説明

電気伝導性物品を調製するための方法

【課題】限られた工程数で、そしてこれらの工程のエネルギーバランスを制限しながらコストを抑えて、簡便に達成でき、産業用途と適合性である、電気伝導性物品を製造する方法を提供すること。
【解決手段】次の工程を含む電気伝導性物品の製造方法:
−少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末、この樹脂の硬化剤化合物粉末、および電気伝導性充填剤粉末を、乾燥経路により混合する工程;
−物品に適合した形状を有するモールドにおいて、樹脂を架橋するために有効な温度で、先行工程で得られた粉末混合物を熱圧縮する工程であって、この工程の終わりに電気伝導性物品が得られる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導性物品を調製するための方法に関する。
この方法は、プロトン交換膜を有する燃料電池(PEMFCセルという専門用語として既知、PEMFCは「プロトン交換膜燃料電池」を意味する)、プロトン交換膜電解槽およびスーパーキャパシターに使用される集電体、とりわけバイポーラプレートを調製するために特に好適である。
そのため、本発明の主要分野の1つは、燃料電池の分野と考えることができる。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は基本セルのスタックを含み、その中で、連続的に導入される2つの試薬間で電気化学反応が生じる。燃料、例えばH/O混合物を用いて操作するセルに関しては水素、またはメタノール/酸素混合物を用いて操作するセルに関してはメタノールが、アノードと接触する一方で、酸化剤、一般には酸素はカソードと接触する。アノードおよびカソードは、プロトン交換膜タイプの電解質によって分離される。電気化学反応は、そのエネルギーが電気エネルギーに変換されるが、2つの半反応に分割される:
−アノード/電解質界面において生じる燃料の酸化であって、Hを用いて操作するセルの場合には、電解質を横断してカソードに向かうHプロトンと、電子とを生じ、その電子が電気エネルギーの生成に寄与するために外部回路と接続されている、酸化;
−電解質/カソード界面において生じる酸化剤の還元であって、Hを用いて操作するセルの場合には水が生成する、還元。
【0003】
電気化学反応は、厳密に言えば、電極−膜−電極アセンブリにて生じる。
電気器具の操作を確実にするためには、単一の電極−膜−電極アセンブリによって送達される電力よりも顕著に大きい電力を得る必要がある。この観点から、電極−膜−電極アセンブリは、大抵の場合スタックとして配置され、異なるアセンブリ間の電気的導通は、伝導プレートであるそのバイポーラプレートによって確実になる。
集電機能に加えて、バイポーラプレートはまた次の機能を確実にしなければならない:
−アノードおよびカソードにおける試薬の分配および生成物の除去であって、H/Oを用いて操作するセルに関しては、試薬は水素および酸素であり、生成物は水である、分配および除去;
−電気化学反応の間に生成する熱の除去;
−燃料電池における構成上の基本セルのスタックの機械的構造化。
【0004】
故に、バイポーラプレートの構成材料は、次の基準を満たさなければならない:
−基本セルによって生成した電流を効率良く集電するための十分な電気伝導性;
−基本セルにおける電気化学反応の間に生成する熱を除去するための良好な熱伝導性;
−燃料電池における構成上の基本セルの組立に関連する応力に耐えることができ、燃料電池を載置する間の取扱操作にも耐えることができるような良好な機械的特性;
−燃料電池の使用温度範囲においてアセンブリの一体性を保証するための熱安定性;
−材料の性能を維持できるような、ならびに材料の分解、ひいては材料が接触したアノードおよびカソードの汚染を回避できるような、燃料電池コアに存在する流体(例えば水、酸)に対する化学的安定性;
−プロトン交換膜よりも大きい、試薬(例えば、水素および酸素)に対する不透過性;
−電気化学反応の間に形成される水の放出を促進するための表面疎水性;
−プレートの表面において分配チャンネルを形成できるような、成形性であって、これは好ましくはチャンネルを形成するための機械加工段階を必要としない、成形性。
【0005】
現在使用されているバイポーラプレートは、3つのカテゴリに細分できる:
−グラファイト製のバイポーラプレート;
−金属バイポーラプレート;および
−有機複合材料製のバイポーラプレート。
グラファイトプレートについて、本質的に、分配チャンネルを製造するために必要な機械加工段階のためにコストが非常に高くなるので、産業規模での使用を想定するのが困難である。
【0006】
金属バイポーラプレートに関して、それらは、安価なバイポーラプレートの設計および製造用の選択肢となるような、一連の特性(機械的強度、密封性、電気伝導性、成形性)を有する。
しかし、グラファイトの密度を上回る密度のために、プレス加工により成形される薄いシート形態での使用が強いられる。こうした条件下では、チャンネルの設計が制限される(チャンネルの幾何学形状を調整する材料の極限伸び限度)。その上、プレス加工技術によってのみ、プレートの一方の面においてチャンネルを形成できるが、その両面においてチャンネルを含む最終的なプレートを得るためにはプレス加工された2つの半プレートを結合させる必要がある。
【0007】
プレス加工によって成形された金属シートから製造されたバイポーラプレートに関して、流体の到達および形成された生成物の除去は、バイポーラプレートの平面領域において局所的に達成されるが、特許文献1に記載されるように、周囲の密封を確実にでき、好適な形状を有するフレームの使用を必要とする。この技術では、バイポーラプレートを形成し、流体および生成物の供給および除去を確実にするために、2つの組み合わせたプレート間での接合を確実にすることを目的とした追加の部品を同じバイポーラプレートに必要とするという欠点を有する。この結果、最終的なバイポーラプレートは予測よりも圧縮されない。
最後に、バイポーラプレートを形成するために金属を使用する固有の問題の1つは、プレートと水性媒体との接触によって誘導される腐食現象にある。この対応策を見出すために、特定の著者(例えば非特許文献1の著者)は、腐食現象を制限するために、プレート上に保護コーティングを転写することを提案している。しかし、これにより、その製造方法は適用するのがより複雑なものになる。
【0008】
有機複合材料製のプレートに関して、このプレートは、電気伝導性粒子が分散した有機ポリマーマトリックスを含むプレートで構成される。この粒子は、集電するのに必要とされる電気伝導性を有するバイポーラプレートを提供し、ポリマーマトリックスは、バイポーラプレートが配置される燃料電池の異なる構成要素との組立に必要とされる機械的強度を提供する。
伝導性粒子は、良好な電気伝導性という利点を有する金属粒子であってもよい。しかし一方でそれらは、高密度であり、化学環境に対して感受性であるという欠点を有する。
伝導性粒子はまた、カーボンブラック、グラファイト粉末または炭素繊維のような粉末としてある炭素系製品であってもよい。
【0009】
通常、プレートは、特許文献2に記載されるように、伝導性粒子を液体樹脂に加え、続いてこの樹脂の硬化により成形して製造される。
しかし、液体としての原料、この場合は液体樹脂の使用は、次の欠点を生じる:
−液体樹脂の架橋反応を制御するのが困難であるため、成型前のシステムの不安定性;
−液体樹脂が電気伝導性充填剤の固体粒子と会合するため、成型前のシステムの不均質性;
−物品の成形中の樹脂の滲出現象であって、それが、このレベルでの滲出樹脂の濃縮のために、電気伝導性粒子の不均質な分配および絶縁表面を含む物品を生じる、現象。
【0010】
これらの困難を払拭するために、特定の著者は、固体試薬(固体樹脂、伝導性粒子)からの作業を提案している。しかし、これらの文献に記載される混合物は、例えば熱間カレンダー加工による成形前に溶融相の状態にされなければならない。しかし、溶融相でのこの混合工程は、極めて大きな追加費用を生じ、バイポーラプレート製造における大規模産業化に不適合であることが分かる。その上、得られたプレートは、アプリケーションの仕様の要件、特に平面電気伝導性に関連する要件を満たさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2007/03743
【特許文献2】US6,248,467
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Power.Sources,131(2004),p.162−168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
故に、電気伝導性物品、とりわけバイポーラプレート、およびそれらを製造する方法が真に必要とされており、それらは、限られた工程数で、そしてこれらの工程のエネルギーバランスを制限しながらコストを抑えて、簡便に達成でき、産業用途と適合性であり、好ましくは長期間のコストのかかる機械加工操作を抑えるものであり、これらの方法はまた、電気伝導性、機械的強度、およびこれらがバイポーラプレートである場合には経時的に生成される水の除去の観点から、効率の良い性能を有する伝導性物品を得る可能性を与えなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
故に、本発明は、次の工程を含む電気伝導性物品を製造するための方法に関する:
−少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末、この樹脂の硬化剤化合物粉末、および電気伝導性充填剤の粉末を、乾燥経路により混合する工程;
−物品に適合した形状を有するモールドにおいて、樹脂を架橋するために有効な温度で、先行工程で得られた粉末混合物を熱圧縮する工程であって、この工程の終わりに電気伝導性物品が得られる工程。
【0015】
この方法を適用することで次の利点が結果として得られる:
−生成物をペーストとして得ることを目的とする混合工程も同様であるように、特に加熱を必要としない乾燥経路により混合工程が達成されるので、あまりエネルギーを消費しない方法である;
−また、樹脂が熱硬化性樹脂であるという事実からあまりエネルギーを消費しない方法であり、これは物品をモールドから取り出す必要がある場合にプロセスの終わりに物品を冷却する必要がないことを含意するものであり、物品が熱可塑性樹脂から製造される場合には一般にそうではない;
【0016】
−物品が粉末混合工程後に、予備的な転換を必要とせず、後続の機械加工工程も必要とせずに、単一の熱圧縮工程で製造され得るという事実から、迅速で簡便に適用できる方法である;
−乾燥経路により操作するため、安定な粉末混合物を最初に適用する方法であり、熱圧縮による成形工程の前に、第1の工程からの粉末混合物を保存できる;
−電気伝導および機械的特性の観点から有効な特性を有する電気伝導性物品を得る可能性を与える方法である;
−物品を得るのに必要な工程が少ないために、大規模で産業的に適用できる方法である;
−使用されるエポキシ樹脂のコストが低く、所望の物品を形成するために後続の機械加工工程を経ることなく粉末混合物を成形する容易さのために、適用が安価な方法である。
【0017】
故に、この方法は、少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末、この樹脂のための硬化剤化合物粉末、および電気伝導性充填剤の粉末を、乾燥経路により混合することからなる第1の工程を含む。
乾燥経路とは、通常、液体化合物、例えば溶媒および溶融相を含まない混合工程を意味し、混合物の異なる構成要素は固体粉末のままであり、加熱を必要としないことを規定する。この結果は、簡便で、あまりエネルギーを消費しない工程であり、粉末混合物は、熱圧縮工程中の樹脂の転換前に、熱硬化性樹脂を架橋させる工程に供されていない。
【0018】
熱圧縮とは、通常、物品を形成するために粉末の混合物の密着を確実にするために、有効温度において、混合物に圧力を適用することを含む、粉末混合物を所望の物品に成形するための工程を意味し、この工程は、例えば射出プレス機または簡便な圧縮プレス機において達成でき、成形の前に予め粉末混合物を溶融させる工程を必要としないことを規定する。
少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末は、10〜500μmの範囲の平均粒径を有していてもよく、この樹脂のための硬化剤化合物粉末および電気伝導性充填剤粉末についても同様である。
【0019】
有利なことには、少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末、この樹脂のための硬化剤化合物粉末ならびに電気伝導性充填剤粉末は、75〜150μmの範囲の平均粒径を有する。
熱硬化性樹脂は、少なくとも2つのエポキシ基、すなわち次のユニットを有する基を含むエポキシ樹脂である:
【化1】

本発明の方法のために使用できる特に有利な樹脂は、次の式:
【化2】

は、角括弧間に採用されるユニットの反復数を表す;
【化3】

は、角括弧間に採用されるパターンの反復数を表す、および
これらの混合物に適合する。
【0020】
エポキシ樹脂は、硬化剤化合物の作用により架橋した後に、第3の種を生じず、故に樹脂の架橋後の収縮が小さく、優れた寸法安定性を有する物品を生じるので、エポキシ樹脂を用いての作業は特に興味深い。
他のタイプの樹脂の使用は、架橋中に、水のような第3の種を形成することが多く(これはフェノール樹脂の場合に特にあてはまる)、そのため架橋後に材料中に孔が残り、こうした多孔性がガス透過性を増大させ、また機械的特性も低下させ得るので、バイポーラプレートとして使用することを目的とした電気伝導性物品にとっては有害となる。
【0021】
その上、上述のような樹脂の使用は、架橋後に得られた材料に、剛性、熱および化学安定性、充填剤との接着性の観点から優れた特性を与えるので、それらの固有の特性およびそれらの適用方法のために、先行技術にて通常見られる熱可塑性ポリマーよりも相当魅力的となる。
硬化剤化合物は、通常、本発明に従って、例えばエポキシド環を開環することによって上述の樹脂の架橋反応を生じることができる化合物であり(そのため、架橋剤としても記載できる)、故にこれらの硬化剤化合物は、この樹脂のエポキシド環と反応できる少なくとも1つの機能を含む。適切な硬化剤化合物は、少なくとも1つのアミン機能を含有する化合物であってもよい。これらは、特に、脂肪族アミン化合物、アミドアミン、ポリアミド、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、無水物、芳香族アミン、イミダゾール化合物であってもよい。
【0022】
例として、アミン化合物とエポキシ樹脂との架橋反応を次のように図式化できる:
【化4】

他の化合物がエポキシ樹脂の架橋を生じさせることもできる。
とりわけ、硬化剤化合物として使用されるイミダゾール化合物が特に高く評価されている。実際、それらは、エポキシ樹脂の単独重合を生じ、それは樹脂の重合からのユニットが硬化剤化合物分子由来の架橋節(cross linking nodes)を存在させることなく、互いに直接結合することを意味する。重合後の結果は、重合時に樹脂由来の2つのユニット間に硬化剤が含まれる場合に得られるものよりも、高いガラス転移温度を有し、より高密度で、より剛性な材料である。
【0023】
硬化剤化合物の例としては、次の式のジシアンジアミドを挙げることができる:
【化5】

硬化剤化合物の例としては、次の式の2−フェニルイミダゾールを挙げることができる:
【化6】

【0024】
電気伝導性充填剤粉末は、あらゆる電気伝導性材料の粉末であることができる。故に、これらは、金属粉末、金属酸化物粉末、炭素質材料の粉末であってもよい。
好ましくは、本発明の方法の範囲内で使用される電気伝導性充填剤粉末は、その化学的慣性およびその低密度のために特に有利な炭素質材料粉末である。
炭素質材料粉末としては、特にグラファイト粉末、カーボンブラック粉末、とりわけ合成グラファイト粉末を挙げることができ、これは、採鉱からの天然等級のものとは異なり材料の伝導性に有害な不純物を含まないという利点を有する。
【0025】
カーボンブラック粉末としては、市販の粉末である770m/gの比表面積を有するEnsaco 350G、65m/gの比表面積を有するEnsaco 250Gを挙げることができる。
合成グラファイト粉末としては、市販の粉末である3m/gの比表面積を有するTimrex KS 150、6.5m/gの比表面積を有するTimrex KS 75を挙げることができる。
他のタイプの電気伝導性充填剤と同様に、上述のものに加えて、ラメラグラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを想定でき、とりわけラメラグラファイトを想定できる。
【0026】
グラファイト粉末に加えて、ラメラグラファイトを場合により加える場合、ラメラグラファイトは、材料に電気伝導性を与えるという事実に加えてまた、グラファイトラメラが、形成された物品に到達するガスフローに対して垂直に配置される場合に、熱圧縮工程後に、ガスのねじれを増大させ、結果としてこれらのガスに対する材料の不透過性を改善できる。
さらに、混合工程では、他の添加剤、例えば触媒、可塑剤、柔軟化剤、核形成剤、超分散剤、固化防止剤、および反応性希釈剤が組み込まれてもよい。
これらの添加剤はまた、固体粉末としてあり、有利なことには10〜500μmの範囲の平均粒径を有することを理解する。
【0027】
とりわけ、熱圧縮中に樹脂の架橋速度が改善されるように、触媒粉末を上述の粉末混合物に添加するのが適切な場合がある。適切な触媒は、フェノール系、アルコール系、酸、アミン化合物のように、化合物が容易に水素を生成できるようにする。より詳細には、これらは脂肪族アミン、イミダゾール化合物、置換尿素、例えば次の式の化合物であってもよい:
【化7】

上述の平均粒径を有する粉末を得るために、所望の粒径を有する粒子だけを保持するためにはミル加工および篩加工を進める必要がある場合がある。
【0028】
例えば、混合物の異なる構成粉末は、同一の平均粒径を有する。
上述の混合物における粉末の割合の観点から、電気伝導性充填剤粉末は、混合物の総質量に基づいて50質量%〜95質量%を占める場合がある一方で、他の粉末(樹脂粉末、硬化剤化合物粉末および場合により他の添加剤粉末)は、混合物の総質量に基づいて5質量%〜50質量%を占める場合がある。有利なことには、電気伝導性充填剤粉末は、混合物の総質量に基づいて80質量%〜92質量%を占める。
電気伝導性充填剤粉末のこうした割合は、非常に高い伝導性(150S/cmを超える)を有する電気伝導性物品を転換後に得る可能性を与え得る。
【0029】
様々な上述の粉末は、予備溶融および樹脂の架橋発生を避けるために乾燥混合され、混合物は、例えば室温で製造されてもよい。混合は、相対的に粒子同士を移動させることによって行われてもよい。この移動は、撹拌システム(例えば対流式ミキサーのプロー(ploughs)またはリボン、高剪断ミキサーのブレード)、エアフロー(例えば栓塞ミキサー(impaction mixer)による)またはこうした混合物を含む槽の回転によって生じさせることができる。こうした状況において、槽の回転は、こうした場合に粒子が相対的に互いに動き始めるように、動的安息角を超過するまで混合物を駆動させるべきである。
好ましくは、混合工程は、対流式ミキサーにおいてまたは回転槽を用いて行われるが、混合工程中に温度が上昇し、可能性として樹脂の架橋(これは、本発明の方法では禁じられている)が生じる場合がある過剰のエネルギーを粒子に与えない。
【0030】
本発明の特定実施形態によれば、混合工程は、2つのサブ工程に分割できる:
−樹脂粉末、硬化剤化合物粉末および場合により触媒粉末を含む反応性システムの混合;
−反応性システムの電気伝導性充填剤粉末との混合。
有利なことには、粉末の混合物は次の通りであってもよい:
*次を含む粉末混合物:
−次の式のエポキシ樹脂粉末:
【化8】

は、角括弧間に採用されるユニットの反復数を表し、例えばnは1.5を超える;
−次の式のジシアンジアミド硬化剤化合物粉末:
【化9】

−次の式の触媒粉末:
【化10】

および;
−合成グラファイト粉末および場合によりラメラグラファイト;
【0031】
*次を含む粉末混合物:
−次の式のエポキシ樹脂の粉末:
【化11】

は、角括弧間に採用されるユニットの反復数を表す;
−次の式のエポキシ樹脂の粉末:
【化12】

は、角括弧間に採用されるユニットの反復数を表し、例えばnは1.5を超える;
−次の式のジシアンジアミド硬化剤化合物の粉末:
【化13】

【0032】
−次の式の触媒粉末:
【化14】

および;
−合成グラファイト粉末;
【0033】
*次を含む粉末混合物:
−次の式のエポキシ樹脂粉末:
【化15】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表す;
−次の式のイミダゾール硬化剤化合物の粉末:
【化16】

および;
−合成グラファイト粉末。
【0034】
これらの特定粉末混合物は、European Directive in effect,RoHS(電気および電子装置における特定有害物質の使用制限)に従う市販の製品から得られる。樹脂の架橋によるこれら混合物の転換は、毒性または有毒性種を生じない。
本発明の方法の混合工程からの粉末混合物、およびとりわけ上述の特定混合物は、特に安定であり、この粉末混合物の転換によって形成される物品の特性の劣化なしに、すぐに使える状態で数か月間室温で保存できる。
【0035】
混合工程が完了したら、樹脂の架橋を得るために有効な温度にて、所望の物品を得るために好適な形状を有するモールドにおいて先行工程で得られた粉末混合物の熱圧縮工程に、得られた粉末混合物を供し、その終わりに電気伝導性物品を得る。
この工程中、粉末混合物は、樹脂の架橋によって生じた結果としての混合物を緻密化することによって転換される。有利なことには1t/cm以下の圧力(理想的には250〜750kg/cmを含む)を働かせる。粉末混合物にこの圧力を働かせることによって、混合物の圧縮に加えて電気伝導性充填剤粒子間の距離を短くできる。
【0036】
この圧力は、エポキシ樹脂の架橋期間よりも長い期間維持されるのが好ましい。
混合物に圧力を適用するのと並行して、および/または圧力を適用する前に、樹脂の架橋に必要な温度まで混合物を加熱する。
加熱サイクルの温度および期間は、エポキシ樹脂/硬化剤ペアおよび存在する場合は触媒に依存する。加熱サイクルは、50〜250℃の範囲の温度にわたって2〜30分で変動し得る。
上述のように、この工程は、所望物品を得るために適合した形状を有するモールド中で行われ、それは換言すれば、モールドは、熱圧縮工程の後に、この工程から得られた物品が、その最終的な形状を与えるための機械加工を必要とすることなく、求められる最終的な形状を有するような設計および形状を有するべきであることを意味する。
【0037】
特定実施形態によれば、熱圧縮工程は、次のように適用されてもよい:
−粉末混合物を熱モールド(樹脂の重合温度を超える温度)に導入する工程であり、このモールドが目的とする物品の寸法に対応する寸法を有し、バイポーラプレートを形成することを目的とする場合、特にモールドは物品の表面にて分配チャンネルの設計を生じるようにインプリントを含む;
−モールドの閉鎖とそれに続く荷重。圧力は、粉末形態の材料に含まれる空気を排出するために徐々に適用されてもよい。熱の作用下、混合物の化合物は溶融し始める。重合反応は、化合物が硬化剤の活性化温度に到達したときに開始される。圧力は、樹脂の重合反応の終わりまで維持される;
−重合が終了したら、得られた物品は予備冷却を必要とせずにモールドから取り出される。
【0038】
モールドは、成型された物品の抜き出しを最適化するために、離型剤の層または特定の表面処理で覆われてもよい。
熱硬化性樹脂の使用により、上述の物品を製造するためのエネルギーコストを削減できるということを規定する。事実、熱可塑性樹脂が使用されるならば、熱圧縮工程後に、物品を再び固体にして、モールドから抜き出すことができるようにするためにモールドを冷却させる必要がある。
【0039】
本発明の方法は、燃料電池用のバイポーラプレート、特に有利なことには次の特性を有する、バイポーラプレートを調製するのに好適である:
−少なくとも150S/cmの電気伝導性;
−少なくとも15W/mKの熱伝導性;
−少なくとも10GPaの曲げ弾性率;
−少なくとも40MPaの最終破裂応力;
−少なくとも100°の接触角;
−2×10−6cm/s.cm未満の水素透過性(3atmで80℃の測定)。
ここで、限定としてではなく例示として与えられる次の実施例と関連させて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1に従って製造されたプレートに関して、平面電気伝導性σ(S/cm単位)対電気伝導性充填剤の平均粒径t(μm単位)を示すグラフである。
【図2】電気伝導性および熱伝導性がそれぞれ測定される方向、平面(矢印1)および横断(矢印2)を示す図であり、矢印3は荷重方向を示す。
【図3】実施例2に従って製造されたプレートに関して、平面電気伝導性σ(S/cm単位)対電気伝導性粒子の充填レベル%(質量%単位)を示すグラフである。
【図4】実施例3に従って製造されたプレートに関して平面電気伝導性σ(S/cm単位)対適用された圧力P(t/cm単位)を示すグラフである。
【図5】実施例3に従って製造されたプレートに関して、接触角θ(°単位)の変化対適用された圧力P(t/cm単位)を示すグラフである。
【図6】実施例4に従って製造された電極−膜アセンブリに関して、バイアス曲線、すなわちセル電圧T(V単位)対電流密度D(A/cm単位)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
上記実施例1から3は、バイポーラプレートを製造するために本発明の範囲内にて、原料の特性および操作条件について動機付けられる選択を示すことを目的とする。
これらの実施例において、様々な量(電気伝導性、熱伝導性、熱特性、透過性、湿潤性)の測定を進めるが、その測定手順を以下に明らかにする。
a)電気伝導性
プレートによる電気伝導は、バイポーラプレートの構成複合材料内における電子の可能な移動を表す。この電子移動は、電気伝導性充填剤粒子を介して達成される。
材料の不連続性のために複合材料では広範囲にわたって抵抗を示す。この広範囲の抵抗は、集中抵抗(充填剤粒子間の小さい接触表面積による)と、トンネル抵抗(これらの同じ粒子の表面における絶縁フィルムの厚さによる)との両方が原因である。
【0042】
集中抵抗は、電気伝導性粒子の形状および複合材料の圧縮(特に粒子同士のパッキングおよび変形)に依存する。
トンネル抵抗については、複合材料内の樹脂の割合に依存する。電子伝導は、この場合局所的な電界を生じる絶縁粒子間の電子ジャンプによって達成される。
電気伝導性σ(S/cm単位)は、Werner方法、いわゆる4点法によって材料の電気抵抗ρ(Ω.cm単位)を測定することによって決定される。
交流Iは、2つの端点から特徴付けられるべき材料に送られる。電位差Vは、両方の内点間で測定される。これらの点は距離dで等距離にある。
【0043】
抵抗ρ(Ω.cm単位)は次の式に適合する:
ρ=(2Пd)(V/I)
伝導性は抵抗の逆数に対応する。
b)熱伝導性
原子の観点から、熱伝導性は2つの挙動タイプに関連する:
−電荷キャリア、電子またはホールの移動;
−平衡位置の周りにある原子の振幅。
【0044】
そのため、熱伝導性は、一方で電気伝導性(電荷キャリアの動き)および他方で材料の実際の構造(原子振動)に関連する。
熱伝導性Λ(W/mK)は、本発明の物品(熱圧縮によって成型されたプレート)において直接測定される。
そうするために、センサを物品の主要面(平面伝導性を決定するため)または縁部(横断伝導性を決定するため)に配置する。
抵抗センサを使用する。センサに適用される電流は、物品に送られる既知の熱量を生じる。この熱量の消散がセンサによって分析される(これは電流の低下に反映される)。
この測定方法は破壊的ではない。
【0045】
c)機械的特性
曲げ試験手順(NF EN ISO 178標準に従う)を得られた複合材料に適用して進行させ、この応力は、スタックとして載置される間にバイポーラプレートが受ける力と同程度である。
3点曲げ試験は、NF EN ISO 178標準に従って行われる。
実験の観点から、力F−偏位Y曲線が記録され、そこから、破断応力σおよび曲げヤング率Eを算出できる。応力および変形は、次の式によって決定される:
【0046】
σ=(3FD/2bh
=(D/4bh)(F/Y)
式中:
−Fは破断荷重を表す;
−Yは破断点における偏位を表す;
−Dは支持体間の距離を表す;
−bは試料の幅を表す;
−hは試料の厚さを表す:
−F/Yは実験力F−偏位Y曲線の原点における傾きを表す。
試料は、熱圧縮によって成型されるプレートからとり、動力計にて試験する。
【0047】
d)透過性
既知の厚さの材料を通過するガスフローを経時的に測定する。材料の透過係数は、次の式から推測される:
Pe=(Фe)/(AΔP)
ここでФ:ガスフロー(mbars.1/s単位)
e:サンプルの厚さ
A:サンプルの表面積
ΔP:上流/下流圧力差
【0048】
e)湿潤性−疎水性
この特性は、プレートの表面における水滴の接触角を測定することによって評価される。
この方法は、基材の表面に液滴を堆積させることからなる。この場合、表面の湿潤性は、固体表面と液体表面に対する接線とによって接続点で形成される接触角θによって特徴付けられる。
【実施例1】
【0049】
この実施例は、材料の電気伝導性、結果として熱伝導性における電気伝導性充填剤の平均粒径の影響を示すことを目的とする。
種々のグレインサイズを有する充填剤を用いて同一充填剤レベルでの乾燥混合により様々な配合物を調製した。
開発され、適用された配合物は、同じマトリックス(反応性システム)からなる。電気伝導性充填剤のグレインサイズだけが変わり、その充填剤は以下の実施例4の表に規定されるタイプの合成グラファイトである。各配合物の充填剤質量レベルは、混合物の総質量に基づいて85質量%である。
【0050】
反応性システムについては、次の成分を含む:
−以下の実施例4にて規定される式を有し、90体積%の粒子が480μm以下の平均粒径を有し、粒子全体のうち、50体積%の粒子が150μm以下の平均粒径を有するようなグレインサイズ特性を有する、官能性が2、エポキシ当量が475−550g/当量であるDGEBA樹脂(Dow製のDER671)(100部);
−50μm未満の平均粒径を有する以下の実施例4に規定されるような式のジシアンジアミド硬化剤(Air Products製のAmicure CG 1200)(樹脂部分の2.5%);
−50μm未満の平均粒径を有する以下の実施例4に規定されるような式の置換尿素触媒(Air Products製のAmicure UR2T)(樹脂部分の0.5%)。
【0051】
上述された混合物は、それぞれの混合物について同一の方法に従って熱圧縮によって成形される:熱圧縮は180℃において、1t/cmで30分間。
得られた部分の抵抗が測定され、その値を、平面電気伝導性σ(S/cm単位)対電気伝導性充填剤の平均粒径t(μm単位)を示す図1に移す。
平面電気伝導性は荷重方向に垂直な材料の面において測定された伝導性に対応することを規定する。
これらの結果から、伝導性充填剤の平均粒径が大きくなるにつれて、材料の平面電気伝導性が高くなるということが導かれる。
【0052】
しかし、一方で、平均粒径が大きくなるにつれて、マトリックスと充填剤粒子との間の界面が激減し、複合材料の機械的特性が弱くなる。
それに加えて、充填剤粒子のサイズは、物品の設計に影響を及ぼさないように、大き過ぎてはいけない。
故に、これらの要件全体を考慮することによって、著者は、この状況において、グラファイト粒子を含む電気伝導性の複合材料が、有利なことには10μmを超え、500μm未満であり、好ましくは75〜150μmの範囲の平均粒径(すなわち、この場合は粒子が球形であるために平均粒子直径)を有するべきであることを動機付けられた方法にて決定できた。
【0053】
ガス分子の選択的経路が材料中に形成されるのを制限し、それによってその平均自由行程(または屈曲度)を促進するために、上述のグラファイト粒子に加えて複合材料に、ラメラ充填剤粒子を添加することが想定でき、ラメラ充填剤粒子は、膨張グラファイトのシートであってもよい。
熱圧縮によって材料を成形する方法の間、物品の主要面に平行で、荷重方向に垂直な膨張グラファイトシートの配向を促進する成形を進行させた。
実際の観点からは、以下の実施例4の表に規定されるような混合物Mから、本発明に従う物品の設計を進行させた。使用される合成グラファイト(TIMCAL Ltd製のTimrex KS 150)は、粒子の90体積%が150μm未満の平均粒径を有するような平均粒径を有し、ラメラグラファイトは、数百μmの表面積および数μmの厚さのシートとしてある。
【0054】
熱圧縮パラメータは、次の通りである:180℃、1t/cmの下で30分間。
得られたプレートから、荷重方向に垂直な面(以下の表では「平面」と呼ばれる)および荷重方向に平行な面(以下の表では「横断」と呼ばれる)(それぞれ、図2において矢印1および2で示され、荷重方向は矢印3で示される)における熱伝導性および電気伝導性の測定を進めた。
結果を以下の表に示す。
【表1】

【0055】
非ラメラグラファイト充填剤に加えてラメラ充填剤を組み込む場合、このラメラ充填剤は、荷重方向でもあるガス分子の変位方向に対して垂直な面に沿って配置される(この配置は、方法の適用によって誘導される)ことが、この場合は興味深い。面が互いに平行となるように配置されるラメラ充填剤は、プレートを通した反応ガス分子の進行を邪魔する。
【実施例2】
【0056】
この実施例は、この実施例に従って製造されたバイポーラプレートの構成材料の特性に対する、電気伝導性充填剤粒子のレベルの影響を示すことを目的とする。
こうするために、電気伝導性粒子のレベルを変動させることによって異なる固体複合混合物の調製を進めた(値を図3に移す)。
実施例1の第1部分において明示されたもののような異なる混合物を再び使用し、充填剤は、粒子の90体積%が150μm以下の平均粒径を有するようなグレインサイズを有する合成グラファイト(TIMCAL Ltd製Timrex KS 150)である。
次いで、上述の混合物を、180℃にて1t/cm下で30分間の熱圧縮方法に従って成形する。
【0057】
次いで、得られた部分の平面電気伝導性を測定する。結果を図3に移すが、これは電気伝導性充填剤粒子のレベル%(質量%)に対する平面電気伝導性σ(S/cm単位)を示す。
このグラフから、この状況で次の見解を提案できる:
−電気伝導性粒子の特定割合未満(より詳細には80質量%未満)では、複合材料の抵抗は高い。実際、多量の有機マトリックス材料は、電気伝導性粒子の表面に厚い絶縁フィルムを形成し、それによって材料の高いトンネル抵抗を生じさせる;
−電気伝導性は、ここで使用されるグレインサイズ(D90=150μm、D90は、粒子の90体積%が150μm以下の平均粒径を有することを意味する)および85〜92質量%を含む伝導性粒子の割合に関して最適である;
−92質量%超過では、有機マトリックスは十分な割合ではなく、多孔性および脆弱な複合材料を生じる。
【実施例3】
【0058】
この実施例は、この実施例に従って製造されたバイポーラプレートの構成材料の特性に対する、熱圧縮工程中に適用される圧力の影響を示すことを目的とする。
こうするために、同じ混合物(実施例4の表に明示されるような混合物M)を、期間および温度を変更せず(180℃で30分間)、異なる圧力(それぞれ0.25;0.5;0.75;1;1.25および1.5t/cm)にて熱圧縮によって成形する。
次いで平面電気伝導性σ(S/cm単位)の測定を進める。
【0059】
結果を図4に移し、この図は適用された圧力P(t/cm単位)に対する平面電気伝導性σ(S/cm単位)を示すグラフを示す。
これらの結果から、適用される特定混合物について次の見解が生じる:
−0.5t/cmまででは、圧縮が増大し、ひいては平面電気伝導性は増大する;
−特定範囲の適用圧力(この場合は0.5〜0.75t/cm)に関して、平面電気伝導性が最大値を有する。これは、電気伝導性粒子が互いに近づくように移動することによって、それらの接触表面積が増大するという事実によって説明できる;
−高過ぎる圧力(特に0.75t/cmを超える圧力)では、平面電気伝導性が低下し始める。これは、有機マトリックスが滲出し、それによって複合材料の表面において、絶縁フィルムを形成することに寄与するという事実により説明できる。
【0060】
この滲出現象はまた、熱圧縮から得られるプレートの表面に配置される水滴の接触角の測定によって検出可能である。
故に、熱圧縮工程の間に混合物に適用される圧力に対するプレートと接触して配置される水滴の接触角の測定も進めた。
結果を図5のグラフに移し、この図は、適用された圧力P(t/cm単位)に対する接触角θ(°単位)の変化を示すグラフである。
このグラフから、接触角θが750kg/cmの圧力から大きく低下することを認めることができ、これは、有機マトリックスの滲出のために材料の表面での親水性が増大することを示している。
【0061】
適用された混合物に関して、有機マトリックスの滲出現象を除くために、高過ぎない圧力にて作業するという要件が生じる。この種の混合物に適用される圧力は、最適特性を保証するために、複合材料を十分に圧縮するように、優先的に1t/cm未満であり、理想的には200〜750kg/cmを含む。
【実施例4】
【0062】
この実施例は、本発明の方法に従う熱圧縮によって成形されることを目的とする異なる粉末混合物(それぞれMからM)の調製を示す。
これらの混合物の特性を以下の表に表す。
【表2】

【0063】
DGEBA樹脂は次の式に適合する:
【化17】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表し、nは1.5を超える;
修飾DGEBA樹脂Novolac(EPN)は、上記式のDGEBA樹脂および次の式の樹脂の混合物である:
【化18】

は、括弧間に採用されるユニットの出現数を表す、
【0064】
この混合物は、DGEBA樹脂を少なくとも80質量%含む。
ジシアンジアミド硬化剤は次の式に適合する:
【化19】

「置換尿素」触媒は次の式に適合する:
【化20】

【0065】
触媒「2−フェニルイミダゾール」は次の式に適合する:
【化21】

異なる混合物に関して、結晶として与えられる固体のエポキシ樹脂は、粒子の90体積%が300μm以下の平均粒径を有し、粒子全体の割合のうち、粒子の50体積%が150μm以下の平均粒径を有するような、所望のグレインサイズに予めミル加工される。
ミル加工は、好適な有孔グリッドを備えたスクリーンミルを用いて行われる。
【0066】
混合物の構成成分が計量されたら、それらを、粉末ミキサー、特に回転槽ミキサーにおいて、乾燥ブレンドする(専門用語「乾燥ブレンド」に対応する)。
このミキサーにおいて、振幅クレードルは、反対方向に回転する2つのシャフトによって動く。得られた動作は、回転、移動および反転を兼ね備える。粒子のこのランダムな動作により、構成成分間の分離のない均質混合を保証する。混合工程は、塵がない、最適な衛生条件下で行われ、それによって洗浄操作を低減する。
【0067】
混合工程は、2つのサブ工程に分割されてもよい:
−樹脂、硬化剤および触媒を含む反応性システムの混合工程;
−反応性システムと充填剤との混合工程。
得られた混合物は、非常に安定であるという特殊性を有し、分解することなく数カ月この状態で維持できる。
上述の混合物(混合物MからM)から、熱圧縮によってバイポーラプレートの成形を進行させる。
【0068】
実施の観点から、成形は次のように適用される:
−粉末の混合物を熱モールド(樹脂の重合温度を超える温度を有する)に導入し、このモールドは、目的とするプレートの寸法に対応する寸法を有し、特にモールドは、プレートの表面において分配チャンネルの設計を生じさせるために、インプリントを含む;
−次いでモールドを閉鎖し、荷重する。粉末形態の材料に含まれる空気を除くために、圧力を徐々に適用してもよい。熱の作用の下で、混合物の化合物が溶融し始める。重合反応は、化合物が硬化剤を活性化させるための温度に到達したときに開始される。圧力は、樹脂の重合反応の終わりまで維持される;
−重合が完了したら、次いで得られたプレートを予備冷却することなくモールドから取り出す。
熱圧縮によって組成物を成形するための工程の特定操作条件を、異なる混合物に関して以下の表に要約する。
【表3】

【0069】
配合物MからMを用いて得られた異なるバイポーラプレートは、電気伝導性σおよび熱伝導性Λ(それぞれ平面および横断)、機械的強度(3点曲げ方法)(最大破断応力:最大応力(MPa単位)および曲げ弾性率(GPa単位))、表面張力(接触角方法)、ならびに水素透過性に関して特徴付けた。熱安定性も反応性システム(すなわち、樹脂、硬化剤および場合により触媒を含む)のガラス転移温度Tgを測定することによって評価した。
これらのデータは、以下の表にグループ分けされている。
【表4】

これらのデータから、次の結論が引き出される:
−EPN樹脂を用いて得られたプレートは、DGEBA樹脂を用いて得られたプレートよりも大きな熱安定性および良好な曲げ強度を有する;実際、EPN樹脂は官能性がより高く(分子あたり2つを超えるエポキシ部位)、形成された材料の架橋密度は二官能性樹脂(例えばDGEBA)の場合よりも大きい;
【0070】
−イミダゾールタイプの硬化剤を用いて得られたプレートは、広い温度範囲にわたって優れた剛性を有し、それにより増大した機械強度を有する;
−ラメラ充填剤の存在により、ガスに対する不透過性を改善できる。
混合物Mを用いて製造されたプレートを、モノセル試験ベンチによって行われたスタッキング試験に供した。これらの試験は、ガスの分配および電子の回収が可能な本発明の方法によって製造された2つの複合プレート間に位置する電極膜アセンブリを試験することからなる。より詳細には、試験されたアセンブリは、Nafion NRE 212膜、および2つの含浸された市販のいわゆる「GDE」Nafion電極(E−tek HT250EW 0.5mgのPt/cm、0.7mgのNafion/cm)からなる。
【0071】
アセンブリに関して最適な操作条件(70℃、2bar下、H/Oガス供給、乾燥ガス)下で行われたスタッキング試験の結果を図6に移す。この図は、上述のようなアセンブリを用いて得られた電流密度D(A/cm単位)に対するバイアス曲線、すなわちセル電圧T(V単位)を示すグラフを示す。バイポーラプレートは、セルコアの電気化学的性能を劣化させない。そのため、新規なプレートは、図6の曲線からわかるように、PEMFC燃料電池コアの電気化学的性能の観点からあまり活性でない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む電気伝導性物品の製造方法:
−少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末、この樹脂の硬化剤化合物粉末、および電気伝導性充填剤粉末を、乾燥経路により混合する工程;
−物品に適合した形状を有するモールドにおいて、樹脂を架橋するために有効な温度で、先行工程で得られた粉末混合物を熱圧縮する工程であって、この工程の終わりに電気伝導性物品が得られる工程。
【請求項2】
少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末が、10〜500μmの範囲の平均粒径を有し、ならびにこの樹脂のための硬化剤化合物粉末および電気伝導性充填剤粉末に関しても同様である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つの熱硬化性樹脂を含む粉末が、75〜150μmの範囲の平均粒径を有し、ならびに硬化剤化合物粉末および電気伝導性充填剤粉末に関しても同様である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
熱硬化性樹脂が、次の式:
【化1】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表す;
【化2】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表す;
の1つに適合する、またはこれらの混合物であってもよい、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
硬化剤化合物が、樹脂に対して架橋反応を生じさせることができる化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
硬化剤化合物が、脂肪族アミン化合物、アミドアミン、ポリアミド、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、無水物、芳香族アミン、イミダゾール化合物から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
硬化剤化合物が、次の式のジシアンジアミドである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【化3】

【請求項8】
硬化剤化合物が、次の式の2−フェニルイミダゾールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【化4】

【請求項9】
電気伝導性充填剤粉末が、グラファイト粉末、カーボンブラック粉末から選択される炭素質材料の粉末である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
混合工程がさらにラメラグラファイトを適用する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
混合工程がさらに触媒粉末を適用する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
触媒が次の式の置換尿素である、請求項11に記載の方法。
【化5】

【請求項13】
混合工程の終わりに得られた粉末混合物が、次の混合物の1つである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法:
*次を含む粉末混合物:
−次の式のエポキシ樹脂の粉末:
【化6】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表す;
−次の式のジシアンジアミド硬化剤化合物粉末:
【化7】

−次の式の触媒粉末:
【化8】

および;
−合成グラファイト粉末および場合によりラメラグラファイト;
*次を含む粉末混合物:
−次の式のエポキシ樹脂の粉末:
【化9】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表す;
−次の式のエポキシ樹脂の粉末:
【化10】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表す;
−次の式のジシアンジアミド硬化剤化合物の粉末:
【化11】

−次の式の触媒粉末:
【化12】

および;
−合成グラファイト粉末;
*次を含む粉末混合物:
−次の式のエポキシ樹脂粉末:
【化13】

は、角括弧間に採用されるユニットの出現数を表す;
−次の式のイミダゾール硬化剤化合物の粉末:
【化14】

および;
−合成グラファイト粉末。
【請求項14】
電気伝導性充填剤粉末が、混合物の総質量に基づいて50〜95質量%、好ましくは80〜92質量%を占める、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
熱圧縮工程が、1t/cm以下であり、好ましくは250〜750kg/cmを含む圧力で適用される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
電気伝導性物品が、燃料電池のバイポーラプレートである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−516530(P2012−516530A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546851(P2011−546851)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051049
【国際公開番号】WO2010/086397
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(510097644)コミッサリア ア ロンネルジー アトミック エ オ ゾンネルジー ザルテルナティーフ (33)
【出願人】(508368585)
【Fターム(参考)】