説明

電気メッキする非導電性基板の処理方法

【課題】メッキする非導電性基板の処理方法を提供する。
【解決手段】本提案方法は、デスミア後、中和/犠牲被膜混合溶液に基板を接触させ、次いで炭素分散溶液で処理する工程を含む。この中和/犠牲被膜混合溶液によって、デスミア工程で発生した残留過マンガン酸が中和され、基板の金属面に犠牲被膜が塗工される。この犠牲被膜により、電気メッキ前に、金属表面から望ましくない炭素残留物を簡易且つ信頼性高く除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板(PCB)の貫通穴等の非導電性表面の電気メッキ性の向上に関する。特に、本発明は、無電解メッキ法を必要とせずに非導電性面をメッキする改良方法を具備する。該改良方法は、非導電性及び導電性(金属性)表面両方を有するプリント基板のような表面のメッキに特に好適である。
【背景技術】
【0002】
プリント基板は、一般的に、エポキシ樹脂/ガラス繊維混合体等の非導電層から構成され、この層は、銅若しくはニッケルプレート、銅若しくはニッケル箔、又は他の導電性金属層間に配置される。これらの層を、多数交互に重ねることも可能である。通常、PCBに穴を開けて基板の特定の点で導電性金属層同士を接続する。その後該穴を通常はメッキによって金属化することで、導電性材料同士を接続する。
【0003】
電気メッキ金属(通常は銅)と貫通穴とを導電、且つ常に信頼性高く接合しておくためには、貫通穴に、通常、電気メッキする前に、デスミア工程、プレ活性化工程、パラジウム/スズ活性剤による活性化工程、促進剤の塗布工程、無電解の銅堆積工程、1回以上の洗浄工程等の数工程を必要とするプロセスにより、まず無電解銅の層を設ける。電気メッキ対象の貫通穴又は他の非導電面に炭素を堆積させることによって、無電解銅を設ける必要がなくなることが判った。このようにして、長い工程時間や、無電解浴の感度及びその常時監視を必要とする複雑な化学反応系を避けることができる。さらに、無電解銅及びパラジウム/スズ活性剤使用時に必要とされることが多い、費用の高い廃棄処理も行わなくてすむ。
【0004】
しかしながら、炭素堆積工程の使用には、いくつかの欠点がある。炭素堆積後、メッキ対象の非導電面が電気メッキ金属によって完全に被膜されるのに数分かかってしまう。これは、メッキ対象面が貫通穴である場合に特に顕著である。炭素処理後の電気メッキは、PCBの外側導電面、即ち、銅箔近傍で開始し、穴中心に向かって内側に広がる。メッキは貫通穴両端から起こって中心部で接触し、接続が完了する。
【0005】
電気メッキ前の無電解銅の堆積工程を不要とするカーボンブラック堆積システムの最初の実用的教示が、特許文献1に開示されており、参照することによってその全体を本明細書に援用する。特許文献1〜2に記載の方法の改良又は変形に関する数多くの特許が発行されており、特許文献1〜2の教示は参照することによって本明細書にその全体を援用する。
【0006】
現在のカーボン系メッキ工程では、後のメッキで良好な銅接着を確立するために、プリント基板(例えば、回路と内層配線)の銅面から炭素を除去するためのマイクロエッチング工程が炭素堆積後に必要となる。一般的に、炭素を確実に除去するためにはかなりのマイクロエッチングが必要である。通常、40〜60マイクロインチの銅がマイクロエッチングによって除去されるが、マイクロエッチングは、特に銅−誘電体界面領域のメッキ時に頻繁に問題を生じる。特に、銅をエッチングすることにより、銅に直接隣接する誘電体領域からも炭素被覆が頻繁に剥離してしまうため、後の電気メッキで電気的導通に対する絶縁隔壁が生じてしまう。この隔壁は、メッキ不良や、ボイド、ニットライン、メッキしわ等の欠陥に繋がる。カーボン系プロセスでの電気メッキ前マイクロエッチングに対する従来技術の要件は、特許文献3(第10段落、5〜60行目)に記載され、その教示を参照することによって全体を本明細書に援用する。特許文献3には、マイクロエッチングを使用して銅表面の炭素を「はぎ落とす」ことが記載されている。
【0007】
本発明は、銅メッキサイクルにおける標準工程うちの1つ、即ちデスミアサイクルにおける中和工程の改良を提案する。提案する改良中和工程は、必要な中和機能並びに炭素堆積前の銅面への薄い犠牲被覆の成膜の両方を達成する。該犠牲被膜により、後の銅面から炭素除去を、より少ないマイクロエッチングで且つより高い信頼性で達成することが可能となる。したがって、工程サイクルを拡張してしまうことなく、改善が図れる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,724,005号明細書(Minten及びPismennaya)
【特許文献2】米国特許第5,139,642号明細書(Randolphら)
【特許文献3】米国特許第4,964,959号明細書
【特許文献4】米国特許第6,146,701号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属性領域及び非導電性領域から構成される表面をメッキする方法であって、メッキ対象面を以下の溶液と接触させる工程を含む方法である。即ち、
a.過マンガン酸イオンを含むアルカリ性デスミア溶液、
b.(i)酸、(ii)過酸化水素、及び(iii)腐食防止剤を含む中和溶液、
c.界面活性剤又は水溶性ポリマーを含むコンディショナー溶液、
d.(i)界面活性剤又は水溶性ポリマー及び(ii)カーボンブラック及び/又はグラファイト粒子を含む炭素分散液、
e.乾燥、
f.(i)酸及び(ii)酸化剤を含むマイクロエッチング液、
g.銅メッキ溶液、
工程a、工程b、工程c、工程f、工程gの後に、水洗を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上述したように、本発明の好適な実施形態は、プリント基板の貫通穴の処理に関するものであって、非導電層で挟まれる導電性金属層同士を接続させるために銅又は他の導電性金属(ニッケル、金、銀等)のメッキ層を該貫通穴に堆積させる。以下、プリント基板の貫通穴の電気メッキ(又は金属化)に関して説明をするが、これは説明を簡易化するためであり、開示する方法は、電気メッキ金属層を成膜するためのプラスティック用途の種々の非導電面の処理にも同様に適用可能である。
【0011】
プリント基板は、概して、非導電性材料層により互いに離間された、2つ以上のニッケル若しくは銅プレート又はニッケル若しくは銅箔から構成されている。該非導電層は、一般的には、ガラス繊維で補強されたエポキシ樹脂等の有機材料から構成されるが、ガラス繊維及び充填材等の補強材を含んだ或いは含まない、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はその混合物から構成されていてもよい。
【0012】
好適な熱可塑性樹脂としては、アセチル樹脂;メチルアクリレート等のアクリル系樹脂;エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロースアセテート、硝酸セルロース等のセルロース系樹脂;塩素化ポリエーテル;ナイロン;ポリエチレン;アクリロニトリルスチレン共重合体等のポリプロピレン/ポリスチレン/スチレン混合物;ポリカーボネート;ポリ塩化トリフルオロエチレン;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、塩化酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン、及びホルマールビニル等のビニルポリマー及び共重合体が挙げられる。
【0013】
好適な熱硬化性樹脂としては、フタル酸アルキル;フラン;メラミン−ホルムアルデヒド;ブタジエンアクリロニトリル共重合体と配合、或いは単独のフェノールホルムアルデヒド及びフェノール−フルフラール共重合体;ポリアクリル酸エステル;シリコーン;尿素ホルムアルデヒド;エポキシ樹脂;ポリイミド;アルキル樹脂;フタル酸グリセロール;ポリエステル等が挙げられる。
【0014】
前記貫通穴は、プリント基板中の特定の位置で金属プレート同士を接続し、所望の電気パターンを形成するために該基板に形成される。これは、通常、銅プレート及び非導電層の所望の位置にドリルで穴を開け、貫通穴を金属化(即ち、導電性金属で貫通穴の内面を被覆)して、離間した金属板同士を接続することで達成される。PCBの穴径は、通常約0.15〜10.0mmであり、より一般的には、約0.3〜約1.0mmである。
【0015】
必要に応じて貫通穴壁を比較的滑らかにする場合、貫通穴の面取りが必要となる場合がある。多層型プリント基板の場合、デスミア処理して貫通穴内部の銅接触面を洗浄することも望ましい。
【0016】
典型的なデスミア溶液は、通常、濃度約25〜170g/Lの過マンガン酸ナトリウム又はカリウム由来の過マンガン酸イオンのアルカリ溶液を含む。必要に応じて、デスミア溶液を使用する前に、溶媒又は膨張剤を使用して非導電面の樹脂を軟化又は膨潤することで、デスミア溶液の上記面に対するエッチング力を向上することができる。デスミア溶液は、一般的に、約華氏100度〜華氏180度の高温で、接触時間2分間〜30分間の範囲で使用する。
【0017】
デスミア工程を経た後、表面を水で洗浄し、本発明が提案する混合中和剤/犠牲被膜溶液に接触させる。中和剤/犠牲被膜溶液は、(i)過酸化水素、(ii)酸、(iii)腐食防止剤の水溶液を含む。過酸化水素の濃度範囲としては、約2〜約60g/Lが可能であるが、好ましくは約3〜約30g/Lである。前記酸は、過酸化水素と併用して安定であればいずれの酸でもよいが、好ましくは鉱酸であり、特に好ましくは硫酸である。硫酸を使用する場合、その濃度は、好ましくは約30〜約200g/Lである。前記腐食防止剤は、アルキルイミダゾール、アルキルトリアゾール、芳香族イミダゾール、芳香族トリアゾール、及びその混合物からなる群から選択されることが好ましい。前記腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、及びその混合物からなる群から選択されることが特に好ましい。前記腐食防止剤の濃度は、約0.5〜約20g/Lであることが好ましい。前記中和剤/犠牲被膜溶液は、前記3成分の他に、界面活性剤、水溶性ポリマー、ハロゲンイオン、及び当該技術分野で知られている添加物等を含んでもよい。これは特許文献4に記載され、その教示を参照することで本明細書に全体を援用する。
【0018】
メッキする部分に、浸漬、スプレー又はフラッドによって前記中和剤/犠牲溶液を接触させることで、該部分が中和され犠牲被膜が塗工される。接触時間は、0.5分間〜10分間の間で変更してもよく、また工程温度は華氏70度〜華氏150度の範囲としてよい。次いで、前記部分を水洗浄し、通常のカーボン系メッキサイクルの処理を行う。
【0019】
プリント基板を前洗浄することで、本発明のカーボンブラック分散液が塗布できる状態とすることが有利である。1つの好ましい前洗浄工程では、PCBを数分間、約華氏130度でクリーナー/コンディショナー浴に浸して、穴壁表面から油脂及び不純物を除去する。1つの好ましいクリーナー/コンディショナーであるBlackhole Conditionerが、MacDermid社(ウォーターバリー、コネチカット州)から販売されている。クリーナー/コンディショナーの塗布後、プリント基板を洗浄して、洗浄剤/コンディショナー残留物を除去する。洗浄剤/コンディショナーは、犠牲層を除去しないようにアルカリ性であることが有利である。尚、上述したドリルによる穴開け及び前洗浄工程は、いずれも本発明の重要な特徴ではなく、これら工程と均等な従来工程としてもよい。
【0020】
炭素堆積プロセスでは、通常、洗浄したプリント基板に炭素分散体液を塗布する。該分散体液は、3つの主成分、即ち、炭素と、該炭素を分散可能な1つ以上の界面活性剤と、水等の液体分散媒体とを含む。PCBに該分散体液を塗布する好ましい方法としては、浸漬法、スプレー法、及びプリント基板業界で使用される、化学薬品を塗布する方法等が挙げられる。このカーボンブラック分散液の塗布は、単一の浴で十分であるが、再塗布又は他の目的用に二つ以上用いてもよい。
【0021】
液体炭素分散体の調製では、前記3つの主成分と他の好適な成分とを混合して、安定した分散体を形成する。これは、濃縮された分散体をボールミル、コロイドミル、高剪断ミル、超音波技術、又は他の同様な手法により成分を完全に混合させることで達成可能である。該分散体は、加工浴用に、後に多量の水で所望の濃度に希釈可能である。好適な混合方法は、ガラス鉱物ビーズ又はプラスチックビーズを入れた容器内で、濃縮された分散体を少なくとも約1時間ボールミル粉砕する方法である。この混合は、最大約24時間まで継続可能である。このように徹底的に混合することにより、炭素粒子は、界面活性剤で密接に被覆即ち湿潤される。そして、混合した濃縮物を、所望の濃度に水又は他の液体分散体媒体と混合する。分散安定性を維持するために、希釈工程及び塗布工程中は加工浴の攪拌を続けることが好ましい。
【0022】
炭素粒子の粒径は、分散液中では平均約3ミクロンを超えてはならない。ほぼ平らなメッキ及びメッキ剥離無し等の、所望のメッキ特性を得るためこの炭素平均粒径はできるだけ小さくすることが望ましい。炭素粒子の平均粒径は、分散液中、好ましくは約0.05〜約3.0ミクロン、より好ましくは約0.08〜約1.0ミクロンである。本明細書において「平均粒径」とは、粒子の平均径(average mean diameter)(数平均粒径)のことをいう。分散体の平均径は、NiComp Model370サブミクロン粒子測定器(バージョン3.0)、又はHIAC PA−720自動粒子径分析器(両方とも、HIAC/ROYCO Instrument Division of Pacific Scientific of Menlo Park,Calif.から入手可能)を使用して測定される。また、炭素粒子の粒子径分布を比較的狭く維持することも重要である。
【0023】
本発明では、市販のカーボンブラック、炉ブラック、及び好適な小粒子グラファイト等の多種の炭素を使用してよいが、初期に酸性又は中性を示すカーボンブラック、即ち、水でスラリーとしたときのpHが約1〜約7.7、より好ましくは約2〜約4であるカーボンブラックを使用することが好ましい。好ましいカーボンブラック粒子はまた、非常に多孔質であり、BET法(Brunauer−Emmert−Teller法)による表面積が、一般的に約45〜約1100m/g、好ましくは約300〜約600m/gである。
【0024】
本発明に好適に使用される市販のカーボンブラックは、キャボット社(ボストン、マサチューセッツ州)から入手可能な、CabotXC−72R Conductive、Cabot Monarch 800、Cabot Monarch 1300である。他の好適なカーボンブラックとしては、コロンビアンカーボン社(ニューヨーク、ニューヨーク州)から入手可能な、Columbian T−10189、Columbian Conductiex975 Conductive、Columbian CC−40,220、及びColumbian Raven 3500が挙げられる。分散の簡易さと低pHから、Cabot Monarch 1300及びColumbian Raven 3500の2つが最も好ましいカーボンブラックである。好適なグラファイトとして、昭和電工(〒105東京都港区一丁目芝大門13−9)から入手可能な昭和電工UFG、日本黒鉛工業(石山)から入手可能な日本黒鉛AUP、Asbury Graphite Mills of Asbury(ニュージャージー州)から入手可能なAsbury Micro850等が挙げられる。
【0025】
水及び炭素の他に、該炭素を前記液体分散媒体へ分散可能な界面活性剤を分散液に加える。炭素の濡れ性及び安定性を向上させ、且つプリント基板の非導電層の孔及び繊維内へ炭素を最大限浸透させるため、1つ以上の界面活性剤を分散液に加える。好適な界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び陽イオン界面活性剤(又は両性界面活性剤等これらの組合せ)が挙げられる。該界面活性剤は、炭素分散液に対して、可溶、安定及び好ましくは無泡性でなくてはならない。一般的に、水などの有極性の連続相に対して、界面活性剤のHLB値は高い(8〜18)ことが好ましい。
【0026】
好適な界面活性剤の種類は、主に分散液のpHに依存する。犠牲層を崩さないために、分散液全体はアルカリ性(すなわち、塩基範囲の全pH)であることが好ましい。この場合、アニオン性又は非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。許容可能なアニオン性界面活性剤としては、Eastern Color and Chemical社、PETRO AA社、PETRO ULF社、Petro Chemical社、AEROSOL OT社、American Cyanamid社等から入手可能なDARVAN No.1等のナフタレンスルホン酸のナトリウム又はカリウム塩が挙げられる。好ましいアニオン性界面活性剤としては、BASF Chemical社から入手可能なMAPHOS55、56、8135、6A、L6等の中和されたリン酸エステル系の界面活性剤が挙げられる。カーボンブラック分散体液に対する最も好ましいアニオン性界面活性剤は、MAPHOS56である。好適な非イオン性界面活性剤は、オリンコーポレーションからPOLY−TERGENT Bシリーズ等のエトキシレート化ノニルフェノール、又はオリンコーポレーションからPOLY−TERGENT SLシリーズ等のアルコジレート化直鎖アルコールが挙げられる。
【0027】
特にカーボンブラックの場合、分散液中の炭素含有量は、分散液の約15重量%未満、好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満が有利である。高濃度のカーボンブラックの場合メッキ特性が悪化することがあることがわかっている。同じ観点から、固形分(即ち、液体分散媒体以外の全成分)は、分散液の約10重量%未満、より好ましくは約6重量%未満であることが好ましい。
【0028】
炭素の分散液は通常は容器内に置き、プリント基板を浸漬、該プリント基板に該分散液を噴霧、或いは他の方法で分散液と接触させる。浸漬浴内の分散液の温度は、浸漬中は約15℃〜約35℃、好ましくは、約20℃〜約30℃に維持する。有利な浸漬期間は、約15秒間〜約10分間、より好ましくは約30秒間〜約5分間である。
【0029】
浸漬した前記基板を炭素含有分散液の浴から取りだし、好ましくは圧縮空気に触れさせ、分散液が依然として詰まっている可能性のある貫通穴から分散液を取り除く。更に、過剰な塩基性炭素含有分散液を銅板面から除去する。
【0030】
次に、塗布した分散液における実質的に全て(即ち、約90重量%を超える)の水(又は、他の液体分散媒体)を除去し、炭素を含む乾燥堆積物を非導電性材料の表面に残す。これは、室温での蒸発、真空引き、又は基板を高温で短時間加熱する等の数種の方法で達成可能である。高温での加熱が好適な方法である。加熱は一般的に、約5分間〜約45分間の約75℃〜約120℃、より好ましくは約80℃〜約98℃の温度で実施する。穴壁を完全に被覆するために、炭素分散液へ基板を浸漬させ、次いで乾燥させるという手順を1回以上繰り返してもよい。
【0031】
得られたPCBは、多くの場合炭素分散液に完全に被覆される。分散液は、要望どおり開けられた穴表面を被覆するだけでなく、銅板又は銅箔表面をも被覆してしまうため、更に処理を行う前に、炭素を銅板又は銅箔表面から除去しなければならない。
【0032】
ある部分の炭素分散液を乾燥後、該乾燥部分を弱酸性マイクロエッチング溶液に浸漬して金属性(銅)表面から不要な炭素を除去する。塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸等の様々な酸が使用可能である。該酸の濃度は、0.5〜50重量%、好ましくは1〜10重量%で、残りの部分は実質的に水及び選択した酸化剤である。該酸化剤は、通常過酸化水素又は過硫酸である。該酸性マイクロエッチング溶液は、浸漬法又はスプレー法等の従来の方法で塗布可能である。金属性面から不要な炭素を除去後、前記部分は後述する標準電気メッキ処理できる状態となる。通常の電気メッキ工程で使用されるように、任意で、標準の浸漬洗浄剤を電気メッキ前のこの時点で使用してもよい。
【0033】
このように処理したプリント配線板は、次に適切な電気メッキ浴に浸漬して非導電層の穴壁に銅被膜を塗工する。本発明は、PCBの貫通穴壁への金属層の塗工に従来使用されているあらゆる工程を想定している。したがって、本発明は、特定の電気メッキ浴パラメータに限定されるものではない。
【0034】
一般的な銅電気メッキ浴は、水溶液中の銅、硫酸銅、硫酸、及び塩化物イオンからなる。電気メッキ浴は通常、攪拌し、また約20℃〜約25℃の温度に維持することが好ましい。電気メッキ浴には、通常は銅からなる陽極が設けられており、メッキするプリント基板は、電気メッキ回路に陰極として接続される。そして、2枚の銅プレート間に位置する非導電層の穴壁を銅メッキするために、電流を電気メッキ回路に約60分間〜約90分間印加する。穴壁の銅メッキによって、プリント基板の銅層同士が導通する。必要であれば、他の好適な電気メッキ条件とすることもできる。必要に応じて、他の銅塩、又はニッケル、金、銀等の他の金属の塩を含む他の電気メッキ浴組成を用いてもよい。
【0035】
プリント基板は、銅電気メッキ浴から取り出して洗浄・乾燥し、プリント基板処理分野で知られるように、フォトレジスト化合物等を塗布して更に加工されるプレートとされる。
【0036】
本発明を、下記実施例に基づいて更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1
両面板(銅箔が、エポキシ樹脂/ガラス繊維複合材料の両面に積層されているもの)を、機械洗磨し、以下の順で、表示された時間処理した。全ての手順は、特に何も間に媒介させずに、ビーカー内で浸漬法により行った。
1) M−treat BIO Hole Conditioner(R)(4分)*
2) 水で洗浄(2分)
3) M−Permanganate P(R)(8分)*
4) 水で洗浄(3分)
5) 指示した溶液で中和(1分)
6) 水で洗浄(1分)
7) 空気乾燥
8) Blackhole(R)Conditioner−ESP(30秒)*
9) 水で洗浄(30秒)
10) Blackhole Carbon black分散液(45秒)*
11) 40℃で空気乾燥/熱処理(2分)
12) Blackhole(R)Microcleanでマイクロエッチング(指示量の銅除去のため)
13) 水で洗浄(30秒)
14) 空気乾燥
*MacDermid社(06702 コネチカット州 ウォーターバリー フライト ストリート 245)から入手可能
この浴の順序で処理後、銅板の表面を目視で調査した。板の清浄度を表1に示す。
【0038】
【表1】

従来のヒドロキシルアミン及び過酸化/硫酸系の中和剤により過マンガン酸を中和した場合(ラン1〜6)、汚れのない表面とするためにはマイクロエッチングで40マイクロインチの銅を除去する必要があった。犠牲被膜を中和工程で塗工した場合(ラン7〜9)、汚れのない銅表面が、マイクロエッチングによる10マイクロインチの銅の除去によって得られた。実施例1は、犠牲層の塗工により、直接金属化工程において炭素除去が向上することを実証している。マイクロエッチングによる銅の除去量は、汚れのない表面を維持しつつ、50%以上削減することができる。
【0039】
実施例2
貫通穴を有する3層型プリント基板を、実施例1の順で処理し、HiSpec(R)溶液で1時間銅電気メッキした。表2は、各板に使用した中和工程を示す。
【0040】
【表2】

処理後、基板とその中の穴及び配線とを、標準の断面顕微鏡分析、及び華氏550度で10秒間溶融はんだに浸漬する標準型はんだ衝撃試験により、目視で検査した。断面顕微鏡分析により、3つのプレート全てにおいて滑らかで均一な銅の厚層で穴がメッキされていることが示された。内層の顕微鏡分析により、上記標準断面サンプル及びはんだ衝撃断面サンプルにおける内層汚染欠陥の数が、ラン1、2と比較して、ラン3では少なくとも30%減っていることもわかった。実施例2は、犠牲層の塗布により、直接金属化工程後、プリント基板の穴に清浄銅内層面が生成されることを実証している。
【0041】
実施例3
貫通穴を有する両面プリント基板は、実施例1の順で処理する。全ての基板を積層、露光、現像し、次いで銅−錫メッキ処理した。全ての基板に乾燥膜接着性の悪さによるブリスター、ハロー、又は乾燥膜浮きを注意深く検査した。AQUA MER(R)DI200、AQUA MER(R)DI300、AQUA MER(R)MP420、AQUA MER(R)PR100の4種類の乾燥膜を試験に使用した。乾燥膜接着の評価を表3に示す。
【0042】
【表3】

表3に示したように、ラン1、2で従来の硫酸ヒドロキシルアミン及び過酸化物/硫酸中和剤で処理したサンプルは、上述の乾燥膜のうち3種と良好な接着性を示したが、AQUA MER(R)MP400乾膜との接着性は悪かった。新規工程であるラン3では、処理基板の乾燥膜接着特性が向上し、全種の乾燥膜と良好な接着性を示した。実施例3は、この新規工程により、より乾燥膜が接着しやすい面が形成されたことを実証している。
尚、全ての実施例で使用した中和剤/犠牲被膜溶液は、36g/Lの過酸化水素、90g/Lの硫酸(98重量%)、及び6.5g/Lのベンゾトリアゾールからなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性領域及び非導電性領域から構成される基体をメッキする方法であって、該基体を
a.過マンガン酸イオンを含むアルカリ性デスミア溶液に接触させ、
b.(i)酸、(ii)過酸化水素、及び(iii)腐食防止剤を含む中和溶液に接触させ、
c.界面活性剤及び水溶性ポリマーからなる群から選択される材料を含むコンディショナー溶液に接触させ、
d.(i)界面活性剤及び水溶性ポリマーからなる群から選択される材料と、(ii)炭素粒子とを含む炭素粒子の水性分散液に接触させ、
e.乾燥させ、
f.マイクロエッチング溶液に接触させ、
g.電位を印加しながら銅メッキ溶液に接触に接触させる
工程を含むことを特徴とする金属性領域及び非導電性領域から構成される基体をメッキする方法。
【請求項2】
前記腐食防止剤が、アルキルイミダゾール、アルキルトリアゾール、芳香族イミダゾール、芳香族トリアゾール、及びその組合せからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基体がプリント基板である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属性領域が銅を含み、前記非導電性領域が樹脂すなわちポリマー材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基体がプリント基板である請求項2に記載の方法。

【公表番号】特表2008−516088(P2008−516088A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536679(P2007−536679)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/020635
【国際公開番号】WO2006/043994
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(591069732)マクダーミッド インコーポレーテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】MACDERMID,INCORPORATED
【Fターム(参考)】