説明

電気二重層キャパシタの製造方法

【課題】電気二重層キャパシタの分極性電極の表面における酸素官能基および有機溶媒の反応を抑制することで、電気二重層キャパシタの体積膨張を解消し、静電容量の低下の少ない長期信頼性に優れた電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】非水電解液中に第三の電極8を設け、電極素子5に含まれる全ての正極2および負極3を短絡し、短絡した正極2および負極3と第三の電極8との間に電源9を配置して電圧を印加し、非水電解液は、第四級アンモニウム塩またはリチウム塩の群から選ばれる少なくとも一種の電解質と、5重量%以下のビニレンカーボネートまたはその誘導体とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される電気二重層キャパシタの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気二重層キャパシタは、対向する正極側の分極性電極と負極側の分極性電極との間にセパレータを介在させてなる電極素子と、この電極素子に含浸される非水電解液とによって構成されている。このような電気二重層キャパシタでは、ある電圧で通電を行うとその内部にガスが発生し、発生したガスによって電気二重層キャパシタ内の圧力が上昇する。そして、発生したガスの応力によって電極素子の変形や、電気二重層キャパシタの静電容量あるいはサイクル寿命の低下を引き起こすことがある。また、電気二重層キャパシタのガスの発生の原因として、分極性電極に含まれる活性炭において、その表面に存在する酸素官能基の反応および非水電解液に含まれる有機溶媒の分解反応が関与することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これまでに活性炭表面の酸素官能基量を低減するための技術として、例えば活性炭を予め不活性ガス雰囲気下高温で熱処理することにより、酸素官能基を揮発させて除去する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−075802号公報(平成14年3月15日公開)
【特許文献2】特開2003−243265号公報(平成15年8月29日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法では、酸素官能基の反応によるガスの発生を抑制することはできるものの、非水電解液に含まれる有機溶媒の反応によるガスの発生を抑制することはできない。そして、このような問題に対して有用な抑制技術はまだ確立されていない。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電気二重層キャパシタの分極性電極に含まれる活性炭の表面において、酸素官能基および有機溶媒の反応によるガスの発生を抑制することで、電気二重層キャパシタの体積膨張を解消し、静電容量の低下の少ない長期信頼性に優れた電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気二重層キャパシタは、上記課題を解決するために、活性炭粉末を含む分極性電極を集電体上に形成した正極および負極の間にセパレータを介在させて巻回または積層してなる電極素子と、該電極素子に含浸された非水電解液とを備える電気二重層キャパシタの製造方法であって、前記非水電解液中において第三の電極を設け、前記電極素子に含まれる全ての前記正極および負極を短絡し、前記短絡した正極および負極と前記第三の電極との間に電源を配置して電圧を印加し、前記非水電解液は、第四級アンモニウム塩またはリチウム塩の群から選ばれる少なくとも一種の電解質と、5重量%以下のビニレンカーボネートまたはその誘導体とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、短絡した正極および負極と前記第三の電極に対する電圧の印加により、非水電解液中のビニレンカーボネートまたはその誘導体が分解し、該分解生成物が分極性電極の表面上に化学的に安定な被膜を形成すると考えられる。したがって、非水電解液は、分極性電極の表面上に存する酸素官能基と接触しないので、非水電解液に含まれる有機溶媒の分解反応は抑制される。
また、上記発明において、前記第三の電極は、銀-塩化銀電極、白金電極、リチウム電極から選ばれる参照電極であることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、参照電極の電位は一定であるので、短絡した正極および負極と第三の電極に対して電圧を印加するときに、短絡した正極および負極に印加される電位を調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明を用いて電気二重層キャパシタを製造することにより、電気二重層キャパシタの体積の膨張や容量の低下を抑制して、長期信頼性に優れた電気二重層キャパシタを提供することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2を用いて本発明における実施の形態の一例を説明する。図1を参照して、本実施の形態における電気二重層キャパシタの製造方法は、正極2、負極3、セパレータ4で構成される電極素子5と、正極リード端子6と、負極リード端子7と、第三の電極8と、電源9とを具備している。
【0013】
正極2および負極3には、金属箔からなる集電体の片面または両面に、活性炭粉末を含む分極性電極が形成されている。
【0014】
電気二重層キャパシタ用の活性炭粉末を含む分極性電極は、公知の電気二重層キャパシタ用電極の製造方法によって製造することができる。例えば、石油ピッチ、コークス、ヤシ殻、フェノール樹脂等から選ばれる原料由来の活性炭に結合材、導電材を加えて構成することができる。
【0015】
結合材としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、ポリアクリル酸等が使用されるが、これらの中でポリテトラフルオロエチレンは混練時に繊維状となって活性炭と導電材を強固に結合するとともに、活性炭の細孔を閉塞することが無いことから好ましい。
【0016】
導電材としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックの導電性カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素繊維、アルミニウム、ニッケル等の金属繊維を用いることができるが、少量で効果的に導電性が向上するケッチェンブラック、アセチレンブラックが特に好ましい。
【0017】
電極は活性炭、導電材、結合材を公知の方法により成型することで製造される。例えば、活性炭とカーボンブラックの混合物にポリテトラフルオロエチレンを添加・混合した後、プレス成型、ロール成型して得られる。また、上記混合物をスラリー状にしてから塗布することで薄い塗布膜とする方法、シート状または板状の成型体の何れであってもよい。
【0018】
セパレータ4は正極2と負極3との間に介在している。そして、電極素子5は、正極2、負極3およびセパレータ4を積層または巻回して形成されている。
【0019】
電極素子5を構成する正極2および負極3の各々には、集電箔に露出部が形成されている。該露出部は、例えば集電箔の一端に凸形状を有するように設けられていて、正極、負極ごとに集合されている。そして、板状あるいは棒状のリード端子6、7が該露出部の集合体に超音波溶接やスポット溶接等により取り付けられている。リード端子6、7の取り付けは、後述する正極2および負極3と第三の電極との間の電圧印加工程の前後いずれに行われてもよい。
【0020】
また、電極素子5と第三の電極8は、非水電解液に浸漬されている。本発明に用いる非水電解液には、公知の電気二重層キャパシタに用いられている電解液を使用することができる。電解液は特に限定されないが、一般的には溶質の溶解度、解離度、液の粘度等を考慮して選択され、高導電率でかつ高電位窓の電解液であることが望ましい。
【0021】
非水電解液の例を挙げると、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、含リン有機溶媒、含硫黄有機溶媒等が挙げられる。
【0022】
環状炭酸エステルの種類に特に制限は無いが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートは、誘電率が高いために電解質が溶解し易く、電気二重層キャパシタに用いた場合に耐電圧特性が良いという点で好ましい。
【0023】
また、鎖状炭酸エステルの種類にも特に制限は無いが、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0024】
環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの混合溶媒の具体的な組み合わせとしては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとプロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとプロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとプロピレンカーボネート等が挙げられ、特にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとプロピレンカーボネートの組み合わせが好適である。
【0025】
鎖状カルボン酸エステルの種類にも特に制限は無いが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−ブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸−i−プロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸−i−ブチル、プロピオン酸−t−ブチル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、およびプロピオン酸エチルが好ましい。
【0026】
環状カルボン酸エステルの種類にも特に制限は無いが、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0027】
さらに、本発明に用いるビニレンカーボネートまたはその誘導体には、公知のリチウムイオン電池等に用いられているものを使用することができる。ビニレンカーボネートの誘導体としては、好ましくは、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。なかでも、活性炭表面でより安定で良質な皮膜を形成する等の理由により、ビニレンカーボネートが特に好ましい。
【0028】
非水電解液中には、ビニレンカーボネートまたはその誘導体が5重量%以下含有されている。含有量が5重量%より多い場合には、ビニレンカーボネートまたはその誘導体が非水電解液中に過度に存在し、耐久性等のセル特性に悪影響を及ぼす場合があるので好ましくない。また、含有量が0.1重量%よりも少ない場合には本発明で得られる効果が小さい。そのため、ビニレンカーボネートまたはその誘導体の含有量は、好ましくは0.1〜5重量%以上であり、特に好ましくは、0.5〜3重量%である。
【0029】
また、非水電解液中には、第4級アンモニウム塩またはリチウム塩からなる群から選ばれる一種以上の電解質が含有されている。第4級アンモニウムイオンやリチウムイオンを生成し得る電解質であれば、あらゆる第4級アンモニウム塩またはリチウム塩を用いることができる。第4級アンモニウム塩およびリチウム塩からなる群より選ばれる一種以上を用いることがより好ましい。特に、エチルトリメチルアンモニウムBF4、ジエチルジメチルアンモニウムBF4、トリエチルメチルアンモニウムBF4、テトラエチルアンモニウムBF4、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムBF4、エチルトリメチルアンモニウムPF6、ジエチルジメチルアンモニウムPF6、トリエチルメチルアンモニウムPF6、テトラエチルアンモニウムPF6、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムPF6、テトラメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、エチルトリメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、ジエチルジメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、トリエチルメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラエチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、エチルトリメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、ジエチルジメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、トリエチルメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、テトラエチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムジフルオロオキサラトボレート、LiBF4、LiPF6、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等が好ましい。
【0030】
非水電解液中の電解質の濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするため少なくとも0.1mol/L以上とすることが好ましく、0.5〜1.5mol/Lの範囲内とすることがさらに好ましい。
【0031】
電極素子の全ての正極2および負極3は、電気的に接続(即ち、短絡)されている。具体的には、例えば正極リード端子6と負極リード端子7を導線で結線することにより短絡を行う。
【0032】
この短絡部と非水電解液に浸漬された第三の電極8との間に電源9を配置して結線する。第三の電極8にはニッケルやアルミ等のリード端子を適宜取り付けてもよい。そして、電源9から正極2および負極3と第三の電極との間に電圧を印加することにより、非水電解液中のビニレンカーボネートまたはその誘導体を酸化または還元分解させる。
【0033】
第三の電極8は、銀-塩化銀電極、白金電極、リチウム電極から選ばれる参照電極であることが好ましい。第三の電極8に標準電位が明らかな参照電極を用いると、正極2および負極3に及ぼす目的の電位に応じて、電源9から印加する電圧を設定することができる。したがって、正極2および負極3に必要以上の電位を及ぼすことがないので、意図しない電気分解反応の発生を抑制することができる。
【0034】
例えば、非水電解液にビニレンカーボネートを含む場合には、第三の電極8としてリチウム電極を参照電極に用いると、ビニレンカーボネートは1.35(V、vs.Li+/Li)以下で還元分解されるので、短絡部と第三の電極8との間に短絡部が1.35(V、vs.Li+/Li)以下となる電圧を電源9により印加することによって、必要最小限の印加電圧でビニレンカーボネートを分解することが可能となる。
【0035】
また、電源9には、ポテンショスタットや広く普及している直流電源を用いることができる。
【0036】
上記の酸化または還元分解の工程は、例えば図2に示すように、電極素子5と第三の電極8を外装体10に収容し、電気二重層キャパシタ1の内部で実施することが好ましいが、その他、適当な容器の中で実施してもよい。前者の場合には、外装体10としてアルミラミネートフィルムまたは金属製の缶を用いることができる。このとき、外装体10は密封されていても、一部開放されていてもよい。
【0037】
上記の酸化または還元分解させる工程後には、電気二重層キャパシタ1から第三の電極8を取り除くことが好ましい。即ち、非水電解液が含浸された電極素子5を含む本体部分と、第三の電極8を含む付帯部分とに切り離すとともに、該本体部分のみで構成されたものを電気二重層キャパシタ1とする。このとき、正極2および負極3の間の電気的な接続は解除される。
【0038】
また、図2に示すように、外装体10としてアルミラミネートフィルムを用いる場合には、三辺または四辺ある熱シール部のいずれか一辺の近傍に余分なスペースを設けておき、該スペースに第三の電極8を収容することが好ましい。このようにすれば、上記の酸化または還元分解の工程後に、該スペースを除くように外装体10を熱シールすることで、不要になった第三の電極8を電気二重層キャパシタ1から容易に切り離すことができる。
【実施例】
【0039】
次に本発明の電気二重層キャパシタの製造方法により得られる電気二重層キャパシタについて、実施例により具体的に説明する。
【0040】
〔実施例〕
(電極の作製)
比表面積が1800m/gの活性炭1.0g、ケッチェンブラック0.1g、ポリフッ化ビニリデン0.1gを乳鉢にて混合・混練し、これにN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、粘度調整を行ったスラリー溶液を得た。このスラリー溶液を0.04mm厚のアルミ箔上に片面塗布し、その後120℃、2時間乾燥し、電極層厚0.08mmの片面電極シートを作製した。また、0.05mm厚のアルミ箔上に両面塗布し、その後120℃、2時間乾燥し、電極層厚0.08mmの両面電極シートを作製した。得られた電極シートを規定の大きさに成形し、片面活性炭電極および両面活性炭電極とした。このとき、各電極シートの一端に凸形状を有する外部電極引き出しタブを設けた。
【0041】
(電気二重層キャパシタの作製)
負極3の片面活性炭電極を両端に、両面活性炭電極を二枚の活性炭電極間に厚さ0.05mm厚のセルロース製セパレータ4を挟みながら規定枚数積層し電極素子とした。正極2および負極3ごとに、外部電極引き出しタブを集合し、各々にアルミ板からなるリード端子6、7を超音波溶接により取り付けた。この電極素子5の外周に厚さ0.05mm厚のセルロース製セパレータ4を巻き回し、アルミ製ラミネートフィルムからなる外装体10内に電極素子5を収容した。このとき、外装体10の四辺ある端部のうち一辺に開口部を設けるように外装体10の端部を熱シールした。外装体10の開口部と電極素子5との間には、第三の電極8を収容するためのスペースを設けた。
【0042】
そして、外装体10から引き出した正極リード端子6と負極リード端子7とを導線で結線することにより短絡し、減圧雰囲気下で120℃、10時間乾燥した。その後、電極素子5から規定距離をおいた位置に、第三の電極8としてリチウム電極を外装体10の開口部から挿入し配置した。
【0043】
そして、非水電解液として1M−トリエチルメチルアンモニウムBF4/プロピレンカーボネート中にビニレンカーボネートを3重量%溶解させたものを外装体10内に注入した。そして、外装体10の開口部を熱シールし、非水電解液が含浸された電極素子5を含む本体部分と、第三の電極8を含む付帯部分を有する電気二重層キャパシタ1を作製した。
【0044】
次に、電気二重層キャパシタ1のリード端子6、7の短絡部をプラス側に、第三の電極8をマイナス側にして直流電源を接続し、短絡部が1.35(V、vs.Li+/Li)以下となる電圧を印加した。
【0045】
電圧を規定時間印加後に直流電源を取り外し、電気二重層キャパシタ1の本体部分と付帯部分を分離するように、外装体10の電極素子5近傍部分を熱シールした。そして、付帯部分を含む外装体10を該熱シール部で切断するとともに、本体部分の短絡部の導線を取り除いて、付帯部分を分離した実施例の電気二重層キャパシタ1を得た。
〔比較例〕
【0046】
第三の電極8の挿入およびその後の直流電源を用いた電圧の印加の工程を除いた以外は、実施例と同様にして比較例の電気二重層キャパシタ1を得た。
(評価試験)
【0047】
上記のようにして作製した電気二重層キャパシタ1に対し、60℃の恒温槽中で2.7Vの電圧を200時間印加した。
【0048】
実施例および比較例の電気二重層キャパシタ1におけるガス発生量と静電容量の変化を表1に示す。ガス発生量は評価試験前後の電気二重層キャパシタ1の体積変化量により評価した。また、ガス発生量および静電容量の変化は電圧印加前の初期値を100として評価した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示す結果から明らかなように、本発明により得られた実施例の電気二重層キャパシタ1は、ガス発生による体積膨張が解消され、静電容量の低下の少ない優れた効果を有していることが分かる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 電気二重層キャパシタ
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電極素子
6 正極リード端子
7 負極リード端子
8 第三の電極
9 電源
10 外装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭粉末を含む分極性電極を集電体上に形成した正極および負極の間にセパレータを介在させて巻回または積層してなる電極素子と、該電極素子に含浸された非水電解液とを備える電気二重層キャパシタの製造方法であって、
前記非水電解液中に第三の電極を設け、
前記電極素子に含まれる全ての前記正極および負極を短絡し、
前記短絡した正極および負極と前記第三の電極との間に電源を配置して電圧を印加し、
前記非水電解液は、第四級アンモニウム塩またはリチウム塩の群から選ばれる少なくとも一種の電解質と、5重量%以下のビニレンカーボネートまたはその誘導体とを含むことを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項2】
前記第三の電極は、銀-塩化銀電極、白金電極、リチウム電極から選ばれる参照電極であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−69792(P2012−69792A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214088(P2010−214088)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】