的由来の酸素に関する水素の還元力を念頭に置くと、被着された層はこのとき、酸化物ウェーハの同時スパッタリングにより取込まれた希土類イオンの隣に余剰のケイ素を含有する。
【0082】
SiO2層の被着は、純粋アルゴンプラズマ下で、純粋シリカ標的の反対側に基板を設置することにより実施される(位置A)(54)。
【0083】
これらのシーケンスは、生産されたフィルムについての所定の構造的特徴及び光学特性を得るのに必要な回数だけ反復される。
【0084】
図6は、Siナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた3つの層60が、2つの絶縁酸化ケイ素層61で分離されている多層構造を示す。レーザーの光キャビティを形成するため、2つの外側層の各々の中にブラッグ格子62がインスクライブされる。電極63は、多層活性媒質の両方の側に設置され、層の重畳を通して電流を流す定電流源Gによる電力供給を受ける。構造の片側の格子62a(図の左側)は半反射性であり、構造の反対側の格子62bはほぼ完全な鏡である。この要領で、循環する電流により励起されるレーザー構造からの発光64は同じ側(図中の左側)で実施される。
【0085】
図7は、電極に付随する特定の特長を図6の構造と全体的に又は部分的に組合せることのできる、本発明に従ったもう1つの構造を示している。
【0086】
この構造のさまざまな層の被着は、前述の通り、反応性マグネトロンスパッタリング方法によって実施される。
【0087】
該構造は、ケイ素基板(70)上に層状に被着されている。これは、以下の順序で次のものを含む:
5μm前後の厚み、及び実質的に1.45に等しい媒質屈折率をもつシリカSiO2で作られた第1の中間層(バッファ)71;
100nm未満の厚み、及びおよそ1.9に等しい屈折率をもつITO(酸化インジウム錫)の透明な導電層72;
500nm〜1μmの間に含まれる厚み、及び1.5〜2の間に含まれる屈折率を有するケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた層を含む活性媒質73.図6を参照して記述された通りの多層構造も提供できる;
好ましくは、レーザー入口として作用する側面以外の活性媒質の側面(標準的には部分反射するブラッグミラーが備わった側面)上である、活性媒質73により覆われていない層72の一部分の上にある単数又は複数の金属端子74。この端子74は、ITO層から活性媒質73の一部分を除去することによってか、又は該活性媒質73の被着が当初ITO層72の単一の部分についてのみ計画されている場合には、金属の局所化された被着によって被着可能である;
第1のITO層72に類似した特長を有する、活性媒質上の第2の透明なITO導電層75;
200nmというおおよその厚み及び1.45前後の媒質屈折率を有するシリカSiO2の第2の中間層76。この層は、ITO層75の一部分の上のみに被着される;
第2のITO層75と直接接触する単数又は複数の金属端子76。
【0088】
第1のITO層72と接触した状態にある金属端子(単複)74は、定電流源78の端子に接続され、第2のITO層75と接触した状態にある金属端子77は、定電流源78のもう一方の端子に接続されて、ITO層72及び78の伝導性の結果活性媒質73を通って電流を流す。この実施形態においては、各ITO層及び金属端子アセンブリが、電気的に励起可能なレーザーの電極であるとみなされている。
【0089】
こうして、活性媒質によって形成された導波管内部での(レーザー現象をひき起こす希土類イオンの脱励起の結果として得られる)光子の分布がひき起こされる。
【0090】
この構造は、基板と活性層の間の中間シリカ層の存在により誘発されるポテンシャル障壁を克服するという利点をもつ。
【0091】
活性媒質(増幅媒質)内での光の誘導を保証するために、導波管の両方の側で、より低い屈折率が用いられる(活性層73では最低1.5であるのに対して層71及び76は屈折率1.45を有する)。光信号の誘導及び増幅に対する透明導電層72及び75の影響を低減させるため、そして特にエバネセント波に起因する損失を回避するため、透明層は、約数十nmの薄いものとなるように選択される。さらに、これらの層は、潜在的に、電荷キャリアのための克服すべきポテンシャル障壁を表わしている。かくして、該層は、場合によってはおよそ数nmから10nmというきわめて薄いものである。
【0092】
以下の希土類は、Siナノ粒子が果たす有効な増感体の役目の恩恵を受けることができる:
1μm前後での発光のためのYb3+イオン。
特にコンピュータにおける、光輸送及び情報の光学的伝達を可能にすることになる1.54μmでの発光のためのEr3+イオン。
医療分野における距離測定、眼球の保護を含めた利用分野のための2μmに近い発光のためのTm3+イオン。
同じく2μm前後での発光のための、ひいてはTm3+イオンと同じ利用分野のためのHo3+イオン。
【0093】
さらに、以下のような異なるタイプの利得媒質を使用することができる:
二酸化ケイ素 SiO2
酸化ケイ素 SiOx;
酸窒化ケイ素 SiOxNy。
【0094】
酸窒化ケイ素利得媒質については、前述のプラズマが窒素で富化され、かくしてSiナノ粒子の存在下でその内部での電気伝導を助長する酸窒化物利得媒質を形成できるようにすることが可能である。窒素の存在は、水素の存在を補完することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】同時ドープされた薄層の被着物という構成における被着用フレーム内部の基板−陽極、及び標的−陰極の図式的表現である。
【図2】マグネトロンスパッタリングにより被着されたSiO2−Ndフィルム内のNd3+イオンの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】900℃でアニールされたフィルム内のNd3+イオンの発光強度に対するプラズマ中の水素比の影響を示すグラフである。
【図4】プラズマ中80%のH2を伴って製造され、さまざまな条件下でアニールされたフィルムのPL強度を示すグラフである。
【図5】本発明に従った多層被着のための被着用フレーム内部の基板−陽極及び2つの標的−陰極の図式的表現である。
【図6】本発明により実施された多層実施形態を示す図である。
【図7】本発明により実施された多層実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性媒質及びこの活性媒質の両側に配置された少なくとも2つの電極を含んで成るレーザー増幅構造において、前記活性媒質が、希土類イオンでドープされた酸化ケイ素の第1層を含み、前記第1のケイ素層が、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされているレーザー増幅構造。
【請求項2】
前記活性媒質がさらに、前記第1層が上に被着されている、希土類イオンでのドーピングを受けていない酸化ケイ素の薄層を含んで成る請求項1に記載の構造。
【請求項3】
活性媒質が、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた酸化ケイ素の複数の層を含んで成り、前記同時ドープ層が、非ドープ酸化ケイ素層により分離されており、前記活性媒質の上面層及び底面層が同時ドープ層である請求項1又は2に記載の構造。
【請求項4】
前記同時ドープ層は、前記活性媒質内でケイ素ナノ粒子と希土類イオンを離隔する平均距離が0.4nm以下である構造を有している請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造。
【請求項5】
希土類イオンがNd3+、Yb3+、Er3+、Tm3+及びHo3+というイオンの中から選択された少なくとも1つのタイプのものである請求項1に記載の構造。
【請求項6】
前記活性媒質が、前記電極に対して実質的に垂直に配置されたブラッグ格子を含み、前記格子が、前記同時ドープ層(単複)の中にフォトインスクライブされたゲルマニウムGeイオンで作られている請求項1に記載の構造。
【請求項7】
前記電極が各々、活性媒質の相対する面の1つにそれぞれ隣接して導電層を含んで成る請求項1に記載の構造。
【請求項8】
前記同時ドープ層(単複)が薄層である請求項1に記載の構造。
【請求項9】
請求項1に記載の増幅構造、及び前記電極に接続された定電流源が備わった光キャビティを含む光レーザー。
【請求項10】
前記定電流源が、使用中、前記ケイ素ナノ粒子を励起する目的で前記活性媒質を通して電流を流すように配置されている請求項9に記載のレーザー。
【請求項11】
レーザー増幅構造を製造する方法であって、
基板上にケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた酸化ケイ素の層を被着させる第1の段階;及び
活性媒質の両方の側面上に電極を被着させる段階、を含んで成る方法。
【請求項12】
前記基板上に導電層を被着させることにより、活性媒質を被着させる段階の前に、電極が被着され、活性媒質の反対側の表面上に活性媒質を被着させる段階の後に第2の電極が被着される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の段階が、第1の酸化ケイ素材料及び第2の希土類材料を含む少なくとも1つの標的の反応性マグネトロン同時スパッタリングにより実施され、前記第2の材料が前記標的の1部分上に配置されている請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの標的は、複数の希土類酸化物ウェーハが載った単一の酸化ケイ素標的である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記希土類材料が占める標的の表面積が、前記単一標的の総表面積の3%〜30%の間に含まれる請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの標的が、ケイ素Si標的、前記第1の酸化ケイ素SiO2材料の標的、及び前記第2の希土類材料の標的を含んで成る請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記同時スパッタリング段階が、イオン化アルゴン及び水素プラズマを含む真空エンクロージャ内で実施される請求項13に記載の方法。
【請求項18】
プラズマ内の水素比率が40%〜90%の間に含まれている請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記同時スパッタリング段階中に、前記標的にゲルマニウム(Ge)を含む少なくとも1つのウェーハも載せられる請求項13に記載の方法。
【請求項20】
さらに、少なくとも10分の間、800〜1100℃の間に含まれる温度で、かくして形成された層をアニールする段階を含む請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
活性媒質を被着させる段階が、
同時ドープ層を被着させる段階、及び
前記同時ドープ層の上に非ドープ酸化ケイ素の層を形成させるための後続する被着段階、
を連続して含んでいる請求項11に記載の方法。
【請求項22】
同時ドープ層の被着は、第1の酸化ケイ素材料及び第2の希土類材料を含む少なくとも1つの標的の反応性マグネトロン同時スパッタリング段階であり、前記第2の材料は、前記標的の1部分の上に配置されており、かつ前記後続する被着段階は、前記同時ドープ層の上に非ドープ酸化ケイ素層を形成するための酸化ケイ素標的の反応性マグネトロンスパッタリング段階である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
多層構造を形成するために、同時ドープ層の被着、及び後続する被着段階の複数の交番を含み、前記複数の交番の最初と最後の段階が、同時ドープ層を被着させるための同時スパッタリング段階である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記スパッタリング段階の間、アルゴンプラズマは純粋アルゴンプラズマである請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記スパッタリング段階の間、前記プラズマが水素富化されている請求項23に記載の方法。
【請求項26】
希土類イオンが、Nd3+、Yb3+、Er3+、Tm3+及びHo3+というイオンの中から選択された少なくとも1つのタイプのものである請求項11に記載の方法。
【請求項27】
レーザー増幅構造及び定電流源を備えた光キャビティを含むレーザーの動作方法であって、
前記レーザー増幅構造が活性媒質及び前記活性媒質の両方の側面上に配置された少なくとも2つの電極を含み、前記活性媒質が、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされている酸化ケイ素の第1層を含み、
前記定電流源は前記電極に接続されており、
前記電極の端子に電力供給を印加することにより前記活性媒質を通して電流を流す段階を含んで成る方法。
【請求項28】
電気ポンピングされ、ケイ素ナノ粒子及び希土類イオンで同時ドープされた酸化ケイ素の層を含んで成るレーザー増幅構造のレーザー増幅器としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−516911(P2009−516911A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540659(P2008−540659)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002558
【国際公開番号】WO2007/057580
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】